JP4807904B2 - フィルム塗装物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料用硬化性樹脂組成物を合成樹脂フィルムに塗布した塗装物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築構造物、バス、輸送車、乗用車、内装材などに意匠性を付与するために、合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムに予め塗装された塗装フィルムを貼り付けて使用されている。これらを屋外で使用する場合は耐候性や耐汚染性が不十分であるために、改良が要求されている。耐候性や耐汚染性が良好な塗料としてはアクリルウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料などの塗料を用いることがWO94/06870や特開平6−145453などに開示されている。
しかし、これらの中でアクリルシリコン塗料は無機基材に対する密着性は良好であるが、有機塗膜に対しては、他の2種に比較して密着性が不十分であり、塗り重ねによりちぢみを生じる場合があった。また、耐溶剤性が不足する傾向があるため、その上にエポキシ系塗料が塗布された時ちぢみを生じる場合や、フィルムに塗布した場合に、耐折り曲げ性が不十分な場合があった。
また、これまでは、ポリイソシアナ−ト化合物(架橋成分)を用いた場合、硬化剤成分に該ポリイソシアナ−トと硬化触媒を加えて1パックすることが困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のごとき実状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来用いられたアクリルシリコン塗料の欠点を克服し、常温または加熱で硬化性を有する塗料用硬化性樹脂組成物を提供し、アクリルシリコン樹脂塗料からの塗膜と同様に優れた耐候性を有するとともに、優れた密着性、耐溶剤性、耐衝撃性を同時に有する塗装物を提供することである。
【0004】
さらに、硬化剤の貯蔵時の安定性を飛躍的に向上させることも目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成からなる塗装物を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
1) 主鎖が実質的にビニル系共重合体鎖からなり、主鎖末端および/または側鎖に 一般式(I):
(式中、 R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、 R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0〜2の整数を示す)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基を分子中に少なくとも1個有すると共に、かつ、主鎖末端および/または側鎖にアルコール性水酸基を少なくとも1個有するビニル系共重合体(A)成分100重量部、イソシアナート基を2個以上含有する化合物(C)成分1〜100重量部、硬化触媒(D)成分0.01〜10重量部からなる塗料用硬化性樹脂組成物を合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムに塗布したフィルム塗装物。
2)前記、ビニル系共重合体(A)成分100重量部に対して、一般式(II):
(R3O)4-b−Si−R4 b (II)
(式中、 R3は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、 R4は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、bは0または1を示す)で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B)成分1〜70重量部配合されてなる請求項1に記載の塗料用硬化性樹脂組成物を合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムに塗布したフィルム塗装物。
3)前記組成物において、イソシアナート基を2個以上含有する化合物(C)成分と硬化触媒(D)成分および単官能性のイソシアナ−ト化合物(E)成分が1パックにした請求項1または2のいずれか1項に記載の塗料用硬化性樹脂組成物を合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムに塗布したフィルム塗装物。
4)前記組成物において、主剤として樹脂(A)成分、および硬化触媒(D)成分を1パックし、イソシアナート基を2個以上含有する化合物(C)成分および単官能性のイソシアナ−ト化合物(E)成分を1パックにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料用硬化性樹脂組成物を合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムに塗布したフィルム塗装物。
5)前記硬化触媒(D)成分が、有機錫化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料用硬化性樹脂組成物を合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムに塗布したフィルム塗装物。
6)前記有機錫化合物(D)成分が、分子内にS原子を含有する錫系化合物である請求項5に記載の塗料用硬化性樹脂組成物を合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムに塗布したフィルム塗装物。
7)前記単官能性のイソシアナ−ト化合物(E)成分が、トシルイソシアナ−トである請求項3〜7のいずれか1項に記載の塗料用硬化性樹脂組成物を合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムに塗布したフィルム塗装物。
8)メタリック粉末および/または着色顔料を含有する塗料が塗布された塗布面にトップコ−トクリアー塗料が塗布されてなる塗装物であって、前記トップコ−トクリアー塗料が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗料用硬化性樹脂組成物を主成分として含有することを特徴とする塗装物を合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムに塗布したフィルム塗装物。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の塗料用硬化性組成物に含有される上記各成分、およびその他の成分について順に説明する。
