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JP3784541B2 - 交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法およびこの方法に用いるインバータ - Google Patents

交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法およびこの方法に用いるインバータ Download PDF

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JP3784541B2 JP20958698A JP20958698A JP3784541B2 JP 3784541 B2 JP3784541 B2 JP 3784541B2 JP 20958698 A JP20958698 A JP 20958698A JP 20958698 A JP20958698 A JP 20958698A JP 3784541 B2 JP3784541 B2 JP 3784541B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力電子技術の技術分野に関するものであり、グリッドシステムに、無効電力を供給する方法、特に、グリッドシステムの少なくとも1つの線路がそのために生成された補償電圧を有し、該補償電圧が上記線路を流れる電流に対して位相シフトされて該線路に供給されるような、無効電力の供給方法に関するものである。この発明は、さらに、このような方法に用いるインバータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電力伝送システムにおいて、グリッド内で相互接続される電送線のインピーダンス関係によって、いかなる制御方法にもよらず、電力の流れの配分が決定される。伝送線の電気的な実効インピーダンスは、直列電圧を印加することによって、無効電力を注入するための直列補償装置を用いることにより、変化させ得るものである。この測定は、接続点間の複合的な電位差を変化させ、延いては線路を流れる電力を変化させる。直列補償は、線路における負荷を意識的に増加あるいは減少させるために、また、全体的な伝送能力をより効率的に実現するために用いることができる。これは、三相伝送システムに限られるものではない。単相交流システムで用いることも可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
現存のシステム設計において、一般的にサイリスタによって切替られる、あるいは、サイリスタによって制御される直列的な補償と、静的な同期補償とを区別することは可能である。
【0004】
サイリスタによって制御される直列的な補償回路は、直列接続された複数のモジュールを備える。これらモジュールは、三相伝送線路の各相線路にそれぞれ配設されている。このケースでは、使用可能なサイリスタ技術により、キャパシタンス及び制御された(サイリスタによってスイッチされる)インダクタンスを備える並列回路が、モジュール毎に必要とされる。この並列回路を過負荷から保護するために、たとえば、バリスタ等として設計された1つのコンポーネントが必要とされる。この公知のシステム構造における課題は、実質的に半導体スイッチ(サイリスタ)が接続されている回路状態に従って転流する(mains‐commutated)ため、結果的に動作範囲がかなり制限されることである。
【0005】
静的同期補償は、線電流に対して90度の位相(位相変位90°)を持つ追加電圧(補償電圧)を印加することにより、電気的に機能する。この追加電圧を印加するためには、トランスフォーマが不可欠であり、このトランスフォーマは、補償されるべき伝送線に直列に接続されている。追加電圧を印加するために必要なトランスフォーマは、このようなシステムの全コストにおいて、比較的高価な素子である。
【0006】
従って、この発明の目的の1つは、回路の複雑さをかなり縮減し、それにも拘わらず、柔軟に適用しうる新しい補償方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
まず、初めに説明する方法において、この発明の目的は、ブリッジ回路のゲートターンオフパワー半導体によって構成されるインバータ手段により、補償電圧が直流電圧から生成されることと、補償電圧が線路に直列的に直接印加されることとによって達成される。半導体を備えたインバータブリッジ回路を用いることにより、単純な方法により、要求されるいかなる所定の位相角度においても、大きな交流補償電圧が生成され得る。補償すべき線路に直接直列に挿入することによって、トランスフォーマなどの付加的な印加素子を省くことが可能である。
