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JP3762609B2 - 通信装置および周波数スペクトラム反転演算方法およびプログラム記憶媒体 - Google Patents

通信装置および周波数スペクトラム反転演算方法およびプログラム記憶媒体 Download PDF

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JP3762609B2
JP3762609B2 JP2000072213A JP2000072213A JP3762609B2 JP 3762609 B2 JP3762609 B2 JP 3762609B2 JP 2000072213 A JP2000072213 A JP 2000072213A JP 2000072213 A JP2000072213 A JP 2000072213A JP 3762609 B2 JP3762609 B2 JP 3762609B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の子機からの受信信号を周波数変換して再送信する通信装置に関し、特に、コードレス電話機,携帯電話機などの子機間通話を行うための無線中継手段としての通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、通信装置としては、親機を介して子機同士の通話を行うコードレス電話機において、隣接するチャネルを子機間通話に使用することで無線信号の高周波部分の処理と中間周波数の処理を同一の回路で行い、受信した高周波信号を周波数変換して再送信するものがある(特開平4−180415号公報)。
【0003】
また、他の通信装置としては、時間によって送信と受信とを切り替える単信方式で子機間通話を行うものがある(特開平4−342346号公報)。この通信装置は、送受信を切り替える(制御)信号を発生/受け取ることで通話方向を切り替える。
【0004】
さらに、他のもう1つの通信装置としては、広帯域の無線送受信部を使用したプレストーク方式の無線機で同時に複数のチャネル通信が可能な無線機構成のものがある(特開平11−196019号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記通信装置では、―つの無線部を使用するだけで、子機間通話ができるという利点を有するが、次のような(1)〜(4)の問題がある。
【0006】
(1) 特開平4−180415号公報の「受信した高周波信号を周波数変換して再送信する通信装置」では、250MHz帯の受信信号に対して、130MHzの信号を合成して380MHz帯の送信信号を得ているので、デュプレクス間隔が一定の通信システムでは、子機間通話が行えない。
【0007】
通常、子機間通話可能な様、無線部を複数持つ基本的な通信装置は、図9に示すように、アンテナ152が接続されたデュプレクサ151と、2組の受信部(123〜128)と、その各受信部からの信号を処理する信号処理部140と、上記信号処理部140からの信号が接続された2組の送信部(132〜134)と、2組の局部発振部150と、送受話器160と、電話回線I/F170と、制御/入出力180とを備えた通信装置としての親機において、例えば、デュプレクス間隔が130MHz一定であると、一方の子機が254.1MHzで送信すれば384.1MHzを受信し、また、他方の子機が255.1MHzで送信すれば、385.1MHzを受信する。したがって、2つの子機が親機を介して通信をするためには、親機は、一方の子機の送信周波数254.1MHzを他方の子機の受信周波数385.1MHzに変換し、他方の子機の送信周波数255.1MHzを一方の子機の受信周波数384.1MHzに変換する必要がある。ところが、上記公報の手段では、図10に示すように親機で受信した信号に単に130MHzを加えており、デュプレクス間隔が一定の通信システムにおいては、(254.1MHzが384.1MHzとなり、一方の子機自身に戻されてしまうため)対応できないという問題がある。
【0008】
(2) 特開平4−180415号公報の「隣接するチャネルを子機間通話に使用することで無線信号の高周波部分の処理と中間周波数の処理を同一の回路で行う通信装置」では、隣接するチャネルを使用するので、通話開始時点で隣接する空きチャネルを用意する必要があり、任意に周波数を選択できないという問題がある。また、この通信装置では、各チャネルを復調して変調する方式を取っているので、信号処理のある部分からそれぞれの信号を分けて取り扱う回路が必要となり、構成が複雑でコストが高くつくという問題がある。
【0009】
(3) 特開平4−342346号公報の「時間によって送信と受信とを切り替える単信方式で子機間通話を実現する通信装置」では、同時には送話できないので、複信方式に慣れている利用者にとっては通話に違和感を生じ、例えば、相手の発言中に何か言いたくてその状態のまま発声しても相手には伝わらないという問題がある。
