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JP3794998B2 - メタクリル系樹脂成形材料の製造方法 - Google Patents

メタクリル系樹脂成形材料の製造方法 Download PDF

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JP3794998B2
JP3794998B2 JP2002251606A JP2002251606A JP3794998B2 JP 3794998 B2 JP3794998 B2 JP 3794998B2 JP 2002251606 A JP2002251606 A JP 2002251606A JP 2002251606 A JP2002251606 A JP 2002251606A JP 3794998 B2 JP3794998 B2 JP 3794998B2
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    • B29C48/40Means for plasticising or homogenising the moulding material or forcing it through the nozzle or die using screws surrounded by a cooperating barrel, e.g. single screw extruders using two or more parallel screws or at least two parallel non-intermeshing screws, e.g. twin screw extruders

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水を分散媒体とする懸濁重合法により形成されたビーズ状重合物を経由して、メタクリル系樹脂成形材料を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
懸濁重合は、単量体(モノマー)を溶解しないか、または殆ど溶解しない分散媒体(主として水)中に単量体を分散させ、通常は該分散媒体に不溶または難溶性で、且つ単量体に易溶性の重合開始剤を用いて、分散媒体中に懸濁された単量体小滴内で重合反応を進行させる重合様式である。
【0003】
この懸濁重合においては、重合反応は単量体小滴内で進行し、重合熱が分散媒体によって除かれるため、温度の調節が容易で、通常は生成重合体の分子量は大きく、且つ濾過等の簡単な操作によってビーズないし微粒子状の重合体が容易に得られるという特徴があるため、工業的に広く使用されている。
【0004】
上記した懸濁重合法のうち、水を分散媒体とする懸濁重合法は、特にビニル系単量体の重合方法として有用な重合物の製造技術である。
【0005】
このビニル系単量体の1種であるメタクリル酸メチルを主原料とするメタクリル系樹脂成形材料は、一般的に、極めて優れた透明性と耐候性、表面光沢の良さ、優れた耐薬品性、高い成形性と機械加工性、強靭さ、染顔料による着色性の良さ、および人体への低毒性等の特長を有する。このような特長を活かし、該メタクリル系樹脂成形材料は、テールランプ、バックパネル等の自動車部品、ランプカバーやルーバー等の照明器具、インディケーター、メーターカバー等のオーディオ部品、装飾品、日用雑貨類、医療用器具部品など多くの分野で使用されている。
【0006】
従来より、水を分散媒体とする懸濁重合法を利用してメタクリル系樹脂成形材料を製造する工場においては、一般的に、重合生成物(ビーズ状)へ少なくとも脱水、洗浄、第2回目の脱水、および乾燥の各処理を施した上で、得られた乾燥処理物を、押出機を用いてペレット粒子へ加工する製造方法が行われている。更に、この乾燥処理においては、ビーズの含水率を1.5質量%D.B.(D.B.:dry base, 乾燥後質量に対する比率)未満まで低減させる乾燥条件が用いられている。
【0007】
押出処理前に、このような乾燥処理を行う理由は、押出機内へ入るビーズ中の水分量に関しては、このレベルまでの水分量の低減化が、溶融樹脂の脈動流現象抑制による押出機運転安定性および生産性の向上、および着色防止を始めとする製品品質向上などの観点から好ましいためである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、メタクリル系樹脂の飽和吸水率が一般に2.1質量%D.B.付近であることから、メタクリル系樹脂ビーズの含水率を1.5質量%D.B.未満まで低減させるための乾燥においては、ビーズ表面付近の付着・吸水分のみならず内部の減率乾燥(すなわち、乾燥速度が含水率の低下とともに低下する乾燥)領域にある吸水分までをも減少させることが必要となる。
