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JP2008302652A - 圧電素子の特性情報付与方法、及び、液体噴射装置 - Google Patents

圧電素子の特性情報付与方法、及び、液体噴射装置 Download PDF

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JP2008302652A
JP2008302652A JP2007153916A JP2007153916A JP2008302652A JP 2008302652 A JP2008302652 A JP 2008302652A JP 2007153916 A JP2007153916 A JP 2007153916A JP 2007153916 A JP2007153916 A JP 2007153916A JP 2008302652 A JP2008302652 A JP 2008302652A
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真一 坪田
Shuji Yonekubo
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Abstract

【課題】圧電素子の非線形性を反映した特性情報付与方法、及び、液体噴射装置を提供する。
【解決手段】使用上想定される駆動電圧範囲における最小駆動電圧VhMnと最大駆動電圧VhMxをそれぞれ圧電素子に印加したときに実際に得られる変位量Dx1,Dx2に基づき、当該圧電素子の実質的な変位量特性を近似した一次関数の傾きを実質傾きとして取得し、基準傾きに対する実質傾きの比を求め、得られた比を当該圧電素子に固有の特性情報とした。
【選択図】図5

Description

本発明は、インクジェット式プリンタ等の液体噴射装置に適用される圧電素子の特性情報付与方法、及び、その圧電素子を備える液体噴射装置に関するものであり、特に、圧電素子の非線形性を反映することが可能な特性情報付与方法、及び、液体噴射装置に関するものである。
液体噴射装置は液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドから噴射対象物としての記録紙等に対して液体状のインクを吐出・着弾させてドットを形成することで記録を行うインクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタという)等の画像記録装置を挙げることができる。この液体噴射装置は、近年においては、画像記録装置に限らず、例えばディスプレー製造装置等の各種の製造装置にも応用されている。
上記液体噴射ヘッドには、液体を噴射するための駆動源として圧電素子を備えたものがある。この圧電素子は、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)からなる圧電材料と電極材料を積層して構成されており、駆動電極と共通電極との間に電圧を印加することによって、伸縮変形、或いは、撓み変形する。この圧電素子を、ノズル開口に連通する圧力室の一部を区画する振動板に接合し、駆動信号を印加して変形駆動させることによって振動板を変形させることができる。この振動板の変形によって圧力室の容積が変化して圧力室内のインクに圧力変動が生じ、この圧力変動を制御することによってノズル開口から液体を吐出(噴射)することができる。
そして、上記の圧電素子を駆動源として採用している液体噴射ヘッドでは、駆動信号の電圧値に応じて噴射される液体の量が増減するので、圧電素子を駆動するための駆動信号に対し最適な電圧値を設定することが行われている。
ところが、上記液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射装置では、当該装置が設置される環境の温度(環境温度)が、液体の噴射特性に影響を及ぼす。例えば、環境温度が上昇すると、液体の一種であるインクは粘度が低くなって流動性が増大するので、ノズル開口からインクが噴射されやすくなる。このため、圧電素子に同一の駆動信号が印加されたとしても、環境温度が基準状態(例えば25℃)よりも高い場合には、基準状態における場合よりも多量のインクがノズル開口から噴射されてしまう。
このように、使用する環境温度によって液体の噴射特性が変動してしまい、所望のインク滴をノズル開口から適切に噴射させることができない場合がある。このため、従来の液体噴射装置では、環境温度に応じて駆動信号の電圧を補正することにより、液体噴射特性(液体の噴射量、噴射速度、等)の安定化が図られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−153608号公報
ところで、上記の圧電素子に関し、印加される電圧に対する機械的な変位量は、非線形性を有することが分っている。一般的に圧電素子の多くは、電圧が上昇するにしたがって、当該電圧に対する変位量の増加の割合が低下する特性を有している。従来では、変位量の特性が線形を示す範囲内の比較的低い電圧で圧電素子を駆動していたため、この非線形特性を考慮しなくても大きな支障は無かった。
しかしながら、近年では、圧電素子をより大きく変位させる必要性が生じてきたため、駆動信号の電圧値も従来より高く設定される場合がある。これにより、上記の非線形性が問題となってきた。即ち、この非線形特性を考慮せずに、一旦定められた駆動信号の電圧を上述のように環境温度に応じて補正した場合、当該補正後の駆動信号で駆動したときの圧電素子の変位量は、非線形特性に応じて最適値から変動してしまう。これにより、液体噴射ヘッドのノズル開口から噴射される液量が変動するという問題を抱えている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電素子の非線形性を反映した特性情報付与方法、及び、液体噴射装置を提供することにある。
