JP3702562B2 - 無線システムの端子装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、CDMA(Code Division Multiple Accesss)方式のセルラ電話システムに用いて好適な無線システムの端末装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、擬似ランダム符号を拡散符号として用いて送信信号の搬送波をスペクトラム拡散して送信し、拡散符号の符号系列のパターンや位相を異ならせることにより、多次元接続を可能にしたCDMA方式のセルラ電話システムが注目されている。
【0003】
CDMA方式では、通信方式として、スペクトラム拡散方式が用いられている。スペクトラム拡散方式では、送信時に、搬送波が送信データにより一次変調され、更に、この一次変調された搬送波に対してPN(Pseudorandom Noise)符号が乗じられ、搬送波がPN符号により変調される。一次変調としては、例えば、平衡QPSK変調が用いられる。PN符号はランダム符号であるから、このように搬送波がPN符号により変調を受けると、その周波数スペクトラムが広げられる。
【0004】
そして、受信時には、送信側と同一のPN符号が乗じられる。受信時に、送信時と同一のPN符号で、その位相が合致していると、逆拡散が行われ、一次変調出力が得られる。この一次変調出力を復調することにより、受信データが得られる。
【0005】
スペクトラム拡散方式では、受信時に信号を逆拡散するためには、そのパターンのみならず、その位相についても、送信側と同一のPN符号が必要がある。したがって、PN符号のパターンや位相を変えることにより、多次元接続が可能となる。このように、拡散符号の符号系列のパターンや位相を異ならせることにより多次元接続を可能にしたものがCDMA方式と呼ばれている。
【0006】
セルラ電話システムとして、従来より、FDMA(Frequency Division Multiple Accesss )方式やTDMA(Time Division Multiple Accesss)方式が用いられている。ところが、FDMA方式やTDMA方式では、利用者数の急激な増大に対して対処することが困難になってきている。
【0007】
つまり、FDMA方式は、異なる周波数のチャンネルを用いて多次元接続を行うものであり、アナログ方式のセルラ電話システムでは、専ら、FDMA方式が用いられている。
【0008】
ところが、FDMA方式では、周波数利用効率が悪く、利用者数の急激な増大に対して、チャンネル数が不足しがちである。チャンネル数を増大するために、チャンネル間隔を狭くすると、隣接チャンネルの影響が受けやすくなったり、音質の劣化が生じる。
【0009】
TDMA方式は、送信データを時間圧縮することより、利用時間を分割し、同一の周波数を共有するようにしたもので、TDMA方式は、ディジタル方式のセルラ電話システムとして、現在、広く普及している。TDMA方式は、FDAM方式だけの場合に比べて、周波数利用効率が改善されるものの、チャンネル数には限界があり、利用者の急激な増大とともに、チャンネル数の不足が危惧されている。
【0010】
これに対して、CDMA方式では、耐干渉性が優れており、隣接チャンネルの影響を受けにくい。このため、周波数利用効率が上がり、より多チャンネル化が図れる。
【0011】
また、FDAM方式やTDMA方式では、マルチパスによるフェージングの影響を受けやすい。
【0012】
つまり、図7に示すように、基地局201から携帯端末202に届く信号には、基地局201からの電波が携帯端末202に直接届くパスP1の他に、基地局201からの電波がビル203Aを反射して携帯端末202に届くパスP2や、基地局201からの電波がビル203Bを反射して携帯端末202に届くパスP3等、複数のパスがある。
【0013】
基地局201からの電波が携帯端末202に直接届くパスP1に比べて、基地局201からの電波がビル203Aや203Bを反射して携帯端末202に届くパスP2及びP3は遅れが生じる。したがって、図8に示すように、携帯端末102には、異なるタイミングでパスP1からの信号S1、パスP2からの信号S2、パスP3からの信号S3が到達する。これら、複数のパスP1、P2、P3からの信号S1、S2、S3が干渉し合うと、フェージングが発生する。FDAM方式やTDMA方式では、このようなマルチパスによるフェージングの影響が問題となっている。
【0014】
これに対して、CDMA方式では、ダイバシティRAKE方式を採用することにより、マルチパスによるフェージングの影響を軽減できると共に、S/N比の向上を図ることができる。
