JP3623117B2 - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、ハロゲンを含まず、少量の添加剤の含有によってすぐれた難燃性を示すとともに、成形性、耐衝撃性、熱安定性、耐湿熱性、リサイクル性にすぐれた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、すぐれた耐衝撃特性、耐熱性、電気的特性などにより、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子機器、自動車分野、建築分野など様々な分野において幅広く利用されている。ポリカーボネート樹脂は、一般的に自己消火性樹脂ではあるが、OA機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子機器分野を中心として、高度の難燃性を要求される分野があり、各種難燃剤の添加により、その改善が図られている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上する方法として、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーなどのハロゲン系難燃剤が難燃剤効率の点から酸化アンチモンなどの難燃助剤とともに用いられてきた。しかし、近時安全性、廃棄・焼却時の環境への影響の観点から、ハロゲンを含まない難燃剤による難燃化方法が市場より求められている。ノンハロゲン系難燃剤として、有機リン系難燃剤、特に有機リン酸エステル化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物は優れた難燃性を示すとともに、可塑剤としての作用もあり、多くの方法が提案されている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂をリン酸エステル化合物で難燃化するためには、リン酸エステル化合物を比較的多量に配合する必要がある。また、ポリカーボネート樹脂は成形温度が高く、溶融粘度も高いために、成形品の薄肉化、大型化に対応するために、ますます成形温度が高くなる傾向にある。このため、リン酸エステル化合物は一般的に難燃性には寄与するものの、成形加工時の金型腐食、ガスの発生など、成形環境や成形品外観上必ずしも十分でない場合がある。また、成形品が加熱下に置かれたり、高温高湿度下に置かれた場合の、衝撃強度の低下、変色の発生などの問題点が指摘されている。さらに、近時の省資源化におけるリサイクル適性が熱安定性が不十分であることから困難であるなどの問題点を残している。
【0005】
これに対して、ポリカーボネート樹脂にシリコーン化合物を配合することによって、燃焼時に有害なガスを発生することなく難燃性を付与することも知られている。たとえば、(1)特開平10−139964号公報には特定の構造や特定分子量を有するシリコーン樹脂からなる難燃剤が開示されている。
また、(2)特開昭51−45160号公報、特開平1−318069号公報、特開平6−306265号公報、特開平8−12868号公報、特開平8−295796号公報、特公平3−48947号公報などにおいてもシリコーン類を用いる難燃性ポリカーボネート樹脂が開示されている。前者の(1)記載のものでは、難燃性のレベルはある程度すぐれたものである。後者の(2)記載のものは、シリコーン類は難燃剤としての単独使用ではなく、耐ドロッピング性の改良を目的としての、例示化合物としての使用であつたり、他の難燃性添加剤としての、リン酸エステル化合物、第2族金属塩などの難燃剤を必須とするものである点において、前者とは異なるものである。
【0006】
さらに、ポリカーボネート樹脂として、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体含有樹脂を用い、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンからなるポリカーボネート樹脂組成物からなる難燃性樹脂組成物も知られている(特開平8−81620号公報)。この組成物はポリオルガノシロキサンの含有率が少量である特定範囲においてすぐれた難燃性を示す、すぐれた組成物である。しかしながら、前記(1)の特開平10−139964号公報と共に、難燃特性はすぐれたものであるが、ポリカーボネート樹脂の特徴である耐衝撃性の低下や成形性が不十分である場合があり、よりすぐれた方法が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状の下、ポリカーボネート樹脂のノンハロゲン化合物による難燃化において、優れた難燃性を維持しながら、成形性、耐衝撃性、耐熱性、耐湿熱性を満足し、リサイクル性にすぐれた成形品を成形可能なポリカーボネート樹脂組成物およびこの組成物を用いた成形品の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するため、本発明者は、難燃性ポリカーボネート樹脂のシリコーン化合物による難燃化において、耐衝撃性、耐熱性、成形性などの改良について鋭意検討した。その結果、スチレン系樹脂の含有、特定のシリコーン化合物と特定のフッ素系樹脂を選択使用することにより、すぐれた難燃性を有し、耐衝撃性、耐熱性、耐湿熱性などにすぐれ、さらにはリサイクルによる再溶融成形においても物性低下、着色の少ない成形品が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリカーボネート樹脂60〜99重量%と(B)スチレン系樹脂40〜1重量%からなる樹脂100重量部に対して、(C)下記式
R1 aR2 bSiO(4-a-b)/2
〔R1 は官能基含有基であって、該官能基の少なくとも一つがアルコキシ基、R2 は炭素数1〜12の炭化水素基、0<a≦3、0≦b<3、0<a+b≦3〕
