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JP3743414B2 - エンジンの始動装置 - Google Patents

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JP3743414B2
JP3743414B2 JP2002287472A JP2002287472A JP3743414B2 JP 3743414 B2 JP3743414 B2 JP 3743414B2 JP 2002287472 A JP2002287472 A JP 2002287472A JP 2002287472 A JP2002287472 A JP 2002287472A JP 3743414 B2 JP3743414 B2 JP 3743414B2
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雅之 鐵野
清孝 間宮
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  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アイドリング時等に自動的にエンジンをいったん停止させ、その後に自動的に再始動させるエンジンの始動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃費低減およびCO2排出量抑制等のため、アイドル時に自動的にエンジンをいったん停止させ、その後に発進操作等の再始動条件が成立したときに自動的にエンジンを再始動させるようにしたエンジンの始動装置が開発されてきている。
【0003】
このようにエンジン停止後に自動的に再始動させる場合に、発進操作等に応じて即座に始動させることが要求されるため、始動用のモータによりエンジン出力軸を駆動するクランキングを経てエンジンを始動させるような、始動完了までにかなりの時間を要する従来の一般的な始動の方法は好ましくない。
【0004】
そこで、停止状態のエンジンの特定気筒(膨張行程にある気筒)に燃料を供給して着火、燃焼を行わせ、そのエネルギーでエンジンが即時的に始動されるようにすることが望ましい。しかしエンジン停止状態でピストンが適当な位置にない場合、例えば上死点あるいは下死点に極めて近い位置にピストンが停止している場合、筒内の空気量が著しく少なくなって燃焼エネルギーが充分に得られなかったり、燃焼エネルギーがピストンに作用する行程が短すぎたりして、正常に始動できなくなる可能性がある。
【0005】
このような問題の対策として、例えば特許文献1に示されるように、エンジンのクランク軸に対して制動装置を設け、エンジン停止時に膨張行程となる気筒のピストンが行程途中の適正位置で停止するように制動装置を制御するようにしたもの、あるいは特許文献2に示されるように、ピストン位置を調節するためのモータ、ギヤ等からなる調節駆動装置を設け、エンジン停止時にピストンが適正位置にない場合は、エンジン停止中に上記調節駆動装置によりピストンを適正位置まで変位させるようにしたものなどが提案されている。
【0006】
【特許文献1】
実開昭60−128975号公報
【特許文献2】
特開平8−210231号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に示された始動装置によると、車両の制動装置とは別にクランク軸を制動し得る装置が必要になるとともに、ピストンが適正位置に停止するように制動装置を精度良くコントロールすることが非常に難しい。
【0008】
また、上記特許文献2に示された始動装置によると、上記モータ、ギヤ等からなる調節駆動装置をエンジンに対して具備する必要があり、エンジンの大型化やコストアップを招く。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑み、簡単な構造によりながら、ピストンが適正位置に停止する確立を高め、始動性を向上することができるエンジンの始動装置を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、所定のエンジン停止条件が成立したときに自動的にエンジンを停止させるとともに、エンジン停止後における再始動条件成立時に、膨張行程にある気筒に対して燃料を噴射させて点火、燃焼を行わせ、エンジンを再始動させるエンジンの始動装置において、吸気通路に設けられて吸気流通面積を調節するバルブにより構成され、エンジンの気筒に導入される吸気量を調節する吸気量調節手段と、エンジン停止条件成立後のエンジン停止動作期間中に上記吸気量調節手段を制御する制御手段とを備え、上記制御手段は、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒および膨張行程となる気筒においてピストンの上死点方向への移動に対する抵抗を大きくするように、所定のエンジン停止条件の成立時に燃料の供給を停止してから上記バルブを所定の開状態として吸気量を増大させ、その後、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒のエンジン停止時における筒内の吸気量が膨張行程となる気筒のエンジン停止時における筒内の吸気量と比べて少なくなるように所定のタイミングで上記バルブを閉じることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によると、エンジン停止動作期間を経てエンジン停止に至るときに、圧縮行程にある気筒ではピストンが上死点に近づくにつれて当該気筒内の空気が圧縮され、その圧力でエンジンが逆転して圧縮行程気筒のピストンが下死点側に押し返されるとともに膨張行程にある気筒のピストンが上死点側に移動し、それに伴い膨張行程気筒内の空気が圧縮され、その圧力で膨張行程気筒のピストンが下死点側に押し返され、このような動作の繰り返しでピストンがある程度振動してから停止する。この際、圧縮行程気筒及び膨張行程気筒においてそれぞれピストンが上死点に近いほどこれを押し戻す力が大きくなり、特に上記のようにエンジン停止前に吸気量が増加されれば、上死点に近づいたときにピストンを押し戻す力が増大するので、極めて高い確立でピストンが行程中間部に近い所定範囲内に停止することとなる。
