請求項1に記載の真空断熱材は、ボード状の芯材をガスバリア性を有する外被材で覆い、外被材の内部を減圧して真空封入した真空断熱材本体を収納袋で覆って形成される真空断熱材であって、外被材の周縁に沿うひれ部が芯材の内包部位に相当する外被材の表面に折り重ねられ、当該ひれ部の折り重ねられた真空断熱材本体の全部を一つの収納袋で覆って前記収納袋の開口部を折り返した構成とされている。
本発明によれば、ひれ部を折曲した状態で真空断熱材本体の全部が一つの収納袋に収納されるので、真空断熱材本体の四隅が収納袋で覆われて外部に露出しない。また、折曲されたひれ部が折曲前の状態に戻ろうとしても、収納袋によって外被材からの浮き上がりが阻止される。
これにより、本発明の真空断熱材を他の部材に直接当接させても、ひれ部や真空断熱材本体の四隅によって他の部材が損傷を受けることが未然に防止される。
本発明において、収納袋は、種々の形態を採ることができる。
例えば、二枚のシート材を重ね合わせて三方を縫製し残りの一方を開口とした袋や、二枚のシート材を重ね合わせて二方を縫製し残りの二方を開口とした袋を収納袋とすることができる。また、二枚のシート材を重ね合わせて対向する二方を縫製して筒形状とした袋を収納袋とすることも可能である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の真空断熱材において、収納袋は、前記外被材よりも柔軟性の高い素材で製される構成とされている。
本発明によれば、収納袋が外被材よりも高い柔軟性を有するので、収納袋が緩衝材として機能する。これにより、ひれ部や真空断熱材本体の鋭く尖った部位が収納袋で覆われて他の部材に直接当接したり擦れたりすることを効果的に防止することができ、損傷が生じることを未然に防止することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の真空断熱材において、芯材は、繊維材をボード状に圧縮成形して形成され、外被材はガスバリア性を有する積層フィルム材で形成される構成とされている。
本発明によれば、外被材の内部が真空状態となるので、従来の断熱材に比べて断熱性能を著しく向上させることができる。これにより、同一の断熱性能を有する断熱材を製する場合は、従来の断熱材に比べて真空断熱材を薄くすることができ、省スペース化、軽量化を図ることが可能となる。
本発明において、芯材には、グラスウールなどの繊維材をバインダーを用いてボード状に加熱成形したものを用いることができる。
また、外被材には、ガスバリア層の内外に熱溶着層および保護層を積層して形成されるラミネートフィルムを用いて形成することができる。則ち、外被材は、アルミニウムなどの金属箔や、金属または無酸化物の蒸着されたフィルムをガスバリア層とし、当該ガスバリア層の内面側に、無延伸ポリプロピレン等のフィルムを熱溶着層として積層すると共に、ガスバリア層の外面側に、ナイロンやポリエチレンテレフタレートなどのフィルムを保護層として積層したラミネートフィルムを用いて形成することができる。
請求項4に記載の発明は、4面の周壁部と底面部と開閉可能な蓋部とを有し、周壁部、底面部および蓋部はいずれもシート材に請求項1乃至3のいずれか一項に記載の真空断熱材を内包して形成され、使用時には、周壁部、底面部および蓋部によって箱体を形成し、不使用時には、周壁部、底面部および蓋部を重ね合わせて折り畳み可能な構成とされた折り畳み式保冷容器である。
本発明によれば、真空断熱材を用いることにより、高い保冷性能を得ることができる。また、周壁部、底面部および蓋部は、いずれも、シート材に平板状の真空断熱材を内包して一体的に形成される。従って、真空断熱材を取り外すような手間を要することなく、短時間に組み立てや折り畳みを行うことが可能である。
また本発明によれば、真空断熱材には収納袋が設けられるので、ひれ部や真空断熱材本体の鋭く尖った部位が収納袋で覆われて、保冷容器のシート材に直接当接しない。これにより、ひれ部や真空断熱材本体によって保冷容器のシート材が損傷することを効果的に防止することができる。特に、本発明によれば、折り畳み式の保冷容器であるため、保冷容器の折り畳みや組み立てに際して真空断熱材がシート材の内部で移動し易い。しかし、ひれ部や真空断熱材本体の鋭く尖った部位が収納袋で覆われているので、シート材に損傷を与えることが未然に防止され、保冷容器の耐久性の向上を図ることが可能となる。
(実施の形態1)
