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JP5083796B2 - 偽造防止用シート状物 - Google Patents

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JP5083796B2
JP5083796B2 JP2006206762A JP2006206762A JP5083796B2 JP 5083796 B2 JP5083796 B2 JP 5083796B2 JP 2006206762 A JP2006206762 A JP 2006206762A JP 2006206762 A JP2006206762 A JP 2006206762A JP 5083796 B2 JP5083796 B2 JP 5083796B2
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Description

本発明は偽造防止用シート状物に関する。詳しくは有機溶剤を用いて改竄を試みても、その痕跡を可視光下で容易に視認することのできる偽造防止用シート状物に関する。
紙幣、商品券、パスポート、株券、小切手等は不正に偽造されないように各種の偽造防止対策が施されている。例えば、自然光や通常の照明下で、特殊な機器を用いずに容易に視認できる偽造防止手段を施すことが考えられている。この考えに基づき、改竄された痕跡が容易に視認できる偽造防止用紙や偽造防止印刷物、およびこれらに使用する材料の提案が以下に示すように各種なされている。
例えば、特許文献1や特許文献2では、マンガンのフェロサイトアナイドを用紙中に含ませ、金額欄に記載された文字をインク消しを用いて消そうとすると褐色に変色する証券用紙の提案がある。
特許文献3には、酸化剤により変色する物質とタンニン質と浸透剤を用紙に加工し、インク消しで改竄すると消滅することのない色が出る改竄防止用紙の提案がある。
特許文献4には、水溶性のピレンスルホン酸金属塩系の反応性蛍光染料を用紙中に含有させ、インク消しや弱アルカリで改竄を試みると蛍光色を呈する安全紙の提案がある。
特許文献5には、ロイコ染料とフェノール性物質、バインダーを主成分とする発色層を用紙表面に設け、有機溶剤で改竄を試みた場合有機溶剤の浸透でロイコ染料とフェノール性物質が溶出し、両者が化学反応し発色する改竄防止用紙の提案がある。さらには、特許文献6〜9には、ロイコ染料と顕色剤を組み合わせることにより、有機溶剤に反応して発色する改竄防止技術を設けたラベルやシールの提案がされている。
また、本出願人は先に特許文献10において、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の蛍光染料粒子を用紙中に含ませ、有機溶剤で改竄を試みると染料が溶出浸透し蛍光色を呈する偽造防止用紙の提案を行った。しかしながら、この用紙に有機溶剤を滴下すると有機溶剤の浸透が悪いため、改竄の痕跡が明確に判断できない場合があった。また、印刷適性が低いため用途が限られていた。
特許第78774号 特許第77962号 特許第136286号 特許第1414483号 特開昭63−182496号 特開平07−271302号 特開平10−250228号 特開平10−268772号 特開2003−29637号 特開2000−129596号
印刷物の表面に印刷された内容を改竄する目的で、各種の有機溶剤を使用して印刷インキを除去しようとした際に、容易に改竄の痕跡を視認できる偽造防止手段があると便利である。本発明は、このような手段として有用な偽造防止用シート状物を提供することを課題とする。具体的には、溶解度パラメーターの異なる複数の種類の有機溶剤を滴下した場合であっても滴下部分が発色し、可視光下で容易に改竄の痕跡を確認することができる偽造防止用シート状物を提供することである。また、シート状物における有機溶剤の浸透や拡散を向上させることにより、発色がより鮮明になるような手段を提供することである。
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の染料および/または顔料を1種類以上含有し、1種類以上の有機溶剤の滴下による改竄の痕跡を可視光下で視認できるようにしたことを特徴とする偽造防止用シート状物である。
すなわち本発明の請求項2に係る発明は、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の染料および/または顔料を1種類以上含む塗工層が少なくともシート状物の片面に存在し、1種類以上の有機溶剤の滴下による改竄の痕跡を可視光下で視認できるようにしたことを特徴とする偽造防止用シート状物である。