【0010】
(4) 特開平11−196019号公報の「広帯域の無線送受信部を使用したプレストーク方式の無線機で同時に複数のチャネル通信が可能な無線機構成の通信装置」でも上記(3)と同様に、子機間での複信通話はできないという問題がある。
【0011】
そこで、この発明の目的は、簡単な構成でかつ低コストで、デュプレクス間隔が一定の通信システムに対応でき、送受信周波数の設定が容易にできると共に、子機間の複信通話を実現できる通信装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の通信装置は、複数の子機からの受信信号を周波数変換して再送信することにより子機間通信を中継する通信装置であって、上記複数の子機からの受信信号を含む周波数スペクトラムであってその複数の受信信号を含む周波数スペクトラム全体を反転する全スペクトラム反転部、上記全スペクラム反転部により反転された上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号を再送信する送信部とを備え、上記全スペクトラム反転部および上記送信部によって、上記通信を中継される各子機について、一方の子機からの元の受信信号の周波数と他方の子機からの受信信号の全スペクトラム反転後の周波数とが、夫々デュプレクス間隔になるように周波数変換された受信信号を再送信することを特徴としている。
【0013】
上記構成の通信装置によれば、複数の子機のうちの1組の子機間で通信を行う場合、両方の子機から異なる送信周波数の2つの信号を受信し、その2つの受信信号を含む周波数スペクトラム全体を全スペクトラム反転部により反転する。そうして、上記全スペクラム反転部により反転された上記周波数スペクトラムに含まれる複数の受信信号を再送信する。そうすることによって、デュプレクス間隔(送受信周波数の間隔)が一定の子機間通信の送受信信号を、1組の広帯域の受信手段,送信手段で同時に送受信することが可能となる。したがって、子機間通信の場合にだけ子機に特別に送受信の周波数を変更させたり、複数組の送信部,受信部を備えたりすることなく、簡単な構成でかつ低コストで、デュプレクス間隔が一定の通信システムに対応でき、送受信周波数の設定が容易にできると共に、子機間の複信通話を実現できる。
【0014】
また、一実施形態の通信装置は、上記全スペクトラム反転部により反転された上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号成分以外の信号成分を減衰させるフィルタを備え、上記フィルタの出力の上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号を再送信することを特徴としている。
【0015】
上記実施形態の通信装置によれば、上記全スペクトラム反転部により反転された上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号成分以外の周波数成分を減衰させるフィルタを設けたので、不要な信号を再送信するのを抑えて、他の通信を妨害しないで通信品質を向上できる。
【0016】
また、一実施形態の通信装置は、上記全スペクトラム反転部により反転された上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号のスペクトラム毎に、上記複数の受信信号のうちの1つずつが含まれる周波数スペクトラムを夫々反転する部分スペクトラム反転部を備えたことを特徴としている。
【0017】
上記実施形態の通信装置によれば、上記部分スペクトラム反転部を設けたので、入力した周波数スペクトラム(側波帯(サイドバンド))の反転が元に戻り、位相変調などの周波数スペクトラム反転が影響を及ぼすような変調方式でも、子機間通信が可能となる。
【0018】
また、一実施形態の通信装置は、上記部分スペクトラム反転部が信号処理演算手段であることを特徴としている。
【0019】
上記実施形態の通信装置によれば、上記部分スペクトラム反転部は、回路部品で作ると複雑となるので、DSPなどの信号処理演算手段で実現し、上記部分スペクトラム反転部の信号処理を演算によって行う構成にすることによって、回路規模を小さくできる。
【0020】
また、一実施形態の通信装置は、上記全スペクトラム反転部が周波数変換手段であることを特徴としている。
【0021】
上記実施形態の通信装置によれば、上記全スペクトラム反転部を周波数変換手段で構成することによって、回路構成を簡単にでき、回路規模を小さくできる。
【0022】
また、一実施形態の通信装置は、上記全スペクトラム反転部および上記部分スペクトラム反転部が信号処理演算手段であることを特徴としている。
【0023】
上記実施形態の通信装置によれば、送受信手段に依存せず、信号処理演算手段によって全スペクトラム反転部および部分スペクトラム反転部の全ての信号処理を演算するようにすれば、信号処理演算手段を通信システムの周波数割当てに依存せずに汎用部品として製造できるため、量産効果が高くなる。
