以下、添付図面を参照しつつ、本発明における断熱体の好ましい実施例をそれぞれ説明する。なお、以下に示す各実施例で、共通する箇所には共通する符号を付し、共通する部分の説明は重複を避けるため極力省略する。
図1および図2は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1を示している。これらの各図において、真空断熱パネル1は平板状で、無機繊維からなるシート状成形体としてのシート体2A,2Bを少なくとも2層以上積層してなる芯材2と、水分またはガスを吸着する乾燥剤としての吸着剤3と、ガスバリア性フィルムからなる外被材4と、所定温度以上になると粘着性を発するシート状の固定部材5とにより構成される。芯材2は吸着剤3や固定部材5と共に、袋状の外被材4に収容され、外被材4の内部を減圧した後に、外被材4の開口部を封止することで、芯材2の全周囲を包んで密閉した真空断熱パネル1が得られる。
吸着剤3は、シート体2A,2Bの間に固定部材5を重ね合わせた状態で挟持され、固定部材5が発する粘着力により、芯材2内部の所定位置に移動することなく固定される。特に本実施例では、吸着剤3の固定のために、吸着剤3を収納するための凹部を芯材2に設けてはおらず、各シート体2A,2Bの表面は凹凸なく平坦に形成される。また、本実施例で使用する固定部材5は、例えば日東シンコー株式会社製の熱溶着シートFB−ML80である。本製品は、図示しないがセパレーター上に基材レスの接着層を設けた熱可塑性の両面接着シートで、常温では粘着性がなく、所定温度である70℃以上で粘着性を発するものである。
外被材4は、平面視同形をなす2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせ、シート部材4A,4Bの外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4の四方周縁には、シート部材4A,4Bを当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部6が形成される。この耳部6は、真空断熱パネル1としては機能しない余白となる。
図2に示す真空断熱パネル1を製造するには、先ず所定形状に複数のシート体2A,2Bを成形または裁断した芯材2を、所定温度以上に加熱した後、積層されたシート体2A,2Bの間に吸着剤3を挟持する。その際に、吸着剤3と重ねて固定部材5を挟むことで、固定部材5が芯材2の熱で加熱され、所定温度以上となって粘着性を発するので、吸着剤3が固定部材5を介して芯材2の内部の所定位置に接着固定される。このため、例えば固定部材として粘着テープを用いた場合は、剥離ライナーからテープを剥す工程が必要になるが、本実施例の固定部材5はそうしたテープが設けられていないので、使用時にわざわざテープを剥す必要がなく、そのまま吸着剤3と重ねてシート体2A,2Bの間に挟むだけでよいため、作業性が良好である。
また、従来は吸着剤3を固定するために芯材2に凹部を形成していたが、本実施例では固定部材5の使用により、芯材2に凹部を形成する工程を省くことができる。こうした凹部や固定部材5がない場合、真空断熱パネル1の製造工程で吸着剤3が所定の位置からずれてしまう虞があったが、本実施例では上述した固定部材5の使用により、芯材2に対する吸着剤3の位置ずれをなくことができる。
さらに、固定部材5は吸着剤3と重ねた状態でシート体2A,2Bの間に挟持されるが、固定部材5が芯材2や吸着剤3よりもはるかに薄いシート状であることにより、真空断熱パネル1の厚み寸法を極力増加させないようにすることができる。
その後、吸着剤3や固定部材5を挟んだ芯材2は、予め2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせて、三方をヒートシールした平面視四角形状の外被材4の中に、残りの一方の開口から挿入収納される。この状態で、例えば真空槽(図示せず)による真空引きを行ない、外被材4の内部を所定の真空度にまで減圧した後に、外被材4の開口されている残りの一方をヒートシールして封止することで内部を密封し、平面視四角形状の真空断熱パネル1を得る。
完成後の真空断熱パネル1の性能は、その内部の真空度が重要となるが、固定部材5からガスが発生するとその真空度が低下し、真空断熱パネル1の性能が劣化してしまう。そこで、外被材4に封入される固定部材5が、アクリル樹脂,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,スチレン樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル樹脂,ポリビニルアルコール(PVA),澱粉のうちの少なくとも1種類の物質であれば、固定部材5からのガスの発生を抑制でき、真空断熱パネル1の性能への影響を無くすことができる。
また、本実施例の固定部材5は基材を使用していない基材レスであるため、基材からのガスの発生を考慮する必要がなく、この点でも真空断熱パネル1の性能劣化の虞がない。実際に、上述した日東シンコー株式会社製の熱溶着シートFB−ML80は、ポリエステル樹脂が主成分で、基材レスの固定部材5であり、評価を行なった結果、真空断熱パネル1の性能劣化は見られなかった。
以上のように本実施例では、無機繊維からなるシート体2A,2Bを2層以上積層してなる芯材2と、少なくとも水分またはガスを吸着する吸着剤3と、少なくともガスバリア性フィルムからなる外被材4とにより形成される断熱体としての真空断熱パネル1において、所定温度以上で粘着性を発する固定部材5で、芯材2を構成するシート体2A,2Bの間に吸着剤3が挟持固定される構成となっている。
この場合、真空断熱パネル1の製造工程で、芯材2を所定温度以上に加熱した後、積層されたシート体2A,2Bの間に吸着剤3と重ねて固定部材5を挟むだけで、固定部材5が芯材2の熱で粘着性を発するようになり、吸着剤3がシート体2A,2Bの間に挟まれた状態で固定され、吸着剤3の位置がずれるのを防止できる。また、引用文献1のような固定部材に粘着テープを使用した場合は、剥離ライナーからテープを剥す工程が必要となるが、所定温度以上で粘着性を発する固定部材5であれば、そうした工程は不要になり作業性がよい。さらに、吸着剤3を凹部に収納する必要もなく、芯材2に凹部を形成する余計な工程を省くことができる。
また、本実施例の固定部材5はシート状に形成される。この場合、シート状の固定部材5を用いることで、吸着剤3と固定部材5とを重ねた状態で挟んでも、真空断熱パネル1の厚さへの影響を少なくすることができる。
また、本実施例では、固定部材5が、アクリル樹脂,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,スチレン樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル樹脂,ポリビニルアルコール(PVA),澱粉のうちの少なくとも1種類の物質を含んでいる。
