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JP3601358B2 - インクジェット記録用反応液およびそれを用いたインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録用反応液およびそれを用いたインクジェット記録方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、インクジェット記録方法に関し、詳しくは記録媒体に反応液とインク組成物との二液を付着させて印刷を行うインクジェット記録方法に関する。
【0002】
背景技術
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を、高速で印刷可能であるという特徴を有する。通常インクジェット記録に使用されるインク組成物は、水を主成分とし、これに着色成分および目詰まり防止等の目的でグリセリン等の湿潤剤を含有したものが一般的である。
【0003】
一方、インクジェット記録方法として、最近新たに、多価金属塩溶液を記録媒体に適用した後、少なくとも一つのカルボキシル基を有する染料を含むインク組成物を適用する方法が提案されている(例えば、特開平5−202328号公報)。この方法においては、多価金属イオンと染料から不溶性複合体が形成され、この複合体の存在により、耐水性がありかつカラーブリードがない高品位の画像を得ることができるとされている。
【0004】
また、少なくとも浸透性を付与する界面活性剤または浸透性溶剤および塩を含有するカラーインクと、この塩との作用により増粘または凝集するブラックインクとを組合せて使用することにより、画像濃度が高くかつカラーブリードがない高品位のカラー画像が得られるという提案もなされている(特開平6−106735号公報)。また、特許第2675001号では多価金属塩を含む反応液とアニオン性基を含む染料インクを付着させる記録方法も提案されており、すなわち塩を含んだ第一の液と、インク組成物との二液を印刷することで、良好な画像が得られるとするインクジェット記録方法が提案されている。
【0005】
さらに、多価金属塩を含んだ反応液と、樹脂エマルジョンを含んだインク組成物とを記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法も提案されている(特開平9−207424号)。
【0006】
【発明の概要】
本発明者は、今般、このような二液を印刷するインクジェット記録方法において、多価金属塩と、アンモニアと、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体とを少なくとも含んでなる反応液を用いることによって、良好な印刷品質が実現でき、また保存安定性および吐出安定性に優れた反応液が得られるとの知見を得た。さらに、共析メッキ処理がなされたノズルプレートを有するインクジェット記録ヘッドと組み合わせることで、ノズルプレートを侵さず、長期間に亘り安定した印字が可能であるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、二液を印刷するインクジェット記録方法に用いられる、良好な印刷品質が実現でき、保存安定性および吐出安定性に優れた反応液の提供をその目的としている。
【0008】
また本発明は、上記本発明による反応液を用いた二液を印刷するインクジェット記録方法の提供をその目的としている。
【0009】
そして、本発明による反応液は、インク組成物の液滴と、インク組成物と接触したとき凝集物を生じさせる反応液の液滴とを吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法に用いられる反応液であって、多価金属塩と、アンモニアと、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体とを少なくとも含んでなるものである。
【0010】
さらに本発明によるインクジェット記録方法は、インク組成物の液滴と、インク組成物と接触したとき凝集物を生じさせる反応液の液滴とを吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、前記反応液が上記本発明による反応液であるものである。
【0011】
【発明の具体的説明】
インクジェット記録方法
本発明によるインクジェット記録方法は、記録媒体に反応液とインク組成物とを印字する工程を含んでなるものである。
【0012】
本発明によるインクジェット記録方法にあっては、反応液とインク組成物とが接触することで良好な印字が実現できる。以下は仮定であってこれよって本発明が限定的に解釈されないことを条件にその理由を述べれば次の通りである。反応液とインク組成物とが接触すると、反応液中の多価金属塩がインク組成物中の着色剤、その他の成分の分散状態を破壊し、それを凝集させると考えられる。これらの凝集物が着色剤の記録媒体への浸透を抑制すると考えられる。その結果、色濃度の高い、にじみ、印刷ムラの少ない画像を実現するものと考えられる。また、カラー画像においては、異なる色の境界領域での不均一な色混じり、すなわちカラーブリードを有効に防止できるとの利点も有する。以上の機構はあくまで仮定であって、本発明はこの機構に限定して解釈されるものではない。
【0013】