【0009】
したがって、このような含水率1.5質量%D.B.未満まで低減させる乾燥は、比較的高い乾燥能力を有する乾燥機を使用し、且つ比較的長時間の乾燥処理を行うことを必要とする。このため、従来の乾燥方法を用いた場合には、乾燥工程に関する設備投資費用が高額になり、しかも、その乾燥工程の生産性が低い等の問題が発生しており、これらの問題に関する改善策が強く求められている。
【0010】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題を解消したメタクリル系樹脂成形材料の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、優れた品質のメタクリル系樹脂成形材料を低コストで、且つ高い生産性で製造することができるメタクリル系樹脂成形材料の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、従来よりも含水率が高いメタクリル系樹脂成形材料を使用した場合であっても、特定の条件下で該材料の押出処理を行うことにより、生成物の品質を実質的に低下させることなく、しかも製造コストを低減できることを見出した。
【0013】
本発明のメタクリル系樹脂成形材料の製造方法は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、メタクリル酸メチルを主成分とする分散相を、水を分散媒体として懸濁重合して得られるビーズ状重合物を押出成形してメタクリル系樹脂成形材料を製造する方法において;表面付着水を含めた含水率が1.5〜4.0質量%D.B.(「D.B.」は dry base, 乾燥後質量に対する比率である)のビーズ状重合物を、ベント口を2つ以上有し、且つ少なくともシリンダ内部表面、スクリュ表面およびダイス内部表面が、マルテンサイト系、オーステナイト系、または析出硬化系のステンレス鋼でCr元素含有率が13%以上の材料で構成されている2軸押出機を用いて押出成形することを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0015】
(メタクリル系樹脂成形材料の製造方法)
【0016】
本発明においては、少なくともメタクリル酸メチルを主成分とする分散相を、水を主成分とする分散媒体を用いて懸濁重合してビーズ状重合物を得て、該ビーズ状重合物を押出成形してメタクリル系樹脂成形材料を製造する。
【0017】
(分散相)
【0018】
本発明において、懸濁重合に供すべき反応系ないし分散系(懸濁物)は、通常は分散相と、該分散相を分散させるための分散媒体とを含む。本発明において、この分散相は、少なくともメタクリル酸メチルを主成分として含む。また、上記分散媒体は、水そのものであるか、または水を主成分として含む混合媒体である。
【0019】
(分散媒体たる水)
【0020】
水は、懸濁重合用分散媒体として工業的には最も一般に使用されている。本発明においては、重合物の純度を向上させるために、必要に応じて、ろ過・脱イオン・蒸留などの精製処理を施した水を使用することができる。
【0021】
(分散相)
【0022】
本発明において、懸濁重合に供すべき分散相は少なくともメタクリル酸メチルを含むが、必要に応じて、他の単量体を1種以上含む単量体混合物であってもよい。
【0023】
(共重合可能な単量体)
【0024】
本発明において、メタクリル酸メチルとともに懸濁重合に使用可能な単量体は特に制限されないが、メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体であることが好ましい。
【0025】
メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基を有するビニル化合物類;N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN置換マレイミド化合物類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