【0015】
ダイバシティRAKE方式では、上述のような複数のパスの信号S1、S2、S3に対して、図9に示すように、複数のパスからの信号を夫々受信できる受信機221A、221B、221Cが用意される。そして、タイミング検出器222で、各パスにおける符号が捕捉され、この符号が各パスP1、P2、P3の受信機221A、221B、221Cに設定される。複数の受信機221A、221B、221Cにより、複数のパスP1、P2、P3の信号が夫々復調され、これらの受信出力がを合成回路222で合成される。
【0016】
スペクトラム拡散方式では、各パスによる干渉を受けずらい。そして、このように、複数のパスP1、P2、P3からの受信出力を夫々復調し、これら複数のパスからの復調出力を合成すれば、信号強度が大きくなり、S/N比の向上が図れると共に、マルチパスによるフェージングの影響が軽減できる。
【0017】
上述の例では、説明のために、3つの受信機221A、221B、221Cと、タイミング検出器222とによりダイバシティRAKE方式の構成を示したが、ダイバシティRAKE方式のセルラ電話端末では、通常、図10に示すように、各パスの復調出力を得るためのフィンガ251A、251B、251Cと、マルチパスの信号を検出するためのサーチャ252と、各パスの復調データを合成するためのデータコンバイナ253とが設けられる。
【0018】
図10において、入力端子250に、中間周波数に変換されたスペクトラム拡散信号の受信信号が供給される。この信号が準同期検波回路255に供給される。準同期検波回路255は乗算回路で、準同期検波回路255で、入力端子250からの信号とPLLシンセサイザ256の出力とが乗算される。PLLシンセサイザ256の出力は、周波数コンバイナ257の出力により制御され、準同期検波回路255で受信信号が直交検波される。
【0019】
準同期検波回路255の出力は、A/Dコンバータ258に供給される。A/Dコンバータ258で、この信号がディジタル信号に変換される。この際、A/Dコンバータ258のサンプリング周波数は、スペクトラム拡散に使われるPN符号の周波数よりも十分高い周波数に設定され、所謂オーバーサンプリングが行われる。
【0020】
A/Dコンバータ258の出力は、フィンガ251A、251B、251Cに供給されると共に、サーチャ252に供給される。フィンガ251A、251B、251Cは、各パスにおける信号を逆拡散し、同期捕捉し、データを復調すると共に、周波数誤差を検出するものである。
【0021】
サーチャ252は、受信信号の符号を捕捉し、フィンガ251A、251B、251Cに設定する各パスの符号を決定するものである。すなわち、サーチャ252は、受信信号にPN符号を乗算して逆拡散を行う逆拡散回路を備えている。そして、コントローラ258の制御の基に、PN符号の位相を動かし、受信符号との相関を求める。この設定された符号と受信符号との相関により、各パスの符号が決定される。
【0022】
サーチャ252の出力がコントローラ258に供給される。コントローラ258は、サーチャ252の出力に基づいて、各フィンガ251A、251B、251Cに対するPN符号の位相を設定する。フィンガ251A、251B、251Cは、これに基づいて、PN符号の位相を設定し、受信信号の逆拡散を行い、そして、各パスにおける受信信号を復調する。
【0023】
フィンガ251A、251B、251Cで復調されたデータは、データコンバイナ253に供給される。データコンバイナ253で、各パスの受信信号が合成される。この合成された信号が出力端子259から出力される。
【0024】
また、フィンガ251A、251B、251Cで、周波数誤差が検出される。この周波数誤差が周波数コンバイナ257に供給される。この周波数コンバイナ257の出力により、PLLシンセサイザ256の発振周波数が制御される。
【0025】
このようなRAKE方式の携帯電話端末においては、従来、サーチャ252として、図11に示すような構成のものが用いられている。
【0026】
図11において、入力端子301に、A/Dコンバータ258(図10)からのディジタル信号が供給される。前述したように、A/Dコンバータ258のサンプリング周波数は、PN符号の周波数よりも高い周波数とされており、オーバサンプリングとなっている。この入力端子301からのディジタル信号がデシメート回路302に供給される。デシメート回路302で、入力端子301からの信号がデシメートされる。デシメート回路302の出力が乗算回路303に供給される。
【0027】
