JP3610724B2 - 保護リレーシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高圧配線や高圧負荷を持つ変電所や工場などで使用される保護リレーの中で保護・計測・操作・通信などの機能を一体化して持つ電子化された保護リレーシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
測定対象の電圧や電流の測定を行うとき、測定点のセンサから信号線を経由して保護リレーに測定信号が入力される。この測定信号には電気的ノイズがときとして含まれている。このノイズを除去するための方法を以下に示す。
【0003】
1)ハードフイルタを使用する場合、
測定対象の電圧または電流の定格周波数と同じ中心周波数を持ち、回路構成が簡易な低次のバンドパスフィルタがハードパスフィルタとして広く使用される。このようなハードフィルタでは測定対象の電圧または電流の周波数が定格周波数から変動するにつれてハードフィルタの出力信号は入力信号に対してその大きさや位相の変化が増大するので、測定誤差が増加する欠点がある。
【0004】
2)ソフトフィルタを使用する場合、
上記センサから入力のアナログの測定信号をA/D変換器によりディジタル信号に変換する。次に、変換したディジタル信号をマイクロコンピュータによりノイズを除去する。このためにマイクロコンピュータは所定の数値演算処理を行う。この方法では適切な演算処理を行うと、測定対象の元の信号の振輻や位相の情報が上記数値演算により変化することなく得られる長所がある。しかしながらその一方で、この方法では高精度のA/D変換器や高速の数値演算用のマイクロコンピュータなどが必要なので、費用の点から適用が困難な場合がある。
【0005】
3)ハードフィルタとソフトフィルタの使用
それぞれの長所を得るためハードフィルタとソフトフィルタを使用するノイズ除去方法も知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように測定信号の位相や周波数の変動に追従させるようなソフトフィルタのようなノイズ除去装置を使用すると、保護リレーの構成が複雑になる。一方、上記、測定信号の周波数や位相の変動に追従させるようなハードフィルタのようなノイズ除去装置を使用すると測定対象の電流や電圧の測定に誤差が生じてしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上述の点に鑑みて、電流や電圧の測定誤差と、装置構成の簡易さのバランスのとれた保護リレーシステムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、制御対象の電圧または電流を測定し、その測定結果を示す測定信号に基づきマイクロコンピュータのソフト処理により前記制御対象をオン/オフし、前記測定信号からノイズをバンドパスフィルタにより除去する保護リレーシステムにおいて、前記バンドパスフィルタは外部からの指示で周波数特性を変更可能であって、前記マイクロコンピュータは前記測定信号の周波数を測定する測定手段と、当該測定結果に応じて前記周波数特性を指示する指示手段と備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の保護リレーシステムにおいて、前記周波数特性は前記バンドパスフィルタの中心周波数であって、前記マイクロコンピュータは前記測定結果に一致させるように該バンドパスフィルタの中心周波数を変更することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の保護リレーシステムにおいて、前記マイクロコンピュータは前記測定結果が予め定めた許容範囲の内にある場合にのみ、前記バンドパスフィルタの中心周波数を変更することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の保護リレーシステムにおいて、前記許容範囲を可変設定可能としたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は本発明を適用した保護リレーのシステム構成を示す。図1において、保護リレー1はマイクロコンピュータ10、アナログ入力回路11、表示回路12、キー入力回路13、メモリ14、不揮発性メモリ15、出力回路16を有する。アナログ入力回路11はセンサ3からアナログ測定信号を入力し、ノイズ除去を行った後、アナログ測定信号をデジタル信号に変換し、マイクロコンピュータ10にデジタル測定信号を出力する。