真空断熱パネル1の性能は内部の真空度が重要となるため、固定部材5からガスが発生すると真空度が低下して真空断熱パネル1としての性能が劣化する。しかし、アクリル樹脂,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,スチレン樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル樹脂,ポリビニルアルコール,澱粉のうちの少なくとも1種類の物質であれば、固定部材5からのガスの発生が抑えられ、真空断熱パネル1の性能に影響がない。また、基材を使用しない基材レスの固定部材5であるため、基材からのガスの発生を考慮する必要がなく、特性劣化の虞のない性能を良好に維持した真空断熱パネル1を提供できる。
図3〜図6は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1を示している。これらの各図において、真空断熱パネル1は平板状で、平面視で四辺形(矩形)状の芯材2と、ガスバリア性フィルムからなる外被材4とにより構成される。芯材2は実施例1のように、複数のシート体2A,2Bで構成してもよく、また実施例1で示した吸着剤3や固定部材5を、シート体2A,2Bの間に挟持させてもよい。芯材2は袋状の外被材4に収容され、外被材4の内部を減圧した後に、外被材4の開口部を封止することで、芯材2の全周囲を包んで密閉した真空断熱パネル1が得られる。
外被材4は、平面視同形をなす2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせ、シート部材4A,4Bの外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4の四方周縁には、シート部材4A,4Bを当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部6が形成される。この耳部6は、真空断熱パネル1としては機能しない余白となる。
図3は、外被材4の内部に芯材2を入れて真空封止した直後の真空断熱パネル1を示している。本実施例では、ここから図4に示すように、芯材2の角部11に接する外被材4の表面部分に、接着剤または塗料による保護剤12を塗布する。この保護剤12は、外被材4内部への外気の侵入を確実に防止するために、外被材4の片面あるいは両面に、少なくとも芯材2の角部11に接する部分を含んで、シート部材4A,4Bをシールした耳部6と、シート部材4A,4Bをシールしていない袋状部7を跨ぐようにして塗布される。
次に、図5に示すように、芯材2の対向する一対の長辺に沿って、芯材2の一方の面である上面に向けて耳部6の一部を折り曲げた後、図6に示すように、今度は芯材2の対向する一対の短辺に沿って、同じく芯材2の一方の面である上面に向けて残りの耳部6を折り曲げる。外被材4の耳部6を折り曲げる順序は特に限定しないが、この外被材4の耳部6を折り曲げる際に、仮に芯材2の角部11に接する外被材4の部位にピンホールや亀裂が生じても、外被材4の表面に塗布した保護剤12によって、外被材4の内部への外気の侵入が防止され、外被材4の内部の真空度を良好に維持することができる。
なお、ピンホールや亀裂が生じやすい部位は、基本的に耳部6を折り曲げた外被材4の外側面(直接ぶつけたりするリスクが高い側の面)となるため、少なくとも耳部6を折り曲げた状態で、芯材2の角部11に接する部分の外側面に、前述の保護剤12を塗布すれば、必要最小限の塗布量で、外被材4の内部の真空度を良好に維持できる。しかし、耳部6を折り曲げた状態で、芯材2の角部11に接する部分の外側面だけでなく、内側面にも保護剤12を塗布してもよく、その場合はより確実に外被材4の内部の真空度を良好に維持できる。
本実施例で使用する保護剤12としての接着剤や塗料は、ある程度粘度が高く、速乾性の特性を持つものが好ましい。また、耳部6を折り返すタイミングは、接着剤や塗料が硬化を始めて、その粘度が高くなった頃が好ましい。こうして、真空断熱パネル1の余白となる耳部6は、芯材2の側方から突出しないように、全て芯材2の上面に向けて内側に折り返され、接着剤12により良好な断熱性能を維持したまま、冷蔵庫などに周囲と干渉することなく、図6に示す真空断熱パネル1を容易に取付けできるようになる。
以上のように、本実施例では、芯材2を袋状の外被材4に包んで構成され、外被材4の外周部である耳部6を折り曲げて形成される断熱体としての真空断熱パネル1において、芯材2の角部11に接する外被材4の片側若しくは両側表面に、接着剤や塗料などの保護剤12を塗布している。
この場合、外被材4の外周部を折り曲げる際に、芯材2の角部11に接する部位にピンホールや亀裂が生じても、外被材4の表面に塗布した接着剤や塗料などの保護剤12が、これらを防ぐ栓の役割を果たして外気の侵入を防止し、外被材4の内部の真空度を良好に維持し続ける。したがって、外被材4の耳部6を折り曲げたことに起因する真空断熱パネル1の断熱性能の低下を防止することが可能になる。
図7〜図14は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1を示している。図7〜図10の各図において、真空断熱パネル1は平板状で、平面視で四辺形(矩形)の角部11の一つに、平面状の角面部15を形成したC面カットを有する芯材2と、ガスバリア性フィルムからなる外被材4と、により構成される。芯材2は実施例1のように、複数のシート体2A,2Bで構成してもよく、また実施例1で示した吸着剤3や固定部材5を、シート体2A,2Bの間に挟持させてもよい。本実施例でも、芯材2は袋状の外被材4に収容され、外被材4の内部を減圧した後に、外被材4の開口部を封止することで、芯材2の全周囲を包んで密閉した真空断熱パネル1が得られる。
外被材4は、平面視同形をなす2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせ、シート部材4A,4Bの外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4の四方周縁には、シート部材4A,4Bを当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部6が形成される。この耳部6は、真空断熱パネル1としては機能しない余白となる。また、芯材2を内部に密封収納した状態で、芯材2を含まない外被材4のみで構成されるヒレ部16が、芯材2の外周端部から外被材4の外周端部にかけて形成される。したがって、ヒレ部16はその外周側に熱溶着部としての耳部6を含んだものとなっている。
また、本実施例の外被材4は、ガスバリア層と熱溶着層とを有するシート部材4A,4Bで構成される。特に、ここでのガスバリア層はアルミ蒸着層などの蒸着層からなり、アルミ蒸着層は、アルミニウムを高真空状態で電子ビームや高周波誘導などにより加熱蒸発させた微細粒子を、基材であるフィルム面に付着させてなる。アルミ蒸着層の厚さは0.05μm程度であり、アルミ箔層の厚さである5〜10μm程度よりも薄く、また基材に付着した粒子と粒子の間には隙間があるため、外被材4によるヒートブリッジの影響を低減できる。さらに、外被材4の一方の面をなし、芯材2の下面側を包むシート部材4Bは、前記ガスバリア層をアルミ箔層で形成し、外被材4の他方の面をなし、芯材2の上面側を包むシート部材4Aは、前記ガスバリア層をアルミ蒸着層などの蒸着層で形成するのが好ましい。