本発明の圧電素子の特性情報付与方法は、上記目的を達成するために提案されたものであり、駆動信号の印加によって変形する圧電素子の特性情報付与方法であって、
印加電圧の変化に対し圧電素子の変位量が線形に変化するとの仮定に基づき、当該線形特性を表す一次関数の傾きを基準傾きとし、
使用上想定される駆動電圧範囲における最小駆動電圧と最大駆動電圧をそれぞれ圧電素子に印加したときに実際に得られる変位量に基づき、当該圧電素子の実質的な変位量特性を近似した一次関数の傾きを実質傾きとして取得し、
前記基準傾きに対する前記実質傾きの比を求め、
得られた比を当該圧電素子に固有の特性情報としたことを特徴とする。
上記構成によれば、使用上想定される駆動電圧範囲における最小駆動電圧と最大駆動電圧をそれぞれ圧電素子に印加したときに実際に得られる変位量に基づき、当該圧電素子の実質的な変位量特性を近似した一次関数の傾きを実質傾きとして取得し、基準傾きに対する実質傾きの比を求め、得られた比を当該圧電素子に固有の特性情報としたので、圧電素子を駆動する際に、この圧電素子に固有の特性を反映した制御を行うことができる。例えば、当該圧電素子を液体噴射の駆動源とする液体噴射装置においては、この特性情報を液体噴射制御に反映させることにより、良好な噴射特性(噴射する液体の量、噴射速度など)を得ることが可能となる。
また、本発明の圧電素子の特性情報付与方法は、駆動電圧の印加による圧電素子の変形によって圧力室を膨張または収縮させることでノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドに適用される圧電素子の特性情報付与方法であって、
圧電素子への印加電圧の変化に対しノズル開口から噴射される液体の量が線形に変化するとの仮定に基づき、当該線形特性を表す一次関数の傾きを基準傾きとし、
使用上想定される駆動電圧範囲における最小駆動電圧と最大駆動電圧を圧電素子に印加したときにそれぞれノズル開口から実際に噴射される液体の量に基づき、当該圧電素子の実質的な噴射量特性を近似した一次関数の傾きを実質傾きとして取得し、
前記基準傾きに対する前記実質傾きの比を求め、
得られた比を当該圧電素子に固有の特性情報としたことを特徴とする。
上記構成によれば、使用上想定される駆動電圧範囲における最小駆動電圧と最大駆動電圧を圧電素子に印加したときにそれぞれノズル開口から実際に噴射される液体の量に基づき、当該圧電素子の実質的な噴射量特性を近似した一次関数の傾きを実質傾きとして取得し、基準傾きに対する前記実質傾きの比を求め、得られた比を当該圧電素子に固有の特性情報としたので、当該圧電素子を備える液体噴射ヘッドを搭載する液体噴射装置では、この圧電素子に固有の特性情報を液体噴射制御に反映させることにより、良好な噴射特性を得ることが可能となる。
また、本発明の圧電素子の液体噴射装置は、駆動信号の印加によって変位して圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧電素子を有し、該圧電素子の作動によってノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記圧電素子を駆動するための駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、
を備える液体噴射装置であって、
上記特性情報付与方法によって得られた特性情報を記憶する特性情報記憶手段と、
前記特性情報記憶手段に記憶された特性情報に基づいて、前記駆動信号発生手段から発生する駆動信号の駆動電圧を補正する駆動電圧補正手段と、
を備えることを特徴とする。
この構成によれば、特性情報付与方法によって得られた特性情報を記憶する特性情報記憶手段と、特性情報記憶手段に記憶された特性情報に基づいて、駆動信号発生手段から発生する駆動信号の駆動電圧を補正する駆動電圧補正手段と、を備えるので、この特性情報を駆動信号の駆動電圧の補正に反映させることにより、良好な噴射特性(噴射する液体の量、噴射速度など)を得ることが可能となる。
上記構成において、現状設定されている駆動信号の駆動電圧をVhTとし、ノズル群毎に対応する各圧電素子の特性情報の平均値をδとし、n>0としたとき、駆動電圧補正手段は、以下の式(1)に基づいて、駆動電圧VhTを補正する構成とすることが望ましい。
Figure 2008302652
また、上記構成において、前記駆動電圧補正手段は、液体の噴射時における膨張動作又は収縮動作の基準となる圧力室の基準容積を維持するための駆動信号の中間電圧を、前記特性情報に基づいて補正する構成を採用することが望ましい。
なお、上記構成において、前記駆動電圧補正手段は、現状設定されている駆動信号の中間電圧をVcとし、n>0としたとき、特性情報δ及び以下の式(2)に基づいて、中間電圧を補正することが望ましい。
Figure 2008302652
この構成によれば、駆動電圧補正手段が、特性情報に基づいて中間電圧を補正するので、噴射直後の液体の振動(残留振動)を抑制するための制振波形要素が駆動信号に含まれている構成では、液体噴射時の圧力変動の大きさに対する制振時の圧力変動の大きさのバランスを適切に設定することが可能となる。
また、上記構成において、液体噴射装置の使用環境における環境温度を検出する温度検出手段を備え、
前記駆動電圧補正手段は、前記温度検出手段によって検出された環境温度に基づいて前記駆動信号の中間電圧を設定した後、当該設定後の中間電圧を前記式(2)に基づいて補正する構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、駆動電圧補正手段は、温度検出手段によって検出された環境温度に基づいて駆動信号の中間電圧を補正した後、当該補正後の中間電圧を特性情報に基づいてさらに補正するので、液体噴射装置を使用する際の環境温度が基準環境温度から変動した場合においても、圧電素子の固有の特性を補正に反映しつつ最適な中間電圧に設定することができる。
