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JP3627779B2 - 電気自動車用駆動装置 - Google Patents

電気自動車用駆動装置 Download PDF

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JP3627779B2
JP3627779B2 JP35542496A JP35542496A JP3627779B2 JP 3627779 B2 JP3627779 B2 JP 3627779B2 JP 35542496 A JP35542496 A JP 35542496A JP 35542496 A JP35542496 A JP 35542496A JP 3627779 B2 JP3627779 B2 JP 3627779B2
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正幸 竹中
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  • General Details Of Gearings (AREA)
  • Motor Or Generator Cooling System (AREA)
  • Arrangement Of Transmissions (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車用駆動装置に関し、特に、モータと、その動力を車輪へ伝達するギヤ部とを組み合わせた電気自動車用駆動装置の潤滑手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車用駆動装置の1形態として、モータと、その動力を車輪へ伝達するギヤ部とを組み合わせた形式のものがある。こうした形式の駆動装置では、モータを空冷するか油冷するかはともかくとして、ギヤ部を潤滑しなければならない。ところで、通常、ディファレンシャルギヤを含む駆動装置のギヤ部には、車両停止時には、次回の発進に備えて、十分な潤滑油量が確保されていなければならないため、ギヤケース内のオイルレベルは、ディファレンシャルギヤケース全体が油中に埋没する程度まで高くする必要がある。これに対して、車両走行時は、ギヤ部の各箇所へ潤滑油が十分に行き渡るため、ギヤケース内のオイルレベルを上記のように高くする必要はなく、逆にギヤ部の攪拌ロスを低減するために、必要最小限のレベルまで下げる必要がある。こうした事情から、米国特許第5,295,413号明細書に開示の技術では、ギヤケースの上部にオイルリザーバを設け、該リザーバへの油の給排により、上記のようなギヤケースのオイルレベルの調整を行うようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電気自動車用駆動装置には、消費電力の削減による走行距離の向上と、車両搭載性の問題から、軽量化とコンパクト化の強い要求がある。この面から上記従来の技術をみると、該技術では、ギヤケースにオイルリザーバを配設しているので、ギヤ部を収容するのに必要なスペースに加えてオイルリザーバのためのスペースを必要とするため、ギヤケースが大型化され、それに伴い駆動装置の重量も増加する問題点がある。
【0004】
そこで、本発明は、別途のオイルリザーバを必要としない軽量コンパクトな構成で、車両停車時における潤滑油量を確保しながら、車両走行時におけるギヤ部の攪拌ロスの低減を可能にした電気自動車用駆動装置を提供することを第1の目的とする。
【0005】
次に、本発明は、上記の目的を達成するための油の循環を、そのための駆動ロスを生じさせることなく可能とすることを第2の目的とする。
【0006】
更に、本発明は、車両走行時におけるモータ室のオイルレベルを適正に保ち、ロータの回転による攪拌ロスを防ぎながらモータを冷却することを第3の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するため、本発明は、ステータと、該ステータ内で回転するロータシャフトを有するロータとからなるモータと、前記ロータシャフトの回転を車輪へ伝達するギヤ部と、前記モータ及びギヤ部を収納するケースと、からなり、該ケースは、前記モータを収納するモータ室と前記ギヤ部を収納するギヤ室とを隔てる隔壁を有し、該隔壁には、前記モータ室の前記ステータを収納するケース下方部とギヤ室とを連通するオリフィスが形成され、前記ギヤ室の油を前記モータ室に供給する供給手段が設けられ、該モータ室の油は前記ケース下方部に回収されることを特徴とする。具体的には、前記供給手段は、前記ギヤ部の回転に応じて前記ギヤ室の油を前記モータ室に供給する構成とすることができる。