(A)成分
本発明に用いられる(A)成分の形態としては、主鎖が実質的にビニル系共重合体鎖からなり、主鎖末端および/または側鎖に一般式(I):
(式中、 R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、 R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0〜2の整数を示す)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基(シラノール基を含む概念である)を1分子中に少なくとも1個有し、かつ、主鎖末端および/または側鎖にアルコール性水酸基を少なくとも1個有するビニル系共重合体である。前記共重合体は、その主鎖が実質的にビニル系共重合体鎖からなるため、得られる硬化性樹脂組成物を用いて形成される塗膜の耐候性、耐薬品性等が優れたものとなり、また、加水分解性シリル基が炭素原子に結合しているため、塗膜の耐水性、耐アルカリ性、耐酸性等も優れている。
【0007】
(A)成分において、上記一般式(I)で表される加水分解性シリル基は分子中に1個以上あればよいが、得られる硬化性組成物を用いて形成される塗膜の耐溶剤性が優れるという点から、2〜10個あることが好ましい。
【0008】
上記一般式(I)において、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基である。かかるアルキル基の炭素数が10を超える場合には、加水分解性シリル基の反応性が低下する傾向にある。また、前記R1が、例えばフェニル基、ベンジル基等のアルキル基以外の基である場合にも、加水分解性シリル基の反応性が低下するので好ましくない。
【0009】
また、上記一般式(I)において、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは、前記R1において具体例を示した炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基等の炭素数6〜25のアリール基、ベンジル基等の炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基であり、これらの中では、得られる組成物が硬化性に優れるという点からアルキル基が好ましい。
【0010】
前記ビニル系共重合体中のアルコール性水酸基当量(アルコール性水酸基1モルを含むビニル系共重合体の量(g))は、300〜3,000g/モルであることが好ましい。更に好ましく、500〜2,500g/モル、特に好ましくは、700〜2,000g/モルである。水酸基当量が小さい場合には、得られる硬化性組成物を用いて形成された塗膜の貯蔵安定性、耐酸性が十分でなく、特に300g/モル未満の場合に顕著である。また、水酸基当量が大きい場合には、組成物の硬化性が劣る傾向にあり、特に3,000g/モルを超える場合に顕著である。
【0011】
ビニル系共重合体は例えば下記(1)〜(3)等を含有する共重合成分を重合することによって製造することができる。
(1)加水分解性シリル基含有ビニル単量体(モノマー(a−1))、
(2)水酸基含有ビニル系単量体(モノマー(a−2))、
(3)共重合可能なその他の単量体(モノマー(a−3))。
【0012】
上記モノマー(a−1)としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0013】
【化1】
などの一般式(III)
【0014】
【化2】
(式中、R5は、水素原子またはメチル基を表し、R6は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または、炭素数7〜10のアラルキル基を表し、複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。R7は炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。aは、0〜2の整数を表す。)で表される化合物;
【0015】
【化3】
などの一般式(IV):
【0016】
【化4】
(式中、R5、 R6、 R7、aは前記と同じ、nは1〜12の整数を示す。)で表される化合物;
【0017】
【化5】
などの一般式(V):
【0018】
【化6】
(中、R5、R6、 R7、a、nは前記と同じ)で表される化合物;
【0019】
【化7】
などの一般式(VI):
【0020】
【化8】
(式中、R5、R6、R7およびaは前記と同じ、pは1〜14の整数を示す)で表される化合物や、前記一般式(I)で表される加水分解性シリル基をウレタン結合またはシロキサン結合を介して末端に有する(メタ)アクリレート等である。これらは単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。これらの中では、取扱いが容易で低価格であり、反応副生成物が生じないという点から前記一般式(V)で表される化合物が好ましい。
【0021】
モノマー(a−1)の使用量は、共重合成分全量中5〜60%(重量%、以下同様)が好ましく、10〜50%であるのがさらに好ましい。かかるモノマー(a−1)の使用量が5%未満である場合には、得られる硬化性組成物を用いて形成された塗膜の耐酸性が不充分となる傾向にあり、60%を超える場合には、硬化性組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
【0022】
次に、上記モノマー(a−2)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アロニクス5700(東亜合成化学工業(株)製)、4−ヒドロキシスチレン、HE−10、HE−20、HP−1、HP−20等の末端に水酸基を有するアクリル酸エステルオリゴマー(以上、日本触媒化学工業(株)製)、ブレンマーPPシリーズ(ポリプロピレングリコールメタクリレート)、ブレンマーPEシリーズ(ポリエチレングリコールモノメタクリレート)、ブレンマーPEPシリーズ(ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート)、ブレンマーAP−400(ポリプロピレングリコールモノアクリレート)、ブレンマーAE−350(ポリエチレングリコールモノアクリレート)、ブレンマーNKH−5050(ポリプロピレングリコールポリトリメチレンモノアクリレート)、ブレンマーGLM(グリセロールモノメタクリレート)等の化合物(以上、日本油脂(株)製)、水酸基含有ビニル系化合物とε−カプロラクトンの反応によって得られるε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合性化合物等が挙げられる。
