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JP3630280B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

電動パワーステアリング装置 Download PDF

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JP3630280B2
JP3630280B2 JP30019498A JP30019498A JP3630280B2 JP 3630280 B2 JP3630280 B2 JP 3630280B2 JP 30019498 A JP30019498 A JP 30019498A JP 30019498 A JP30019498 A JP 30019498A JP 3630280 B2 JP3630280 B2 JP 3630280B2
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茂 山脇
康夫 清水
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は電動機の動力をステアリング系に直接作用させ、ドライバの操舵力の軽減を図る電動パワーステアリング装置に係り、特に路面反力の変化をドライバに伝えて適切な操舵を行わせる電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本願出願人は特願平10−249730号で、車両速度、ヨー角速度、操舵角に基づいて車両の前輪の滑り角(βf)と車両の後輪の滑り角(βr)との差(以降、角差βfr=βf−βrと称する)を演算し、この角差βfrに基づいて車両挙動(オーバステア状態、アンダステア状態等)の補正量を決定し、操舵トルクに基づいた目標操舵トルク信号を角差βfrに対応した補正量で補正して電動機を駆動することにより、電動機が発生する補助トルクを補正してステアリング系に作用させ、路面からハンドルを介して伝えられる路面反力を車両挙動に応じてドライバに感知させ、ドライバが車両挙動に応じた適切なハンドル操作を可能とするような電動パワーステアリング装置を提案した。
【0003】
また、従来の電動パワーステアリング装置において、特開平5−58323号公報に開示されているように、分解能の高い第1のヨーレイトセンサと、測定レンジが広い第2のヨーレイトセンサを備え、ヨー運動が大きい場合には測定レンジが広い第2のヨーレイトセンサが検出した信号に基づいて操舵を制御し、ヨー運動が小さな場合には分解能の高い第1のヨーレイトセンサが検出した信号に基づいて操舵を制御するように構成されたものも知られている。
【0004】
この構成により、特開平5−58323号公報に開示された従来の電動パワーステアリング装置は、ヨー運動の状態に応じて2つのヨーレイトセンサを切り替えて使用するので、ヨー運動が小さい時の要求分解能とヨー運動が大きい時の広い測定レンジの双方を満たすことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
角差βfrに対応した補正量で目標操舵トルク信号を補正する従来の電動パワーステアリング装置は、車両挙動が大きく変化する領域、例えば車両の後輪が横方向に滑ってハンドルを切っている量に対して車両がより曲ってしまうオーバステアの状態では、ドライバは車両の曲り過ぎを抑えるために、車両が曲る方向と逆方向にハンドルを操作(カウンタステア)する。
【0006】
オーバステア状態において、ドライバは効果的にカウンタステアを当てるために、できるだけ早く車両挙動(オーバステア状態)を察知して操舵しなければならず、角差βfrに対応した補正量で目標操舵トルク信号を補正する制御は速やかにオーバステア状態を判定することが望ましい。
また、アンダステア状態の判定においてもできる限り速やかに判定することが望ましい。
【0007】
しかし、車両挙動判定のために用いるヨーレイトセンサは、ヨーレイトセンサが配置された車両の周辺温度の変化や飛び石が当ることにより生じるセンサ取付け部の振動等の外乱ノイズの影響を受け易く、センサ検出値(ヨー角速度)が変動する課題がある。
【0008】
外乱ノイズに起因するヨーレイトセンサの検出値(ヨー角速度)の変動を抑えるために、制御系に検出値(ヨー角速度)の不感帯を設けたり、ローパスフィルタ(LPF)を設けて検出値(ヨー角速度)の応答感度を低下させている。
【0009】
検出値(ヨー角速度)の不感帯の設定、または応答感度の低下による外乱ノイズへの対応は、オーバステア状態およびアンダステア状態等の車両挙動を速やかに判定するドライバの要求を満足させることができず、改善が望まれている。
【0010】
この発明はこのような課題を解決するためなされたもので、その目的は車両挙動を判定するためのヨーレイトセンサの検出値(ヨー角速度)の変動の影響を小さく抑え、かつできるだけ早い時期に車両挙動のオーバステア状態およびアンダステア状態を判定してドライバに伝えることにより、ドライバの操舵性ならびに操舵フィーリングの向上を図ることができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するためこの発明に係る電動パワーステアリング装置は、ヨーレイトセンサを2個設けるとともに、2個のヨーレイトセンサからの2つのセンサ信号に基づいてヨー角速度信号を決定するヨー角速度信号決定手段を備え、このヨー角速度信号決定手段からのヨー角速度信号を車両挙動判定手段に供給することを特徴とする。
【0012】