なお、上記構成において、前記駆動電圧補正手段は、液体噴射装置の使用上で望ましい環境温度として定められた基準環境温度をTbとし、当該基準環境温度Tbの下での使用を想定した駆動信号の基準電圧をVhBとし、前記温度検出手段によって検出された環境温度をTとし、駆動電圧に対する中間電圧を規定する係数をa、中間電圧に関する温度補正係数をbとしたときに、以下の式(3)に基づいて、中間電圧Vcを補正することが望ましい。
Figure 2008302652
なお、「基準電圧」とは、一定の条件下(環境温度など)で圧電素子を実際に作動させる上で必要としている変位量を得るための駆動電圧を意味する。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、図1に示すインクジェット式プリンタ(以下、プリンタと略記する)を例示する。
プリンタ1は、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド2が取り付けられると共に、インクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設されたプラテン5と、記録ヘッド2が搭載されたキャリッジ4を記録紙6(吐出対象物あるいは噴射対象物の一種)の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、ヘッド移動方向に直交する方向である紙送り方向に記録紙6を搬送する紙送り機構8等を備えて概略構成されている。ここで、紙幅方向とは、主走査方向であり、紙送り方向とは、副走査方向である。なお、インクカートリッジ3としては、キャリッジ4に装着するタイプでも、或いはプリンタ1の筐体側に装着してインク供給チューブを介して記録ヘッド2に供給するタイプでもよい。
キャリッジ4は、主走査方向に架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構7の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ4の主走査方向の位置は、リニアエンコーダ10によって検出され、検出信号が位置情報としてプリンタコントローラ(図示せず)に送信される。これにより、プリンタコントローラはこのリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいてキャリッジ4の走査位置を認識しながら、記録ヘッド2による記録動作(インクの噴射動作)等を制御することができる。
また、記録ヘッド2の移動範囲内であってプラテン5よりも外側には、記録ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定してある。このホームポジションには、キャッピング機構11が設けられている。このキャッピング機構11は、キャップ部材11´によって記録ヘッド2のノズル面を封止し、ノズル開口28(図2参照)からのインク溶媒の蒸発を防止する。また、このキャッピング機構11は、封止状態のノズル面に負圧を与えてノズル開口28からインクを強制的に吸引排出するクリーニング動作に用いられる。
図2は、上記記録ヘッド2の構成を説明する部分断面図である。この記録ヘッド2は、ケース12と、このケース12内に収納されるアクチュエータユニット13と、ケース12の底面(先端面)に接合される流路ユニット14等を備えている。上記のケース12は、例えば、エポキシ系樹脂により作製され、その内部にはアクチュエータユニット13を収納するための収納空部15が形成されている。アクチュエータユニット13は、櫛歯状に切り分けられた複数の圧電素子16(圧力発生手段)と、この圧電素子16が接合される固定板17とを備えている。本実施形態における記録ヘッド2は、後述するように、合計4色のインクを吐出(噴射)可能に構成されており、各色に対応させて合計4列のノズル列(ノズル群の一種)がノズルプレート22に形成されている。そして、記録ヘッド2は、各ノズル列に対応して上記アクチュエータユニット13を合計4つ搭載している。
アクチュエータユニット13の各圧電素子16には、フレキシブルケーブル18が接続されており、駆動信号発生回路43(図3参照)からの駆動信号がこのフレキシブルケーブル18を通じて供給されるようになっている。なお、本実施形態における圧電素子16は、電界方向に直交する方向に変位する所謂縦振動モードの圧電素子であり、駆動信号が供給されると圧電体及び電極の積層方向とは直交する方向に変位(伸縮)する。この圧電素子16の詳細については後述する。
流路ユニット14は、流路形成基板21の一方の面にノズルプレート22を、流路形成基板21の他方の面に振動板23を、それぞれ接合して構成されている。この流路ユニット14には、リザーバ24と、インク供給口25と、圧力室26と、ノズル連通口27と、ノズル開口28とが設けられている。そして、インク供給口25、圧力室26及びノズル連通口27を経てノズル開口28に至る一連のインク流路が、ノズル開口28毎に対応して形成されている。
上記ノズルプレート22は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば360dpi)で複数のノズル開口28を列状に穿設した金属製の薄いプレートである。本実施形態では、このノズルプレート22をステンレス製の板材によって構成し、ノズル開口28の列を複数設けている。そして、1つのノズル列は、例えば360個のノズル開口28によって構成される。そして、本実施形態における記録ヘッド2は、夫々異なる色のインク(本発明における液体の一種)、具体的には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の合計4色のインクを貯留する4つのインクカートリッジ3を装着可能に構成されており、これらの色に対応させて合計4列のノズル列がノズルプレート22に形成されている。
上記振動板23は、支持板29の表面に弾性体膜30を積層した二重構造である。本実施形態では、金属板の一種であるステンレス板を支持板29とし、この支持板29の表面に樹脂フィルムを弾性体膜30としてラミネートした複合板材を用いて振動板23を作製している。この振動板23には、圧力室26の容積を変化させるダイヤフラム部31と、リザーバ24の一部を封止するコンプライアンス部32とが設けられている。