これらの単量体と共重合する場合であっても、本発明においては、メタクリル酸メチルを主成分とする分散相を用いる。本発明においては、分散相におけるメタクリル酸メチルの割合は、(メタクリル酸メチル+他の単量体の合計を基準=100質量%として)50質量%以上であることが好ましく、更には60質量%以上であることが好ましい。メタクリル酸メチルの割合が50%質量未満の場合は、メタクリル樹脂の特長である優れた透明性や表面光沢、強靭さの面での性能低下が生じる傾向がある。
【0027】
(重合用助剤)
【0028】
本発明において、懸濁重合に供すべき反応系は、上記した分散相および分散媒体を少なくとも含む。必要に応じて、該反応系において重合用助剤を使用することもできる。
【0029】
単量体と併用できる重合用助剤としては、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ラウロイルなどラジカル発生源である重合開始剤;n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸カリウム−メタクリル酸メチル共重合体などの分散剤(単量体の水中分散を安定化させる目的の界面活性剤);硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの分散助剤;その他の耐候性改質剤や離型助剤などの各種助剤類などが挙げられるが、これらに限られるものではない。それら単量体群、助剤群から目的に応じ適宜選定されたものを原料とし、反応容器内で懸濁重合を行うことができる。この反応容器は、重合温度制御機能と攪拌機能とを有する反応容器内であることが好ましい。
【0030】
(重合温度)
【0031】
懸濁重合の重合温度は、特に限定されないが、0〜200℃の範囲が好ましく、更には、5〜150℃の範囲が好ましい。
【0032】
(ビーズ状重合物)
【0033】
本発明において、懸濁重合反応により生成する重合物の形状は、通常は真球に近いビーズ状である。重合1バッチで生成するビーズの粒子径には分布があるが、重量平均粒子径は50〜1000μmの範囲内に入ることが一般的である。
【0034】
(重合容器からの送液)
【0035】
重合で生成するスラリーは、重合容器中から脱水工程へ直接送液することも可能であるが、高生産性化と工程運転安定化の観点からは、攪拌機能を有するスラリー一時貯蔵槽内へ重合容器中から全量移液した上で、該スラリー一時貯蔵槽から続く脱水工程へスラリーを継続的に一定速度で送液することが好ましい。
【0036】
(脱水工程)
【0037】
脱水工程では、スラリー中から水を分離除去しビーズを取り出す目的で脱水機が使用できる。この脱水機としては、各種の市販脱水機が使用できる。使用できる脱水機を例示すると、遠心力を用いて濾材を通し水を振り絞る機構のもの、遠心分離の原理を応用し比重差でビーズと水を分離する機構のもの、多孔ベルト上で水を吸引除去する機構のもの等があるが、これらに限定するものではない。
【0038】
(洗浄処理)
【0039】
洗浄処理は、ビーズ状重合物の純度を高めることでメタクリル樹脂の優れた特長を引き出すことを目的とする工程操作であり、脱水処理の次に行うことが効率的であり望ましい。ビーズの洗浄処理方法を例示すると、脱水処理されたビーズへ水を加えて再度スラリー化させ槽内で攪拌混合する方法、洗浄機能をも有する脱水機内でビーズの脱水後に水洗浄を行う方法、及びそれら両方を組み合わせる方法などが挙げられる。
【0040】
(第2回目の脱水処理)
【0041】
ビーズの洗浄処理を行った後は、第2回目の脱水処理を経ることが好ましい。ビーズ洗浄処理後の第2回脱水処理用に使用できる脱水機は、先に挙げた重合後の脱水用に使用できる脱水機群と同様である。
【0042】
重合後用脱水機と洗浄後第2回脱水用脱水機とは同一物の1基で済ますこと、同一機種2基をそれぞれの工程で使用すること、異なる2機種をそれぞれの工程で使用することの何れもが可能である。製品品質・設備投資費・生産性・運転コストなどの観点から、これらのうちで目的に沿う方式を選定すれば良い。製品品質と生産性とを特に重視する場合は、脱水工程設備と第2回脱水工程設備を別々として、それぞれの工程へ脱水機を設置することが好ましい。
【0043】
(ビーズの含水率)
【0044】
通常、脱水処理された後のビーズ表面には付着水が存在しており、更にビーズ内部は飽和吸水に近い状態である。脱水処理後ビーズの含水率は、ビーズの組成や粒子径、脱水運転条件などにより増減する可能性があるが、良好な脱水運転条件の下では、通常は表面付着水を含めて4〜10質量%D.B.の範囲内である。