で表される骨格を有する官能基含有シリコーン化合物0.1〜10重量部および(D)ポリフルオロオレフィン樹脂0.02〜5重量部を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(2)(A)ポリカーボネート樹脂が、少なくともポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含みポリカーボネート樹脂中のポリオルガノシロキサン含有量が0.1〜10重量%である上記(1)記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(3)樹脂が、(A)ポリカーボネート樹脂70〜95重量%と(B)成分としてのゴム変性スチレン系樹脂30〜5重量%からなる上記(1)または(2)記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる電気・電子機器のハウジングまたは部品である射出成形品を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)ポリカーボネート樹脂
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を構成する(A)成分であるポリカーボネート樹脂(PC)としては、特に制限はなく種々のものが挙げられる。通常、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。すなわち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法、すなわち、2価フエノールとホスゲンの反応、2価フエノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
【0011】
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。
【0012】
特に好ましい2価フエノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、またはハロホルメートなどであり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどである。この他、2価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
なお、ポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などがある。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどが用いられる。
【0014】
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂としては、テレフタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂などの共重合体あるいは、種々のポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもできる。
【0015】
ポリカーボネート樹脂共重合体の中にあっては、特にポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(以下PC−PDMS共重合体と略記することがある。)を例示できる。PC−PDMS共重合体は、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部からなるものであり、たとえば、ポリカーボネートオリゴマーとポリオルガノシロキサン部を構成する末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサン(ポリジメチルシロキサン、ポリジエチレンシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)とを、塩化メチレンなどの溶媒に溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を加え、トリエチルアミンなどの触媒を用い、界面重縮合反応することにより製造することができる。
【0016】
PC−PDMS共重合体のポリカーボネート部の重合度は、3〜100、ポリジメチルシロキサン部の重合度は2〜500程度のものが好ましく用いられる。また、PC−PDMS共重合体中のポリジメチルシロキサンの含有量としては、通常0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲である。本発明に用いられるポリカーボネート樹脂、PC−PDMS共重合体などの粘度平均分子量は通常10,000〜100,000、好ましくは11,000〜30,000、特に好ましくは12,000〜30,000である。ここで、これらの粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度 [η〕を求め、次式にて算出するものである。
[η〕=1.23×10−5Mv0.83
【0017】
次に、本発明のポリカーボネート樹脂として、ポリカーボネート樹脂とPC−PDMS共重合体との混合樹脂を用いる場合には、PC−PDMS共重合体の含有量が1〜99重量%、好ましくは5〜50重量%であり、混合樹脂中のポリジメチルシロキサンの含有量が0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%となるように配合される。
【0018】
(B)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレンなどのモノビニル系芳香族単量体20〜100重量%、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体0〜60重量%、およびこれらと共重合可能なマレイミド、(メタ)アクリル酸メチルなどの他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体または単量体混合物を重合して得られる重合体がある。これらの重合体としては、ポリスチレン(GPPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などがある。
【0019】