この発明に係る電動パワーステアリング装置は、ヨーレイトセンサを2個設けるとともに、2個のヨーレイトセンサからの2つのセンサ信号に基づいてヨー角速度信号を決定するヨー角速度信号決定手段を備え、このヨー角速度信号決定手段からのヨー角速度信号を車両挙動判定手段に供給するので、2つのセンサ信号に基づいて精度の高いヨー角速度信号を決定することができ、このヨー角速度信号を用いて車両挙動のオーバステア状態およびアンダステア状態を早く判定することができる。
【0013】
また、この発明に係る電動パワーステアリング装置は、2個のヨーレイトセンサを車両の互い異なる位置に配置したことを特徴とする。
【0014】
この発明に係る電動パワーステアリング装置は、2個のヨーレイトセンサを車両の互い異なる位置に配置したので、2個のヨーレイトセンサのそれぞれに及ぼす外乱ノイズに起因する検出値(ヨー角速度)の変動が異なり、2つの検出値(ヨー角速度)に基づいて変動の少ないヨー角速度信号を決定することができる。
【0015】
さらに、この発明に係る電動パワーステアリング装置は、車両の横加速度を検出する横加速度センサと、この横加速度センサからの横加速度信号に基づいてヨー角速度を推定するヨー角速度推定手段を設けるともに、このヨー角速度推定手段が推定した推定ヨー角速度信号とヨーレイトセンサからのセンサ信号に基づいてヨー角速度信号を決定するヨー角速度信号決定手段を設け、このヨー角速度信号決定手段からのヨー角速度信号を車両挙動判定手段に供給することを特徴とする。
【0016】
この発明に係る電動パワーステアリング装置は、車両の横加速度を検出する横加速度センサと、この横加速度センサからの横加速度信号に基づいてヨー角速度を推定するヨー角速度推定手段を設けるともに、このヨー角速度推定手段が推定した推定ヨー角速度信号とヨーレイトセンサからのセンサ信号に基づいてヨー角速度信号を決定するヨー角速度信号決定手段を設け、このヨー角速度信号決定手段からのヨー角速度信号を車両挙動判定手段に供給するので、1つのセンサ信号と推定ヨー角速度信号に基づいて精度の高いヨー角速度信号を決定することができ、このヨー角速度信号を用いて車両挙動のオーバステア状態およびアンダステア状態を早く判定することができる。
【0017】
また、この発明に係る電動パワーステアリング装置は、ヨーレイトセンサと横加速度センサを車両の互い異なる位置に配置したことを特徴とする。
【0018】
この発明に係る電動パワーステアリング装置は、ヨーレイトセンサと横加速度センサを車両の互い異なる位置に配置したので、ヨーレイトセンサと横加速度センサそれぞれに及ぼす外乱ノイズに起因する検出値の変動が異なり、2つの検出値に基づいて変動の少ないヨー角速度信号を決定することができる。
【0019】
さらに、この発明に係る電動パワーステアリング装置は、車両の左右の車輪の速度を検出する2個の車輪速度センサと、2個の車輪速度センサからのそれぞれのセンサ信号に基づいてヨー角速度を推定するヨー角速度推定手段を設けるとともに、このヨー角速度推定手段が推定した推定ヨー角速度信号とヨーレイトセンサからのセンサ信号に基づいてヨー角速度信号を決定するヨー角速度信号決定手段を設け、このヨー角速度信号決定手段からのヨー角速度信号を車両挙動判定手段に供給することを特徴とする。
【0020】
この発明に係る電動パワーステアリング装置は、車両の左右の車輪の速度を検出する2個の車輪速度センサと、2個の車輪速度センサからのそれぞれのセンサ信号に基づいてヨー角速度を推定するヨー角速度推定手段を設けるとともに、このヨー角速度推定手段が推定した推定ヨー角速度信号とヨーレイトセンサからのセンサ信号に基づいてヨー角速度信号を決定するヨー角速度信号決定手段を設け、このヨー角速度信号決定手段からのヨー角速度信号を車両挙動判定手段に供給するので、1つのセンサ信号と推定ヨー角速度信号に基づいて精度の高いヨー角速度信号を決定することができ、このヨー角速度信号を用いて車両挙動のオーバステア状態およびアンダステア状態を早く判定することができる。
【0021】
また、この発明に係るヨー角速度信号決定手段は、2つのヨーレイトセンサからの2つのセンサ信号、もしくはヨーレイトセンサからの1つのセンサ信号と推定ヨー角速度信号のうち、車両挙動判定手段からの補正量が小さくなる方をヨー角速度信号に決定することを特徴とする。
【0022】
この発明に係るヨー角速度信号決定手段は、2つのヨーレイトセンサからの2つのセンサ信号、もしくはヨーレイトセンサからの1つのセンサ信号と推定ヨー角速度信号のうち、車両挙動判定手段からの補正量が小さくなる方をヨー角速度信号に決定するので、外乱ノイズの影響の少ないセンサ信号または推定ヨー角速度信号をヨー角速度信号として採用することができる。
【0023】
さらに、この発明に係るヨー角速度信号決定手段は、2つのヨーレイトセンサからの2つのセンサ信号、もしくはヨーレイトセンサからの1つのセンサ信号と推定ヨー角速度信号、の平均値をヨー角速度信号に決定することを特徴とする。
【0024】
この発明に係るヨー角速度信号決定手段は、2つのヨーレイトセンサからの2つのセンサ信号、もしくはヨーレイトセンサからの1つのセンサ信号と推定ヨー角速度信号、の平均値をヨー角速度信号に決定するので、外乱ノイズの影響を平均化したヨー角速度信号として採用することができる。
【0025】
また、ヨー角速度信号を2個のセンサで検出するようにしたので、一方のセンサの異常を検出した場合には、車両挙動判定手段の動作を停止することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
なお、本発明はヨー加速度信号を検出するセンサを車両の異なる位置に2個設け、2個のセンサの検出値のうち車両挙動判定手段からの補正量が小さくなる方もしくは平均値をヨー加速度信号として採用することにより、より精度の高いヨー加速度信号を決定して車両挙動の判定に用い、ドライバに車両挙動を早く伝えるものである。