【0023】
また、上記ε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合性化合物の代表例としては、例えば下記一般式(VII):
【0024】
【化9】
で表される化合物が挙げられる。その具体例としては、例えばPlaccel FA−1(R5は水素原子、qは1)、Placcel FA−4(R6は水素原子、qは4)、Placcel FM−1(R5はメチル基、qは1)、Placcel FM−4(R5はメチル基、qは4)(以上、ダイセル化学工業(株)製)、TONE M−100(R5は水素原子、qは2)、TONE M−201(R5はメチル基、qは1)、(以上、UCC社製)等が挙げられる。
【0025】
これらのモノマー(a−2)は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
上記モノマー(a−2)の中では、得られる硬化性組成物を用いて形成された塗膜の耐酸性および耐水性が優れるという点から、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合性化合物が好ましく、特に2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。上記水酸基含有モノマーを用いて、ビニル系共重合体(A)にはアルコール性水酸基が少なくとも1個、好ましくは2個以上のアルコール性水酸基(炭素原子に結合した水酸基)を含有することが好ましい。
【0027】
前記モノマー(a−2)の使用量は、共重合成分全量中1〜50%が好ましく、2〜35%であることがさらに好ましい。かかるモノマー(a−2)の使用量が50%を超える場合には、硬化性組成物を用いて形成された塗膜の耐水性および耐酸性が低下する傾向にある。
【0028】
上記モノマー(a−3)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、マクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5等の化合物(以上、東亜合成化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸またはリン酸エステル類との縮合生成物等のリン酸エステル基含有ビニル系化合物、ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体や、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等の塩;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸の酸無水物、これらと炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖を有するアルコールとのジエステルまたはハーフエステル等の不飽和カルボン酸のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレート等のビニルエステルやアリル化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトンアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドン等のアミド基含有ビニル系化合物;メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸等のその他のビニル系化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0029】
なお、モノマー(a−3)として、アミン、カルボン酸、スルホン酸、リン酸系の基を有する極性モノマーを用いる場合には、重合時の架橋反応を抑えるために、その使用量を共重合成分全量の5%以下となるようにすることが望ましい。
【0030】
本発明においては、得られる硬化性組成物を用いて形成される塗膜の耐候性、耐溶剤性、耐衝撃性等を向上させる目的で、ビニル系共重合体の50%を超えない範囲で、ウレタン結合やシロキサン結合により形成されたセグメントを、ビニル系共重合体主鎖中に含まれるように使用してもよい。
【0031】
本発明に用いられるビニル系共重合体は、前記モノマー(a−1)、モノマー(a−2)、モノマー(a−3)等を含有する共重合成分から、例えば特開昭54−36395号公報、特開昭57−55954号公報等に記載の方法によって製造することができるが、合成の容易さ等の点からアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系ラジカル重合開始剤を用いた溶液重合法によって製造するのが好ましい。
【0032】
前記溶液重合法に用いられる重合溶液は、非反応性のものであればよく、特に限定はないが、例えばトルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン類等が挙げられる。
【0033】
上記重合溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよいが、重合溶剤中のメタノールやブタノール等のアルコール類の量が共重合成分100部に対して1部未満の場合には、重合時にゲル化を起こす可能性があるので、重合溶媒中には、共重合成分100部に対してアルコール類が1〜30部の割合で含有されるようにするのが好ましい。
【0034】
また、上記溶液重合の際に連鎖移動剤を用いることにより、得られるビニル系共重合体の分子量を調節してもよい。
【0035】
前記連鎖移動剤の具体例としては、例えばn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、(CH3O)3Si−S−S−Si(OCH3)3、(CH3O)3Si−S8−Si(OCH3)3等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0036】