【0014】
表示回路12は保護リレーの各種機能を実行するために設定されたパラメータの値や、電圧、電流の測定値を表示する。キー入力回路13は、上記設定パラメータの値を入力する。本発明に関わる設定パラメータの値としては後述するが変動周波数の許容範囲を示す上限値および下限値、バンドパスフィルタの回路定数がある。
【0015】
メモリ14はマイクロコンピュータ10の演算処理に関わる各種データを一時記憶する。不揮発性メモリ15は測定値、設定パラメータの値等、保存する必要があるデータを記憶する。
【0016】
出力回路16は測定信号の示す電圧または電流の値がマイクロコンピュータ10により異常と判断された場合には、マイクロコンピュータ10の指示により負荷4をオン/オフする信号を出力する。
【0017】
マイクロコンピュータ10は、センサ3の測定した電圧または電流の値を監視して、負荷4をオン/オフするための制御を行うほか、測定値を不揮発性メモリ15に記憶する。また、本発明に関わるノイズ除去に関する制御処理として、保護リレーのマイクロコンピュータ10は計測対象の電圧または電流のアナログ入力回路11から入力した測定信号の周波数を測定する。
【0018】
マイクロコンピュータ10は測定した測定信号の周波数の値が許容範囲にあるかどうかを判定する。許容範囲の上下限値は不揮発性メモリ15に記憶されている値を使用する。マイクロコンピュータ10は周波数が許容範囲内と判定したとき、測定した周波数とアナログ入力回路11内の後述のバンドパスフィルタの中心周波数が一致するように回路定数、すなわち、周波数特性を変更する。
【0019】
マイクロコンピュータ10は周波数が許容範囲外と判定したとき、現状の設定を保持する。マイクロコンピュータ10はこのような判定処理を予め決められた周期で繰り返す。この周期は不揮発性メモリ15に予め設定されている値を使用する。
【0020】
センサ3は測定対象の電圧や電流の値を測定し、アナログ信号の形態で、保護リレー1のアナログ入力回路11に出力する。負荷4は保護リレー1の出力回路16に接続され、出力回路16の信号の指示でオン/オフを行う。
【0021】
図2は本発明のアナログ入力回路11の詳細な構成例を示す。マイクロコンピュータ10は測定した信号の周波数の値によりハードフィルタ形態のバンドパスフィルタ21の回路定数を端子P1からP3で選択して使用する。変成器20はアナログ入力回路11はセンサ3からの信号を入力し、入力回路中で扱いやすい大きさの信号に変換する。バンドパスフィルタ21は特定の周波数の信号成分を通過させることにより測定信号に含まれる電気的ノイズを除去する。周波数帯は可変設定可能である。増幅回路22はフィルタ21の出力を増幅する。A/D変換器23は増幅回路22の出力をアナログ/デジタル変換する。
【0022】
比較回路24は増幅回路22の出力電圧V3が正(電圧か0V以上)か負(電圧が0V未満)かを判定し、その判定結果をマイクロコンピュータ10の端子F1に出力する。
【0023】
図3は図2に示すバンドパスフィルタ21の特性の一例を示す。横軸は周波数f、縦軸は正規化された出力電圧V2である。出力電圧V2か最大となるのは中心周波数fcが50Hzの場合である。周波数fの値か中心周波数fcから離れるにつれて出力電圧V2の値が減少することがわかる。図3のバンドパスフィルタの中心周波数fcは数式1で、ゲインGは数式2で与えられる。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
G=−R3・C2/(R1・(C1+C2))
数式(2)には定数R2が含まれていないので、ゲインGを一定にしたままで定数R2を変化させることで中心周波数fcを変化させることができる。
【0026】
図4は図2に示すバンドパスィルタ21の具体的な回路構成例を示す。フィルタ回路21は抵抗R1、抵抗R2(抵抗R21、抵抗R22、抵抗R23で構成)、抵抗R3、コンデンサC1、コンデンサC2、演算増幅器0P1、アナログスイッチQ1、アナログスイッチQ2およびアナログスイッチQ3から構成される。
【0027】
このような構成においてアナログスイッチQ1、アナログスイッチQ2およびアナログスイッチQ3はマイクロコンピュータ10の出力信号P1、P2およびPSの信号の状態でスイッチSW1、SW2およびSW3をオン/オフする。
【0028】
