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JP3682032B2 - オーディオ装置並びにその再生用プログラム - Google Patents

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JP3682032B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2チャンネルのステレオオーディオ信号からマルチチャネルのオーディオ信号を生成するオーディオ装置並びにその再生用プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
2チャンネルのステレオオーディオ信号からマルチチャネルのオーディオ信号を生成するという要求は、従来からあり、多くのオーディオ装置がそのような機能を有しているが、再生時に逆相感や違和感を伴うことが知られている。
【0003】
従来から行われている2チャンネルの信号からマルチチャネルのオーディオ信号、とりわけサラウンドなどと呼ばれている受聴者の側方から後方にかけてから再生される信号もしくは、受聴者の側方から後方に定位させたい信号である信号OSLおよびOSRを生成するには、図1及び下記の[数1]式のように入力されたステレオオーディオ信号INLとINRの差分を算出し、再生することが一般に行われている。
【数1】
Figure 0003682032
【0004】
このときOSLとOSRは、互いに逆位相であるため再生する際に、受聴者に逆相感を与えてしまうことは、至極当然のことである。すなわち、図8および図9は、入力信号となるステレオオーディオ信号INLとINRの波形と周波数特性の一例を示すものであって、このようなステレオオーディオ信号INL,INRを図1のような処理を施すことにより、図10および図11に示すようなサラウンド信号が生成される。
【0005】
この図10からも明らかなように、左右のステレオオーディオ信号の差分からサラウンド信号を生成しただけでは、左右のサラウンド信号OSLとOSRが逆位相になっていることが示されている。また、このサラウンド信号は、図10のとおり、左右の信号同士は同振幅逆位相であってその相関が強い上に、生成元となったステレオオーディオ信号とはまったく異なるものであるから、再生時の違和感は拭えなかった。
【0006】
さらに、図9の周波数特性に示すように、左右の入力信号には、共に4.5kHz付近に互いに共通の信号成分が有り、これが違和感を生む原因となっていたが、このような入力信号の差分から生成したサラウンド信号では、図11に示すように、左右の信号が同一の周波数成分から構成されることになり、両信号の相関が極めて高くなり、不自然な印象が強かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、サラウンド信号の間での相関を小さくし受聴者への逆相感及び違和感を取り除く提案がなされている。しかし、この種の従来技術は、単純な位相操作や振幅操作等に留まっており、サラウンド信号の生成における本質的な無相関化処理の提案はされていない。
【0008】
また、擬似ステレオ処理等で、広く使用されている無相関化手法、たとえば櫛形フィルタ(コムフィルタ)等を用いての無相関化処理等も行われている。しかし、[数1]式により得られた信号すなわち互いが同振幅逆位相である信号に対して、これらの無相関化処理を施しているため、逆相感や違和感を解消するには至っていない。
【0009】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、サラウンド信号を生成する際に適応信号処理技術を導入した無相関化処理を行うことにより、逆相感や違和感を解消したオーディオ装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明では、図2に示すように、適応信号処理技術を導入した適応無相関化器1を使用して、サラウンド信号を生成する。この適応無相関化器1では、信号XとYが入力され、信号Oが出力される。Xの信号成分中でYと相関の高い信号成分が抽出されたものが差し引かれ出力される。これは、時々刻々と自らのフィルタ特性を変化させてXの信号成分中でYの信号成分と相関の高い信号成分を抽出し出力するように追従していく適応フィルタ等で構成される。適応フィルタの出力をYから差し引くことで、サラウンド信号を生成する過程と無相関化処理の過程を分離せずに、相互に相関の高い信号成分を抑制し、再生された際の受聴者に与える逆相感や違和感を解消することが可能となる。
【0011】