本実施例の真空断熱パネル1は、芯材2を袋状の外被材4で包み、外被材4の内部を強制的に減圧した後、外被材4の開口部を封止して全周囲を密閉する。その後、真空断熱パネル1は、芯材2の外周の間に芯材2を含まない外被材4のみで構成されるヒレ部16を折り畳んで製造される。具体的には、図7に示すように、外被材4の内部に芯材2を入れて真空封止したヒレ部16を折り畳む前の真空断熱パネル1を用意し、そこから図8に示すように、芯材2の角面部15に沿って、ヒレ部16の一部のみを芯材2が設けられている部分の一方の面である下面に向けて折り畳む。このときヒレ部16は、外被材4のガスバリア層がシート部材4Bのアルミ箔層である一方の面に向けて折り返されることになる。
次に、図9に示すように、芯材2の対向する一対の外面部である辺に沿って、芯材2が設けられている部分の他方の面である上面に向けてヒレ部16の一部を折り曲げた後、図10に示すように、芯材2の対向する別な一対の外面部である辺に沿って、同じく芯材2が設けられている部分の他方の面である上面に向けて残りのヒレ部16を折り曲げる。なお、上記一連の手順で、芯材2が設けられている部分の一方の面を上面とし、芯材2が設けられている部分の他方の面を下面としてもよく、その場合は、シート部材4Aのガスバリア層をアルミ箔層とし、シート部材4Bのガスバリア層を蒸着層とすればよい。
従来の折り畳み手順では、外被材4の全てのヒレ部16を芯材2のある部分の一方の面に集中して折り畳んでいたが、これでは角面部15でヒレ部16が幾重にも折り曲げられてたわみが生じる虞があった。また、角面部15のエッジでヒレ部16の応力が大きくなり、外被材4が破れてリークが生じる虞もあった。
そこで本実施例では、はじめに角面部15の外側に位置するヒレ部16を、芯材2のある部分の一方の面に向けて折り畳む(図8)。次に、その他のヒレ部16を、芯材2のある部分の他方の面に向けて折り畳む(図9および図10)。この一連の折り畳み手順によって、ヒレ部16が芯材2の一方の面に集中して折り曲げられるのを回避し、角面部15におけるヒレ部16のたわみが軽減され、角面部15のエッジでのヒレ部16の応力を軽減することができる。
また、外被材4のガスバリア層をアルミ蒸着層のような蒸着層とすることで、折り畳んだヒレ部16を伝って他方の面に熱が回り込むヒートブリッジを低減し、真空断熱パネル1の熱伝導率を低減することができる。さらに、芯材2の角面部15でヒレ部16をアルミ箔層である面に向かって折り畳むことにより、外被材4の蒸着層である面を外側にして、外被材4によるヒートブリッジの影響を低減でき、真空断熱パネル1の熱伝導率をさらに低減することができる。
以上のように、本実施例では、ガスバリア層と熱溶着層を有する外被材4で、C面カットした角面部15を有する芯材2を覆い、外被材4の内部を減圧密封してなる断熱体としての真空断熱パネル1において、外被材4は、芯材2の外周の間に芯材2を含まない外被材4のみで構成される一部のヒレ部16のみを、芯材2の角面部15で芯材2のある部分の一方の面に向かって折り畳んだ後、角面部15とは別な芯材2の外面部で、他のヒレ部16を芯材2のある部分の他方の面に向かって折り畳んで形成される。
この場合、袋状の外被材4に芯材2を挿入して内部を減圧密封した後、外被材4のヒレ部16を芯材2の角面部15で芯材2のある部分の一方の面に向けて折り畳み、角面部15とは別な芯材2の外面部で、外被材4のヒレ部16を芯材2のある部分の他方の面に折り畳むことで、ヒレ部16を芯材2のある部分の一方の面に集中して折り曲げるのを回避できる。これにより、芯材2の角部11にC面カットした角面部15がある場合でも、外被材4のヒレ部16のたわみを軽減できると共に、角面部15のエッジでのヒレ部16の応力を軽減できる。
また本実施例では、外被材4を構成するガスバリア層が蒸着層からなる。
この場合の蒸着層は、アルミニウムなどの母材を高真空状態で加熱蒸発させた微細粒子をフィルム面に付着させたもので、アルミ蒸着層はアルミ箔層よりも薄く、粒子と粒子との間には隙間がある。したがって、外被材4を構成するガスバリア層を蒸着層とすれば、外被材4によるヒートブリッジの影響を低減できる。
また、本実施例の外被材4は、一方の面のガスバリア層がアルミ箔層からなり、他方の面のガスバリア層が蒸着層からなり、芯材2の角面部15でヒレ部16をアルミ箔層に向かって折り畳んで形成される。
この場合の蒸着層は、前述のようにアルミニウムなどの母材を高真空状態で加熱蒸発させた微細粒子をフィルム面に付着させたもので、アルミ蒸着層はアルミ箔層よりも薄く、粒子と粒子との間には隙間がある。したがって、芯材2の角面部15でヒレ部16をアルミ箔層に向かって折り畳むことにより、外被材4の蒸着層を外側にして、外被材4によるヒートブリッジの影響を低減できる。
次に、図7〜図10に示した真空断熱パネル1を、サブ断熱体として別な外被材4’に入れて真空封止し、最終的な断熱体に相当する真空断熱パネル1’を得るまで構成を、図11〜図14に基づいて説明する。
ここでの別な外被材4’は、前記外被材4と同様に、平面視同形をなす2枚のシート部材4A’,4B’を重ね合わせ、シート部材4A’,4B’の外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4’の四方周縁には、シート部材4A’,4B’を当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部6’が形成される。この耳部6’は、最終的な真空断熱パネル1’としては機能しない余白となる。また、芯材2ひいてはサブの真空断熱パネル1を含まない外被材4’のみで構成されるヒレ部16’が、サブの真空断熱パネル1の外周端部から外被材4’の外周端部にかけて形成される。したがって、ヒレ部16’はその外周側に熱溶着部としての耳部6’を含んだものとなっている。外被材4’そのものは、前述の外被材4と同じ構成を有する。
そして、サブの真空断熱パネル1を袋状の外被材4’で包み、外被材4’の内部を強制的に減圧した後、外被材4’の開口部を封止して全周囲を密閉する。つまり、図11に示すように、外被材4’の内部にサブの真空断熱パネル1を入れて真空封止したヒレ部16’を折り畳む前の真空断熱パネル1’を用意し、そこから図12に示すように、芯材2の角面部15に沿って、ヒレ部16’の一部のみを芯材2が設けられている部分の一方の面である下面に向けて折り畳む。
次に、図13に示すように、芯材2の対向する一対の外面部である辺に沿って、芯材2が設けられている部分の他方の面である上面に向けてヒレ部16’の一部を折り曲げた後、図14に示すように、芯材2の対向する別な一対の外面部である辺に沿って、同じく芯材2が設けられている部分の他方の面である上面に向けて残りのヒレ部16’を折り曲げる。なお、上記一連の手順で、芯材2が設けられている部分の一方の面を上面とし、芯材2が設けられている部分の他方の面を下面としてもよい。また、図13でのヒレ部16’の折り畳み方向と、図14でのヒレ部16’の折り畳み方向を同じにしてもよい。
以上のように、図11〜図14に示す真空断熱パネル1’は、図10で製造した真空断熱パネル1をサブ断熱体として、このサブの真空断熱パネル1をさらに別な外被材4’に入れて真空封止した構成となっている。
この場合、外被材4,4’を二重構造にして芯材2を包むことにより、内側の外被材4に傷が付いてリークが生じても、外側の別な外被材4’でリークの進行を食い止めることができ、信頼性の向上に寄与する。また、完成した断熱体としての真空断熱パネル1’をぶつけたり擦ったりしても、外側の別な外被材が緩衝物となり、内側の外被材4へのダメージを防ぐ効果がある。したがって、芯材2の角部にC面カットした角面部15がある場合でも、真空断熱パネル1’として内部の真空度が低下せず、良好な断熱性能を維持できる。