【0027】
図1はこの発明に係る電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール2、ステアリング軸3、ハイポイドギア4、ピニオン5aおよびラック軸5bなどからなるラック&ピニオン機構5、タイロッド6、操向車輪の前輪7、補助トルクをステアリング系に作用する電動機8、制御手段13、電動機駆動手段14、電動機電流検出手段15を備える。
【0028】
また、電動パワーステアリング装置1は、車両に作用するヨー角速度を検出し、ヨー角速度に対応した電気信号に変換されたヨー角速度信号YA,YBを出力するヨーレイトセンサ9,16、前輪の切れ角を検出し、前輪の切れ角に対応した電気信号に変換された切れ角信号δを出力する切れ角センサ10、車速を検出し、車速に対応した電気信号に変換された車速信号Vを出力する車速センサ11、ステアリングホイール2に作用する操舵トルクを検出し、操舵トルクに対応した電気信号に変換された操舵トルク信号Tを出力する操舵トルクセンサ12を備える。
なお、ヨーレイトセンサ9,16は、車両の互いに異なる位置に配置し、ヨーレイトセンサ9,16の周辺温度の変化や飛び石によるセンサ取付け部の振動の変動等の外乱ノイズの影響によるセンサ検出値が互いに異なるようにする。
【0029】
ヨー角速度信号YA,YB、切れ角信号δ、操舵トルク信号Tは、それぞれ大きさと方向を有し、車速信号Vは大きさのみを有し、制御手段13に供給される。なお、ヨー角速度信号YA,YB、切れ角信号δ、操舵トルク信号Tの方向は、車両上方から見て時計回り方向を正(プラス)とし、反時計回り方向を負(マイナス)とする。
【0030】
ステアリングホイール2を操舵すると、ステアリング軸3に加えられる手動操舵トルクは、ラック&ピニオン機構5を介してピニオン5aの回転力がラック軸5bの軸方向の直線運動に変換され、タイロッド6を介して前輪7の操向を変化させる。
【0031】
手動の操舵トルクをアシストするため、操舵トルク信号Tに対応して電動機8が駆動されると、電動機トルクがハイポイドギア4を介して倍力された補助トルク(アシストトルク)に変換されてステアリング軸3に作用し、ドライバの操舵力を軽減する。
【0032】
制御手段13は、マイクロプロセッサを基本に各種演算手段、処理手段、判定手段、スイッチ手段、信号発生手段、メモリ等で構成し、操舵トルク信号Tに対応した目標トルク信号(IMS)を発生し、この目標トルク信号(IMS)と電動機電流検出手段15が検出した電動機電流IMに対応した電動機トルク信号IMFとの差(負帰還)に応じた電動機制御信号VO(例えば、オン信号、オフ信号およびPWM信号の混成信号)を発生し、この差が速やかに0となるように電動機駆動手段14の駆動を制御する。
【0033】
また、制御手段13は、ヨー角速度信号決定手段を備え、ヨーレイトセンサ9が検出したヨー角速度信号YAおよびヨーレイトセンサ16が検出したヨー角速度信号YBの車両挙動判定手段からの補正量が小さくなる方または平均値からヨー角速度信号Yを決定する。
【0034】
さらに、制御手段13は、滑り角差推定手段、補正手段を備え、ヨー角速度信号Y、切れ角信号δ、車速信号Vおよび車両の寸法パラメータ(ホイールベース)に基づいて前輪の滑り角と後輪の滑り角の差(角差信号)を演算で推定し、この差(角差信号)の大きさに基づいてアンダステア補正量、オーバステア補正量を決定し、この補正量で目標トルク信号(IMS)を補正する。
【0035】
また、制御手段13は、前輪の滑り角と後輪の滑り角の差(角差信号)の方向(P)とヨー角速度信号Yの方向(N)を比較することにより、車両の状態(車両挙動)がアンダステア領域、もしくはオーバステア領域のいずれであるかを判定する。
【0036】
電動機駆動手段14は、例えば4個のパワーFET(電界効果トランジスタ)、絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ(IGBT)等のスイッチング素子からなるブリッジ回路で構成し、電動機制御信号VOに基づいてPWM(パルス幅変調)の電動機電圧VMを出力し、電動機8を正回転または反回転にPWM駆動する。
【0037】
電動機電流検出手段15は、電動機8と直列に接続された抵抗器またはホール素子等で電動機電流IMを電圧に変換して検出し、電動機電流IMに対応した電動機トルク信号IMFを制御手段13にフィードバック(負帰還)する。
【0038】
図2は本発明に係る電動パワーステアリング装置の一実施の形態基本要部ブロック構成図である。
図2において、電動パワーステアリング装置1の制御手段13は、目標トルク信号設定手段21、差演算手段22、駆動制御手段23、車両挙動判定手段24、補正手段25、ヨー角速度信号決定手段17を備える。
【0039】
目標トルク信号設定手段21は、ROM等のメモリに予め図8に示す操舵トルク信号T−目標トルク信号IMS特性データ、および図9に示す車速信号V−車速係数KT特性データを記憶しておき、操舵トルクセンサ12が検出した操舵トルク信号Tおよび車速センサ11が検出した車速信号Vに基づいて操舵トルク信号Tに対応した目標トルク信号(IMS)に車速信号Vに対応した車速係数KTを乗算し、目標トルク信号IMOとして補正手段25に供給する。
目標トルク信号IMOは、操舵トルク信号Tが同一でも車速信号Vが増加するにつれて減少するようにし、低車速領域における操舵の軽快性、高車速領域における操舵の安定性を確保するように設定する。
【0040】
差演算手段22は、減算器または減算機能を備え、補正手段25から供給される目標トルク信号IMHと、電動機電流検出手段15から供給される電動機トルク信号IMFとの差ΔI(=IMH−IMF)を演算し、差信号ΔI(=IMH−IMF)を駆動制御手段23に供給する。
