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JP3745561B2 - 多レベル中性点電位固定型電力変換装置 - Google Patents

多レベル中性点電位固定型電力変換装置 Download PDF

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JP3745561B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中性点電位を有する直流電源と、複数個の半導体素子からなる多レベル逆変換回路とから構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置に係り、特に多レベル逆変換回路を構成する半導体素子の安全な動作を確保すると共に損失の低減を図れるようにした多レベル中性点電位固定型電力変換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12は、この種の従来の多レベル中性点電位固定型電力変換装置の構成例を示す回路図である。
【0003】
なお、図12では、代表例として3レベルインバータ装置の1相分のみの構成例について示している。
【0004】
図12において、3レベルインバータ装置は、直流電源と、多レベル逆変換回路である3レベルインバータ回路とから構成されている。
【0005】
直流電源は、互いに直列接続された2組の直流電源1a,1bの接続点を中性点とし、正極P、および負極Nを有する。
【0006】
3レベルインバータ回路は、4個のゲート制御付き半導体素子(以下、単に半導体素子と称する)US1,US2,US3,US4と、2個のダイオードUD1,UD2とを、図示のように接続して構成され、直流電源を交流電圧に逆変換して、図示しない負荷に交流電力を供給する。
【0007】
なお、3レベルインバータ装置の動作は、良く知られているので、ここではその説明については省略する。
【0008】
一方、3レベルインバータ回路を構成している半導体素子US1,US2,US3,US4、ダイオードUD1,UD2を過電圧から保護するために、一般に用いられるスナバ回路が設けられている。
【0009】
すなわち、3レベルインバータ装置の容量が大きくなると、図12のA部に示すように、充放電スナバ回路S11a,S11b,S12a,S12bを、図示のように半導体素子毎に個別に設けるか、B部に示すように、クランプ式スナバ回路S21a,S21b,S22a,S22bを図示のように設けるか、いずれかまたは両方が採用される場合が多い。
【0010】
また、近年では、電圧駆動型の半導体素子の大容量化(例えば、4.5KV−4KA遮断)に伴ない、大電流を高速でターンオン、ターンオフすることが可能になってきている。
【0011】
そして、このターンオン時の急峻な電流の立ち上がりdI/dt(特に、フリーホイールダイオード還流時の反対側半導体素子のターンオンによるダイオードの逆回復時)による半導体素子の破損防止を防止するため、3レベルインバータ回路と直流電源の正極Pおよび負極Nとの間に、それぞれdI/dt抑制用リアクトルである非飽和リアクトル2aおよび2bが設けられる場合が多い。
【0012】
しかしながら、前述のスナバ回路やdI/dt抑制用リアクトルは、装置の高圧大容量化に伴なって、それぞれの外形が大きくなること、また価格も高騰することが余儀なくされており、経済的ではない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
一方、最近では、電圧駆動型半導体素子の発展に伴なって、高電圧大電流を高速でスイッチングすることが可能となり、例えば多レベルインバータ装置では、直流電圧が数KVの高圧大容量インバータ装置が実用化されてきている。
【0014】
しかしながら、前述したように、半導体素子保護用のスナバ回路やdI/dt抑制リアクトルは、電力変換装置の部品数も多く、また外形も大きくなることから、信頼性や経済性の点で問題があり、その改良が強く望まれてきている。
【0015】
本発明の目的は、多レベル逆変換回路を構成する半導体素子の急峻な電流の立ち上がり(dI/dt)を抑制することができ、小型化、経済性、および信頼性の向上を図ることが可能な多レベル中性点電位固定型電力変換装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続してなり、直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、請求項1の発明では、多レベル逆変換回路と直流電源の正極および負極との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続し、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けている。
【0017】
従って、請求項1の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、多レベル逆変換回路と直流電源の正極および負極との間にそれぞれ可飽和リアクトルを接続することにより、これら正極および負極に設けた可飽和リアクトルに電流が流れ始める時に、電流の立ち上りを抑制することができ、電力変換装置を構成する半導体素子の立ち上り電流(dI/dt)を抑制して、ストレスを軽減することが可能となる。
【0018】
また、請求項2の発明では、多レベル逆変換回路と直流電源の中性点との間に、可飽和リアクトルを接続している。
【0019】
従って、請求項2の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、多レベル逆変換回路と直流電源の中性点との間に可飽和リアクトルを接続することにより、中性点に設けた可飽和リアクトルに電流が流れ始める時に、電流の立ち上りを抑制することができ、電力変換装置を構成する半導体素子の立ち上り電流(dI/dt)を抑制して、ストレスを軽減することが可能となる。
【0020】
さらに、請求項3の発明では、多レベル逆変換回路と直流電源の正極、負極、および中性点との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続している。
【0021】
従って、請求項3の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、多レベル逆変換回路と直流電源の正極、負極、および中性点との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続することにより、これら正極および負極、およびに設けた可飽和リアクトルに電流が流れ始める時に、電流の立ち上りを抑制することができ、電力変換装置を構成する半導体素子の立ち上り電流(dI/dt)を抑制して、ストレスを軽減することが可能となる。
【0022】
さらにまた、請求項4の発明では、上記請求項2または請求項3の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けている。
