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JP3613063B2 - ブラシレスモータの制御装置及びこのモータを使用した機器 - Google Patents

ブラシレスモータの制御装置及びこのモータを使用した機器 Download PDF

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JP3613063B2
JP3613063B2 JP07720699A JP7720699A JP3613063B2 JP 3613063 B2 JP3613063 B2 JP 3613063B2 JP 07720699 A JP07720699 A JP 07720699A JP 7720699 A JP7720699 A JP 7720699A JP 3613063 B2 JP3613063 B2 JP 3613063B2
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幸雄 川端
保夫 能登原
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラシレスモータの回転速度を所望の回転速度に制御する制御装置及びこの制御装置を用いて圧縮機や送風機駆動用のブラシレスモータを制御して室内の空気調和を行う空調機、圧縮機や送風機駆動用のブラシレスモータを制御して冷凍を行う冷凍機、撹拌翼や脱水槽駆動用のブラシレスモータを制御して衣類の洗濯を行う洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
永久磁石回転子と固定子巻線を組み合わせたブラシレスモータは、メンテナンスの容易さから空調機,冷凍機,洗濯機等に採用されている。
【0003】
このブラシレスモータの駆動制御は、回転子の磁極位置と通電すべき固定子巻線の位置とを密接に関係付けて行うことが必要である。回転子の磁極位置の検出には、ホール素子等の回転子位置検出センサを用いることなく、回転子磁極との相互作用で固定子巻線に誘起される逆起電圧を利用して該回転子の磁極位置を検出するセンサレス位置検出方式が採用されている。
【0004】
このような回転子位置検出方式を採用したブラシレスモータ駆動装置としては、例えば、特開平7−147793 号公報等に記載されたブラシレスモータ駆動装置がある。このブラシレスモータ駆動装置は、直流電源から出力される直流電圧をインバータ回路を介してブラシレスモータの固定子巻線に供給している。端子電圧検出器は、ブラシレスモータの固定子巻線の端子電圧を分圧して検出電圧として取り出し、これを比較回路に入力する。比較回路は、この検出電圧を基準電圧と比較して位相信号を出力する。
【0005】
そして、制御装置は、パルス幅変調(PWM)信号発生回路からのPWM信号PSを基にして該PWM信号PSがオンからオフに変化するタイミング以降でラッチ動作するようにラッチタイミング信号生成回路によってラッチタイミング信号LSを生成し、固定子巻線の端子電圧に振動が発生した場合でもその振動に影響されずに比較回路からの位相信号をラッチ回路にてラッチして位置検出信号を得ようとするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のブラシレスモータ駆動装置では、ラッチ回路の出力信号は、比較回路から出力される位相信号から時間tdDだけ遅れたものとなり、これに基づいて得られる回転子磁極の検出位置は、回転子の磁極の実際の位置から大幅にずれたものとなる。
【0007】
このように、位置検出信号の検出タイミングが大幅にずれた場合には、ブラシレスモータの固定子巻線電流の転流(通電)位相が遅れ、電流の立ち上がりが遅れると共に巻線電流の切換直前に電流が跳ね上がる形になり、効率の低下と電流の跳ね上がりによる駆動回路への負担増加により回路要素の電流容量の増加が必要となり、コストアップにつながり、あるいはラッチタイミング時に外乱ノイズによって比較回路の出力信号にノイズが重畳していた場合には、本来の位置検出信号から大幅にずれた位相信号をラッチすることになってブラシレスモータを正常に駆動することができずに振動したり停止する課題がある。
【0008】
また、このような従来のブラシレスモータ駆動装置では、PWM信号PSがオンからオフに変化するタイミング以降にラッチ動作を行うものであるために、
PWM制御における通流率が100%の場合には、そのラッチ回路のゲート信号が定義できない、あるいは、いわゆるPAM制御等の通流率100%におけるゲート信号が定義できないという課題がある。
