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JP3633316B2 - 偽造防止用紙 - Google Patents

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JP3633316B2
JP3633316B2 JP29792298A JP29792298A JP3633316B2 JP 3633316 B2 JP3633316 B2 JP 3633316B2 JP 29792298 A JP29792298 A JP 29792298A JP 29792298 A JP29792298 A JP 29792298A JP 3633316 B2 JP3633316 B2 JP 3633316B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は偽造防止用紙に関する。詳しくは有機溶剤を用いて改竄を試みてもその痕跡が視認できる偽造防止用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙幣、商品券、パスポート、株券、小切手等は、不正に偽造されないように各種の偽造防止対策が施されている。偽造防止対策の考えの一つは、自然光や通常の照明下では偽造防止手段を視認することができず、特殊な機器を用いることで偽造防止手段を視認できるようにすることである。この考えに基づき、例えば、紫外線の照射によって各種色相に発色する蛍光染料や蛍光顔料を使用した偽造防止用紙や偽造防止印刷物、及びこれらに使用する材料についての提案がなされている。
【0003】
例えば、特願平1−68299号、他に提案されているように用紙の表面に蛍光顔料とベヒクルを主成分とするインキで文字や図柄を印刷した偽造防止印刷物は広く知られている。
【0004】
また、特開昭58−54099号や、特公昭56−16328号には、用紙中に、蛍光染色した繊維を蛍光染色を施していない繊維と配合して抄造することを特徴とする偽造防止用紙の製造方法が提案されている。また、特開平6−128807号等には、酸化物系の蛍光顔料を紡糸時に添加した蛍光発色性繊維の製造方法が提案されている。
【0005】
また、本出願人は先に特開平7−166198号において、紫外線の照射で蛍光色を発し、抄紙工程で基紙と接着可能な性能を有する細片を基紙の全面に遍在、若しくは筋状に偏在させた偽造防止用紙の提案を行った。
【0006】
一方、色々な薬品を使用して改竄しても、改竄されたことが容易に判断できる偽造防止用紙も過去種々提案されている。例えば、特許第78774号や特許第77962号では、マンガンのフェロサイアナイドを用紙中に含ませ、金額欄に記載された文字をインク消しで消そうとすると褐色に変色する証券用紙の提案がある。
【0007】
また、特許第136286号には、酸化剤により変色する物質とタンニン質と浸透剤を用紙に加工し、インク消しで改竄を試みると消滅することのない色が出る改竄防止用紙の提案がある。
【0008】
また、特許1414483号には、水溶性のピレンスルホン酸金属塩系の反応性蛍光染料を用紙中に含有させ、インク消しや弱アルカリで改竄を試みると蛍光色を呈する安全紙の提案がある。
【0009】
また、特開昭57−21660号には、消去可能なインクの溶剤を含む微小カプセルを用紙表面に含有させて、消しゴム等で改竄を試みてもその圧力でカプセルが開裂し、インクを紙層中に溶出浸透させて改竄の痕跡が残るようにした偽造防止用紙の提案がある。
【0010】
また、特開昭63−182496号には、ロイコ染料と、フェノール性物質、バインダーを主成分とする発色層を用紙表面に設け、有機溶剤で改竄を試みても溶剤の浸透でロイコ染料と、フェノール性物質が溶出し両者が化学反応し発色する改竄防止用紙の提案がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
偽造防止手段はこのように種々知られているが、偽造を試みる者は後を絶たず、常に新規な偽造防止手段を採用した偽造防止用紙が求められているのが現状である。本発明はこのような背景でなされたものであって、本発明は、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料を使用して、これら従来提案された偽造防止用紙と全く異なる構成の、改竄の痕跡を視認できるタイプの新規な偽造防止用紙を開発することを課題とする。
【0012】
【問題を解決するための手段】
本発明の要旨とするところは、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子が粒子の状態で用紙中に含まれており、有機溶剤による改竄の痕跡を紫外線の照射により視認できるようにしたことを特徴とする偽造防止用紙である。なお、本発明で用いる「通常の光源」とは、自然光、白熱電球、蛍光灯の光源を意味し、「蛍光染料」とは、紫外線の照射によって可視光域の特定の光を発する染料を意味し、増白効果を目的とした蛍光増白剤もこの範疇に含まれる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する蛍光染料粒子は、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmであることが必要である。水溶性であると用紙製造中に該染料粒子が水に溶解してしまい本発明の目的を達成できなくなるからである。また、有機溶剤に可溶性でないと、溶剤で改竄を試みた場合に改竄された痕跡を視認できなくなるからである。また、その為には蛍光染料は粒子状で、かつその大きさは特定の範囲内にある必要があり、50μm以下では有機溶剤が作用して蛍光染料粒子が溶解した際にその広がりが小さくて視認しにくく、400μmを越えると偽造防止用紙中で大きな凸部を形成してしまい、用紙としての取扱に支障が出るので好ましくない。
【0014】