【0008】
請求の範囲に記載された本発明の第1の好適な実施の形態における方法は、少なくとも1つの充電されたキャパシタが、インバータのための直列電圧源として用いられていることによって区別することができる。補償素子が実質的に無効電力を供給するので、キャパシタは、簡単で有利な直流電源を提供する。
【0009】
この実施の形態の第1の好適な展開例は、少なくとも1つのキャパシタが交流グリッドシステムの線路からインバータを通じて充電されることである。この方法では、付加的な電圧供給装置が不要であり、補償回路を特に簡単にすることができる。
【0010】
この実施の形態における第2の好適な展開例は、少なくとも1つのキャパシタが別個のコンバータを通じて充電されることである。直流中間回路におけるこの直流電圧の供給は、補償回路が純粋な無効電力だけでなく、実効電力を線路に供給する場合であっても、有効的なものである。
【0011】
請求の範囲に記載された本発明のさらに他の好適な実施の形態における方法は、直流グリッドシステムが三相構造になっていることと、補償電圧を生成して印加するための関連するインバータが三相のそれぞれの線路に直列に接続されていることである。これにより、望ましい補償を各相毎に別々に行うことができる。
【0012】
さらに他の実施の形態における方法は、各インバータが2つのハーフブリッジによって構成され、これらのハーフブリッジが正弦変調信号に基づいて、パルス幅変調によって駆動されることによって区別できる。パルス幅変調は、インバータによって生成される出力電圧の正弦波への近似を、簡単に、より正確に行なうことを可能とし、結果的に高調波を減少させている。この実施の形態の好適な展開例によれば、インバータが2極ブリッジ構造で構成され、適当な搬送信号を用いることにより、各ハーフブリッジにそれぞれ異なるタイミングでパルス信号が供給されると、あるいは、インバータがN極ブリッジ(N≧3)として構成され、適当な搬送信号を用いるとにより、各ハーフブリッジにそれぞれ異なるタイミングでパルスが供給されると、異なるタイミングで脈動される複数のパルス幅変調部分補償電圧を重ね合わせることによって合成補償電圧が得られることは、この発明に固有の現象である。
【0013】
この発明の請求の範囲に記載の方法の、さらに好適な実施の形態によれば、補償電圧を生成して印加するための複数のインバータが直流グリッドシステムの線路に直列あるいは並列に接続され、いずれの場合もパルス幅変調波によって駆動され、各インバータにおけるパルス幅変調が異なるタイミングで脈動されることにより行われるものであれば、更なる高調負荷の低減が達成される。同時に、複数のインバータを直列に接続することは、電圧に関する動作範囲を拡げる結果となり、並列接続は、電流に関する動作範囲を拡げる結果となる。
【0014】
さらに他の実施の形態によれば、少なくともフィルタ回路がインバータの出力側に配設されており、このフィルタ回路が、特に、インバータに直列接続された1つのインダクタンスと、インバータ及び少なくとも1つのインダクタンスによって形成される直列回路に並列接続された少なくとも1つのキャパシタとを備えれば、高調波の更なる低減を図ることができる。直流グリッドシステムが寄生インダクタンスを有するネットワークトランスフォーマを備え、ネットワークトランスフォーマの寄生インダクタンスがフィルタ回路の一部として用いられていれば、より簡単な構成となる。
【0015】
この発明のさらに他の好適な実施の形態によれば、インバータがそれぞれ少なくとも1つのキャパシタ及び少なくとも1つのインダクタンス、あるいは、少なくとも1つのキャパシタまたは少なくとも1つのインダクタンスに接続されていれば、補償回路の動作範囲を拡げることができる。
【0016】
この発明の好適な実施の形態によれば、交流グリッドシステムが低電位の中立点を有するネットワークトランスフォーマを備え、補償電圧が中立点に印加されれば、補償システムの絶縁性の要求に関して特に有利となる。
【0017】
交流グリッドシステムが三相グリッドシステムであると共に、三相ネットワークトランスフォーマがグリッドシステムの中に配設されており、三相ネットワークトランスフォーマが中立点としてのスターポイントを備えていれば、スターポイントに接続される各線路に適切な補償電圧が印加される。これは、1つの方法では、補償電圧を生成して印加するための1つのインバータを、スターポイントに接続された各線路に直列接続することにより達成される。また、これは、他の方法としては、スターポイントに接続されている線路を三相インバータの出力端に接続することによっても達成することができる。この場合、三相インバータは、電力の脈動を考慮する必要がないので、同一の補償電圧を得るのに、直流側のキャパシタを小さくすることができるという特別の利点を有する。