すなわち、請求項1の発明は、入力信号となる2チャンネルのオーディオ信号に基づいて複数チャンネルのサラウンド信号を生成するオーディオ装置において、一方のチャンネルの入力信号を多段のディレイ処理器によって分割し、この分割された多段の出力のそれぞれに対して係数処理器により所定の係数を重畳させて、多段の出力成分を生成し、これら多段の出力成分を加算することにより、一方のチャンネルの入力信号成分中から、他方のチャンネルの入力信号と相関の高い信号成分を抽出する無相関化フィルタと、この無相関化フィルタの特性を、その出力信号と前記他方のチャンネルからの入力信号によって得られるエラー信号と、前記一方のチャンネルの入力信号と、フィルタ係数の更新速度を制御するステップサイズパラメータとに基づいて時々刻々と変化させる係数更新処理器とを備えた適応無相関化器を設け、この無相関化フィルタからの出力と、他方のチャンネルの入力信号との差分を算出して、サラウンド信号として出力することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、前記請求項1の発明において、前記無相関化フィルタが、FIRフィルタによって構成されていることを特徴とする。また、請求項3の発明は、前記請求項2の発明において、前記係数更新処理器が、LMSアルゴリズムに基づいて係数の更新を行うことを特徴とする。請求項4の発明は、前記請求項2の発明において、前記係数更新処理器が、NLMSアルゴリズムに基づいて係数の更新を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、前記請求項1の発明において、前記無相関化フィルタが、IIRフィルタによって構成されていることを特徴とする。請求項6の発明は、前記請求項5の発明において、前記係数更新処理器が、SHARFアルゴリズムに基づいて係数の更新を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、コンピュータに入力信号となる2チャンネルのオーディオ信号に基づいて複数チャンネルのサラウンド信号を生成させるオーディオ再生用プログラムにおいて、一方のチャンネルの入力信号を多段のディレイ処理ステップによって分割し、この分割された多段の出力のそれぞれに対して所定の係数を重畳させるステップと、生成された多段の出力成分を加算することにより、一方のチャンネルの入力信号成分中から、他方のチャンネルの入力信号と相関の高い信号成分を抽出する無相関化ステップと、この無相関化ステップにおける前記係数の特性を、無相関化ステップによる出力信号と前記他方のチャンネルからの入力信号によって得られるエラー信号と、前記一方のチャンネルの入力信号と、フィルタ係数の更新速度を制御するステップサイズパラメータとに基づいて時々刻々と変化させる係数更新処理ステップと、この無相関化ステップからの出力と、他方のチャンネルの入力信号との差分を算出して、サラウンド信号として出力するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0015】
前記のような構成を有する本発明においては、適応無相関化器を構成する無相関化フィルタとして、入力信号に重畳する係数をその入出力信号に応じて逐次変化させる適応フィルタを使用することにより、2チャンネルの入力信号間の相関を極力低下させることが可能となり、2チャンネルのステレオオーディオ信号からマルチチャネルのオーディオ信号を生成する際に大きな問題となっていたサラウンド信号による逆相感や違和感を解消することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って具体的に説明する。なお、本発明は、生成されるチャンネル数にかかわらず、2チャンネルのステレオ信号からサラウンド信号を生成するオーディオ装置のすべてに適応可能であるが、以下に、4チャンネル、5チャンネル、5.1チャンネル信号の生成装置について、説明する。また、説明に用いるフィルタや係数更新のアルゴリズムを本発明の一例を示すもので、これらに限定されるものではない。更に、生成された信号は、そのまま、もしくは、残響効果、遅延処理、ダウンサンプリングに代表される音響効果及び信号処理を施して出力されるものであり、実施の形態は一例を示すに過ぎず、これらに限定されるものでない。
【0017】
[4チャンネル信号の生成]
2チャンネルのステレオ信号から4チャンネル信号を生成する実施の形態について、図3に従って説明する。
本実施の形態においては、2チャンネルのステレオオーディオ信号であるINLおよびINRが入力される。入力された信号INLおよびINRより、出力される4チャンネルの信号L、R、SL、SRが生成される。Lは受聴者の左前方に定位もしくは左前方から再生される信号であり、Rは受聴者の右前方に定位もしくは右前方から再生される信号であり、SLは受聴者の左側方から左後方にかけてに定位もしくは左側方から左後方にかけて再生される信号であり、SRは受聴者の右側方から右後方にかけてに定位もしくは右側方から右後方にかけて再生される信号である。
【0018】
出力される4チャンネルの信号の中で、LおよびRは、INLおよびINRをそのまま出力する。SLは、適応無相関化器1Lの入力XにINRを入力し、入力YにINLを入力し、適応無相関化器1LからASLとなる信号が生成される。この信号ASLを帯域制限フィルタ2L及びディレイ処理器3Lを通すことにより、帯域制限およびディレイ処理を行った後、左側のサラウンド信号として出力する。一方、SRは、適応無相関化器1Rの入力XにINLを入力し、入力YにINRを入力し、適応無相関化器1RからASRとなる信号を生成し、この信号ASRを帯域制限フィルタ2R及びディレイ処理器3Rを通すことにより、帯域制限およびディレイ処理を行った後、右側のサラウンド信号として出力する。