【0041】
駆動制御手段23は、PIDコントローラ、電動機制御信号発生手段等を備え、差演算手段22から供給される差信号ΔIに比例(P)、積分(I)および微分(D)制御を施した後、これら比例・積分・微分(PID)制御を施した信号を混合した混合信号に基づいてハンドルの右操舵または左操舵に対応したPWMの電動機制御信号VOを発生し、電動機制御信号VOを電動機駆動手段14に供給する。
【0042】
車両挙動判定手段24は、滑り角差推定手段、方向判定手段、選択手段、アンダステア補正量出力手段、オーバステア補正量出力手段等を備え、車速センサ11から供給される車速信号V、ヨー角速度信号決定手段17から供給されるヨー角速度信号Yおよび切れ角センサ10から供給される切れ角信号δから車両の前輪滑り角(βf)と車両の後輪滑り角(βr)との差(角差βfr=βf−βr)を演算し、この角差βfr基づいてアンダステア補正量(DA)もしくはオーバステア補正量(DO)を発生し、補正信号IDを補正手段25に供給する。
【0043】
図3はこの発明に係る車両挙動判定手段の要部ブロック構成図である。
図3において、車両挙動判定手段24は、車速係数発生手段26、滑り角差推定手段30、選択手段31、方向判定手段32、アンダステア補正量出力手段33、オーバステア補正量出力手段34、乗算手段35、乗算手段36、加算手段37、角差変化量演算手段39、角差変化係数発生手段40を備える。
【0044】
車速係数発生手段26は、ROM等のメモリを備え、予め図13に示す車速信号Vと車速係数KRの特性データを記憶しておき、車速センサ11から車速信号Vが供給されると、対応する車速係数KRを読み出して乗算手段35および乗算手段36に提供する。
【0045】
滑り角差推定手段30は、メモリ、演算機能を備え、車速信号V、ヨー角速度信号Y、切れ角信号δおよびメモリに予め設定した車両の寸法パラメータL(例えば、ホイールベース)に基づいて数1から前輪滑り角(βf)と後輪滑り角(βr)との差βfr(=βf−βr)を演算し、角差信号βfrを選択手段31、方向判定手段32および角差変化量演算手段39に供給する。
【0046】
【数1】
βfr=Y*L/V−δ
【0047】
なお、前輪滑り角(βf)および後輪滑り角(βr)は、タイヤの向きを基準としてタイヤの進行方向への角度を表わすので、時計回り方向へハンドルを切った場合、前輪タイヤの向きに対してタイヤの進行方向は反時計回り方向となり、時計回り方向を正(プラス)とすると前輪滑り角(βf)の方向は負(マイナス)となる。
同様に、後輪滑り角(βr)も負(マイナス)となり、角差信号βfrの方向(符号)は後輪滑り角(βr)の絶対値|βr|が前輪滑り角(βf)の絶対値|βf|以上(|βr|≧|βf|)となるまでは、負(マイナス)で表わす。
【0048】
選択手段31は、ソフト制御のスイッチ機能を備え、方向判定手段32から供給される判定信号HOに基づいてスイッチを切り替え、滑り角差推定手段30から供給される角差信号βfrをアンダステア補正量出力手段33またはオーバステア補正量出力手段34に供給する。
【0049】
方向判定手段32は、符号比較機能を備え、滑り角差推定手段30から供給される角差信号βfrの方向信号Pと、ヨー角速度信号決定手段17から供給されるヨー角速度信号Yの方向信号Nに基づいて、方向信号Pと方向信号Nが一致(符号が同一)する場合には、例えばHレベルの判定信号HOを選択手段31に供給し、方向信号Pと方向信号Nが異なる(符号が異なる)場合には、例えばLレベルの判定信号HOを選択手段31に供給する。
【0050】
角差信号βfrの方向信号Pとヨー角速度信号Yの方向信号Nとが異なる(不一致)場合、例えばヨー角速度Yが時計回り方向であって、前輪の反時計回り方向滑り角(βf)が後輪の反時計回り方向滑り角(βr)よりも大きいような場合には、ヨー角速度信号Yの方向信号Nがプラス(+)で角差信号βfrの方向信号Pがマイナス(−)となり、車両挙動のアンダステア領域と判定して選択手段31はアンダステア補正量出力手段33を選択(実線表示)する。
【0051】
一方、角差信号βfrの方向信号Pとヨー角速度信号Yの方向信号Nとが同じ(一致)場合、例えばヨー角速度Yが時計回り方向であって、後輪の反時計回り方向滑り角(βr)が前輪の反時計回り方向滑り角(βf)よりも大きいような場合には、ヨー角速度信号Yの方向信号Nがプラス(+)で角差信号βfrの方向信号Pがプラス(+)となり、車両挙動のオーバステア領域と判定して選択手段31はオーバステア補正量出力手段34を選択(破線表示)する。
【0052】
アンダステア補正量出力手段33は、ROM等のメモリを備え、予め図10に示す角差信号の絶対値|βfr|とアンダステア補正量DAとの特性データを記憶しておき、選択手段31から角差信号βfrが供給されると、対応するアンダステア補正量DAを読み出し、アンダステア補正量信号DAを乗算手段35に供給する。
【0053】
オーバステア補正量出力手段34は、ROM等のメモリを備え、予め図11に示す角差信号の絶対値|βfr|とオーバステア補正量DOとの特性データを記憶しておき、選択手段31から角差信号βfrが供給されると、対応するオーバステア補正量DOを読み出し、オーバステア補正量信号DOを乗算手段36に供給する。
【0054】
車両挙動の強いアンダステア領域とは、現在の操舵状態からこれ以上ハンドルを切込んでも車両がこれ以上曲らない状態であり、ドライバに反力を強く感じさせてハンドルを戻した方が良いことを知らせる操舵領域である。
【0055】
なお、弱いアンダステア領域では反力の補正は不要であるので、図10に示すように角差信号βfrに対するアンダステア補正量DAの不感帯領域を大きく設定している。