【0012】
そして、このように停止位置が調整されることにより、エンジンの始動時には、膨張行程気筒で燃焼用の空気量が少なくなりすぎたり、燃焼によるエネルギーがうまくピストンに作用しなくなったりすることが避けられ、良好に膨張行程気筒での燃焼による始動が行われる。
【0013】
特に、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒の吸気量が膨張行程となる気筒の吸気量と比べて少なくなるように所定のタイミングで上記バルブを閉じるようにしているため、エンジン停止時に膨張行程となる気筒のピストン停止位置が行程途中の所定範囲のうちでも多少下死点寄りとなる。これにより、ピストン停止位置が下死点に近づきすぎて始動時に燃焼エネルギーがピストンにうまく作用しないといった事態は避けられながら、筒内の空気量を比較的多くして、始動時の膨張行程気筒の燃焼エネルギーを高めることができ、始動性向上に有利となる。
【0019】
また、上記制御手段は、上記バルブを所定の開状態として吸気量を増大させるときに、上記バルブと排気還流通路に設けられたEGRバルブとをエンジンの温度状態に応じて制御し、相対的にエンジン温度が低いときには上記バルブの開度を小さくするとともにEGRバルブの開度を大きくして筒内に入る吸気中の還流ガス割合を増加させ、エンジン温度が高いときには上記バルブの開度を大きくするとともにEGRバルブの開度を小さくして筒内に入る吸気中の還流ガス割合を減少させるようにしてもよい。
【0020】
このようにすると、エンジン温度が低いときは、還流ガス割合が多くされることにより、エンジン停止時の筒内の空気の温度が高められて、始動時の燃料の気化促進等に有利となり、一方、エンジン温度が高いときには、還流ガス割合が少なくされることにより、筒内に導入される吸気の温度が必要以上に高くなることが避けられ、吸気密度の低下による充填量の低下が抑制される。
【0021】
また、少なくとも排気弁開タイミングを変更可能にするバルブタイミング可変機構を備えるとともに、上記制御手段は、エンジン停止動作時に排気弁開時期を下死点付近まで遅らせるようにすることも効果的である。
【0022】
このようにすると、エンジン停止の際には、膨張行程となる気筒のピストンが停止直前の振動中に下死点近くまで移動することがあっても排気弁が開いてしまうようなことがなく、膨張行程気筒内の空気量の減少が防止される。また、エンジン始動時には、膨張行程での燃焼によるエネルギーが、略下死点まで、排気通路側に逃げることなく有効に当該気筒のピストンに作用するため、始動性が高められる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1及び図2は本発明の一実施形態によるエンジンの概略構成を示している。これらの図において、エンジン本体はシリンダヘッド1及びシリンダブロック2で構成され、複数の気筒を有し、図示の実施形態では4つの気筒3A〜3Dを有している。各気筒3A〜3Dにはピストン4が嵌挿され、ピストン4の上方に燃焼室5が形成されている。上記ピストン4はコンロッドを介してクランクシャフト6に連結されている。
【0025】
各気筒3A〜3Dの燃焼室5の頂部には点火プラグ7が装備され、そのプラグ先端が燃焼室5内に臨んでいる。
【0026】
さらに、燃焼室5の側方部には、燃焼室5内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁8が設けられている。この燃料噴射弁8は、図略のニードル弁及びソレノイドを内蔵し、パルス信号が入力されることにより、そのパルス入力時期にパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を噴射するように構成されている。そして、点火プラグ7付近に向けて燃料を噴射するように燃料噴射弁8の噴射方向が設定されている。なお、この燃料噴射弁8には図外の燃料ポンプにより燃料供給通路等を介して燃料が供給され、かつ、圧縮行程での燃焼室内の圧力よりも高い燃料圧力を与え得るように燃料供給系統が構成されている。
【0027】
また、各気筒3A〜3Dの燃焼室5に対して吸気ポート9及び排気ポート10が開口し、これらのポート9,10に吸気弁11及び排気弁12が装備されている。これら吸気弁11及び排気弁12は、図外のカムシャフト等からなる動弁機構により駆動される。そして、後に詳述するように各気筒が所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように、各気筒の吸・排気弁の開閉タイミングが設定されている。
【0028】
吸気ポート9及び排気ポート10には吸気通路15及び排気通路16が接続されている。吸気通路15には、吸気量調節手段としてのスロットル弁(吸気通路面積を調節するバルブ)が設けられ、当実施形態では、吸気量の制御の応答性を高めるため分岐吸気通路15aにスロットル弁17が設けられている。すなわち、吸気通路15は、サージタンク15bの下流に気筒別の分岐吸気通路15aを有し、各分岐吸気通路15aの下流端が各気筒の吸気ポート9に連通するが、その各分岐吸気通路15aの下流端近傍に、各分岐吸気通路15aを同時に絞り調節する多連型のロータリバルブからなるスロットル弁17が配設されている。このスロットル弁17はアクチュエータ18により駆動されるようになっている。
【0029】
