JP3791480B2 - 液体噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノズル開口から液体滴を吐出させる液体噴射装置に係り、とりわけ、複数のノズル開口から液体滴を吐出させる液体噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式プリンタやインクジェット式プロッタ等のインクジェット式記録装置(液体噴射装置の一種)は、記録ヘッド(ヘッド部材)を主走査方向に沿って移動させると共に記録紙(液体被噴射媒体の一種)を副走査方向に沿って移動させ、この移動に連動して記録ヘッドのノズル開口からインク滴を吐出させることにより、記録紙上に画像(文字等を含む)を記録する。このインク滴の吐出は、例えば、ノズル開口に連通した圧力発生室を膨張・収縮させることで行われる。
【0003】
圧力発生室の膨張・収縮は、例えば、圧電振動子の変形を利用して行われる。このような記録ヘッドでは、供給される駆動パルスに応じて圧電振動子が変形し、これにより圧力室の容積が変化し、この容積変化によって圧力室内のインクに圧力変動が生じて、ノズル開口からインク滴が吐出する。
【0004】
このような記録装置では、複数のパルス波形を一連に接続してなる駆動信号が生成される。一方、階調情報を含む印字データが記録ヘッドに送信される。そして、当該送信された印字データに基づいて、必要なパルス波形のみが前記駆動信号から選択されて圧電振動子に供給される。これにより、ノズル開口から吐出させるインク滴の量を、階調情報に応じて変化させている。
【0005】
一方、カラー印刷のための記録ヘッドには、複数色のインクをそれぞれ吐出する複数列のノズル開口が並列に設けられている。各色のインクが適宜に重ねて吐出されることにより、所望の色記録が実現されている。複数色のインクは、例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクである。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−278350号公報
【特許文献2】
特開平10−278352号公報
【特許文献3】
特開2000−62150号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、インクジェット式記録装置においては、複数種類の記録紙が利用され得る。これら記録紙の厚みは、一様で無い場合がある。また、記録ヘッドから記録紙までの距離を変更可能な記録装置もある。更に、記録装置の組み立て誤差によっても、記録ヘッドから記録紙までの距離は変動する。
【0008】
本件発明者は、記録ヘッドから記録紙までの距離を変化させた場合、特にカラー印刷の色調に変化が生じ得ることを知見した。
【0009】
例えば、カラー印刷のための記録ヘッドにおいて、シアンインク(C)を吐出するノズル開口の列と、マゼンタインク(M)を吐出するノズル開口の列と、イエローインク(Y)を吐出するノズル開口の列と、が当該順で並列に設けられており、当該記録ヘッドの移動中において、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエローインク(Y)の順に記録がなされる場合を考える。この場合、当該記録ヘッドの移動中においては、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)の順に記録がなされることになる。
【0010】
ここで、各色のインクは、各ノズル開口から記録紙上に吐出されるが、各ノズル開口と記録紙との間の距離が十分に大きく無い場合には、いわゆるメイン滴とサテライト滴とが十分に分離せず、これらが重なった状態で着弾してしまう。
【0011】
本件発明者は、同一色の分離されるべきインク滴が重なってしまうことに起因して色調が変化し得ることを知見した。この現象について、本件発明者は以下のように解析している。
【0012】
シアンインク(C)及びマゼンタインク(M)は、それらのインク滴が重ねられることによって、OD値が同程度の比率で増大する。更に、重ねられるインク滴の数と増大されるOD値との間には、比例関係が成立する。
【0013】
ところが、イエローインク(Y)では、重ねられるインク滴の数と増大されるOD値との間に比例関係が成立せず、OD値の伸びは早々に鈍化する。結果的に、イエローインク(Y)では、インク滴が重なることによるOD値の増大(伸び)が、他のインク色と比較して小さい。この現象は、イエロー色材の発色が最も弱いため、インク中の色材割合が最もイエローが多くなっていることに起因すると考えられる。
【0014】
以上のように、各インク色の間には、インク滴が重なった場合の特性に相違が存在する。この相違が、各ノズル開口と記録紙との間の距離が十分に大きく無い場合に、色調の変化として現れるのである。
【0015】
具体的な例を、図12に示す。図12に示す場合、各ノズル開口と記録紙との間の距離(PG:Paper Gap)が1.06mm以下では、メイン滴とサテライト滴とが重なってしまって、色相差ΔEが大きくなっている。
【0016】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、各ノズル開口と記録紙との間の距離に対応して各ノズル開口から噴射される各液体の量の相対的割合を調整して、例えば色調を調整することができるインクジェット式記録装置、広くは液体噴射装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のノズル開口を有するヘッド部材と、各ノズル開口部分の液体の圧力を変動させて当該液体を噴射させる複数の圧力変動手段と、液体被噴射媒体を保持する被噴射媒体保持部と、ヘッド部材の複数のノズル開口が液体被噴射媒体に対向する位置を通過するように、当該ヘッド部材を液体被噴射媒体に対して平行に相対的に移動させる移動機構と、各圧力変動手段に駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、ヘッド部材の移動中に前記駆動信号及び噴射パターンデータに基づいて各圧力変動手段を駆動させて各ノズル開口から液体を噴射させる制御本体部と、ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を識別する距離識別部と、距離識別部により識別された前記距離に基づいて、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合が前記距離に対応する所望増減割合となるように、前記噴射パターンデータを生成または修正するパターンデータ調整部と、を備えたことを特徴とする液体噴射装置である。