【0019】
このように本実施の形態では、2チャンネルのステレオ信号を適応無相関化器1L,1Rによって処理して左右のサラウンド信号を得ることにより、2チャンネルのステレオ信号から4チャンネルの信号が生成される。
【0020】
[5チャンネル信号の生成]
2チャンネルのステレオ信号から5チャンネル信号を生成する実施の形態について、図4に従って説明する。
2チャンネルのステレオオーディオ信号であるINLおよびINRが入力される。入力された信号INLおよびINRより、出力される5チャンネルの信号L、R、SL、SR、Cは生成される。このうち、信号L、R、SL、SRについては、前記図3に示した4チャンネル信号の4つの信号L、R、SL、SRと同様にして生成される。
【0021】
受聴者の前方正面に定位もしくは前方正面から再生される信号Cについては、入力信号INLおよびINRの和の成分を出力する。これらの処理により、2チャンネルのステレオ信号から5チャンネルの信号が生成される。
【0022】
[5.1チャンネル信号の生成]
2チャンネルのステレオ信号から5.1チャンネル信号を生成する実施の形態を図5に従って説明する。
2チャンネルのステレオオーディオ信号であるINLおよびINRが入力される。入力された信号INLおよびINRより、出力される5.1チャンネルの信号L、R、SL、SR、C及び低音域音声専用スピーカから再生される信号SWが生成される。このうち、信号L、R、SL、SR、Cについては、前記図4に示した5チャンネル信号の5つの信号L、R、SL、SR、Cと同様にして生成される。
【0023】
低音域音声専用スピーカから再生される信号SWは、入力信号INLおよびINRの和の成分を帯域制限フィルタ2SWによって帯域制限処理して出力する。これらの処理により、2チャンネルのステレオ信号から5.1チャンネルの信号が生成される。
【0024】
[適応無相関化器の構成例]
次に、前記各実施の形態において使用される適応無相関化器2L,2Rの構成例について説明する。なお、各適応無相関化器2L,2Rにおいて、入力信号X,Yは、2チャンネルのステレオ信号INL,INRに対応するものであるが、出力信号となる左右のチャンネルのサラウンド信号SL,SRに応じて、入力信号X,Yとステレオ信号INL,INRとの対応関係を入れ換えるものとする。
【0025】
また、適応信号処理には、FIR(Finite Impulse Response)フィルタやIIR(Infinite ImpulseResponse)フィルタ等のフィルタ構成に依らず多くのものがある。すなわち、本発明においては、ハードウェアやソフトウェアの制限や条件等を考慮し、それら適応信号処理のフィルタ構成や更新アルゴリズムを適宜選択することが可能であり、以下に挙げるフィルタ構成や更新アルゴリズムに限定するものではない。
【0026】
[FIRフィルタによる適応信号処理]
FIRフィルタによる適応信号処理を採用した適応無相関化器の構成例を図6に示す。この適応無相関化器は、加算側の入力信号Yと減算側の入力信号Xの入力端子と、サラウンド信号となる出力信号Oの出力端子とを備えている。加算側の入力信号Yは、ディレイ処理器Z−mを介して演算器4に入力される。
【0027】
一方、減算側の入力信号Xは、FIRフィルタを構成する多段に設けられたディレイ処理器Z−1によって順次遅延処理を施された後、下記の[数2]式に示すように、W,W,・・・,Wを要素とする係数処理器Wにおいて所定の係数と重畳され、その後、格段の出力成分が加算器Σによって加算されて、レスポンス信号RESを得る。ただし、kはタップ長(遅延処理の数)である。
【数2】
Figure 0003682032
【0028】
このようにして得られたレスポンス信号RESは演算器4に入力され、同じく演算器4に入力された他方のチャンネルの入力信号Yからこのレスポンス信号RESが差し引かれ、エラー信号eおよび出力信号Oが得られる。この動作は、下記の[数3]式から[数6]式に示すとおりである。ただし、gは任意の定数とする。
【数3】
Figure 0003682032
【数4】
Figure 0003682032
【数5】
Figure 0003682032
【数6】
Figure 0003682032
【0029】
[適応アルゴリズム]
ところで、本実施の形態において、前記係数処理器Wは適応アルゴリズムを備えた係数更新処理器5によって、入力信号Xの成分のうち入力信号Yの成分と相関が高い成分を抽出するように更新される。すなわち、この係数更新処理器5には、入力信号Xおよび演算器4からのエラー信号eが刻々と入力され、これら入力信号Xおよびエラー信号eが更新アルゴリズムによって処理されることにより、係数更新処理器5から各段の係数処理器W,W,・・・,Wに係数の更新指令が出力され、これに基づいて格段のディレイ処理器Z−1からの出力信号に重畳される係数の値が変化する。
【0030】