【0056】
一方、車両の強いオーバステア領域とは、そのままでは車両がスピンする虞のある状態であり、ドライバに反力を強く感じさせてカウンタステアを行い易くしている。
【0057】
なお、アンダステア補正量DA、オーバステア補正量DOは、それぞれ図10、図11に示すように不感帯をそれぞれ独自に設定しているので、アンダステア状態またはオーバステア状態に応じた最適な補正を行うことができる。
【0058】
乗算手段35は、ソフト制御の乗算機能を備え、車速係数KR、アンダステア補正量信号DAおよび角差変化係数KVを乗算処理し、減算補正信号としてのアンダステア補正量信号IDA(=KR*KV*DA)を加算手段37に供給する。
【0059】
アンダステア補正量信号IDAは、図10示すアンダステア補正量DAを車速係数KRで補正するので、低車速領域ではアンダステア補正量DAを0として補正を行わず、中車速から高車速領域ではアンダステア補正量DAの特性と同じに設定することができる。
【0060】
乗算手段36は、ソフト制御の乗算機能を備え、車速係数KR、オーバステア補正量信号DOおよび角差変化係数KVを乗算処理し、減算補正信号としてのオーバステア補正量信号IDO(=KR*KV*DO)を加算手段37に供給する。
【0061】
オーバステア補正量信号IDOは、図11に示すオーバステア補正量DOを車速係数KRで補正するので、低車速領域ではオーバステア補正量DOを0として補正を行わず、中車速から高車速領域ではオーバステア補正量DOの特性と同じに設定することができる。
なお、オーバステア補正量DOは、アンダステア補正量DAに比べ、不感帯を狭く傾きも小さく設定する。
【0062】
加算手段37は、ソフト制御の加算機能を備え、乗算手段35から供給されるアンダステア補正量信号IDA(=KR*KV*DA)と、乗算手段36から供給されるオーバステア補正量信号IDO(=KR*KV*DO)を加算処理し、アンダステア補正量信号IDAまたはオーバステア補正量信号IDOのいずれか一方を補正信号IDとして図2に示す補正手段25に供給する。
【0063】
角差変化量演算手段39は、微分演算機能を備え、滑り角差推定手段30から供給される角差信号βfrに微分演算を施し、角差変化量信号DV(=dβfr/dt)を角差変化係数発生手段40に供給する。
【0064】
角差変化係数発生手段40は、ROM等のメモリを備え、予め図12に示す角差変化量DVと角差変化係数KVの特性データを記憶しておき、角差変化量信号DVが供給されると、対応した角差変化係数KVを読み出して乗算手段35および乗算手段36に供給する。
【0065】
角差変化量DVは、角差信号βfrの変化を表し、したがって車両挙動の時間的な変化を表わすので、車両挙動の急激な変化に対応したアンダステア補正量信号IDA(=KR*KV*DA)またはオーバステア補正量信号IDO(=KR*KV*DO)を発生することができる。
【0066】
図2に戻り、ヨー角速度信号決定手段17は、演算手段、選択手段を備え、車両の異なる位置に配置された2個のヨーレイトセンサ9,16から供給されるセンサ信号としてのヨー角速度信号YA,YBのうち車両挙動判定手段24からの補正量IDが小さくなる方を選択したり、またはヨー角速度信号YA,YBの平均値を演算してヨー角速度信号Yを車両挙動判定手段24に供給する。
【0067】
なお、2個のヨーレイトセンサ9,16を配置した理由は、ヨーレイトセンサ9,16の配置される位置の周辺温度の変化、飛び石によるヨーレイトセンサ9,16の取付け位置の振動等の外乱ノイズがヨー角速度信号YA,YBに混入するため、ヨー運動が小さな場合にはヨー角速度信号YA,YBへの外乱ノイズの影響が顕著となり、ヨー角速度信号YA,YBの精度が低下するので、外乱ノイズの影響を低減するために2個のヨーレイトセンサ9,16を互いに異なる位置に配置してヨー角速度信号YA,YBに混入するノイズを異なるようにし、かつヨー角速度信号YA,YBのうち車両挙動判定手段からの補正量が小さくなる方、または平均値を選択することによってノイズの影響を抑制するためである。
【0068】
図4はこの発明に係るヨー角速度信号決定手段の一実施の形態要部ブロック構成図である。
図4において、ヨー角速度信号決定手段17は、信号レベル比較手段18、選択手段19を備える。
【0069】
信号レベル比較手段18は、例えば演算機能、比較機能を有し、2個のヨーレイトセンサ9,16、切れ角センサ10および車速センサ11(図2参照)からそれぞれ供給されるヨー角速度信号YA,YB、切れ角信号δおよび車速信号Vに基づいてそれぞれヨー角速度信号YA,YBに対応した角差信号βfrA,βfrBを数1から演算(βfrA=YA*L/V−δ,βfrB=YB*L/V−δ)し、続いて図10および図11の特性マップから角差信号βfrA,βfrBのそれぞれに対応する概略の補正量IA,IB(アンダステア補正量DAもしくはオーバステア補正量DOのいずれか一方)を求める。
【0070】
続いて、概略補正量IA,IBの絶対値|IA|,|IB|の比γ(例えば、γ=|IA|/|IB|)を演算し、この比γが1以下(γ≦1)場合には、例えばHレベルの比較信号MOを選択手段19に供給し、比γが1を超える(γ>1)場合にはLレベルの比較信号MOを選択手段19に供給する。
【0071】
選択手段19は、切替機能を有し、信号レベル比較手段18から供給される比較信号MOがHレベルの場合(|IA|≦|IB|)にはヨー角速度信号YAを選択(実線表示側)し、比較信号MOがLレベルの場合(|IA|>|IB|)にはヨー角速度信号YBを選択(破線表示側)することにより、ヨー角速度信号YAまたはヨー角速度信号YBのうち車両挙動判定手段24からの補正量が小さくなる方をヨー角速度信号Yとして図2に示す車両挙動判定手段24に提供する。