【0009】
本発明の1つの目的は、ブラシレスモータに対して、回転子の磁極位置検出精度が高く、正確な制御を行うことができるブラシレスモータの制御装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ノイズによる位置検出誤りを軽減することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、ノイズによる通電誤動作を軽減することができるブラシレスモータの制御装置を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、制御範囲を拡張することができるブラシレスモータの制御装置を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、ブラシレスモータを効率重視特性で運転制御し、あるいは高速度重視特性で運転制御することができる制御装置を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、広い制御範囲のブラシレスモータの制御装置を提供することにある。
【0015】
本発明の更に他の目的は、通電切換後の環流電流が流れている期間が非常に長い場合でもブラシレスモータを停止することなく、良好な制御を行うことができるブラシレスモータの制御装置を提供することにある。
【0016】
本発明の更に他の目的は、このように制御されるブラシレスモータを動力源とする機器、特に、空調機,冷凍機,洗濯機を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの特徴は、各相の固定子巻線の端子電圧に基づいて回転子の磁極の位置を検出して該固定子巻線への通電を制御するブラシレスモータの制御装置において、前記端子電圧に応じた検出電圧を基準電圧と比較した比較結果情報信号に基づいてPWM信号のオン・オフ期間を抽出することにある。
【0018】
本発明の他の特徴は、固定子巻線の端子電圧に基づいて抽出したPWM信号のオン期間には前記比較結果情報信号をそのまま位相信号として出力し、オフ期間にはオフになる直前の比較結果情報信号を保持して位相信号として出力するようにしたことにある。
【0019】
本発明の他の特徴は、複数相の固定子巻線の端子電圧の比較結果情報信号のパターンに基づいて回転子の位置を検出することにある。
【0020】
本発明の他の特徴は、複数相の固定子巻線の端子電圧の比較結果情報信号のパターンに基づいて固定子巻線への通電パターンを決定することにある。
【0021】
本発明の他の特徴は、複数相の固定子巻線の端子電圧の比較結果情報信号のパターンに基づいて通電切換後の環流電流が流れている期間を検出することにある。
【0022】
本発明の他の特徴は、通電切換後の環流電流が消失した後に、位置検出のために照合する位相信号パターンを更新する処理を行うことにある。
【0023】
本発明の他の特徴は、通電切換後、所定の時間が経過したときに、位置検出のために照合する位相信号パターンを更新する処理を行うことにある。
【0024】
本発明の他の特徴は、比較結果情報信号のパターンに基づいて回転子位置を検出し、メモリに格納された通電位相情報または外部からの位相制御指令に従って通電位相の切り換えを行うことにある。
【0025】
本発明の他の特徴は、PWM制御領域では運転効率を重視した位相制御を行い、高速回転重視制御領域では通電位相を進める制御を行うことにある。
【0026】
そして本発明の更に他の特徴は、前述したような制御装置によって制御されるブラシレスモータを動力源とする空調機または冷凍機または洗濯機にある。
【0027】
本発明の更に他の特徴は、ブラシレスモータと、ブラシレスモータを制御する制御装置とを有するブラシレスモータシステムであって、制御装置は、ブラシレスモータの固定子巻線の電圧に基づいて、ブラシレスモータの回転子位置を検出することにある。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のブラシレスモータの制御装置と該制御装置によって駆動制御されるブラシレスモータを使用した機器の実施形態について、図1〜図9を用いて説明する。
【0029】