【0018】
本発明によれば、距離識別部により識別された前記距離に基づいて、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合が前記距離に対応する所望増減割合に調整され得る。このため、各液体のメイン滴とサテライト滴との着弾時の重なり等に起因する着弾特性上の変化を、好適に補償することができる。
【0019】
例えば、各ノズル開口は、それぞれ異なる色の液体が供給される複数のノズル開口群に分割されており、前記パターンデータ調整部は、各ノズル開口群に対応する圧力変動手段群毎に噴射パターンデータを生成または修正するようになっている。この場合、各ノズル開口群からの液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合が前記距離に対応する所望増減割合に調整されることにより、各液体のメイン滴とサテライト滴との着弾時の重なり等に起因する色調の変化を、好適に補償することができる。
【0020】
より具体的には、例えば、複数のノズル開口は、少なくとも3以上であり、異なる色の液体は、シアン色の液体、マゼンタ色の液体及びイエロー色の液体を含んでいる。
【0021】
また、好ましくは、ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離は、ヘッド部材の複数のノズル開口面と被噴射媒体保持部の液体被噴射媒体を支持する支持面との距離と液体被噴射媒体の厚みとから求められるようになっている。例えば、前記ノズル開口面と前記支持面との距離から液体被噴射媒体の厚みを減算することによって、前記距離を得ることができる。
【0022】
あるいは、ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を検出するセンサが設けられ得る。あるいは、ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を変更可能であると共に、当該距離に関する情報を取得可能なPG調整機構が設けられ得る。
【0023】
また、好ましくは、パターンデータ調整部には、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の所望増減割合を距離識別部により識別される前記距離に対応付けて記憶する液体割合記憶部が接続されている。
具体的には、例えば、液体割合記憶部は、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の所望増減割合を、距離識別部により識別される前記距離がメイン滴とサテライト滴との分離が果たされるのに十分な距離であるか否かに基づいて、少なくとも2値化して記憶している。
【0024】
あるいは、好ましくは、液体割合記憶部は、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の所望増減割合を、距離識別部により識別される前記距離に対応するテーブルデータとして記憶している。
【0025】
前記基準領域は、例えば、一定サイズのマトリクスパターンに対応する領域である。例えば、16×16のマトリクスが基準領域とされ得る。これは、「ディザ」と呼ばれるマトリクスパターンである。
【0026】
あるいは、前記基準領域は、噴射パターンデータ自体に依存する可変の領域であり得る。本件発明者は、特に自然画像等の印刷処理において、「ディザ」のような固定のパターンが不適な場合があることを知見した。そのような場合、「誤差拡散」を考慮して各画像の各部毎に可変のパターンを基準領域として利用することが好ましい。
【0027】
また、本発明は、複数のノズル開口を有するヘッド部材と、各ノズル開口部分の液体の圧力を変動させて当該液体を噴射させる複数の圧力変動手段と、液体被噴射媒体を保持する被噴射媒体保持部と、ヘッド部材の複数のノズル開口が液体被噴射媒体に対向する位置を通過するように、当該ヘッド部材を液体被噴射媒体に対して平行に相対的に移動させる移動機構と、を備えた液体噴射装置を制御するための装置であって、
各圧力変動手段に駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、
ヘッド部材の移動中に前記駆動信号及び噴射パターンデータに基づいて各圧力変動手段を駆動させて各ノズル開口から液体を噴射させる制御本体部と、
ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を識別する距離識別部と、
距離識別部により識別された前記距離に基づいて、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合が前記距離に対応する所望増減割合となるように、前記噴射パターンデータを生成または修正する吐出回数調整部と、
を備えたことを特徴とする制御装置である。
【0028】
前記の制御装置あるいは制御装置の各要素手段は、コンピュータシステムによって実現され得る。
【0029】
また、コンピュータシステムに各装置または各手段を実現させるためのプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も、本件の保護対象である。
【0030】
ここで、記録媒体とは、フロッピーディスク等の単体として認識できるものの他、各種信号を伝搬させるネットワークをも含む。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施の形態のインクジェット式記録装置(液体噴射装置の一例)は、インクジェット式プリンタ1であり、黒インクカートリッジ2a及びカラーインクカートリッジ2bを保持可能なカートリッジホルダ部3と記録ヘッド4(ヘッド部材の一例)とを有するキャリッジ5を備えている。キャリッジ5は、ヘッド走査機構(移動機構の一例)によって、主走査方向に沿って往復移動されるようになっている。
【0033】
ヘッド走査機構は、ハウジングの左右方向に架設されたガイド部材6と、ハウジングの一方側に設けられたパルスモータ7と、パルスモータ7の回転軸に接続されて回転駆動される駆動プーリー8と、ハウジングの他方側に取付けられた遊転プーリー9と、駆動プーリー8及び遊転プーリー9の間に掛け渡されると共にキャリッジ5に結合されたタイミングベルト10と、パルスモータ7の回転を制御する制御部11(図6参照)と、から構成されている。これにより、パルスモータ7を作動させることによって、キャリッジ5、即ち、記録ヘッド4を、記録紙12の幅方向である主走査方向に往復移動させることができる。
【0034】