【0018】
交流グリッドシステムが単相システムであり、単相ネットワークトランスフォーマがグリッドシステム中に配設され、その単相ネットワークトランスフォーマが、少なくとも一端に、中立点としてのゼロポイントを有するゼロポイント回路を備えれば、適切な補償電圧がゼロポイントに接続された各線路に印加される。これは、補償電圧を生成して印加するためのインバータを、ゼロポイントに接続された各線路に直列に接続することにより、あるいは、ゼロポイントに接続された線路を単相インバータの出力端に接続することにより、行われる。
【0019】
この発明の方法によるインバータは、インバータがN極ブリッジ(N≧2)として構成されていることにより区別される。
【0020】
この発明の一実施の形態における、小電圧(例えば13KVグリッドシステム)に適するインバータは、各ハーフブリッジのブリッジアーム毎に、パワー半導体が1つだけ配設されていることによって区別することができる。
【0021】
この発明の一実施の形態における、大電圧(例えば400KVグリッドシステム)に適するインバータは、各ハーフブリッジのブリッジアーム毎に、複数の直列接続されたパワー半導体が配設されていることによって区別することができる。
【0022】
この実施の形態におけるとりわけ好適な発展例では、ゲートターンオフパワー半導体としてハードに駆動されるGTOが使用される。この場合におけるハードに駆動するとは、例えば、文献 EP‐A1‐0 498 945 若しくは WO‐93/09600 または、1996年発行の ABB Technik (ABB Engineering) 5 の第14頁から第20頁に記載されているものを意味するものである。
さらに他の実施の形態は、従属項から導き出されるものである。
【0023】
なお、ハードに駆動されるGTOとしては、ゲートターンオフパワー半導体として、ゲート回路インピーダンスを著しく減少させ、素子のON、OFF信号に応じてゲート電流を高い電流増加率で駆動されるGTOが使用される。このGTOは、特にGTC(Gate Communicated Turnoff)サイリスタとも称されるものであり、ゲート電流に従った高速なON、OFF動作が可能で、OFF動作が一般のGTOよりも約10倍も速く、素子を直列接続した場合に、OFF動作のばらつきによる素子の電圧分担差が少なく、特に高電圧の用途に好適なGTOである。
【0024】
【発明の実施の形態】
図において、引用番号は、全ての図を通じて同一または相当の部分を示すものである。図1は、この発明による補償回路の概要を示す回路図であり、最も簡易な構造を表している。単相グリッドシステムまたは三相グリッドシステムにおいて、線路10は補償を行うために用いられる。線路10は分離されており、インバータ11は、線路10に直接的に直列接続されている。交流電圧は、インバータ11によって、直流電圧(これはキャパシタC1から供給される)から生成され、線路10に補償電圧Ucompとして直接印加される。
【0025】
図2に示すように、インバータ11は、ハーフブリッジ12,13から構成される2極ブリッジ回路を含み、これらのハーフブリッジの機能は、それぞれ切替スイッチU1,U2によって決定される。インバータ11中におけるハーフブリッジ12,13の出力端は、線路10に直接接続されている。切替スイッチU1,U2を適当に駆動することにより、キャパシタC1に発生するキャパシタ電圧は、正電圧あるいは負電圧として、選択的に線路10に供給される。
【0026】
生成される補償電圧Ucompは、線路10の交流電流に対して位相が90°進んでいるか、あるいは、遅れている正弦波状の交流電圧であることが理想的である。このようにするために、線路における電流および電圧が測定され、制御装置において、切替スイッチU1,U2を駆動するための駆動パルスが測定信号から導き出される。
【0027】
これは、図5に示すように、所望の位相角度で正弦変調信号Uを生成し、これを2つの三角波搬送信号UC1,UC2と比較することによって、達成される。信号の交点は、スイッチU1,U2を切り替えるためのスイッチング指令を導き出すために用いられ、このようにして、図5の底部に示されているパルス幅変調補償電圧Ucompが生成される。
【0028】
インバータ11の動作方法は、キャパシタC1に、グリッドシステムの2倍の周波数で、グリッドシステムから電力を奪うことと、グリッドシステムに電力を放出することとを交互に行わせ、全行程時間を通じての平均電力レベルは、零となる。これらのパルス振動を減衰させるためには、キャパシタC1を調整回路43と並列に接続すればよく、この調整回路43は、インダクタンスL4およびキャパシタC10の直列回路を備え、グリッドシステムの2倍の周波数に調整されている。