すなわち本発明の請求項3に係る発明は、填料およびバインダーを含む塗工層が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止用シート状物である。
すなわち本発明の請求項4に係る発明は、溶解度パラメーターの異なる2種類以上の有機溶剤をそれぞれ滴下したときに、いずれの場合でも滴下の痕跡を可視光下で視認できることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偽造防止用シート状物である。
すなわち本発明の請求項5に係る発明は、シート状物が木材パルプを主原料としたものであることを特徴とした、請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止用シート状物である。
すなわち本発明の請求項6に係る発明は、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の染料がアゾ系染料、アミノケトン系染料、クマリン系染料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止用シート状物である。
すなわち本発明の請求項7に係る発明は、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の顔料がアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止用シート状物である。
本発明による偽造防止用シート状物によれば、水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の染料および/または顔料を1種類以上含む塗工層が設けられ、さらには填料およびバインダーを含む塗工層が存在することによって、印刷物の表面に印刷された内容を改竄する目的で、各種の有機溶剤を使用して印刷インキを除去しようとした際に、容易に改竄の痕跡を視認できるので、紙幣、商品券、パスポート、株券、小切手等の偽造防止手段として好ましく使用することができる。
本発明で使用する染料および/または顔料は水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であることが必要である。水溶性であるとシート状物製造中等において、該染願料粒子が水中に溶解してしまい本発明の目的を達成できなくなるからである。また、偽造防止用紙は油溶性のインキを使用した印刷を施したり、住所、氏名、金額などの可変情報を油溶性のインキを使用したボールペンで記載したりすることが一般的であり、これらの情報を改竄するためには有機溶剤が用いられることが必要となる。そのため、本発明で用いる染料および/または顔料が有機溶剤に可溶でないと、有機溶剤を用いて改竄を試みた際に改竄の痕跡を視認できなくなるからである。
本発明で使用する染料および/または顔料は、有機溶剤を用いて改竄を試みた際に改竄の痕跡が通常の光原のもとで発色するものであって、有色となり、目視により容易に確認できるものが好ましい。
本発明で使用する染料粒子は水不溶性でかつ有機溶剤可溶性であればどのようなものでも使用できる。例えば、アゾ系、アミノケトン系、クマリン系、オキサゾール系、ピラリゾン系といった各種染料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この種の染料としては染料メーカーから販売されているが、実例を商品名で挙げると「Oil Red 5B」(オリエント化学工業(株)製造)、「Yellowfluor 10GN」(ランクセス(株)製造)、「Kayaset Flavine FN」(日本化薬(株)製造)、「Leucopher EF 2N」(クラリアント(株)製造)、「TBO」(住友精化(株)製造)、「Kayaset Red SF−R」(日本化薬(株)製造)、「VALIFAST BLUE 1605」(オリエント化学工業(株)製造)、「Oil Green BG」(オリエント化学工業(株)製造)、「VALIFAST RED 2303」(オリエント化学工業(株)製造)、「Oil Blue BOS」(オリエント化学工業(株)製造)、「SPILON RED GEH Special」(保土ヶ谷化学工業(株)製造)、「MACROLEX VIOLET 3R」(ランクセス(株)製造)、「MACROLEX Red 5B FG」(ランクセス(株)製造)、「MACROLEX Green 5B」(ランクセス(株)製造)、「Kayafect Blue T」(日本化薬(株)製造)、「Kayaset Blue 814」(日本化薬(株)製造)、「SPILON BLUE 2BNH」(保土ヶ谷化学工業(株)製造)、「SPIRON GREEN 3GNH Special」(保土ヶ谷化学工業(株)製造)等であるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも特に、アゾ系染料、アミノケトン系染料、クマリン系染料を用いると、可視光下での発色が有色で鮮やかとなるので好ましい。