【0024】
また、一実施形態の通信装置は、上記部分スペクトラム反転部が上記全スペクトラム反転部よりも前に設けられていることを特徴としている。
【0025】
上記実施形態の通信装置によれば、上記部分周波数スペクトラム反転の最初に実施するフィルタ演算等が低いサンプリング周波数で実施できるように、部分スペクトラム反転部を全スペクトラム反転部よりも前に配置することによって、低消費電力にできる。
【0026】
また、この発明の通信装置は、第1の子機からの子機送信周波数帯域に属する第1周波数をもつ信号を第1受信信号として、第2の子機からの上記子機送信周波数帯域に属する第2周波数をもつ信号を第2受信信号として夫々受信する受信部と、上記第1受信信号および第2受信信号を含む周波数スペクトラム全体を一括反転して、第1受信信号を子機受信周波数帯に属する第3周波数をもつ第2送信信号に、第2受信信号を上記子機受信周波数帯域に属する第4周波数をもつ第1送信信号に変換する全スペクトラム反転部と、上記全スペクトラム反転部からの第2送信信号を上記第2の子機へ、第1送信信号を上記第1の子機へ送信する送信部を備え、上記第1の子機が送信する第1受信信号の第1周波数と、上記第1の子機への第1送信信号の第4周波数との差が、上記第2の子機が送信する第2受信信号の第2周波数と、上記第2の子機への第2送信信号の第3周波数との差に等しくして、上記第1 , 第2の子機間でデュプレックス間隔一定の通信を行うことを特徴としている。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の通信装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1はこの発明の第1実施形態の通信装置としての親機と複数の子機とを有するコードレス電話機における子機間通話の概念図を示している。図1において、A,Bは子機、10は親機、20は上記親機10の受信部、30は上記親機10の送信部、40は上記親機10の全スペクトラム反転部としての信号処理部である。
【0036】
子機Aと子機Bとの間で通話を行うには、子機Aと子機Bとがその相互の対応する周波数を送受信できれば良いのだが、周波数デュプレクスで複信動作する通信システムの子機は、周波数ft付近を扱える送信部(図示せず)と周波数fr付近を扱える受信部(図示せず)とで構成されているため、例えば子機Bが子機Aの受信周波数frで送信信号を送信し、子機Aの送信周波数ftで受信するようにすれば、子機Aと子機Bとで直接通話可能な構成となるが、このような構成は、複雑でかつ費用がかかり現実的ではないので、相互の対応する周波数を送受信するように子機を構成せず、通常親機を経由した子機間通話を行う。
【0037】
このために、従来の親機には、図9に示すように2組の送信部,受信部をそれぞれ用意して、子機間通話を行っている。2組の送信部,受信部を用意する代わりに、2つの信号(子機Aと子機Bからの信号)を1組の送信部,受信部で同時に送信,受信することもできるが、そのままで受信,送信を行う場合は、デュプレクス間隔一定の通信システムに適合しない。
【0038】
そこで、この第1実施形態では、受信から送信までの間に全スペクトラム反転部を設け、子機Aの送信周波数ftaが親機内でfrbになると同時に、子機Bの送信周波数ftbが親機内でfraになるようにする。これによってデュプレクス間隔一定の通信システムにおいて、子機間通話を実現する。
【0039】
図2は上記親機10の構成図であり、図3は信号の周波数スペクトラムと信号波形の模式図である。以下、図2,図3を参照して親機10の信号処理を詳細に説明する。なお、図3では、周波数スペクトラムの反転の様子が分かるように、複数の受信波の合わさった周波数スペクトラムを模擬的に三角形で示している。この三角形で示した周波数スペクトラムは、後述するように、例えば、図5(b)の4つの周波数成分をまとめて、図5(a)のように表わしたものである。
【0040】
上記親機10では、図2に示すように、アンテナ52をデュプレクサ51に接続し、デュプレクサ51の受信側出力をRF(無線周波数)増幅部23に入力している。上記RF増幅部23の出力をBPF(帯域通過フィルタ)24を介して周波数変換部25に入力している。上記周波数変換部25の出力をBPF26を介してIF(中間周波数)増幅部27に入力している。上記IF増幅部27の出力をA/D変換器41に入力し、A/D変換器41の出力をフィルタ47に入力している。上記フィルタ47の出力をサンプリングレート変換部42に入力し、サンプリングレート変換部42の出力をフィルタ43に入力している。上記フィルタ43の出力をD/A変換器44に入力し、D/A変換器44の出力をBPF31を介して周波数変換部32に入力し、周波数変換部32の出力をBPF33を介してRF増幅部34に入力して、RF増幅部34の出力をデュプレクサ51の送信側に入力している。