図1は、本発明になるブラシレスモータ駆動装置の一実施形態を示すブロック図である。このブラシレスモータ駆動装置は、交流電源1からの交流電圧を整流する整流回路2と、その整流出力電圧を平滑して直流電圧にする平滑回路3と、直流電圧を任意のパルス幅の交流電圧に変換してブラシレスモータ5の固定子巻線に供給することにより該ブラシレスモータ5を回転させるインバータ回路4と、速度指令信号SVに応じて前記ブラシレスモータ5の制御処理を行う制御回路(ワンチップマイコンまたはハイブリットIC)6と、この制御回路6に従ってインバータ回路4を駆動するドライバ7と、端子電圧検出器8から得られるブラシレスモータ5の固定子巻線の各相の端子電圧(=逆起電力)に応じた検出電圧8aに基づいて該ブラシレスモータ5の回転子の磁極の位置情報である位相信号9aを生成して前記制御回路6に供給する位相信号生成回路9を備えている。
【0030】
前記位相信号生成回路9は、基本的には、PWM信号がオンのときは、ブラシレスモータ5の各相の端子電圧に対応する検出電圧8aに対する比較回路10からの比較結果情報信号10bを位相信号9aとして出力し、PWM信号がオフのときは、PWM信号がオフする直前の比較結果情報信号10bを保持して位相信号9aとして出力する回路手段である。そして、この位相信号生成回路9は、ブラシレスモータ5の固定子巻線の各相の端子電圧に対応する検出電圧8aを基準電圧と比較する比較回路10と、この比較回路10から出力される各相の比較結果情報信号10bを遅延させる遅延回路11と、この遅延回路11からの出力信号11aに基づいて生成した位相信号9aを前記制御回路6に出力する選択保持回路12と、この選択保持回路12の動作特性を制御するためのゲート信号13aを前記比較回路10から出力される比較結果情報信号10aに基づいて作成するゲート信号作成回路13を備える。
【0031】
前記比較回路10は、ブラシレスモータ5の固定子巻線の各相の端子電圧に応じた検出電圧8aを基準電圧と比較する回路であり、各相毎の比較結果情報信号10a,10bを出力する。ここで、比較に使用する基準電圧は、ブラシレスモータ5の固定子巻線の中性点電圧あるいは平滑回路3から出力される直流電圧の1/2の電圧とする。
【0032】
前記ゲート信号作成回路13は、前記比較回路10から出力される比較結果情報信号10aに基づいて論理処理によりPWM制御のオン期間あるいはオフ期間を抽出し、前記選択保持回路12において、そのときの検出電圧8aを反映した位相信号を出力するかPWM信号がオフになる前の信号レベルを保持して位相信号として出力するかを選択するためのゲート信号13aを作成して出力する機能を備えている。検出電圧8aの電圧レベルが一般的な論理回路で処理できるレベルにあるときには、この検出電圧8aから直接的にゲート信号を作成するようにすることもできる。
【0033】
前記遅延回路11は、前記選択保持回路12で信号を選択保持するときの動作タイミングと整合するように、前記比較回路10から出力される各相の比較結果情報信号10bを遅延させる機能手段である。この遅延回路11は、具体的には、選択保持回路12に入力する信号11aと該選択保持回路12の動作(ゲート信号13a)のタイミングを調整するためのものであるから、比較回路10とゲート信号作成回路13の回路定数を考慮して比較結果情報信号10bとゲート信号13aが整合するようにすることにより、省略することもできる。
【0034】
前記選択保持回路12は、前記遅延回路11からの出力信号11aを前記ゲート信号作成回路13から与えられるゲート信号13aに従って、それぞれの出力信号11aをそのまま位相信号9aとして出力するか、ゲート信号13aが変化する前の信号レベルを保持して位相信号9aとして出力するかを選択する機能手段である。
【0035】
図2は、前記ゲート信号作成回路13の具体的な構成を例示したブロック図である。例示したゲート信号作成回路13は、論理素子の組み合わせによって構成し、各相の比較結果情報信号10aをVu,Vv,Vwとして入力し、論理式
(数1)の論理処理結果(出力X)をゲート信号13aとして出力する構成である。従って、(数1)を満たす論理回路であれば、他の構成であっても同様に使用することができる。
【0036】
【数1】
Figure 0003613063
【0037】
図3は、前記制御回路6及び位相信号生成回路9における信号波形を示している。図3において、(a)は、前記制御回路6が出力するPWM信号である。これに対して、(b)は、ドライバ7及びインバータ回路4の影響によりそれぞれ立上り時にはtdON ,立下り時にはtdOFFの遅延を反映したブラシレスモータ5の固定子巻線の端子電圧の検出電圧波形である。(c)は、比較回路10が出力する比較結果情報信号10a,10bであり、(d)は、比較結果情報信号10aに基づいてゲート信号作成回路13が作成したゲート信号13aである。
【0038】