【0008】
また、上記第2の目的を達成するため、前記供給手段は、前記ギヤ部の回転により掻き上げられるギヤ室の油を捕集して前記モータ室に導くオイルレシーバを有する構成とされる。
【0009】
更に、上記第3の目的を達成するため、前記隔壁の前記オリフィスより上方、かつ、前記ロータの周面最下方位置と同レベルの位置に、前記モータ室とギヤ室とを連通する窓を形成した構成が採られる。
【0010】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1に記載の構成では、供給手段の作動によりギヤ室の油がモータ室に供給され、モータ室に供給された油は、隔壁のオリフィスを通ってギヤ室に帰還される。このとき、供給手段によりモータ室に供給される油量の方が、オリフィスを通ってギヤ室に帰還される油量よりも大きいためモータ室に油が滞留し、ギヤ室のオイルレベルが低下する。これに対して、供給手段が停止すると、ギヤ室の油をモータ室に供給しなくなるが、モータ室の油は隔壁のオリフィスを通ってギヤ室に帰還され続ける。そのため、モータ室の油は減少し、ギヤ室のオイルレベルが上昇する。したがって、供給手段の作動で、ギヤ室のオイルレベルを低下させることによりギヤ部の攪拌ロスを低減することができ、供給手段の停止で、ギヤ室のオイルレベルを上昇させることにより、ギヤ部の潤滑油量を確保することができる。それゆえ、モータ室をオイルリザーバとして利用することができ、ギヤ室にオイルリザーバを配設する必要がなくなり、ギヤケースをコンパクトにすることができる。更に、車両走行時にモータ室に油を溜めることができるので、ステータをドブ漬け状態でオイル冷却して、モータの冷却効果を高めることができる。そして、請求項2に記載の構成では、車両の走行によるギヤ部の回転に応じたオイル供給が成されるため、車両の走行時は、モータ室側の油量の増加でモータの冷却効果が高まりるとともにギヤ室のオイルレベルの低下で攪拌ロスが低減され、車両停止時は、ギヤ室のオイルレベルが高まることで、発進に備えたギヤ部の潤滑油量が確保される。
【0011】
また、請求項に記載の構成では、ギヤ部の回転により掻き上げられるギヤ室の油を、オイルレシーバに捕集してモータ室に供給しているので、供給手段の構造を簡素化することで、電気自動車用駆動装置をコンパクトにすることができる。
【0012】
更に、請求項に記載の構成では、隔壁のオリフィスより上方で、かつ、ロータの周面最下方位置と同レベルの位置に、モータ室とギヤ室とを連通する窓を設けているので、モータ室に溜められた油はロータが浸るレベルになる手前で窓からギヤ室に帰還される。したがって、前記窓の開設により、モータ室のオイルレベルをロータが浸らないレベルに設定することができ、モータの冷却を行いながら、ロータの攪拌ロスを防ぐことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿い、本発明の実施形態を説明する。まず図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示す。この装置の概略構成から説明すると、図1に軸方向断面を展開して示すように、この駆動装置は、ステータ4と、ステータ4内で回転するロータシャフト2を有するロータ3とからなるモータと、ロータシャフト2の回転を図示しない車輪へ伝達するギヤ部9と、モータ1及びギヤ部9を収納するケース(本形態では、後記するようにモータケース10とギヤケース90とを結合して構成される)とから構成されている。ケースは、モータ1を収納するモータ室mとギヤ部9を収納するギヤ室gとを隔てる隔壁12を有し、隔壁12には、モータ室mの下方部とギヤ室gとを連通するオリフィス53が形成され、更に、ギヤ部9の回転に応じてギヤ室gの油をモータ室mに供給する供給手段5が設けられている。供給手段5は、ギヤ部9の回転により掻き上げられるギヤ室gの油を捕集してモータ室mに導くオイルレシーバ51を有する。そして、隔壁12のオリフィス53より上方、かつ、モータ1のロータ3の周面最下方位置と同レベルの位置に、モータ室mとギヤ室gとを連通する窓52が形成されている。