また、スチレン系樹脂としてはゴム変性スチレン系樹脂が好ましく利用できる。このゴム変性スチレン系樹脂としては、好ましくは、少なくともスチレン系単量体がゴムにグラフト重合した耐衝撃性スチレン系樹脂である。ゴム変性スチレン系樹脂としては、たとえば、ポリブタジエンなどのゴムにスチレンが重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリブタジエンにアクリロニトリルとスチレンとが重合したABS樹脂、ポリブタジエンにメタクリル酸メチルとスチレンが重合したMBS樹脂などがあり、ゴム変性スチレン系樹脂は、二種以上を併用することができるとともに、前記のゴム未変性であるスチレン系樹脂との混合物としても使用できる。
【0020】
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴムの含有量は、例えば2〜50重量%、好ましくは、5〜30重量%、特に5〜15重量%である。ゴムの割合が2重量%未満であると、耐衝撃性が不十分となり、また、50重量%を超えると熱安定性が低下したり、溶融流動性の低下、ゲルの発生、着色などの問題が生じる場合がある。上記ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、アクリレートおよび/またはメタクリレートを含有するゴム質重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム(SBS)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエン・アクリルゴム、イソプレン・ゴム、イソプレン・スチレンゴム、イソプレン・アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴム等が挙げられる。このうち、特に好ましいものはポリブタジエンである。ここで用いるポリブタジエンは、低シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル結合を1〜30モル%、1,4−シス結合を30〜42モル%含有するもの)、高シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル結合を20モル%以下、1,4−シス結合を78モル%以上含有するもの)のいずれを用いてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0021】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂にスチレン系樹脂を配合することにより、樹脂組成物の溶融流動性を向上するものである。ここで、両樹脂の配合比は、(A)ポリカーボネート樹脂60〜99重量%、好ましくは70〜95重量%、(B)スチレン系樹脂が40〜1重量%、好ましくは30〜5重量%である。ここで、(A)成分のポリカーボネート樹脂が60重量%未満では、耐熱性、強度が十分でなく、(B)成分のスチレン系樹脂が1重量%未満では成形性の改良効果が不十分である。なお、この場合の(B)スチレン系樹脂としては、前記したゴム変性スチレン系樹脂が好ましく用いられる。これらの配合比は、ポリカーボネート樹脂の分子量、スチレン系樹脂の種類、分子量、メルトインデックス、ゴムの含有量や成形品の用途、大きさ、厚みなどを考慮して適宜決定される。
【0022】
(C)シリコーン化合物
本発明における、(C)成分としての、官能基含有シリコーン化合物としては官能基を有する(ポリ)オルガノシロキサン類であり、その骨格としては、式R1aR2bSiO(4−a−b)/2 〔R1 は官能基含有基、R2 は炭素数1〜12の炭化水素基、0<a≦3、0≦b<3、0<a+b≦3〕で表される基本構造を有する重合体、共重合体である。また、官能基としては、アルコキシ基、アリールオキシ、ポリオキシアルキレン基、水素基、水酸基、カルボキシル基、シアノール基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基などを含有するものである。
【0023】
これら官能基としては、複数の官能基を有するシリコーン化合物、異なる官能基を有するシリコーン化合物を併用することもできる。この官能基を有するシリコーン化合物は、その官能基(R1 )/炭化水素基(R2 )が、通常0.1〜3、好ましくは0.3〜2程度のものである。
これらシリコーン化合物は液状物、ハウダーなどであるが、溶融混練において分散性の良好なものが好ましい。たとえば、室温での粘度が1,000〜500,000cst程度の液状のものを例示できる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物にあっては、シリコーン化合物が液状であっても、組成物に均一に分散するとともに、成形時あるいは成形品の表面にブリードすることが少ない特徴がある。
【0024】
この官能基含有シリコーン化合物は、(A)ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部含有することができる。なお、この官能基含有シリコーン化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂として、PC−PDMS共重合体を用いた場合には、組成物全体におけるシリコーンの含有量も考慮して、適宜決定することができる。このPC−PDMS共重合体含有ポリカーボネート樹脂を用いる場合には、官能基含有シリコーン化合物の含有量を少なくすることができ、また、組成物全体中のシリコーン含有量が低下しても難燃性のレベルを高く維持できる効果がある。
【0025】
(D)ポリフルオロオレフィン樹脂
なお、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性試験などにおける燃焼時の溶融滴下防止を目的にさらに、(D)フルオロオレフィン樹脂を用いるものである。ここで(D)フルオロオレフィン樹脂としては、通常フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体であり、たとえば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体である。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、特に好ましくはは500,000〜10,000,000である。本発明で用いることができるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべての種類のものを用いることができる。