【0041】
上記RF増幅部23,BPF24,周波数変換部25,BPF26およびIF増幅部27で受信部20を構成し、BPF31,周波数変換部32,BPF23およびRF増幅部34で送信部30を構成している。上記受信部20は、子機A,Bの送信周波数帯の信号を受信可能な広帯域回路で構成され、送信部30は、子機A,Bの受信周波数帯の信号を送信可能な広帯域回路で構成されている。
【0042】
また、上記A/D変換器41,フィルタ47,サンプリングレート変換部42,フィルタ43およびD/A変換器44で信号処理部40を構成している。上記信号処理部40からの周波数設定信号を受ける局部発振部50から周波数変換部25,32に局部発振信号を夫々供給している。また、上記信号処理部40に送受話器60,電話回線I/F70および制御/入出力80を接続している。
【0043】
上記構成の通信装置の親機10において、例えば子機Aから送信された電波(254MHz)はアンテナ52で受信され、デュプレクサ51によって受信部20に入力される。そして、上記受信部20では、RF増幅部23,BPF24を通り、周波数変換器25に入力される。一方、局部発振器50では、信号処理部40からの指示に基づいて250MHzの局部発振信号を発生し、周波数変換器25に入力する。この2つの信号から中間周波数信号が発生し、BPF26で4MHzの信号のみが通過する。このBPF26から出力される中間周波数信号は、局部発振周波数が信号波よりも低いため、受信信号の周波数スペクトルは反転していない。そして、中間周波数信号は、IF増幅部27で増幅され、信号処理部40に入力される。
【0044】
次に、上記信号処理部40では、入力された中間周波数信号(図3(a)に示す)をA/D(アナログ/デジタル)変換器41によりサンプリング周波数fs=19Ms/s〔サンプル/秒〕でサンプリングしてA/D変換する。図3(b)にA/D変換された信号を示しており、この信号は、4MHzの位置に中間周波数信号があると共に、その折り返し成分として15MHz(=19MHz−4MHz)の位置に、周波数スペクトラム反転した受信信号が発生する。
【0045】
次に、サンプリングレート変換部42により、サンプリング周波数を38MHzとして、各サンプルデータの間に0の値をインタポレート(補間)する。図3(c)にサンプリングレート変換された信号を示している。図3(c)に示すように、サンプリングレート変換された信号波形が変換前の信号波形と変わっていないので、周波数スペクトラムは変わらない。
【0046】
次に、デジタルフィルタ43により、15MHzの信号を通過させる一方、4MHzの信号を減衰させる。これによって、15MHzの周波数スペクトラム反転した中間周波数信号を選別する。図3(d)にデジタルフィルタ43の出力信号を示している。
【0047】
次に、これをD/A(デジタル/アナログ)変換器44でアナログ信号に変換し、送信部30に出力する。
【0048】
そして、上記送信部30では、BPF31により、15MHzの信号を通過させ、23MHzなどの折り返し成分を減衰させて、図3(e)にBPF31の出力信号を示している。次に、周波数変換部32により局部発振周波数365MHzと混合し、周波数変換された380MHzの信号をBPF33で通過させた後、RF増幅部34により所定の信号強度に増幅して、デュプレクサ51,アンテナ52を経由して、通話相手の子機Bに信号を送信する。
【0049】
以上のように、信号処理部40により周波数スペクトラム反転させた信号を送信することができる。
【0050】
次に、上記信号周波数制御について述べる。なお、子機Aの送信周波数をfta、子機Aの受信周波数をfraとし、子機Bの送信周波数をftb、子機Bの受信周波数をfrbとする。この送信周波数fta,ftbおよび受信周波数fra,frbは、親機10と子機A(またはB)とのそれぞれ1対1の通信において、親機10から指定したものであり、親機10の制御/入出力80には既知の値である。
【0051】
まず、上記制御/入出力80は、子機Aから子機間通話要求を受けると、受信用の局部発振周波数froを、
fro = (fta+ftb)/2−4 〔MHz〕
により計算し、信号処理部40に伝え、局部発振部50に設定する。
【0052】
したがって、変換された中間周波数信号は、子機Aの周波数と子機Bの周波数とが4MHzを中心に両側の対称の位置に配置される。子機Aの送信周波数fta、子機Bの送信周波数ftbに制限を設けないと、受信用の局部発振周波数froは、チャネル間隔の半分の値を取り得るので、局部発振回路を構成するシンセサイザの比較周波数が低くなってしまうので、望ましくは、(fta−ftb)がチャネル間隔の2倍以上となるように最初に指定すると良い。
【0053】
次に、信号処理部40で処理された15MHzの送信用の中間周波数信号は、子機Bの周波数と子機Aの周波数とが15MHzを中心に両側の対称の位置に配置される。周波数スペクトラムは前述のように反転している。