上記のダイヤフラム部31は、エッチング加工等によって支持板29を部分的に除去することで作製される。即ち、このダイヤフラム部31は、圧電素子16の先端面が接合される島部33と、この島部33を囲む薄肉弾性部34とからなる。上記のコンプライアンス部32は、リザーバ24の開口面に対向する領域の支持板29を、ダイヤフラム部31と同様にエッチング加工等によって除去することにより作製され、リザーバ24に貯留されたインクの圧力変動を吸収するダンパーとして機能する。
そして、上記の島部33には圧電素子16の先端面が接合されているので、この圧電素子16の自由端部を伸縮させることで圧力室26の容積を変動させることができる。この容積変動に伴って圧力室26内のインクに圧力変動が生じる。そして、記録ヘッド2は、この圧力変動を利用してノズル開口28からインク滴を噴射させる。
図3は、プリンタ1の電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態におけるプリンタ1は、プリンタコントローラ35とプリントエンジン36とで概略構成されている。プリンタコントローラ35は、ホストコンピュータ等の外部装置からの印刷データ等が入力される外部インタフェース(外部I/F)37と、各種データ等を記憶するRAM38と、各種制御のための制御プログラム等を記憶したROM39と、EEPROMやフラッシュROM等からなる不揮発性記憶素子40と、ROM39に記憶されている制御プログラムに従って各部の統括的な制御を行う制御部41と、クロック信号を発生する発振回路42と、記録ヘッド2へ供給する駆動信号を発生する駆動信号発生回路43(駆動信号発生手段の一種)と、印刷データをドット毎に展開することで得られたドットパターンデータや駆動信号等を記録ヘッド2に出力するための内部インタフェース(内部I/F)44とを備えている。
プリントエンジン36は、記録ヘッド2と、キャリッジ移動機構7と、紙送り機構8と、リニアエンコーダ10とから構成されている。記録ヘッド2は、ドットパターンデータがセットされるシフトレジスタ46と、シフトレジスタ46にセットされたドットパターンデータをラッチするラッチ回路47と、ラッチ回路47からのドットパターンデータを翻訳してパルス選択データを生成するデコーダ48と、電圧増幅器として機能するレベルシフタ49と、圧電素子16に対する駆動信号の供給を制御するスイッチ回路50と、圧電素子16とを備えている。また、この記録ヘッド2には、サーミスタ及びA/D変換器等で構成される温度検出回路45が設けられている。この温度検出回路45は、本発明における温度検出手段として機能し、記録ヘッド2の周辺の環境温度を検出し、検出した温度に比例した大きさの信号を制御部41に出力するように構成されている。
上記の駆動信号発生回路43は、予め定められた波形の駆動信号COMを発生する。本実施形態におけるプリンタ1は、液量の異なるインク滴を吐出することで大きさの異なるドットを記録紙に形成する多階調記録が可能であり、大ドット、中ドット、小ドット、及び非記録の4階調での記録動作が可能に構成されている。そして、駆動信号発生回路43は、例えば図4に示すように、吐出パルスDP1、吐出パルスDP2、吐出パルスDP3、及び、非記録時にメニスカスを微振動させるための微振動パルスDP4を一連に接続して構成される駆動信号COMを発生する。
図4に例示した駆動信号COMは、テキスト印字等の比較的高速な記録に用いられる駆動信号であり、吐出パルスDP1〜DP3は、何れも同一の波形となっている。そして、例えば、吐出パルスDP2のみを圧電素子16に供給することで、記録紙6上に小ドットが形成されるようになっている。また、同様に、吐出パルスDP1及びDP3の2つのパルスを圧電素子16に供給することで中ドットが形成され、吐出パルスDP1、DP2、及びDP3の3つのパルスを圧電素子16に供給することで大ドットが形成されるように構成されている。さらに、ドットを形成しない非記録時には、微振動パルスVP4が圧電素子16に供給され、これによりインク滴が吐出されない程度にノズル開口28に露出したメニスカスが微振動する。そして、この駆動信号COMは、記録ヘッド2に搭載されている各アクチュエータユニット13に対して共通に用いられる。
次に、上記吐出パルスについて説明する。本実施形態における吐出パルスは、基準電位VBから最高電位VHまで電位を上昇させる第1充電要素P1と、最高電位VHを所定時間維持する第1ホールド要素P2と、最高電位VHから最低電位VLまで比較的急峻な勾配で電位を降下させる放電要素P3と、最低電位VLを極く短い時間維持する第2ホールド要素P4と、最低電位VLから中間電位VMまで僅かに電位を上昇させる第2充電要素P5と、中間電位VMを所定時間維持する第3ホールド要素P6と、中間電位VMから基準電位VBまで電位を復帰させる第3充電要素P7とにより構成されている。また、この吐出パルスは、第1充電要素P1、第1ホールド要素P2、及び放電要素P3からなる吐出波形要素と、第2ホールド要素P4、第2充電要素P5、第3ホールド要素P6、及び第3充電要素P7からなる制振波形要素との2つの波形要素に大別することができる。即ち、吐出波形要素は、ノズル開口28からインクを吐出させるべく圧力室26を膨張及び伸縮させるための波形要素であり、制振波形要素は、インク滴を吐出した後のメニスカスの残留振動を抑制させるべく圧力室26を基準電位VBに対応する基準容積に復帰させるための波形要素である。