【0014】
以下、上記各部について逐次説明する。図1に示すように、モータ1は、モータケース10に両端をベアリング11を介して回転自在に支持されたロータシャフト2と、ロータシャフト2上に回り止め嵌合され、極数に対応する複数の永久磁石31が配設されたロータ3と、モータケース10に外周をキー止め等で回り止め嵌合され、ロータ3の外周を取り巻くコア40と、コア40のスロットにコイル部を挿通され、コア40の軸方向両端から張り出すコイルエンド41を有するステータ4とを備える。なお、図において、符号6はロータシャフト2の一端に取付けられて、インバータによるモータ制御のためにロータシャフト2の回転から磁極位置を検出するレゾルバを示す。
【0015】
ギヤ部9は、上記モータ1のロータシャフト2の回転を減速し、トルク増幅して、同方向回転として車輪に伝達すべく、カウンタギヤ機構とディファレンシャル機構とから構成されている。カウンタギヤ機構は、両端をベアリングを介してギヤケース90に支持されたカウンタ軸93と、該軸の一端側に固定され、モータ1のロータシャフト2の一端に固定された出力歯車91に噛み合う大径の歯車92と、カウンタ軸93の他端側に一体に形成された小径の歯車94とから構成されている。また、ディファレンシャル機構は、周知のベベルギヤからなる差動ギヤと、それを収容するデフケース96と、該ケース96に固定されて、上記歯車94に噛み合うリングギヤ95とから構成されており、デフケース96の両端は、ベアリングを介してギヤケース90に支持されている。そして、デフケース96内の差動ギヤはユニバーサルジョイントを介して、図示しない左右の車軸に連結されている。
【0016】
このような構成からなるモータ1及びギヤ部9をそれぞれ収容するモータケース10及びギヤケース90は、相互に結合され、一体化されている。こうして一体化されたモータ1とギヤ部9の各ギヤの位置関係は、図2に示すようになり、モータケース10の位置がギヤケース90の位置より若干上方にずれた配置とされている。なお、図において、各歯車の位置はそれらの外形を示す輪郭線のみで略示されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、供給手段5は、この実施形態では、ロータシャフト2の軸内油路22の一端に、モータケース10に接続されたギヤケース90側から挿入された給油パイプ50と、そのギヤケース90側の反対端に接続されたオイルレシーバ51とから構成されている。給油パイプ50は、L字状に屈曲し、屈曲部近傍をケースに支持され、反対端部をオイルレシーバ51を介してケース90に取付け支持されている。
【0018】
図3に詳細を示すように、モータ1内の油路は、ロータシャフト2に形成され、軸内油路22及びそれに連通された径方向油路23と、コア30に形成され、軸方向に貫通する軸方向油路32と、プレート21に形成され、ロータシャフト2の径方向油路23とコア30の軸方向油路32とを連通する連絡油路24と、コア30の軸方向油路32に連通され、ステータ4のコイルエンド41の径方向内方に開口する油孔25と、ロータシャフト2の軸内油路22に油を供給する供給手段5(図1及び図2参照)とから構成されている。
【0019】
図4に詳細を示すように、オイルレシーバ51は、この形態では、上面が開放された箱状のものとされ、図2に示すリングギヤ95とカウンタ軸の大径の歯車92の外周部との干渉を避けながら、それらの回転により掻き上げられた油を確実に捕集できるように、対角位置の角部を切り欠いた構成とされている。そして、オイルレシーバ51は、両歯車95,92の外周部に交互に跨がるようにリングギヤ95と大径の歯車92の外周部に接近させて、しかも捕集した油を給油パイプ50を経てロータシャフト2の軸内油路22に、格別の送り込み手段を用いずに導入すべく、軸内油路22の軸心と同レベルで捕集できるように、所定の高さに位置付けられて、ケース90に固定されている。
【0020】
図2に戻って、モータケース10とギヤケース90とは、ギヤケース10の端壁に形成された窓52で相互に連通されており、この窓52の下側の縁は、モータケース10の下方に回収される油の、モータケース10側のオイルレベルを、図に点線で示すロータ3の外周最下方に保つ堰として作用し、モータケース10の下方部をオイルリザーバとして機能させることを可能としている。更に、両ケース10,90は、窓52の下方に形成された小径のオリフィス53で連通されており、このオリフィス53は、モータケース10下方への油の回収が停止した状態で、回収された油を徐々にギヤケース90側へ逃がし、両ケースのオイルレベルを均衡させる機能を果たす。