さらに本発明にあっては、多価金属塩とともに、アンモニアおよびベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体を含有する反応液を用いる。この反応液は吐出安定性に優れ、さらに保存安定性にも優れる。また、多価金属塩は上記の通りインク組成物中の着色剤、その他の成分の分散状態を破壊し、それを凝集させると考えられるが、このような多価金属塩を含む反応液を長期間に亘り印刷を行うと、印字不良の発生が観察された。その原因は、共析メッキにより撥水処理がなされたノズルプレートが多価金属塩によって侵食されてしまうことにあると考えられた。アンモニアおよびベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体は、この侵食を有効に抑制するものと思われ、それによって長期間に亘り安定した反応液の吐出が可能になるものと考えられる。しかし、上記はあくまで仮定であって、本発明はこの機構に限定して解釈されるものではない。
【0014】
反応液とインク組成物を記録媒体に適用する順序としては、いずれが先であってもよく、すなわち反応液を記録媒体に付着させその後この記録媒体にインク組成物を付着させる方法、インク組成物を印字した後反応液を付着させる方法、さらに反応液とインク組成物をその射出直前または直後に混合する方法のいずれも好適に行うことができる。
【0015】
反応液の記録媒体への付着に関しては、インク組成物を付着させる場所にのみ選択的に反応液を付着させるという方法と、紙面全体に反応液を付着させる方法のいずれの態様であってもよい。前者が反応液の消費量を必要最小限に抑えることができ経済的であるが、反応液とインク組成物双方を付着させる位置にある程度の精度が要求される。一方、後者は、前者に比べ反応液およびインク組成物の付着位置の精度の要求は緩和されるが、紙面全体に大量の反応液を付着させることとなり、乾燥の際、紙がカールしやすい。従って、いずれの方法を採用するかは、インク組成物と反応液との組み合わせを考慮して決定されてよい。前者の方法を採用する場合、反応液の付着は、インクジェット記録方法によることが可能である。
【0016】
反応液
本発明において用いられる反応液は、多価金属塩と、アンモニアと、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体とを少なくとも含んでなる。
【0017】
多価金属塩は上記の通りインク組成物中の着色剤、その他の成分の分散状態を破壊し、それを凝集させる作用を有すると考えられる。本発明の好ましい態様によれば、多価金属塩は、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶な塩であることが好ましい。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+などの二価金属イオンAl3+、Fe3+、Cr3+などの三価金属イオンがあげられる。陰イオンとしては、Cl、NO 、I、Br、ClO よびCHCOO などがあげられる。
【0018】
とりわけ、Ca2+またはMg2+より構成される金属塩は、反応液のpH、得られる印刷物の品質という二つの観点から、好適な結果を与える。
【0019】
これら多価金属塩の反応液中における濃度は印字品質、目詰まり防止の効果が得られる範囲で適宜決定されてよいが、好ましくは0.1〜40重量%程度であり、より好ましくは5〜25重量%程度である。
【0020】
本発明のより好ましい態様によれば、る多価金属塩は、二価以上の多価金属イオンと、これら多価金属イオンに結合する硝酸イオンまたはカルボン酸イオンとから構成され、水に可溶なものであることが好ましい。
【0021】
ここで、カルボン酸イオンは、好ましくは炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸または炭素数7〜11の炭素環式モノカルボン酸から誘導されるものである。炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の好ましい例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ヘキサン酸などが挙げられる。特に蟻酸、酢酸が好ましい。
【0022】
このモノカルボン酸の飽和脂肪族炭化水素基上の水素原子は水酸基で置換されていてもよく、そのようなカルボン酸の好ましい例としては、乳酸が挙げられる。
【0023】
さらに、炭素数6〜10の炭素環式モノカルボン酸の好ましい例としては、安息香酸、ナフトエ酸等が挙げられ、より好ましくは安息香酸である。
【0024】
本発明による反応液はさらにアンモニアを含んでなる。アンモニアの添加量は、良好な印字品質、印字安定性、および保存安定性が得られる範囲で、またpHを勘案して適宜決定されてよいが、0.5重量%以下程度が好ましく、より好ましくは0.3重量%以下である。
【0025】
さらに、本発明による反応液はベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体を含んでなる。ベンゾトリアゾール誘導体とは構造中にベンゾトリアゾールの構造を有し、例えば置換基C1−6アルキル基(好ましくはメチル基およびエ チル基)、水酸基、カルボキシル基、フェニル基等を有する化合物およびその塩を意味する。ベンゾトリアゾール誘導体の具体例としては、1,2,3−ベンゾトリアゾールナトリウム塩、1,2,3−ベンゾトリアゾールカリウム塩、トリルトリアゾール、トリルトリアゾールカリウム塩、トリルトリアゾールアミン、2−(2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0026】
また、本発明の好ましい態様によれば、ベンゾトリアゾール誘導体は水100gに対して0.03g以上可溶なものであることが好ましい。
【0027】
ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体の添加量はその効果が得られる範囲で適宜決定されてよいが、本発明の好ましい態様によれば0.03重量%以上が好ましく、より好ましくは0.05重量%以上である。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、反応液のpHは8以上が好ましく、pHが8以上10以下がより好ましい。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、反応液はポリオールを含んでなることができる。ここで、このポリオールは、20℃での蒸気圧が0.01mmHg以下であるものであり、ポリオールの反応液に対する添加量は10重量%以上であるのが好ましく、より好ましくは10〜30重量%程度である。 ポリオールの好ましい具体例としては、多価アルコール、例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。さらに、ポリオールの好ましい具体例としては糖、例えば単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類があげられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシシール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などがあげられる。これらポリオールは単独で添加されても、二以上の混合物として添加されてよい。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、反応液は高沸点有機溶媒からなる湿潤剤を含んでなることができる。高沸点有機溶媒は、反応液の乾燥を防ぐことによりヘッドの目詰まりを防止する。
【0031】
高沸点有機溶媒の好ましい例としては、前記ポリオールとも一部重なるが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0032】
高沸点有機溶媒の添加量は特に限定されないが、このましくは0.5〜40重 量%程度であり、より好ましくは2〜20重量%程度である。
【0033】
また、本発明における反応液はpH調整のために不揮発性の有機アミン類を含有することも可能である。不揮発性のアミン類としては、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、エチルモノエタノールアミン、ジメタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。これら、不揮発性アミンの添加量は反応液のpHを考慮し適時に決定されるが、およそ0.1〜2.0重量%程度が好ましい。
【0034】
インク組成物
本発明において用いられるインク組成物は、着色剤と、有機溶媒と、水と、そして好ましくは樹脂エマルジョン等の添加剤を含んでなる。
【0035】
インク組成物に含まれる着色剤としては、前記した反応液中の多価金属塩と反応して凝集物を形成するものであるのが好ましい。また、着色剤は染料、顔料のいずれであってもよいが、顔料が好ましい。
【0036】
染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料を使用することができる。
【0037】
また、顔料としては、無機顔料および有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、これらの顔料は、分散剤または界面活性剤で水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液としてインクに添加されるのが好ましい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。なお、この顔料分散液に含まれる分散剤および界面活性剤がインク組成物の分散剤および界面活性剤としても機能するであろうことは当業者に明らかであろう。
【0039】
インクへの顔料の添加量は、0.5〜25重量%程度が好ましく、より好まし くは2〜15重量%程度である。
【0040】
本発明の好ましい態様によれば、インク組成物は樹脂エマルジョンを含んでなるのが好ましい。ここで、樹脂エマルジョンとは連続相が水であり、分散相が次のような樹脂成分であるエマルジョンを意味する。分散相の樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、この樹脂は親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。また、これらの樹脂成分の粒子径はエマルジョンを形成する限り特に限定されないが、150nm程度以下が好ましく、より好ましくは5〜100nm程度である。
【0042】
これらの樹脂エマルジョンは、樹脂モノマーを、場合によって界面活性剤とともに水中で分散重合することによって得ることができる。例えば、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル系樹脂のエマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステル、または(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンを、界面活性剤とともに水中で分散重合させることによって得ることができる。樹脂成分と界面活性剤との混合の割合は、通常10:1〜5:1程度とするのが好ましい。
【0043】
界面活性剤の好ましい例としては、アニオン性界面活性剤(例えばドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩など)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなど)があげられ、これらを単独または二種以上を混合して用いることができる。また、アセチレングリコール(オレフィンY、ならびにサーフィノール82、104、440、465および485(いずれもAir Products and Chemicals Inc. 製))を用いることも可能である。