本発明で用いられる顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系・アントラキノン系・ペルリン系・ピランスロン系、キナクリドン系・ジオキサジン系・イソインドリノン系、チオインジゴ系、キノフタロン系・金属系・ピグメント系・カーボン系・酸化硫黄系・亜酸化銅系、硫酸塩系、炭酸塩系、ケイ酸塩系、クロム酸塩系、アルミン酸塩系、フェロシアン系等の有機顔料または無機顔料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。実例を商品名で挙げると、「TB−200 Red GY」、「TB−500 Orange R」、「TB−520BLUE 2B」、「TB−510 Green B」、「セイカファーストカーミン1476T−7」、「A120 レッド」、「430 ブリリアントボルドー 10B」、「モノアゾレーキ10G」、「セイカファーストレッド 116」、「セイカファーストエロー 1983−10G」(いずれも大日精化工業(株)製造)等があるが、これらに限定されるものではない。特に、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料を用いると、可視光下での発色が有色で鮮やかとなるので好ましい。
本発明で用いる染料および/または顔料は、粒子状のものを用いる。粒子の大きさは、通常200μm以下であるが、本発明では塗料中に分散して使用する目的から粒子径は50μm以下のものを使用するのが好ましい。
本発明に用いる染料および/または顔料は、必要に応じて2種類以上の染料および/または顔料を混合して用いることが好ましい。特に、溶解度パラメーターが異なる2種類以上の有機溶剤に溶解可能となるように異なる染料および/または顔料を選択して混合使用すると、様々な有機溶剤を用いた改竄にも任意に対応できるので特に好ましい。
改竄に用いられる有機溶剤としてはメタノール、エタノール、アニリン、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、クレゾール、アセトニトリル、ベンゼン、シクロヘキサン、酢酸エチル、トルエン、オクタン等の各種有機溶剤やこれらの混合物、石油中間留分であるナフサなどが考えられる。これらの有機溶剤は溶解度パラメーターの違いから、溶出させることのできる染料や顔料の種類が異なる。そのため、前述のように2種類以上の水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の染料および/または顔料を混合してシート状物に含ませることにより、溶解性の異なる複数の有機溶剤に対して発色性を示すため、染料や顔料を単独で使用した場合に比べて、より高度な改竄防止効果が得られる。
溶解度パラメーターとはsp値とも呼ばれている値で、ポリマーと溶媒との溶解性を決める一つの因子である。一般に、極性をもつポリマーは極性溶媒に溶けやすく、非極性溶媒には溶けにくい傾向がある。一方非極性のポリマーは逆の傾向になる。この親和性の強さを判断する因子が溶解度パラメーターでありδで示される。ある液体のモル蒸発熱をΔH、モル体積をVとしたときにδ=(ΔH/V)1/2で定義される。代表的な溶剤の溶解度パラメーターの値を表1に示した。
(表1)各種溶剤の溶解度パラメーター
sp値:溶解度パラメーター値
Figure 0005083796
本発明で基材として用いられるシート状物としては、紙、フィルム、不織布、合成紙等が挙げられる。紙としては、製紙用として一般的に用いられている木材パルプ、例えば針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の単独もしくは混合物を主体にして、これに必要に応じて麻、竹、藁、ケナフ等の非木材パルプやカチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ、ミクロフィブリル化パルプ、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル等の再生繊維、半合成繊維、合成繊維を適宜混合して用いることができる。フィルムとしては、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料が挙げられる。不織布としてはレーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル、綿、パルプ、麻、羊毛、ガラス繊維等の材料を使用して乾式、湿式、直接式で製造したものが挙げられる。合成紙としては、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、エチレンープロピレン共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド等を原材料とし、延伸法により製造した物が挙げられるが、いずれも上記したものに限定されるものではない。