本発明と従来例の回路の違いを明確にするために従来のアナログ入力回路11の代表例を図5に示す。マイクロコンピュータ10は不揮発性メモリ15に記憶する定格周波数の値によりフィルタ21aまたはフィルタ21bを端子P1またはP2で手動で選択して使用していた。アナログ入力回路11はセンサ3からの信号を入力し、回路で扱いやすい大きさの信号に変換する変成器20、信号に含まれる電気的ノイズを除去するフィルタ21aとフィルタ21b、増幅回路22、A/D変換器23から構成される。
【0029】
従来例と本発明の相違点は、本発明ではマイクロコンピュータ10が測定信号の周波数を検出し、変動する周波数に応じてフィルタ21の回路定数を自動的に変更するようにしたことにある。
【0030】
図6に本発明の保護リレー1のマイクロコンピュータ10の処理動作手順を示す。ステップS1でマイクロコンピュータ10は端子F1の入力信号V5が正から負の状態に立下がったかどうかの有無を判定し、有り(正から負への立下がり)の判定がなされた時はステップS2に進み、無しの時はステップS8に進む。ステップS2でマイクロコンヒユータ10は立下かりの1回目かどうかを判定し、1回目の時はステップS7に進み、その他の時はステップS3に進む。
【0031】
ステップS3でマイクロコンピュータ10は周波数測定用のタイマの計数を停止し、計数値をT2とする。次にタイマの初期値T1を用いて時間△T=T2−T1を計算し、ステップS4に進む。ステップS4でマイクロコンピュータ10は周波数f1=1/(△T)を求め、ステップS5に進む。ステップS5でマイクロコンピュータ10はステップS4で求めた周波数f1が許容範囲の上限値と下限値(許容範囲)中にあるか否かを判定し、許容範囲中にある時はステップS6に進み、その他の時はステップS7に進む。
【0032】
ステップS6でマイクロコンピュータ10は測定した周波数f1とフィルタの中心周波数の値が一致するように、予め定めた周波数と回路定数の対応関係を元に端子P1からP3でフィルタの回路定数の中の対応する回路定数を選択設定し、ステップS7に進む。ステップS7でマイクロコンピュータ10は周波数測定用のタイマの計数を開始し、計数値をT1とし、ステップS8に進む。ステップS8で処理は終了する。
【0033】
このような処理手順をマイクロコンピュータ10が実行することにより、マイクロコンピュータ10は測定信号の周波数測定と、測定した周波数に好適なフィルタ21の回路定数を設定する。
【0034】
図7は本発明実施の形態の動作を示すタイミングチャートある。図2の信号V4は正弦波であり、図2の信号V5は信号V4が0V以上の時に正、信号V4が0V未満の時に負となる。信号P1からP3はフィルタの回路定数を選択するための信号でA点で切り換えられたことを示している。
【0035】
図8は本発明の保護リレーの外観の一例を示す。図8の例ではデータ識別コードが102(図9参照)、整定データが45Hzと表示されている。図8に示すようにデータ識別ードは表示器12aで、整定データは表示器12bで表示される。データの読み出し時は不揮発性メモリ15から読み出されたデータ識別コードと整定データが表示される。
【0036】
ユーザがデータを変更する時は選択されたデータ識別コードと整定データの候補が表示され、ユーザがキー“確定”(符号13d)を押すことで選択された整定データの候補が整定データとして不揮発性メモリ15に記憶される。
【0037】
図9は本発明の保護リレーの不揮発性メモリに記憶するデータの一例を示す。この例では項目として定格周波数、許容範囲の上限値と下限値、切換え周期があり、項目毎にデータ識別コード、整定データの候補、整定データが用意されている。許容範囲の上下限値の変更処理手順は従来からパラメータ値、例えば、負荷4を断するための電圧しきい値の変更を行う処理手順が知られているので、この処理手順と同様にデータの変更を行えばよく、詳細な説明を省略する。
【0038】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、測定対象の電圧の周波数が定格周波数からずれてもマイクロコンピュータ10が周波数変動を検出し、アナログ入力回路11内のバンドパスフィルタの中心周波数を周波数の測定値に追従させて変化させるのでバンドパスフィルタに起因する測定値の誤差を小さくすることができる。また、このような回路構成は簡易であり、少ない費用で装置の改善が期待できる。