上記の吐出パルスが圧電素子16に供給されると次のように作用する。まず、第1充電要素P1が供給されて圧電素子16が収縮すると、圧力室26が基準電位VBで規定される基準容積(インク吐出時における圧力室の膨張又は収縮の基準となる容積)から最大容積に膨張する。そして、第1ホールド要素P2により圧力室26が最大容積に一定時間維持された後、放電要素P3が供給されることにより圧電素子16が伸長して圧力室26が急激に収縮する。この圧力室26の一連の容積変動に伴って圧力室26内のインクに圧力変動が生じ、大ドットを形成し得る量のインクがノズル開口26から吐出される。その後、第2ホールド要素P4、第2充電要素P5、第3ホールド要素P6、及び、第3充電要素P7が圧電素子16に順次供給され、インク滴の吐出に伴うメニスカスの残留振動を短時間で収束させるべく、圧力室26が基準容積に復帰する。即ち、第2充電要素P5及び第3充電要素P7は、インク滴吐出後の残留振動によってメニスカスが圧力室26とは反対側(ヘッドの外側)に押し出されるタイミングで圧電素子16に印加される。これにより、当該タイミングで圧力室26が膨張して圧力室内のインクの圧力が負圧化されるため、メニスカスの残留振動が相殺(制振)される。この制振を行うための圧力変動の強さは、吐出パルスの中間電圧Vc(最低電位VLから基準電位VBまでの電位差)によって規定される。
また、上記吐出パルスDP1〜DP3を供給することで吐出されるインク滴の液量や飛翔速度は、各吐出パルスの形状や駆動電圧VhT(最低電位VLから最高電位VHまでの電位差)の大きさで規定される。ところが、同じ駆動電圧で圧電素子16を駆動した場合においても、環境温度の変化によってインクの粘度が変化し、これに伴って液量や飛翔速度も変動してしまう。そのため、プリンタを使用する上の基準となる環境温度(例えば、25℃)の下で全ノズル開口28から吐出されるインク滴について平均して目標となる液量(設計液量)が得られるように、駆動信号COMの吐出パルスの駆動電圧VhTとして基準電圧VhBが予め定められている。即ち、この基準電圧VhBは、一定の条件下で圧電素子16を実際に作動させる上で必要としている変位量を得るための駆動電圧である。そして、プリンタ1では、環境温度に応じて駆動電圧VhTを補正するようにしている。即ち、環境温度が基準環境温度よりも上昇した場合、駆動電圧VhTを基準電圧VhBよりも低く設定する一方、環境温度が基準環境温度よりも下降した場合、駆動電圧VhTを基準電圧VhBよりも高く設定する。
図5は、印加電圧、即ち、圧電素子に印加する吐出パルスの駆動電圧VhTに応じた圧電素子の変位量を例示したグラフである。同図において、破線で示すCiは、印加電圧の変化に対し圧電素子の変位量が線形に変化する理想的(仮想的)な特性を示している。これに対し、実線で示すCxは、印加電圧の変化に対して実際に得られる圧電素子の変位量(実質変位量)の特性を示している。このCxに見られるように、一般的な圧電素子は、駆動電圧が上昇するにつれて当該駆動電圧に対する変位量の増加の割合が少なくなる傾向、即ち、非線形特性を有している。従来では、変位量の特性が線形を示す範囲(図においてAで示す範囲)の駆動電圧で圧電素子を駆動していたが、本実施形態では変位量の特性が非線形となる範囲(図においてBで示す範囲)の駆動電圧で圧電素子16を駆動する。このため、上記プリンタ1でのインク滴吐出制御において、この圧電素子の非線形特性を反映させる必要がある。
そこで、本実施形態では、プリンタ1の製造工程において記録ヘッド2に搭載する圧電素子16の特性検査を行い、得られた特性を特性情報として当該圧電素子16(アクチュエータユニット13)に付与し、この特性情報を記録ヘッド2によるインク噴射制御に反映するようにしている。より具体的には、圧電素子16に駆動電圧を印加して当該圧電素子16の変位量を測定し、測定結果に基づいて圧電素子16の実質的な変位量特性を近似した一次関数の傾きを実質傾きとして求め、この実質傾きと、後述する基準傾きとの比を求め、得られた比(傾き比δ)を圧電素子16に固有の特性情報とする。さらに、この特性情報に基づき、記録ヘッド2に搭載するアクチュエータユニット13の組み合わせも行われる。
本実施形態における特性検査はアクチュエータユニット単位で行われ、上記吐出パルスを検査用吐出パルスとして用いて圧電素子16を駆動したときの変位量(実質変位量)をそれぞれ測定する。この際、上記検査用吐出パルスの駆動電圧を、使用上想定される駆動電圧範囲における最小駆動電圧と最大駆動電圧に設定して測定を行う。即ち、図5におけるBで示す範囲の最小駆動電圧であるVhMnに設定された第1の検査用吐出パルスと、同じくBで示す範囲の最高駆動電圧であるVhMxに設定された第2の検査用吐出パルスを用いてそれぞれ変位量の測定を行う。圧電素子16の変位量の測定方法としては、例えば、カメラを用いて測定する方法や、圧電素子16の伸縮動作時の静電容量の変化を利用する方法などの種々の方法を採用することができる。なお、上記の検査用吐出パルスの駆動電圧に関しては、実使用電圧の範囲における最小駆動電圧と最高駆動電圧には限らず、実使用電圧の範囲内の任意の2点の電圧を選んでも良い。
まず、第1の検査用吐出パルスを圧電素子16に印加することで第1の実質変位量Dx1を測定し、また、第2の検査用吐出パルスを圧電素子16に印加することで第2の実質変位量Dx2を測定する。続いて、測定結果に基づいて一次関数の傾き(実質傾き)を求める。即ち、図5の例の場合、(Dx2−Dx1)/(VhMx−VhMn)を計算することで実質傾きSxを求める。続いて、基準傾きSiに対する実質傾きSxの比(傾き比)δ(=Sx/Si)を求める。この基準傾きSiは、図5においてCiで示す理想的な特性において、最小駆動電圧VhMn及び最高駆動電圧VhMxと、これらに対応する変位量Di1及びDi2とから算出される傾きである。なお、この傾き比δをそのまま当該圧電素子(アクチュエータユニット)の特性情報としてもよいが、本実施形態においては、図6に示す換算テーブルに基づいてランク分けを行う。