本発明において、シート状物に染料および/または顔料を含ませる方法としては、通常使用される一般的な方法が使用できる。例えば紙、不織布であれば原料中に分散することが考えられ、フィルムであれば原料への練り込み等の対応が可能である。この他シート状物の表面への塗工を行うことも可能である。
本発明において、染料および/または顔料をシート状物に塗工する場合、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、合成非晶質シリカ、ゼオライト等の無機系填料やスチレン系あるいはアクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン等の一般的に塗工用として使用される填料成分を適用することが好ましい。これらを全く含まないと塗工層中への有機溶剤の浸透が遅く、染料が溶出する現象の妨げとなり、さらにはブリスター、ブロッキングの原因となる場合もあるので好ましくない。
本発明における染料および/または顔料を含む塗工層には、当該染料および/または顔料を0.05〜3.0質量%配合することが好ましい。3.0質量%より多く配合すると製造機械を汚したり、裏写りを引き起こしたりするので好ましくない。0.05質量%未満だと発色が弱くなるため十分な効果が得られないため好ましくない。
本発明において染料および/または顔料を含む塗工層には、バインダーを全填料に対して10〜80質量部配合することが好ましい。10質量部未満であるとバインダー量が不足するので塗料としての強度が弱くなり好ましくない。また80質量部を超えると塗料としての強度は十分であるが、ブロッキングや塗工層表面のべたつき等の現象が著しくなるので好ましくない。バインダーとしては、例えば合成高分子ラテックスとしてアクリル系、スチレン系、スチレン−アクリル系、スチレン−ブタジエン系などの各種共重合体を用いることができる。更に、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の合成バインダー、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプン等のデンプン、変性デンプン、デンプン誘導体、カゼイン等の天然系バインダーも使用することができる。また、必要に応じて、分散剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、防かび剤、抗菌剤等の各種助剤も適宜配合することができる。
本発明において、偽造防止用シート状物表面に填料およびバインダーを含む塗工層を設けることにより、例えば、染料および/または顔料を含んでいる塗工層を隠蔽することができるといったような種々の効果が得られるので好ましい。
また、填料およびバインダーを含む塗工層を設けることにより、染料および/または顔料を含む層への溶剤の浸透を向上させることができ、かつ溶出した染料および/または顔料のシート状物表面への拡散、定着も向上することができる。その結果、発色が鮮明となり、目視での視認がより容易となる。さらには、この塗工層を設けることで、シート状物の印刷適性を向上させることも可能となるので好ましい。
填料およびバインダーを含む塗工層に用いる填料としては、カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、シリカ、クレー、プラスチックピグメント、コロイダルシリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ゼオライト等の紙塗工用として一般的に用いられる填料が適用できる。
填料およびバインダーを含む塗工層には、バインダーを填料に対して5〜25質量部配合すると好ましい。バインダーとしては、アクリル系、スチレン系、スチレン−アクリル系、スチレン−ブタジエン系、尿素、無水マレイン酸、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メラミン、メタクリレート系などの各種合成高分子、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アクリル酸エステル等の合成バインダー、または酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプン等のデンプン、変性デンプン、デンプン誘導体、カゼイン、大豆タンパク、ゼラチン等の天然系バインダーを使用することができる。また、必要に応じて、分散剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、防かび剤、抗菌剤等の各種助剤も適宜配合することができる。