ガイド部材6には、ガイド部材6の位置を上下方向に複数段階に切り替え可能なPG調整レバー19が取り付けられている。「PG」とは、各ノズル開口と記録紙との間の距離を意味し、ユーザーは使用する記録紙の厚みや記録紙の変形度合によって、好適なPGを選択できるようになっている。
【0035】
また、プリンタ1は、記録紙12等の記録用媒体(液体被噴射媒体の一例)を紙送り方向(副走査方向)に送り出す紙送り機構(被噴射媒体保持部の一例)を有する。この紙送り機構は、紙送りモータ13及び紙送りローラ14等から構成される。記録紙12等の記録媒体は、記録動作に連動して、順次送り出される。
【0036】
本実施の形態のヘッド走査機構及び紙送り機構は、B0判程度の大判の記録紙12に対応し得る構成となっている。また、本実施の形態のプリンタ1は、記録ヘッド4の往動時に記録動作を実行する(単方向記録を行う)ようになっている。
【0037】
キャリッジ5の移動範囲内であって記録領域よりも外側の端部領域には、ホームポジションと、記録ヘッド4(キャリッジ5)の待機ポジションと、が設定されている。図2(a)に示すように、ホームポジションは、記録ヘッド4が移動し得るヘッド移動範囲の一側(図の右側)端部に設定されている。また、待機ポジションは、ホームポジションに対して記録領域側に略隣接して設定されている。
【0038】
本発明は、記録ヘッド4の往動時及び復動時の両方で記録動作を実行する(双方向記録を行う)ように構成されたプリンタにも適用可能である。このようなプリンタでは、図2(b)に示すように、ホームポジションと略隣接する第1の待機ポジションWP1に加えて、ホームポジションとは反対側の端部に第2の待機ポジションWP2が設けられ得る。
【0039】
ホームポジションは、電源オフ時や長時問に亘って記録が行われなかった場合に記録ヘッド4が移動して留まる場所である。記録ヘッド4がホームポジションに位置する時には、図3(d)に示すように、キャッピング機構のキャップ部材15がノズルプレート16(図4参照)に当接してノズル開口17(図4参照)を封止する。キャップ部材15は、ゴム等の弾性部材を上面が開放した略四角形トレー状に成型した部材であり、内部にはフェルト等の保湿材が取り付けられている。記録ヘッド4がキャップ部材15により封止されることで、キャップ内部が高湿度に保たれて、ノズル開口17からのインク溶媒の蒸発が緩和される。
【0040】
待機ポジションは、記録ヘッド4を走査する際の起点となる位置である。即ち、記録ヘッド4は、通常、この待機ポジションで待機し、記録動作時に待機ポジションから記録領域側へ走査され、記録動作が終了すると待機ポジションに戻る。
【0041】
双方向記録を行うプリンタの場合、図2(b)を参照して、記録ヘッド4は、第1の待機ポジションWP1で待機している状態から第2の待機ポジションWP2側へ走査されて往動時の記録動作を行う。この記録動作が終了すると、第2の待機ポジションWP2で待機する。次に、記録ヘッド4は、第2の待機ポジションWP2で待機している状態から第1の待機ポジションWP1側へ走査されて復動時の記録動作を行う。この記録動作が終了すると、第1の待機ポジションWP1で待機する。以後は、往動時の記録動作と復動時の記録動作とを交互に繰り返し実行する。
【0042】
待機ポジションには、フラッシング動作(メンテナンス動作の一種)によって記録ヘッド4が排出するインクを回収するためのインク受け部材が設けられる。本実施の形態では、上記のキャップ部材15が、インク受け部材を兼ねている。即ち、キャップ部材15は、図3(a)に示すように、通常は記録ヘッド4の待機ポジションの下方位置(ノズルプレート16の下方に少し離隔した位置)に配置されている。そして、記録ヘッド4のホームポジションヘの移動に伴って、図3(d)に示すように、斜上方側(ホームポジション側かつノズルプレート16側)に移動して、ノズル開口17を封止する。
【0043】
双方向記録を行うプリンタの場合には、図2(b)に示すように、第2の待機ポジションWP2にもインク受け部材18が配設される。このインク受け部材18は、例えば、記録ヘッド4との対向面が開放した箱状のフラッシングボックスによって構成され得る。
【0044】
さらに、本実施の形態では、待機ポジションと記録領域との間に、加速領域が設定されている。加速領域は、記録ヘッド4の走査速度を所定速度まで加速させるための領域である。
【0045】
次に、記録ヘッド4について説明する。記録ヘッド4は、図4に示すように、例えばプラスチックからなる箱体状のケース71の収納室72内に、櫛歯状の圧電振動子21が一方の開口から挿入されて櫛歯状先端部21aが他方の開口に臨んでいる。その他方の開口側のケース71の表面(下面)には流路ユニット74が接合され、櫛歯状先端部21aは、それぞれ流路ユニット74の所定部位に当接固定されている。
【0046】
圧電振動子21は、圧電体21bを挟んで共通内部電極21cと個別内部電極21dとを交互に積層した板状の振動子板を、ドット形成密度に対応させて櫛歯状に切断して構成してある。そして、共通内部電極21cと個別内部電極21dとの間に電位差を与えることにより、各圧電振動子21は、積層方向と直交する振動子長手方向に伸縮する。
【0047】
流路ユニット74は、流路形成板75を間に挟んでノズルプレート16と弾性板77を両側に積層することにより構成されている。
【0048】
流路形成板75は、ノズルプレート16に複数開設したノズル開口17とそれぞれ連通して圧力発生室隔壁を隔てて列設された複数の圧力発生室22と、各圧力発生室22の少なくとも一端に連通する複数のインク供給部82と、全インク供給部82が連通する細長い共通インク室83と、が形成された板材である。例えば、シリコンウエハーをエッチング加工することにより、細長い共通インク室83が形成され、共通インク室83の長手方向に沿って圧力発生室22がノズル開口17のピッチに合わせて形成され、各圧力発生室22と共通インク室83との間に溝状のインク供給部82が形成され得る。なお、この場合、圧力発生室22の一端にインク供給部82が接続し、このインク供給部82とは反対側の端部近傍でノズル開口17が位置するように配置されている。また、共通インク室83は、インクカートリッジに貯留されたインクを圧力発生室22に供給するための室であり、その長手方向のほぼ中央にインク供給管84が連通している。
【0049】
弾性板77は、ノズルプレート16とは反対側の流路形成板75の面に積層され、ステンレス板87の下面側にPPS等の高分子体フィルムを弾性体膜88としてラミネート加工した二重構造である。そして、圧力発生室22に対応した部分のステンレス板87をエッチング加工して、圧電振動子21を当接固定するためのアイランド部89が形成されている。