選択保持回路12は、(e)に示すように、前記ゲート信号13aに従って該信号13aがハイレベルのときには遅延回路11の出力信号11aを反映し、ローレベルのときには該ローレベルになる直前の信号レベルを保持した波形の位相信号9aを出力する。
【0039】
図4は、前記位相信号9aに対する前記制御回路6の内部処理の一例を示している。処理41は、ブラシレスモータの速度制御等を含むモータ制御の主な処理である。処理42は、回転子位置検出に関わる信号処理、処理43は、前記処理42によって決定された回転子位置に従ってインバータ回路4のスイッチング動作を決定するドライブ処理、処理44は、位置検出処理に基づいたドライブ処理に関わる準備フラグのクリア処理、処理45は、位相信号パターンの2回一致を判定する一致フラグのクリア処理である。ここで、処理43のドライブ処理は、位相補正で調整される所定の時間経過後に通電切換可能な処理である。
【0040】
前記処理42は、周期的に前記位相信号9aを読み込んで該位相信号9aを基にして回転子位置を検出(決定)する処理である。この回転子の位置の検出は、回転子の位置によって位相信号9aが所定の信号パターンを呈することから、位相信号9aのパターンを所定の信号パターンと照合することにより行うものである。
【0041】
処理42aは、回転子位置検出に関わる信号処理に電気角30度期間中,電気角60度期間中,電気角120度期間中,電気角360度期間中,機械角360度期間中等に処理を何回行ったかを管理するカウント処理である。その他、所定時間の経過も管理可能なカウント処理である。
【0042】
処理42bは、各相の位相信号9aを読み込む処理である。この時、位相信号9aを読み込んだタイミングを知る上で、制御回路6からHIレベルあるいは
LOWレベルの信号等を出力することが、制御装置の動作を確認する上で有効である。
【0043】
処理42cは、中電切換後、所定の時間が経博したか否かを判定する処理で、判定には、内部のタイマあるいは前記処理42a等で得られたカウント値より判定する。
【0044】
処理42dは、次回の通電制御処理に必要な所定の信号パターンが設定されているか否かを判定する分岐処理である。
【0045】
処理42eは、前記処理42dにおいて、次回の通電処理に必要な所定の信号パターンが設定されていないと判定した場合に、次回の通電制御処理のための所定の信号パターンを更新・設定する処理である。処理42eは、所定の信号パターンが更新されたことを表す準備フラグを設定する処理であり、処理42fは、位置した信号パターンが1回目であるか否かを判定する際に使用するフラグのクリア処理である。
【0046】
処理42hは、処理42bで読み込んだ各位相信号9aのパターンを回転子位置によって決まる所定の信号パターンと照合する。
【0047】
処理42iは、信号パターンが一致していた場合には処理42kに進み、信号パターンが一致していない場合には処理42jへジャンプする。
【0048】
処理42jは、一致した信号パターンが2回一致したか否かを判定する際に使用するフラグをクリアする処理を行う。
【0049】
処理42kは、その一致した信号が2回一致したか否かを判定する分岐処理である。処理421は、一致フラグがオフで信号パターンが一致したときに、一致フラグをオンにする処理である。処理42mは、次回の通電制御処理に必要な所定の信号パターンが設定されているか否かを判定する分岐処理である。
【0050】
処理42nは、前記処理42mにおいて、次回の通電処理に必要な所定の信号パターンが設定されていないと判定した場合に、次回の通電制御処理のための所定の信号パターンを更新・設定する処理である。処理42oは、所定の信号パターンが更新されたことを表す準備フラグを設定する処理であり、処理42pは、一致した信号パターンが1回目であるか否かを判定する際に使用するフラグのクリア処理である。つまり、前記処理42eあるいは前記処理42nで所定の信号パターンが更新された後に前記処理42bで読み込んだ位相信号9aの信号パターンが2回一致したときに、この回転位置に適切な通電パターンを決定してドライブ処理43を行うことになる。
【0051】
ここで、処理42d〜処理42gと処理42n〜処理42pまでが同等であるため、サブルーチン化することによりプログラムの増加を最小限に押さえると同時に通電切換後の環流期間が長い場合でも良好にブラシレスモータの制御ができる。
【0052】
図5は、PWM制御において通流率が100%未満の時のブラシレスモータ5の固定子巻線の各相(U,V,W相)の端子電圧の検出8aと、PWM信号,比較回路から出力される各相の比較結果情報信号,制御回路6で読み込まれたPWMオン時の情報信号パターン,制御回路内部で認識される位置検出情報を示している。