本発明において、染料および/または顔料を含む塗工層を設ける際にはエアナイフコーター、ブレードコーター、ダイコーター、ロールコーター、グラビアコーター、バーコーター、ゲートロールコーター等の一般的な塗工機が使用できる。
本発明において、染料および/または顔料を含む塗工層を設ける際に印刷機を使用し塗工層が文字を形成するようにしても良い。これにより有機溶剤で改竄を試みると文字を浮き上がらせることができ、偽造防止効果を一層向上させることができるので好ましい。
以下に実施例を述べるが、文中の「質量部」、「g/m」は固形分換算の数値を意味する。
[実施例1]
カオリン70質量部、炭酸カルシウム30質量部、バインダーとしてデンプン5質量部、SBRラテックス(商品名「スマーテックスSN−322」日本エイアンドエル(株)製造)15質量部を主体とする水性塗料(濃度35質量%)を常法に従い調製した(これを塗料Aとする)。これに平均粒径が4μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性のアンスラキノン系染料粒子(商品名「MACROLEX Red Violet R」ランクセス(株)製造)を塗料固形分に対し1質量部、平均粒径が3μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性のピラリゾン系染料粒子(商品名「Kayaset Flavine FN」日本化薬(株)製造)を塗料固形分に対し5質量部添加した(これを塗料Bとする)。この塗料Bを針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量部を400mlC.S.F.に叩解し、白土、紙力増強剤、サイズ剤を加えたスラリーを長網抄紙機で坪量60g/mに抄造した原紙片面にエアナイフコーターを用いて10g/m塗工した。さらにこの塗工層上に塗料Aを15g/m塗工し、坪量が85g/mの偽造防止用シート状物を得た。
[実施例2]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量部を400mlC.S.F.に叩解し、これに紙力増強剤0.4質量部、サイズ剤0.3質量部、硫酸バンドを適量添加しパルプスラリーを調整した。これに平均粒径が4μmのアンスラキノン系染料粒子(商品名「MACROLEX Red Violet R」ランクセス(株)製造)を1.0質量部、平均粒径が3μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性のピラリゾン系染料粒子(商品名「Kayaset Flavine FN」日本化薬(株)製造)を3.0質量部混合した後、常法に従い長網抄紙機で95g/mの偽造防止用シート状物を得た。
[実施例3]
実施例2と同様の方法で針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量部を400mlC.S.F.に叩解し、これに紙力増強剤0.4質量部、サイズ剤0.3質量部、硫酸バンドを適量添加しパルプスラリーを調整した。これに平均粒径が3μmのピグメント系顔料粒子(商品名「Sumikaprint Red BF」住化カラー(株)製造)を3.0質量部、平均粒径4μmのピグメント系顔料粒子(商品名「Sumikaprint Yellow 2RN」住化カラー(株)製造)を5.0質量部混合した後、常法に従い長網抄紙機で95g/mの偽造防止用シート状物を得た。
[実施例4]
カオリン70質量部、炭酸カルシウム30質量部、バインダーとしてデンプン5質量部、SBRラテックス(商品名「スマーテックスSN−322」)15質量部を主体とする水性塗料(濃度35質量%)を常法に従い調製し、塗料Aとした。これに平均粒径が4μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性のアゾ系染料粒子(商品名「SPILON RED GEH Special」)を塗料固形分に対し1質量部、平均粒径が4μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性のアゾ系染料粒子(商品名「SPILON BLUE 2BNH」)を塗料固形分に対し5質量部添加し、塗料Bとした。この塗料Bを針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量部に白土、紙力増強剤、サイズ剤を加えたスラリーを長網抄紙機で坪量60g/mに抄造した原紙片面にエアナイフコーターを用いて10g/m塗工した。さらにこの塗工層上に塗料Aを15g/m塗工し、坪量が85g/mの偽造防止用シート状物を得た。