本発明で使用する蛍光染料粒子は、水不溶性でかつ有機溶剤に可溶性であればどのようなものでも使用できるが、クマリン系、オキサゾール系、ピラゾリン系等の、合成樹脂用に開発された蛍光増白用の蛍光染料が一例として挙げられる。これらの蛍光染料は、蛍光染料粒子そのものを容器に充填して見える色相は、通常の光源のもとでは無色であるが、紫外線の照射により青白色に発光する。この種の蛍光染料としては、染料メーカー各社で販売されているが一例を挙げると、(商品名「Mikawhite ATN conc.」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで無色、紫外線の照射で赤味掛かった白色に発色)、(商品名「Leucopher EF 2N」、クラリアント(株)製造:通常の光源のもとで無色、紫外線の照射でわずかに青味の白色に発色)、(商品名「TBO」、住友精化(株)製造:通常の光源のもとで無色、紫外線の照射で青白色に発色)、等々である。
【0015】
また、本発明では、蛍光染料粒子そのものを容器に充填して見える色相が通常の光源のもとで有彩色で、紫外線の照射で各種色相に発光するアミノケトン系等の染料も使用できる。この種の蛍光染料も染料メーカー各社で販売されているが一例を挙げると、(商品名「Yellowfluor G」、住友化学工業(株)製造:通常の光源のもとで黄色、紫外線の照射で黄色に発色)、(商品名「Kayaset Flavine FN」、日本化薬(株)製造):通常の光源のもとで黄色、紫外線の照射で黄色に発色)、(商品名「Kayaset Flavine FG」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで黄色、紫外線の照射で黄色に発色)、(商品名「Kayaset Yellow SF−G」、日本化薬(株)製造):通常の光源のもとで黄色、紫外線の照射で黄色に発色)、(商品名「Kayaset Orange SF−R」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとでオレンジ色、紫外線の照射でオレンジ色に発色)、(商品名「Kayaset Red SF−B」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで赤色、紫外線の照射で赤色に発色)、(商品名「Kayaset Red SF−4G」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで赤色、紫外線の照射で赤色に発色)、等々である。
【0016】
本発明では、これらの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料を粒子状で用いる。粒子の大きさは、通常は200μm以下であるが、本発明では該蛍光染料粒子が通常の光源のもとで有彩色である場合には、用紙に含まれていることを通常の光源のもとでは視認することができないようにするとそれだけ偽造防止効果を高めることができる。但し、後に述べるように3層抄き合わせで内層に該染料粒子を存在させ、外層に存在させない構成の偽造防止用紙の場合には、外層により該染料粒子が覆われるので、400μmという比較的大きな粒径の染料粒子を使用することができる。水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子の用紙に対する添加量は、染料の種類や偽造防止用紙としての用途等によって変化するが通常は、0.001〜0.5重量%の範囲である。
【0017】
本発明において、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を用紙中に含ませる方法としては、どのような方法を採用してもよい。以下、例を挙げて説明する。なお、本発明ではこれらの蛍光染料粒子を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
製造例1
用紙を抄造するスラリーの調製後に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子をスラリーに添加して抄紙する方法
本発明の偽造防止用紙の製造に際しては、通常、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の製紙用パルプを主体としたスラリーを調製し、これに各種内添填料、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料等の製紙用副資材を適宜併用し、通常フリーネス550〜250mlC.S.F.にスラリーを調製し、前記した水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を添加して円網抄紙機や、長網抄紙機等の周知の抄紙機を使用して抄紙する。
【0018】
市販の上質紙は、水溶性の4,4´−ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、スチルベントリアジニル誘導体、4,4´−ビストリアジニルアミノスチルベン、2,2´−ジスルホン酸誘導体、等の水溶性のスチルベン系蛍光増白剤等をパルプに定着させて製造することで用紙の見かけの白さを向上させている。この場合、これらの蛍光増白剤は用紙を構成するセルロース繊維表面を万遍なく覆っている状態で分布している。蛍光増白剤も紫外線の照射で青白色や青紫色等に発光する性質を持っているのでこの上質紙は紫外線の照射により、全面が青白色や青紫色等に発光する。
【0019】
本発明においては、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料は、抄紙工程の水の作用によっても溶出しないので粒子の状態で用紙中に存在する。該蛍光染料の粒子径を適当な大きさにすることによって、通常の照明下ではその存在が視認できず、紫外線の照射により発光しその存在を視認できるようにさせることができる。この理由は、通常の照明下では、粒子径が小さいために視認できないが、紫外線の照射では自ら強い光を発し視認できるためと思われる。本発明の偽造防止用紙においては、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料粒子を紫外線の照射で視認できるようにさせるためには、前記した水溶性の蛍光増白剤は使用しないか、使用しても本発明の効果を阻害しない範囲の少量に留めることが必要である。