【0054】
送信用の局部発振周波数ftoは、
fto = (fra+frb)/2−15 〔MHz〕
により指定する。
【0055】
また、送受信間隔fdupは、
fdup = fra−fta
= frb−ftb
となる。つまり、子機Aの送受信周波数の間隔と子機Bの送受信周波数の間隔とは等しく一定となる。
【0056】
以上を使用して、子機Aの送信周波数ftaの周波数変化を順次計算すると、周波数変換部25により周波数変換された受信側の中間周波数fiaは、
fia = fta−fro
= fta−((fta+ftb)/2−4)
= 4+(fta−ftb)/2
となり、周波数スペクトラム反転後の中間周波数fjaは、
fja = 19−fia
= 19−(4+(fta−ftb)/2)
= 15−(fta−ftb)/2
となる。
【0057】
したがって、周波数fjaは、fiaの周波数スペクトラム反転となっている。
【0058】
また、周波数変換部32による周波数変換された送信周波数は、
fja+fto = 15−(fta−ftb)/2+(fra+frb)/2−15
= (−fta+ftb+fra+frb)/2
= ((fra−fta)+(ftb+frb))/2
= (fdup+(frb−fdup+frb))/2
= frb
となる。
【0059】
このようにして、子機Aの送信周波数ftaは、子機Bの受信周波数frbに変換され、子機Aの送信信号が子機Bで受信される。
【0060】
同様にして、周波数変換部25により周波数変換された受信側の中間周波数fibは、
fib = 4+(ftb−fta)/2
周波数スペクトラム反転後の中間周波数fjbは、
fjb = 15−(ftb−fta)/2
となり、周波数変換部32による周波数変換された送信周波数は、
fjb+fto = fra
となり、子機Bの送信周波数ftbは、子機Aの受信周波数fraに変換され、子機Bの送信信号が子機Aにて受信される。
【0061】
したがって、子機間通信の場合にだけ子機に特別に送受信の周波数を変更させたり、複数組の送信部,受信部を備えたりすることなく、簡単な構成でかつ低コストで、デュプレクス間隔が一定の通信システムに対応でき、送受信周波数の設定が容易にできると共に、子機間の複信通話を実現することができる。
【0062】
上記全スペクトラム反転部としての信号処理部40により反転された周波数スペクトラムに含まれる受信信号成分以外の周波数成分を減衰させるフィルタ43を設けたので、不要な周波数スペクトラムを再送信するのを抑えて、他の通信を妨害せず、通信品質を向上できる。
【0063】
上記信号処理部40において、受信信号を周波数変換した中間周波数の信号を所定のサンプリング周波数でA/D変換器41により標本化し、標本化により得られたサンプルデータをサンプリングレート変換部42により補完してサンプリングレートを変換する。次に、上記サンプリングレート変換後の周波数スペクトラムのうちの標本化により生じた周波数スペクトラム反転している信号のスペクトラムのみを帯域通過させるフィルタ43により取り出す周波数スペクトラム反転演算方法を用いることによって、周波数スペクトラム反転をデジタル信号処理により実現することができる。
【0064】
なお、この第1実施形態では、受信側の局部発振周波数を250MHzとして、中間周波数信号で周波数スペクトラム反転をしないようにしているが、この受信側の局部発振周波数を258MHzとして、中間周波数段階で周波数スペクトラムを反転(全スペクトラム反転)し、信号処理部では、周波数スペクトラム反転しない方法も可能である。
【0065】
(第2実施形態)
また、本出願人により出願された特開平6−162230号公報,特開平6−168349号公報などに記載のアナログ信号演算素子を使用することで、A/D変換回路を使用せずに信号処理部を実現することもできる。
【0066】
図4は上記アナログ信号演算素子を適用した親機の構成を示している。この親機では、上記のように受信部で既に周波数スペクトラム反転(全スペクトラム反転)しているので、受信部で既に周波数スペクトラム反転しているので、信号処理部で周波数スペクトラム反転の必要はない。
【0067】
上記親機では、図4に示すように、アンテナ52をデュプレクサ51に接続し、デュプレクサ51の受信側出力をRF増幅部23に入力している。上記RF増幅部23の出力をBPF24を介して周波数変換部25に入力している。上記周波数変換部25の出力をBPF26を介してIF増幅部27に入力している。上記IF増幅部27の出力をアナログ信号演算素子で構成されたフィルタ91に入力し、フィルタ91の出力をアナログ信号演算素子で構成されたフィルタ92に入力している。上記フィルタ92の出力をBPF31を介して周波数変換部32に入力し、周波数変換部32の出力をBPF33を介してRF増幅部34に入力して、RF増幅部34の出力をデュプレクサ51の送信側に入力している。
【0068】