【0050】
上記の構成を有する記録ヘッド4では、圧電振動子21を振動子長手方向に伸長させることにより、アイランド部89がノズルプレート16側に押圧され、アイランド部89周辺の弾性体膜88が変形して圧力発生室22が収縮する。また、圧力発生室22の収縮状態から圧電振動子21を長手方向に収縮させると、弾性体膜88の弾性により圧力発生室22が膨張する。圧力発生室22を一旦膨張させてから収縮させることにより、圧力発生室22内のインク圧力が高まって、ノズル開口17からインク滴が吐出される。
【0051】
すなわち、記録ヘッド4では、圧電振動子21に対する充放電に伴って、対応する圧力室22の容量が変化する。このような圧力室22の圧力変動を利用して、ノズル開口17からインク滴を吐出させたり、メニスカス(ノズル開口17で露出しているインクの自由表面)を微振動させたりすることができる。
【0052】
なお、上記の縦振動モードの圧電振動子21に代えて、いわゆるたわみ振動モードの圧電振動子を用いることも可能である。たわみ振動モードの圧電振動子は、充電による変形で圧力室を収縮させ、放電による変形で圧力室を膨張させる圧電振動子である。
【0053】
記録ヘッド4は、この場合、異なる複数種類の色が記録可能な多色記録ヘッドである。多色記録ヘッドは、複数のヘッドユニットを備えており、各ヘッドユニット毎に使用するインクの種類が設定される。
【0054】
本実施の形態の記録ヘッド4は、ブラックインクを吐出可能なブラックヘッドユニットと、シアンインクを吐出可能なシアンヘッドユニットと、マゼンタインクを吐出可能なマゼンタヘッドユニットと、イエローインクを吐出可能なイエローヘッドユニットと、を備えている。各ヘッドユニットは、対応するインクカートリッジ2a、2bの各インク収容室と連通するようになっている。そして、各ヘッドユニットが、それぞれ図4を用いて説明した構成を有しており、複数のノズル開口17からなるノズル列が、図5に示すように、各インク色(BK、C、M、Y)毎に形成されている。
【0055】
なお、ヘッド部材4における各ノズル開口17のインク滴吐出の特性は、主として製造上の理由により、各ノズル列毎に一致する傾向にある。
【0056】
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。図6に示すように、このインクジェット式プリンタ1は、プリンタコントローラ30とプリントエンジン31とを備えている。
【0057】
プリンタコントローラ30は、外部インターフェース(外部I/F)32と、各種データを一時的に記憶するRAM33と、制御プログラム等を記憶したROM34と、CPU等を含んで構成された制御部11と、クロック信号を発生する発振回路35と、記録ヘッド4へ供給するための駆動信号等を発生する駆動信号発生回路36と、駆動信号や、印刷データに基づいて展開されたドットパターンデータ(ビットマップデータ)等をプリントエンジン31に送信する内部インターフェース(内部I/F)37と、を備えている。
【0058】
外部I/F32は、例えば、キャラクタコード、グラフィック関数、イメージデータ等によって構成される印刷データを、図示しないホストコンピュータ等から受信する。また、ビジー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)が、外部I/F32を通じて、ホストコンピュータ等に対して出力される。
【0059】
RAM33は、受信バッファ、中間バッファ、出力バッファ及びワークメモリ(図示せず)を有している。そして、受信バッファは、外部I/F32を介して受信された印刷データを一時的に記憶し、中間バッファは、制御部11により変換された中間コードデータを記憶し、出力バッファは、ドットパターンデータを記憶する。ここで、ドットパターンデータとは、中間コードデータ(例えば、階調データ)をデコード(翻訳)することにより得られる印字データである。
【0060】
ROM34には、各種データ処理を行わせるための制御プログラム(制御ルーチン)の他に、フォントデータ、グラフィック関数、ルックアップテーブル(LUT)等が記憶されている。さらにROM34は、メンテナンス情報保持手段として、メンテナンス動作用の設定データをも記憶している。また、ROM34(あるいは図示しないEEPROM)は、色調確認モード用データ記憶部として、後述するカラーアジャスト値の補正係数群等を記憶している。
【0061】
制御部11は、ROM34に記憶された制御プログラムに従って各種の制御を行う。例えば、受信バッファ内の印刷データを読み出すと共にこの印刷データを変換して中間コードデータとし、当該中間コードデータを中間バッファに記憶させる。また、制御部11は、中間バッファから読み出した中間コードデータを解析し、ROM34に記憶されているフォントデータ、グラフィック関数、カラーアジャスト値によって修正され得るルックアップテーブル(LUT)等を参照して、ドットパターンデータに展開(デコード)する。そして、制御部11は、必要な装飾処理を施した後に、このドットパターンデータを出力バッファに記憶させる。
【0062】
ルックアップテーブル(LUT)とは、この場合、RGBデータ(RGB空間)をCMYK(CMYK空間)のドットパターンデータに変換するテーブルである。
【0063】
カラーアジャスト値とは、例えば各ノズル列毎のインク滴吐出の特性上の差異を補償するためのデータである。当該カラーアジャスト値に基づいてルックアップテーブル(LUT)を修正する技術に関しては、例えば特開平10−278350号に詳述されている。
【0064】
記録ヘッド4の1回の主走査により記録可能な1行分のドットパターンデータが得られたならば、当該1行分のドットパターンデータが、出力バッファから内部I/F37を通じて順次記録ヘッド4の電気駆動系39に出力され、キャリッジ5が走査されて1行分の印刷が行われる。出力バッファから1行分のドットパターンデータが出力されると、展開済みの中間コードデータが中間バッファから消去され、次の中間コードデータについての展開処理が行われる。
【0065】
さらに、制御部11は、記録ヘッド4による記録動作に先立ってなされるメンテナンス動作(回復動作)を制御する。
【0066】
プリントエンジン31は、紙送り機構としての紙送りモータ13と、ヘッド走査機構としてのパルスモータ7と、記録ヘッド4の電気駆動系39と、を含んで構成してある。
【0067】