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態1に係る真空断熱材5に採用する真空断熱材本体31を示す斜視図、図1(b)は(a)のA−A矢視断面図、図2は、図1の真空断熱材本体31のひれ部を折曲する手順を示す斜視図である。また、図3(a),(b)は、本発明の実施の形態1に係る真空断熱材5の製造手順を示す斜視図、図3(c)は(b)のB−B矢視断面図である。尚、図1に示す真空断熱材本体31は、後述する実施の形態2,3の真空断熱材に共通に使用するものである。
本実施の形態に採用する真空断熱材本体31は、図1(b)の様に、ボード状の芯材32をガスバリア性を有する外被材33,33で覆い、外被材33,33の内部を減圧して真空封入して形成される断熱材である。
芯材32は、繊維材または樹脂発泡材または粒状体の素材のうちの少なくともいずれか1種類の素材を用いて形成することができる。本実施の形態では、繊維材をバインダーを用いてボード状に加熱成形したものを用いている。
外被材33は、ガスバリア性を有する素材を用いて形成することができる。本実施の形態では、外被材33として、ガスバリア層の内外に熱溶着層および保護層を積層して形成されるラミネートフィルムを使用した。則ち、外被材33は、アルミニウムなどの金属箔や、金属または無酸化物の蒸着されたフィルムをガスバリア層とし、当該ガスバリア層の内面側に、無延伸ポリプロピレン等のフィルムを熱溶着層として積層すると共に、ガスバリア層の外面側に、ナイロンやポリエチレンテレフタレートなどのフィルムを保護層として積層したラミネートフィルムである。
真空断熱材本体31は、繊維材をボード状に成形した芯材32を、ガスバリア性を有するラミネートフィルムで成る外被材33,33で覆い、外被材33,33の内部を減圧して真空封入して形成された断熱材であり、図1(a),(b)の様に、平板形状を有する。
本実施の形態の真空断熱材本体31は、厚さが略12mmであり、熱伝導率(初期熱伝導率)は0.005W/mKで、ウレタン樹脂の略4倍の優れた断熱性能を有する。
真空断熱材本体31は、図1(a)の様に、芯材32を内包した外被材33,33の周囲がシールされて真空封入して形成されるため、外被材33の周縁に沿って外被材33同士を接合したひれ部(シール部)33a,33b,33cが形成される。
これらのひれ部33a〜33cは、ラミネートフィルムで成る外被材33同士を熱溶着によって接合して形成されるため、ラミネートフィルム自体は可撓性を有する素材であるものの、ひれ部33a〜33cの4隅の角部Kは鋭く尖り、相当の強度を有する。このため、保冷容器などを製する際に、真空断熱材本体31をそのままシート材などに内包すると、ひれ部33a〜33cの尖った角部Kがシート材に直接当接してシート材を突き破る虞が生じる。
また、ひれ部33a〜33cは、図1(b)様に、芯材32を内包しないため、断熱に寄与しない。このため、真空断熱材本体31の面積に対してひれ部の面積が増大すると、断熱性を発現する面積が低減する。従って、保冷容器などを製する場合には、できる限りひれ部33a〜33cの面積を縮小する必要がある。
本実施の形態の真空断熱材5は、このような真空断熱材本体31の使用に際しての問題、則ち、ひれ部33a〜33cの角部Kによる他の部材への損傷や、ひれ部33a〜33cによる断熱面積の低下を回避するべく、ひれ部33a〜33cを折曲し、更に、ひれ部33a〜33cを折曲した真空断熱材本体31を収納袋に収納する構成を採用している。
真空断熱材本体31のひれ部33a〜33cは、図2に示す手順で折曲される。
則ち、図2(a),(b)の様に、真空断熱材本体31の長手両側縁に沿うひれ部33c,33cを側縁に沿って下方に折曲して、芯材32の内包部位に相当する外被材33の表面(図2aの下面)に折り重ねる。この際、図2(b)の様に、ひれ部33cの折り目の延長線がひれ部33aに係る部位は、ひれ部33aの端部に向かうに連れて折り目が内方へ傾斜するように折曲する。
次いで、図2(c)の様に、真空断熱材本体31の長手両端部のひれ部33a,33bを、芯材32の内包部位に相当する外被材33の表面(図2cの上面)に折り重ねる。そして、図3(a)の様に、テープ(仮止め部材)35でひれ部33a,33bを外被材33の表面に仮止めする。
このようにして真空断熱材本体31のひれ部33a〜33cを折曲すると、図3(a)の様に、折曲されたひれ部33a〜33cの4隅の角部Kが真空断熱材本体31の長手両端部近傍の上面側に位置し、真空断熱材本体31の四隅に角部Mが形成される。
これらの角部K,Mは、上記したように、鋭く尖って強度を有するので、他の部材へ損傷を与え易い。しかし、本実施の形態の真空断熱材5は、真空断熱材本体31を収納袋36に収納して角部K,Mを覆うことにより、他の部材への損傷の発生を防止する構成としている。