【0053】
図5を参照して図4に示したアルゴリズムを用いた制御処理を行うと、図5におけるt1及びt3に示すように通電パターンの切り換え直後にt2及びt4と同等の位相信号が現れる場合でも誤判定を防止することができると共に通電パターン切り換え直後に流れる環流電流の影響を受けることなく、良好に位相信号を得ることができ良好に通電切り換えを行うことできる。
【0054】
また、図4を参照して説明した処理42e及び処理42nにおいて信号パターン更新後に、図3の(b)に示すように、基準点近傍で信号が振動した場合には、図3(c)に示すように振動した信号が出力され、前記処理41から周期的な処理42へ移ったときに、図3(d)におけるタイミングで処理42が行われ、(e)のタイミングで処理42bが行われ、処理42hで信号パターンの照合が行われ、処理42iでパターン一致により処理42kへ進む。このとき、今の通電期間中において、1回目のパターン一致であり、一致フラグはオフとなっているために、処理42kから処理42lへ分岐する。その後、図3の(g)tdのタイミングで再度処理42bが行われ、この処理42hが行われた後に、処理
42iでは信号パターンが一致しないために処理42jへ分岐し、一致フラグをクリアして処理41へ戻る。
【0055】
更に、前記処理41から周期的な処理42へ移った際、図3(c)における
tcのタイミングで処理42bが行われ、前記同様に、処理42lまで実行され、図3(c)におけるtdのタイミングで処理42bから処理42kが実行され、一致フラグがONであるため処理42mを経て処理43へと進み、回転子位置に適したドライブ処理が行われる。
【0056】
この位相信号生成回路9と位置検出アルゴリズムを用いると、パルス状のノイズが入った場合でも良好に回転子位置を検出し、良好なモータ制御が可能である。また、この実施形態では、位相信号9aの2回のパターン一致がドライブ処理へ進む条件としたが、それ以外の複数回一致でも有効であると共に、ブラシレスモータ5の固定子巻線の端子電圧に現れるノイズや振動を抑制することで省略しても有効である。
【0057】
図6は、PWM制御において通流率が100%のとき或いはパルス振幅変調
(PAM)制御のときのブラシレスモータ5の固定子巻線の端子電圧の検出電圧8aと、比較回路10から出力される比較結果情報信号10a,10bと、ゲート信号作成回路13から出力されるゲート信号13aと、選択保持回路12から出力される位相信号9aの1相分を示している。
【0058】
この位相信号生成回路9を用いると、PWM信号がオンのときは、比較結果情報信号10bが位相信号9aにそのまま反映され、オフのときは、オフする直前の信号を保持するために、PWM制御におけるチョッピング動作が行われているか否かに関わらず、同様の位相信号9aを得ることができ、PAM制御においても良好なモータ制御が可能である。
【0059】
また、この実施形態では、出力電圧可変型の整流回路2を使用した構成においても、そのときの出力電圧に応じて比較回路10の基準電圧が可変するために、PWM制御及びPAM制御或いはPWM/PAMの切換制御の何れにおいても同等の位相信号を得ることができ、良好なモータ制御を実現することができる。
【0060】
図7は、PWM制御において通流率が100%の時あるいはPAM制御において、通電切換後の環流電流が流れている期間が図6の場合より長い場合のブラシレスモータ5の固定子巻線の端子電圧の検出電圧8aと、比較回路から出力される比較結果情報信号と制御回路内部における位置検出情報の1相分を示している。
【0061】
通電切換後の所定時間経過の判定に処理42eを設けているため、図6のように通電切換後の環流電流が流れている期間が長く基準電圧近傍で情報信号が変化しない場合でも、信号パターンを変更するため、モータが停止することなく良好なモータ制御が可能である。
【0062】
そして、このような位相信号生成回路9を使用すると、実際にブラシレスモータ5の固定子巻線に印加されている電圧(端子電圧)からPWM信号のオン期間とオフ期間を抽出しているために、外部からタイミング調整や補正を行う操作が不要となり、遅延時間を決定する回路定数等が変化しても優れた回転位置検出処理を行うための位相信号を生成することができる。因みに、制御回路6で発生するPWM信号と実際にブラシレスモータ5の固定子巻線に印加される電圧との間には動作遅れによる遅延時間が発生するために、制御回路6内においてPWM信号に応じてモータ端子電圧から回転子位置を正確に検出しようとすると、両者間のタイミング調整が必要である。