次に、記録ヘッド4の電気駆動系39について説明する。電気駆動系39は、図6に示すように、順に電気的に接続されたデコータ50、シフトレジスタ回路40、ラッチ回路41、レベルシフタ回路42、スイッチ回路43及び圧電振動子21を備えている。これらのデコータ50、シフトレジスタ回路40、ラッチ回路41、レベルシフタ回路42、スイッチ回路43及び圧電振動子21は、それぞれ、記録ヘッド4の各ノズル開口17毎に設けられている。
【0068】
この電気駆動系39では、スイッチ回路43に加わるパルス選択データ(SPデータ)が「1」の場合、スイッチ回路43は接続状態となって駆動信号中のパルス波形が圧電振動子21に直接印加され、各圧電振動子21は駆動信号中の当該パルス波形に応じて変形する。一方、スイッチ回路43に加わるパルス選択データが「0」の場合、スイッチ回路43は非接続状態となって圧電振動子21への駆動信号の供給が遮断される。
【0069】
このように、パルス選択データに基づいて、各圧電振動子21に対して駆動信号を選択的に供給できる。このため、与えられるパルス選択データ次第で、ノズル開口17からインク滴を吐出させたり、メニスカスを微振動させたりすることができる。
【0070】
ここで、駆動信号発生回路36の詳細について、図7を用いて説明する。図7に示すように、駆動信号発生回路36は、記録ヘッド4の各通過位置の通過タイミングと同期して複数のラッチ信号を出力するラッチ信号出力部101を有している。ラッチ信号出力部101は、記録ヘッド4の各通過位置(各記録画素毎に設定される)の通過タイミングとの同期のために、記録ヘッド4の位置または移動量を検出するエンコーダ102に接続されている。
【0071】
また、駆動信号発生回路36は、ラッチ信号に対する設定時間差に基づいて、各ラッチ信号に続いて当該設定時間差の後にチャンネル信号を出力するチャンネル信号出力部103を有している。
【0072】
そして、ラッチ信号出力部101及びチャンネル信号出力部103には、本体部105が接続されている。
【0073】
本体部105は、記録ヘッド4の移動中には、ラッチ信号の出力タイミングに合わせて出現されるラッチパルス波形(この場合、第1パルス信号PS1)と、チャンネル信号出力部103によるチャンネル信号の出力タイミングに合わせて出現されるチャンネルパルス波形(この場合、第2パルス信号PS2)と、を当該順に有する駆動信号(A:図8参照)を生成するようになっている。
【0074】
前述のように、ヘッド部材4における各ノズル開口17のインク滴吐出の特性は、主として製造上の理由により、各ノズル列毎に異なる場合がある。このような場合に、ノズル開口から吐出されるインク滴の量を設計した通りの値とするために、本実施の形態では「カラーアジャスト値」が利用される。
【0075】
具体的には、予め測定された各ノズル列毎のインク滴吐出の特性に基づいて、各ノズル列毎すなわち各インク色毎に「カラーアジャスト値」が与えられる。例えば、シアン列の吐出インク滴の重量が設計上の値よりも10%多い場合、当該シアン列のカラーアジャスト値は10%を表す値とされる。逆に、イエロー列の吐出インク滴の重量が設計上の値よりも10%少ない場合、当該イエロー列のカラーアジャスト値は−10%を表す値とされる。
【0076】
前記のような「カラーアジャスト値」は、記録ヘッド4に搭載された図示されない記憶装置に記憶され得る。
【0077】
そして、制御部11は、パターンデータ調整部として、記録ヘッド4の不図示の記憶装置から各色毎の「カラーアジャスト値」を読み取り、各ノズル列毎(各色毎)のインク滴吐出の特性が相殺されるように各ノズル列毎(各色毎)の基準領域あたりのインク滴吐出回数の相対的割合を調整すべく、ルックアップテーブル(LUT)を修正するようになっている。
【0078】
このように修正されたルックアップテーブル(LUT)により、結果的に、各ノズル列毎(各色毎)の基準領域あたりのインク滴吐出回数の相対的割合が増減するように、CMYK空間のドットパターンデータが生成(修正)される。
【0079】
ここで、図9及び図10を用いて、カラーアジャスト値について更に詳述する。この場合、図9に示すように、吐出インク滴のインク重量の設計値に対するインク重量比に応じて、カラーアジャスト値(ID)が割り当てられている。そして、図10に示すように、実際のノズル列(BK列、C列、M列及びY列)からの吐出インク重量と図9に示す前記割当表とに基づいて、カラーアジャスト値が設定されている。
【0080】
例えば、1滴のインク重量が20ngであれば、設計値通りなので、標準値である「50」がIDとして設定される。また、1滴のインク重量が21ngであれば、設計値からのずれは5%となるので、標準値から5ポイント高い「55」がIDとして設定される。反対に、1滴のインク量が18ngであれば、設計値からのずれは−10%なので、標準値から10ポイント低い「40」がIDとして設定される。
【0081】
設定されたカラーアジャストIDは、例えば、記録ヘッド4内の識別情報記憶素子(図示せず)等に記憶される他、記録ヘッド4に設けられ得る識別情報表記部材(図示せず)によって表記されてもよい。
【0082】
以上のようなカラーアジャスト値を用いれば、例えば、基準領域あたり20ngのインク滴を100回吐出させて2000ngのインク滴を着弾させる設定の場合、インク滴重量が21ngのC列またはY列については、基準領域内にインク滴を95回吐出させると、当該基準領域あたりのインク量は1995ngとなり、2000ngにほぼ揃えられる。同様に、インク滴重量が18ngのM列については、基準領域内にインク滴を110回吐出させると、当該基準領域あたりのインク量は1980ngとなり、2000ngにほぼ揃えられる。
【0083】
すなわち、この場合、カラーアジャストIDが「50」のBK列については、インク滴の重量が設計値通り(20ng)なので、基準領域あたりの吐出回数は規定回数である「100」回に設定される。
【0084】
一方、カラーアジャストIDが「55」のC列及びY列については、インク滴の重量が規定量よりも5%多いので、基準領域あたりの吐出回数が規定回数より5%減らされて「95」回に設定される。
【0085】
同様に、カラーアジャストIDが「40」のM列については、インク滴の重量が規定量よりも10%少ないので、基準領域あたりの吐出回数が規定回数より10%増やされて「110」回に設定される。
【0086】
このように、カラーアジャスト値を利用することにより、吐出されるインク滴の重量についてノズル列毎に差があっても、基準領域あたりの吐出インク量を揃えることができ、結果的に一定品質の画像を記録することができる。すなわち、記録ヘッドに個体差があっても一定品質の画像を記録できる。
【0087】