【0029】
切替スイッチU1,U2は、図3および図4に示すような態様で、ゲートターンオフパワー半導体によって構成される。GTO(Gate−Turn−Offthyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、とくに逆導電GTOは、ゲートターンオフ電力半導体のための保証付きの電力電子素子として使用される。これの代わりに、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)または他のゲートターンオフ素子を用いてもよい。このようなパワー半導体の電圧範囲は限られている。
【0030】
比較的低いグリッドシステム電圧(例えば13KV)では、各パワー半導体S1、S2は、図1に示すようにブリッジアームに配設される。高いグリッドシステム電圧(例えば400KV)では、図4に示すように、多数(n)のパワー半導体S11,..,S1nおよびS21,..,S2nにより構成される直列回路がブリッジアームに用いられる。GTOが直列回路に用いられている場合は、各GTO素子が同時に切り替わるようにするためには、特別な注意が必要である。ハードな駆動は、直列接続された複数のGTOを正確に駆動させることができる。ハードな駆動の固有の特性や回路構成に関しては、最初に引用した、従来技術における文献が参照されるべきである。
【0031】
補償電圧Ucompを生成するために、既に述べた2極ブリッジに加えて、3極ブリッジ、あるいはさらに一般的にN極ブリッジを代替的に効果的に用いることができる。図6によれば、3極ブリッジは、2つの切替スイッチU3,U4を備えており、それぞれ3つの切替点を2つのハーフブリッジ14および15に備え、キャパシタC2,C3から構成される直列回路の2つの端点または中央タップを適宜それぞれのブリッジの出力端に接続する。
【0032】
この方法では、2つの部分補償電圧U12,U34が生成され、これらの補償電圧はインバータ11の出力で合成され、補償電圧Ucompが生成される。3極ブリッジの1つの優位性は、等しい補償電圧を得るために、1つの大きなキャパシタの代わりに2つの小さなキャパシタを用いることができることである。他の優位点は、図9に示す位相のシフトした搬送信号UC1,..,UC4のように、ここでも用いることの望ましいパルス幅変調が異なるタイミング(異なる位相)での脈動により行われると、異なるタイミングでの脈動によって生成された部分補償電圧U12,U34から構成される補償電圧Ucompの高調波成分をかなり低減させることができることである。
N極ブリッジの場合は、3極ブリッジの場合のように、N個の切替ポイントを備える切替スイッチがハーフブリッジに用いられることになる。
【0033】
図6に示す切替スイッチU3,U4の内部構成は、図7、8に示すような構成であることが望ましい。比較的低いグリッドシステム電圧に対して、逆伝導GTOで構成される各パワー半導体S3,..,S6と、ブリッジアームに配設されたダイオードD1およびD2とが図7に示すように接続されている。高いグリッドシステム電圧に対して、n個のパワー半導体S31,..,S3nないしS61,..,S6nから構成される複数の直列回路がそれぞれ個々のパワー半導体の代わりに用いられ、これらにGTOが用いられる場合は、上述したようにハードに駆動されることになる。GTOの代わりに他のゲートターンオフパワー半導体を用いてもよい。
【0034】
以上の説明においては、補償は個々の単一の線路10について考慮し、説明してきた。交流グリッドシステムが三相グリッドシステムである場合は、図10に示すように、線路16、17および18に上述した形式のインバータ19,20および21を直列に接続することにより、各相に接続されたこれらの線路が補償されることが望ましい。単相グリッドシステムの場合は、図11に示すように、インバータ11を2つの線路10,22の一方のみに配設すればよい。また、この代わりに、2つの線路10,22のそれぞれにインバータ11,11aを配設しても同様に実施することができる。
【0035】
上述したように、ブリッジアームを適切にパルス幅変調駆動することは、3極ブリッジの場合においても、特に補償電圧Ucomp中の高調波の減少を達成するために用いられる。しかしながら、高調波を減少させるためには、これらに加えてさらに他の方法を行うこともできる。そのような方法の1つとして、図12に示すようにインバータ11の出力端にフィルタ回路を配設する。このフィルタ回路は、1または2つのインダクタンスL1およびL2をインバータ11の出力端に直列接続すると共に、キャパシタC4を並列接続したものであり、高調波を除去し、あるいは、減衰させることができる。この場合のキャパシタC4の容量は、パルス幅変調のクロック周波数によって決定される。