上記RF増幅部23,BPF24,周波数変換部25,BPF26およびIF増幅部27で受信部を構成し、BPF31,周波数変換部32,BPF23およびRF増幅部34で送信部を構成している。また、上記フィルタ91,92で信号処理部90を構成している。上記信号処理部40からの周波数設定信号を受ける局部発振部50から周波数変換部25,32に局部発振信号を夫々供給している。また、上記信号処理部40に送受話器60,電話回線I/F70および制御/入出力80を接続している。
【0069】
上記構成の親機では、受信信号をBPF26でフィルタするが、BPF26は子機間通話をするために複数チャネルを通過する。この通過した信号の中に不要な信号(他の子機の送信した信号)が含まれる可能性があるため、これを取り除いて再送信する。これにより他の子機に妨害波を再送信しないようにする。このためにフィルタ91がある。このフィルタ91は、通話する子機Aと子機Bの周波数スペクトラムのみを通過させるように構成する。
【0070】
図5(a)〜(d)は上記親機の信号処理の信号波形を示している。図5(a)は、図3(a)に示した入力信号の周波数スペクトラムで、図3でも述べたように図5(b)のような成分からなっている。上記信号処理部90のフィルタ91は、図5(c)に示すように、所望の子機Aに対する周波数Aと子機Bに対応する周波数Bとを通過するように設計している。このフィルタ91の出力では、図5(d)のように、不要な周波数スペクトラムXとYを減衰させる。したがって、これを再送信しても、妨害波を発生させない。
【0071】
このフィルタ91は、図6に示すように、入力を個別のフィルタ101とフィルタ102とに入れ、フィルタ101,102の各出力を加算器103で加算することで実現できる。
【0072】
このように、上記全スペクトラム反転部を周波数変換手段としての受信部20の周波数変換部25で構成することによって、回路構成を簡単にでき、回路規模を小さくできる。
【0073】
なお、この第2実施形態では、受信部の周波数変換部の中間周波数の段階で周波数スペクトラム反転をしたが、送信部の周波数変換部で周波数スペクトラム反転することも可能である。すなわち、受信部の局部発振周波数を250MHzとし、受信部や信号処理部で周波数スペクトラム反転を行わずに、送信部の局部発振周波数を384MHzとして周波数スペクトラム反転を行う。
【0074】
(第3実施形態)
上記第1,第2実施形態では、周波数スペクトラム反転に依存しない変調方式(周波数変調,振幅変調など)における子機間通話が可能となったが、例えば位相変調などの変調方式のように、信号周波数スペクトラムが反転すると位相の変化が逆転し、正常に復調できないものがある。これに対応するため、この第3実施形態では、個々の信号波(受信信号)の周波数スペクトラムを受信波と同じ方向に変えて解決する。
【0075】
図7はこの発明の第3実施形態の通信装置としての親機の要部を示している。
【0076】
この第3実施形態では、上記第2実施形態の信号波毎のフィルタ(図6に示すフィルタ101,102)の出力を、それぞれ部分スペクトラム反転部105,106により周波数スペクトラム反転し、周波数スペクトラム反転された各信号を加算器103により加算することで各受信信号の側波帯の反転を行い、全体として元に戻す。このとき、周波数スペクトラム反転に伴って周波数変換が行われるので、例えば、送信部の局部発振器の周波数を変更して対応する。
【0077】
なお、上記部分スペクトラム反転部105,106は、図2に示す第1実施形態の信号処理部40と同様の信号処理を行う。
【0078】
このように、上記部分スペクトラム反転部105,106を設けたので、入力した受信信号の側波帯の反転が元に戻り、位相変調などの周波数スペクトラム反転が影響を及ぼすような変調方式でも、子機間通信が可能となる。
【0079】
(第4実施形態)
また、図8(a)〜(d)はこの発明の第4実施形態の周波数スペクトラム反転演算方法を示している。入力信号スペクトラムが15MHz付近にあり、三角の記号で示されている(図8(a))。この入力信号を38MHzでサンプリングすると、23MHz(=38−15)の位置にスペクトラムが生じる(図8(b))。
【0080】
次に、サンプリングデータを一つ置きに間引くことにより、サンプリング周波数を1/2の19MHzとする。これによって、4MHz(=19−15)の所に図8(c)のようにスペクトラムが生じる。この後、D/A変換し、4MHz付近の周波数を通過する帯域通過フィルタまたは低域通過フィルタを施して、図8(d)の信号が取り出される。この信号は、図8(a)の信号スペクトラム反転した信号となっている。
【0081】
上記周波数スペクトラム反転演算方法では、周波数スペクトラム反転をデジタル信号処理により実現できると共に、標本化により得られたサンプルデータをサンプリングレート変換において間引くことによって、サンプリングレートを低くできるので、消費電力を低減することができる。
【0082】
(第5実施形態)