PN符号発生回路304からは、送信側で拡散したのと同様のPN符号が発生される。PN符号発生回路304からのPN符号の位相は、コントローラ258により設定可能とされる。PN符号発生回路304からのPN符号が乗算回路303に供給される。
【0028】
乗算回路303により、デシメート回路302の出力と、PN符号発生回路304からのPN符号とが乗算される。これにより、入力端子301からの受信信号がPN符号発生回路304からの符号により逆拡散される。受信符号とPN符号発生回路304からの符号とのパターン及び位相が一致すると、受信信号の逆拡散が成立し、乗算回路303からの出力レベルが大きくなる。乗算回路303の出力がバンドパスフィルタ306を介してレベル検出回路307に供給される。レベル検出回路307により、乗算回路303の出力レベルが検出される。
【0029】
レベル検出回路307の出力が加算回路308に供給される。加算回路308で、レベル検出回路307の出力が所定回数、例えば64回分累積加算される。このように、レベル検出回路307の出力レベルを累積加算した値から、PN符号発生回路304に設定されている符号と、受信符号との相関値が得られる。この加算回路308の出力は、メモリ309に供給される。
【0030】
PN符号発生回路304からのPN符号の位相は、所定チップごとに動かされる。そして、各位相ごとに、加算回路308の出力から相関値が求められる。この相関値が各位相ごとにメモリ309に蓄えられる。そして、PN符号の1周期分の設定が終了したら、コントローラ258によりメモリ309に蓄えられていた相関値が大きい順にソートされる。そして、相関値の大きい例えば3つのパスの位相が選択される。この3つのパスの位相がフィンガ251A、251B、251C(図12)に夫々設定される。
【0031】
図12は、上述のサーチャの一例の処理を示すフローチャートである。図12において、PN符号発生回路304の位相が初期値に設定され(ステップST101)、加算回数がクリアされ(ステップST102)、加算回路308の累積加算結果がクリアされる(ステップST103)。
【0032】
PN符号発生回路304に初期位相が設定されると、設定されたPN符号により、乗算回路303で受信信号が逆拡散される。そして、加算回路308により、このとき逆拡散された信号レベルが累積加算され(ステップST104)、1回加算するごとに加算回数がインクリメントされる(ステップST105)。加算回数が所定の回数(例えば64回)に達したかどうかが判断され(ステップST106)、加算回数が例えば64回に達するまで、信号レベルの累積加算が行われる。これにより、相関値が求められる。加算回数が例えば64回に達っしたら、このときの相関値がメモリ309に蓄えられる(ステップST107)。
【0033】
PN符号発生回路304の位相が最終値まで設定されたかどうかが判断され(ステップST108)、最終値でなければ、PN符号の位相が所定値だけ進められ又は遅らされる(ステップST109)。そして、ステップST102に戻され、所定値だけ動かされたPN符号の位相で、上述と同様の処理が繰り返される。
【0034】
PN符号の位相が1周期分動かされると、最終位相となり、ステップST108で最終位相であると判断される。最終位相であると判断されると、メモリ309に記憶されている相関値がソートされ、相関値の大きい3つの値が求められる(ステップST110)。そして、この上位3つの位相がフィンガ251A、251B、251Cに夫々設定される(ステップST111)。
【0035】
【発明が解決しようとする課題】
このような携帯端末では、待機時には、基地局からの着呼の情報等を受信するために、間欠受信を行っている。上述のように、従来では、サーチャ252は、コントローラ258の制御の基に、サーチ動作を行っている。このため、従来では、間欠受信を行う際に、先ず、コントローラ258が起動され、コントローラ258の制御の基に、サーチ動作が行われている。
【0036】
つまり、図13に示すように、間欠受信時に、先ずコントローラ258が起動される(ステップST101)。そして、サーチャ252が起動され、コントローラ258の制御の基に、サーチ動作が行われる(ステップST102)。サーチ処理が終了してから、フィンガ251A、251B、251Cにサーチャ252で求められた各パスの位相が設定され、フィンガ251A、251B、251Cの動作が開始され(ステップST103)。
【0037】