【0044】
また、分散相成分としての樹脂と水との割合は、樹脂100重量部に対して水60〜400重量部、好ましくは100〜200の範囲が適当である。
【0045】
このような樹脂エマルジョンとして、公知の樹脂エマルジョンを用いることも可能であり、例えば特公昭62−1426号、特開平3−56573号、特開平3−79678号、特開平3−160068号、特開平4−18462号各公報などに記載の樹脂エマルジョンをそのまま用いることができる。
【0046】
また、市販の樹脂エマルジョンを使用することも可能であり、例えばマイクロジェルE−10002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、などがあげられる。
【0047】
本発明に使用するインクは、樹脂エマルジョンを、その樹脂成分がインクの0.1〜40重量%となるよう含有するのが好ましく、より好ましくは1〜25重 量%の範囲である。
【0048】
樹脂エマルジョンは、反応剤の多価金属イオンとの相互作用により、着色成分の浸透を抑制し、さらに記録媒体への定着を促進する効果を有する。また、樹脂エマルジョンの種類によっては記録媒体上で皮膜を形成し、印刷物の耐擦性をも向上させる効果も有する。
【0049】
また、本発明の好ましい態様によれば、本発明に使用するインク組成物は、さらに高沸点有機溶媒からなる湿潤剤を含んでなることが好ましい。
【0050】
高沸点有機溶媒の好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0051】
これら湿潤剤の添加量は、インクの0.5〜40重量%程度が好ましく、より好ましくは2〜20重量%の範囲である。また、本発明に使用するインク組成物は 低沸点有機溶剤を含んでなることが好ましい。低沸点有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、ter−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどがあげられる。特に一価アルコールが好ましい。
【0052】
低沸点有機溶媒剤の添加量はインクの0.5〜10重量%程度が好ましく、より好ましくは1.5〜6重量%の範囲である。
【0053】
本発明の好ましい態様によれば、インク組成物は糖を含有してなるのが好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類があげられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシシール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などがあげられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
【0054】
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH(CHOH)nCHOH(ここで、n=2〜5の整数をあらわす)で 表わされる)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖などがあげられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどがあげられる。
【0055】
これら糖類の含有量は、インクの0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲が適当である。
【0056】
その他、必要に応じて、pH調製剤、防腐剤、防かび剤等を添加しても良い。
【0057】
インクジェット記録装置
本発明によるインクジェット記録方法を実施するインクジェット記録装置について以下図面を用いて説明する。
【0058】
図1のインクジェット記録装置は、インク組成物および反応液をタンクに収納し、インク組成物および反応液がインクチューブを介して記録ヘッドに供給される態様である。すなわち、記録ヘッド1とインクタンク2とがインクチューブ3で連通される。ここで、インクタンク2は内部が区切られてなり、インク組成物、場合によって複数のカラーインク組成物の部屋と、反応液の部屋とが設けられてなる。
【0059】
記録ヘッド1はキャリッジ4に沿って、モータ5で駆動されるタイミングベル ト6によって移動する。一方、記録媒体である紙7はプラテン8およびガイド9によって記録ヘッド1と対面する位置に置かれる。なお、この態様においては、キャップ10が設けられてなる。このキャップ10には吸引ポンプ11が連結され、いわゆるクリーニング操作を行う。吸引されたインク組成物はチューブ12を介して廃インクタンク13に溜め置かれる。
【0060】
記録ヘッド1のノズル面の拡大図を図2に示す。1bで示される部分が反応液 のノズル面であって、反応液が吐出されるノズル21が縦方向に設けられてなる。一方、1cで示される部分がインク組成物のノズル面であって、ノズル22、23、24、25からはそれぞれイエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、そしてブラックインク組成物が吐出される。
【0061】
上記したように本発明による反応液は、共析メッキにより撥水処理がなされたノズルプレートを侵食しない。よって、本発明によるインクジェット記録方法は、共析メッキにより撥水処理層が形成されたノズルプレートを用いたインクジェット記録装置に有利に適用することができる。この撥水処理層は、ニッケルイオンとポリテトラフルオロエチレン等の撥水性高分子樹脂の粒子を電荷により分散させた電解液中に浸漬し、液を攪拌しながらノズルプレート1の表面に共析メッキ層を形成する手法により形成されるのが好ましい。共析メッキ処理に使用されるフッ素系高分子材としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリバーフルオロアルコキシブタジエン、ポリフルオロビニリデン、ポリフルオロビニル、ポリジパーフルオロアルキルフマレート等の樹脂を単独にまたは混合したものが挙げられる。