【0021】
このように構成された駆動装置において、潤滑と冷却を兼ねる油は、主としてギヤケース90内に、図2に中段の点線で示すレベルLmまで入れられている。したがって、この状態では、ギヤ部9に通常走行時より大量の潤滑を必要とする発進に備えたオイルレベルが確保される。この状態からモータ1の運転が開始されると、それにより駆動されるリングギヤ95が、図2において反時計回りに回転し、カウンタ軸の大径の歯車92が時計回り方向に回転し、それにより掻き上げられた油がオイルリザーバ51に捕集される。捕集された油は、給油パイプ50に導かれてギヤケース90側からロータシャフト2の軸内油路22内に供給される。
【0022】
図3には、モータ側の油の流れが矢印で示されており、上記のようにしてロータシャフト2の軸内油路22に供給された油は、ロータシャフト2の回転による遠心力で軸内油路22の周面に沿って流れ、それぞれの径方向油路23に入り、プレート21の連絡油路24、コア30の軸方向油路32を経て、プレート21の油孔25からロータ3の遠心力によりそれぞれのコイルエンド41に吹きかけられる。したがって、油はコア30の軸方向油路32を一方通行で流れる際に、コア30を確実に冷却し、油孔25から放出されて、ステータ4の両端のコイルエンド41に供給されてそれらを確実に冷却する。
【0023】
このようにモータを冷却した後の油は、モータケース10を伝わり、あるいは各部から滴下して、モータケース10の下方に集まり、窓52の下面レベルを越えた分がギヤケース90側に戻る。なお、コア40を挟んで反ギヤケース接続側のモータケース10内に集まった油は、この形態では、コア40をモータケース10に回り止め固定すべくモータケース10に形成された複数のキー溝の中の不使用の溝を利用して窓52側へ導かれるようにしている。このようにしてモータの運転中は、上記の各油路等に油が流れているので、ギヤケース90内のオイルレベルは図2の最下方の点線のレベルLlまで低下し、モータケース10内のオイルレベルは、ロータ3の回転により攪拌されずにステータ4を最大限に冷却できる最上段の点線のレベルLhを保つ。そして、モータ1の運転を停止すると、オリフィス53を通る油の流れで、両オイルレベルが徐々に均衡し、やがて図の中段に示す点線のレベルLmとなる。
【0024】
以上、詳述したように、この電気自動車用駆動装置では、車両走行中は、モータケース10の下方部をオイルリザーバとして使用し、かつ、停止時には、車両発進に備えてギヤ部9に油を戻すために、モータケース10の最下部にオリフィス53を設けることにより、車両走行中は、ギヤ部9のオイルレベルを下げ、ギヤの攪拌ロスを低減し、かつ、モータケース10のオイルレベルを上げてステータ4とそのコイルエンド部41を油に浸すことができ、モータ1の冷却効率を向上させることができる。また車両停車中は、オリフィス53によって油がモータ1からギヤ部9に移行し、ギヤ部9のオイルレベルを上げて発進時の潤滑を確保することができる。更に、こうした構成によりケース容量をリザーバ設置のために拡大することなく、油量を十分に確保して、熱容量を大きくすることができる。
【0025】
次に、図5〜図9は、本発明の第2実施形態を示す。この装置は、前記第1実施形態の装置を更にコンパクト化すべく、ロータシャフト2と差動ギヤの軸との軸間距離を可及的に詰めた配置とされており、これに伴い前形態において別体とされていたモータケースとギヤケースを、本形態では一体のものとして、軽量化をも達成している。したがって、本形態は、前形態と概略構成において同様のものであるが、このケース形態の変更に伴う細部構成において、いくつかの相違点がある。以下、第1実施形態と実質的に対応する部分については、同様の参照符号を付して説明に代え、相違点を主として説明する。
【0026】