したがって、図14Aに示すように、時点t11〜時点t12で受信モードになるとすると、図14Bに示すように、先ず、コントローラ258が動作され、そして、図14Cに示すように、コントローラ258の制御の基にサーチャ252が動作され、サーチ処理が終了されると、図14Dに示すように、検索されたパスに基づく位相がフィンガ251A、251B、251Cに設定され、フィンガ251A、251B、151Cが動作状態に設定される。したがって、図14Bに示すように、コントローラ258の動作時間T11は、受信モードに設定される時間(時点t11〜時点t12)に略等しくなり、コントローラ258の動作時間が長く、消費電力が大きくなる。
【0038】
したがって、この発明の目的は、間欠受信時のコントローラの動作時間を短縮し、消費電力の低減を図れるようにした端末装置を提供することにある。
【0039】
【課題を解決するための手段】
この発明は、拡散符号によりスペクトラム拡散して送信し、拡散符号の符号系列のパターンや位相を異ならせることにより、多次元接続を可能とした無線システムにおいて、スリープ状態と受信状態とを交互に行う間欠受信を行うようにした端末装置において、
マルチパスとなっている受信信号から個々のパスを検索するサーチャと、
検索されたパスの夫々の受信信号を逆拡散してデータを復調する複数のフィンガと、
サーチャおよびフィンガを制御する制御部と、
複数のフィンガの出力を合成するコンバイナとを備え、
サーチャは、
送信時の拡散符号と同一のパターンで、順次その位相がシフトされる符号を発生する符号発生手段と、
符号発生手段が発生する符号の位相を設定するタイミング発生手段と、
受信信号と符号発生手段からの符号とを乗算して逆拡散を行う逆拡散手段と、
符号発生手段で設定された位相毎に、逆拡散手段の出力から相関値を求める相関値検出手段と、
相関検出手段で検出された相関値の中から相関値の大きいものを複数個選択する手段とを有し、
スリープ状態から受信状態になると、制御部が停止している間に、タイミング発生手段によって符号の位相の設定がなされ、位相の設定がされた後に制御部が動作を開始してフィンガを制御するようにした無線システムの端末装置である。
【0042】
間欠受信時に、スリープ状態となる前の制御部の動作中に、次の受信状態の制御情報が設定される。次の受信状態に入っても、データの処理が必要になる前は、コントローラの動作を停止させるようする。これによりコントローラの動作時間が短縮化され、消費電力の低減を図ることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明が適用できるCDMA方式の携帯電話システムの携帯端末の一例を示すものである。この携帯端末では、受信方式として、複数のパスからの信号を同時に受信し、これらを合成するようにしたダイバシティRAKE方式が採用されている。
【0044】
図1において、送信時には、マイクロホン1に音声信号が入力される。この音声信号は、A/Dコンバータ2に供給され、A/Dコンバータ2によりアナログ音声信号がディジタル音声信号に変換される。A/Dコンバータ2の出力が音声圧縮回路3に供給される。
【0045】
音声圧縮回路3は、ディジタル音声信号を圧縮符号化するものである。圧縮符号化方式としては、種々のものが提案されているが、例えばQCELP(Qualcomm Code Excited Linear Coding )のような、話者の声の性質や、通信路の混雑状況により、複数の符号化速度が選択できるものを用いることができる。QCELPでは、話者の声の性質や通信路の混雑状況によって4通りの符号化速度(9.6kbps、4.8kbps、2.4kbps、1.2kbps)が選択でき、通話品質を保つのに最低限の速度で符号化が行えるようになっている。勿論、音声圧縮方式は、これに限定されるものではない。
【0046】
音声圧縮回路3の出力が畳込み符号化回路4に供給される。畳込み符号化回路4により、送信データに対して、畳込み符号のエラー訂正コードが付加される。畳込み符号化回路4の出力がインターリーブ回路5に供給される。インターリーブ回路5により、送信データがインターリーブされる。インターリーブ回路5の出力がスペクトラム拡散回路6に供給される。
【0047】
スペクトラム拡散回路6により、搬送波が一次変調され、更に、PN符号で拡散される。すなわち、例えば平衡QPSK変調により、送信データの一次変調が行われ、更に、PN符号が乗じられる。PN符号はランダム符号であるから、このようにPN符号を乗じると、搬送波の周波数帯域が広げられ、スペクトラム拡散が行われる。なお、送信データの変調方式としては、例えば平衡QPSK変調を用いられているが、種々のものが提案されており、他の変調方式を用いるようにしても良い。
【0048】