上記吸気通路15におけるサージタンク15bの上流の共通吸気通路15cには、吸気量を検出するエアフローセンサ20が設けられている。また、上記クランクシャフト6に対し、その回転角を検出するクランク角センサが設けられており、当実施形態では、後に詳述するように、互いに一定量だけ位相のずれたクランク角信号を出力する2つのクランク角センサ21,22が設けられている。さらにカムシャフトに対し、その特定回転位置を検出することで気筒識別信号を与えることのできるカム角センサ23が設けられている。なお、この他にもエンジンの制御に必要な検出要素として、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ24、アクセル開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ25等が装備されている。
【0030】
30は制御手段としてのECU(エンジンコントロールユニット)であり、上記各センサ20〜25からの信号を受け、上記燃料噴射弁8に対して燃料噴射量及び噴射時期を制御する信号を出力するとともに、点火装置に対して点火時期制御信号を出力し、さらにスロットル弁17のアクチュエータ18に対してスロットル開度を制御する信号を出力する。
【0031】
そして、アイドリング時において所定のエンジン停止条件が成立したときに、燃料供給停止等により自動的にエンジンを停止させるとともに、その後のエンジン再始動条件成立時に、自動的にエンジンの再始動を行わせる。
【0032】
エンジン停止の際の制御としては、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒及び膨張行程となる気筒においてピストン上死点方向の移動に対する抵抗を大きくすべく少なくともこれらの気筒に対する吸気量を増大させ、とくに膨張行程となる気筒により多く吸気を供給するように、上記スロットル弁17をエンジン停止動作期間中の所定期間だけ所定の開状態とする。
【0033】
また、エンジン再始動時の制御としては、膨張行程にある気筒で燃焼を行わせることによりエンジンを正転方向に駆動するが、エンジン停止時のピストンの位置が所定範囲にある場合、先ずエンジン停止時の圧縮行程気筒に対して初回の燃焼を実行してエンジンを少し逆転させることにより、膨張行程にある気筒のピストン上昇によって筒内圧力を高めるようにしてから、当該膨張行程気筒で燃焼を行わせるようにする。
【0034】
なお、当実施形態では、上述のように圧縮行程気筒での初回燃焼、膨張行程気筒での燃焼を行わせるとともに、初回燃焼後の圧縮行程気筒の筒内に燃焼用空気を残存させて圧縮行程気筒のピストンが上昇に転じてから上死点付近に達したときに再燃焼を行わせる第1再始動制御モードと、圧縮行程気筒での初回燃焼及び膨張行程気筒での燃焼は行わせるが圧縮行程気筒での再燃焼を行わせない第2再始動制御モードと、圧縮行程気筒での初回燃焼を行わずにスタータ(始動用モータ)31でアシストしつつ膨張行程気筒での燃焼及びその次の圧縮行程気筒での燃焼により始動を行う第3再始動制御モードとを、ピストンの停止位置に応じて選択的に実行するようになっている。
【0035】
上記ECU30によるエンジン停止及び再始動の制御を、図3〜図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0036】
図3のフローチャートに示す処理は、エンジンが運転されている状態からスタートし、ECU30は、先ずステップS1でアイドルストップ条件が成立したか否かを判定する。この判定は、車速、エンジン温度(エンジン冷却水の温度)等に基づいて行い、例えば車速が0の停車状態が所定時間以上持続し、かつ、エンジン温度が所定範囲内にあり、さらにエンジンを停止させることに格別の不都合がない状況にある場合等に、アイドルストップ条件成立とする。
【0037】
アイドルストップ条件が成立したときは、エンジンの各気筒に対する燃料供給を停止し(ステップS2)、次いでいったんスロットル弁17を所定開度に開き(ステップS3)、それからエンジン回転数が所定回転数以下となるまでこの状態を保ち(ステップS4)、所定回転数以下となればスロットル弁17を閉じる(ステップS5)。
【0038】
続いて、ステップS6でエンジンが停止したか否かを判定し、エンジンが停止すると、後述の図4の停止位置検出ルーチンによるピストンの停止位置の検出に基づき、上記ステップS7で上記停止位置が所定範囲内にあるか否かを判定する。この場合に、膨張行程気筒において図8中に斜線を付して示した範囲A(範囲A1及びA2)、つまり、膨張行程中期に相当する範囲を所定範囲とする。そして、この所定範囲内にあるときは、さらにステップS8で、膨張行程気筒が所定位置よりTDC寄りにあるか否かを判定し、つまり、図8中の範囲A内でその中間位置よりTDC寄りの範囲A1にあるか否かを判定する。
【0039】
上記ステップS7,S8の判定に基づき、上記停止位置が所定範囲内であって、膨張行程気筒所定位置よりTDC寄り(範囲A1)にある場合は、第1再始動制御モードである再燃焼ありのルーチン(R1)を実行し、上記停止位置が所定範囲内であって、膨張行程気筒所定位置よりBDC寄り(範囲A2)にある場合は、第2再始動制御モードである再燃焼なしのルーチン(R2)を実行する。また、上記停止位置が所定範囲(範囲A)内にない場合は、第3再始動制御モードであるモータアシストのルーチン(R3)を実行する。
【0040】
図4は停止位置検出ルーチンを示している。このルーチンがスタートすると、ECU30は、第1クランク角信号CA1(第1クランク角センサからの信号)および第2クランク角信号CA2(第2クランク角センサからの信号)を調べ、第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がLowまたは第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がHighであるか否かを判定する。要するに、これらの信号CA1,CA2の位相の関係が図7(a)のようになるか、それとも図7(b)のようになるかを判別することにより、エンジンの正転時か逆転時かを判別する(ステップS11)。