[実施例5]
カオリン70質量部、炭酸カルシウム30質量部、バインダーとしてデンプン5質量部、SBRラテックス(商品名「スマーテックスSN−322」)15質量部を主体とする水性塗料(濃度35質量%)を常法に従い調製し、塗料Aとした。これに平均粒径が3μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性のアゾ系顔料粒子(商品名「モノアゾレーキ10G」)を塗料固形分に対し1質量部、平均粒径が4μmの水不溶性でかつ有機溶剤可溶性のアゾ系染料粒子(商品名「シアニンブルーHS−3」大日精化(株)製造)を塗料固形分に対し5質量部添加し、塗料Bとした。この塗料Bを針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量部に白土、紙力増強剤、サイズ剤を加えたスラリーを長網抄紙機で坪量60g/mに抄造した原紙片面にエアナイフコーターを用いて10g/m塗工した。さらにこの塗工層上に塗料Aを15g/m塗工し、坪量が85g/mの偽造防止用シート状物を得た。
[実施例6]
ポリプロピレン製の合成紙(ユポFPG#110,(株)ユポ・コーポレーション社製)を用意し、これにバーコーターを用いて、実施例4で使用した塗料Bを10g/m塗工した。さらにこの塗工層上に実施例4で使用した塗料Aを15g/m塗工し、偽造防止用シート状物を得た。
[実施例7]
表面に親水化処理を施したポリエチレンテレフタレート製フィルムシート(厚さ110μm)を用意し、これにバーコーターにて実施例5で使用した塗料Bを固形分質量で10g/m塗工した。さらにこの塗工層上に実施例5で使用した塗料Aを15g/m塗工して偽造防止用シート状物を得た。
[実施例8]
坪量50g/mのポリエステル不織布を用意し、これにロールコーターにて実施例5で使用した塗料Bを固形分質量で10g/m塗工した。さらにこの塗工層上に実施例5で使用した塗料Aを15g/m塗工して偽造防止用シート状物を得た。
[比較例1]
実施例1と同様の方法で針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量部を400mlC.S.F.に叩解し、これに紙力増強剤0.4質量部、サイズ剤0.3質量部、硫酸バンドを適量添加しパルプスラリーを調整した。これにフタロシアニン系のカチオン性直接染料(商品名「Turquoise K−GL liq」クラリアント(株)製造)(水溶性で有機溶剤に不溶性)を内添し、常法に従い長網抄紙機にて95g/mのシート状物を抄造した。
[比較例2]
ポリプロピレン樹脂を主成分として二軸延伸フィルム成形された、合成紙(ユポFPG#200,王子油化合成紙製)上に塗料Aにフタロシアニン系のカチオン性直接染料(商品名「Turquoise K−GL liq」クラリアント(株)製造)を混合した塗料(塗料Cとする)を15g/m塗工しシート状物を得た。
[比較例3]
表面に親水化処理を施したポリエチレンテレフタレート製フィルムシート(厚さ110μm)を用意し、これにバーコーターにて比較例2と同じ塗料Cを15g/m塗工してシート状物を得た。
[比較例4]
坪量50g/mのポリエステル不織布を用意し、これにロールコーターにて比較例2と同じ塗料Cを15g/m塗工してシート状物を得た。
実施例および比較例で得られたシート状物の表面に代表的な有機溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、ベンゼンを滴下し、有機溶剤が蒸発した後に滴下した個所を可視光下で目視観察した。なお、参考のため水を滴下した場合についても目視観察した。以上の観察結果を表2、表3に示す。発色は、著しい発色を◎、通常の発色を○、変化しないものを×と評価し、○以上を合格とした。なお、評価に用いる可視光は自然光下、白熱電球による照明下どちらでも同一の結果が得られることを確認した。
(表2)
Figure 0005083796
(表3)
Figure 0005083796
実施例1の塗工面、および実施例2、実施例3の用紙表面は染料または顔料粒子が均一に分散されているため、使用している染料または顔料の色相に淡く着色されているように見える。しかし、拡大鏡を使用して観察すると粒子の状態で分布していることがわかる。