尚、本実施の形態では、真空断熱材本体31のひれ部33a〜33cを図2の様に折曲したが、全てのひれ部33a〜33cを上方または下方に折曲することも可能である。
ひれ部33a〜33cを折曲した真空断熱材本体31は、図3(a)の様に、収納袋36に収納される。
本実施の形態では、収納袋36を、合成樹脂を素材とした高強度のシート基材とシート基布とをラミネート加工したシート材36aを用いて形成している。則ち、収納袋36は、方形状のシート材36a,36aをシート基材側を対向させて重ね合わせ、重ね合わせたシート材36a,36aの三方の側縁36c,36d,36dを縫製して袋状としたものである。
収納袋36の内面のシート基材側は外面のシート基布側に比べて表面の平滑性が高く、摩擦が少ない。収納袋36は、真空断熱材本体31より僅かに幅が広く、その長さは真空断熱材本体31よりも長い。
則ち、収納袋36は、内面側にシート基材が位置し外面側にシート基布が位置することとなり、外面側に比べて内面側は摩擦が少なく、後述する真空断熱材本体31の挿入を容易に行うことを可能にしている。
シート材36aに使用する合成樹脂素材としては、適宜のものを用いることができるが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの樹脂素材を使用することができる。また、本実施の形態では、シート材36aに使用する素材を真空断熱材本体31の外被材33に比べて柔軟性の高い素材としている。
ひれ部33a〜33cを折曲した真空断熱材本体31を、図3(a)の様に、収納袋36の開口部36bから挿入し、図3(b)の様に、収納袋36の開口部36bを折り返してテープ35で固定する。これにより、真空断熱材本体31を収納袋36に収納した真空断熱材5が完成する。
尚、本実施の形態では、収納袋36の開口部36bを、図3(b)の様に、そのまま折り返している。しかし、開口部36bの上面側のシート材36aを先に真空断熱材本体31の下面と下面側のシート材36aとの間に挿入し、開口部36bの下面側のシート材36aを上面側のシート材36aに重ねて折り返しても良い。
また、真空断熱材本体31を収納した収納袋36の三方の周縁を内方に折曲してテープなどで止めることも可能である。
このようにして製された真空断熱材5は、図3(a)〜(c)の様に、ひれ部33a〜33cが折曲された真空断熱材本体31が収納袋36で覆われて形成される。従って、真空断熱材本体31の四隅の角部Mや、ひれ部33a〜33cの角部Kが収納袋36のシート材36aで覆われることとなり、角部M,Kが露出しない。これにより、角部M,Kによって他の部材へ損傷を与えることが防止される。
また、折曲されたひれ部33a〜33cが収納袋36によって外被材33の表面に密着するので、仮に、ひれ部33a〜33cを外被材に仮止めしたテープ35が剥がれた場合でも、ひれ部33a〜33cが外被材33の表面から浮き上がることが防止される。これにより、浮き上がったひれ部33a〜33cの角部Kが収納袋36のシート材36aを突き破って他の部材に損傷を与える様な不具合を未然に防止することが可能となる。
このように、本実施の形態の真空断熱材5によれば、真空断熱材本体31を収納袋36で覆うだけの極めて簡単な構成により、折曲されたひれ部33a〜33cの角部Kや真空断熱材本体31の角部Mを収納袋36で覆われる。これにより、真空断熱材5を用いて保冷容器などを形成する場合でも、真空断熱材5を内包するシート材などに損傷を与えることがなく、耐久性の向上を図ることが可能となる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る真空断熱材6の製造手順を示す斜視図である。
本実施の形態の真空断熱材6は、前記実施の形態1に示した真空断熱材5において、収納袋36に代えて収納袋37を用いるものであり、真空断熱材本体31は同一のものを使用する。従って、同一部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
本実施の形態の真空断熱材6に採用する真空断熱材本体31は、前記実施の形態1に採用した真空断熱材本体31と同一であり、図4(a)の様に、ひれ部33a〜33cが上記した手順で折曲されてテープ35で仮止めされたものを使用する。
真空断熱材6に使用する収納袋37は、図4(a)の様に、方形状のシート材37a,37aを対向させて重ね合わせ、シート材37aの長手方向に沿う二方の側縁37d,37dに沿って縫製して筒形状とした袋である。