このような係数更新処理器5において採用される更新式には、種々のものがあるが説明のため代表的なものとしてLMS(Least Mean Square)アルゴリズムおよびNLMS(Normalized Least Mean Square)アルゴリズムを取り上げる。
【0031】
[LMSアルゴリズム]
LMSアルゴリズムは瞬時自乗誤差を評価量としたアルゴリズムであり、下記の[数7]式にて係数処理器Wは更新される。ここで、μはステップサイズパラメータであり実現される適応無相関化器の性能に大きく影響する量である。
【数7】
Figure 0003682032
【0032】
[NLMSアルゴリズム]
NLMSアルゴリズムはLMSアルゴリズムよりも適応スピードが優れているため、よく用いられるアルゴリズムであり、過去から現在までの入力のパワーで更新量を正規化している。このNLMSアルゴリズムは、下記の[数8]式から[数10]式によって係数処理器Wを更新するものであって、ここでαは忘却係数であり過去の入力に対する重みを決定している。
【数8】
Figure 0003682032
【0033】
【数9】
Figure 0003682032
【数10】
Figure 0003682032
【0034】
以上ような適応アルゴリズムを備えた係数更新処理器5により係数処理器Wは更新され、更新された係数処理器Wにより入力Xが処理されるという動作を繰り返し行うことで適応無相関化処理がなされる。
【0035】
[IIRフィルタによる適応信号処理]
IIRフィルタによる適応信号処理を採用した無相関化処理器の構成例を図7に示す。
この適応無相関化器においては、a,a,・・・,aを構成要素とする第1の係数処理器aと、b,b,・・・,bを構成要素とする第2の係数処理器bが設けられ、これら第1、第2の係数処理器a,bの各段に対して多段に設けられたディレイ処理器Z−1によって順次遅延処理された入力信号Xを入力する。
【0036】
第1及び第2の係数処理器a,bに入力された信号Xは下記の[数11]式のように処理され、レスポンス信号RESが得られる。その後、演算器4において、[数12]式から[数14]式に示すように、入力された信号Yから、レスポンス信号RESが差し引かれエラー信号eおよび出力信号Oが得られる。
【数11】
Figure 0003682032
【0037】
【数12】
Figure 0003682032
【数13】
Figure 0003682032
【数14】
Figure 0003682032
【0038】
この実施の形態において、各係数処理器a,bは、係数更新処理器5によって、適応アルゴリズムによりXの成分のうちYの成分と相関の高い成分を抽出するように更新される。この係数更新処理器5において採用可能な更新処理には種々のものがあるが、本実施の形態では、下記の[数15]式から[数17]式に示すSHARF(Simplifed Hyperstable Adaptive Recursive Filter)アルゴリズムを採用する。SHARFアルゴリズムは、比較的シンプルでLMSに酷似しているが通常、エラー信号eにスムージングフィルタCをかけてアルゴリズムの安定化を図っている。
【数15】
Figure 0003682032
【0039】
【数16】
Figure 0003682032
【数17】
Figure 0003682032
【0040】
以上の通り、本実施の形態においては、前記のような適応アルゴリズムを採用した係数更新処理器5により、係数処理器a,bで使用される係数は更新され、更新された係数が入力信号Xに重畳処理されると言う動作を繰り返しながら適応無相関化処理がなされる。
【0041】
[入出力信号の比較]
以上の通り、本発明によれば、元となる信号INL及びINRを適応無相関化器に入力すると、上述の処理を施された信号ASL,ASRが生成される。この適応無相関化器を使用した本発明と従来技術における出力信号を比較すると、次の通りである。
【0042】
図8及び図9に元となる信号INL,INRを示す。これら2つの信号は、4.5kHz付近に互いに共通の信号成分を持つ。図10及び図11に従来の方法で生成された信号OSL,OSRを示す。この出力信号OSL,OSRは、従来技術の項で説明したように、相互に同振幅逆位相の信号であることがわかる。
【0043】
図12及び図13に前記各実施の形態に示す本発明の適応無相関化器により生成されたサラウンド信号ASL,ASRを示す。図12及び図13より従来の方法のように相互に同振幅逆位相の信号となることなく逆相感を感じさせる信号成分の解消が見て取れる。また、元の信号に共通に含まれていた互いに相関が高い4.5kHz付近の信号成分についても無相関化処理により抑制されていることが見てとれる。
【0044】
適応無相関化器により無相関化処理を施された信号は、必要であれば帯域制限されサラウンド信号SL,SRとして、他の信号と同様に出力される。このとき、サラウンド信号SL,SRとは互いに相関の高い信号が抑制されているため、受聴者へ与える逆相感や違和感は解消される。
【0045】
【発明の効果】