【0026】
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、例えばテフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業株式会社製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス株式会社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
【0028】
ここで、フルオロオレフィン樹脂の含有量は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.02〜5重量部、好ましくは、0.05〜2重量部である。ここで、0.02重量部未満であると、目的とする難燃性における溶融滴下防止性が十分でない場合があり、5重量部を越ても、これに見合った効果の向上はなく、耐衝撃性、成形品外観に悪影響を与える場合がある。したがって、それぞれの成形品に要求される難燃性の程度、たとえば、UL−94のV−0、V−1、V−2などにより他の含有成分の使用量などを考慮して適宜決定することができる。
【0029】
また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、必要により、ポリエステル樹脂などの他の熱可塑性樹脂や成形品の剛性、さらには難燃性をさらに向上させるために無機充填剤を含有させることができる。ここで、無機充填剤としては、タルク、マイカ、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などをあげることができる。なかでも、板状であるタルク、マイカなどや、繊維状の充填剤が好ましい。タルクとしては、、マグネシウムの含水ケイ酸塩であり、一般に市販されているものを用いることができる。また、タルクなどの無機充填剤の平均粒径は0.1〜50μm、好ましくは、0.2〜20μmである。これら無機充填剤、特にタルクを含有させることにより、剛性向上効果に加えて、シリコーン化合物の配合量を減少させることができる場合がある。
【0030】
ここで、無機充填剤の含有量は、、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは、2〜50重量部である。ここで、1重量部未満であると、目的とする剛性、難燃性改良効果が十分でない場合があり、100重量部を越えると、耐衝撃性、溶融流動性が低下する場合があり、成形品の厚み、樹脂流動長など、成形品の要求性状と成形性を考慮して適宜決定することができる。
【0031】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、成形性、耐衝撃性、外観改善、耐候性改善、剛性改善等の目的で、上記(A)〜(D)からなる必須成分に、熱可塑性樹脂に常用されている添加剤成分を必要により含有することができる。例えば、フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、可塑剤、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)等が挙げられる。任意成分の配合量は、本発明の,難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
【0032】
次に、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A)〜(D)を上記割合で、さらに必要に応じて用いられる、各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選択される。この溶融混練成形としては、押出成形機、特にベント式の押出成形機の使用が好ましい。なお、ポリカーボネート樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、ポリカーボネート樹脂あるいは他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスターバッチとして添加することもできる。
【0033】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機、あるいは、得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法などにより各種成形品を製造することができる。しかし、上記溶融混練方法により、ペレット状の成形原料を製造し、ついで、このペレットを用いて、射出成形、射出圧縮成形による射出成形品の製造に特に好適に用いることができる。なお、射出成形方法としては、外観のヒケ防止のため、あるいは軽量化のためのガス注入成形を採用することもできる。
【0034】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品としては、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどの電気・電子機器のハウジウングまたは部品、さらには、自動車部品など他の分野にも用いられる。
【0035】
【実施例】
本発明について実施例および比較例を示してより具体的に説明するが、これらに、何ら制限されるものではない。
実施例1〜5および比較例1〜5
表1、表2に示す割合で各成分を配合〔(A)と(B)成分は重量%、他の成分は、(A)と(B)からなる樹脂100重量部に対する重量部で示す。〕し、ベント式二軸押出成形機(機種名:TEM35、東芝機械株式会社製)に供給し、260℃で溶融混練し、ペレット化した。なお、すべての実施例および比較例において、酸化防止剤としてイルガノックス1076(チバ・スペシヤルティ・ケミカルズ株式会社製)0.2重量部およびアデカスタブC(旭電化工業株式会社社製)0.1重量部をそれぞれ配合した。得られたペレットを、120℃で12時間乾燥した後、成形温度260℃、金型温度80℃で射出成形して試験片を得た。得られた試験片を用いて性能を各種試験によって評価し、その結果を表1、表2に示した。