【0023】
従って、請求項4の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、上記請求項2または請求項3の発明と同様の作用を奏するのに加えて、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間にそれぞれサージ電圧抑制回路を設けることにより、直流電源から電力変換回路までの配線インダクタンスと可飽和リアクトルのエネルギーによるサージ電圧を吸収して、サージ電圧を抑制することが可能となる。
【0024】
一方、請求項5の発明では、多レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源の正極および負極との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続している。
【0025】
従って、請求項5の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、多レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源の正極および負極との間にそれぞれ可飽和リアクトルを接続することにより、これら正極および負極に設けた可飽和リアクトルに電流が流れ始める時に、各相間の干渉なく電流の立ち上りを抑制することができ、電力変換装置を構成する半導体素子の立ち上り電流(dI/dt)を抑制して、ストレスを軽減することができると共に、装置の容量を大きくすることが可能となる。
【0026】
また、請求項6の発明では、多レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源の中性点との間に、可飽和リアクトルを接続している。
【0027】
従って、請求項6の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、多レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源の中性点との間に可飽和リアクトルを接続することにより、中性点に設けた可飽和リアクトルに電流が流れ始める時に、各相間の干渉なく電流の立ち上りを抑制することができ、電力変換装置を構成する半導体素子の立ち上り電流(dI/dt)を抑制して、ストレスを軽減することができると共に、装置の容量を大きくすることが可能となる。
【0028】
さらに、請求項7の発明では、多レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源の正極、負極、および中性点との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続している。
【0029】
従って、請求項7の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、多レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源の正極、負極、および中性点との間にそれぞれ可飽和リアクトルを接続することにより、正極、負極、および中性点に設けた可飽和リアクトルに電流が流れ始める時に、各相間の干渉なく電流の立ち上りを抑制することができ、電力変換装置を構成する半導体素子の立ち上り電流(dI/dt)を抑制して、ストレスを軽減することができると共に、装置の容量を大きくすることが可能となる。
【0030】
さらにまた、請求項8の発明では、上記請求項6または請求項7の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、多レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設け、多レベル逆変換回路を構成する個々の半導体素子にはスナバ回路を設けないようにしている。
【0031】
従って、請求項8の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、上記請求項6または請求項7の発明と同様の作用を奏するのに加えて、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間にそれぞれサージ電圧抑制回路を設けることにより、直流電源から電力変換回路までの配線インダクタンスと可飽和リアクトルのエネルギーによるサージ電圧を吸収して、サージ電圧を抑制することが可能となる。
【0032】
一方、請求項9の発明では、上記請求項1乃至請求項8のいずれか1項の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、可飽和リアクトルは、比透磁率が大きく角型B−H特性を有し、その電圧時間積は多レベル逆変換回路を構成する半導体素子の電圧降下時間(tr)、逆回復時間(trr)、または順回復時間(tfr)以上の時間積を確保するように選定している。
【0033】
従って、請求項9の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、可飽和リアクトルは、比透磁率が大きく角型B−H特性を有し、その電圧時間積は多レベル逆変換回路を構成する半導体素子の電圧降下時間(tr)、逆回復時間(trr)、または順回復時間(tfr)以上の時間積を確保するように選定することにより、半導体素子のオン後に電流が流れ始めるため、スイッチング損失を軽減することができる。
【0034】
また、請求項10の発明では、上記請求項1、請求項4、請求項5または請求項8の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、サージ電圧抑制回路を、コンデンサと直列にダイオードを接続し、かつ当該ダイオードと並列に抵抗を接続して構成している。
【0035】
従って、請求項10の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、サージ電圧抑制回路を、コンデンサと直列にダイオードを接続し、かつダイオードと並列に抵抗を接続して構成することにより、充電はコンデンサとダイオードを介して行なわれ、放電はコンデンサから抵抗を介して行なわれるため、上記請求項1、請求項4、請求項5または請求項8の発明の作用を、より一層効果的に奏することができる。
【0036】
さらに、請求項11の発明では、上記請求項1、請求項4、請求項5または請求項8の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、サージ電圧抑制回路と並列にサージ電圧クリップ素子を設けている。
【0037】
従って、請求項11の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、サージ電圧抑制回路と並列にサージ電圧クリップ素子を設けることにより、サージ電圧クリップ素子は、サージ電圧抑制回路で抑え切れない大きなサージ電圧、例えば過電流を遮断した場合の大きな単発的サージ電圧を所定レベルでクリップするため、サージ電圧抑制回路の部品定格を低減して、小型化することができる。