例示した換算テーブルは、傾き比δ×100(%)の下限値40%から上限値100%までを5%毎に区切って合計12の範囲(ランク)に分割し、特性検査で得られた傾き比δがどの範囲の値を採るかに応じて40〜95%(5%おき)の何れかの換算後δ′に換算すると共に、QRコード用のA〜Lの何れかのキャラクタを当てはめるようになっている。例えば、特性検査で得られた傾き比δが0.73(73%)であった場合、このδは70%以上75%未満の値であるので、換算後δ′として「70」が設定されると共に、この換算後δ′に対応するQRコード用キャラクタとして「G]が当てはめられる。このようにして、アクチュエータユニット毎に換算後δ′と、これに対応するQRコード用キャラクタが付与される。
以上のようにして、アクチュエータ毎に特性検査を行って特性情報を取得したならば、記録ヘッド2に搭載するためのアクチュエータユニット13の組み合わせを行う。この組み合わせ工程では、特性情報である傾き比δ(換算後δ′)に基づいて、アクチュエータユニット13の組み合わせを決定する。本実施形態における記録ヘッド2は、同一傾き比δを持つ4つのアクチュエータユニットが組み合わされて搭載される。これにより、各アクチュエータユニット13の特性を同程度に揃えることができる。その結果、各アクチュエータユニット13で共通の駆動信号COMを用いてインク滴の噴射制御を行う構成において、ノズル列間の液量のばらつきを可及的に低減することができ、その結果、記録画像の高画質化を図ることが可能となる。
なお、各アクチュエータユニット13の特性情報(傾き比δ)に対応するキャラクタは、QRコードに変換されてシール等に印刷され、このシールは記録ヘッド2の側面等に貼付される。そして、記録ヘッド2をプリンタ1に搭載する際にこのシールに印刷されたQRコードが読み込まれて、その内容(キャラクタデータ)が上記不揮発性記憶素子40に記憶される。
次に、プリンタ1における駆動信号(吐出パルス)の駆動電圧の補正処理について説明する。この駆動電圧の補正処理の実行タイミングに関し、プリンタ1の電源が投入される毎に実行するようにしても良いし、一定時間毎、又は、ユーザによる補正指示入力に応じて実行するようにしても良い。
駆動電圧の補正処理に移行すると、まず、環境温度に応じて駆動電圧VhTが補正(再設定)される。本実施形態においては、制御部41が本発明における駆動電圧補正手段として機能し、温度検出回路45によって検出された環境温度を取得する。ここで、制御部41は、基準環境温度Tbの下での使用を想定した駆動信号の基準電圧をVhBとし、温度検出回路45によって検出された環境温度をTとし、圧電素子16の温度補正係数をCとしたときに、以下の式(A)に基づいて、駆動電圧VhTを再設定する。
Figure 2008302652
このように環境温度に応じて駆動信号(吐出パルス)の駆動電圧を補正することで、プリンタ1を使用する際の環境温度が変わった場合においても、この温度の変化に応じて適切な駆動電圧に設定することができる。しかしながら、この補正は、圧電素子16の上記特性が線形であることを前提としているため、一旦定められた駆動信号の電圧値(基準電圧をVhB)を上述のように環境温度に応じて補正した場合、補正後の駆動信号で駆動したときの圧電素子16の変位量は、非線形特性に応じて最適値から変動してしまう。このため、制御部41は、環境温度に基づいて駆動電圧を補正した後、当該補正後の駆動電圧(現状の駆動電圧)を上記の特性情報に基づいてさらに補正する。
この補正処理において制御部41は、不揮発性記憶素子40に記憶されているキャラクタデータを読み出してこれを変換することで圧電素子16(アクチュエータユニット13)の特性情報(本実施形態の場合、換算後δ′)を取得し、以下の式(B)に基づいて、駆動電圧VhTを補正する。但し、n>0、δ=δ′/100である。
Figure 2008302652
ここで、図7は、特性情報(傾き比δ(0<δ≦1)の値と、補正後の駆動電圧VhT′の関係を示したグラフである。なお、同図では、補正前の駆動電圧VhTを5(V)とし、上記式(B)のnを上記条件における任意の異なる3点(0<α<β<γ)に設定して補正を行った場合の結果を例示している。なお、上記式(B)のnについては、α,β,γに設定して補正した後の各駆動電圧で駆動した場合の変位量をそれぞれ測定し、目標変位量に最も近くなる値をnとして決定する。一旦決定したnは変位量比δの測定電圧、圧電素子16や記録ヘッド2の構造や製造条件に変化がない場合はその値を継続的に適用することができる。条件に変化が生じた場合には、nを再決定する必要がある。
図7に示すように、傾き比δが1に近いほど、つまり実質傾きが基準傾きに近いほど、補正前と補正後の駆動電圧の差が小さくなる(補正後の駆動電圧が補正前の駆動電圧に近くなる)のに対し、傾き比δが1よりも小さくなるほど、つまり実質傾きが基準傾きよりも小さくなるほど、補正前と補正後の駆動電圧の差が大きくなる(補正後の駆動電圧が補正前の駆動電圧よりも高くなる)ことが分る。したがって、実質傾きが基準傾きよりも小さいときには、これを補うべく駆動電圧がより高く補正される。このようにして駆動電圧VhTの補正処理が終了したならば、補正後の駆動電圧VhT′を、以降の駆動信号の駆動電圧VhTとして設定する。
上記補正は、駆動信号の駆動電圧VhT、即ち、最低電位から最高電位までの電位差を変更するものである。ところが、この補正に伴ってVhTに対するVcの割合が適正な状態からずれてしまう。つまり、VhTを上昇させる補正を行った場合、VhTに対するVcの割合が補正前よりも小さくなるため、インク滴吐出後のメニスカスの残留振動を十分に制振できず、この残留振動が次の吐出動作に悪影響を及ぼす可能性がある。このことに鑑み、制御部41は、駆動電圧VhTの補正処理が終了したならば、次に、駆動信号の中間電圧Vcの補正を行う。
まず、環境温度に応じて中間電圧Vcが補正される。この中間電圧Vcは、吐出波形要素によってインク滴が吐出された後のメニスカスの残留振動を効果的に抑制することができるよう、駆動電圧VhT(詳しくは基準電圧VhB)の大きさに応じて決定される。この際、基準電圧VhBに対する中間電圧Vcを規定する係数が予め定められている(以下、係数a)。また、環境温度に応じても中間電圧Vcの最適値が異なるため、この環境温度も考慮されて中間電圧Vcが補正される。この中間電圧Vcに関する温度補正係数をbとする。そして、駆動電圧補正手段として機能する制御部41は、温度検出回路45によって検出された環境温度Tを取得して、以下の式(C)に基づいて、中間電圧Vcを補正する。