一体化されたケース本体10A内に収容されたモータ1及びギヤ部9は、図6に実際の側面を示すように、モータ1のロータシャフト2がギヤ部9のデフケース96内の差動ギヤ軸線の実質上上方に位置する配置とされている。そして、図5に示すように、ケース10Aのモータ室m側は、フロントケース10Cで閉じられ、ギヤ室g側は、リヤケース10Bで閉じられている。これにより、モータ1のロータシャフト2は、ケース本体10Aとフロントケース10Cに両端をベアリング11を介して回転自在に支持されている。また、カウンタギヤ機構のカウンタ軸93と、デフケース96の両端は、ベアリングを介してケース本体10Aとリヤケース10Bに支持され、デフケース96内の差動ギヤにスプライン係合で連結された一方のヨーク軸97(図5に想像線で示す)は、その一端部をデフケース96の軸部を介して、また他端部を直接ベアリング13,14によりケース本体10Aに支持されている。また、カウンタギヤ機構における大径の歯車92と小径の歯車94の軸方向にみた位置関係は、第1実施形態の配置に対して逆転しており、これによりディファレンシャル機構の位置もモータ1側に寄せられ、軸方向のコンパクト化も達成している。
【0027】
図6〜図8に示すように、供給手段5は、この実施形態では、ケース本体10Aとリヤケース10Bとに渡ってケース壁を利用して形成され、ケース本体10Aの隔壁12の端面12a側とリヤケース10Bのケース本体10Aとの合わせ面との間に、実質上それらの面間距離に相当する幅で、該ギヤ95の周面上方に形成されたオイルレシーバ51と、ロータシャフト2の軸内油路22の一端に、リヤケース10B側から挿入された給油パイプ50と、両者を連通させるケース内油路50a〜50cとから構成されている。ケース内油路50aは、いわばリングギヤ95をギヤポンプのギヤとするポンプ吐出路を構成し、オイルレシーバ51と同幅で、それに連通する上方に向かうに従って油路面積が狭まる油路とされている。オイルレシーバ51は、その底壁をリングギヤ95の周面近傍上部に位置する平面とし、一方の側壁をケース内油路50aの一側面とし、他方の側壁をロータ軸2の外周に嵌まる出力歯車91の軸支持ベアリング11の外周に沿う円弧状面とする小容積のくさび状オイルリザーバを構成している。なお、オイルレシーバ51の底壁には、小径の油孔51aが形成されており、この油孔51aは、デフケース96を支持する一方のベアリング16の潤滑油路に、図示しない経路で連通されている。ケース内油路50bは、オイルレシーバ51の上方のレベルからリヤケース10B内を軸方向に延びる矩形断面の油路として形成されており、円形断面の径方向油路50cでロータシャフト2の軸端まで延び、そこに嵌め込まれて、抑え板50’で抜け止め固定された給油パイプ50で軸内油路22に連結されている。
【0028】
なお、この形態では、ロータシャフト2の軸線方向の浮動を防止すべく、出力歯車91の軸端部内周にスナップリング止めされたスプリングシート15aとロータシャフト2の軸端との間に圧縮状態で配設されたコイルスプリング15の螺旋条の回転を利用した油の送り込み手段が配設されている。また、ギヤ室gの下方は、油溜まりを確保すべく、リングギヤ95の幅より軸方向に相当量広げられているため、リングギヤ95による掻き上げ効果を向上すべく、リングギヤ95の両側面外周側に沿うように、一対のサイドプレート54,55が添設されており、これらはケース本体10Aとリヤケース10Bとは別体の環状のプレス板で構成され、図6及び図8にそれぞれの平面形状を示すように、掻き上げ効果に大きく関与しない上方部分に当たる周方向の一部を切り欠かれており、それぞれボルト締めでケース本体10Aとリヤケース10Bに取り付けられている。
【0029】
モータ1内の油路については、前形態と本質的に同様に構成されているが、細部構成では若干相違しており、図5に示すように、この形態では、軸内油路22に連通する径方向油路23は、コア30の一側のみに設けられ、そられがプレート21の連絡油路24を介してコア30の各軸方向油路32に連通され、ステータ4のコイルエンド41の径方向内方に開口する油孔25に通じている。また、モータ室mの形状に関しては、前形態と異なり、ケース本体10Aにモータ室mとギヤ室gとを形成することによって生じる連結スペースを利用して、モータ室m端部下方に、主としてフロントケース10Cの下方部を張り出させて形成した、モータ室m側の油溜まり56が確保されている。
【0030】