【0036】
図6に示すような3極ブリッジにおいて、互いに90°位相が異なり、周波数がFで表される4つの搬送信号UC1,..,UC4が、PWM駆動信号を生成するのに用いられると、補償電圧Ucompのパルス周波数は4倍の4Fとなる。フィルタキャパシタC4は、一方では、帯電電圧が望ましい正弦波形を有するのに十分な容量を持つように選択され、他方では、基本周波数において微小電流を引き出すために十分小さな容量を有するように選択される。
これらの代わりに、図21に示すように、寄生インダクタンスL10,L11を有する隣接したネットワークトランスフォーマ46の寄生インダクタンスL10は、フィルタ回路のインダクタンスとして、効果的に用いることができる。
【0037】
インバータ11の場合、補償を行うことが可能な動作範囲は、本質的に補償電圧Ucompの増幅率によって決定され、この補償電圧Ucompは、本質的にキャパシタC1(2極ブリッジの場合)の帯電電圧、または、キャパシタC2およびC3(3極ブリッジの場合)の帯電電圧によって決定される。キャパシタ側の動作範囲は、図13に示すように、インバータ11の出力側にキャパシタC5を直列接続することにより、インバータ11およびスイッチング素子を代えることなく、拡げることが可能である。インダクタンス側の動作範囲を拡げるためには、インダクタンス(図14のL5)をキャパシタの代わりに直列接続すればよい。
【0038】
図14によれば、動作範囲の拡張は、直列接続されたキャパシタC5およびインダクタンスL5をスイッチ44,45で橋渡し(ブリッジ)することによって、選択的および切替的に行うことができる。図21に示す場合でも、キャパシタC15を直列接続することにより、動作範囲を拡張することができる。
【0039】
インバータの内部または回路を変えることによるインバータの動作範囲の変化に加えて、補償しうるレベルは、図15に示すように、複数のインバータ11,23および24を直列にまたは並列に(インバータ11,11a)、グリッドシステムの線路10に接続することによって、増大させることができる。各インバータによって生成される補償電圧は合成され、さらに大きな補償電圧を形成する。このような直列回路において、高調波成分をさらに一層減少させるためには、各インバータ11,11a,23および24を異なるタイミングで脈動させて駆動することが有効的である。
【0040】
直列回路中の各インバータ11,11a,23,24は、インダクタンスL6,..,L9およびキャパシタC11,..,C13から構成されるフィルタ回路を備えてもよい。同様に、付加キャパシタC14は、動作範囲を拡げている。さらに他の選択としては、図16に示すように、フィルタ回路(インダクタンスL3およびキャパシタC6)のための集積素子から構成される付加回路を直列回路の全体に備えることである。直列キャパシタC7の機能は、図15におけるキャパシタC14に対応するものである。
【0041】
この発明によるトランスフォーマを用いない直列補償回路は、低電位側に中立点を有する交流グリッドシステムのネットワークトランスフォーマに接続して用いれば、特に効果的である。図17に示すように、グリッドシステムは、三相グリッドシステムであり、ネットワークトランスフォーマ25はスター(星形)接続(一次側26および二次側27)された三相変圧器であり、補償電圧は、ネットワークトランスフォーマ25の中立点(スターポイント(星形接続点)31)としての低電位側に供給される。これを行うために、補償インバータ32,33および34は、それぞれ、スターポイント31に接続された線路28,29,30に直列接続されている。インバータを低電位側に配設することにより、絶縁レベルは著しく軽減され、システムの簡略化およびコストの低減をはかることができる。
【0042】
ゼロポイント(零点)が中立点である単相ネットワークトランスフォーマ35(一次側36および二次側38、図18参照)を備えた単相グリッドシステムの場合には、低電位動作時における補償回路の等価回路は、ゼロポイント39に接続された線路38,40に、インバータ41,42を直列接続することによって得ることができる。また、2つのインバータ41,42を用いる代わりに、1つのインバータ(41または42)のみを用いても同様に実施できる。
【0043】