Figure 2008302652
このように環境温度に応じて駆動信号(吐出パルス)の中間電圧Vcを補正することで、プリンタ1を使用する際の環境温度が変わった場合においても、この温度の変化に応じて適切な中間電圧Vcに設定することができる。しかしながら、この補正においても、圧電素子16の上記特性が線形であることを前提としているため、補正後の中間電圧Vcは、非線形特性に応じて最適値からずれる可能性がある。このため、制御部41は、環境温度に基づいて駆動電圧を補正した後、当該補正後の中間電圧Vc(現状の中間電圧Vc)を上記の特性情報に基づいてさらに補正する。
この補正処理において制御部41は、不揮発性記憶素子40に記憶されているキャラクタデータを読み出してこれを変換することで特性情報を取得し、以下の式(D)に基づいて、現状設定されている中間電圧Vcを補正する。但し、n>0、δ=δ′/100である。
Figure 2008302652
ここで、図8は、上記式(D)による補正前の中間電圧Vcと、補正後の中間電圧Vc(Vc′)の関係を示したグラフであり、(a)は特性情報δが0.5(50%)であった場合、(b)は特性情報δが0.9(90%)であった場合をそれぞれ示している。なお、同図では、中間電圧Vcを駆動電圧VhTに対する割合で示している。また、上記式(D)のnを上記条件における任意の異なる3点(α<β<γ)に設定して補正を行った場合の結果を示している。同図に示すように、補正前の中間電圧Vcの値に応じて補正後の中間電圧Vcの値の大きさが変わってくる。即ち、補正前の中間電圧Vcの値が小さいほど補正前の値に対する補正後の値の上昇率が大きくなる(補正前の値と補正後の値との差が大きくなる)のに対し、補正前の中間電圧Vcの値が大きいほど補正前の値に対する補正後の値の上昇率が小さくなる(補正前の値と補正後の値との差が小さくなる)。また、傾き比δが1よりも小さくなるほど、つまり実質傾きが基準傾きよりも小さくなるほど、補正前と補正後の中間電圧Vcの値の差が大きくなる傾向にあるのに対し、傾き比δが1に近いほど、つまり実質傾きが基準傾きに近いほど、補正前と補正後の中間電圧Vcの値の差が小さくなる傾向にある。
以上のように、使用上想定される駆動電圧範囲における最小駆動電圧と最大駆動電圧をそれぞれ圧電素子16に印加したときに実際に得られる変位量に基づいて実質傾きを取得し、基準傾きに対する実質傾きの比δを求め、得られた傾き比δを当該圧電素子16に固有の特性情報としたので、圧電素子16を駆動する際に、この圧電素子16に固有の特性を反映した制御を行うことができる。即ち、この圧電素子16をインク噴射の駆動源とするプリンタ1においては、この特性情報を吐出制御(噴射制御)に反映させることにより、良好な吐出特性(吐出するインクの量、吐出速度など)を得ることが可能となる。
また、制御部41は、駆動信号(吐出パルス)の中間電圧Vcを、特性情報に基づいて補正するので、吐出直後のインク(メニスカス)の振動を抑制するための制振波形要素が駆動信号に含まれている構成では、インク吐出時の圧力変動の大きさに対する制振時の圧力変動の大きさのバランスを適切に設定することが可能となる。その結果、駆動電圧VhTを補正した場合においても、インク吐出後のメニスカスの残留振動を効果的に抑制することができ、良好な吐出特性を維持することが可能となる。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
例えば、上記特性検査では、圧電素子16の実質的な変位量特性を近似した一次関数の実質傾きと基準傾きとの比を求め、この傾き比δを特性情報としたが、これには限らない。例えば、圧電素子16への印加電圧の変化に対しノズル開口28から噴射されるインクの量が線形に変化する仮想的(理想的)な線形特性を表す一次関数の傾きを基準傾きとし、第1の検査用吐出パルスと第2の検査用吐出パルスを圧電素子16に印加したときにそれぞれノズル開口28から実際に吐出されるインク滴の量に基づいて圧電素子16の実質的な噴射量特性(噴射量特性)を近似した一次関数の傾き(実質傾き)を取得し、基準傾きに対する実質傾きの比を求め、この比を当該圧電素子16に固有の特性情報とする構成を採用しても良い。この構成においても、この特性情報を用いて駆動電圧VhTを補正することにより、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、アクチュエータユニット毎に特性検査を行い、その結果に基づいて個々に特性情報を付与する構成を例示したが、これには限られない。この種のアクチュエータユニット(詳しくは、個々の圧電素子に分割する前の振動子基材)は、1つのウェハを複数に分割することによって得られるが、各々の特性はウェハ上の位置に応じて異なる。即ち、ウェハの外側に位置するアクチュエータユニットほど傾き比δが小さく、ウェハの中心側に位置するアクチュエータユニットほど傾き比δが大きくなる(理想的な特性に近づく)傾向にあることが分っている。そのため、図9のウェハ上におけるアクチュエータユニット(1〜90)の分布図に示すように、例えば、ウェハの中心領域、ウェハの外側領域、及び、中心領域と外側領域の間の中間領域などのようにウェハを複数の領域に区分し、それぞれの領域に上記の傾向に基づいて傾き比δをそれぞれ割り当て、それぞれの領域に位置するアクチュエータユニットに対し当該領域に割り当てられている傾き比δを特性情報として付与する構成を採ることも可能である。図9の例では、ウェハの外側領域Aには傾き比δとして50(%)を、ウェハの中間領域Bには傾き比δとして70(%)を、ウェハの中心領域Cには傾き比δとして90(%)を、それぞれ割り当てている。これにより、アクチュエータユニット毎に特性検査を行う手間が省け、アクチュエータユニットに対して特性情報を容易に付与することができる。