【0038】
一方、請求項12の発明では、多レベル逆変換回路と直流電源の正極および負極との間に、それぞれ非飽和リアクトルと可飽和リアクトルの両方を接続し、多レベル逆変換回路と直流電源の中性点との間に、可飽和リアクトルを接続し、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けている。
【0039】
従って、請求項12の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、多レベル逆変換回路と直流電源の正極および負極との間にそれぞれ非飽和リアクトルと可飽和リアクトルの両方を接続し、多レベル逆変換回路と直流電源の中性点との間に可飽和リアクトルを接続し、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間にそれぞれサージ電圧抑制回路を設けることにより、非飽和リアクトルと可飽和リアクトルの両方は、多レベル逆変換回路の半導体素子の電流の立ち上りを抑制するため、短絡電流耐量の比較的小さい半導体素子の場合にも、短絡電流のピーク値を低減することができる。
【0040】
また、請求項13の発明では、上記請求項1乃至請求項8、または請求項12のいずれか1項の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、可飽和リアクトルに、当該可飽和リアクトルのリセット時に発生する逆電圧を吸収する逆電圧抑制スナバ回路を設けている。
【0041】
従って、請求項13の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、可飽和リアクトルに逆電圧抑制スナバ回路を設けることにより、サージ電圧抑制回路を小さくすることができ、また削除することが可能となる。
【0042】
さらに、請求項14の発明では、上記請求項13の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、可飽和リアクトルに設けた逆電圧抑制スナバ回路は、ダイオードと直列にコンデンサを接続し、かつ当該コンデンサと並列に抵抗を接続してなる。
【0043】
従って、請求項14の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、可飽和リアクトルに設けた逆電圧抑制スナバ回路は、ダイオードと直列にコンデンサを接続し、かつコンデンサと並列に抵抗を接続することにより、可飽和リアクトルの逆電圧エネルギーは、ダイオードを介してコンデンサに充電された後に抵抗で放電されるため、上記請求項の発明の作用を、より一層効果的に奏することができる。
【0044】
一方、請求項15の発明では、互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続して構成され、直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、多レベル逆変換回路と直流電源の正極および負極との間に、それぞれ可飽和リアクトルを設け、直流電源の中性点からは、ダイオードを介して可飽和リアクトルをリセットできるように逆方向に電流を流すように接続し、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けている。
【0045】
従って、請求項15の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、多レベル逆変換回路と直流電源の正極および負極との間に、それぞれ可飽和リアクトルを設け、直流電源の中性点からは、ダイオードを介して可飽和リアクトルをリセットできるように逆方向に電流を流すように接続し、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けることにより、中性点に可飽和リアクトルを設ける必要がなく、中性点に可飽和リアクトルを設けた場合と同様の作用を奏することができる。
【0046】
また、請求項16の発明では、上記請求項12の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、非飽和リアクトルは、直流電源の正極および負極の共通母線に、可飽和リアクトルは、多レベル逆変換回路の各相毎に設けている。
【0047】
従って、請求項16の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、非飽和リアクトルを、直流電源の正極および負極の共通母線に、可飽和リアクトルを、多レベル逆変換回路の各相毎に設けることにより、非飽和リアクトルは共通母線に2個設けることで、上記請求項12の発明の作用を、より一層効果的に奏することができる。
【0048】
さらに、請求項17の発明では、上記請求項16の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、非飽和リアクトルに代えて、可飽和リアクトルを設けている。
【0049】
従って、請求項17の発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置においては、非飽和リアクトルに代えて、可飽和リアクトルを設けることにより、上記請求項16の発明の作用を、より一層効果的に奏することができる。
【0050】
以上により、多レベル逆変換回路を構成する半導体素子の急峻な電流の立ち上がり(dI/dt)、電圧急変(dV/dt)、またゲート回路への外乱を抑制することができると共に、小型化、経済性、および信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0051】
さらに、直流電源から多レベル逆変換回路までの配線インダクタンスと可飽和リアクトルのエネルギーによるサージ電圧を吸収して抑制することが可能となる。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0053】
(第1の実施の形態:請求項1乃至請求項4、請求項10に対応)
図1は、本実施の形態による多レベル中性点電位固定型インバータ装置の構成例を示す回路図であり、図12と同一要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0054】
なお、図1では、3相構成の3レベル中性点電位固定型インバータの場合について示してあり、インバータ装置の容量が比較的小さい場合に適用することができる。
【0055】
すなわち、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置は、図1に示すように、図12における直流電源1a,1bに代えて、互いに直列接続された2組のコンデンサC1,C2の接続点を中性点Cとし、正極Pおよび負極Nを有する直流電源Vを備えている。
【0056】
また、直流電源1a,1bの正極Pおよび負極Nに設けられている非飽和リアクトル2aおよび2bを省略し、これらに代えて、U,V,Wの3相構成の3レベル逆変換回路と直流電源Vの正極Pおよび負極Nとの間(正極Pおよび負極Nの共通ライン)に、それぞれ可飽和リアクトル(コア)LPおよびLNを設け、かつ中性点Cラインにも可飽和リアクトルLCを設けている。