【0041】
すなわち、エンジンの正転時には、図7(a)のように、第1クランク角信号CA1に対して第2クランク角信号CA2が半パルス幅程度の位相遅れをもって生じることにより、第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がLow、第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がHighとなる。一方、エンジンの逆転時には、図7(b)のように、第1クランク角信号CA1に対して第2クランク角信号CA2が半パルス幅程度の位相の進みをもって生じることにより、エンジンの正転時とは逆に第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がHigh、第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がLowとなる。そこで、ステップS11の判定がYESであればエンジンの正転方向のクランク角変化を計測するためのCAカウンタをアップし(ステップS12)、ステップS11の判定がNOの場合は上記CAカウンタをダウンする(ステップS13)。そして、エンジン停止時に上記CAカウンタの値を調べることで停止位置を求めるのである。
【0042】
図5は図3のフローチャート中のステップS8での判定がYESのときに実行される第1再始動制御モード(再燃焼あり)のルーチンを示しており、ECU30は、このルーチンにおいて先ずステップS101で、所定のエンジン再始動条件が成立したか否かを判定し、エンジン再始動条件が成立していなければ待機する。
【0043】
停車状態から発進のためのアクセル操作等が行われた場合や、バッテリー電圧が低下した場合等のエンジン再始動条件成立時(ステップS101の判定がYESのとき)には、ステップS102でピストンの停止位置に基づいて圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の空気量を算出する。つまり、上記停止位置から圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の燃焼室容積が求められ、また、エンジン停止の際には燃料カット後にエンジンが数回転してから停止するので上記膨張行程気筒も新気で満たされた状態にあり、かつ、エンジン停止中に圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の筒内圧は略大気圧となっているので、上記燃焼室容積から新気量が求められることとなる。
【0044】
続いて、ステップS103で、算出された圧縮行程気筒の空気量に対して所定の圧縮行程気筒1回目用空燃比となるように燃料を噴射するとともに、ステップS104で、算出された膨張行程気筒の空気量に対して所定の膨張行程気筒用空燃比となるように燃料を噴射する。この場合、圧縮行程気筒1回目用空燃比及び膨張行程気筒用空燃比はピストンの停止位置に応じてマップM1,M2から求められる。圧縮行程気筒1回目用空燃比は理論空燃比よりもリーンな空燃比となり、膨張行程気筒用空燃比は略理論空燃比もしくはそれより多少リッチな空燃比となるように、予め上記各マップM1,M2が設定されている。
【0045】
次にステップS105で、圧縮行程気筒の燃料噴射後に燃料の気化時間を考慮して設定した時間の経過後に、当該気筒に対して点火を行う。そしてステップS106で、点火してから一定時間内にクランク角センサのエッジ(クランク角信号の立ち上がり又は立ち下がり)が検出されたか否かにより、ピストンが動いたか否かを判定し、失火によりピストンが動かなかった場合は圧縮行程気筒に対して再点火を繰り返し行う(ステップS107)。
【0046】
クランク角センサのエッジが検出されたとき(ステップS106の判定がYESのとき)は、ステップS108で、エッジ検出後所定ディレイ時間が経過してから膨張行程に対して点火を行う。上記ディレイ時間はピストンの停止位置に応じてマップM3から求められる。
【0047】
さらに、ステップS109で、所定クランク角(圧縮行程気筒2回目用噴射時期)となったとき圧縮行程気筒に対して再度燃料を噴射する。この場合、圧縮行程気筒内に残存する新気量を演算するとともに、上記停止位置に応じてマップM4から圧縮行程気筒2回目用空燃比を求め、これらに基づいて燃料噴射量を演算するとともに、適正なタイミングで圧縮自己着火が行われるように圧縮行程2回目用噴射時期を設定する。なお、圧縮行程気筒2回目用空燃比は、駆動トルクを高めるべく理論空燃比よりリッチに設定される。
【0048】
この燃料噴射により圧縮自己着火が行われるが、着火不良の場合の補償のため上死点付近でバックアップ点火を行う(ステップS110)。
【0049】
このような始動時の制御が完了すれば、通常制御(ステップS111)に移行する。
【0050】
なお、図3のフローチャート中のステップS8での判定がNOのときに実行される第2再始動制御モード(再燃焼なし)のルーチンの詳細については図示を省略するが、第1再始動制御モードのルーチンのうちのステップS101〜S108と略同様の処理が行われる。ただし、ステップS103に相当する処理において、ピストンの停止位置に応じてマップから求められる圧縮行程気筒の空燃比は略理論空燃比もしくはそれよりリッチとなる。
【0051】
図6は、図3のフローチャート中のステップS7での判定がNOのときに実行される第3再始動制御モード(モータアシスト)のルーチンを示しており、ECUは、このルーチンにおいて先ずステップS201で、所定のエンジン再始動条件が成立したか否かを判定し、エンジン再始動条件が成立していなければ待機する。
【0052】