この形態においても、図6に示すように、モータ室mとギヤ室gとは、ケース本体10Aの端面12a側の隔壁12に形成された窓52で相互に連通されており、この窓52の下側の縁は、モータ室mの下方に回収される油の、モータ室m側のオイルレベルを、図に点線で示すロータ3の外周最下方に保つ堰として作用し、モータ室mの下方部をオイルリザーバとして機能させることを可能としている。ただし、この形態では、窓52の下面には傾斜が付されている。この傾斜は、本装置の車載状態における車両の登坂路走行を配慮したもので、ケース本体10Aが前上がり(図6に車両搭載状態での本装置の前方向を符号Fで示す)に傾斜した場合でも、モータ室mのオイルレベルを下げることなく、一定に保つためのものである。更に、モータ室mとギヤ室gとは、前形態と異なり、ケース本体10Aの周面12b側の隔壁12に、端面12a側の隔壁12に形成された窓52より下方のレベル位置(図9参照)に形成された小径のオリフィス53で連通されている。このオリフィス53の作用は、前形態のものと同様であり、モータ室m下方への油の回収が停止した状態で、回収された油を徐々にギヤ室g側へ逃がし、両室のオイルレベルを均衡させるものである。
【0031】
この形態では、前形態におけるステータ4の両端を跨ぐキー溝を利用した戻し油路に機能上相当する第1の戻し油路の他に、それと並列する別系統の第2の戻し油路が設けられている。第1の戻し油路は、図5及び図9に示すように、ステータ周面の最下部に沿い、ケース本体を外方に膨出させてステータ周面に沿い軸方向に延びる戻し油路50dとして構成されている。第2の戻し油路は、ギヤ室g内におけるユニバーサルジョイントのヨーク軸97収容部を通る油路として構成されており、ヨーク軸97の両端を支持するそれぞれのベアリング13,14のアウタレース外周を跨ぐ軸方向の切り欠き50e,50fをオリフィス53の下流側に設けた構成とされている。なお、上記油溜まり56の油路50dへの入口部には、油温に応じたモータ制御を行うための油温センサ7が配設されている。
【0032】
このように構成された駆動装置において、潤滑と冷却を兼ねる油は、前形態の場合と同様に、主としてギヤ室g内に、図6に中段の点線で示すレベルLmまで入れられている。したがって、この状態で、ギヤ部9に通常走行時より大量の潤滑を必要とする発進に備えたオイルレベルが確保される。この状態からモータ1の運転が開始されると、それにより駆動されるリングギヤ95が、図6において反時計回りに回転し、それにより掻き上げられた油が、ケース本体10Aの内周面に沿う油路50aを押し上げられてオイルレシーバ51に送り込まれる。したがって、この形態では、前形態のように掻き上げられた飛沫状の油を受けるのと異なり、オイルレシーバ51に遠心力で強制的に送り込む方式となるため、ケース本体10Aの内周面に付着した油をも巻き込む流れで、供給効率の大幅な増加が得られるようになる。こうしてオイルレシーバ51に集められた油は、リヤケース10B内の油路50b,50cを経て給油パイプ50に導かれ、ロータシャフト2の軸内油路22内に供給される。その後のモータ側での油の流れと、それによる冷却作用は、前記第1実施形態で説明したのと同様である。
【0033】
このようにモータ1を冷却した後の油は、前形態と同様に、ケース本体10Aを伝わり、あるいは各部から滴下して、ケース本体10Aの下方に集まり、主として上記第1の戻し油路を通る流れとなり、窓52の下面レベルを越えた分がギヤ室g側に戻る。この形態でも、コア40を挟んで反ギヤ室側のケース本体10A内に集まった油は、油路50dを通り窓52側へ導かれ、同様にギヤ室g側に戻る。このようにしてモータの運転中は、上記の各油路等に油が流れているので、ギヤ室g内のオイルレベルは図6の最下方の点線のレベルLlまで低下し、ケース本体10A内のオイルレベルは、ロータ3の回転により攪拌されずにステータ4を最大限に冷却できる最上段の点線のレベルLhを保つ。なお、本形態では、窓52と略同等のレベルに位置するカウンタ軸93の軸端に、隔壁12の端面12aを貫通する開口が設けられており、この開口を通ってギヤ室gに戻る油でカウンタ軸93のベアリングが潤滑される。
【0034】
この形態では、モータ1の運転を停止すると、オイルレシーバ51内の油は、その底壁の油孔51aからベアリング16を経てギヤ室gに戻され、モータ室mの油溜まり56内の油は、オリフィス53を通り、上記第2の戻し油路の流れとしてギヤ室gに戻る。この場合、オリフィス53を通った油は、ギヤ室gの端部、油路50e、ヨーク軸97の収容部、油路50fを通ってギヤ室gに戻り、両オイルレベルが徐々に均衡し、やがて図の中段に示す点線のレベルLmとなる。
【0035】