【0045】
(乾燥処理)
【0046】
第2回脱水処理の次には、ビーズ状重合物の含水率を更に下げる目的で、乾燥処理を行う。ビーズの乾燥処理に使用できる乾燥機を例示すると、第1群の乾燥機群として縦方向に回転する容器内で減圧下加温して乾燥処理を行うもの、多孔板の下側から加温空気を吹き込み上側のビーズを流動させながら加温下で乾燥処理を行うものなど、ビーズを流動させながら乾燥機内滞在時間を適宜設定できることで、ビーズの含水率を1.5質量%D.B.未満まで低下させることが可能な乾燥機群が挙げられる。しかしながら、これらの乾燥機群は、比較的高額の設備投資費用を要する点や、乾燥所要時間が長いために生産性が低い傾向がある。したがって、本発明におけるこれらの乾燥機群の使用は、必ずしも必要ではない。
【0047】
次に第2群の乾燥機群として、加温空気を用いてビーズを搬送しながら同時に乾燥処理を行う方式のものが挙げられる。この第2群の乾燥機群には、気流乾燥機が含まれる。この気流乾燥機は、ビーズ空輸配管と兼用でき比較的少額の費用で設備化できる点と生産性が高い点とを特長とするが、その反面、ビーズの含水率を1.5質量%D.B.未満まで低下させることが困難である。このため、従来は水を分散媒体とする懸濁工場におけるメタクリル樹脂用乾燥設備としては性能的に不充分なものと見なされていた。これに対して、本発明によれば含水率が1.5〜4.0質量%D.B.のビーズから押出成形により優れた品質のメタクリル系樹脂成形材料ペレットを生産性良く得ることが可能であるために、ビーズ乾燥を、例えば気流乾燥機のみを用いて行うことが可能になった。
【0048】
本発明においては、この気流乾燥機が好適に使用可能であるが、含水率が1.5〜4.0質量%D.B.のビーズを得ることが可能である限り、乾燥機の方式、種類、台数等は特に制限されない。
(篩別)
【0049】
乾燥処理されたビーズは、押出工程へ送り込まれる前に、目的に合った粒子サイズのものだけを取り出す目的で、篩別器を通過させることができる。乾燥工程を経た含水率が1.5〜4.0質量%D.B.の範囲内のメタクリル樹脂ビーズは、通常は、篩別器を通して押出機ホッパー内へ安定的に供給することができる。他方、含水率が4.0質量%D.B.を超えるビーズは流動性が低いために、輸送配管内や押出機ホッパー内などでブリッヂによる運転トラブルを起こしやすく、更に続く押出工程では溶融樹脂脈動流現象が発生しやすいために押出機運転安定化が困難となる傾向がある。
【0050】
(含水率)
【0051】
本発明においては、ビーズ状重合物は、押出機に供給される直前の状態で、表面付着水を含めた含水率が1.5〜4.0質量%D.B.である。この含水率は、更には1.5〜2.5質量%D.B.であることが好ましい。含水率は、後述する条件の下で、「カールフィッシャー滴定法」により測定することができる。
【0052】
(押出機)
【0053】
本発明においては、ベント口を2つ以上有し、且つ少なくともシリンダ内部表面、スクリュ表面およびダイス内部表面のアクリル酸に対する耐食性がSUS420J2と同等以上の材料で構成されている2軸押出機である限り、特に制限されない。
【0054】
本発明で好適に使用可能な押出機は、市販の押出機(例えば、株式会社日本製鋼所製TEXシリーズ、東芝機械株式会社製TEMシリーズなど)を適宜改良することによって得ることができる。樹脂に対する充分な搬送力を得るためにスクリュは2軸の回転押出機である。この2軸の回転方式は、同方向回転式および異方向回転式のいずれも使用可能であるが、運転安定性の点からは、同方向回転式がより好ましい。
【0055】
(ベント口)
【0056】
本発明において、押出機内から揮発成分を除去するためのベント口は2つ以上あることが好ましい。ベント口が1つ以下の場合は、押出機内発生水蒸気が引き起こす溶融樹脂脈動流現象による押出し機運転不安定化、および/又は、押出機ダイス口から出る溶融樹脂ストランドがストランド中残留水分により発泡することによるストランド切れによる運転トラブルやペレット形状異常や切粉派生量増加による製品品質低下などの問題が起こりやすいために好ましくない。最も好ましいベント口数は2〜3である。ベント口が多すぎる場合は、押出機の長さL/D(L=押出機長さ、D=スクリュ直径)が必要以上に増すことで、樹脂の押出機内滞留時間が長くなり、樹脂の劣化問題の懸念が強まる傾向がある。