スペクトラム拡散回路6の出力は、バンドパスフィルタ7を介して、D/Aコンバータ8に供給される。D/Aコンバータ8の出力がRF回路9に供給される。
【0049】
RF回路9には、PLLシンセサイザ11から局部発振信号が供給される。RF回路9により、D/Aコンバータ8の出力とPLLシンセサイザ11からの局部発振信号とが乗じられ、送信信号の周波数が所定の周波数に変換される。RF回路9の出力が送信アンプ10に供給され、電力増幅された後、アンテナ12に供給される。そして、アンテナ12からの電波が基地局に向けて送られる。
【0050】
受信時には、基地局からの電波がアンテナ12により受信される。この基地局からの電波は、建物等の反射を受けるため、マルチパスを形成して、携帯端末のアンテナ12に到達する。また、携帯端末を自動車等で使用する場合には、ドップラー効果により、受信信号の周波数が変化することがある。
【0051】
アンテナ12からの受信出力は、RF回路20に供給される。RF回路20には、PLLシンセサイザ11から局部発振信号が供給される。RF回路20により、受信信号が所定周波数の中間周波数信号に変換される。
【0052】
RF回路20の出力が中間周波回路21を介して、準同期検波回路22に供給される。準同期検波回路22には、PLLシンセサイザ23の出力が供給される。PLLシンセサイザ23からの出力信号の周波数は、周波数コンバイナ32の出力により制御されている。準同期検波回路22により、受信信号が直交検波される。
【0053】
準同期検波回路22の出力は、A/Dコンバータ24に供給される。A/Dコンバータ24により、準同期検波回路22の出力がディジタル化される。このとき、A/Dコンバータ24のサンプリング周波数は、スペクトラム拡散に使われているPN符号の周波数よりも高い周波数に設定されており、所謂オーバーサンプリングとされている。A/Dコンバータ24の出力がフィンガ25A、25B、25Cに供給されると共に、サーチャ28に供給される。
【0054】
前述したように、受信時には、マルチパスの信号が受信される。フィンガ25A、25B、25Cは、夫々、これらマルチパスの受信信号にPN符号を乗算して逆拡散を行い、逆拡散出力からデータを復調する。更に、フィンガ25A、25B、25Cからは、各パスでの受信信号レベルと、各パスでの周波数誤差が出力される。
【0055】
サーチャ28は、受信信号の符号を捕捉し、フィンガ25A、25B、25Cに設定する各パスの符号を決定するものである。すなわち、サーチャ28は、受信信号にPN符号を乗算して逆拡散を行う逆拡散回路を備えている。そして、PN符号の位相を動かし、受信符号との相関を求める。この設定された符号と受信符号との相関値により、各パスの符号が決定される。コントローラ29により決定された符号がフィンガ25A、25B、25Cに設定される。
【0056】
フィンガ25A、25B、25Cにより復調された各パスの受信データは、データコンバイナ30に供給される。データコンバイナ30により、各パスの受信データが合成される。このデータコンバイナ30の出力がAGC回路33に供給される。
【0057】
また、フィンガ25A、25B、25Cにより、各パスにおける信号強度が求められる。フィンガ25A、25B、25Cからの各パスにおける信号強度は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)コンバイナ31に供給される。RSSIコンバイナ31により、各パスにおける信号強度が合成される。このRSSIコンバイナ31の出力がAGC回路33に供給され、受信データの信号レベルが一定となるように、AGC回路33のゲインが制御される。
【0058】
また、フィンガ25A、25B、25Cからの各パスにおける周波数誤差が周波数コンバイナ32に供給される。周波数コンバイナ32により、各パスにおける周波数誤差が合成される。この周波数コンバイナ32の出力がPLLシンセサイザ11及び23に供給され、周波数誤差に応じて、PLLシンセサイザ11及び23の周波数が制御される。
【0059】
AGC回路33の出力がデインターリーブ回路34に供給される。デインターリーブ回路34により、送信側のインターリーブに対応して、受信データがデインターリーブされる。デインターリーブ回路34の出力がビタビ復号回路35に供給される。ビタビ復号回路35は、軟判定と最尤復号とにより、畳込み符号を復号するものである。ビタビ復号回路35により、エラー訂正処理が行われる。このビタビ復号回路35の出力が音声伸長回路36に供給される。
【0060】