【0057】
さらに、半導体素子US1,US2,US3,US4(VS1,VS2,VS3,VS4、WS1,WS2,WS3,WS4)にそれぞれ個別に設けている抵抗、ダイオード、コンデンサからなる充放電スナバ回路S11a,S11b,S12a,S12bと各アームに設けられたクランプ式スナバ回路S21a,S21b,S22a,S22bを省略し、これらに代えて、正極Pと中性点Cとの間、および負極Nと中性点Cとの間に、それぞれコンデンサCSP,CSNと直列にダイオードDSP,DSNを接続し、かつこのダイオードDSP,DSNと並列にそれぞれ抵抗RSP,RSNを接続してなるサージ電圧抑制回路を設けている。
【0058】
次に、以上のように構成した本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置の動作について、図2乃至図4を用いて説明する。
【0059】
なお、ここでは、図1の1相分(ここでは、U相)の回路動作における可飽和リアクトルの効果を主体として述べる。
【0060】
図2(a)において、半導体素子US1,US2がオンして電流I1が負荷へ流れている状態で半導体素子US1をオフすると、クランプダイオードUD1を介して中性点Cから電流I2として流れる。
【0061】
半導体素子US1をオフした後に半導体素子US3をオンしても、力行時には中性点CからクランプダイオードUD1を介して電流は流れ続ける。
【0062】
半導体素子US3をオフして再び半導体素子US1をオンすると、クランプダイオードUD1の蓄積電荷によって、逆回復電流Ir1が直流電源Vの正極P、可飽和リアクトルLP、半導体素子US1、クランプダイオードUD1、可飽和リアクトルLC、中性点Cのループで、短絡電流が図2(b)のI1に示すように流れる(実線)が、この時、可飽和リアクトルLP,LCによって、急峻な電流の立ち上がり(dI/dt)が抑えられる(破線)。
【0063】
これにより、半導体素子US1とクランプダイオードUD1のスイッチング損失を低減することができ、半導体素子の高dI/dtによる破損を防止することができる。
【0064】
一方、図3に示すように、半導体素子US1,US2がオンしている時、回生電流I3が流れている状態で、半導体素子US1オフして半導体素子US3をオンすると、半導体素子US1のフリーホイールダイオードD1の逆回復電流Ir3によって、直流電源Vの正極P、可飽和リアクトルLP、フリーホイールダイオードD1、半導体素子US2,US3、クランプダイオードUD2、可飽和リアクトルLC、中性点Cのループで、正側電源短絡電流が流れて負荷電流I4に重畳されるが、この時可飽和リアクトルLP,LCによって、急峻な逆回復電流Ir3の立ち上がり(dI/dt)が抑えられる。
【0065】
可飽和リアクトルLP,Lだけで中性点Cの可飽和リアクトルLCがない場合には、力行時の中性点クランプダイオードの逆回復電流が可飽和リアクトルLPにとって力行時と同一方向電流のため、飽和状態にあるので、dI/dtを抑える効果はほとんどない。
【0066】
また、中性点Cの可飽和リアクトルLCだけでは、回生時にはやはり同一方向の電流となるため、半導体素子US1、またはUS4のフリーホイールダイオードの逆回復電流の立ち上がり(dI/dt)を抑えることはできない。
【0067】
従って、図1に示すように、直流電源Vの正極P、中性点C、電源Vの負極Nの各ラインに可飽和リアクトルLP,LC,LNを設けることにより、負荷電流のあらゆるモードの電流に対してdI/dtを抑制することができる。
【0068】
半導体素子US1乃至US4それぞれがオフする時の可飽和リアクトルLP,LC,LNのエネルギーによるサージ電圧は、直流電源Vの正極Pと中性点Cとの間、直流電源Vの負極Nと中性点Cとの間に設けたサージ電圧抑制回路により抑制することができる。
【0069】
すなわち、サージ電圧抑制回路では、充電はコンデンサCSP,CSNとダイオードダイオードDSP,DSNを介して行なわれ、放電はコンデンサCSP,CSNから抵抗RSP,RSNを介して行なわれる。
【0070】
可飽和リアクトルLP,LC,LNは、実験結果によれば、図4に示すように、時刻t1で半導体素子の電流ICがオフされると、時刻t2でサージ電圧抑制回路のダイオードの逆回復時の電圧急変(dV/dt)が発生するが、可飽和リアクトルLP,LC,LNによってdV/dtも抑制できる効果もあり、負のゲート電圧が正方向へ持上がると言う外乱がなくなるという副次的効果も得られる。
【0071】
なお、V相、W相の回路動作についても、上記U相の回路動作の場合と同様となる。
【0072】
上述したように、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置では、3レベル逆変換回路と、中性点Cを有する直流電源Vの正極P、負極Nおよび中性点Cとの間に、それぞれ可飽和リアクトルLP,LN,LCを接続するようにしているので、3レベル逆変換回路を構成する半導体素子US1,US2,US3,US4(VS1,VS2,VS3,VS4、WS1,WS2,WS3,WS4)の急峻な電流の立ち上がり(dI/dt)、電圧急変(dV/dt)、またゲート回路への外乱を抑制することができると共に、小型化、経済性、および信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0073】
さらに、必要に応じて、直流電源Vの正極Pと中性点Cとの間、および負極Nと中性点Cとの間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けるようにしているので、直流電源Vから3レベル逆変換回路までの配線インダクタンスと可飽和リアクトルLP,LN,LCのエネルギーによるサージ電圧を吸収して抑制することが可能となる。
【0074】
(第2の実施の形態:請求項5乃至請求項8、請求項10に対応)
図5は、本実施の形態による多レベル中性点電位固定型インバータ装置の構成例を示す回路図であり、図1と同一要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0075】
なお、図5では、3相構成の3レベル中性点電位固定型インバータの場合について示してあり、インバータ装置の容量が比較的大きい場合に適用することができる。
【0076】
すなわち、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置は、図5に示すように、図1における3レベル逆変換回路の各相毎に、図6に示すような構成(図6では、3レベル逆変換回路の1相分(U相)のみについて示している)を有する前述の可飽和リアクトルLP,LN,LC、およびサージ電圧抑制回路を設け、3レベル逆変換回路を構成する個々の半導体素子US1,US2,US3,US4(VS1,VS2,VS3,VS4、WS1,WS2,WS3,WS4)には、スナバ回路を設けないようにしている。