【0063】
そして、制御回路6は、ある時刻(タイミング)における固定子巻線の各相の固定子巻線の端子電圧(検出電圧)に応じた位相信号のパターンに基づいて回転子位置を検出(判断)するようにしているので、ノイズによる誤検出を軽減することができる。
【0064】
また、この制御回路6は、この回転子位置と固定子巻線への現在の通電パターンから次の通電パターンを決めることができるために、ノイズによる誤動作を軽減することができる。
【0065】
従来の制御装置のようなエッジ割込み処理による回転位置検出では、転流直後に発生するスパイク電圧による誤動作を避けるために位相信号読込禁止区間を設けることが必要であるが、本発明によれば、このような位相信号読込禁止区間は不要となるので、このスパイク電圧の期間を計測することによって環流電流が流れている時間(環流電流が消失するタイミング)を見積ることができ、これを位相制御に活用して広範囲な制御を実現することができるようになる。
【0066】
ブラシレスモータの運転効率は、図8に示すように、逆起電力に対する通電位相によって変化するために、通電位相は非常に重要な要素である。従って、モータ起動時には最高効率となるように、予めRAMあるいはROMに格納した情報を使用して通電位相を制御することによってブラシレスモータを高効率で運転することができる。
【0067】
また、通電位相を外部から制御できるようにすれば、ユーザ側で、モータに合わせた通電位相でブラシレスモータを運転できるようにすることができる。この外部制御のための制御端子は、制御回路6のA/D変換端子,通信用端子,入力ポートなどを使用することができる。
【0068】
ブラシレスモータの速度制御において、固定子巻線に供給する端子電圧をパルス幅制御することにより速度制御を行うPWM制御は、通流率が最大値(100%)に達すると、それ以上に回転速度を高めるための制御を行うことができない。また、固定子巻線に供給する端子電圧の高さを制御することにより速度制御を行うPAM制御では、端子電圧が最大値に達すると、それ以上に回転速度を高めるための制御を行うことができない。しかしながら、図9に示すように、固定子巻線に供給する端子電圧を同じ値に維持した状態で通電位相を変えることにより回転速度を変えることができる。そして、この通電位相の制御は、位相信号を使用して実現することができる。
【0069】
従って、ブラシレスモータの固定子巻線電流のPWM制御および/またはPAM制御に加えて通電位相制御を行うことによって該モータの回転速度をより広範囲に制御することができる。例えば、PWM制御において通流率が最大値に未達の状態あるいはPAM制御において供給電圧が最大値に未達の状態では、モータの効率が最高になるような通電位相での制御を行い、通流率または供給電圧が最大値に達した後は通電位相を最高効率点よりも進めるような制御を行うことによって、通常は効率重視の運転制御特性とし、高速回転が必要な状態では通電位相を進めて高速性重視の運転制御特性とすることができる。
【0070】
このような制御装置は、制御回路6と位相信号生成回路9を統合したハイブリットICあるいはインバータ回路4と制御回路6とドライバ7と位相信号生成回路9を統合したインテリジェント型パワーモジュールとして構成することにより、部品点数が減少して取り扱い易い制御装置とすることができる。
【0071】
ヒートポンプ式の空調機は、圧縮機の回転速度によって冷暖房出力が変化することから、前述したように、PWM制御および/またはPAM制御に加えて通電位相制御されるブラシレスモータを前記圧縮機および/または送風機の駆動源として使用することにより冷暖房能力の高い空調機を実現することができる。しかも、通常の運転領域では効率重視の運転制御を行うことにより、省エネルギー型の空調機とすることができる。
【0072】
同様に、この制御装置を用いて制御されるブラシレスモータは、冷凍機の圧縮機および/または送風機を駆動する駆動源として使用することにより、冷凍能力に優れた冷凍機を実現することができる。
【0073】
更に、この制御装置を用いて制御されるブラシレスモータを動力源として撹拌翼や脱水槽を回転させる洗濯機を構成した場合も、同様に、制御性に優れた洗濯機とすることができる。特に、省エネルギー,高速脱水を実現するのに有効である。
【0074】