【0062】
さらにこの図2に記載の記録ヘッドを用いたインクジェット記録方法を図3を用いて説明する。記録ヘッド1は矢印A方向に移動する。その移動の間に、ノズル面1bより反応液が吐出され、記録媒体7上に帯状の反応液付着領域31を形成する。次に記録媒体7が紙送り方向矢印Bに所定量移送される。その間記録ヘッド1は図中で矢印Aと逆方向に移動し、記録媒体7の左端の位置に戻る。そして、すでに反応液が付着している反応液付着領域にインク組成物を印刷し、印刷領域32を形成する。
【0063】
また、図4に記載のように記録ヘッド1において、ノズルをすべて横方向に並 べて構成することも可能である。図中で、41aおよび41bは反応液の吐出ノズルであり、ノズル42、43、44、45からはそれぞれイエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、そしてブラックインク組成物が吐出される。このような態様の記録ヘッドにおいては、記録ヘッド1がキャリッジ上を往復する往路、復路いずれにおいても印刷が可能である点で、図2に示される記録ヘッドを用いた場合よりも速い速度での印刷が期待できる。
【0064】
さらに反応液とインク組成物の表面張力を調節することにより、これらの付着順序にかかわらず、高品質の印刷がより一定して得られる。この場合反応液の吐出ノズルを1つとすることもでき(例えば図中で41bのノズルを省くことができる)、さらなるヘッドの小型化と印刷の高速化が達成できる。
【0065】
さらに、インクジェット記録装置には、インク組成物の補充がインクタンクであるカートリッジを取り替えることで行われるものがある。また、このインクタンクは記録ヘッドと一体化されたものであってもよい。
【0066】
このようなインクタンクを利用したインクジェット記録装置の好ましい例を図5に示す。図中で図1の装置と同一の部材については同一の参照番号を付した。図5の態様において、記録ヘッド1aおよび1bは、インクタンク2aおよび2bと一体化されてなる。記録ヘッド1aまたは1bをそれぞれインク組成物および反応液を吐出するものとする。印刷方法は基本的に図1の装置と同様であって よい。そして、この態様において、記録ヘッド1aとインクタンク2aおよび記 録ヘッド1aおよびインクタンク2bは、キャリッジ4上をともに移動する。
【0067】
【実施例】
以下本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
以下のインク組成物および反応液を常法に従い調製した。すなわち、インク組成物は着色剤成分を分散剤成分とともに分散した後に、他の成分を加え混合し、一定以上の大きさの不溶成分を濾過して、インク組成物とした。
【0069】
反応液1
硝酸マグネシウム・六水和物 25重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10重量%
グリセリン 10重量%
アンモニア水(29%) 0.5重量%
ベンゾトリアゾール 0.03重量%
イオン交換水 残量
pH=8.4
【0070】
反応液2
酢酸マグネシウム・四水和物 25重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10重量%
グリセリン 10重量%
アンモニア水(29%) 0.5重量%
ベンゾトリアゾール 0.03重量%
イオン交換水 残量
pH=8.7
【0071】
反応液3
硝酸カルシウム・四水和物 25重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10重量%
グリセリン 10重量%
アンモニア水(29%) 0.6重量%
イオン交換水 残量
pH=8.8
【0072】
反応液4
硝酸マグネシウム・六水和物 25重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10重量%
グリセリン 10重量%
ベンゾトリアゾール 0.01重量%
イオン交換水 残量
pH=7.5
【0073】
反応液5
硝酸カルシウム・四水和物 25重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10重量%
グリセリン 10重量%
イオン交換水 残量
pH=7.4
【0074】
反応液6
硝酸マグネシウム・六水和物 25重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10重量%
グリセリン 10重量%
ベンゾトリアゾール 0.03重量%
イオン交換水 残量
pH=7.5
【0075】
上記成分を混合し、常温で30分攪拌した後、5μmのメンブランフィルターで濾過し、反応液1〜5を得た。
【0076】
インク1
カーボンブラックMA7 5重量%
(三菱化成株式会社製)
液媒体
スチレン−アクリル共重合体・アンモニウム塩 1.5重量%
(分子量7000、樹脂成分38wt%:分散剤)
ボンコート4001 3重量%
(アクリル系樹脂エマルジョン、樹脂成分50%、大日本インキ株式会社製)
マルチトール 3.5重量%
グリセリン 10重量%
2−ピロリドン 2重量%
イオン交換水 残量
カーボンブラックと分散剤とを混合し、サンドミル(安川製作所製)中でガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させた。その後、ガラスビーズを取り除き、他の成分を加え常温で20分攪拌した。5μmのメンブランフィルターでろ過して、インクジェット記録用インクとした。