【0077】
次に、以上のように構成した本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置においても、前述した第1の実施の形態の場合と同様に動作するので、ここではその説明を省略する。
【0078】
特に、本実施の形態の場合には、3レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源Vの正極P、負極N、および中性点Cとの間に、それぞれ可飽和リアクトルLP,LN,LCを接続していることにより、正極P、負極N、および中性点Cに設けた可飽和リアクトルLP,LN,LCに電流が流れ始める時に、各相間の干渉なく電流の立ち上りを抑制することができ、3レベル逆変換回路を構成する半導体素子US1,US2,US3,US4(VS1,VS2,VS3,VS4、WS1,WS2,WS3,WS4)の急激な立ち上り電流(dI/dt)を抑制して、ストレスを軽減することができると共に、装置の容量を大きくすることができる。
【0079】
上述したように、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置では、前述した第1の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができるのに加えて、各相間の干渉なく電流の立ち上りを抑制することができ、3レベル逆変換回路を構成する半導体素子US1,US2,US3,US4(VS1,VS2,VS3,VS4、WS1,WS2,WS3,WS4)の立ち上り電流(dI/dt)を抑制して、ストレスを軽減することができると共に、装置の容量を大きくすることが可能となる。
【0080】
(第3の実施の形態:請求項9に対応)
本実施の形態による3レベル中性点電位固定型インバータ装置は、前述した第1または第2の実施の形態において、可飽和リアクトルLP,LN,LCは、比透磁率が大きく角型B−H特性を有し、その電圧時間積は3レベル逆変換回路を構成する半導体素子の電圧降下時間(tr)、逆回復時間(trr)、または順回復時間(tfr)以上の時間積を確保するように選定している。
【0081】
次に、以上のように構成した本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置の動作について、図7を用いて説明する。
【0082】
図7(a)は可飽和リアクトルLP,LN,LCの磁束(B)と電界の強さ (H)との関係を示したBHカーブを、図7(b)はダイオードの逆回復特性を、図7(c)はダイオードの電流通電時の順回復特性をそれぞれ示したものである。
【0083】
すなわち、図7(a)に示すように、BHカーブは角型の特性を有しているものが好ましい。
【0084】
また、図7(b)においては、半導体素子の逆回復時間(trr)の間、可飽和リアクトルLP,LN,LCの効果によって電流は破線のように抑えられるため、逆回復時の電流Irr)は低減される。
【0085】
さらに、図7(c)においては、半導体素子が完全にターンオンするまでの時間、すなわち電圧降下時間(tr)の間、ダイオードが通電時に電流の立上がりが早いと過渡的に電圧(vfr)が順回復時間(tfr)の間は、ターンオン損失が大きく発生するが、可飽和リアクトルLP,LN,LCの効果によって電流の立上がりが抑えられるため、損失が低減される。
【0086】
ここで、可飽和リアクトルLP,LN,LCが作用する時間としては、半導体素子の逆回復時間(trr)、電圧降下時間(tr)、順回復時間(tfr)を少なくとも確保することが必要であり、これを満足する電圧時間積を有する可飽和リアクトルを選定しており、その時間は、数μ秒程度あれば充分に効果が得られる。
【0087】
上述したように、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置では、前述した第1または第2の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができるのに加えて、半導体素子のオン後に電流が流れ始めるため、スイッチング損失を軽減することが可能となる。
【0088】
(第4の実施の形態:請求項11に対応)
図8は、本実施の形態による多レベル中性点電位固定型インバータ装置の構成例を示す回路図であり、図1または図6と同一要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0089】
なお、図8では、代表例として3レベルインバータ装置の1相分(U相)のみの構成例について示している。
【0090】
すなわち、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置は、図8に示すように、図1または図6におけるサージ電圧抑制回路と並列に、それぞれサージ電圧クリップ素子(例えば、非線形抵抗からなるもの)20,21を設けた構成としている。
【0091】
次に、以上のように構成した本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置においても、前述した第1または第2の実施の形態の場合と同様に動作するので、ここではその説明を省略する。
【0092】
特に、本実施の形態の場合には、サージ電圧抑制回路と並列にサージ電圧クリップ素子20,21を設けていることにより、サージ電圧クリップ素子20,21は、サージ電圧抑制回路で抑え切れない大きなサージ電圧、例えば過電流を遮断した場合の大きな単発的サージ電圧を、所定レベル(規定電圧)でクリップするため、サージ電圧抑制回路の部品定格を低減して、小型化することができる。
【0093】
上述したように、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置では、前述した第1または第2の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができるのに加えて、サージ電圧抑制回路の部品定格を低減して、小型化することが可能となる。
【0094】
(第5の実施の形態:請求項12に対応)
図9は、本実施の形態による多レベル中性点電位固定型インバータ装置の構成例を示す回路図であり、図1または図6と同一要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0095】
なお、図9では、代表例として3レベルインバータ装置の1相分(U相)のみの構成例について示している。
【0096】
すなわち、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置は、図9に示すように、図1または図6における3レベル逆変換回路と直流電源Vの正極Pおよび負極Nとの間に、それぞれ非飽和リアクトルL1およびL2と可飽和リアクトルLPおよびLNの両方を接続し、3レベル逆変換回路と直流電源Vの中性点Cとの間に、可飽和リアクトルLCを接続し、直流電源Vの正極Pと中性点Cとの間、および負極Nと中性点Cとの間に、それぞれ前述のサージ電圧抑制回路を設けた構成としている。
【0097】