ここで、基準領域とは、例えば、一定の16×16のマトリクスパターンに対応する領域である。このようなパターンは、「ディザ」と呼ばれている。あるいは、基準領域とは、「誤差拡散」を考慮して画像データ等に依存して決定される各画像の各部毎に可変の領域である。
【0088】
さて、本実施の形態のプリンタ1では、製品として出荷される直前において、調整作業者によって各ノズル開口と記録紙との間の距離(PG)に関しての色調調整が行われる。このため、本実施の形態のプリンタは、色調確認指令が入力される色調確認入力部205を有している。また、本実施の形態のプリンタ1は、色調確認指令に従って、駆動信号発生回路36、制御部11(制御本体部)、ヘッド操作機構及び紙送り機構を制御する色調確認制御部210を有している。
【0089】
色調確認制御部210は、PG調整レバー19を基準位置とした状態で、駆動信号(例えば駆動信号A:図8参照)を利用して、基準となる厚みを有する記録紙12上に、ベタ塗り状の噴射液体混合部を形成させる。本実施の形態では、噴射液体混合部は、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクで形成されるグレー色の中間調のベタ塗り状のパターンである。
【0090】
そして、同様の記録紙12に対して、PG調整レバー19の位置を変更して、各色毎(各ノズル列毎)の液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合を少しずつ変化させて、この場合、各色毎(各ノズル列毎)の液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合を少しずつ相対的に増減させて、互いに微妙に色調が異なる複数個のベタ塗り状の噴射液体混合部を形成させる。もっとも、いずれの噴射液体混合部も、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクで形成されるグレー色の中間調のベタ塗り状のパターンである。
【0091】
ここで、本実施の形態の色調確認制御部210は、制御部11が読み取った各色毎の「カラーアジャスト値」を修正するようになっている。具体的には、例えば予めROM34等に記憶されたカラーアジャスト値の補正係数群を、各色毎の「カラーアジャスト値」に乗算するようになっている。カラーアジャスト値の補正係数群の一例を、図11に示す。
【0092】
調整作業者は、記録紙12に形成された複数の噴射液体混合部から、各PG調整レバー19の位置毎に、基準となるプリンタで形成された記録紙12上の噴射液体混合部の色調と最も整合するいずれかの噴射液体混合部を選択する。そして、選択した噴射液体混合部に対応するカラーアジャスト値の補正係数群を、記録紙12の当該厚みに対応させて、液体割合記憶部212(図6参照)に設定する。
【0093】
ここで、本実施の形態の液体割合記憶部212は、カラーアジャスト値の補正係数群を、各ノズル開口17と記録紙12との間の距離(PG)に対して対応付けて記憶する。各ノズル開口17と記録紙12との間の距離(PG)は、ノズル開口17の移動軌道(ノズル開口面)と紙送り機構による記録紙12の支持面との距離から記録紙12の厚みを減算することによって、容易に得ることができる。
【0094】
なお、基準となるプリンタで形成された記録紙12上の噴射液体混合部の色調と最も整合するいずれかの噴射液体混合部を各PG調整レバー位置毎に選択する作業は、調整作業者の目視によって行われてもよいし、測色機を用いて行われてもよい。
【0095】
例えば、図12は、同一のカラーアジャスト値(の補正係数群)を用いて、異なるPGで記録紙に形成された噴射液体混合部を、測色機を用いて評価したデータ例である。図12の例では、PGを大きくすると、a* b* 空間で右下から左上に色相が変化する。これは、色相がマゼンタよりからグリーンよりに変化することを意味している。従って、PGを大きくした時の色相(色調)をPGが小さい時の色相(色調)に一致させるためには、マゼンタインクの吐出量を増大させると共にイエローインク及びシアンインクの吐出量を抑制するようなカラーアジャスト値調整を実施することが有効となる。従って、そのようなカラーアジャスト値調整を実施できるようなカラーアジャスト値の補正係数群が、液体割合記憶部212に設定される。
【0096】
図13は、同一のカラーアジャスト値(の補正係数群)を用いて、異なるPGで記録紙に形成された噴射液体混合部を、測色機を用いて評価した別のデータ例である。図13のデータ例に対しても、図12のデータ例に対して説明したことが同様に当てはまる。
【0097】
本実施の形態の液体割合記憶部212は、各PGに対応するカラーアジャスト値の補正係数群を、テーブルデータとして記憶している。より簡易な態様では、液体割合記憶部212は、PGがインクのメイン滴とサテライト滴との分離が果たされるのに十分であるか否かに基づいて2値化されたデータとして、カラーアジャスト値の補正係数群を記憶し得る。
【0098】
さて、本実施の形態のプリンタ1には、製品として購入された後の使用中においてユーザによって、利用される記録紙12のデータが入力される。このため、本実施の形態のプリンタは、記録紙情報が入力される記録紙情報入力部206を有している(図6参照)。
【0099】
また、本実施の形態のプリンタ1は、記録紙情報入力部206に入力される記録紙情報から、当該記録紙12の厚みを導出し、ノズル開口17の移動軌道と紙送り機構による記録紙12の支持面との距離及び導出した記録紙12の厚みに基づいて、当該記録紙12が使用される時のPGを求めるPG導出部211(距離識別部の一例)を有している(図6参照)。
【0100】
記録紙情報は、記録紙12の厚み情報の他、記録紙12の型番等の情報であり得る。後者の場合、PG導出部211は、予め、記録紙の型番と当該記録紙の厚み乃至この時のPGとを対応付けるテーブルデータを記憶している。
【0101】
そして、本実施の形態の制御部11は、パターンデータ調整部として、PG導出部211により求められたPGに対応するカラーアジャスト値の補正係数群を液体割合記憶部212から読み出して、当該カラーアジャスト値の補正係数群を用いてカラーアジャスト値調整を実施する(図6参照)。
【0102】
なお、キャリッジ5のノズル開口17と同じ高さ位置に、記録紙12の表面までの距離を測定する距離センサを設けて、直接PGを測定することもできる。また、PG調整レバー19にセンサを付けてPG情報を取得しても良い。
【0103】