【0057】
(シリンダ数とベント口設置位置)
【0058】
本発明において、押出機のシリンダ数とベント口設置位置は、特に制限されない。これらの好適な1例を挙げて説明すると、押出機の構成を示す模式図たる図1を参照して、例えば、ホッパー部から下流側のシリンダは9部で構成することができる。この場合は、ベント口を有するシリンダの位置は、例えばC4、C6、およびC8の3箇所にできる。図1において、ホッパーはシリンダC1に接続され、シリンダC9はダイスに接続されている。
【0059】
(シリンダ内部表面等の材料)
【0060】
押出機のシリンダ内部表面、スクリュ表面とダイス内部表面のそれぞれを構成する材料群は、アクリル酸に対する耐食性がSUS420J2と同等以上の材料の中から選定する。SUS420J2とは工業材料に関するJIS規格(JIS G4304−1991)で規定されており、化学成分比がC:0.26〜0.40%、Si:1%以下、Mn:1%以下、Cr:12〜14%、P:0.040%以下、S:0.030%以下であるステンレス鋼である。
【0061】
アクリル酸に対する耐食性がSUS420J2より劣る材料を使用した場合は、押出機内の溶融樹脂や発生ガスなどとの接触部の耐食性が低い点と、ペレットが帯色しての製品品質問題が発生しやすい点などの問題のため実用的でない。アクリル酸に対する耐食性がSUS420J2と同等以上で使用できる材料としては、マルテンサイト系、オーステナイト系、析出硬化系のステンレス鋼でCr元素含有率が13%以上のものが挙げられる。それらの中でNi元素を含有するものは耐食性が更に向上するので、性能面ではより好ましい。本発明において好適に使用できるステンレス鋼の具体名を挙げると、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS420J2、SUS631などがある。これら各材料もJIS規格(JIS G4304−1991)が定められている。ステンレス鋼以外では、ステンレス鋼とNi、Cr、Cu、Mo、Siから選ばれた1種以上の金属との合金類、Crなどを挙げることができる。
【0062】
(耐食性の評価)
【0063】
押出機用材料のアクリル酸に対する耐食性の評価方法を説明すると、アクリル酸を入れ所定温度に調節された密閉容器内の気相部にSUS420J2と他の評価したい材料の試片とを設置し、所定時間経過後の各試片の腐食進行状態を目視観察あるいは顕微鏡観察により相対評価する方法が挙げられる。試験温度、時間の目安として80℃−4週間が挙げられる。
【0064】
(他の部分の材料)
【0065】
シリンダ、スクリュ、ダイスのそれぞれを構成する材料について、溶融樹脂や発生ガスと接触しない部分ではそれほど耐食性を必要としないため、上記したシリンダ等の材料に代えて、優れた硬度や靭性、熱特性、あるいは加工容易性、低価格などを特徴とする別の材料を使用して複合材料化することも可能である。この場合は、耐食性に優れる必要があるライニング材部(シリンダ内部表面、スクリュ表面、ダイス内部表面に対応する部分)の厚さは、2mm以上であることが好ましい。
【0066】
(押出機スクリュ)
【0067】
上記した耐食性の条件を満たしている限り、本発明で使用できる押出機スクリュの構成は特に制限されない。押出機運転安定性増大と製品品質向上の両面からは、押出機スクリュの構成は、2つ以上あるベント口それぞれの上流側に樹脂混練ゾーンを設け、それら以外の部分を樹脂搬送ゾーンとすることが好ましい。
【0068】
この押出機において、各混練ゾーンのニーディングディスクとシールリングの構造は、特に制限されない。脱揮効率を高める点からは、最も上流側の第1混練ゾーンにはニーディングディスクのみを使用し、第2以後の混練ゾーンにはニーディングディスクとシールリングとを併用する押出機の構成が好ましい。
【0069】
(押出機シリンダ温度)
【0070】
押出運転時の押出機シリンダ温度制御は、シリンダ毎に行うことが好ましい。好ましい温度範囲は、ホッパーから第1ベント口上流側までは20〜250℃、第1ベント口からダイス直前までは100〜300℃である。スクリュ回転速度は、ダイス到達部での樹脂温度が300℃を超えない範囲内を上限とし、押出機モータのトルクに支障ない範囲内を下限として、その範囲内の回転速度で押出機の運転安定性が達成できるよう設定することが好ましい。
【0071】
(溶融樹脂ストランド)
【0072】