例えば前記γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を分子中に有する連鎖移動剤を用いる場合には、ビニル系共重合体の主鎖末端に加水分解性シリル基を導入することができるので好ましい。
【0037】
かかる連鎖移動剤の使用量は、共重合成分に対して0.1〜10%程度であるのが好ましい。
【0038】
本発明においては、本発明の組成物から形成される塗膜の耐汚染性を向上させるための成分として、次の一般式(II):
(R3O)4-b−Si−R4 b (II)
(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、R4は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、bは0または1を示す)(B)(以下、シリコン化合物等(B)ともいう)を使用することが出来る。シリコン化合物等(B)は該塗膜と被塗物との密着性を向上させるための成分としても使用することが出来る。シリコン化合物等(B)をアクリル系共重合体(A)と混合させたものは常温硬化性を有する組成物となり、該組成物を用いて形成される塗膜はすぐれた耐汚染性を有するが、該塗膜がすぐれた耐汚染性を有する理由はまだ定かには判明していない。おそらくアクリル系共重合体(A)とシリコン化合物等(B)との相対的硬化速度の違いと相溶性に起因し、表面硬度および親水性が向上することが影響しているものと考えられる。
【0039】
前記一般式(II)において、R3は炭素数1〜10、好ましくはたとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、好ましくはたとえばフェニル基などの炭素数6〜9のアリール基、好ましくはたとえばベンジル基などの炭素数7〜9のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基である。
【0040】
前記アルキル基の炭素数が10を超える場合には、シリコン化合物等(B)の反応性が低下するようになる。また、R1が前記アルキル基、アリール基、アラルキル基以外の場合にも反応性が低下するようになる。
【0041】
また、前記一般式(II)において、R4は炭素数1〜10、好ましくはR3と同様の炭素数1〜4のアルキル基、好ましくはR1と同様の炭素数6〜9のアリール基、好ましくはR3と同様の炭素数7〜9のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素である。
【0042】
前記一般式(II)において、(R3O)4-bは4ーbが3以上になるように、すなわちbが0または1になるように選ばれるが、本発明の組成物から形成される塗膜の硬化性が向上するという点からは、bが0であるのが好ましい。
【0043】
一般式(II)中に存在する(R3O)4-bの数が2個以上の場合、2個以上含まれるR3は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0044】
前記一般式(II)の具体例としては、たとえばテトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラn−プロピルシリケート、テトラi−プロピルシリケート、テトラn−ブチルシリケート、テトラi−ブチルシリケートなどのテトラアルキルシリケート;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3ーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリsec−オクチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0045】
また、前記シリコン化合物等(B)の具体例としては、たとえば通常の方法で前記テトラアルキルシリケートやトリアルコキシシランに水を添加し、縮合させて得られるものがあげられ、たとえばMSi51、MSi53、ESi28、ESi40、HAS−1、HAS−10、EMS30/70やEMS40/60やEMS485等のEMSシリーズ、EPSiシリーズ(以上、コルコート(株)製)、MS51、MS56、MS51B15、MS56S、MS56SB5(以上、三菱化学(株)製)、シリケート40、シリケート45、シリケート48、FR―3、mih028、mih032(以上、多摩化学(株)製)などのテトラアルキルシリケートの部分加水分解分解縮合物や、たとえばAFP−1(信越化学工業(株)製)などのトリアルコキシシランの部分加水分解分解縮合物などが挙げられる。
【0046】
前記シリコン化合物等(B)のうちでは、ベース樹脂、特にアクリル系共重合体(A)との相溶性、えられる本発明の組成物の硬化性が良好で、該組成物を用いて形成される塗膜の硬度にすぐれるという点から、MSi51、MS51、MS56、MS51B15、MS56S、MS56SB5(テトラメトキシシランの部分加水分解分解縮合物)やESi40、シリケート40、シリケート45、シリケート48、ESi48(テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物)、FR−3、EMSシリーズ(テトラメトキシシランとテトラエトキシシランの共部分加水分解縮合物)などのテトラアルキルシリケートの部分加水分解分解縮合物を用いるのが好ましい。
【0047】
さらに、前記シリコン化合物等(B)のなかでは、縮合度の高いMS56やMS56S、シリケート45、シリケート48ESi48、FR―3、EMSシリーズなどが初期から接触角を低下させるという点から好ましい。
(B)成分の使用量は(A)成分100部に対して1〜100部、好ましくは5〜100部、さらに好ましくは10〜80部である。(B)成分が1部未満の場合には耐汚染性の効果が充分でなく、100部を超える場合には耐衝撃性が低下する。
【0048】
本発明の組成物には、(A)成分に対してイソシアナ−ト基を2個以上有する化合物(C)成分が含有される。イソシアナート基が2個以上あるために(C)成分は(A)成分等水酸基含有化合物の架橋剤としての働きを有する。
前記、イソシアナ−ト基を2個以上有する化合物としては、脂肪族系もしくは芳香族系のものが挙げられる。
【0049】
脂肪族系多官能性イソシアナ−トの具体例として、常温硬化用でヘキサメチレンジイソシアナ−ト、ジシクロヘキシルメタン4,4‘−イソシアナ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナ−ト、イソフォロンジイソシアナ−トがあり、構造としては単量体、ビュレット型、ウレジオ型、イソシアヌレ−ト型がある。