エンジン再始動条件成立時(ステップS201の判定がYESのとき)には、ステップS202でスタータの駆動を開始し、ステップS203でピストンの停止位置に基づいて圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の空気量を算出し、ステップS204で圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の各空燃比が理論空燃比付近となるように燃料を噴射する。そして、ステップS205で、膨張行程気筒の燃料噴射後に燃料の気化時間を考慮して設定された時間が経過してから、当該気筒に対して点火を行う。
【0053】
次に、ステップS206で、所定クランク角となったとき圧縮行程気筒に対して点火を行う。それからスタータの駆動を停止し(ステップS207)、通常の制御(ステップS208)に移行する。
【0054】
以上のような当実施形態の装置の作用を次に説明する。
【0055】
多気筒4サイクルエンジンにおいては各気筒が所定の位相差をもって吸気、圧縮、膨張、排気の各行程からなるサイクルを行うようになっており、4気筒エンジンの場合、気筒列方向一端側から1番気筒3A、2番気筒3B、3番気筒3C、4番気筒3Dと呼ぶと、図9中及び図11中に示すように、上記サイクルが1番気筒3A、3番気筒3C、4番気筒3D、2番気筒3Bの順にクランク角で180°ずつの位相差をもって行われるようになっている。
【0056】
エンジンが運転されている状態においてエンジンの出力を要しない所定のアイドリング状態となった場合には、エンジン停止条件成立か否かの判定に基づき、図9中に示すようにエンジン停止条件成立時点t1で燃料供給が停止され、それによりエンジン回転数が次第に低下してエンジン停止に至る。この場合、当実施形態では、上記時点t1でスロットル弁を所定開度に開き、その後、エンジン回転数が予め設定された所定回転数まで低下した時点t2でスロットル弁を閉じるように制御することにより、気筒内の空気の圧力を利用してエンジン停止位置が好ましい範囲内となる確立を高めるようにしている。
【0057】
すなわち、上記時点t1からt2の間だけスロットル弁が所定開度に開かれることにより、多少の時間的遅れをもって一時的に吸気負圧が減少(吸気量が増大)し、その後に吸気圧負圧が増大(吸気量が減少)するが、一時的に吸気負圧が減少する期間が、エンジン停止時に膨張行程となる気筒の吸気行程の期間に概ね対応するように予め上記所定回転数等が設定されている。これにより、エンジン停止条件成立時点t1で直ちにスロットル弁が閉じられる場合と比べ、エンジン停止前に各気筒に吸入される空気量が増加し、そのうちでも特にエンジン停止時に膨張行程となる気筒(図9では1番気筒)に流入する吸気量が多くなる。
【0058】
そして、エンジン停止に至るときには、圧縮行程にある気筒ではピストンが上死点に近づくにつれて当該気筒内の空気が圧縮されてピストンを押し返す方向に圧力が作用し、これによりエンジンが逆転して圧縮行程気筒のピストンが下死点側に押し返されると、膨張行程にある気筒のピストンが上死点側に移動し、それに伴い当該気筒内の空気が圧縮され、その圧力で膨張行程気筒のピストンが下死点側に押し返される。このようにしてピストンがある程度振動してから停止し、この際、圧縮行程気筒及び膨張行程気筒においてそれぞれピストンが上死点に近いほどこれを押し戻す力が大きいため、ピストンの停止位置は行程中間部に近い位置となる場合が多い。
【0059】
とくに、上記のようにエンジン停止前に吸気量が増加されることにより、上死点に近づいたときにピストンを押し戻す力が増大するので、ピストンが行程中間部に近い所定範囲内に停止する確立が高くなる。さらに、上記のようなスロットル弁の制御により膨張行程気筒の吸気量が圧縮行程気筒と比べて多くなるようにすれば、膨張行程気筒においてピストンが行程中間部に近い範囲のうちでも多少下死点寄りに停止することが多くなる。
【0060】
なお、燃料カットからエンジンが完全に停止するまでに慣性でエンジンが数回転するため、必ず既燃ガスは排出され、膨張行程といえども筒内は殆ど新気となる。また、エンジンが停止すると圧縮行程気筒でも圧力は直ぐにリークする。従って、エンジン停止後は、いずれの気筒も筒内には略大気圧の新気が存在する状態となる。
【0061】
次に、エンジン停止後に所定の再始動条件が成立したときは、自動的にエンジンを再始動する制御が行われるが、この際、ピストンの停止位置が膨張行程気筒において行程中間部付近の所定範囲内で、かつ、上死点寄りの範囲A1にある場合は、第1再始動制御モードのルーチン(図5)が実行される。図10は上記第1再始動制御モードによる場合のエンジンの各気筒の行程と始動制御開始時点からの各気筒における燃焼(図中に燃焼の順序に従って▲1▼,▲2▼,▲3▼……で示す)との関係を示すとともに、各燃焼によるエンジンの動作方向を矢印で示しており、また図11は、上記第1再始動制御モードによる場合のエンジン回転速度、クランク角、角気筒の筒内圧及び図示トルクの時間的変化を示している。
【0062】
これらの図に示すように、上記第1再始動制御モードによる場合には、先ず圧縮行程気筒(図示の例では3番気筒)において燃焼空燃比は理論空燃比よりもリーンとされつつ初回燃焼(図10中の▲1▼)が行われ、この初回燃焼による燃焼圧(図11中のa部分)で圧縮行程気筒のピストンが下死点側に押し下げられてエンジンが逆転方向に駆動され、それに伴い、膨張行程気筒(図示の例では1番気筒)のピストンが上死点に近づくことにより当該気筒内の空気が圧縮されて筒内圧が上昇する(図11中のb部分)。そして、膨張行程気筒のピストンが上死点に充分に近づいた時点で当該気筒に対する点火が行われて、予め当該気筒に噴射されている燃料が燃焼し(図10中の▲2▼)、その燃焼圧(図11中のc部分)でエンジンが正転方向に駆動される。さらに、上記圧縮行程気筒に対して適当なタイミングで燃料が噴射されることにより、圧縮行程気筒の上死点付近で当該気筒における2回目の燃焼が行われる(図10中の▲3▼)。その燃焼圧(図11中のd部分)でエンジン駆動力が高められる。