【0020】
製造例2
用紙を抄造するスラリーを抄紙機に流送する途中に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子の水懸濁液をポンプ等を使用して添加する方法
製造例1の水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を添加しないスラリーを使用して円網抄紙機や、長網抄紙機等の周知の抄紙機を使用して抄紙する際に、長網抄紙機のフローボックス内や、円網抄紙機のバット内に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を水に懸濁した状態でポンプ等を使用して添加して抄紙する。
【0021】
本発明においては、前記偽造防止用紙が少なくとも3層以上の多層抄き合わせで形成されており、かつ内層のみに前記水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子が含まれていることが好ましい。この理由は水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子が用紙表面に露出している状態で存在していると、該染料粒子自身には自着性が無いために、グラビア印刷の場合には問題はないがオフセット印刷時に該染料粒子が脱落する問題等を起こしやすくなるためである。3層以上の多層抄き合わせの用紙を製造するには、例えば3槽式の円網抄紙機を使用して3層抄きの用紙を抄造する際に、内層(この場合は中央の層)のみに前記した方法を使用して水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を存在させればよい。この構成の偽造防止用紙は有機溶剤の浸透により内層に含まれる該蛍光染料粒子が溶解し、毛細管現象により用紙表面に拡散するので、内層に該蛍光染料粒子が含まれていても本発明の目的を阻害することが無い。
【0022】
製造例3
長網抄紙機で用紙を抄造する際に抄紙網上の湿紙に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を振りかける方法
製造例1の水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである固着されていない蛍光染料粒子を添加しないスラリーを使用して、長網抄紙機を使用して用紙を抄紙する際に、長網抄紙機の抄紙網上の湿紙に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を全面または筋状に振り掛け装置等を使用して振り掛け、後は常法に従って抄紙する。
【0023】
製造例4
長網抄紙機で用紙を抄造する際に抄紙網上の湿紙に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子の水懸濁液を振りかける方法
製造例1の水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を添加しないスラリーを使用して、長網抄紙機を使用して用紙を抄紙する際に、長網抄紙機の抄紙網上の湿紙に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を水に懸濁させ全面または筋状に振り掛け装置やノズル噴射装置等を使用して振り掛け、後は常法に従って抄紙する。
【0024】
製造例5
サイズプレス液等に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を併用する方法
製造例1の水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を添加しないスラリーを使用して、長網抄紙機を使用して用紙を抄紙する際に、サイズプレス装置を使用して、変成澱粉、ポリアクリルアマイド、ポリビニルアルコール等のサイズプレス液に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を懸濁させ湿紙表面に塗工し、後は常法に従って抄紙する。
【0025】
製造例6
エアナイフコーター等のコーターを使用して水系の塗料を塗工する際に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を併用する方法
製造例1の水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を添加しないスラリーを使用して、長網抄紙機や円網抄紙機を使用して抄紙後に、アート紙やコート紙製造用塗工液の中に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を添加して、エアナイフコーター、ブレードコーター等の塗工機を使用して用紙を製造する。
【0026】
製造例7
用紙に印刷を施す際に水性インキに水系の塗料を塗工する際に、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を添加する方法
水性インキ中に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を添加し、印刷機を使用して用紙に所定の文字や模様を印刷する。この際使用する用紙は前述した理由により、蛍光増白剤を使用しない用紙を用いることが必要である。印刷は抄紙機で用紙を抄造中に行ってもよいし(フレキソ印刷機等を使用してのオンマシン印刷)、用紙の抄造後にグラビア印刷機等を使用して行ってもよい(オフマシン印刷)。例えば「VOID」の文字を印刷しておけば、有機溶剤で改竄を試みると「VOID」の文字が浮き出るようにさせることができ、この文字は紫外線の照射で視認できる。
【0027】