また本実施例では、サブの真空断熱パネル1をさらに別な外被材4’に入れて二回目に真空封止した後に、芯材2の角面部15で折り畳む別な外被材4’のヒレ部16’と、芯材2の外面部で折り畳む別な外被材4’の他のヒレ部16’とを、同じ折り畳み方向としてもよい。
この場合、二回目の真空封止後に、別な外被材4’は、芯材2の角面部15で折り畳むヒレ部16’と、芯材2の外面部で折り畳む他のヒレ部16’との折り畳み方向を同じにすることで、折り畳みの際に真空断熱パネル1’を裏返す必要がなく、生産性に優れたものとすることができる。
また本実施例では、サブの真空断熱パネル1をさらに別な外被材4’に入れて二回目に真空封止した後に、芯材2の角面部15で折り畳む別な外被材4’のヒレ部16’と、芯材2の外面部で折り畳む別な外被材4’の他のヒレ部16’とを、反対の折り畳み方向としてもよい。
この場合、二回目の真空封止後に、別な外被材4’は、芯材2の角面部15で折り畳むヒレ部16’と、芯材2の外面部で折り畳む他のヒレ部16’との折り畳み方向を反対にすることで、別な外被材4’のヒレ部16’のたわみや、芯材2の角面部15のエッジでのヒレ部16’の応力をより軽減できる。
図15および図16は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1を示している。これらの各図において、真空断熱パネル1は平板状で、前述のシート体2A,2Bに対応する薄肉のグラスウールシート18A,18B,18C,18Dを積層し、その中の中間層のグラスウールシート18B,18Cに一つの吸着剤孔21を開けて、当該吸着剤孔21内に複数個の連結した吸着剤3を配置した芯材2と、芯材2を密閉包装するために、ガス若しくは水分を遮断する外被材4とにより構成される。本実施例でも、芯材2は袋状の外被材4に収容され、外被材4の内部を減圧した後に、外被材4の開口部を封止することで、芯材2の全周囲を包んで密閉した真空断熱パネル1が得られる。
外被材4は、平面視同形をなす2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせ、シート部材4A,4Bの外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4の四方周縁には、シート部材4A,4Bを当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部6が形成される。この耳部6は、真空断熱パネル1としては機能しない余白となる。
それぞれの吸着剤3は、粉状または塊状の消石灰23を、小袋である袋体24の内部に収納して構成され、吸着剤孔21の内部で個々の吸着剤3がバラバラに離れないように、吸着剤3は連結部25で直列に接続される。図15では4個の吸着剤3が一つの吸着剤孔21の内部に配置されているが、その個数は複数であれば特に限定されず、隣り合う吸着剤3,3の間に連結部25を設けて、複数の吸着剤3を接続する構成であればよい。また本実施例では、中間層のグラスウールシート18B,18Cに吸着剤孔21を設けているが、芯材2を貫通するように、全てのグラスウールシート18A,18B,18C,18Dに吸着剤孔21を設けてもよい。
図17は、比較のために従来の真空断熱パネル1における芯材2の構成を示している。従来の真空断熱パネル1は、外被材4の内部でガスや水蒸気の吸収効率を上げるために、平面視で芯材2の中間層に複数の吸着剤孔21A,21B,21Cを設け、それぞれの吸着剤孔21A,21B,21Cに単独の吸着剤3を配設している。一方、図16に示すように、本実施例では平面視で芯材2の中間層の一箇所に吸着剤孔21を設け、その吸着剤孔21に連結した複数の吸着剤3を集中して配設することで、外被材4の内部におけるガスや水蒸気の吸収効率をさらに上げている。従って、本実施例の吸着剤孔21は、従来の吸着剤孔21A,21B,21Cとは異なり、1個ではなく複数個の吸着剤3が収納し得る大きさに形成される。
そして上記構成では、真空断熱パネル1の製造工程で、芯材2に設けた一つの吸着剤孔21に、連結部25で予め連結された複数個の吸着剤3を配置し、これらを袋状の外被材4に収容する。吸着剤孔21は一つしかなく、そこに複数個の連結した吸着剤3を置けば、全ての吸着剤3の配置作業は簡単に完了する。また、従来よりも吸着剤孔21を設ける箇所が少ないので、作業中に吸着剤3を配置し忘れる不良を減らすことができる。その後、外被材4の内部を減圧して、外被材4の開口部を封止することで、芯材2の全周囲を包んで密閉した真空断熱パネル1が得られる。
以上のように、本実施例の断熱体としての真空断熱パネル1は、薄肉のグラスウールシート18A,18B,18C,18Dによるシート体を複数枚積層し、積層したシート体の中間層であるグラスウールシート18B,18C,に吸着剤孔21を設け、この吸着剤孔21に複数個連結した吸着剤3を配置した芯材2を、ガスおよび水蒸気の透過を阻止する外被材4で包み、外被材4の内部を減圧した後に封止する構成となっている。
この場合、芯材2内に複数個の吸着剤3を集中して配置することで、外被材4の内部の水分を吸着して、真空断熱パネル1としての性能劣化を低減できる。また、吸着剤3を一つずつ吸着剤孔に配置するのではなく、複数個の連結した吸着剤3を一つの吸着剤孔21に配置するので、吸着剤3を配置する作業が容易になる。また、吸着剤孔21を設ける箇所を減らすことができるので、吸着剤孔21に吸着剤3を配置し忘れる不良を低減できる。
また、本実施例におけるそれぞれの吸着剤3は、生石灰23を袋体24に封入して構成される。
この場合、実質的にガスや水分を吸着する材料となる生石灰23を、そのままではなく袋体24に封入して吸着剤3とすることで、吸着剤孔21に複数個の連結した吸着剤3を配置する際の取り扱いを容易にすることができる。
図18〜図20は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1を示している。これらの各図において、真空断熱パネル1は平板状で、平面視で四辺形(矩形)状の芯材2と、ガスバリア性フィルムからなる外被材4と、粒状の酸化カルシウム,ゼオライト,シリカゲルなどを包材に入れた前述の吸着剤3に相当するゲッタ剤25とにより構成される。芯材2は、ほぼ平面状をなす繊維集合体26A,26B,26Cを複数枚重ねて構成される。圧縮変形する繊維集合体26A,26B,26Cは、前述したシート体2A,2Bに相当するもので、その枚数については特に限定しない。芯材2とゲッタ剤25は袋状の外被材4に収容され、外被材4の内部を減圧した後に、外被材4の開口部を封止することで、芯材2の全周囲を包んで密閉した真空断熱パネル1が得られる。
外被材4は、平面視同形をなす2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせ、シート部材4A,4Bの外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4の四方周縁には、シート部材4A,4Bを当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部6が形成される。この耳部6は、真空断熱パネル1としては機能しない余白となる。