【0063】
この場合、圧縮行程気筒の初回燃焼では空燃比がリーンとされたことにより初回燃焼後も当該気筒に空気が残存するため、上記2回目の燃焼が可能となる。そして、上記初回燃焼により圧縮行程気筒内の温度が高くなっている状態で燃料が噴射されるとともに圧縮が行われるため、当該気筒での2回目の燃焼は圧縮自己着火により行われる。
【0064】
そして、上記2回目の燃焼が行われてから、当該気筒の次に圧縮行程を迎える気筒の圧縮上死点に達した後は、通常制御により各気筒で順次燃焼が行われ、再始動が完了する。
【0065】
また、ピストンの停止位置が膨張行程気筒において行程中間部付近の所定範囲内で、かつ、下死点寄りの範囲A2にある場合の再始動時には、第2再始動制御モードによる制御が行われる。
【0066】
この第2再始動制御モードによる制御としては、先ず圧縮行程気筒において燃焼空燃比が略理論空燃比もしくはそれよりリッチとされつつ初回燃焼(図10中の▲1▼に相当する燃焼)が行われる。そして、初回燃焼により圧縮行程気筒のピストンが押し下げられてエンジンが逆転方向に駆動され、それに伴い膨張行程気筒のピストンが上死点に近づくことにより当該気筒内の空気が圧縮されて筒内圧が上昇し、膨張行程気筒のピストンが上死点に充分に近づいた時点で当該気筒に対する点火が行われて、予め当該気筒に噴射されている燃料が燃焼すること(図10中の▲2▼に相当)によりエンジンが正転方向に駆動されることは、第1再始動制御モードによる制御と同様である。ただし、第2再始動制御モードでは、膨張行程気筒の燃焼後に圧縮行程気筒が上死点を過ぎるときに燃焼(図10中の▲3▼の燃焼)は行われず、次に圧縮行程を迎える気筒の圧縮上死点に達するまでエンジンの回転が慣性で維持され、その後は通常制御に移行して再始動が完了する。
【0067】
上述のように第1再始動制御モードと第2再始動制御モードとがエンジンの停止位置によって使い分けられることにより、エンジンの再始動が効果的に行われる。この点を図12も参照しつつ説明する。
【0068】
図12はエンジン停止時のピストン位置と圧縮気筒の初回燃焼(逆転用)における要求空燃比、圧縮行程気筒の空気量、膨張行程気筒の空気量及び発生頻度との関係を示しており、この図のように、エンジン停止時に膨張行程気筒のピストンが上死点寄り(圧縮行程気筒のピストンが下死点寄り)となるほど膨張気筒の空気量が少なくて圧縮行程気筒の空気量が多くなり、逆に膨張行程気筒のピストンが下死点寄り(圧縮行程気筒のピストンが上死点寄り)となるほど膨張気筒の空気量が多くて圧縮行程気筒の空気量が少なくなる。
【0069】
また、圧縮行程気筒での初回燃焼では、圧縮行程気筒のピストンが下死点より少し手前(膨張行程気筒のピストンが上死点より少し手前)となる所定位置までエンジンを逆転させるだけのトルクを生じさせることが要求されるが、圧縮行程気筒のピストンが上死点寄りにあれば、圧縮行程気筒内の空気量が少なく、かつ、上記所定位置までの逆転に要求されるトルクが比較的大きいので、要求空燃比がリッチとなり、一方、圧縮行程気筒のピストンが下死点寄りにあれば圧縮行程気筒内の空気量が多く、かつ、上記所定位置までの逆転に要求されるトルクが比較的小さいので、要求空燃比がリーンとなる。
【0070】
膨張行程気筒においては、ピストンが下死点寄りにある程空気量が多いため燃料を多く燃焼させることができる。
【0071】
従って、エンジン停止時に膨張行程気筒のピストン位置が中間部より下死点寄り(圧縮行程気筒のピストン位置が上死点寄り)の所定範囲A2にある場合、圧縮行程気筒では初回燃焼時の空燃比が上記要求に適合するようにリッチとされ、初回燃焼後に燃焼用空気が残存しないため圧縮上死点付近での2回目の燃焼は行われないが、膨張行程気筒では空気量が比較的多くて、それに応じた燃料が噴射された上で、圧縮されてから着火、燃焼が行われるため、比較的大きなトルクが得られ、上記圧縮行程気筒の圧縮上死点を過ぎてさらに次の気筒の圧縮上死点を越えるまでエンジンを回転させることができ、再始動を達成することができる。
【0072】
一方、エンジン停止時に膨張行程気筒のピストン位置が中間部より上死点寄り(圧縮行程気筒のピストン位置が下死点寄り)の所定範囲A1にある場合、範囲A2にある場合と比べると、膨張行程気筒内の空気量が少ないため膨張行程での燃焼により得られるトルクが小さくなるが、圧縮行程気筒では初回燃焼時の空燃比が上記要求に対応してリーンとされ、それにより初回燃焼後も残存する余剰空気が利用されて圧縮上死点付近での2回目の燃焼が行われるため、エンジン正転方向の駆動のためのトルクが補われ、膨張行程での燃焼と圧縮行程気筒における2回目の燃焼の両方により、再始動を達成するに足るトルクが得られる。
【0073】
ところで、当実施形態では、前述のようにエンジン停止の際、燃料供給停止後に所定期間だけスロットル弁17を所定の開状態として吸気量を増加させることにより、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒及び膨張行程となる気筒においてピストンの上死点方向への移動に対する抵抗を大きくし、かつ、膨張行程気筒の吸気量をより多くしているため、図12中にも示すように、エンジン停止時の膨張行程におけるピストン位置は行程中間部付近の所定範囲A内となることが殆どであり、そのうちでも多少下死点寄りの範囲A2内となることが多く、このように停止位置が調整されることで効果的に再始動が行われる。
【0074】