【0077】
評価1:反応液の保存安定性
反応液1〜5をサンプル瓶に100g採取し、サンプル瓶を密封した状態で、温度40℃、湿度25%の環境に1週間放置した。放置後の反応液を5μmのメンブランフィルターで濾過し、異物の発生および濾過のし易さを観察した。その結果を以下の基準で評価した。
評価A:異物の発生が全く無く、濾過も円滑に行うことができた(製造直後と同等に濾過できた)
評価B:異物がわずかに発生するが、濾過は円滑に行うことができた
評価C:異物が大量に発生し、濾過を円滑に行うことができなかった
【0078】
評価2:印字品質(にじみ)
インクジェットプリンターMJ−500C(セイコーエプソン(株)製)を用いて、Xerox 4024 3R 721(ゼロックス(株)製) Xerox R(ゼロックス(株) 製、再製紙)の二紙に印刷を行った。印刷は反応液を100%dutyで印刷した後、インク1により文字を印刷した。乾燥後、文字におけるにじみの発生の有無を調べた。その結果を以下の基準で評価した。
評価A:両紙においてにじみの発生がなく鮮明な印刷が行うことができた
評価B:いずれかまたは両紙においてひげ状のにじみが発生した
評価C:いずれかまたは両紙において文字の輪郭がはっきりしないほどにじみが発生した
【0079】
評価3:吐出安定性
インクジェットプリンタMJ−500Cのヘッドに反応液を充填し、A4サイズの紙に連続して英数文字を印字した。印字中に反応液の飛行曲がりが発生した場合、復帰動作を行った。復帰動作を行っても飛行曲がりが直らない場合、それまでに印刷した枚数を吐出安定性を表す指標とした。その結果を以下の基準で評価した。
評価AA:印刷枚数が20,000枚以上
評価A:印刷枚数が10,000枚以上20,000枚未満
評価B:印刷枚数が5000枚以上10、000枚未満
評価C:印刷枚数が5000枚未満
【0080】
評価1〜3の結果は表1の通りであった。
【0081】
Figure 0003601358
【0082】
評価4
反応液1および5をそれぞれインクジェットプリンタMJ−500Cのヘッドに充填し、全ノズルからの反応液の吐出を確認した後、記録ヘッドにキャップをした状態で、40℃の環境に1週間放置した。放置後、記録ヘッドをプリンタから取り出し、共析メッキの施されたノズル面を顕微鏡で観察した。その結果、反応液1を充填した記録ヘッドのノズル面には変化が見られなかったが、反応液5を充填した記録ヘッドのノズル面には腐食が観察された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるインクジェット記録方法の実施に好ましく用いられるインクジェット記録装置を示す図であって、この態様においては記録ヘッドとインクタンクがそれぞれ独立してなり、インク組成物および反応液はインクチューブによって記録ヘッドに供給される。
【図2】記録ヘッドのノズル面の拡大図であって、1bが反応液のノズル面であり、1cがインク組成物のノズル面である。
【図3】図2の記録ヘッドを用いたインクジェット記録方法を説明する図である。図中 で、31は反応液付着領域であり、32は反応液が付着された上にインク組成物が印字された印字領域である。
【図4】本発明によるインクジェット記録方法の実施に好ましく用いられる記録ヘッドの別の態様を示す図であって、吐出ノズルが全て横方向に並べて構成されたものである。
【図5】本発明によるインクジェット記録方法の実施に好ましく用いられるインクジェット記録装置を示す図であって、この態様においては記録ヘッドとインクタンクは一体に形成されている。
【符号の説明】
1 記録ヘッド
2 インクタンク
3 インクチューブ
21 反応液吐出ノズル
22、23、24、25 インク組成物吐出ノズル
31 反応液付着領域
32 印字領域

Claims (9)

  1. インク組成物の液滴と、インク組成物と接触したとき凝集物を生じさせる反応液の液滴とを吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法に用いられる反応液であって、
    多価金属塩と、アンモニアと、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体とを少なくとも含んでなる、反応液。
  2. アンモニアを0.5重量%以下の濃度で含んでなる、請求項1に記載の反応液。
  3. ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体を0.03重量%以上の濃度で含んでなる、請求項1に記載の反応液。
  4. アンモニアを0.5重量%以下の濃度で含み、かつベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体を0.03重量%以上の濃度で含んでなる、請求項1に記載の反応液。
  5. 多価金属塩が酢酸マグネシウムである、請求項4に記載の反応液。
  6. pHが8以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応液。
  7. インク組成物の液滴と、インク組成物と接触したとき凝集物を生じさせる反応液の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、前記反応液が請求項1〜6のいずれか一項に記載の反応液である、インクジェット記録方法。
  8. 共析メッキ処理がなされたノズルプレートを有するインクジェット記録ヘッドによって反応液が吐出される、請求項7に記載のインクジェット記録方法。
  9. 請求項7または8に記載の方法によって印刷された、記録物。
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