以上、詳述したように、この第2実施形態の駆動装置では、前形態と同様の効果を得ることができるが、それに加えて、オイルレシーバ51の油の捕集効果が向上する利点が得られる。また、窓52の下面を前傾させているので、登坂路においても窓52の下面のレベルは実質的に一定に保たれ、車両の前後傾斜がオイルレベルに与える影響を排除することができる。更に、油温センサ7をモータ室mの油溜まり56に配設して温度検出を行っているので、モータ冷却後の実体的な油温から各時点のモータ負荷を的確に把握したモータ制御を行うことができる利点も得られる。
【0036】
最後に、図10は、上記第2実施形態における供給手段5を全てケースと一体化した変形形態を示す。この形態では、前形態において供給手段5の油路を構成する油路パイプ50に相当する部分をリヤケース10Bと一体化し、リヤケース10Bの端部から延び、出力歯車91の軸孔に嵌挿された管状油路50gとして構成している。更に、スプリング15は、出力歯車91の軸孔の端部より内方の管状油路50gの端面付近まで位置をずらして軸孔に嵌合させたスナップリングを直接スプリングシート15aとする構成とされている。こうした構成は、管状油路50gの外周と、出力歯車91の軸孔との間の隙間を狭くして供給油路からの油洩れを減少させるのに有効であり、上記形態における油路パイプ50と、その抑え板50’をなくすことができるため、部品点数の減少と、それに伴う組み立て工数の削減の点で有利である。
【0037】
以上、本発明を実施形態に基づき詳説したが、本発明はこれらの実施形態に限るものではなく、特許請求の範囲に記載の事項の範囲内で種々に具体的構成を変更して実施することができる。特に、供給手段については、モータ又はギヤ部の回転により駆動されるオイルポンプで構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気自動車用駆動装置の軸方向展開断面図である。
【図2】図1のA−A方向矢視図である。
【図3】上記駆動装置のモータ内油路配置を示すロータ及びステータの軸方向断面図である。
【図4】上記駆動装置における供給手段のオイルレシーバを詳細に示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電気自動車用駆動装置の軸方向展開断面図である。
【図6】図5のB−B方向矢視図である。
【図7】図6のC−C方向矢視断面図である。
【図8】図5のD−D方向矢視図である。
【図9】図5のE−E方向矢視図である。
【図10】上記第2実施形態の供給手段を一部を変更した軸方向部分断面図である。
【符号の説明】
1 モータ
2 ロータシャフト
3 ロータ
4 ステータ
5 供給手段
9 ギヤ部
10 モータケース(ケース)
10A ケース本体(ケース)
10B リヤケース(ケース)
10C フロントケース(ケース)
12 隔壁
51 オイルレシーバ
52 窓
53 オリフィス
90 ギヤケース(ケース)
m モータ室
g ギヤ室

Claims (4)

  1. ステータと、該ステータ内で回転するロータシャフトを有するロータとからなるモータと、
    前記ロータシャフトの回転を車輪へ伝達するギヤ部と、
    前記モータ及びギヤ部を収納するケースと、
    からなり、
    該ケースは、前記モータを収納するモータ室と前記ギヤ部を収納するギヤ室とを隔てる隔壁を有し、
    該隔壁には、前記モータ室の前記ステータを収納するケース下方部とギヤ室とを連通するオリフィスが形成され、
    前記ギヤ室の油を前記モータ室に供給する供給手段が設けられ、該モータ室の油は前記ケース下方部に回収されることを特徴とする電気自動車用駆動装置。
  2. 前記供給手段は、前記ギヤ部の回転に応じて前記ギヤ室の油を前記モータ室に供給することを特徴とする請求項1記載の電気自動車用駆動装置。
  3. 前記供給手段は、前記ギヤ部の回転により掻き上げられるギヤ室の油を捕集して前記モータ室に導くオイルレシーバを有することを特徴とする請求項1又は2記載の電気自動車用駆動装置。
  4. 前記隔壁の前記オリフィスより上方、かつ、前記ロータの周面最下方位置と同レベルの位置に、前記モータ室とギヤ室とを連通する窓を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電気自動車用駆動装置。
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