収納袋37は、真空断熱材本体31よりも僅かに幅が広く、その長さは真空断熱材本体31よりも長い。また、収納袋37に採用するシート材37aは、前記実施の形態1に採用したシート材36aと同一のものである。
真空断熱材6は、真空断熱材本体31を収納袋37に挿入して製される。則ち、図4(a)の様に、ひれ部33a〜33cを折曲した真空断熱材本体31を収納袋37の開口部37bまたは開口部37cのいずれかから挿入し、図4(b)の様に、真空断熱材本体31の長手両端から突出する収納袋37の開口部37b,37cを折り返してテープ35で固定して製される。
このようにして製された真空断熱材6は、上記した真空断熱材5と同様に、真空断熱材本体31を収納袋37に挿入した極めて簡単な構成により、折曲されたひれ部33a〜33cの角部Kや真空断熱材本体31の角部Mを収納袋37で覆った真空断熱材6を形成することができる。これにより、真空断熱材6を用いて保冷容器などを形成する場合でも、真空断熱材6を内包するシート材などに損傷を与えることがなく、耐久性の向上を図ることが可能となる。
尚、本実施の形態の真空断熱材6は、図4(b)の様に、収納袋37の両端をそのまま折り返した構成としたが、開口部37bの上面側のシート材37aを先に真空断熱材本体31の下面と下面側のシート材37aの間に挿入し、開口部37bの下面側のシート材37aを上面側のシート材37aに折り返して重ねても良い。また、開口部37cについても同様にして折り返すことが可能である。
また、真空断熱材本体31を収納した収納袋37の長手両側縁を内方に折曲してテープなどで止めることも可能である。
また、本実施の形態の真空断熱材6は、真空断熱材本体31全体を一つの収納袋37に収納する構成としたが、長さの短い収納袋を二つ用いて、真空断熱材本体31の長手両端部のみを覆う構成を採ることも可能である。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る真空断熱材7の製造手順を示す斜視図である。
本実施の形態の真空断熱材7は、前記実施の形態1に示した真空断熱材5において、収納袋36に代えてカバー材38を用いるものであり、真空断熱材本体31は同一のものを使用する。従って、同一部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
本実施の形態の真空断熱材7に採用する真空断熱材本体31は、前記実施の形態1に採用した真空断熱材本体31と同一であり、ひれ部33a〜33cも、図5(a)の様に、上記した手順で折曲されたものを使用する。
また、真空断熱材7に使用するカバー材38は、図5(a)の様に、方形長尺のシート材であり、前記実施の形態1に採用したシート材36aと同一素材のシート材を用いている。
真空断熱材7は、真空断熱材本体31の長手両端部にカバー材38,38を巻き付けて製される。則ち、図5(a)の様に、ひれ部33a〜33cを折曲した真空断熱材本体31の長手両端部のひれ部33a,33bを覆うように、カバー材38,38を短手方向に向けて真空断熱材本体31に巻き付け、図5(b)の様に、巻き付けたカバー材38,38の端部をテープ35で固定して製される。
このようにして製された真空断熱材7は、真空断熱材本体31にカバー材38,38を巻き付けただけの極めて簡単な構成により、折曲されたひれ部33a〜33cの角部Kや真空断熱材本体31の角部Mがカバー材38,38で覆われる。これにより、真空断熱材7を用いて保冷容器などを形成する場合でも、真空断熱材7を内包するシート材などに損傷を与えることがなく、耐久性の向上を図ることが可能となる。
尚、本実施の形態では、カバー材38,38を、真空断熱材本体31の長手両端部に短手方向へ向けて巻き付ける構成としたが、真空断熱材本体31の短手両端部に長手方向へ向けて巻き付ける構成を採ることも可能である。
(実施の形態4)
次に、前記真空断熱材5(図3参照)を採用した本発明の実施の形態4に係る保冷容器1を説明する。
図6は、本実施の形態に係る折り畳み式保冷容器1を示す斜視図、図7は図6のC−C矢視断面図、図8は図6の保冷容器1の蓋部を閉じる状態を示す斜視図、図9は図8のE方向矢視図、図10は図8のF−F矢視断面図、図11は図6のG−G矢視断面図において底面部の係合を解除した状態を示す断面図、図12(a)〜(e)は図6の保冷容器1を折り畳む手順を示す斜視図である。また、図13(a)は図6の保冷容器1を保護容器に収納した状態を示す斜視図、同図(b),(c)は、不使用時に折り畳まれた保冷容器1を保護容器に収納する状態を示す斜視図である。