以上の通り、従来技術ではサラウンド信号を生成し再生した際に受聴者に逆相感や違和感を与えることが問題となっていたが、本発明によれば、サラウンド信号を生成する際に相互に適応信号処理技術を利用した無相関化処理を施すため、生成された信号間の無相関化がより効果的に実現され、逆相感や違和感を伴うことなく、受聴することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のオーディオ装置におけるサラウンド信号の生成方法を示すブロック図。
【図2】本発明における適応無相関化器を使用したサラウンド信号の生成方法を示すブロック図。
【図3】本発明を4チャンネル信号の生成に適用した実施の形態を示すブロック図。
【図4】本発明を5チャンネル信号の生成に適用した実施の形態を示すブロック図。
【図5】本発明を5.1チャンネル信号の生成に適用した実施の形態を示すブロック図。
【図6】FIRフィルタによる適応無相関化器の構成例を示すブロック図。
【図7】IIRフィルタによる適応無相関化器の構成例を示すブロック図。
【図8】入力された2チャンネルステレオ信号の波形を示すグラフ。
【図9】入力された2チャンネルステレオ信号の周波数特性を示すグラフ。
【図10】従来の方法により生成されたサラウンド信号の波形を示すグラフ。
【図11】従来の方法により生成されたサラウンド信号の周波数特性を示すグラフ。
【図12】本発明の方法により生成されたサラウンド信号の波形を示すグラフ。
【図13】本発明の方法により生成されたサラウンド信号の周波数特性を示すグラフ。
【符号の説明】
1L,1R:適応無相関化器
2L,2R:帯域制限フィルタ
3L,3R:ディレイ処理器
4:演算器
5:係数更新処理器
Σ:加算器
−1,Z−m:ディレイ処理器
,W,・・・,W:係数処理器
,a,・・・,a:第1の係数処理器
,b,・・・,b:第2の係数処理器
C:スムージングフィルタ

Claims (7)

  1. 入力信号となる2チャンネルのオーディオ信号に基づいて複数チャンネルのサラウンド信号を生成するオーディオ装置において、
    一方のチャンネルの入力信号を多段のディレイ処理器によって分割し、この分割された多段の出力のそれぞれに対して係数処理器により所定の係数を重畳させて、多段の出力成分を生成し、これら多段の出力成分を加算することにより、一方のチャンネルの入力信号成分中から、他方のチャンネルの入力信号と相関の高い信号成分を抽出する無相関化フィルタと、
    この無相関化フィルタの特性を、その出力信号と前記他方のチャンネルからの入力信号によって得られるエラー信号と、前記一方のチャンネルの入力信号と、フィルタ係数の更新速度を制御するステップサイズパラメータとに基づいて時々刻々と変化させる係数更新処理器とを備えた適応無相関化器を設け、
    この無相関化フィルタからの出力と、他方のチャンネルの入力信号との差分を算出して、サラウンド信号として出力することを特徴とするオーディオ装置。
  2. 前記無相関化フィルタが、FIRフィルタによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオーディオ装置。
  3. 前記係数更新処理器が、LMSアルゴリズムに基づいて係数の更新を行うことを特徴とする請求項2に記載のオーディオ装置。
  4. 前記係数更新処理器が、NLMSアルゴリズムに基づいて係数の更新を行うことを特徴とする請求項2に記載のオーディオ装置。
  5. 前記無相関化フィルタが、IIRフィルタによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオーディオ装置。
  6. 前記係数更新処理器が、SHARFアルゴリズムに基づいて係数の更新を行うことを特徴とする請求項5に記載のオーディオ装置。
  7. コンピュータに入力信号となる2チャンネルのオーディオ信号に基づいて複数チャンネルのサラウンド信号を生成させるオーディオ再生用プログラムにおいて、
    一方のチャンネルの入力信号を多段のディレイ処理ステップによって分割し、この分割された多段の出力のそれぞれに対して所定の係数を重畳させるステップと、
    生成された多段の出力成分を加算することにより、一方のチャンネルの入力信号成分中から、他方のチャンネルの入力信号と相関の高い信号成分を抽出する無相関化ステップと、
    この無相関化ステップにおける前記係数の特性を、無相関化ステップによる出力信号と前記他方のチャンネルからの入力信号によって得られるエラー信号と、前記一方のチャンネルの入力信号と、フィルタ係数の更新速度を制御するステップサイズパラメータとに基づいて時々刻々と変化させる係数更新処理ステップと、
    この無相関化ステップからの出力と、他方のチャンネルの入力信号との差分を算出して、サラウンド信号として出力するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするオーディオ再生用プログラム。
JP2002136917A 2002-05-13 2002-05-13 オーディオ装置並びにその再生用プログラム Expired - Lifetime JP3682032B2 (ja)

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