本実施例では、芯材2の内部にゲッタ剤25を配置するための埋設部28が設けられる。この埋設部28について、その構成と作用効果を詳しく説明する。
上述した繊維集合体26A,26B,26Cの厚さが例えば4mmである場合、仮に埋設部28としての空間を芯材2に設けずに、厚さが5mm程度のゲッタ剤25を芯材2に挟んで、ガスバリア性のある袋状の外被材4に入れ、内部を減圧封止した真空断熱パネルを製造したとする。この場合、外被材4の内部を真空封止した後に、芯材2の厚さが真空封止前に比べて70%に圧縮されたとすると、真空封止後の芯材2の厚さは、12mm×0.7=8.4mmとなる。そこに、厚さが5mm程度のゲッタ剤25を芯材2の内部に挟んで真空封止すると、ゲッタ剤25が多少圧縮されたとしても、ゲッタ剤25を挟んだ部分の真空断熱パネルの厚さは13.4mm前後となってしまい、凸状の飛び出し部分ができてしまう。
その対策として、図21や図22に示すように、3枚の繊維集合体26A,26B,26Cからなす芯材2の中で、真ん中の繊維集合体26Bに切り抜き加工をして切り抜き部29を形成し、その切り抜き部29をゲッタ剤25の埋設部28の空間として設ける。
この場合、埋設部28にゲッタ剤25を配置した芯材2を外被材4に入れ、内部を減圧封止した真空断熱パネル1が得られるが、ゲッタ剤25を配置していない他の繊維集合体26A,26Cの厚さは、真空封止前に比べて真空封止後に70%に圧縮されたとすると、8mm×0.7=5.6mmとなり、ゲッタ剤25を配置した埋設部28の厚さは5mm(芯材2の繊維集合体26Bよりもゲッタ剤25のほうが厚いため、ゲッタ剤25の厚さが埋設部28の厚さとなる)となるため、ゲッタ剤25を埋設した部分の真空断熱パネル1の厚さは、10.6mm前後となる。したがって、これもやはりゲッタ剤25を埋設した部分以外の真空断熱パネル1の厚さである8.4mmよりも厚くなり、図22に示すような見栄えを損なう凸状の飛び出し部としての凸部30が、真空断熱パネル1の上面と下面にそれぞれ形成されてしまう。
一方、本実施例では、図18〜図20で示すように、切り抜き加工をした以外の繊維集合体26A,26Cについて、切り抜き部29に相対する面に、切り抜き部29の開口面と同形の開口面を有する深さが1.6mmの凹状の切り欠き加工をそれぞれ行ない、これを切り欠き部31として、切り抜き部29と切り欠き部31とを組み合わせたゲッタ剤25を配置するための埋設部28としての空間を設ける。このような埋設部28に、ゲッタ剤25を配置した芯材2を外被材4に入れ、内部を減圧封止した真空断熱パネル1を得る。
この場合、外被材4の内部を真空封止した後に、芯材2の厚さが真空封止前に比べて70%に圧縮されたとすると、切り欠き部31における2枚の繊維集合体26A,26Cの厚さは、(4−1.6)×2×0.7=3.36mmとなり、ゲッタ剤25の厚さが5mmであるため、真空断熱パネル1は、ゲッタ剤25を埋設した部分の厚さが8.4mm前後となり、ゲッタ剤25を埋設していない他の部分の厚さ(8.4mm)とほぼ同じになる。したがって、図15に示すように、ゲッタ剤25を埋設部28に配置した状態で、外被材4の内部を真空封止した後も、従来のような凸状の飛び出し(凸部30)は生じない。
このように、外被材4に入れられた芯材2の真空封止前後の厚さの変化率に応じて、ゲッタ剤25を配置する埋設部28の空間を設けておくことで、真空断熱パネル1の表面におけるゲッタ剤25の厚みによる飛び出しをなくすことができ、真空断熱パネル1としての見栄えをよくすることができる。また、図18に示すように、凸部30へ加わる圧力によって、外被材4にピンホールが発生するのを低減でき、真空断熱パネル1を取付ける際の段差を解消することができる。
なお、包材に収納する粒の偏りによって、ゲッタ剤25の厚さに違いがある場合は、ゲッタ剤25の最大の厚さを基準にして、埋設部28の空間寸法を決定すればよい。また、切り欠き部31は凹状でなくても、例えば半円形などのゲッタ剤の形状に合う形ならばどのような形状でもよく、特定はしない。さらに本実施例では、切り抜き部29と切り欠き部31との組合せによって、真空封止後も凸部30が生じないような所定寸法の空間を有する埋設部28を形成しているが、個々の繊維集合体26A,26B,26Cの厚さや、ゲッタ剤25の厚さや、芯材2の真空封止前後の厚さの変化率を考慮して、切り抜き部29若しくは切り欠き部31だけで、所定寸法の空間を有する埋設部28を形成してもよい。
以上のように、本実施例の断熱体である真空断熱パネル1は、板状の繊維集合体26A,26B,26Cを複数枚積層してなる芯材2と、芯材2の埋設部28に設置されるゲッタ剤25とを、ガスバリア性を有する外被材4に入れ、外被材4の内部を真空にして封止するものにおいて、外被材4の内部を真空封止した後に、真空断熱パネル1の表面にゲッタ剤25の厚みによる凸部30が形成されないような寸法を有する空間を、芯材2の埋設部28に設けている。
この場合、ゲッタ剤25を設置する芯材2の埋設部28に、ゲッタ剤25の厚みを考慮した空間を設けておくことにより、芯材2を入れた外被材4の内部を真空封止した後も、真空断熱パネル1の表面にゲッタ剤25の厚みによる凸状の飛び出しをなくすことができる。そのため、真空断熱パネル1としての見栄えがよくなり、凸部30へ加わる圧力に起因した外被材4のピンホールの発生を低減でき、真空断熱パネル1を取付ける際の段差を解消することができる。
また、本実施例における芯材2の埋設部28は、外被材4を真空封止する前後の芯材2の厚さの変化率に応じた空間を設けている。
この場合、芯材2の埋設部28には、特に外被材4の内部を真空封止する前後の芯材2の厚さの変化率に応じた寸法を有する空間が形成されるので、外被材4の内部を真空封止した後で、芯材2の厚さが変化しても、真空断熱パネル1の表面にゲッタ剤25の厚みによる凸状の飛び出しを確実になくすことができる。
また、本実施例における芯材2の埋設部28は、芯材2を構成する繊維集合体26A,26B,26Cに設けた切り抜き部29、凹状の切り欠き部31、又は切り抜き部29と切り欠き部31の組合せで、ゲッタ剤25を設置する空間を設けている。
この場合、繊維集合体26A,26B,26Cに切り抜き部29や切り欠き部31を設け、それらを単独若しくは複数組み合わせて、芯材2の埋設部28に空間を設けたので、真空断熱パネル1の表面にゲッタ剤25の厚みによる凸状の飛び出しを確実になくしつつも、埋設部28にゲッタ剤25を容易に設置することが可能になる。
図23および図24は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1’を示している。これらの各図に共通して、サブ断熱体となるサブの真空断熱パネル1は平板状で、平面視で四辺形(矩形)状の芯材2と、ガスバリア性フィルムからなる外被材4とにより構成される。芯材2は実施例1のように、複数のシート体2A,2Bで構成してもよく、また実施例1で示した吸着剤3や固定部材5を、シート体2A,2Bの間に挟持させてもよい。芯材2は袋状の外被材4に収容され、外被材4の内部を減圧した後に、外被材4の開口部を封止することで、芯材2の全周囲を包んで密閉したサブの真空断熱パネル1が得られる。