図17および18に示す補償回路は、共に、複数のインバータ32,..,34および41,42をそれぞれ備え、インバータを上手に一つのブリッジに結合することにより簡略化することができる。図17に示す回路を簡略化した構成を図19に示す。この場合、線路28,29および30は、三相インバータの出力端に接続されており、これらの出力端は、制御切替スイッチU5,U6およびU7(図3、4参照)を介して、2つのキャパシタC6,C7から構成される直列回路の端点に接続されている。キャパシタC6およびC7の中央タップは、スターポイント31に接続されている。
また、図17および図19に示す回路を互いに結合させても同様の結果を得ることができ、即ち、補償回路の柔軟性を増加させるために、図19に示す回路に、各インバータ(図17におけるインバータ32,33および34のように)を線路28,29および30に直列に接続してもよい。
【0044】
図20は、図18に示すものと同様の構成を簡略化して示すものである。この場合、線路38,40は、切替スイッチU8,U9を通じて、充電されたキャパシタC8およびC9から構成される直列回路の端点に選択的に接続される。これらのキャパシタC8およびC9の間の中央タップは、ゼロポイント39に接続されている。図17ないし図20に示す構成では、中立点(スターポイント31またはゼロポイント39)は、接地されている(点線で表す)。しかしながら、このような接地することは、絶対的に必要なものではない。
【0045】
この発明による補償装置が無効電力のみを出力すると、インバータに直流電圧を供給するキャパシタC1,..,C3およびC6,..,C9は、インバータを適切に制御することにより、グリッドシステム線路から直接的に効果的に充電される。この方法では、グリッドシステムの他の素子からキャパシタへの付加的な接続を必要としない。また、補償されるべき線路には、無効電力と共に、実効電力を供給することが望ましい。この場合、適切な(別個の)直流源(例えばコンバータ)により、キャパシタC1,..,C3およびC6,..,C9をそれぞれ充電または放電させることができる。
【0046】
以上より、この発明によれば、高度に簡略化され、非常に汎用性のある、交流グリッドシステムのための無効電力の補償を行うことができる。
また、以上から明らかなように、上述の説明に基づき、本発明の様々な変形や変更を実施することができる。従って、本発明は、特許請求の範囲の適用範囲内であれば、上述の説明以外の形態でも実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の補償回路の概要を表す図であり、インバータが線路に直列に接続されている。
【図2】 この発明の第1の好適で例示的な実施の形態による、図1に示すインバータの基本的な2極ブリッジ形の内部構造を示す図であり、2極ブリッジは、半導体を備えた切替スイッチと、直流側の付加的調整回路とを有する。
【図3】 図2に示す切替回路の内部構造の一例を示す図であり、1つのパワー半導体(反転接続されたGTO)がブリッジアーム毎に配設されている。
【図4】 図2に示す切替回路の内部構造の一例を示す図であり、直列接続された複数のパワー半導体(反転接続されたGTO)がブリッジアーム毎に配設されている。
【図5】 図2に示す2極ブリッジの駆動にパルス幅変調が用いられる際の電圧波形の一例を示す図である。
【図6】 この発明の第2の好適で例示的な実施の形態による、図1に示すインバータの基本的な3極ブリッジ形の内部構造を示す図であり、3極ブリッジは、半導体を備えた切替スイッチを有する。
【図7】 図6に示す切替スイッチの内部構造の一例を示す図であり、1つのパワー半導体(反転接続されたGTO)がブリッジアーム毎に接続されている。
【図8】 図6に示す切替スイッチの内部構造の一例を示す図であり、複数のパワー半導体(反転接続されたGTO)から構成される直列回路がブリッジアーム毎に接続されている。
【図9】 図6に示す3極ブリッジの駆動にパルス幅変調が用いられる際の電圧波形の一例を示す図である。
【図10】 この発明による補償が三相の全てに行われる三相グリッドシステムの基本的な回路を示す図である。
【図11】 この発明による補償が行われる単相交流グリッドシステムの基本的な回路を示す図である。
【図12】 この発明による補償回路の一例を示す図であり、インバータの出力側に配設されると共に、高調波を除去するために、直列接続された2つのインダクタンスと並列接続された1つのキャパシタから構成されるフィルタ回路を備える。
【図13】 この発明による補償回路の一例を示す図であり、動作範囲を拡げるために、図12に示す補償回路に1つのキャパシタを付加的に直列接続したものである。