音声伸長回路36により、例えばQCELPにより圧縮符号化されて送られてきた音声信号が伸長され、ディジタル音声信号が復号される。このディジタル音声信号がD/Aコンバータ37に供給される。D/Aコンバータ37によりディジタル音声信号がアナログ音声信号に戻される。このアナログ音声信号がスピーカ38に供給される。
【0061】
図2は、この発明が適用された携帯電話端末におけるサーチャ28の構成を示すものである。図2において、入力端子51に、A/Dコンバータ24(図1)からのディジタル信号が供給される。前述したように、A/Dコンバータ24のサンプリング周波数は、PN符号の周波数よりも高い周波数とされており、オーバサンプリングとなっている。この入力端子51からのディジタル信号は、フィンガ25A、25B、25Cに供給されると共に、サーチャ28のデシメート回路52に供給される。デシメート回路52で、入力端子51からの信号がデシメートされる。デシメート回路52の出力が乗算回路53に供給される。
【0062】
PN符号発生回路54からは、送信側で拡散したのと同様のPN符号が発生される。PN符号発生回路54からのPN符号の位相は、タイミング発生回路50により設定可能とされる。PN符号発生回路54からのPN符号が乗算回路53に供給される。
【0063】
乗算回路53により、デシメート回路52の出力と、PN符号発生回路54からのPN符号とが乗算される。これにより、入力端子51からの受信信号がPN符号発生回路54からの符号により逆拡散される。受信符号とPN符号発生回路54からの符号とのパターン及び位相が一致すると、受信信号の逆拡散が成立し、乗算回路53からの出力レベルが大きくなる。乗算回路53の出力がバンドパスフィルタ56を介してレベル検出回路57に供給される。レベル検出回路57により、乗算回路53の出力レベルが検出される。
【0064】
レベル検出回路57の出力が加算回路58に供給される。加算回路58で、レベル検出回路57の出力が所定回数、例えば64回分累積加算される。このように、レベル検出回路57の出力レベルを累積加算した値から、PN符号発生回路54に設定されている符号と、受信符号との相関値が得られる。この加算回路58の出力は、メモリ59に供給されると共に、最高値検出回路60に供給される。最高値検出回路60により、相関値の最高値が求められ、この相関値の最高値が最高値メモリ61に保存される。
【0065】
PN符号発生回路54からのPN符号の位相は、タイミング発生回路50からのタイミング信号により、所定チップ(例えばチップ或いは1/2チップ)ごとに動かされる。そして、各位相ごとに、加算回路58の出力から相関値が求められる。この相関値がメモリ59に蓄えられる。そして、PN符号の1周期分の設定が終了したら、相関値の大きい順に例えば3つの位相が選択され、これがフィンガ25A、25B、25Cに設定される。
【0066】
このように、相関値の大きい順に例えば3つの位相を選択して3つのパスを設定する際に、最高値メモリ61に保持されている最高値が用いられる。これにより、コントローラ29での複雑なアルゴリズムによるソート処理が不要になり、コントローラ29の負担が軽減される。
【0067】
つまり、ソート処理のアルゴリズムとしては、クイックソートやヒープソート等が知られているが、これらのアルゴリズムは多くの比較演算を必要とし、コントローラ29の大きな負担となる。これに対して、相関値の最高値が分かっていれば、この最高値と比較することにより、相関値の高い上位n個のものを簡単に見つけることができる。したがって、相関値の最高値を最高値メモリ61に保持しておくことにより、コントローラ29の負担を軽減できる。
【0068】
図3は、この発明が適用された携帯電話端末におけるフィンガ25A、25B、25Cの構成を示すものである。図5において、入力端子71に、A/Dコンバータ24(図1)からのディジタル信号が供給される。前述したように、A/Dコンバータ24のサンプリング周波数は、PN符号の周波数よりも高い周波数とされており、オーバーサンプリングとなっている。
【0069】
この入力端子71からのディジタル信号がデシメート回路72、73、74に供給される。デシメート回路72には、クロック制御回路75からのクロックが遅延回路76を介して供給され、デシメート回路73には、クロック制御回路75からのクロックがそのまま供給され、デシメート回路74には、クロック制御回路75からのクロックが遅延回路76、77を介して供給される。遅延回路76及び77は、1/2チップ分の遅延量を有している。デシメート回路72、73、74で、入力端子71からのディジタル信号がデシメートされる。
【0070】