【0072】
なお、車両挙動判定手段24からの補正量IDA,IDOと概略補正量IA,IBは異なるが、値の大小比較(比γの演算)のためだけであれば、結果は同じである。
また、前述の比γ(=|IA|/|IB|)が所定範囲を外れる(例えば、γ<0.8,1.2<γ)場合には、ヨーレイトセンサ9,16のいずれか一方が故障であると判断して図2に示す車両挙動判定手段24の動作を停止する。
【0073】
図5はこの発明に係るヨー角速度信号決定手段の別実施の形態要部ブロック構成図である。
図5において、ヨー角速度信号決定手段20は、平均値演算手段27を備える。
【0074】
平均値演算手段27は、2個のヨーレイトセンサ9,16(図2参照)からそれぞれ供給されるヨー角速度信号YA,YBの平均値{=(YA+YB)/2}の演算処理を行い、この平均値をヨー角速度信号Yとして図2に示す車両挙動判定手段24に提供する。
【0075】
このように、この発明に係る電動パワーステアリング装置1は、ヨーレイトセンサを2個設けるとともに、2個のヨーレイトセンサ9,16からの2つのセンサ信号(ヨー角速度信号YA,YB)に基づいてヨー角速度信号Yを決定するヨー角速度信号決定手段17を備え、ヨー角速度信号決定手段17でヨー角速度信号YA,YBの車両挙動判定手段からの補正量が小さくなる方、または平均値をヨー角速度信号Yとして選択するので、ヨー角速度信号Yを外乱ノイズの影響を少なくして精度良く検出することができる。
【0076】
図6はこの発明に係る制御手段の別実施の形態要部ブロック構成図である。
なお、本実施の形態では、図2に示すヨーレイトセンサ16に代えて横加速度センサ51を用いたものである。
また、ヨーレイトセンサ9と横加速度センサ51は、車両の互いに異なる位置に配置し、ヨーレイトセンサ9,横加速度センサ51の周辺温度の変化や飛び石によるセンサ取付け部の振動の変動等の外乱ノイズの影響によってセンサ検出値が異なるようにする。
【0077】
図6において、制御手段50はヨー角速度信号Yの検出に関するヨー角速度信号決定手段17およびヨー角速度推定手段52のみを示し、図2に示す目標トルク信号設定手段21、差演算手段22、駆動制御手段23、車両挙動判定手段24、補正手段25は省略する。
【0078】
ヨー角速度推定手段52は、演算手段を備え、横加速度センサ51が検出した車両の横加速度に対応して電気信号に変換された横加速度信号YGと車速センサ11が検出した車速信号Vが供給されると、横加速度信号YGと車速信号Vに基づいて数2で表わされる演算式から推定ヨー角速度YCを算出し、推定ヨー角速度信号YCをヨー角速度信号決定手段17に供給する。
【0079】
【数2】
YC=YG/V
【0080】
ヨー角速度信号決定手段17は、図4と同様に演算手段、選択手段を備え、車両の異なる位置に配置されたヨーレイトセンサ9から供給されるセンサ信号としてのヨー角速度信号YAとヨー角速度推定手段52から供給される推定ヨー角速度信号YCのうち車両挙動判定手段24からの補正量が小さくなる方を選択し、ヨー角速度信号Yを車両挙動判定手段24に供給する。
【0081】
また、ヨー角速度信号決定手段17の代わりに図5に示すヨー角速度信号決定手段20を用い、ヨー角速度信号YAと推定ヨー角速度信号YCの平均値を演算してヨー角速度信号Yとし、ヨー角速度信号Yを車両挙動判定手段24に供給してもよい。
【0082】
このように、この発明に係る電動パワーステアリング装置1は、横加速度センサ51とヨーレイトセンサ9を設けるとともに、横加速度センサ51が検出した横加速度信号YGと車速センサ11が検出した車速信号Vに基づいて推定ヨー角速度信号YCを推定するヨー角速度推定手段52を設け、ヨーレイトセンサ9からのヨー角速度信号YAと推定ヨー角速度信号YCとに基づいてヨー角速度信号Yを決定するヨー角速度信号決定手段17を備え、ヨー角速度信号決定手段17でヨー角速度信号YAと推定ヨー角速度信号YCのうち車両挙動判定手段からの補正量が小さくなる方、または平均値をヨー角速度信号Yとして選択するので、ヨー角速度信号Yを外乱ノイズの影響を少なくして精度良く検出することができる。
【0083】
図7はこの発明に係る制御手段の別実施の形態要部ブロック構成図である。
なお、本実施の形態では、図2に示すヨーレイトセンサ16に代えて2個の車輪速度センサ28,29を用いたものである。
【0084】
図7において、制御手段55はヨー角速度信号Yの検出に関するヨー角速度信号決定手段17およびヨー角速度推定決定手段56のみを示し、図2に示す目標トルク信号設定手段21、差演算手段22、駆動制御手段23、車両挙動判定手段24、補正手段25は省略する。
【0085】
ヨー角速度推定手段56は、演算手段を備え、車輪速度センサ28、29が検出した車両の車輪速度に対応して電気信号に変換された車輪速度信号VX,VYが供給されると、車輪速度信号VX,VYに基づいて数3で表わされる演算式から推定ヨー角速度YXを算出し、推定ヨー角速度信号YXをヨー角速度信号決定手段17に供給する。
【0086】
【数3】
YX=(VX−VY)/T
ただし、Tは左右の車輪の距離(トレッド)
【0087】
ヨー角速度信号決定手段17は、図4と同様に演算手段、選択手段を備え、ヨーレイトセンサ9から供給されるヨー角速度信号YAと車輪速度センサ28、29から供給されるセンサ信号としての推定ヨー角速度信号YXのうち車両挙動判定手段24からの補正量が小さくなる方を選択し、ヨー角速度信号Yを車両挙動判定手段24に供給する。
【0088】