その他、本発明になる位相信号生成回路を用いると、容量の大きい電解コンデンサを使用する必要がなくなることに加え、信号レベルを保持する機能を有するために、制御回路に処理速度の遅い安価なマイコンを用いてもブラシレスモータの回転子の位置検出処理が可能となり、インバータ回路及びドライバ回路と一体化することにより、小型かつ安価なインバータ制御回路を実現することができ、これを搭載した空調機及び冷凍機,洗濯機を構成することにより,小型かつ安価で制御性に優れた空調機及び冷凍機,洗濯機を実現することができる。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、ブラシレスモータに対して、回転子の磁極位置検出精度が高く、正確な制御を行うことができるようになる。
【0076】
また、ノイズによる位置検出誤りや通電誤動作を軽減することができ、制御範囲を拡張することができる。
【0077】
また、ブラシレスモータを効率重視特性で運転制御し、あるいは高速度重視特性で運転制御することができるので、ブラシレスモータを広範囲に制御することができる。
【0078】
そして、前述した制御装置により制御されるブラシレスモータを動力源として使用することにより高性能の空調機,冷凍機,洗濯機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になるブラシレスモータ駆動装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示した本発明になるブラシレスモータ駆動装置におけるゲート信号作成回路のブロック図である。
【図3】図1に示した本発明になるブラシレスモータ駆動装置における位置検出回路に関わる各信号波形である。
【図4】図1に示した本発明になるブラシレスモータ駆動装置における制御回路が実施する処理フローチャートである。
【図5】図1に示した本発明になるブラシレスモータ駆動装置における位置検出回路に関わるPWM制御の通流率100%未満のときの各信号波形である。
【図6】図1に示した本発明になるブラシレスモータ駆動装置における位置検出回路に関わるPWM制御の通流率100%及びPAM制御時の各信号波形である。
【図7】通電切換後の環流電流が流れている期間が長い場合の各信号波形を示す図。
【図8】ブラシレスモータの運転効率特性図である。
【図9】ブラシレスモータの速度特性図である。
【符号の説明】
1…交流電源、2…整流回路、3…平滑回路、4…インバータ回路、5…ブラシレスモータ、6…制御回路、7…ドライバ、8…端子電圧検出器、8a…検出電圧、9…位相信号生成回路、9a…位相信号、10…比較回路、10a,10b…比較結果情報信号、11…遅延回路、12…選択保持回路、13…ゲート信号作成回路、13a…ゲート信号。

Claims (12)

  1. ブラシレスモータの複数相の固定子巻線の端子電圧に応じた検出電圧を発生する電圧検出手段と、基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記検出電圧と基準電圧とを比較して比較結果情報信号を出力する比較手段と、前記比較手段から出力される比較結果情報信号に基づいて回転子の位置を検出して通電信号を出力する制御手段と、この通電信号に基づいて前記固定子巻線に通電する出力手段とを備えたブラシレスモータの制御装置において、
    前記制御手段は、複数相の比較結果情報信号のパターンに基づいて回転子の位置を検出することを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  2. ブラシレスモータの複数相の固定子巻線の端子電圧に応じた検出電圧を発生する電圧検出手段と、基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記検出電圧と基準電圧とを比較して比較結果情報信号を出力する比較手段と、前記比較手段から出力される比較結果情報信号に基づいて回転子の位置を検出して通電信号を出力する制御手段と、この通電信号に基づいて前記固定子巻線に通電する出力手段とを備えたブラシレスモータの制御装置において、
    前記制御手段は、複数相の比較結果情報信号のパターンに基づいて前記固定子巻線への通電パターンを決定するようにしたことを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  3. ブラシレスモータの複数相の固定子巻線の端子電圧に応じた検出電圧を発生する電圧検出手段と、基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記検出電圧と基準電圧とを比較して比較結果情報信号を出力する比較手段と、この比較結果情報信号に基づいてブラシレスモータの回転子の回転位置を検出し、この回転位置に応じて固定子巻線に対する通電信号を発生する制御手段と、この通電信号に基づいて前記固定子巻線に通電する出力手段とを備えたブラシレスモータの制御装置において、