デシメート回路72、73、74の出力が乗算回路78、79、80に夫々供給される。乗算回路78、79、80には、PN符号発生回路81からのPN符号が供給される。PN符号発生回路81からは、送信側で拡散したのと同様のPN符号が発生される。
【0071】
乗算回路78により、デシメート回路72の出力とPN符号発生回路81の出力とが乗算される。受信符号とPN符号発生回路81からの符号のパターン及び位相が合致していれば、乗算回路78からは逆拡散出力が得られる。この乗算回路78の出力がバンドパスフィルタ82を介して復調回路83に供給される。
【0072】
復調回路83で受信信号が復調され、復調回路83からは、復調データが出力される。この復調データが出力端子84から出力される。また、復調回路81で、受信信号の信号レベルが検出される。この信号レベルが信号が出力端子85から出力される。また、復調回路81で、周波数誤差が検出される。この周波数誤差が出力端子86から出力される。
【0073】
乗算回路79及び80により、デシメート回路73及び74の出力とPN符号発生回路81の出力とが乗算される。デシメート回路73には、クロック制御回路75からのクロックがそのまま供給され、デシメート回路74には、クロック制御回路75からのクロックが1チップ分遅延されて供給されているので、デシメート回路72の出力をセンタ位相とすると、デシメート回路73及び74からは、夫々、1/2チップ分位相が進んだ出力及び1/2チップ分位相が遅れた出力が得られる。乗算回路79及び80により、1/2チップ進んだ及び遅れた位相の受信符号と、PN符号発生回路81の符号とが乗算され、1/2チップ進んだ及び遅れた位相の逆拡散出力が得られる。この乗算回路79及び80の出力は、DLL(Delay Locked Loop )を構成するのに用いられる。
【0074】
すなわち、乗算回路79及び80の出力は、バンドパスフィルタ87及び88を夫々介して、レベル検出回路89及び90に夫々供給される。レベル検出回路89及び90からは、1/2チップ進んだ及び遅れた位相の逆拡散出力レベルが得られる。レベル検出回路89及び90の出力が減算回路91に供給される。
【0075】
減算回路91で、1/2チップ進んだ位相の逆拡散出力レベルと、1/2チップ遅れた位相の逆拡散出力レベルとが比較される。この比較出力は、ループフィルタ92を介して、クロック制御回路75に供給される。クロック制御回路75で、減算回路91の出力がゼロになるように、デシメート回路72〜74に与えられるクロックが制御される。
【0076】
例えば、A/Dコンバータ24で8倍のオーバーサンプリングをしたとし、デシメート回路72〜74で1/8にデシメートする場合、デシメート回路72〜74からは、8サンプル毎に信号が出力される。減算回路91の出力から、今までのタイミングでは遅過ぎると判断されるような場合には、8サンプルおきに出力していたタイミングが、7サンプルおきに出力されるように制御される。これにより、位相が進められたことになる。
【0077】
PN符号発生回路81には、入力端子93から初期位相データが供給される。この初期位相データは、サーチャ28で検出されたパスに基づいて設定される。その後の符号の変動に対しては、上述のDLLループが働き、受信符号が捕捉される。
【0078】
図2に示したように、この発明が適用された携帯端末のサーチャ28では、各種のタイミング信号を発生するタイミング発生回路50が設けられており、このタイミング発生回路50により、コントローラ29を用いずに、サーチ処理を行うことができる。また、それまでの符号の位相は、設定値保持メモリ63に保存される。
【0079】
このように、この発明が適用された携帯端末のサーチャ28では、コントローラ29を用いずに、サーチ処理を行うことができるため、コントローラ29を起動させる前に、サーチ処理を済ませておくことができる。
【0080】
つまり、この発明が適用された携帯端末では、図4に示すように、間欠受信時に、サーチャ28が起動され(ステップST1)、サーチャ28でのサーチ処理が終了してから、コントローラ29の動作が開始される(ステップST2)。そして、サーチャ28により各パスが捕捉された後に、フィンガ25A、25B、25Cにサーチャで捕捉された位相が設定され、フィンガ25A、25B、25Cの動作が開始される(ステップST3)。このように、サーチ時にはコントローラ29は動作しておらず、サーチが終了してから、コントローラ29の動作時間が開始されるので、コントローラ29が起動されている時間が短くなり、消費電力が低減される。
【0081】