本実施の形態の折り畳み式保冷容器1は、使用時には箱体とされ、不使用時に折り畳むことのできる折り畳み可能な保冷容器である。
本実施の形態の保冷容器1は、図6の様に、互いに折曲可能に方形状に連接された4面の周壁部10,10,13,13と、対向する2面の周壁部10,10の上側縁11,11に沿って折曲可能に連接された2面の蓋部16,16と、当該蓋部16,16の連接された2面の周壁部10,10の下側縁12,12に沿って折曲可能に連接された2面の底面部21,21とを備えて形成される。
本実施の形態では、蓋部16は、対向する蓋部16側へ向かう長さ、則ち、周壁部10の上側縁11から蓋部16の側縁17までの長さLが、周壁部13の幅Dの略半分であり、2面の蓋部16,16は同一形状を有する。また、2面の底面部21,21も蓋部16と同一形状を有する。また、蓋部16の長さLは、周壁部10の高さHよりも短い構成としている。
具体的には、本実施の形態の保冷容器1は、図6の様に、幅Wが600mm、奥行きDが400mm、高さHが300mmのサイズであり、蓋部16の長さLは略200mmであって高さHよりも短い構成としている。また、保冷容器1の内容積は略70リットルである。
周壁部10、蓋部16および底面部21は、図7の様に、いずれもシート材30に上記した真空断熱材5を内包して形成される。
真空断熱材5は、前記図3に示したものと同一である。則ち、前記図1で示した繊維材で成る芯材32を、ガスバリア性を有する外被材33で覆い、その内部を減圧して真空封入して形成される真空断熱材本体31を、図3の様に、収納袋36に収納して形成された真空断熱材5である。
真空断熱材5は、上記したように、熱伝導率(初期熱伝導率)が0.005W/mK、その厚さが略12mmであり、周壁部10、蓋部16および底面部21における高い断熱性を確保すると共に、当該各部の薄型化を図っている。
シート材30は、ポリエステル生地の裏面に合成樹脂コートを施したものを縫製により成形加工したもので、耐水性、防水性および柔軟性を兼ね備えている。
本実施の形態では、周壁部10、蓋部16および底面部21のうち、保冷容器1の使用時または不使用時に外部側に位置する面には、図7の様に、厚さ4mmのシート材30aを用い、他の面には厚さ2mmのシート材30bを用いている。
則ち、保冷容器1の周壁部10、蓋部16および底面部21の各部は、耐水性、防水性および柔軟性を備えた袋状に縫製されたシート材30の内部に真空断熱材5を内包した構造である。これらの、周壁部10、蓋部16および底面部21は、互いのシート材30の側縁同士が縫製によって接続されて、折曲可能にされている。
また、図6の様に、蓋部16および底面部21の連接された周壁部10,10に隣接する2面の周壁部13,13は、略中央部に高さ方向へ延びる折り畳み線23に沿って真空断熱材5が分割され、当該折り畳み線23に沿って周壁部13が折曲可能とされている。則ち、周壁部13は、袋状に縫製されたシート材30の内部に二つの真空断熱材5,5を収納し、折り畳み線23に沿ってシート材30を縫製して形成され、当該折り畳み線23に沿って折曲可能とされている。
則ち、本実施の形態の保冷容器1は、周壁部10,13、蓋部16および底面部21の各部が、シート材30に真空断熱材5を内包して形成され、各々の真空断熱材5には、上記したように、真空断熱材本体31を収納袋36で覆ったものを用いている。これにより、真空断熱材本体31をそのままシート材30に内包する構成に比べて、真空断熱材本体31の角部によってシート材30が損傷を受けることを効果的に防止している。
図6,図8の様に、一方の蓋部16には、側縁17に沿って、面ファスナ18aを備えた可撓性を有する係合フラップ18が設けられ、他方の蓋部16には、一方の蓋部16の係合フラップ18に対応させて面ファスナ20が設けられている。係合フラップ18も、上記したシート材30b(厚さ2mm、図7参照)を用いており、当該シート材30bに面ファスナ18aを縫製して形成されている。
また、図6,図8の様に、折曲可能な2面の周壁部13には、上側縁14に沿って、面ファスナ24aを備えた可撓性を有する係合フラップ24が略上方へ向けて付勢された状態で縫製によって取り付けられている。係合フラップ24も、上記したシート材30b(厚さ2mm、図7参照)を用いており、当該シート材30bに面ファスナ24aを縫製して形成されている。
また、係合フラップ24の面ファスナ24aに対応させて、2面の蓋部16,16の内面には面ファスナ19,19が設けられている。