【0050】
加熱硬化用としてはブロックタイプのものがある。そのブロック剤としてはメチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル、n−プロピルアルコ−ル、イソ−プロピルアルコ−ル、n−ブチルアルコ−ル、s−ブチルアルコ−ル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ベンジルアルコ−ル、フルフリルアルコ−ル、シクロヘキシルアルコ−ル、フェノ−ル、o−クレゾ−ル、m−クレゾ−ル、p―クレゾ−ル、p−t−ブチルフェノ−ル、チモ−ル、p−ニトロフェノ−ル、β―ナフト−ルなどがある。また、芳香族多官能性イソシアナ−トとしては、2,4―トリレンジイソシアナ−ト、2,6―トリレンジイソシアナ−ト、ジフェニルメタン−4,4‘−ジイソシアナ−ト、キシレンジイソシアナ−ト、ポリメチレン−ポリフェニレル−ポリイソシアナ−ト、などがある。これにも、ビュレット型、ウレジオ型、イソシアヌレ−ト型がある。
これらの化合物は、2種以上混合して用いることもできる。
前記、イソシアナ−ト化合物(C)成分の使用量は、(A)成分100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、更に好ましくは10〜60重量部である。(C)成分が1部未満の場合には、得られる組成物の硬化性が低下するようになり、また100部を超えると、該組成物を用いて得られた塗膜に未反応のイソシアナ−ト化合物あるいはイソシアナ−ト基が残存し、耐候性の低下や塗り重ね時にちぢみを生じる原因となる。
イソシナ−ト化合物とともに配合する硬化触媒(D)としては有機金属化合物が使用される。その中では、錫系化合物の場合が塗膜の硬化性の点から好ましい。また、貯蔵安定性と硬化活性を考慮して分子内にS原子を有する化合物が更に好ましい。
【0051】
前記錫化合物の具体例としては、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジオクチル錫オキサイドまたはジブチル錫オキサイドとシリケ−トとの縮合物、ジブチル錫ジオクトエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジステアレ−ト、ジブチル錫ジアセチルアセトナ−ト、ジブチル錫ビス(エチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(ブチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(オレイルマレ−ト)、スタナスオクトエ−ト、ステアリン酸錫、ジ−n−ブチル錫ラルレ−トオキサイドがある。また、分子内にS原子有する錫化合物としては、ジブチル錫ビスイソノニル−3―メルカプトプロピオネ−ト、ジオクチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、オクチルブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、オクチルブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−トなどが挙げられる。
【0052】
前記錫化合物のうちでは、分子内にS原子を有する化合物が、イソシアナ−トを配合した場合の貯蔵安定性および可使時間が良好であることから好ましく、特に、ジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−トが硬化性と貯蔵安定性、可使時間のバランスの点から好ましい。
【0053】
前記硬化触媒(D )成分は単独でもよく、また、2種類以上併用してもよい。
【0054】
前記(D)成分の使用量は、(A)成分100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜8重量部、より好ましくは0.3〜5重量部である。さらに、有機金属化合物(D)成分の量が10部を超えると、該組成物を用いて形成した塗膜の表面光沢など外観性の低下傾向が認められるので好ましくない。
【0055】
前記の脱水剤として配合される単官能イソシア−ト化合物(E)成分としては、イソシアン酸、メチルイソシアナ−ト、エチルイソシアナ−ト、イソプロピルイソシアナ−ト、ヘキシルイソシアナ−ト、ビニルイソシアナ−ト、イソプロペニルイソシアナ−ト、フェニルイソシアナ−ト、トリルイソシアナ−ト、ニトロフェニルイソシアナ−ト、ナフチルイソシアナ−ト、トシルルイソシアナ−トなどが挙げられるが、脱水能力および化合物自体の安定性の点からヘキシルイソシアナ−ト、トリルイソシアナ−ト、トシルイソシアナ−トが好ましい。中でも脱水効果の持続性の点からトシルイソシアナ−トが特に好ましい。これらは、単独または2種類以上併用することができる。従来、ポリイソシアナ−ト化合物と硬化触媒を加えて1パックにした硬化剤とすることが困難であったが、単官能イソシアナ−ト化合物(E)成分を加えることにより、これらの問題を改善することが可能となり、貯蔵安定性が飛躍的に向上する。
【0056】
前記単官能イソシアナ−ト化合物(E)成分の配合量としては0.1〜20部が好ましく、0.5〜20部がより好ましく、0.5〜10重量部がさらに好ましい。
【0057】
本発明の塗料用硬化性樹脂組成物の配合形態については、主剤として樹脂(A)成分と、シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B)成分と硬化剤としてイソシアナ−ト化合物(C)成分と硬化触媒(D)成分と脱水剤単官能イソシアナ−ト(E)成分を混合した、2液の配合形態。また、主剤として樹脂(A)成分、シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B)成分および硬化触媒(D)成分を混合したものと、硬化剤としてイソシアナ−ト(C)成分と脱水剤単官能イソシアナ−ト(E)成分の2液の配合形態。さらに、イソシアナ−ト成分にブロックタイプのものを使用した場合には、樹脂(A)成分、シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B)成分とイソシアナ−ト化合物(C)成分および硬化触媒(D)成分を混合した1液の配合形態が可能である。
【0058】