これら実施例で得られた偽造防止用シート状物の表面に各種有機溶剤を滴下すると、含まれている染料または顔料が溶出して、毛細管現象で周囲に拡散する。溶剤が揮発した後に滴下部位を観察すると、例えば酢酸エチルの滴下においては実施例1、実施例4、実施例6で黄に赤の斑点が確認され、実施例2、実施例3では赤の円が、実施例5、実施例7、実施例8で青の斑点が確認された。トルエンの滴下では、実施例1、実施例2、実施例4、実施例6で黄に赤の斑点が、実施例3で赤の円が、実施例5、実施例7、実施例8で青の円が確認された。メチルエチルケトンの滴下では、実施例1、実施例4、実施例6で黄に赤の斑点が、実施例2で黄に赤の円が、実施例3で赤の円が、実施例5、実施例7、実施例8で赤に青の斑点が確認された。イソプロピルアルコールの滴下では、実施例1、実施例2、実施例4、実施例6で黄の円が、実施例3で赤に黄の斑点が、実施例5、実施例7、実施例8で赤の斑点が確認された。ベンゼンの滴下では、実施例1、実施例2、実施例4、実施例6で黄の円が、実施例3で赤と黄の斑点が、実施例5、「実施例7、実施例8で赤に青の斑点が確認された。また、いずれの実施例においても、水の滴下においては何らの変化も確認されなかった。また、比較例1〜4は、テストで使用した全ての有機溶剤、及び水の滴下に対して何らの変化も確認されなかった。
本発明の偽造防止用シート状物は、下記に示すような効果を有する。
(1)パスポート、トラベラーズチェック、小切手、手形、身分証明書では油溶性インキを使用して氏名、金額などの可変情報を記載する事が多く、また、パスポート、身分証明書などは写真を保護するシートが貼られていることが多い。本発明によれば、溶剤を用いて油溶性インキを使用した可変情報の改竄や、写真の貼り替えを試みた際の痕跡が、特別な器具を使用することなく可視光下で目視にて視認できることが可能となることから、本発明の偽造防止用シート状物はこのような偽造防止用途に好適に使用することができる。
(2)また、溶剤、ラベル剥がしを使用して不正を行い、再添付した痕跡を容易に視認することができるという特徴を活かして、ブランド品の証明、電子機器の封印(クレジットカードリーダーなど内部仕様の不正な書き換えを防ぐ目的)といったブランドプロテクトラベル用途にも好適に使用できる。
(3)本発明で使用する染料および/または顔料は、改竄に使用されると目される溶剤に応じて適宜選択することができる。また、溶解度パラメーターの異なる2種類以上の染料および/または顔料を同時に使用することで、幅広い溶剤に対応することができ、その溶解性の違いから、改竄の痕跡が円状、斑点状など一定でないため、より高い偽造防止効果が得られる。
:本発明の偽造防止用シート状物について一例を示した断面図である。基材中に水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の染料および/または顔料を含有する。 :本発明の偽造防止用シート状物を示した一例を示した断面図である。基材上に顔料を含む塗工層を設けている。 :本発明の偽造防止用シート状物を示した一例を示した断面図である。図1のシート状物上に顔料を含む塗工層を設けている。
符号の説明
1.基材
2.染料または顔料粒子
3.顔料塗工基材

Claims (5)

  1. 水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の通常の光源下で発色する染料および/または顔料(但し 、粉状物質との混合物の造粒物を除く)を1種類以上含む塗工層が少なくともシート状物の片面に存在し、
    前記塗工層上に填料およびバインダーを含む塗工層が存在しており、
    1種類以上の有機溶剤の滴下による改竄の痕跡を可視光下で視認できるようにしたことを特徴とする偽造防止用シート状物。
  2. 溶解度パラメーターの異なる2種類以上の有機溶剤をそれぞれ滴下したときに、いずれの場合でも滴下の痕跡を可視光下で視認できることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用シート状物。
  3. シート状物が木材パルプを主原料としたものであることを特徴とした、請求項1又は2記載の偽造防止用シート状物。
  4. 水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の通常の光源下で発色する染料(但し、粉状物質との混合 物の造粒物を除く)がアゾ系染料、アミノケトン系染料、クマリン系染料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偽造防止用シート状物。
  5. 水不溶性でかつ有機溶剤可溶性の通常の光源下で発色する顔料(但し、粉状物質との混合 物の造粒物を除く)がアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偽造防止用シート状物。
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