本発明に置いては、前述した各種の方法のうち水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子の歩留まりがよいこと(スラリーに添加すると該蛍光染料粒子の粒子径が小さいので抄紙網から染料粒子が流出し易くなる)と、抄紙機等を汚染しないので、サイズプレス液等に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmでありかつバインダーで固着されていない蛍光染料粒子を併用する方法や、エアナイフコーター等のコーターを使用して水系の塗料を塗工する際に該蛍光染料粒子を併用する方法、用紙に印刷を施す際に水性インキに水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であり、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子を添加する方法を採用することが好ましい。
【0028】
以下実施例を述べるが、重量部、g/mは固形分換算の値を意味する。
【実施例】
実施例1
NBKP20重量部、LBKP80重量部を350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10重量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」、荒川化学工業(株)製造)0.3重量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化学工業(株)製造)1.0重量部、硫酸バンドを適量加えスラリーを調製した。このスラリーに、平均粒径が約50μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料粒子(商品名「Kayaset Yellow SF−G」、日本化薬(株)製造)を0.08重量部添加して分散させた。このスラリーを使用して常法に従い長網抄紙機で坪量100g/mの偽造防止用紙を抄造した。この際乾燥ゾーンの途中に設置されているサイズプレス装置でポリビニルアルコールの0.2重量%水溶液を塗工した。得られた偽造防止用紙は蛍光灯照明下で観察しても該蛍光染料粒子の存在が視認できなかったが、暗室内で紫外線(ブラックライト)を照射すると黄色に発色する微細な蛍光染料粒子を視認できた。
【0029】
実施例2
NBKP20重量部、LBKP80重量部を350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10重量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」、荒川化学工業(株)製造)0.3重量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化学工業(株)製造)1.0重量部、硫酸バンドを適量加えスラリーを調製した。このスラリーを使用して常法に従い長網抄紙機で坪量100g/mの用紙を抄造中に乾燥ゾーンの途中に設置されているサイズプレス装置でポリビニルアルコールの0.2重量%水溶液に、平均粒径が約250μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料粒子(商品名「Kayaset Red SF−4G」、日本化薬(株)製造)を0.04重量%分散させた液を塗工し、常法に従い乾燥させ偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙は蛍光灯照明下で観察しても該蛍光染料粒子の存在が視認できなかったが、暗室内で紫外線(ブラックライト)を照射すると赤色に発色する微細な蛍光染料粒子を視認できた。
【0030】
実施例3
NBKP20重量部、LBKP80重量部を350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10重量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」、荒川化学工業(株)製造)0.3重量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化学工業(株)製造)1.0重量部、硫酸バンドを適量加えスラリーを調製した。このスラリーを使用して常法に従い長網抄紙機で坪量100g/mの原紙を抄造した。
次いで、カオリン(商品名「UW−90」、エンゲルハード(株)製造)75重量部、炭酸カルシウム(商品名「TP−222HS」、奥多摩工業(株)製造)25重量部、バインダーとして澱粉(商品名「MC−3000」、敷島スターチ(株)製造)6重量部、SBRラテックス(商品名「ニポールLX407C」、日本ゼオン(株)製造)12重量部を主体とする水性塗料(濃度35重量%)を常法に従い調製し、これに、平均粒径が約150μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料粒子(商品名「TBO」、住友精化(株)製造)を塗料固形分に対して0.06重量%添加した。この塗料を前記原紙の両面に15g/mずつエアナイフコーターを使用して塗工して乾燥後、スーパーキャレンダー処理して偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙は蛍光灯照明下で観察しても該蛍光染料粒子の存在が視認できなかったが、暗室内で紫外線(ブラックライト)を照射すると青白色に発色する微細な蛍光染料粒子を視認できた。
【0031】
実施例4
実施例3と同一の水性塗料(濃度35重量%)を調製し、これに、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料粒子(商品名「Kayaset Yellow SF−G」、日本化薬(株)製造)、及び(商品名「TBO」、住友精化(株)製造)、及び(商品名「Kayaset Red SF−4G」、日本化薬(株)製造)を塗料固形分に対して各々0.03重量%添加した。この塗料を前記原紙の両面に15g/mずつエアナイフコーターを使用して塗工して乾燥後、スーパーキャレンダー処理して偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙は蛍光灯照明下で観察しても該蛍光染料粒子の存在が視認できなかったが、暗室内で紫外線(ブラックライト)を照射すると黄色、赤色、青白色に発色する微細な蛍光染料粒子を視認できた。