すなわち、ピストン停止位置が上記範囲Aよりも膨張行程気筒の上死点側(圧縮行程気筒の下死点側)に近づきすぎた場合には、エンジン逆転方向の移動量を充分にとることができなくなるとともに、膨張行程気筒の空気量が少なくなるので膨張行程気筒での燃焼により得られるトルクが少なくなり、また、上記範囲よりも膨張行程気筒の下死点側(圧縮行程気筒の上死点側)に近づきすぎた場合には、圧縮行程気筒の空気量が少なくなるのでエンジン逆転のためのトルクが充分に得られなくなる。これに対し、ピストン停止位置が上記範囲A内にあれば、圧縮行程気筒での初期燃焼による逆転駆動が可能で、かつ、膨張行程気筒での燃焼が良好に行われてその燃焼エネルギーを充分にピストンに作用させることができ、とくにピストン停止位置が膨張行程気筒の下死点寄りの範囲A2にあれば膨張行程気筒の空気量を充分に多く確保でき、膨張行程気筒での燃焼エネルギーを増大させ、始動性を高めることができる。
【0075】
なお、稀にエンジン停止時のピストン位置が上記範囲Aから外れた場合には、第3再始動制御モードが実行されてスタータにより始動がアシストされる。
【0076】
本発明の装置の具体的構成は上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。他の実施形態を以下に説明する。
【0077】
▲1▼上記実施形態の構成に加え、図13に示すように、排気弁に対する動弁機構に、少なくとも排気弁開時期を変更可能にするバルブタイミング可変機構41を設け、エンジン停止の際の停止動作期間及びエンジン始動時に、膨張行程気筒の排気弁の開時期を通常時よりも遅らせて、略下死点で排気弁が開くようにすることが好ましい(図10参照)。
【0078】
このようにすると、エンジン停止の際には、膨張行程となる気筒のピストンが停止直前の振動中に下死点近くまで移動することがあっても排気弁が開いてしまうようなことがなく、膨張行程気筒内の空気量の減少が防止される。また、エンジン始動時には、膨張行程での燃焼によるエネルギーが、略下死点まで、排気通路側に逃げることなく有効に当該気筒のピストンに作用するため、始動性が高められる。
【0079】
▲2▼上記実施形態では、第1再燃焼制御モードによる再始動時に圧縮行程気筒の初回燃焼の際の空燃比を理論空燃比よりもリ−ンにすることにより、初回燃焼後に筒内に空気を残すようにしているが、初回燃焼後の筒内に空気を補給するようにしてもよく、例えば、吸気弁に対する動弁機構に、少なくとも吸気弁閉時期を変更可能にするバルブタイミング可変機構を設け(図13参照)、エンジン再燃焼時に、圧縮行程気筒の吸気弁閉時期を通常時よりも遅らせて、下死点より所定クランク角だけ圧縮行程に入り込んだ時期となるようにしてもよい(図10参照)。
【0080】
このようにすると、圧縮行程気筒での初回燃焼により吸気弁閉時期よりも進角側までエンジンが逆転したとき、吸気弁が開かれることにより、筒内ガスの一部と新気が入れ替わり、2回目燃焼のための新気が補給されることとなる。 なお、このような作用に加え、初回燃焼後に吸気弁が開かれると筒内の圧力が低下するため、 その後の膨張行程気筒での燃焼によるエンジン正転時に圧縮行程気筒のピストンに作用する抵抗が軽減され、再始動に有利となる。
【0081】
▲3▼エンジン停止の際には、吸気量調節手段の制御に加え、排気還流用のEGRバルブを制御してもよい。このようにする場合、図14に示すように、吸気通路に吸気量調節手段としてのスロットル弁17´を設けるとともに、排気通路16から吸気通路15にガスを導く排気還流通路50にEGRバルブ51を設け、上記スロットル弁17´とEGRバルブ51とをECU30により制御する。そして、エンジン停止の際には、図15に示すように、燃料カット後の所定期間、スロットル弁17´及びEGRバルブ51をそれぞれ開状態にし、かつ、水温センサ24により検出されるエンジンの温度状態に応じ、相対的にエンジン温度が低いときには実線のようにスロットル弁17´の開度を小さくするとともにEGRバルブ51の開度を大きくして筒内に入る吸気中の還流ガス割合を増加させ、エンジン温度が高いときには破線のようにスロットル弁17´の開度を大きくするとともにEGRバルブ51の開度を小さくして筒内に入る吸気中の還流ガス割合を減少させる。
【0082】
このようにすると、エンジン停止時の筒内の温度及び吸気充填状態が適正に調整される。
【0083】
すなわち、燃料供給停止後の停止動作期間中はEGRバルブ51が開かれても還流されるガスは既燃ガスが殆ど存在しない空気であるが、燃焼室を通っているために高温となっている空気が還流されるので、還流ガス割合が多くなるにつれて筒内に導入される吸気の温度が高くなる。従って、エンジン温度が低いときは、還流ガス割合が多くされることにより、エンジン停止時の筒内の温度が高められ、再始動時の燃料の気化促進等に有利となり、始動性が向上される。一方、エンジン温度が高いときには、還流ガス割合が少なくされることにより、筒内に導入される吸気の温度が必要以上に高くなることが避けられ、吸気密度の低下による充填量の低下が抑制される。
【0084】
▲4▼上記実施形態では、エンジン停止時のピストン位置が所定範囲内にあるときのエンジン始動時に、圧縮行程気筒で初回燃焼を行わせてエンジンを少し逆転させてから膨張行程での燃焼を行わせるようにしているが、上記圧縮行程気筒での初回燃焼によるエンジン逆転を行わず、エンジン停止状態でいきなり膨張行程気筒に燃料を供給し、所定時間後に点火することにより、膨張行程気筒での燃焼を最初に行わせるようにしてもよい。
【0085】
この場合も、膨張行程気筒のピストンの停止位置が上死点に近づきすぎていると筒内の空気量が少ないので燃焼によるエネルギーが充分に得られず、また、上記停止位置が下死点に近づきすぎていると燃焼によるエネルギーがピストンに作用する行程が極端に短くなるため、充分な駆動トルクが得られない。
【0086】
従って、前述のような停止動作期間における吸気量の調節によりピストン停止位置が行程途中の所定範囲A内となる確立を高めるようにすることが始動性向上のために有効であり、特に下死点寄りの範囲A2内に停止すれば、燃焼によるエネルギーがピストンに作用する行程が極端に短くなることは避けつつ、筒内の空気量を比較的多くして燃焼エネルギーを高めることができ、始動性向上に有利となる。