外被材4はバリア性を有するラミネート袋として、平面視同形をなす2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせ、シート部材4A,4Bの外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4の四方周縁には、シート部材4A,4Bを当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部6が形成される。この耳部6は、真空断熱パネル1としては機能しない余白となる。
図23に示す例では、外被材4の内部に芯材2を入れて真空封止した真空断熱パネル1の表面に、溝部35が形成される(図23(A)を参照)。この溝部35は、真空断熱パネル1の外側からプレスやローラーなどによる外力で溝付け加工を行なうことで形成されるが、その数や形状については特に限定しない。次に、図23(B)に示すように、溝部35を形成した後の真空断熱パネル1は外被材4’に入れられ、真空封止される。
外被材4はバリア性を有するラミネート袋として、平面視同形をなす2枚のシート部材4A’,4B’を重ね合わせ、シート部材4A’,4B’の外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4の四方周縁には、シート部材4A’,4B’を当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部6’が形成される。この耳部6は、最終的な真空断熱パネル1’としては機能しない余白となる。なお、外被材4’そのものは、前述の外被材4と同じ構成を有する。
図23(C)は、真空断熱パネル1を外被材4’に入れて真空封止した後の完成状態の真空断熱パネル1’である。外被材4’の内部を減圧することにより、外被材4’の内面は真空断熱パネル1の外面に密着し、真空断熱パネル1’の表面には、溝部35の形状に対応した溝部35’が形成される。
図24は、真空断熱パネル1’の図23で説明したものとは別な製造工程を順に示している。ここでは図24(A)において、外被材4の内部に芯材2を入れて真空封止した真空断熱パネル1を製造した後、溝付け加工を行なわずに外被材4’に真空断熱パネル1を入れて真空封止する。外被材4’の内部を減圧することにより、外被材4’の内面は真空断熱パネル1の外面に密着する(図24(B)を参照)。
この後、外被材4’の内部にサブの真空断熱パネル1を入れて真空封止した真空断熱パネル1’の表面に、溝部35’が形成される(図24(C)を参照)。この溝部35’は、真空断熱パネル1’の外側からプレスやローラーなどによる溝付け加工を行なうことで形成されるが、その数や形状については特に限定しない。真空断熱パネル1’に溝部35’を形成することにより、サブの真空断熱パネル1にも溝部35’に対応した形状の溝部35が形成される。次に、図23(B)に示すように、溝部35を形成した後の真空断熱パネル1は外被材4’に入れられ、真空封止される。
以上のように、本実施例の図23に示した断熱体としての真空断熱パネル1’は、バリア性を有するラミネート袋である外被材4に芯材2を入れ、外被材4の内部を真空封止したサブ断熱体としての真空断熱パネル1の表面に、溝付け加工による溝部35を形成し、この真空断熱パネル1をさらにバリア性を有するラミネート袋である外被材4’に入れ、外被材4’の内部を真空封止して、真空断熱パネル1’の表面に溝部35’を形成するように構成している。
この場合、外被材4,4’を二重袋構造にして芯材2を包むことにより、真空断熱パネル1’の表面に溝付けを行なう際に、内側の外被材4に傷が付いてリークが生じても、外側の外被材4’でリークの進行を食い止めることができ、信頼性の向上に寄与する。また、完成した真空断熱パネル1’をぶつけたり擦ったりしても、外側の外被材4’が緩衝物となり、内側の外被材4へのダメージを防ぐ効果がある。したがって、真空断熱パネル1’に溝付けを行なった場合でも、真空断熱パネル1’の内部の真空度が低下せず、良好な断熱性能を維持できる。
また、本実施例の図24に示した断熱体としての真空断熱パネル1’は、バリア性を有するラミネート袋である外被材4に芯材2を入れ、外被材4の内部を真空封止したサブ断熱体としての真空断熱パネル1を、さらにバリア性を有するラミネート袋である外被材4’に入れ、外被材4’の内部を真空封止した後に、真空断熱パネル1’の表面に、溝付け加工による溝部35’を形成するように構成している。
この場合、完成した真空断熱パネル1’をぶつけたり擦ったりしても、外側の外被材4’が緩衝物となり、内側の外被材4へのダメージを防ぐ効果がある。したがって、真空断熱パネル1’に溝付けを行なった場合でも、真空断熱パネル1’の内部の真空度が低下せず、良好な断熱性能を維持できる。さらに、外側の外被材4’内部の真空封止が完了してから、外力による溝付けを行なうので、先に溝付けを行なうものよりも、溝部35’の寸法精度を優れたものにすることができる。
図25〜図27は、前記実施例6における真空断熱パネル1’の製造工程を示しており、各部の構成は実施例6と全く共通している。
先ず図25では、サブ断熱体としての真空断熱パネル1を、袋状の外被材4’の内部に入れる。外被材4’は、真空断熱パネル1を挿入するための開口部36を残して、それ以外のシート部材4A’,4B’の端部をヒートシールした耳部6’が形成される。真空断熱パネル1は前述の図23で説明したように、溝付け加工による溝部35が予め形成される。
次に図26に示すように、外被材4’に真空断熱パネル1を入れた完成前の真空断熱パネル1’は、真空容器38内に入れられる。この真空容器38の内部には、真空断熱パネル1’を挟持する挟持部39と、開口部36を熱溶着させるためのシール装置40がそれぞれ配設される。そして、真空容器38に連通するポンプ41を動作させながら、挟持部39により真空断熱パネル1’を外側から加圧することで、外被材4’の内部を減圧状態にし、シール装置40で開口部36をシールして、外被材4’の内部を封止する。このときの外被材4’の封止圧力は、挟持部39による真空断熱パネル1’への加圧力と、ポンプ41の動作を制御することで、適宜調整できる。
外被材4’に真空断熱パネル1を入れて真空封止する際の二回目の圧力は、真空断熱パネル1を製造する際に、外被材4に芯材2を入れて真空封止する際の一回目の圧力と同等、またはそれ以下にする。このようにすれば、真空断熱パネル1に形成した溝部35の形状が、外被材4’に真空断熱パネル1を入れて真空封止した後も保たれる。
図27は、真空断熱パネル1を外被材4’に入れて真空封止した後の完成状態の真空断熱パネル1’である。外被材4’の内部を減圧することにより、外被材4’の内面は真空断熱パネル1の外面に密着し、真空断熱パネル1’の表面には、溝部35の形状に対応した溝部35’が形成される。比較として、従来の完成状態における真空断熱パネル1’の断面形状を、図28に示す。この場合、一回目と二回目の封止時における内部圧力差により、完成した真空断熱パネル1’の溝部35’の深さが、図27に示すものよりも浅くなっている。
以上のように、本実施例の真空断熱パネル1’は、外被材4に芯材2を入れ、所定の圧力で内部を真空封止した真空断熱パネル1の表面に、溝付け加工による溝部35を形成し、この真空断熱パネル1をさらに別な外被材4’に入れ、前記所定の圧力と同等またはそれ以下の圧力で真空封止する構成となっている。