また、ヨー角速度信号決定手段17の代わりに図5に示すヨー角速度信号決定手段20を用い、ヨー角速度信号YAと推定ヨー角速度信号YXの平均値を演算してヨー角速度信号Yとし、ヨー角速度信号Yを車両挙動判定手段24に供給してもよい。
【0089】
このように、この発明に係る電動パワーステアリング装置1は、車輪の速度を検出する2個の車輪速度センサ28,29と、2個の車輪速度センサ28,29からのそれぞれのセンサ信号(車輪速度信号)VX,VYに基づいてヨー角速度を推定するヨー角速度推定手段56を設けるとともに、このヨー角速度推定手段56からの推定ヨー角速度信号YXおよびヨーレイトセンサ9からのヨーレイト信号YAに基づいてヨー角速度信号Yを決定するヨー角速度信号決定手段17を設け、推定ヨー角速度信号YXとヨーレイトセンサ9からのヨーレイト信号YAのうち車両挙動判定手段24からの補正量が小さくなる方、または平均値をヨー角速度信号Yとして選択するので、ヨー角速度信号Yを外乱ノイズの影響を少なくして精度良く検出することができる。
【0090】
なお、図2、図6および図7に示すヨー角速度信号決定手段17は、ノイズを低減して精度の高いヨー角速度信号Yを決定することができ、このヨー角速度信号Yを用いて車両挙動のオーバステア状態およびアンダステア状態を早く判定することができる。
【0091】
また、図5に示すヨー角速度信号決定手段20に入力される2つのセンサ信号YAおよびYB、YAおよびYC、YAおよびYYの最小値および最大値を設定し、この最小値と最大値の範囲を規定した図示しないウインドコンパレータでセンサ信号YAおよびYB、YAおよびYC、YAおよびYXを比較することにより、2つのセンサの一方、または双方の故障を検出することができる。
【0092】
2つのセンサの一方、または双方の故障を検出した場合には、図2に示す車両挙動判定手段24から出力される補正量IDを禁止するよう構成する。
【0093】
図2に戻り、補正手段(減算手段)25は、減算機能を備え、目標トルク信号設定手段21から供給される目標トルク信号IMOから、車両挙動判定手段24から供給される補正量ID(IDA,IDO)を減算し、目標トルク信号IMOを車両挙動に応じた補正量IDで補正した目標トルク信号IMHを差演算手段22に供給する。
【0094】
図4に示すヨー角速度信号決定手段17、または図5に示すヨー角速度信号決定手段20を備え、車両挙動判定手段24に供給するヨー角速度信号Yに混入する外乱ノイズを抑えることができるので、図3に示すオーバステア補正量出力手段37のメモリに設定する角差信号|βfr|−オーバステア補正量DO(図11参照)の不感帯の幅を従来のβ2からβ1(β2−β1)に狭くすることができる。
【0095】
従って、角差信号|βfr|が小さい値でも、オーバステア補正量出力手段37からオーバステア補正量DOを出力することができるため、車両挙動がオーバステア状態になった時には、短時間でオーバステア状態を判定して補助トルクを変化させ、ドライバにハンドルを介してオーバステア状態を路面反力として伝えることができる。
なお、アンダステア状態の判定についても同様である。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る電動パワーステアリング装置は、2つのセンサからのセンサ信号に基づいて外乱ノイズの少ないヨー角速度信号Yを生成し、このヨー角速度信号Yに基づいて不感帯の小さい角差信号|βfr|に応じたオーバステア補正量DOおよびアンダステア補正量DAで補助トルクを変更するので、車両挙動がオーバステア状態およびアンダステア状態になった時には、短時間でオーバステア状態およびアンダステア状態を判定して補助トルクを変化させ、ドライバにハンドルを介してオーバステア状態およびアンダステア状態を路面反力として伝えることができ、車両挙動に応じたドライバの操舵性を向上することができる。
【0097】
また、2つのセンサは、2個のヨーレイトセンサ、ヨーレイトセンサと横加速度センサ、またはヨーレイトセンサと2個の車輪速度センサの組合せで外乱ノイズの少ないヨー角速度信号Yを生成することができる。
【0098】
さらに、2個のヨーレイトセンサまたはヨーレイトセンサと横加速度センサのそれぞれを車両の異なる位置に配置したので、ヨー角速度信号Yへ混入する外乱ノイズを低減し、精度の高いヨー角速度信号Yを検出することができる。
【0099】
また、2個のヨーレイトセンサ、ヨーレイトセンサと横加速度センサまたはヨーレイトセンサと2個の車輪速度センサが検出する2個のセンサ信号のうち車両挙動判定手段からの補正量が小さくなる方、または2個のセンサ信号の平均値をヨー角速度信号Yに決定するので、ヨー角速度信号Yへ混入する外乱ノイズを低減し、精度の高いヨー角速度信号Yを検出することができる。
【0100】
よって、外乱ノイズを低減した精度の高いヨー角速度信号Yに基づいて車両挙動の変化を短時間で路面反力として伝え、ドライバの操舵性を向上させて良好な操舵フィーリングが得られる電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る電動パワーステアリング装置の全体構成図
【図2】本発明に係る電動パワーステアリング装置の一実施の形態基本要部ブロック構成図
【図3】この発明に係る車両挙動判定手段の要部ブロック構成図
【図4】この発明に係るヨー角速度信号決定手段の一実施の形態要部ブロック構成図
【図5】この発明に係るヨー角速度信号決定手段の別実施の形態要部ブロック構成図
【図6】この発明に係る制御手段の別実施の形態要部ブロック構成図
【図7】この発明に係る制御手段の別実施の形態要部ブロック構成図
【図8】操舵トルク信号T−目標トルク信号IMS特性図
【図9】車速信号V−車速係数KT特性図
【図10】角差信号|βfr|−アンダステア補正量DA特性図