【0087】
▲5▼上記実施形態では、吸気流通面積を調節するバルブとしてスロットル弁を用い、これにより吸気量調節手段を構成しているが、スロットル弁をバイパスするISC通路に設けられたISCバルブを用い、エンジンの停止動作期間中の所定期間にISCバルブを所定の開状態とするようにしてもよい。また、これらのバルブの代りに吸気弁の開閉タイミングを変更するバルブタイミング可変機構等を吸気量調節手段として用いるようにしてもよい。
【0088】
【発明の効果】
以上のように本発明のエンジンの始動装置によると、所定のエンジン停止条件の成立時に燃料の供給を停止してから、吸気量調節手段を構成するバルブを所定の開状態として吸気量を増大させ、その後、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒の吸気量が膨張行程となる気筒の吸気量と比べて少なくなるように所定のタイミングで上記バルブを閉じるようにしているため、極めて高い確率で膨張行程気筒のピストンを行程中間部に近い所定範囲内に停止させることができ、特にこの所定範囲の中でも下死点寄りの位置に停止する確率を高めることができる。これにより、エンジンの始動時には、膨張行程気筒で燃焼用の空気量が少なくなりすぎたり、燃焼によるエネルギーがうまくピストンに作用しなくなったりすることが避けられ、膨張行程気筒での燃焼による始動を良好に行わせることかできる。
【0089】
従って、従来の技術の説明において示した特許文献1に記載のようなクランク軸を制動するための制動装置や、特許文献2に記載のようなモータ、ギヤ等からなる調節駆動装置を必要とせず、簡単な構成によりながら、ピストンを適正位置に停止させて始動を良好に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による始動装置を備えたエンジンの概略断面図である。
【図2】上記エンジンの概略平面図である。
【図3】制御手段によるエンジンの停止及び再始動のための制御のフローチャートである。
【図4】エンジン停止時のピストン位置を検出するための処理を示すフローチャートである。
【図5】第1再始動制御モードを示すフローチャートである。
【図6】第3再始動制御モードを示すフローチャートである。
【図7】2つのクランク角センサからのクランク角信号を示すものであって、(a)はエンジン正転時の信号、(b)はエンジン逆転時の信号である。
【図8】エンジン停止時のピストン位置に応じた再始動制御モード選択のための範囲の設定を示す説明図である。
【図9】エンジン停止時のエンジン回転数、スロットル開度及び吸気管負圧の変化並びに各気筒のサイクルを示す説明図である。
【図10】エンジン再始動時の各気筒のサイクル及び燃焼動作を示す説明図である。
【図11】エンジン再始動時のエンジン回転数、クランク角、各気筒の筒内圧及び図示トルクの変化を示すタイムチャートである。
【図12】エンジン停止時のピストン位置と圧縮行程気筒の要求空燃比、圧縮行程気筒の空気量、膨張行程気筒の空気量及び発生頻度との関係を示す説明図である。
【図13】他の実施形態による制御系統を示すブロック図である。
【図14】さらに別の実施形態を示す概略図である。
【図15】図14に示すスロットル弁とEGRバルブとをエンジン停止の際に制御する場合の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
3A〜3D 気筒
4 ピストン
5 燃焼室
7 点火プラグ
8 燃料噴射弁
17 スロットル弁(吸気量調節手段)
21,22 クランク角センサ
30 ECU(制御手段)

Claims (3)

  1. 所定のエンジン停止条件が成立したときに自動的にエンジンを停止させるとともに、エンジン停止後における再始動条件成立時に、膨張行程にある気筒に対して燃料を噴射させて点火、燃焼を行わせ、エンジンを再始動させるエンジンの始動装置において、
    吸気通路に設けられて吸気流通面積を調節するバルブにより構成され、エンジンの気筒に導入される吸気量を調節する吸気量調節手段と、
    エンジン停止条件成立後のエンジン停止動作期間中に上記吸気量調節手段を制御する制御手段とを備え、
    上記制御手段は、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒および膨張行程となる気筒においてピストンの上死点方向への移動に対する抵抗を大きするように、所定のエンジン停止条件の成立時に燃料の供給を停止してから上記バルブを所定の開状態として吸気量を増大させ、その後、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒のエンジン停止時における筒内の吸気量が膨張行程となる気筒のエンジン停止時における筒内の吸気量と比べて少なくなるように所定のタイミングで上記バルブを閉じることを特徴とするエンジンの始動装置。
  2. 上記制御手段は、上記バルブを所定の開状態として吸気量を増大させるときに、上記バルブと排気還流通路に設けられたEGRバルブとをエンジンの温度状態に応じて制御し、相対的にエンジン温度が低いときには上記バルブの開度を小さくするとともにEGRバルブの開度を大きくして筒内に入る吸気中の還流ガス割合を増加させ、エンジン温度が高いときには上記バルブの開度を大きくするとともにEGRバルブの開度を小さくして筒内に入る吸気中の還流ガス割合を減少させることを特徴とする請求項1記載のエンジンの始動装置。
  3. 少なくとも排気弁開タイミングを変更可能にするバルブタイミング可変機構を備えるとともに、上記制御手段は、エンジン停止動作時に排気弁開時期を下死点付近まで遅らせることを特徴とする請求項1又は2記載のエンジンの始動装置。
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