この場合、外被材4,4’を二重袋構造にして芯材を包むことにより、芯材2を包むことにより、真空断熱パネル1’の表面に溝付けを行なう際に、内側の外被材4に傷が付いてリークが生じても、外側の外被材4’でリークの進行を食い止めることができ、信頼性の向上に寄与する。また、完成した断熱体をぶつけたり擦ったりしても、外側の外被材4’が緩衝物となり、内側の外被材4へのダメージを防ぐ効果がある。したがって、真空断熱パネル1’に溝付けを行なった場合でも、真空断熱パネル1’の内部の真空度が低下せず、良好な断熱性能を維持できる。
また、二回目の真空封止時に、封止圧力を一回目の真空封止時と同等またはそれ以下の圧力にすることで、図28に示すような、一回目と二回目の封止時における内部圧力差により、完成した真空断熱パネル1’の溝部35’の深さが浅くなる問題を解消して、溝部35’の寸法精度を優れたものにすることができる。
図29および図30は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1’を示している。ここでの真空断熱パネル1’の各構成は、実施例6,7で示したものと共通している。また本実施例では、溝部35,35’を設けていないが、必要に応じて設けても構わない。芯材2は、例えば複数枚積層した無機質繊維からなるシートまたはボードからなり、その芯材2を第1の外被材4で包み、外被材4の内部を減圧して封止した後、さらに第2の外被材4’で包んで、外被材4’の内部を減圧した後に封止した二重袋構造とする。外被材4,4’は、何れもガスおよび水蒸気の透過を阻害する材料で形成される。
外被材4は、平面視同形をなす2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせ、シート部材4A,4Bの外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4の四方周縁には、シート部材4A,4Bを当該ヒートシールで接合した耳部6が形成される。また、芯材2を内部に密封収納した状態で、芯材2を含まない外被材4のみで構成されるヒレ部16が、芯材2の外周端部から外被材4の外周端部にかけて形成される。したがって、ヒレ部16はその外周側に熱溶着部としての耳部6を含んだものとなっている。
同様に、外被材4’は、平面視同形をなす2枚のシート部材4A’,4B’を重ね合わせ、シート部材4A’,4B’の外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4’の四方周縁には、シート部材4A’,4B’を当該ヒートシールで接合した耳部6’が形成される。また、サブの真空断熱パネル1を内部に密封収納した状態で、芯材2を含まない外被材4’のみで構成されるヒレ部16’が、芯材2の外周端部から外被材4’の外周端部にかけて形成される。したがって、ヒレ部16’はその外周側に熱溶着部としての耳部6’を含んだものとなっている。
本実施例では、サブの真空断熱パネル1を第2の外被材4’に挿入しやすくし、且つ第1の外被材4の角部が第2の外被材4’に当たることによるダメージを減らすために、第1の外被材4の外寸L1よりも、前記第2の外被材4’の内寸L2が所定の寸法である1mm以上大きく形成される。
また、図30に示すように、外被材4’にサブの真空断熱パネル1を入れて真空封止した後は、外被材4の耳部6を含むヒレ部16と、外被材4’の耳部6’を含むヒレ部16’とを、真空断熱パネル1’の外面に沿って、別々にではなく同時に折り曲げ(耳折り)する。さらに、折り曲げたヒレ部16,16’が元の状態に戻らないように、その耳折りした部分の端部表面と外被材4’の表面との間に跨って、図示しない粘着テープを貼り付ける。この耳折りとテープ貼りの作業は、外被材4’にサブの真空断熱パネル1を入れて真空封止した後に1回だけ行なえばよく、従来のように、ヒレ部16,16’をそれぞれ耳折りしてテープ貼りする場合よりも、1回分の封止後の作業を省略できる。
こうして、内側の外被材4よりも大きいサイズを有する外側の外被材4’でサブの真空断熱パネル1を包み、外被材4’の内部を真空封止して、最後に内側の外被材4と外側の外被材4’のヒレ部16,16’を同時に耳折りすることで、作業効率を格段に上げることができる。また、耳折りされたヒレ部16,16’に、粘着テープによるテープ貼りを行なうことで、ヒレ部16,16’を真空断熱パネル1’の外面側に重ねた状態で固定することができる。
以上のように、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1’は、複数枚積層した無機質繊維からなるシートまたはボードからなる芯材2を、ガスおよび水蒸気の透過を阻害する第1の外被材4で包み、外被材4の内部を減圧して封止したサブの真空断熱パネル1を得た後、さらに別な第2の外被材4’で真空断熱パネル1を包み、外被材4’の内部を減圧した後に封止した構成を有している。
この場合、外被材を二重構造にして芯材を包むことにより、内側の第1の外被材に傷が付いてリークが生じても、外側の第2の外被材でリークの進行を食い止めることができ、信頼性の向上に寄与する。また、完成した断熱体をぶつけたり擦ったりしても、外側の第2の外被材が緩衝物となり、第1の外被材へのダメージを防ぐ効果がある。したがって、内部の真空度が低下せず、良好な断熱性能を維持できる。
また、本実施例の真空断熱パネル1’は、第1の外被材4の外寸L1よりも、第2の外被材4’の内寸L2を1mm以上大きく形成している。このように、第1の外被材4の外寸L1よりも第2の外被材4’の内寸L2を大きくすることで、第2の外被材4’への挿入作業が容易になり、また、第1の外被材4の角部が第2の外被材4’に当たることによるダメージも低減できる。
また、本実施例の真空断熱パネル1’は、第1の外被材4のヒレ部16と第2の外被材4のヒレ部16’とを同時に折り返して、図示しないテープ(粘着テープ)を貼着して構成される。
この場合、第1の外被材4の内部を真空封止した後に、第1の外被材4のヒレ部16を折り返してテープを貼着すると、第2の外被材4’の内部を真空封止した後に、ヒレ部16’を折り返してテープを貼着する同様の作業が必要になって製造効率が低下するが、第1の外被材4のヒレ部16と第2の外被材4’のヒレ部16’を同時に折り返してテープを貼着することで、1回分の封止後の作業を省くことができ、製造効率を上げることが可能になる。
図31〜図33は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1を示している。これらの各図に共通して、真空断熱パネル1は前述した各実施例のものと共通しており、芯材2を外被材4で包み、外被材4の内部を真空封止して構成される。これらの各図には示していないが、外被材4はバリア性を有するラミネート袋として、平面視同形をなす2枚のシート部材を重ね合わせ、シート部材の外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、外被材4の四方周縁には、シート部材を当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部6が形成される。この耳部6は、真空断熱パネル1としては機能しない余白となる。