【0036】
なお、用いた成形材料および性能評価方法を次に示す。
(A)ポリカーボネート樹脂
PC:タフロン A1900(出光石油化学株式会社製):ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、MI=20g/10分(300℃、1.2Kg荷重)、粘度平均分子量:19,000
PC−PDMS:ビスフェノールA−ポリジメチルシロキサン(PDMS)共重合体、MI=45g/10分(300℃、1.2Kg荷重)、PDMS鎖長(n=30、PDMS含有量=4重量%、粘度平均分子量:25,000〔特開平8−81620公報の製造例3−2(A1 )により製造された共重合体〕
(B)スチレン系樹脂
HIPS:耐衝撃性ポリスチレン(HIPS):IDEMITSU PS IT44(出光石油化学株式会社製)ポリブタジェンにスチレンがグラフト重合したもの、ゴム含有量10重量%、MI:8g/10分(200℃、5kg荷重)
ABS:アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS):DP−611(テクリポリマー株式会社製)、MI:2g/10分
【0037】
(C)シリコーン化合物
シリコーン−1:ビニル基メトキシ基含有メチルフェニルシリコーン、KR219(信越化学工業株式会社製)、粘度=1,800cst
シリコーン−2:メトキシ基含有ジメチルシリコーン、KC−89(信越化学工業株式会社製)、粘度=2,000cst
シリコーン−3:ジメチルシリコーン、SH200(東レダウコーニング株式会社製)、粘度=35,000cst
(D)フルオロオレフィン樹脂
PTFE:CD076(旭硝子株式会社製)
(E)難燃剤
・TBAオリゴマー:テトラブロモビスフェノールAオリゴマー:FG7500(帝人化成株式会社製)
・リン酸エステル化合物:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート):PFR(旭電化工業株式会社製)
【0038】
〔性能評価方法]
(1)溶融流動性
MI(メルトインデックス):JIS K7210に準拠。260℃、2.16kg荷重
(2)IZOD(アイゾット衝撃強度)
ASTM D256に準拠、23℃(肉厚1/8インチ)、単位:kJ/m2
(3)熱歪み温度
JIS K7191に準拠、曲げ応力:18.6kg/cm2
(4)難燃性
UL94燃焼試験に準拠(試験片厚み:2.5mm)
【0039】
(5)リサイクル性
各組成物ペレットを用いて、成形温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形によりノートパソコンハウジング(A4タイプ)を成形した。この成形品を粉砕して、100%リサイクル原料として再度、同条件で試験片を成形した。
1.リサイクル成形試験片のIZOD衝撃強度を測定した。
2.リサイクル成形試験片の色調変化を測定した。JIS H7103(黄変度試験方法)に準拠して、色差計でリサイクル前後の試験片の色相(L,a,b)を測定し、色相変化を色差(ΔE)として算出した。
(6)耐湿熱性
温度70℃、湿度90%の雰囲気に300時間保持処理した。
1.処理後のIZOD衝撃強度を測定した。
2.処理後の色調変化を測定した(前記に同じ)
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1、表2の結果から明らかなように、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からの成形品は、実施例1と比較例1、2から、本発明が難燃性と耐衝撃性を共に満足するものであることが明らかである。また、実施例2と比較例3、4から、リン酸エステル化合物やハロゲン系の難燃剤を用いた場合と同等以上の難燃性を示すとともに、すぐれた物性を維持していることが明らかである。さらに、耐湿熱性、リサイクル性もすぐれている。また、ポリカーボネート樹脂として、PC−PDMS共重合体を用いる場合に組成物中のトータルシリコーン量を少なくする効果がある。
【0043】
【発明の効果】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、ノンハロゲンで、かつ少量の添加剤の含有で優れた難燃特性が得られ、結果として耐衝撃性、熱安定性にすぐれる。また、これらの特性により、耐湿熱性、リサイクル性にすぐれ、過酷な使用条件での使用、再生使用が可能となり、環境問題、省資源に貢献できるものである。したがって、OA機器、情報機器、家庭電化機器などの電気・電子機器、自動車部品などその応用分野の拡大が期待される。
Claims (5)
- (A)ポリカーボネート樹脂60〜99重量%と(B)スチレン系樹脂40〜1重量%からなる樹脂100重量部に対して、(C)下記式
R 1 a R 2 b SiO (4-a-b)/2
〔R 1 は官能基含有基であって、該官能基の少なくとも一つがアルコキシ基、R 2 は炭素数1〜12の炭化水素基、0<a≦3、0≦b<3、0<a+b≦3〕
で表される骨格を有する官能基含有シリコーン化合物0.1〜10重量部および(D)ポリフルオロオレフィン樹脂0.02〜5重量部を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。 - (A)ポリカーボネート樹脂が、少なくともポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含みポリカーボネート樹脂中のポリオルガノシロキサン含有量が0.1〜10重量%である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 樹脂が、(A)ポリカーボネート樹脂70〜95重量%と(B)成分としてのゴム変性スチレン系樹脂30〜5重量%からなる請求項1または2記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる電気・電子機器のハウジングまたは部品である射出成形品。
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