底面部21は蓋部16と同一の基本構造を有する。則ち、図6,図11の様に、一方の底面部21には、側縁29に沿って、面ファスナ22aを備えた可撓性を有する係合フラップ22が設けられている。また、他方の底面部21には、一方の底面部21の係合フラップ22に対応させて面ファスナ28が設けられている。この係合フラップ22も、上記したシート材30b(厚さ2mm、図7参照)を用いており、当該シート材30bに面ファスナ22aを縫製して形成されている。
また、図6,図11の様に、底面部21の外面側には、外面全面を覆う可撓性を有する底面シート27が設けられている。則ち、底面シート27は、2面の底面部21の外形と略等しい長方形のシートであり、その4つの辺部を周壁部10,13の下側縁12,15に沿って縫製して取り付けられている。本実施の形態では、底面シート27にも、上記したシート材30b(厚さ2mm、図7参照)を用いている。
保冷容器1の内部には、内蓋25が設けられている。内蓋25は、可撓性を有する方形状のシート材であり、図6,図10の様に、蓋部16が連接される周壁部10の上側縁11に沿ってその一辺が縫製によって取り付けられている。内蓋25は、蓋部16による遮蔽性を補助するための遮蔽材ある。
本実施の形態では、内蓋25は、図6の様に、保冷容器1の幅Wと略等しい幅を有し、その長さは、図10の様に、対向する周壁部10までの長さDと周壁部10の高さHの和以上とされている。内蓋25をこのサイズに設定することにより、図10の様に、保冷容器1の内部の一部に冷凍商品S1〜S4が収納されて隙間が生じる場合でも、冷凍商品S1〜S4の全てを内蓋25で覆いつくすことができ、遮蔽効果が増大する。
また、保冷容器1の内部には、蓄冷剤を収納する蓄冷剤収納部26を設けている。蓄冷剤収納部26は、図6,図10の様に、メッシュ状のネット材を用いて形成した袋体であり、図10の様に、内部に蓄冷剤34を収納可能である。本実施の形態では、蓄冷剤収納部26を、前記内蓋25が連接された周壁部10の内面に設けている。これにより、蓄冷剤34および冷凍商品S1〜S4を内蓋25で容易に覆うことができ、冷凍商品S1〜S4の保冷性能および遮蔽性の向上を図っている。
尚、蓄冷剤収納部26は、周壁部10の内面に限らず、周壁部13や蓋部16の内面に複数設けることも可能である。
本実施の形態では、蓄冷剤収納部26に、融点が−27℃〜−18℃、重量が1kgの蓄冷剤34を2個収納可能としている。また、本実施の形態で使用した蓄冷剤34は、(株)イノアックコーポレーション製「CAH−1001マイナス25℃グレード」である。
次に、本実施の形態の保冷容器1の使用時に際しての組み立て手順を説明する。
まず、図11の様に、底面部21,21を閉姿勢(水平方向)へ回動させて、図10の様に、側縁29,29同士を突き合わせる。そして、一方の底面部21に設けた係合フラップ22を他方の底面部21に押圧して、係合フラップ22の面ファスナ22aと他方の底面部21の面ファスナ28を互いに係合させる。
底面部21,21をこのように係合すると、図10の様に、双方の底面部21によって略平面が形成され、当該底面21,21の下方には全面を覆うように底面シート27が位置する。従って、底面部21と周壁部13との間に僅かな隙間が生じた場合でも、底面シート27によって内外の連通が遮断され、保冷性能が損なわれることがない。
また、本実施の形態では、底面シート27に耐水性および防水性を有するシート材30bを用いており、内部に滞留する水が容器外部に流出することを防止している。
次いで、図10の様に、必要に応じて蓄冷剤収納部26に上記した蓄冷剤34を収納すると共に、配送しようとする冷凍食品などの冷凍商品S1〜S4を内部に収納し、冷凍商品S1〜S4を覆うように内蓋25をかける。
ここで、本実施の形態では、蓄冷剤34に融点が−27℃以上−18℃以下のものを使用している。これは、通常、小口配送を行う卸業者や物流センターでは、冷凍倉庫を−30℃〜−22℃程度に温度管理することが多い。従って、当該冷凍倉庫に保管するだけで蓄冷剤34を固体化させ得るように、前記範囲の融点を有する蓄冷剤34を使用している。これにより、配送時には、冷凍倉庫で保管されて固体化された蓄冷剤を直ちに保冷容器1に収納して保冷に供することが可能となる。