本発明の塗料用硬化性樹脂組成物は、樹脂(A)成分、シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B)成分、イソシアナ−ト化合物(C)成分、硬化触媒(D)成分、単官能イソシアナ−ト(E)成分を例えば撹拌機などを用いて均一な組成物となるように撹拌、混合することによって得ることができるが、樹脂(A)成分およびシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B)成分には、さらに脱水剤を配合することによって、組成物の保存安定性を長期間にわたって優れたものにすることができる。
前記脱水剤の具体例としては、たとえばオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトイソプロピオン酸トリメチル、オルトイソプロピオン酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチル、オルトイソ酪酸トリメチル、オルトイソ酪酸トリエチルなどの加水分解性エステル化合物;または、ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシブタン;または、エチルシリケ−ト(テトラメトキシシラン)、メチルシリケ−ト(テトラメトキシシラン)、メチルトリメトキシシランなどが挙げられる。この中では、脱水効果の点から、オルト酢酸メチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
前記脱水剤は、(A)成分と(B)成分の合計100部に対して100部以下好ましくは50部以下、さらに好ましくは30部以下で使用される。
また、樹脂(A)成分を重合する前の成分に加えてもよく、樹脂(A)成分の重合中に加えてもよく、また、得られた樹脂(A)成分とそのほかの成分との混合時に加えてもよく特に制限はない。
【0059】
また、本発明の塗料用硬化性樹脂組成物には、通常塗料に用いられるたとえば酸化チタン、群青、紺青、亜鉛華、ベンガラ、黄鉛、鉛白、カーボンブラック、透明酸化鉄、アルミニウム粉などの無機顔料、アゾ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キノリン系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料などの有機顔料などの顔料;希釈剤、紫外線吸収剤、光安定剤、タレ防止剤、レベリング剤などの添加剤;ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレートなどの繊維素;エポキシ樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ゴム、ポリビニルブチラール、ポリシロキサンなどの樹脂などを適宜加えてもよい。
【0060】
本発明の塗料用硬化性樹脂組成物は、たとえば浸漬、吹き付け、刷毛などを用いた塗布などの通常の方法によって被塗物に塗布され、通常、常温でそのまま、または30℃以上で焼き付けて硬化せしめる。
【0061】
本発明の塗料用硬化性樹脂組成物は、合成樹脂フィルムなどの上塗り用の塗料として好適に使用される。
【0062】
本発明に使用される合成樹脂フィルムは材質を問わず従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロプロポキシビニルエーテル共重合体、ナイロン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、AS樹脂、ABS樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂などからなるフィルムを挙げることが。また、これらのフィルムは紫外線吸集剤、充填材、熱安定剤などを含むものであってもよい。
【0063】
また、予めフィルム表面をコロナ放電などによる表面処理やプライマーや着色塗料などが塗装されていてもよい。
【0064】
次に、本発明の塗料用硬化性樹脂組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
製造例1(樹脂(A−1)成分の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器にキシレン40部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。その後、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン14部、2−ヒドロキシエチルメタクリレ−ト13部、メチルメタクリレ−ト25部、n−ブチルメタクリレ−ト18部、n−ブチルアクリレ−ト15部、スチレン15部、キシレン18部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3.8部からなる混合物を滴下ロ−トにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部およびトルエン8部を1時間かけて等速滴下した後、110℃で2時間撹拌してから冷却し、樹脂溶液にキシレンを加えて樹脂固形分濃度が50%の樹脂(A)−1を得た。
得られた樹脂(A)−1の平均分子量は6000であった。
【0066】
製造例2(樹脂(A−2)成分の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器にキシレン40部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。その後、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレ−ト13部、メチルメタクリレ−ト22部、n−ブチルメタクリレ−ト18部、n−ブチルアクリレ−ト12部、スチレン15部、キシレン18部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3.8部からなる混合物を滴下ロ−トにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部およびトルエン8部を1時間かけて等速滴下した後、110℃で2時間撹拌してから冷却し、樹脂溶液にキシレンを加えて樹脂固形分濃度が50%の樹脂(A)−2を得た。
得られた樹脂(A)−2の平均分子量は6300であった。
【0067】