押出機から吐出された溶融樹脂ストランドの利用ないし加工方法は、特に制限されない。例えば、この溶融樹脂ストランドを公知のペレタイザー設備を経てペレット状に加工し、計量設備を経て製品として梱包することができる。
【0073】
上述したように、水を分散媒体とする懸濁重合法で生成するメタクリル系樹脂ビーズ状重合物から、優れた品質の成形材料(例えばペレット状)を生産性良く製造することができる。
【0074】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明の様態とその効果を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例における物性評価は次の[1]〜[3]の方法に基づいて実施した。
[1]重量平均粒子径
【0075】
ビーズを水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置[(株)堀場製作所製、LA−910]を用いて測定した。
[2]含水率
JIS K 0068「カールフィッシャー滴定法」4.5項の水分気化法に準拠する方法で実施した。含水率は乾燥後質量に対する比率で表した。
[3]光線透過率、曇価、黄色度
【0076】
ペレットから3.2mm厚の射出成形板を作成し、JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して測定した。
【0077】
製造例1
【0078】
市販の日本製鋼所社製TEX押出機を改良して、以下の構成を有する改良型TEX押出機を得た。
(1)スクリュは2軸で同方向回転。
(2)ホッパー部以後のシリンダ数は9、ベント数は3(シリンダ数とベント口の位置は、図1に示す通り)。
(3)スクリュピースの材質はSUS420J2。シリンダの材質は窒化処理鋼と内部表面が3mm厚のSUS316L(JIS規格)となっている複合材料。ダイス部の材質は炭素鋼で、その内部表面はクロムメッキ処理されている。
(4)スクリュの形状については、3つあるベント口それぞれの上流位置にニーディングディスクによる混練ゾーンを設け、第2と第3の混練ゾーンの末端部にはシールリングを設置してある。
【0079】
なおSUS316L(シリンダの材質)のアクリル酸に対する80℃−4週間での耐食性評価結果は、SUS420J2での極く軽微な腐食と比較して明瞭に良好であった。
【0080】
実施例1
【0081】
温度制御機能と攪拌機能とを有する懸濁重合釜内へ、メタクリル酸メチル97質量部、アクリル酸メチル3質量部、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.12質量部、n−オクチルメルカプタン0.27質量部、ステアリルアルコール0.1質量部を均一に溶解した重合原料と、予めメタクリル酸ナトリウム−メタクリル酸メチル8:2共重合物0.1質量部、リン酸2水素ナトリウム0.2質量部、リン酸水素2ナトリウム0.4質量部を均一に溶解した濾過した脱イオン水200質量部とを仕込んだ。
【0082】
この懸濁重合釜を用いて、70rpm攪拌下で、窒素置換を行った後80℃で重合を行い、重合発熱のピークを検出した後110℃で30分間更に重合を行った。続いて釜内を常温まで冷却した後、生成したスラリーをスラリー一時貯蔵槽へ移液した。そして移液されたスラリーの3分の1量を使用して、脱水、洗浄、第2回脱水、そして気流乾燥機を使用しての乾燥処理までを順次行った。
【0083】
上記の操作により得られた、乾燥されたメタクリル系ビーズ状重合物の重量平均粒子径と含水率を測定した結果は、440μm、2.2質量%D.B.であった。
【0084】
このビーズを製造例1に示す押出機へ供給して押出運転を行い、ペレットを得た。押出機とそれ以後の工程設備の運転は安定に行われた。ペレットを射出成形して得られた3.2mm厚成形板の透明性は極めて良好であり、黄帯色も認められなかった。成形板の光線透過率は93%、曇価は0.3%、黄色度は0.7と良好な数値であった。
【0085】
比較例1
【0086】
実施例1の重合操作で製造され使用されたスラリー残量の半分量を使用して、実施例1と同一運転条件で脱水、洗浄、第2回脱水、乾燥までを行った。乾燥されたメタクリル系ビーズ状重合物の重量平均粒子径と含水率を測定した結果は、440μm、2.2質量%D.B.であった。
【0087】