収納しようとする冷凍商品S1〜S4を全て収納すると、蓋部16,16を閉姿勢(略水平方向)へ回動させる。図8の様に、蓋部16,16を内方へ向けて回動すると、周壁部13に略上方へ向けて設けられた係合フラップ24が、蓋部16の回動によって押圧されて内方へ倒れ、係合フラップ24の面ファスナ24aと蓋部16の面ファスナ19が互いに係合する。そして、蓋部16,16の双方を閉姿勢に移動すると、係合フラップ24の面ファスナ24aの全面が蓋部16の面ファスナ19と係合し、蓋部16と周壁部13との間が係合フラップ24によって遮蔽される。
また、蓋部16,16を閉姿勢に移動すると、図9の様に、蓋部16,16の側縁17,17同士が互いに突き合わされる。そして、最後に、一方の蓋部16に設けた係合フラップ18を他方の蓋部16に押圧して、面ファスナ18a,20を互いに係合させる。これにより、蓋部16,16の側縁17,17同士の突き合わせ部位が係合フラップ18で覆われる。
則ち、本実施の形態の保冷容器1は、底面部21,21および蓋部16,16を閉姿勢に回動して係合フラップ22,18で係合するだけで、図12(a)の様に、真空断熱材5を内包した周壁部10,13、底面部21および蓋部16で囲まれた箱体が形成される。
そして、形成された箱体は、図10の様に、底面部21,21の側縁29,29同士の突き合わせ部位が係合フラップ22で覆われると共に、底面部21の外面が底面シート27で覆われる。更に、図9の様に、蓋部16,16の突き合わせ部位は係合フラップ18で覆われると共に、蓋部16と周壁部13との間が係合フラップ24によって遮蔽される。
このように、本実施の形態の保冷容器1は、底面部21,21および蓋部16,16を閉姿勢に移動させて組み立てるだけで、内外の連通が完全に遮断され、しかも全面が真空断熱材で囲まれた極めて断熱性の高い箱体を直ちに形成することができる。
本実施の形態では、保冷容器1の内部に、融点が−27℃以上−18℃以下の蓄冷剤を、50リットル当たりにつき1個収納することにより、保冷容器1の内部の雰囲気の平均温度を10時間以上継続して0℃以下に保持可能であり、冷凍商品(例えばアイスクリーム)の品温に置き換えれば、10時間以上継続して概ね−15℃までに保持できる。従って、本実施の形態の保冷容器1に蓄冷剤を併用して配送を行うことにより、冷凍商品を低温に維持して品質を損ねることなく長距離配送を行うことが可能となる。なお、蓄冷剤の少なくとも一部をドライアイスで代用しても構わない。
次に、不使用時に際しての保冷容器1の折り畳み手順を説明する。
保冷容器1の折り畳みは、例えば、配送を終えて保冷容器1が空になった時や、配送元に戻って保冷容器1を収納保管する際に行われる。尚、以下の折り畳み手順の説明においては、蓄冷剤収納部26に収納された蓄冷剤34は取り出されているものとする。
折り畳みに際しては、まず、図12(a)の様に、箱体とされている保冷容器1の蓋部16の係合フラップ24掴んで引き上げる。そして、図12(b)の様に、係合フラップ18の面ファスナ18aと蓋部16の面ファスナ20の係合、および、係合フラップ24の面ファスナ24aと蓋部16の面ファスナ19の係合を解除しつつ蓋部16,16を開姿勢へ回動する。
次いで、図11,図12(c)の様に、内蓋25を蓄冷剤収納部26側へ寄せ、底面部21の係合フラップ22を掴んで引き上げて、係合フラップ22の面ファスナ22aと底面部21の面ファスナ28の係合を解除する。そして、図12(d)の様に、底面部21,21を周壁部10,10の内面に折り重ねると共に、蓋部16,16を周壁部10,10の外面に折り重ねる。
続いて、図12(d)の様に、周壁部13,13を折り畳み線23に沿って内方に折曲しつつ、周壁部10,10同士を近接させる。これにより、図12(e)の様に、外側から順に蓋部16、周壁部10、底面部21および折曲された周壁部13の4面が対象に重ね合わせられ、全8面が重なった状態で折り畳みが完了する。
このように、本実施の形態の保冷容器1は、従来のように断熱パネルなどの部材の着脱を行うことなく、短時間に極めて容易にコンパクトに折り畳むことができる。
保冷容器1を折り畳むと、図12(e)の様に、蓋部16,16、周壁部10,10、底面部21,21および周壁部13,13の合計8面が折り重ねられた状態となる。
また、上記したように、本実施の形態では、周壁部10,13の高さH(300mm)に対して、蓋部16および底面部21の長さL(200mm)が短い。これにより、保冷容器1を折り畳むと、周壁部10を最大外寸として前記8面が重ね合わせられた形状となる。
また、図6の保冷容器1は、使用時または不使用時に外部側に位置する全ての面に対して、図7で示した厚手のシート材30aを使用している。則ち、周壁部10、周壁部13および底面部21の外面側と、蓋部16の内面および外面側の各々の面に、図7で示した厚手のシート材30aを採用している。