    前記制御手段は、前記比較結果情報信号のパターンに基づいて通電切換後の環流電流が流れている期間を検出することを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  4. ブラシレスモータの複数相の固定子巻線の端子電圧に応じた検出電圧を発生する電圧検出手段と、基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記検出電圧と基準電圧とを比較して比較結果情報信号を出力する比較手段と、前記比較手段から出力される比較結果情報信号に基づいて位相信号を得てこの位相信号のパターンに基づいて回転子の位置を検出して通電信号を出力する制御手段と、この通電信号に基づいて前記固定子巻線に通電する出力手段とを備えたブラシレスモータの制御装置において、
    通電切換後の環流電流が消失した後に、位置検出のために照合する位相信号パターンを更新する処理を行うようにしたことを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  5. ブラシレスモータの複数相の固定子巻線の端子電圧に応じた検出電圧を発生する電圧検出手段と、基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記検出電圧と基準電圧とを比較して比較結果情報信号を出力する比較手段と、この比較結果情報信号に基づいてブラシレスモータの回転子の回転位置を検出し、この回転位置に応じて固定子巻線に対する通電信号を発生する制御手段と、この通電信号に基づいて前記固定子巻線に通電する出力手段とを備えたブラシレスモータの制御装置において、
    前記制御手段は、前記比較結果情報信号のパターンに基づいて回転子位置を検出し、メモリに格納された通電位相情報に従って通電位相の切り換えを行うことを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  6. ブラシレスモータの複数相の固定子巻線の端子電圧に応じた検出電圧を発生する電圧検出手段と、基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記検出電圧と基準電圧とを比較して比較結果情報信号を出力する比較手段と、この比較結果情報信号に基づいてブラシレスモータの回転子の回転位置を検出し、この回転位置に応じて固定子巻線に対する通電信号を発生する制御手段と、この通電信号に基づいて前記固定子巻線に通電する出力手段とを備えたブラシレスモータの制御装置において、
    前記制御手段は、前記比較結果情報信号のパターンに基づいて回転子位置を検出し、外部からの位相制御指令に従って通電位相の切り換えを行うことを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  7. 請求項において、前記制御手段は、外部からの位相制御指令を入力する端子として、A/D変換端子または通信用端子または入力ポートを使用することを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  8. 請求項1〜の1項において、前記制御手段は、複数の入出力ポートを有するマイコンで構成したことを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  9. 請求項1〜の1項において、前記制御手段は、複数の入出力ポートを有するハイブリッドICで構成したことを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  10. 請求項1〜の1項に記載したブラシレスモータの制御装置によって運転制御されるブラシレスモータを動力源とする圧縮機および/または送風機を使用して構成したことを特徴とする空調機。
  11. 請求項1〜の1項に記載したブラシレスモータの制御装置によって運転制御されるブラシレスモータを動力源とする圧縮機および/または送風機を使用して構成したことを特徴とする冷凍機。
  12. 請求項1〜の1項に記載したブラシレスモータの制御装置によって運転制御されるブラシレスモータを動力源として使用して構成したことを特徴とする洗濯機。
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