製造例3(樹脂(A−3)成分の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器にキシレン40部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。その後、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン6.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレ−ト13部、メチルメタクリレ−ト29部、n−ブチルメタクリレ−ト18部、n−ブチルアクリレ−ト18.5部、スチレン15部、キシレン18部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3.8部からなる混合物を滴下ロ−トにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部およびトルエン8部を1時間かけて等速滴下した後、110℃で2時間撹拌してから冷却し、樹脂溶液にキシレンを加えて樹脂固形分濃度が50%の樹脂(A)−3を得た。
得られた樹脂(A)−3の平均分子量は6200であった。
【0068】
製造例4(樹脂(A−4)成分の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器にキシレン40部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。その後、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン11部、メチルメタクリレ−ト42部、 n−ブチルアクリレ−ト31部、スチレン15部、N−メチロールアクリルアミド、キシレン18部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3.8部からなる混合物を滴下ロ−トにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部およびトルエン8部を1時間かけて等速滴下した後、110℃で2時間撹拌してから冷却し、樹脂溶液にキシレンを加えて樹脂固形分濃度が50%の樹脂(A)−4を得た。
得られた樹脂(A)−4の平均分子量は6100であった。
製造例5(アクリルポリオ−ル(A−5)の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器にキシレン40部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した後、n−ブチルアクリレ−ト33部、2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト15部、アクリル酸7部、メチルメタクリレ−ト45部、トルエン18部および2,2−アゾビスイソブチロニトリル3.8部からなる混合物を滴下ロ−トにより5時間かけて等速滴下した。混合物の滴下後、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.2部およびトルエン8部を1時間かけて等速滴下した後、110℃で2時間撹拌してから冷却し、樹脂溶液にトルエンを加えて樹脂固形分が50重量%の(A)−5を得た。なお、得られた(A)−5の数平均分子量は6,300であった。
【0069】
なお、前記数平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー分析装置(東洋曹達(株))製、HLC−8020を用いて、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーを行って測定した。
【0070】
エナメル塗料の作製
白エナメル−1
顔料として酸化チタンCR−95(石原産業社製)24重量部、脱水剤としてオルト酢酸メチルを3重量部添加し、製造例1で得られた樹脂(A)−1を21.6重量部配合し、ガラスビーズを用いてペイントコンディショナーで2時間分散させたペーストに、更に、製造例1で得られた樹脂(A)−1を50.4重量部、メルカプトシランを1重量部加え、ペイントコンディショナーで30分間混合して、固形分濃度が60%、顔料濃度40%の白エナメル−1を得た。
【0071】
白エナメル−2
顔料として酸化チタンCR−95(石原産業社製)24重量部、製造例5で得られた樹脂(A)−5を21.6重量部配合し、ガラスビーズを用いてペイントコンディショナーで2時間分散させたペーストに、更に、製造例5で得られた樹脂(A)−5を50.4重量部、キシレンを1重量部加え、ペイントコンディショナーで30分間混合して、固形分濃度が60%、顔料濃度40%の白エナメル−2を得た。
クリアー主剤−1の調整
製造例1で得られた樹脂(A)−1の樹脂固形分100部に対し、シリコン化合物等(B)成分としてMS56(三菱化学(株)製のテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)10部を加えた混合液に脱水剤としてオルト酢酸メチルを5重量部添加して系中の水分を除去した後、 S原子含有錫系触媒(D)成分としてジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト(U350、日東化学(株)製)を1部添加し、更に、硬化調整剤としてメルカプトシラン(A189、日本ユニカー(株)製)を1部添加し、更に、キシレンで希釈して固形分濃度40%のクリアー主剤−1を作製した。この時の水分は200ppmであった。
【0072】
硬化剤の調整
硬化剤−1:イソシアナ−ト化合物(C)成分としてヘキサメチレンジイソシアナ−トのヌレート構造物(コロネートHX、日本ポリウレタン(株)製)を28.7重量部、S原子含有錫系触媒(D)成分としてジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト( U350)を1.5重量部、単官能イソシアナ−ト(E)成分としてトシルイソシアナ−ト(アディティブTI、住友バイエルウレタン(株)製)を2重量部、キシレンを67.8重量部の割合で混合し作製した。
【0073】
硬化剤−2:イソシアナ−ト化合物(C)成分としてヘキサメチレンジイソシアナ−トのヌレート構造物(コロネートHX、日本ポリウレタン(株)製)を28.7重量部、キシレンを71.3重量部の割合で混合し作製した。
【0074】
実施例及び比較例
実施例1