本実施の形態によれば、PG導出部211により識別されたPGに基づいて、各ノズル開口17から噴射される各液体の量の調整割合、特には、各ノズル開口17から噴射される各液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合を、当該PGに対応するカラーアジャスト値の補正係数群によって、所望増減割合に調整することができる。これにより、各液体のメイン滴とサテライト滴との着弾時の重なり等に起因する着弾特性上の変化、この場合色調の変化、を適正に補償することができる。
【0104】
以上において、圧力室22の容積を変化させる圧力発生素子(圧力変動手段の一例)は、圧電振動子21に限定されるものではない。例えば、磁歪素子を圧力発生素子として用い、この磁歪素子によって圧力室22を膨張・収縮させて圧力変動を生じさせるようにしてもよいし、発熱素子を圧力発生素子として用い、この発熱素子からの熱で膨張・収縮する気泡によって圧力室22に圧力変動を生じさせるように構成してもよい。
【0105】
なお、前述のように、プリンタコントローラ30はコンピュータシステムによって構成され得るが、コンピュータシステムに前記各要素を実現させるためのプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体201も、本件の保護対象である。
【0106】
さらに、前記の各要素が、コンピュータシステム上で動作するOS等のプログラムによって実現される場合、当該OS等のプログラムを制御する各種命令を含むプログラム及び当該プログラムを記録した記録媒体202も、本件の保護対象である。
【0107】
ここで、記録媒体201、202とは、フロッピーディスク等の単体として認識できるものの他、各種信号を伝搬させるネットワークをも含む。
【0108】
なお、以上の説明はインクジェット式記録装置についてなされているが、本発明は、広く液体噴射装置全般を対象としたものである。液体の例としては、インクの他に、グルー、マニキュア等が用いられ得る。
【0109】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、距離識別部により識別された前記距離に基づいて、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合が前記距離に対応する所望増減割合に調整され得る。このため、各液体のメイン滴とサテライト滴との着弾時の重なり等に起因する着弾特性上の変化を、好適に補償することができる。
【0110】
特に、インクジェット式カラー記録装置に本発明を適用した場合、PGを変更しても同一の色調の記録結果を得ることができ、更に組み立て誤差により発生する記録装置個体間のPGばらつきに起因する色調ばらつきも、好適に補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のインクジェット式記録装置の概略斜視図である。
【図2】記録ヘッドの走査範囲を説明する模式図であり、(a)は単方向記録を行うプリンタの走査範囲を、(b)は双方向記録を行うプリンタの走査範囲をそれぞれ示す。
【図3】記録ヘッドの動作を説明する模式図であり、(a)は待機ポジションに位置している状態を、(b)は待機位置から記録領域側へ移動している状態を、(c)は記録領域側から待機ポジションに戻ってくる時の状態を、(d)はホームポジションに位置している状態を、それぞれ示す。
【図4】記録ヘッドの構成を説明する図である。
【図5】各色毎のノズル列を示す図である。
【図6】記録ヘッドの電気的構成を示す概略ブロック図である。
【図7】駆動信号発生回路を示す概略ブロック図である。
【図8】駆動信号の一例を示す図である。
【図9】インク重量比に対するカラーアジャストIDの割当表の一例である。
【図10】各ノズル列から吐出されるインク滴の重量に基づいて設定されるカラーアジャストIDの具体例を示す図である。
【図11】カラーアジャスト値の補正係数群の一例を示す表である。
【図12】同一のカラーアジャスト値を用いて異なるPGの記録紙に形成された噴射液体混合部を、測色機を用いて評価したデータ例を示す図である。
【図13】同一のカラーアジャスト値を用いて異なるPGの記録紙に形成された噴射液体混合部を、測色機を用いて評価した別のータ例を示す図である。
【図14】各ノズル開口と記録紙との間の距離が色相差に及ぼす影響について説明する図である。
【符号の説明】
1 インクジェット式プリンタ
2a 黒インクカートリッジ
2b カラーインクカートリッジ
3 カートリッジホルダ部
4 記録ヘッド
5 キャリッジ
6 ガイド部材
7 パルスモータ
8 駆動プーリー
9 逆転プーリー
10 タイミングベルト
11 制御部
12 記録紙
13 紙送りモータ
14 紙送りローラ
15 キャップ部材
16 ノズルプレート
17 ノズル開口
18 インク受け部材
19 PG調整レバー
21 圧電振動子
21a 櫛歯状先端部
22 圧力発生室
30 プリンタコントローラ
31 プリントエンジン
32 外部インターフェース
33 RAM
34 ROM
35 発振回路
36 駆動信号発生回路
37 内部インターフェイス
39 記録ヘッドの電気駆動系
40 シフトレジスタ回路
41 ラッチ回路
42 レベルシフタ回路
43 スイッチ回路
50 デコータ
71 ケース
72 収納室
74 流路ユニット
75 流路形成板
77 弾性板
80 ノズル開口
82 インク供給部
83 共通インク室
84 インク供給管
87 ステンレス板
88 弾性体膜
89 アイランド部
101 ラッチ信号出力部
102 エンコーダ
103 チャンネル信号出力部
105 本体部
105a 列誤差補正部
200 記録媒体
201 記録媒体
205 色調確認指令入力部
206 記録紙情報入力部
210 色調確認制御部
211 PG導出部
212 液体割合記憶部
Claims (15)
- 複数のノズル開口を有するヘッド部材と、
各ノズル開口部分の液体の圧力を変動させて当該液体を噴射させる複数の圧力変動手段と、
液体被噴射媒体を保持する被噴射媒体保持部と、
ヘッド部材の複数のノズル開口が液体被噴射媒体に対向する位置を通過するように、当該ヘッド部材を液体被噴射媒体に対して平行に相対的に移動させる移動機構と、
各圧力変動手段に駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、
ヘッド部材の移動中に前記駆動信号及び噴射パターンデータに基づいて各圧力変動手段を駆動させて各ノズル開口から液体を噴射させる制御本体部と、
ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を識別する距離識別部と、
距離識別部により識別された前記距離に基づいて、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合が前記距離に対応する所望増減割合となるように、前記噴射パターンデータを生成または修正するパターンデータ調整部と、