また、この発明の第5実施形態の周波数スペクトラム反転演算方法としては、第4実施形態の図8(a)に示す入力信号をサンプリング周波数は38MHzでサンプリングした後、データを一つ置きに0とすると、サンプリング周波数は38MHzのまま、図8(c)と同様の周波数スペクトラムが生じる(図8(e))。そして、図8(e)に示す信号を4MHz付近の周波数を通過する帯域通過フィルタまたは低域通過フィルタを施して図8(f)の信号が取り出される。
【0083】
上記周波数スペクトラム反転演算方法では、周波数スペクトラム反転をデジタル信号処理により実現できると共に、サンプリングレートを変更しないので、同一のクロックで信号処理することができる。また、アパーチャ効果を受け難くなる。オーバーサンプルにより、緩やかなフィルタ特性で処理可能となる。
【0084】
上記第1〜第5実施形態では、無線通信を行う通信装置としてコードレス電話機について説明したが、通信装置はこれに限らず、複数の子機からの受信信号を周波数変換して再送信する通信装置にこの発明を適用してよい。また、無線に限らず、有線による通信システムにおいて複数の子機からの受信信号を周波数変換して再送信するような通信装置にこの発明を適用してもよい。
【0085】
また、上記第1〜第5実施形態では、通信装置としての親機について説明したが、この発明による周波数スペクトラム反転演算方法を実行するプログラムの一部または全部をフロッピーディスクやICカード、IC自身等のプログラム記録媒体に保管して、必要に応じて上記プログラムを通信装置の信号処理部を構成する例えばDSP(Digital Signal Processor)に読み込んで、実行させてもよい。
【0086】
また、DSP等の信号処理演算手段によって全スペクトラム反転部および部分スペクトラム反転部の全ての信号処理を演算するようにすれば、信号処理演算手段を通信システムの周波数割当てに依存せずに汎用部品として製造でき、量産効果が高くなる。その場合、部分スペクトラム反転部を全スペクトラム反転部よりも前に配置することで、部分スペクトラム反転部の最初に実施するフィルタ演算が低いサンプリング周波数で行えるので、消費電力を低減することができる。
【0087】
【発明の効果】
以上より明らかなように、この発明の通信装置によれば、子機間通信の場合にだけ子機に特別に送受信の周波数を変更させるということがなく、また親機に複数組の送信部,受信部を備えることがなく、同一のデュプレクス間隔を使用する子機間通信を実現することができる。また、同一のデュプレクス間隔を使用する通信システムにおいて、子機間通信を複信で行うことができ、使用者が同時に音声などの伝達が可能となり、利便性に富む。また、単信方式と比較して余分な切替信号を出さないので、通信中に切替信号が雑音として使用者に聞こえることもない。また、子機間通信のための信号処理の一部に、従来のような複数の回路を設けることなく構成でき、回路規模、大きさ、消費電力、部品コストなどに利点があり、また、信号処理をDSPにより行う場合でも、複数の処理を別々に行わないため、信号処理時間が少なくて済み、他の処理が行える余裕ができ、高機能な通信システムを提供できる。また、同一の機能のみ処理する場合は、DSPの処理速度を低下できるので、消費電力を下げることができる。
【0088】
また、上記全スペクトラム反転部により反転された上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号成分以外の信号成分を減衰させるフィルタを設けたので、不要な信号を再送信せず、他の通信を妨害しないようにでき、通信品質を向上できる。
【0089】
また、部分スペクトラム反転部を設けることによって、入力した周波数スペクトラム(側波帯(サイドバンド))の反転を元に戻すことができ、位相変調などの周波数スペクトラム反転が影響を及ぼす変調方式でも、子機間通信が可能となる。
【0090】
また、部分スペクトラム反転部を、DSP等の信号処理演算手段により構成することによって、回路構成が簡単になって回路規模を小さくできる。
【0091】
また、上記全スペクトラム反転部を周波数変換回路で構成することによって、回路構成を簡単にでき、回路規模を小さくできる。
【0092】
また、受信部,送信部に依存せず、全スペクトラム反転部および部分スペクトラム反転部の全ての信号処理を信号処理部により演算することによって、信号処理部を通信システムの周波数割当てに依存せずに汎用部品として製造できるため、量産効果が得られる。
【0093】
また、部分スペクトラム反転部を全スペクトラム反転部よりも前に配置することで、部分スペクトラム反転部の最初に実施するフィルタ演算が低いサンプリング周波数で行えるので、消費電力を低減できる。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はこの発明の第1実施形態の通信装置としての親機と複数の子機とを有するコードレス電話機における子機間通話の概念図を示している。