引き続き、実施例1で用いた押出機のV2とV3の両ベント部の配管を故意に閉止し、それ以外の点は実施例1と同一条件で押出運転を行った。その結果、押出機本体の運転は比較的安定に行われたが、吐出されるストランドには発泡があり、それが原因で引き取られるストランドが切れるという運転上の問題が頻発した。
【0088】
比較例2
【0089】
実施例1と比較例1で使用された残りのスラリー全量を使用して、実施例1と同一運転条件で脱水、洗浄、第2回脱水、乾燥までを行った。乾燥されたメタクリル系ビーズ状重合物の重量平均粒子径と含水率を測定した結果は、440μm、2.3質量%D.B.であった。
【0090】
引き続いて押出機のV1とV2ベント部の配管を故意に閉止し、それ以外の点は実施例1と同一条件での押出運転を試みたが、押出機本体の運転は樹脂の脈動流が激しいために安定に行うことができなかった。
【0091】
比較例3
【0092】
比較例2の押出機運転操作に引き続いて、今回はV2ベント部の配管を開き、V1とV3ベント部の配管を閉止して、それ以外の点は実施例1と同一条件での押出運転を試みたが、この場合も押出機本体の運転は樹脂の脈動流が激しいために安定に行うことができなかった。
【0093】
実施例2
【0094】
温度制御機能と攪拌機能とを有する懸濁重合釜内へ、メタクリル酸メチル90質量部、アクリル酸メチル10質量部、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.14質量部、n−オクチルメルカプタン0.27質量部、ステアリルアルコール0.2質量部を均一に溶解した重合原料と、予めメタクリル酸ナトリウム−メタクリル酸メチル8:2共重合物0.1質量部、リン酸2水素ナトリウム0.2質量部、リン酸水素2ナトリウム0.4質量部を均一に溶解した濾過した脱イオン水200質量部とを仕込んだ。
【0095】
この懸濁重合釜を用いて、70rpm攪拌下で、窒素置換を行った後80℃で重合を行い、重合発熱のピークを検出後110℃で60分間更に重合を行った。そして釜内を常温まで冷却した後、生成したスラリーの全量をスラリー一時貯蔵槽へ移液した。
【0096】
続いてこのスラリーを使用して脱水、洗浄、第2回脱水、そして気流乾燥機を使用しての乾燥を行った。乾燥されたメタクリル系ビーズ状重合物の重量平均粒子径と含水率を測定した結果は、390μm、3.3質量%D.B.であった。
【0097】
このビーズを製造例1に示す押出機へ供給して押出運転を行い、ペレットを得た。押出機とそれ以後の工程設備の運転は安定に行われた。ペレットを射出成形して得られた3.2mm厚成形板の透明性は至って良好であり、黄帯色も認められなかった。成形板の光線透過率は93%、曇価は0.3%、黄色度は0.7と良好な数値であった。
【0098】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、優れた品質のメタクリル系樹脂成形材料ペレットを低コストで生産性良く製造することができる。この本発明の製造方法は、工業上非常に有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用可能な押出機のシリンダ構成の一例を説明するための模式図である。

Claims (3)

  1. メタクリル酸メチルを主成分とする分散相を、水を分散媒体として懸濁重合して得られるビーズ状重合物を押出成形してメタクリル系樹脂成形材料を製造する方法において;
    表面付着水を含めた含水率が1.5〜4.0質量%D.B.(「D.B.」は dry base, 乾燥後質量に対する比率である)のビーズ状重合物を、ベント口を2つ以上有し、且つ少なくともシリンダ内部表面、スクリュ表面およびダイス内部表面が、マルテンサイト系、オーステナイト系、または析出硬化系のステンレス鋼でCr元素含有率が13%以上の材料で構成されている2軸押出機を用いて押出成形することを特徴とするメタクリル系樹脂成形材料の製造方法。
  2. 前記分散相が、メタクリル酸メチルと、他の共重合可能な単量体との単量体混合物である請求項1に記載のメタクリル系樹脂成形材料の製造方法。
  3. 前記シリンダ内部表面、スクリュ表面およびダイス内部表面の材料が、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS420J2、またはSUS631である請求項1に記載のメタクリル系樹脂成形材料の製造方法
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