【図14】 この発明による補償回路の一例を示す図であり、動作範囲を拡げるために、図13に示す補償回路に1つのインダクタンスを付加的に直列接続すると共に、付加キャパシタおよび付加インダクタンスをスイッチと置き換えることができるようになっている。
【図15】 動作範囲を増加させると共に高調波を除去するために、直列または並列に接続された複数のインバータ(パルス数の異なるパルス信号が供給される)と、ローカルフィルタ回路とを備える回路の概要を示す図である。
【図16】 動作範囲を拡げるために、図15に対応する回路に、集中フィルタ回路および付加インダクタンスを備えた直列回路を示す図である。
【図17】 三相変圧器の低ポテンシャル側(スターポイント)に配設されたこの発明による好適な補償素子を示す図である。
【図18】 単相ネットワークトランスフォーマの低ポテンシャル側(ゼロポイント)に配設されたこの発明による好適な補償素子を示す図である。
【図19】 図17に示す補償素子における様々なインバータを三相ブリッジに置き換えて簡略化した構成を示す図である。
【図20】 図18に示す補償素子における様々なインバータを単相ブリッジに置き換えて簡略化した構成を示す図である。
【図21】 ネットワークトランスフォーマの寄生インダクタンスをインバータとして用いる回路を示す図である。
【符号の説明】
10、16、17、18、22 線路、11、11a インバータ、12、13、14、15 ハーフブリッジ、19、20、21 インバータ、23、24インバータ、25、35 ネットワークトランスフォーマ、26、36 一次側、27、37 二次側、28、29、30 線路、31 スターポイント、38、40 線路、41、42 インバータ、43 調整回路、44、45 スイッチ、46 ネットワークトランスフォーマ、C1〜C15 キャパシタ、D1、D2 ダイオード、L1〜L11 インダクタンス、S1〜S6 パワー半導体(ゲートターンオフ素子)、S11〜S6n パワー半導体(ゲートターンオフ素子)、U1〜U9 切替スイッチ、U 変調信号(正弦波) UC1〜UC4 搬送信号(三角波)、U12、U34 部分補償電圧、Ucomp 補償電圧。

Claims (20)

  1. グリッドシステムの少なくとも1つの線路(10;16,..,18;28,..,30;38,40)に、その線路のために生成された補償電圧(Ucomp)を供給するための交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法であって、ブリッジ回路中のゲートターンオフパワー半導体(S1,..,S6;S11,..,S6n)により構成されたインバータ(11;19,..,21;41、42)によって、線路(10;16,..,18、28,..,30;38,40)中の電流に対して位相がシフトされた補償電圧(Ucomp)を直流電圧から生成し、直列的かつ直接的に、線路(10;16,..,18、28,..,30;38,40)に印加し、
    上記インバータ(11;19,..,21;41,42)は、それぞれ、2つのハーフブリッジを備えてなり、正弦変調信号(UM)に基づくパルス変調形式で、上記ハーフブリッジ(12,13及び14,15)を駆動することを特徴とする交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  2. 少なくとも1つの充電されたキャパシタ(C1,..,C9)を、上記インバータ(11;19,..,21;41,42)のための直流電圧源として用いる請求項1に記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  3. 上記少なくとも1つのキャパシタ(C1,..,C9)を、上記インバータ(11;19,..,21;41,42)を介して、上記線路(10;16,..,18;28,..,30)から充電する請求項2に記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  4. 上記少なくとも1つのキャパシタ(C1,..,C9)を、別個の直流電圧源を介して充電する請求項2に記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  5. 上記交流グリッドシステムは三相形式であり、各相に補償電圧(Ucomp)を生成して印加する上記インバータ(19,..,21)が、上記各相の線路(16,..,18)に直列接続される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  6. 