【0032】
比較例
スチルベン系の蛍光増白剤(水溶性で有機溶剤に不溶性)を内添した通常の上質紙を比較例として挙げる。
【0033】
代表的な各種有機溶剤を各実施例で得られた偽造防止用紙と比較例の上質紙の表面に滴下し、有機溶剤が蒸発してから滴下したところを室内の蛍光灯照明下、及び室内の蛍光灯照明下で紫外線(ブラックライト)を照射して観察した結果を表1に示す。なお、この結果は自然光下や白熱電球による照明下でも同一の結果が得られることを確認した。
【0034】
【表1】
Figure 0003633316
【0035】
実施例1と実施例2で使用した水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料粒子そのものが多量に集まると、通常の照明下で着色して見えるが、実施例のように用紙中に微量に分布させるとその存在が通常の照明下では視認できなくなる(極めて多量に使用すると、その染料独特の色相が淡く見えるようになる)。これは人間の目の解像度の限界を超えた微細な染料粒子が少量存在するためによる。しかしこれら実施例で得られた偽造防止用紙に暗室で紫外線を照射するとその染料特有の蛍光色を発するようになり、微細な粒子として視認できる。なお、実施例3で使用した水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料粒子そのものが多量に集まっても無色であるが、実施例3の偽造防止用紙に、暗室で紫外線を照射するとその染料特有の蛍光色を発するようになり、微細な粒子として視認できる。
【0036】
これら実施例で得られた偽造防止用紙の表面に各種有機溶剤を滴下すると、有機溶剤の作用で用紙に含まれている染料が溶出して、毛細管現象で周囲に拡散する。溶剤が蒸発した後に滴下面を蛍光灯照明下で観察すると、実施例1と2では、石油エーテルの滴下の場合を除き用いた染料に起因する色相が視認できた。実施例3では用いた染料が無色であるので滴下面が変化が無いように見えた。実施例4では、斑点状で異なった色相が視認できた。
【0037】
さらにこれら用紙を蛍光灯照明下で紫外線(ブラックライト)を照射すると、実施例1,2は石油エーテルの滴下の場合を除き、滴下面に相当する部分が各染料独特の色相に蛍光発色して見えた。
【0038】
なお、参考として有機溶剤の代わりに、水を滴下した結果を示したがいずれの場合も何ら変化がなかった。また、比較例の上質紙の場合も何ら変化は認められなかった。
【0039】
以上は蛍光灯照明下、及び蛍光灯照明下で紫外線を照射した結果であるが、白熱電球照明下や自然光下、及び白熱電球照明下や自然光下で紫外線を照射した場合でも同一の結果が得られることを確認した。
なお、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料は以上述べた他にも種々あり、有機溶剤への溶解性も異なっているので、偽造防止用紙に求められる性能に応じて種々使い分ければよい。
【0040】
【発明の効果】
本発明の偽造防止用紙は以上述べたように構成され、下記に述べるような顕著な効果を有する。
1)パスポート、トラベラーズチェック、小切手、手形、身分証明書等は油溶性のインキを使用したボールペンで文字を記載することが多いが、本発明の偽造防止用紙はこのようなタイプの偽造防止印刷物の用途に好適に利用することができ、有機溶剤による改竄の痕跡を明るい室内でも紫外線の照射により容易に視認できるし、発色することで改竄者が改竄を諦める効果もある。
2)また、スクライブ方式のくじ用紙(当たりはずれを印刷し、この印刷面にアルミ粉印刷を施して隠蔽させ、購入者がアルミ粉印刷部分を爪等でこすって除去して当落を判定する方式)に好適に利用できる。即ち、くじが販売される前の流通過程で、有機溶剤を使用してアルミ粉印刷部を除去して当落を読みとり、当たりくじのみを盗み、はずれくじに再びアルミ粉印刷を行うような犯罪に対しても防止効果が大きい。
3)また、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料は種類が豊富であるので、例えばロットごとに該蛍光染料の種類や添加量を変化させて用紙に添加しておき、必要が生じたらどのロットの製品であるのか判断を下すことができる用途にも本発明の偽造防止用紙は好適に使用できる。

Claims (6)

  1. 水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の、粒径が50〜400μmである蛍光染料粒子が粒子の状態で用紙中に含まれており、有機溶剤による改竄の痕跡を紫外線の照射により視認できるようにしたことを特徴とする偽造防止用紙。
  2. 用紙に含まれている前記蛍光染料粒子は、通常の光源のもとでは視認することができないものであることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
  3. 用紙に含まれている前記蛍光染料粒子は、紫外線の照射で異なった色相に発色するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止用紙。
  4. 前記偽造防止用紙が少なくとも3層以上の多層抄き合わせで形成されており、かつ内層のみに前記蛍光染料粒子が含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の偽造防止用紙。
  5. 記蛍光染料粒子が用紙表面付近に存在していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の偽造防止用紙。
  6. 記蛍光染料粒子が用紙に印刷された文字若しくは模様に含まれていることを特徴とする請求項5に記載の偽造防止用紙。
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