製造例1で得られた樹脂(A)−1の樹脂固形分100部に対し、シリコン化合物等(B)成分としてMS56(三菱化学(株)製のテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)10部、S原子含有錫系触媒(D)成分としてジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト( U350)を1部添加し、更に、硬化調整剤としてメルカプトシラン(A189)を1部、イソシアネート化合物(C)成分としてヘキサメチレンジイソシアナ−トのヌレート構造物(コロネートHX)を20重量部を添加し、更に、チヌビン384(チバガイギ−(株)社製 紫外線吸収剤)2部とチヌビン292(チバガイギ−(株)社製 光安定剤)を1部加えた。この混合物をキシレンで希釈して固形分濃度40%のクリアー塗料を作製した。
【0075】
前記白エナメル−1を100重量部、硬化剤−1を25重量部配合し、キシレンで希釈して作製した固形分濃度45%の塗料を塩化ビニール製フィルム上に乾燥膜厚で約20μmとなるように塗装し、セッティング後、更に、前記クリアー塗料を乾燥膜厚30μmとなるように塗装して評価用フィルムを作製した。得られたフィルムを60℃×30分乾燥させ、更に、23℃にて7日間養生を行った。
実施例2〜7及び比較例1
クリアー塗料を表−1に示す配合でそれぞれ調整した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例8
前記白エナメル−1を100重量部、硬化剤−1を25重量部及びシリコン化合物(B)成分−1を3.6重量部添加し、更にキシレンで希釈して固形分濃度40%の塗料を得た。得られた塗料を塩化ビニール製フィルム上に乾燥膜厚で約30μmとなるように塗装して評価用フィルムを作製した。得られたフィルムを60℃×30分乾燥させ、更に、23℃にて7日間養生を行った。
実施例9
アクリルウレタン白エナメル(レタンPG80)を塩化ビニール製フィルム上に乾燥膜厚で約20μmとなるように塗装し、その上に、更に、主剤−1及び硬化剤−2をそれぞれ100重量部、25重量部配合し、キシレンで希釈して固形分濃度が40%の塗料を乾燥膜厚30μmとなるように塗装して評価用フィルムを作製した。得られたフィルムを60℃×30分乾燥させ、更に、23℃にて7日間養生を行った。
得られた塗膜の耐汚染性、耐候性、接触角、耐折り曲げ性について以下の方法に従って評価した。
比較例2
前記白エナメル−2を100重量部、硬化剤−2を28重量部、シリコン化合物等(B)成分としてMS56(三菱化学(株)製のテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)10重量部添加し、更にキシレンで希釈して固形分濃度40%の塗料を得た。得られた塗料を塩化ビニール製フィルム上に乾燥膜厚で約30μmとなるように塗装して評価用フィルムを作製した。得られたフィルムを60℃×30分乾燥させ、更に、23℃にて7日間養生を行った。
【0076】
得られた塗膜の耐汚染性、耐候性、接触角、耐折り曲げ性について以下の方法に従って評価した。 結果を表1、2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
(イ)耐汚染性(ΔL値)
得られたフィルムをアルミ板に貼り付け、初期および大阪摂津市の屋外で3ケ月間放置(30°傾斜屋外曝露)後の塗膜表面の色彩をCR―300色差計(ミノルタ製)を用いて各々測定し、得られたL値(明度)から曝露前のL値との差(ΔL値)を求めた。
(ロ)耐候性(光沢保持率)
得られたフィルムをアルミ板に貼り付け、サンシャインウェザオメ−タ−を用い、初期および2000時間経過後の塗膜表面の光沢をそれぞれ測定し、光沢保持率(%)を求めた。
(ハ)接触角
初期及び大阪摂津市の屋外で3ケ月間放置(30°傾斜屋外曝露)後の塗膜表面の水との静的接触角を接触角測定器(協和界面科学株式会社製CAS−150型)で測定した。
(ニ)耐折り曲げ性
得られたフィルムを折り曲げでクラックの発生有無を評価した。
判定方法
○:クラックなし
×:クラックあり
Claims (5)
- 合成樹脂フィルムあるいは表面処理された合成樹脂フィルムにメタリック粉末および/または着色顔料を含有する塗料が塗布された塗布面にトップコートクリアー塗料が塗布されてなるフィルム塗装物であって、
前記トップコートクリアー塗料が、
主鎖が実質的にビニル系共重合体鎖からなり、主鎖末端および/または側鎖に 一般式(I):
(式中、 R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0〜2の整数を示す)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基を分子中に少なくとも1個有すると共に、かつ、主鎖末端および/または側鎖にアルコール性水酸基を少なくとも1個有するビニル系共重合体(A)成分100重量部、イソシアナート基を2個以上含有する化合物(C)成分1〜100重量部、硬化触媒として分子内にS原子を含有する有機錫系化合物(D)成分0.01〜10重量部からなる塗料用硬化性樹脂組成物を主成分として含有することを特徴とする、フィルム塗装物。 - 前記、ビニル系共重合体(A)成分100重量部に対して、一般式(II):
(R3O)4-b −Si−R4 b (II)
(式中、 R3は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、 R4は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、bは0または1を示す)で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B)成分1〜70重量部配合されてなる請求項1に記載のフィルム塗装物。 - 前記組成物において、イソシアナート基を2個以上含有する化合物(C)成分と硬化触媒(D)成分および単官能性のイソシアナート化合物(E)成分が1パックにされた硬化剤である請求項1または2に記載のフィルム塗装物。
- 前記組成物において、主剤として樹脂(A)成分と硬化触媒(D)成分を1パックにし、架橋剤としてイソシアナート基を2個以上含有する化合物(C)成分と単官能性のイソシアナート化合物(E)成分を1パックにした請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム塗装物。
- 単官能性のイソシアナート化合物(E)成分がトシルイソシアナートである請求項3または4に記載のフィルム塗装物。
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