上記インバータ(11;19,..,21;41,42)は、2極ブリッジとして構成されており、上記各ハーフブリッジ(12,13)は、適切な搬送信号(UC1,UC2)を使用することにより、異なるタイミングで脈動される請求項に記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  7. 上記インバータ(11;19,..,21;41,42)は、N極ブリッジとして構成されており、上記各ハーフブリッジ(14,15)は、それぞれの搬送信号(UC1,..,UC4)によって、異なるタイミングで脈動され、該異なるタイミングで脈動された複数のパルス幅変調部分補償電圧(U12,U34)を重ね合わせて、補償電圧(Ucomp)を生成する請求項に記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  8. 補償電圧(Ucomp)を生成して印加する複数の上記インバータ(11,11a,23,24)が、上記交流グリッドシステムの少なくとも1つの線路(10)に直列あるいは並列、または、直列かつ並列に接続されている請求項1ないし請求項のいずれかに記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  9. 上記インバータ(11,11a,23,24)はパルス幅変調形式で駆動され、互いに異なるタイミングで脈動させることにより、パルス幅変調を行う請求項に記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  10. フィルタ回路(L1,..,L3;L6,..,L10,C4,C6,C11,..,C13)が、インバータ(11;11a,19,..,21;41,42)の出力側に配設される請求項1ないし請求項のいずれかに記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  11. 上記フィルタ回路が、上記インバータ(11;11a,19,..,21;41,42)に直列接続された少なくとも1つのインダクタンス(L1,..,L3;L6,..,L9)と、インバータ(11;11a,19,..,21;41,42)および少なくとも1つのインダクタンス(L1,..,L3;L6,..,L9)から構成される直列回路と並列に接続された少なくとも1つのキャパシタ(C4,C6,C11,..,C13)とを備える請求項10に記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  12. 上記交流グリッドシステムが、寄生インダクタンス(L10,L11)を有するネットワークトランスフォーマ(46)を備えると共に、ネットワークトランスフォーマ(46)の寄生インダクタンス(L10,L11)が、フィルタ回路の一部として用いられる請求項10に記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  13. 動作範囲を拡げるために、上記インバータ(11;19、…、21;41,42)が、それぞれ少なくとも1つのインダクタンス(L5)、または、インダクタンス(L5)とキャパシタンス(C5)と直列接続される請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の交流グリッドシステムヘの無効電力の供給方法。
  14. 調整回路が上記少なくとも1つのキャパシタ(C1,..,C9)に接続される請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法。
  15. 上記インバータ(11;19,..,21;41,42)がN極ブリッジ(N≧2)として構成される請求項1ないし請求項14に記載の交流グリッドシステムへの無効電力の供給方法に用いるためのインバータ。
  16. 上記インバータ内のブリッジアーム毎に、パワー半導体(S1,S2;S3,..,S6)が1つだけ配設される請求項15に記載のインバータ。
  17. 上記インバータ内のブリッジアーム毎に、複数のパワー半導体(S11,..,S1n;..;S61,..,S6n)が直列接続される請求項15に記載のインバータ。
  18. 上記パワー半導体であるゲートターンオフパワー半導体として、IGBTが用いられる請求項16または17に記載のインバータ。
  19. 上記パワー半導体であるゲートターンオフパワー半導体として、複数のGTOが用いられる請求項16または17に記載のインバータ。
  20. 直列接続された上記複数のGTOは、上記インバータ内のブリッジアーム毎に直列接続されており、該直列接続されたGTOは、ハードに駆動される請求項19に記載のインバータ。
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