を備え、
パターンデータ調整部には、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の所望増減割合を距離識別部により識別される前記距離に対応付けて記憶する液体割合記憶部が接続されており、
液体割合記憶部は、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の所望増減割合を、距離識別部により識別される前記距離がメイン滴とサテライト滴との液体被噴射媒体着弾時の分離が果たされるか否かに基づいて、少なくとも2値化して記憶している
ことを特徴とする液体噴射装置。 - 各ノズル開口は、それぞれ異なる色の液体が供給される複数のノズル開口群に分割されており、
前記パターンデータ調整部は、各ノズル開口群に対応する圧力変動手段群毎に噴射パターンデータを生成または修正するようになっている
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。 - 複数のノズル開口は、少なくとも3以上であり、
異なる色の液体は、シアン色の液体、マゼンタ色の液体及びイエロー色の液体を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。 - ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離は、ヘッド部材の複数のノズル開口面と被噴射媒体保持部の液体被噴射媒体を支持する支持面との距離と液体被噴射媒体の厚みとから求められるようになっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液体噴射装置。 - ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を検出するセンサ
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液体噴射装置。 - ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を変更可能であると共に、当該距離に関する情報を取得可能なPG調整機構
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液体噴射装置。 - 液体割合記憶部は、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の所望増減割合を、距離識別部により識別される前記距離に対応するテーブルデータとして記憶している
ことを特徴とする請求項1乃至6に記載の液体噴射装置。 - 前記基準領域は、一定サイズのマトリクスパターンに対応する領域である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の液体噴射装置。 - 前記基準領域は、噴射パターンデータ自体に依存する可変の領域である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の液体噴射装置。 - 複数のノズル開口を有するヘッド部材と、
各ノズル開口部分の液体の圧力を変動させて当該液体を噴射させる複数の圧力変動手段と、
液体被噴射媒体を保持する被噴射媒体保持部と、
ヘッド部材の複数のノズル開口が液体被噴射媒体に対向する位置を通過するように、当該ヘッド部材を液体被噴射媒体に対して平行に相対的に移動させる移動機構と、
を備えた液体噴射装置を制御するための装置であって、
各圧力変動手段に駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、
ヘッド部材の移動中に前記駆動信号及び噴射パターンデータに基づいて各圧力変動手段を駆動させて各ノズル開口から液体を噴射させる制御本体部と、
ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を識別する距離識別部と、
距離識別部により識別された前記距離に基づいて、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の調整割合が前記距離に対応する所望増減割合となるように、前記噴射パターンデータを生成または修正するパターンデータ調整部と、
を備え、
パターンデータ調整部には、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の所望増減割合を距離識別部により識別される前記距離に対応付けて記憶する液体割合記憶部が接続されており、
液体割合記憶部は、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の所望増減割合を、距離識別部により識別される前記距離がメイン滴とサテライト滴との液体被噴射媒体着弾時の分離が果たされるか否かに基づいて、少なくとも2値化して記憶している
ことを特徴とする制御装置。 - 各ノズル開口は、それぞれ異なる色の液体が供給される複数のノズル開口群に分割されており、
前記パターンデータ調整部は、各ノズル開口群に対応する圧力変動手段群毎に噴射パターンデータを生成または修正するようになっている
ことを特徴とする請求項10に記載の制御装置。 - ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との前記距離は、ヘッド部材の複数のノズル開口面と被噴射媒体保持部の液体被噴射媒体を支持する支持面との距離と液体被噴射媒体の厚みとから求められるようになっている
ことを特徴とする請求項10または11に記載の制御装置。 - ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を検出するセンサ
に接続されたことを特徴とする請求項10または11に記載の制御装置。 - ヘッド部材の複数のノズル開口面と液体被噴射媒体表面との距離を変更可能であると共に、当該距離に関する情報を取得可能なPG調整機構
に接続されたことを特徴とする請求項10または11に記載の制御装置。 - 液体割合記憶部は、各ノズル開口からの液体の基準領域あたりの吐出回数の所望増減割合を、距離識別部により識別される前記距離に対応するテーブルデータとして記憶している
ことを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の制御装置。
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