すなわち、図5Aに示すように、時点t1 〜時点t2 で受信モードに設定されると、図5Cに示すように、先ず、サーチャ28が動作される。サーチ処理が終了されると、図5Bに示すように、コントローラ29の動作が開始される。そして、図5Dに示すように、サーチャ28で検索されたパスに基づく位相がフィンガ25A、25B、25Cに設定され、フィンガ25A、25B、25Cが動作状態に設定される。
【0082】
したがって、図5Aに示すように、時点t1 〜時点t2 で受信モードに設定される場合、コントローラ29が動作状態となる時間T1 は、サーチャ28でのサーチ動作が終了してから、フィンガ25A、25B、25Cで復調動作が完了するまでの間となり、コントローラ29の動作時間が短くなり、消費電力が低減される。
【0083】
なお、図6Aに示すように、受信状態になると、先ず、図6Cに示すように、サーチャ28が動作し、サーチャ28の動作が終了すると、図6Bに示すように、コントローラ29の動作を開始し、図6Dに示すように、サーチャ28で検索されたパスに基づく位相がフィンガ25A、25B、25Cに設定すると共に、コントローラ29の動作を中断して、フィンガ25A、25B、25Cを動作状態に設定し、受信動作が終了する直前に、コントローラ29の動作を開始し、次の受信時の動作の準備をしておくようにすると、更に、コントローラ29の動作時間が短くなり、消費電力の低減が図れる。
【0084】
【発明の効果】
この発明によれば、サーチャにタイミング発生回路が設けられ、タイミング発生回路によって制御部が動作を停止している間でも、符号発生手段が発生する符号の位相の設定を行うことができるので、これによりコントローラの動作時間が短縮化され、消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明が適用できるCDMA方式の携帯電話端末の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明が適用できるCDMA方式の携帯電話端末におけるサーチャの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】この発明が適用できるCDMA方式の携帯電話端末におけるフィンガの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】この発明が適用できるCDMA方式の携帯電話端末の説明に用いるフローチャトである。
【図5】この発明が適用できるCDMA方式の携帯電話端末の説明に用いるタイミング図である。
【図6】この発明が適用できるCDMA方式の携帯電話端末の説明に用いるタイミング図である。
【図7】マルチパスの説明に用いる略線図である。
【図8】マルチパスの説明に用いる波形図である。
【図9】ダイバシティRAKE方式の説明に用いるブロック図である。
【図10】ダイバシティRAKE方式の受信機の一例のブロック図である。
【図11】従来のサーチャの一例のブロック図である。
【図12】従来のサーチャの一例の説明に用いるフローチャートである。
【図13】従来の端末装置の説明に用いるフローチャートである。
【図14】従来の端末装置の説明に用いるタイミング図である。
【符号の説明】
25A、25B、25C・・・フィンガ、28・・・サーチャ、30・・・データコンバイナ
Claims (1)
- 拡散符号によりスペクトラム拡散して送信し、拡散符号の符号系列のパターンや位相を異ならせることにより、多次元接続を可能とした無線システムにおいて、スリープ状態と受信状態とを交互に行う間欠受信を行うようにした端末装置において、
マルチパスとなっている受信信号から個々のパスを検索するサーチャと、
上記検索されたパスの夫々の受信信号を逆拡散してデータを復調する複数のフィンガと、
上記サーチャおよび上記フィンガを制御する制御部と、
上記複数のフィンガの出力を合成するコンバイナとを備え、
上記サーチャは、
送信時の拡散符号と同一のパターンで、順次その位相がシフトされる符号を発生する符号発生手段と、
上記符号発生手段が発生する符号の位相を設定するタイミング発生手段と、
受信信号と上記符号発生手段からの符号とを乗算して逆拡散を行う逆拡散手段と、
上記符号発生手段で設定された位相毎に、上記逆拡散手段の出力から相関値を求める相関値検出手段と、
上記相関検出手段で検出された相関値の中から相関値の大きいものを複数個選択する手段とを有し、
スリープ状態から受信状態になると、上記制御部が停止している間に、上記タイミング発生手段によって上記符号の位相の設定がなされ、上記位相の設定がされた後に上記制御部が動作を開始して上記フィンガを制御するようにした無線システムの端末装置。
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