次に、以上のように構成した本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置においても、前述した第1または第2の実施の形態の場合と同様に動作するので、ここではその説明を省略する。
【0098】
特に、本実施の形態の場合には、非飽和リアクトルL1,L2と可飽和リアクトルLP,LN,LCとを併用していることにより、非飽和リアクトルL1,L2と可飽和リアクトルLP,LN,LCの両方は、3レベル逆変換回路の半導体素子の電流の立ち上りを抑制するため、短絡電流耐量の比較的小さい半導体素子の場合にも、短絡電流のピーク値を低減することができる。
【0099】
上述したように、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置では、前述した第1または第2の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができるのに加えて、短絡電流耐量の比較的小さい半導体素子の場合にも、短絡電流のピーク値を低減することが可能となる。
【0100】
(第6の実施の形態:請求項13、請求項14に対応)
本実施の形態による3レベル中性点電位固定型インバータ装置は、前述した第1、第2または第5の実施の形態において、図10に示すように、前記可飽和リアクトルLP(LC,LN)に並列に、この可飽和リアクトルLP(LC,LN)のリセット時に発生する逆電圧を吸収する逆電圧抑制スナバ回路を設けた構成としている。
【0101】
ここで、逆電圧抑制スナバ回路は、ダイオード31と直列にコンデンサ32を接続し、かつこのコンデンサ32と並列に抵抗33を接続してなるものである。
【0102】
次に、以上のように構成した本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置においても、前述した第1、第2または第5の実施の形態の場合と同様に動作するので、ここではその説明を省略する。
【0103】
特に、本実施の形態の場合には、可飽和リアクトルLP(LC,LN)に並列に逆電圧抑制スナバ回路を設けていることにより、サージ電圧抑制回路を小さくすることができ、また削除することができる。
【0104】
上述したように、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置では、前述した第1、第2または第5の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができるのに加えて、サージ電圧抑制回路を小さくすることができ、また削除することが可能となる。
【0105】
(第7の実施の形態:請求項15に対応)
図11は、本実施の形態による多レベル中性点電位固定型インバータ装置の構成例を示す回路図であり、図1または図6と同一要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0106】
なお、図11では、代表例として3レベルインバータ装置の1相分(U相)のみの構成例について示している。
【0107】
すなわち、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置は、図11に示すように、図1または図6における3レベル逆変換回路と直流電源Vの正極Pおよび負極Nとの間に、それぞれ可飽和リアクトルLPおよびLNを設け、直流電源Vの中性点Cからは、クランプダイオードUD1およびUD2を介して可飽和リアクトルLPおよびLNをリセットできるように逆方向に電流を流すように接続し、可飽和リアクトルLPおよびLNの後段の直流電源Vの正極Pと中性点Cとの間、および負極Nと中性点Cとの間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けた構成としている。
【0108】
次に、以上のように構成した本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置においても、前述した第1または第2の実施の形態の場合と同様に動作するので、ここではその説明を省略する。
【0109】
特に、本実施の形態の場合には、3レベル逆変換回路と直流電源Vの正極Pおよび負極Nとの間に、それぞれ可飽和リアクトルLPおよびLNを設け、直流電源Vの中性点Cからは、クランプダイオードUD1およびUD2を介して可飽和リアクトルLPおよびLNをリセットできるように逆方向に電流を流すように接続し、可飽和リアクトルLPおよびLNの後段の直流電源Vの正極Pと中性点Cとの間、および負極Nと中性点Cとの間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けていることにより、中性点に可飽和リアクトル(LC)を設ける必要がなく、中性点に可飽和リアクトル(LC)を設けた場合と同様の作用を奏することができる。
【0110】
上述したように、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置では、前述した第1または第2の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができるのに加えて、中性点に可飽和リアクトル(LC)を設ける必要がなく、中性点に可飽和リアクトル(LC)を設けた場合と同様の効果を得ることが可能となる。
【0111】
(第8の実施の形態:請求項16に対応)
本実施の形態による3レベル中性点電位固定型インバータ装置は、前述した第5の実施の形態において、非飽和リアクトルL1およびL2を、直流電源Vの正極Pおよび負極Nの共通母線に、可飽和リアクトルLP,LN,LCを、3レベル逆変換回路の各相毎に設けた構成としている。
【0112】
次に、以上のように構成した本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置においても、前述した第5の実施の形態の場合と同様に動作するので、ここではその説明を省略する。
【0113】
特に、本実施の形態の場合には、非飽和リアクトルL1およびL2は、直流電源Vの正極Pおよび負極Nの共通母線に、可飽和リアクトルLP,LN,LCは、3レベル逆変換回路の各相毎に設けていることにより、非飽和リアクトルL1およびL2は、共通母線に2個設けることで、前述した第5の実施の形態の場合の作用を、より一層効果的に奏することができる。
【0114】
上述したように、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置では、前述した第5の実施の形態の場合と同様の効果をより一層効果的に得ることが可能となる。
【0115】
(第9の実施の形態:請求項17に対応)
本実施の形態による3レベル中性点電位固定型インバータ装置は、前述した第8の実施の形態において、非飽和リアクトルL1およびL2に代えて、可飽和リアクトルを設けた構成としている。
【0116】
次に、以上のように構成した本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置においても、前述した第8の実施の形態の場合と同様に動作するので、ここではその説明を省略する。