【図11】角差信号|βfr|−オーバステア補正量DO特性図
【図12】差変化量DV−角差変化係数KV特性図
【図13】車速信号V−車速係数KR特性図
【符号の説明】
1…電動パワーステアリング装置、2…ステアリングホイール、9,16…ヨー角速度センサ、10…切れ角センサ、11…車速センサ、12…操舵トルクセンサ、13,50,55…制御手段、17,20…ヨー角速度信号決定手段、18…信号レベル比較手段、19…選択手段、21…目標トルク信号設定手段、24…車両挙動判定手段、25…補正手段、27…平均値演算手段、28,29…車輪速度センサ、51…横加速度センサ、52,56…ヨー角速度推定手段。

Claims (7)

  1. ステアリング系の操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、ステアリング系に補助トルクを付加する電動機と、車両のヨー角速度を検出するヨーレイトセンサと、少なくとも前記ヨーレイトセンサからのセンサ信号に基づいて前後輪の滑り角差を推定し、推定した前後輪の滑り角差に基づいて車両挙動を判定して補正量を出力する車両挙動判定手段、少なくとも前記操舵トルクセンサからの操舵トルク信号に基づいて目標トルク信号を設定する目標トルク設定手段、この目標トルク設定手段からの目標トルク信号を前記車両挙動判定手段からの補正量で補正する補正手段を備え、前記電動機の駆動を制御する制御手段と、からなる電動パワーステアリング装置において、
    前記ヨーレイトセンサを2個設けるとともに、2個のヨーレイトセンサからの2つのセンサ信号に基づいてヨー角速度信号を決定するヨー角速度信号決定手段を設け、このヨー角速度信号決定手段からのヨー角速度信号を前記車両挙動判定手段に供給することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記2個のヨーレイトセンサを車両の互い異なる位置に配置したことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
  3. ステアリング系の操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、ステアリング系に補助トルクを付加する電動機と、車両のヨー角速度を検出するヨーレイトセンサと、少なくとも前記ヨーレイトセンサからのセンサ信号に基づいて前後輪の滑り角差を推定し、推定した前後輪の滑り角差に基づいて車両挙動を判定して補正量を出力する車両挙動判定手段、少なくとも前記操舵トルクセンサからの操舵トルク信号に基づいて目標トルク信号を設定する目標トルク設定手段、この目標トルク設定手段からの目標トルク信号を前記車両挙動判定手段からの補正量で補正する補正手段を備え、前記電動機の駆動を制御する制御手段と、からなる電動パワーステアリング装置において、
    車両の横加速度を検出する横加速度センサと、この横加速度センサからの横加速度信号に基づいてヨー角速度を推定するヨー角速度推定手段を設けるともに、このヨー角速度推定手段が推定した推定ヨー角速度信号と前記ヨーレイトセンサからのセンサ信号に基づいてヨー角速度信号を決定するヨー角速度信号決定手段を設け、このヨー角速度信号決定手段からのヨー角速度信号を前記車両挙動判定手段に供給することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  4. 前記ヨーレイトセンサと前記横加速度センサを車両の互い異なる位置に配置したことを特徴とする請求項3記載の電動パワーステアリング装置。
  5. ステアリング系の操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、ステアリング系に補助トルクを付加する電動機と、車両のヨー角速度を検出するヨーレイトセンサと、少なくとも前記ヨーレイトセンサからのセンサ信号に基づいて前後輪の滑り角差を推定し、推定した前後輪の滑り角差に基づいて車両挙動を判定して補正量を出力する車両挙動判定手段、少なくとも前記操舵トルクセンサからの操舵トルク信号に基づいて目標トルク信号を設定する目標トルク設定手段、この目標トルク設定手段からの目標トルク信号を前記車両挙動判定手段からの補正量で補正する補正手段を備え、前記電動機の駆動を制御する制御手段と、からなる電動パワーステアリング装置において、
    車両の左右の車輪の速度を検出する2個の車輪速度センサと、2個の車輪速度センサからのそれぞれのセンサ信号に基づいてヨー角速度を推定するヨー角速度推定手段を設けるとともに、このヨー角速度推定手段が推定した推定ヨー角速度信号と前記ヨーレイトセンサからのセンサ信号に基づいてヨー角速度信号を決定するヨー角速度信号決定手段を設け、このヨー角速度信号決定手段からのヨー角速度信号を前記車両挙動判定手段に供給することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  6. 前記ヨー角速度信号決定手段は、2つのヨーレイトセンサからの2つのセンサ信号、もしくはヨーレイトセンサからの1つのセンサ信号と推定ヨー角速度信号のうち、前記車両挙動判定手段からの補正量が小さくなる方をヨー角速度信号に決定することを特徴とする請求項1、請求項3または請求項5記載の電動パワーステアリング装置。
  7. 前記ヨー角速度信号決定手段は、2つのヨーレイトセンサからの2つのセンサ信号、もしくはヨーレイトセンサからの1つのセンサ信号と推定ヨー角速度信号、の平均値をヨー角速度信号に決定することを特徴とする請求項1、請求項3または請求項5記載の電動パワーステアリング装置。
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