より具体的には、蓋部16は、真空断熱材5の厚さ(12mm)と、それを内包するシート材30aの厚さ(4mm+4mm)の和である厚さ20mmである。周壁部10,13は、真空断熱材5の厚さ(12mm)と、それを内包するシート材30a,30bの厚さ(4mm+2mm)の和である厚さ18mmである。また、底面部21は、真空断熱材5の厚さ(12mm)と、それを内包するシート材30a,30bの厚さ(4mm+2mm)の和である厚さ18mmである。従って、折り畳んで8面を重ね合わせると、その厚さの合計は略148mmとなる。
則ち、本実施の形態の保冷容器1を折り畳むと、周壁部10の外寸(W600mm×H300mm)を最大外寸とし、厚さを略148mmに縮小することができ、使用時の箱体に比べて極めてコンパクトにすることができる。これにより、折り畳んだ複数の保冷容器1を汎用のロールパレットなどに収納して容易に移動させることも可能である。
また、上記したように、使用時または不使用時に外部側に位置する全ての面に対して、厚手のシート材30aを使用している。
従って、使用に際して箱体が形成されたときは、各面に内包される真空断熱材5が厚手のシート材30aによって外力から保護される。また、不使用時に折り畳むと、蓋部16の内面が厚手のシート材30aによって外力から保護されることとなる。これにより、使用時および不使用時の双方において、真空断熱材5を外力から保護することができ、真空断熱材5の破損を防止して耐久性を向上することが可能となる。
更に、本実施の形態の保冷容器1は、周壁部10,13、蓋部16および底面部21の各部が、シート材30に上記した上記した真空断熱材5を内方して形成されるので、折り畳みや組み立てに際して、周壁部10,13、蓋部16および底面部21の各部に繰り返して外力が作用しても、真空断熱材5によってシート材30が損傷を受けることがない。
これにより、保冷容器1の耐久性を著しく向上させることが可能となる。
尚、本実施の形態の保冷容器1は、前記実施の形態1の真空断熱材5を用いた構成としたが、前記実施の形態2,3で述べた真空断熱材6,7を用いて構成することも可能である。
ここで、本実施の形態の保冷容器1は、上記したように、所定の強度および剛性を備えた真空断熱材5を内包した蓋部16、周壁部10,13および底面部21で形成されるので、保冷容器1を単独で使用する場合でも、ある程度の強度および剛性を得ることができる。しかし、保冷容器1を、更に強度および剛性の高い保護容器に収納してセットで使用することにより、保冷容器1の耐久性を著しく向上させることができる。
例えば、図13(a)の様に、保冷容器1をすっぽり収納可能な保護容器2を用意し、配送に際して箱体とされた保冷容器1を収納してセットで使用する構成を採ることができる。
図13(a)に示す保護容器2は、合成樹脂材を成形加工して製されたもので、上方が開放された箱形状を有し、極めて軽量である。保護容器2は、上部および下部の外面を全周に渡って突出させてフランジ部2a,2bを形成している。従って、フランジ部2aを手掛かりとして保護容器2を容易に持ち運び可能である。また、保冷容器1を保護容器2に収納したまま、係合フラップ18を掴んで蓋部16,16を開閉することができる。
また、保護容器2のフランジ部2bを別の保護容器2のフランジ部2aに重ね合わせて係合可能な構造とされており、保護容器2を多段に積み重ねることができる。従って、配送車などに、保冷容器1を収納した保護容器2を多数積み込む場合でも、多段に積み上げることによって積み込みスペースを有効に利用でき、しかも、保冷容器1に直接過大な荷重が加わることがなく損傷を受けることがない。
このように、保冷容器1を軽量化された保護容器2とセットで使用することにより、保冷容器1の耐久性を著しく向上させることが可能となる。
更に、図12(e)に示したように、保冷容器1は、周壁部10を最大外寸として8面が重ね合わせられた形状に折り畳み可能である。従って、図13(b),(c)の様に、一つの保護容器2に、折り畳んだ複数の保冷容器1・・を収納することができる。
これにより、複数の保冷容器1を纏めて保護容器2に収納して容易に持ち運ぶことができ、配送に際しての準備作業や回収作業を効率良く行うことができる。また、複数の保冷容器1を保護容器2に整理して保管でき、保管スペースも削減できる。
尚、図13で示した保護容器2は、箱形に形成されたものとして述べたが、保護容器2を折り畳み可能な構造とすることにより、準備や回収時における保護容器2の持ち運びが容易となり、保管スペースも削減することが可能となる。