【0039】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1の発明によれば、マイクロコンピュータ側で測定信号の周波数測定と、バンドパスフィルタの周波数特性の切換え制御を行い、マイクロコンピュータ側ではノイズ除去処理を行わない。これによりマイクロコンピュータの負担を軽くし、保護リレーとしての機能の性能を劣化させることがない。また、バンドパスフィルタの周波数特性を測定信号の周波数に追従させることでノイズ除去性能も劣化することはない。加えて、周波数測定は、マイクロコンピュータのソフト処理で実現できるので、バンドパスフィルタとマイクロコンピュータという簡素な回路構成で高性能なノイズ除去回路を構成できる。
【0040】
請求項2の発明では、バンドパスフィルタの中心周波数を変更することでバンド幅を大きく変更することなく、測定信号の測定周波数に追従できる。
【0041】
請求項3の発明では、測定信号の周波数が異常となった場合にはバンドパスの周波数特性の変更を行わないので、バンドパスフィルタを安全側(フェイルセーフ)で使用できる。
【0042】
請求項4の発明では、測定信号の比較に使用する許容範囲を可変設定可能とすることで、バンドパスフィルタの交換等によりバンドパスフィルタの性能が変わった場合にもその変更に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】保護リレーのシステム構成図である。
【図2】本発明実施の形態のアナログ入力回路11の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明実施の形態のバンドパスフィルタの特性の一例である。
【図4】本発明実施の形態のバンドパスフィルタの一例を示す回路図である。
【図5】従来例のアナログ入力回路11の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明実施の形態のマイクロコンピュータ10の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明実施の形態の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】本発明実施の形態の保護リレー1の外観図である。
【図9】本発明実施の形態の保護リレー1の不揮発性メモリ15のデータの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 保護リレー
2 センサ
4 負荷
10 マイクロコンピュータ
11 アナログ入力回路
12 表示回路
13 キー入力回路
14 メモリ
15 不揮発性メモリ
16 出力回路
20 変成器
21 (バンドパス)フィルタ
22 増輻回路
23 A/D変換回路
R1 抵抗器
R2 抵抗器
R3 抵抗器
R21 抵抗器
R22 抵抗器
R23 抵抗器
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
0P1 演算増輻器
Q1 アナログスイッチ
Q2 アナログスイッチ
Q3 アナログスイッチ
SW1 アナログスイッチ
SW2 アナログスイッチ
SW3 アナログスイッチ
Claims (4)
- 制御対象の電圧または電流を測定し、その測定結果を示す測定信号に基づきマイクロコンピュータのソフト処理により前記制御対象をオン/オフし、前記測定信号からノイズをバンドパスフィルタにより除去する保護リレーシステムにおいて、
前記バンドパスフィルタは外部からの指示で周波数特性を変更可能であって、前記マイクロコンピュータは前記測定信号の周波数を測定する測定手段と、当該測定結果に応じて前記周波数特性を指示する指示手段と備えたことを特徴とする保護リレーシステム。 - 請求項1に記載の保護リレーシステムにおいて、前記周波数特性は前記バンドパスフィルタの中心周波数であって、前記マイクロコンピュータは前記測定結果に一致させるように該バンドパスフィルタの中心周波数を変更することを特徴とする保護リレーシステム。
- 請求項2に記載の保護リレーシステムにおいて、前記マイクロコンピュータは前記測定結果が予め定めた許容範囲の内にある場合にのみ、前記バンドパスフィルタの中心周波数を変更することを特徴とする保護リレーシステム。
- 請求項3に記載の保護リレーシステムにおいて、前記許容範囲を可変設定可能としたことを特徴とする保護リレーシステム。
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JP12725497A JP3610724B2 (ja) | 1997-05-16 | 1997-05-16 | 保護リレーシステム |
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