【0117】
特に、本実施の形態の場合には、非飽和リアクトルL1およびL2に代えて、可飽和リアクトルを設けている、すなわち直流電源Vの正極Pおよび負極Nの共通母線に可飽和リアクトルを設け、かつ各相毎にも可飽和リアクトルを設けていることにより、前述した第8の実施の形態の場合の作用を、より一層効果的に奏することができる。
【0118】
上述したように、本実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置では、前述した第8の実施の形態の場合と同様の効果をより一層効果的に得ることが可能となる。
【0119】
(その他の実施の形態)
(a)前記第1の実施の形態では、3レベル逆変換回路と直流電源Vの正極Pおよび負極Nとの間(正極Pおよび負極Nの共通ライン)に、それぞれ可飽和リアクトル(コア)LPおよびLNを設け、かつ中性点Cラインにも可飽和リアクトルLCを設ける場合について説明したが、これに限らず、3レベル逆変換回路と直流電源Vの正極Pおよび負極Nとの間(正極Pおよび負極Nの共通ライン)のみにそれぞれ可飽和リアクトル(コア)LPおよびLNを設けるか、または中性点Cラインのみに可飽和リアクトルLCを設けるようにしてもよい。
【0120】
(b)前記第2の実施の形態では、3レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源Vの正極P、負極N、および中性点Cとの間に、それぞれ可飽和リアクトルLP,LN,LCを接続する場合について説明したが、これに限らず、3レベル逆変換回路の各相毎に、直流電源Vの正極Pおよび負極Nとの間のみにそれぞれ可飽和リアクトル(コア)LPおよびLNを設けるか、または中性点Cとの間のみに可飽和リアクトルLCを設けるようにしてもよい。
【0121】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の多レベル中性点電位固定型電力変換装置によれば、多レベル逆変換回路と、中性点を有する直流電源の正極および負極との間、または中性点との間、もしくは正極、負極および中性点との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続するようにしているので、多レベル逆変換回路を構成する半導体素子の急峻な電流の立ち上がり(dI/dt)、電圧急変(dV/dt)、またゲート回路への外乱を抑制することができると共に、小型化、経済性、および信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0122】
さらに、必要に応じて、直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けるようにしているので、直流電源から多レベル逆変換回路までの配線インダクタンスと可飽和リアクトルのエネルギーによるサージ電圧を吸収して抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による3レベル中性点電位固定型インバータ装置の第1の実施の形態を示す回路図。
【図2】同第1の実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置における動作を説明するための図。
【図3】同第1の実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置における動作を説明するための図。
【図4】同第1の実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置における効果を説明するための図。
【図5】本発明による3レベル中性点電位固定型インバータ装置の第2の実施の形態を示す回路図。
【図6】同第2の実施の形態の3レベル中性点電位固定型インバータ装置における3レベル逆変換回路の1相分の可飽和リアクトルおよびサージ電圧抑制回路の構成例を示す回路図。
【図7】本発明による3レベル中性点電位固定型インバータ装置の第3の実施の形態を示す特性図。
【図8】本発明による3レベル中性点電位固定型インバータ装置の第4の実施の形態を示す回路図。
【図9】本発明による3レベル中性点電位固定型インバータ装置の第5の実施の形態を示す回路図。
【図10】本発明による3レベル中性点電位固定型インバータ装置の第6の実施の形態を示す回路図。
【図11】本発明による3レベル中性点電位固定型インバータ装置の第7の実施の形態を示す回路図。
【図12】従来の3レベル中性点電位固定型電力変換装置の構成例を示す回路図。
【符号の説明】
US1,US2,US3,US4(VS1,VS2,VS3,VS4、WS1,WS2,WS3,WS4)…半導体素子
CSP,CSN…コンデンサ
DSP,DSN…ダイオード
UD1,UD2…クランプダイオード
S11a,S11b,S12a,S12b…充放電スナバ回路
S21a,S21b,S22a,S22b…クランプ式スナバ回路
LP,LN,LC…可飽和リアクトル
L1,L2…非飽和リアクトル
10,11…サージ電圧抑制回路
20,21…サージ電圧クリップ素子
31…ダイオード
32…コンデンサ
33…抵抗
C1,C2…コンデンサ
C…中性点
P…正極
N…負極
V…直流電源。

Claims (17)

  1. 互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続してなり、前記直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記多レベル逆変換回路と前記直流電源の正極および負極との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続し
    前記直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  2. 互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続してなり、前記直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記多レベル逆変換回路と前記直流電源の中性点との間に、可飽和リアクトルを接続したことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  3. 互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続してなり、前記直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記多レベル逆変換回路と前記直流電源の正極、負極、および中性点との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続したことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  4. 前記請求項2または請求項3に記載の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  5. 互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続してなり、前記直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記多レベル逆変換回路の各相毎に、前記直流電源の正極および負極との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続し