さらに、上記実施形態では、複数の圧電素子16を備えてユニット化されたアクチュエータユニット13毎に特性情報を付与する構成を例示したが、これには限らず、例えば、圧力室毎に個別に設けられる所謂撓み振動モードの圧電素子など、圧電素子がユニット化されていない場合には、個々の圧電素子にそれぞれ特性情報を付与する構成を採用することもできる。
また、本発明は、上記プリンタ以外の液体噴射装置にも適用できる。例えば、ディスプレー製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも適用することができる。
プリンタの構成を説明する斜視図である。 記録ヘッドの構成を説明する要部断面図である。 プリンタの電気的構成を説明するブロック図である。 駆動信号の構成を説明する図である。 駆動電圧に応じた圧電素子の変位量を例示したグラフである。 変位量比に関する換算テーブルの例である。 変位量比の値と補正後の駆動電圧の関係を示したグラフである。 補正前の中間電圧と補正後の中間電圧との関係を示したグラフである。 ウェハ上におけるアクチュエータユニットの分布図である。
符号の説明
1…プリンタ,2…記録ヘッド,4…キャリッジ,13…アクチュエータユニット,16…圧電素子,40…不揮発性記憶素子,41…制御部,43…駆動信号発生回路,45…温度検出回路

Claims (8)

  1. 駆動信号の印加によって変形する圧電素子の特性情報付与方法であって、
    印加電圧の変化に対し圧電素子の変位量が線形に変化するとの仮定に基づき、当該線形特性を表す一次関数の傾きを基準傾きとし、
    使用上想定される駆動電圧範囲における最小駆動電圧と最大駆動電圧をそれぞれ圧電素子に印加したときに実際に得られる変位量に基づき、当該圧電素子の実質的な変位量特性を近似した一次関数の傾きを実質傾きとして取得し、
    前記基準傾きに対する前記実質傾きの比を求め、
    得られた比を当該圧電素子に固有の特性情報としたことを特徴とする圧電素子の特性情報付与方法。
  2. 駆動電圧の印加による圧電素子の変形によって圧力室を膨張または収縮させることでノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドに適用される圧電素子の特性情報付与方法であって、
    圧電素子への印加電圧の変化に対しノズル開口から噴射される液体の量が線形に変化するとの仮定に基づき、当該線形特性を表す一次関数の傾きを基準傾きとし、
    使用上想定される駆動電圧範囲における最小駆動電圧と最大駆動電圧を圧電素子に印加したときにそれぞれノズル開口から実際に噴射される液体の量に基づき、当該圧電素子の実質的な噴射量特性を近似した一次関数の傾きを実質傾きとして取得し、
    前記基準傾きに対する前記実質傾きの比を求め、
    得られた比を当該圧電素子に固有の特性情報としたことを特徴とする圧電素子の特性情報付与方法。
  3. 駆動信号の印加によって変位して圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧電素子を有し、該圧電素子の作動によってノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
    前記圧電素子を駆動するための駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、
    を備える液体噴射装置であって、
    請求項1又は請求項2に記載の圧電素子の特性情報付与方法によって得られた特性情報を記憶する特性情報記憶手段と、
    前記特性情報記憶手段に記憶された特性情報に基づいて、前記駆動信号発生手段から発生する駆動信号の駆動電圧を補正する駆動電圧補正手段と、
    を備えることを特徴とする液体噴射装置。
  4. 前記駆動電圧補正手段は、現状設定されている駆動信号の駆動電圧をVhTとし、圧電素子の特性情報をδとし、n>0としたとき、以下の式(1)に基づいて、駆動電圧VhTを補正することを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
    Figure 2008302652
  5. 前記駆動電圧補正手段は、液体の噴射時における膨張動作又は収縮動作の基準となる圧力室の基準容積を維持するための駆動信号の中間電圧を、前記特性情報に基づいて補正することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の液体噴射装置。
  6. 前記駆動電圧補正手段は、現状設定されている駆動信号の中間電圧をVcとし、n>0としたとき、特性情報δ及び以下の式(2)に基づいて、中間電圧を補正することを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
    Figure 2008302652
  7. 液体噴射装置の使用環境における環境温度を検出する温度検出手段を備え、
    前記駆動電圧補正手段は、前記温度検出手段によって検出された環境温度に基づいて前記駆動信号の中間電圧を設定した後、当該設定後の中間電圧を前記式(2)に基づいて補正することを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
  8. 前記駆動電圧補正手段は、液体噴射装置の使用上で望ましい環境温度として定められた基準環境温度をTbとし、当該基準環境温度Tbの下での使用を想定した駆動信号の基準電圧をVhBとし、前記温度検出手段によって検出された環境温度をTとし、駆動電圧に対する中間電圧を規定する係数をa、中間電圧に関する温度補正係数をbとしたときに、以下の式(3)に基づいて、中間電圧Vcを補正することを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。
    Figure 2008302652
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