【図2】 図2は上記通信装置の親機の構成図である。
【図3】 図3は信号の周波数スペクトラムと信号波形の模式図である。
【図4】 図4はこの発明の第2実施形態の通信装置としての親機を構成図を示している。
【図5】 図5は上記親機の信号処理の信号波形を示す図である。
【図6】 図6は上記親機の信号処理部のフィルタの構成図である。
【図7】 図7はこの発明の第3実施形態の通信装置としての親機の要部を示している。
【図8】 図8はこの発明の第4実施形態の周波数スペクトラム反転演算方法を示している。
【図9】 図9は従来の通信装置としての親機の構成図である。
【図10】 図10は従来の通信装置としての親機と複数の子機とを有するコードレス電話機における子機間通話の概念図を示している。
【符号の説明】
A,B…子機、
10…親機、
20…受信部、
23,34…RF増幅部、
24,26,31,33…BPF、
25,32…周波数変換部、
27…IF増幅部、
30…送信部、
40,90…信号処理部、
41…A/D変換部、
42…サンプリングレート変換部、
43,47,91,92…フィルタ、
44…D/A変換部、
51…デュプレクサ、
52…アンテナ、
60…送受話器、
70…電話回線I/F、
80…制御/入出力、
101,102…フィルタ、
103…加算器、
105,106…部分スペクトラム反転部。

Claims (8)

  1. 複数の子機からの受信信号を周波数変換して再送信することにより子機間通信を中継する通信装置であって、
    上記複数の子機からの受信信号を含む周波数スペクトラムであってその複数の受信信号を含む周波数スペクトラム全体を反転する全スペクトラム反転部
    上記全スペクラム反転部により反転された上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号を再送信する送信部とを備え、
    上記全スペクトラム反転部および上記送信部によって、上記通信を中継される各子機について、一方の子機からの元の受信信号の周波数と他方の子機からの受信信号の全スペクトラム反転後の周波数とが、夫々デュプレクス間隔になるように周波数変換された受信信号を再送信することを特徴とする通信装置。
  2. 請求項1に記載の通信装置において、
    上記全スペクトラム反転部により反転された上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号成分以外の信号成分を減衰させるフィルタを備え、
    上記フィルタの出力の上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号を再送信することを特徴とする通信装置。
  3. 請求項1または2に記載の通信装置において、
    上記全スペクトラム反転部により反転された上記周波数スペクトラムに含まれる上記複数の受信信号のスペクトラム毎に、上記複数の受信信号のうちの1つずつが含まれる周波数スペクトラムを夫々反転する部分スペクトラム反転部を備えたことを特徴とする通信装置。
  4. 請求項3に記載の通信装置において、
    上記部分スペクトラム反転部が信号処理演算手段であることを特徴とする通信装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の通信装置において、
    上記全スペクトラム反転部が周波数変換手段であることを特徴とする通信装置。
  6. 請求項3に記載の通信装置において、
    上記全スペクトラム反転部および上記部分スペクトラム反転部が信号処理演算手段であることを特徴とする通信装置。
  7. 請求項6に記載の通信装置において、
    上記部分スペクトラム反転部が上記全スペクトラム反転部よりも前に設けられていることを特徴とする通信装置。
  8. 第1の子機からの子機送信周波数帯域に属する第1周波数をもつ信号を第1受信信号として、第2の子機からの上記子機送信周波数帯域に属する第2周波数をもつ信号を第2受信信号として夫々受信する受信部と、
    上記第1受信信号および第2受信信号を含む周波数スペクトラム全体を一括反転して、第1受信信号を子機受信周波数帯に属する第3周波数をもつ第2送信信号に、第2受信信号を上記子機受信周波数帯域に属する第4周波数をもつ第1送信信号に変換する全スペクトラム反転部と、
    上記全スペクトラム反転部からの第2送信信号を上記第2の子機へ、第1送信信号を上記第1の子機へ送信する送信部を備え、
    上記第1の子機が送信する第1受信信号の第1周波数と、上記第1の子機への第1送信信号の第4周波数との差が、上記第2の子機が送信する第2受信信号の第2周波数と、上記第2の子機への第2送信信号の第3周波数との差に等しくして、上記第1 , 第2の子機間でデュプレックス間隔一定の通信を行うことを特徴とする通信装置。
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