    前記多レベル逆変換回路の各相毎に、前記直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設け、前記多レベル逆変換回路を構成する個々の半導体素子にはスナバ回路を設けないようにしたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  6. 互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続してなり、前記直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記多レベル逆変換回路の各相毎に、前記直流電源の中性点との間に、可飽和リアクトルを接続したことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  7. 互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続してなり、前記直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記多レベル逆変換回路の各相毎に、前記直流電源の正極、負極、および中性点との間に、それぞれ可飽和リアクトルを接続したことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  8. 前記請求項6または請求項7に記載の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記多レベル逆変換回路の各相毎に、前記直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設け、
    前記多レベル逆変換回路を構成する個々の半導体素子にはスナバ回路を設けないようにしたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  9. 前記請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記可飽和リアクトルは、比透磁率が大きく角型B−H特性を有し、その電圧時間積は前記多レベル逆変換回路を構成する半導体素子の電圧降下時間(tr)、逆回復時間(trr)、または順回復時間(tfr)以上の時間積を確保するように選定したことを特徴する多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  10. 前記請求項1、請求項4、請求項5、請求項8のいずれか1項に記載の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記サージ電圧抑制回路は、コンデンサと直列にダイオードを接続し、かつ当該ダイオードと並列に抵抗を接続してなることを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  11. 前記請求項1、請求項4、請求項5、請求項8のいずれか1項に記載の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記サージ電圧抑制回路と並列にサージ電圧クリップ素子を設けたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  12. 互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続してなり、前記直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記多レベル逆変換回路と前記直流電源の正極および負極との間に、それぞれ非飽和リアクトルと可飽和リアクトルの両方を接続し、
    前記多レベル逆変換回路と前記直流電源の中性点との間に、可飽和リアクトルを接続し、
    前記直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  13. 前記請求項1乃至請求項8のいずれか1項または請求項12に記載の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記可飽和リアクトルに、当該可飽和リアクトルのリセット時に発生する逆電圧を吸収する逆電圧抑制スナバ回路を設けたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  14. 前記請求項13に記載の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記可飽和リアクトルに設けた逆電圧抑制スナバ回路は、ダイオードと直列にコンデンサを接続し、かつ当該コンデンサと並列に抵抗を接続してなることを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  15. 互いに直列接続された2組のコンデンサの接続点を中性点とし、正極および負極を有する直流電源と、複数個の半導体素子をブリッジ接続してなり、前記直流電源を交流電圧に逆変換して負荷に交流電力を供給する多レベル逆変換回路とを備えて構成される多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記多レベル逆変換回路と前記直流電源の正極および負極との間に、それぞれ可飽和リアクトルを設け、
    前記直流電源の中性点からは、ダイオードを介して前記可飽和リアクトルをリセットできるように逆方向に電流を流すように接続し、
    前記直流電源の正極と中性点との間、および負極と中性点との間に、それぞれサージ電圧抑制回路を設けたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  16. 前記請求項12に記載の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記非飽和リアクトルは、前記直流電源の正極および負極の共通母線に、前記可飽和リアクトルは、多レベル逆変換回路の各相毎に設けたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
  17. 前記請求項16に記載の多レベル中性点電位固定型電力変換装置において、
    前記非飽和リアクトルに代えて、可飽和リアクトルを設けたことを特徴とする多レベル中性点電位固定型電力変換装置。
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