本実施例では、図31に示すように、外被材4の内部に芯材2を入れて真空封止した後に、外被材4の外周部となる耳部6を包むようにカバー45を被せる。カバー45は、外被材4と同様に可撓性を有し、好ましくは外被材4よりも熱伝導性の低い樹脂製シートなどの部材からなる。図32に示すように、カバー45を耳部6に被せた後、カバー45と耳部6は外被材4の表面に沿うように一体として折り返される(図32に示す矢印が折り曲げ方向)。
図33は、折返し後の完成状態における真空断熱パネル1を示している。一方、図34は、カバー45を装着せずに耳部6を折り返した従来の真空断熱パネル1である。従来は、折り返された外周部としての耳部6が、外被材4の表面に直接接してしまうため、この状態で冷蔵庫などの製品に真空断熱パネル1を取付けると、図34の矢印で示すように、外被体4は耳部6から表面伝いに反対面にまで熱が伝導するいわゆるヒートブリッジを生じ、真空断熱パネル1全体としての断熱性能が悪化する。
それに対して、図33に示す真空断熱パネル1では、耳部6を折り返すと、耳部6よりも熱伝導性の悪いカバー45が外被材4の表面に直接接するため、外被材4の表面の熱は断熱材としてのカバー45によって遮断され、反対面に伝導することはない。したがって、真空断熱パネル1全体としての断熱性能の悪化を減らす効果がある。
以上のように、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1は、芯材2を袋状の外被材4に包んで構成され、外被材4の外周部である耳部6を折り曲げて形成され、特に耳部6を包むカバー45を具備しており、外被材4の耳部6とカバー45を、耳部6の基端で一体に折り曲げ形成している。
この場合、外被材4の余白となる外周部としての耳部6を折り返しても、耳部6に装着したカバー45が断熱材となって、外被材4の表面の熱伝導を低減させる。したがって、外被材4の表面のヒートブリッジを低減させて、真空断熱パネル1全体としての断熱性能を悪化させない効果を得ることができる。
なお、本実施例で提示したカバー45は、上述した各実施例の中の二重の外被材4,4’を備えた真空断熱パネル1’にも適用できる。この場合は、外側の外被材4’の耳部6’にカバー45を装着すれば、やはり外被材4’の表面の熱伝導を低減させて、真空断熱パネル1’全体としての断熱性能を悪化させないようにすることができる。
図35〜図38は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1の製造工程を順に示している。これらの各図に共通して、芯材2は、例えば略板状である繊維集合体を複数枚積層した構造をなし、この芯材2に埋設する吸着剤3をガスバリア性のある袋状の外被材4で封止し、外被材4の内部を真空にして真空断熱パネル1を得る。この真空断熱パネル1は、外被材4の内部を真空封止した後に、形状を整え、冷蔵庫などへの製品の取付け性を向上させるために、例えば実施例8で説明したような、外被材4を芯材2の端面に沿って折る「耳折り」の必要がある。本実施例では、この「耳折り」の作業を低減できる方法を提案する。
比較のために、従来の「耳折り」作業の例を、図39〜図42に従って説明する。従来は先ず、図39に示すように三方を予め封止してある耳部6を形成した外被材4の中に、平面視略矩形状の芯材2を残りの一方の開口部36から挿入する。次に、図40に示すように、外被材4の中央に位置するように芯材2を配置し、外被材4の内部を真空にしながら外被材4の開口部36を封止し、内部を真空状態にした真空断熱パネル1を得る。この場合、図41に示すように、外被材4の四辺が封止されて耳部6が形成され、また芯材2が外被材4の中央に配置されることで、芯材2の四辺において、芯材2の端面よりも外被材4の端面が飛び出したヒレ部16が形成される。その後、図42に示すように、芯材2の四辺に対して、外被材4の飛び出した部分であるヒレ部16を、芯材2の端面に沿って折り曲げる「耳折り」を行ない、次いで真空断熱パネル1の平面部となる外被材4の表面と、折り返された外被材4の端面とを、粘着テープ48で止めるテープ貼りを行なう。
上述した「耳折り」の作業時には、外被材4を折り曲げる毎に応力が加わるため、外被材4にダメージを与えて、特に芯材2の角部(コーナー部)に接する箇所でクラックを発生させてしまう。また、芯材2の四辺に対して「耳折り」を行なわなければならず、外被材4へダメージを与える機会が多く、その後のテープ貼りを含めて、作業時間も余計にかかる。
その対策として、本実施例では、先ず図35に示すように、ガスバリア性のあるシート体を折り曲げて、その一辺を折り曲げ部49として形成すると共に、折り曲げ部49に直交する別な一辺に、封止部となる耳部6を形成して、耳部6を一箇所のみで構成した対をなすシート部材4A,4Bからなる外被材4を使用し、図36に示すように、外被材4の中央にではなく、折り曲げ部49と耳部6とにより形成される外被材4のコーナー部50に、芯材2の角部を寄せるようにして、この芯材2を配置する。
次に、外被材4の開口している2辺のうちの一辺を封止して耳部6を形成し、残っている開口部から袋状の外被材4の内部を真空状態にまで減圧して、その開口部を封止する。このときの状態を示したのが図37であり、耳部6は折り曲げ部49を除く外被材4の三辺に形成されると共に、外被材4のコーナー部50に芯材2の角部を寄せるようにして芯材2が配置されている関係で、芯材2の端面から外被材4の飛び出している端面は二辺となり、その二辺にそれぞれヒレ部16が形成される。
その後、図38に示すように、芯材2の二辺に対して、外被材4の飛び出した部分であるヒレ部16を、芯材2の端面に沿って折り曲げる「耳折り」を行ない、次いで真空断熱パネル1の平面部となる外被材4の表面と、折り返された外被材4の端面とを、粘着テープ48で止めるテープ貼りを行なう。このように本実施例では、外被材4の折り曲げ回数の少ない構造にして、「耳折り」の作業を2回で済ますことができるので、外被材4の折り曲げによるダメージ機会を減らすことができ、芯材2の角部に接する箇所でのクラックなどを低減できる。また、外被材4の折り曲げ回数が減ることにより、折り曲げに要する時間が減少し、その後のテープ貼りを含めて、工数削減を図ることが可能になる。
以上のように本実施例では、略板状の繊維集合体を積層した構造である芯材2と、芯材2の埋設部に設置され、包材に入れたゲッタ剤としての吸収剤3とを、ガスバリア性を有する外被材4で封止し、外被材4の内部を真空にしてなる断熱体としての真空断熱パネル1において、外被材4の内部を真空封止した後に、少なくとも芯材2の一辺以上を、芯材2から外被材4に顕著な飛び出しがないように端面を揃えて配設した構成となっている。
この場合、少なくとも芯材2の端面と外被材4の端面を揃えた部位では、外被材4を芯材2の端面に沿って折る耳折り部が形成されないため、冷蔵庫などへの製品の取付け性を向上させることができると共に、製品としての見栄えを良くすることができる。
また、本実施例では、芯材2と外被材4の端面を揃えるために、少なくともシート状の外被材4の一辺に、折り曲げ部49を形成している。
この場合、折り曲げ部49を形成した外被材4の一辺は、耳折り部が形成されないため、冷蔵庫などへの製品の取付け性を向上させることができると共に、製品としての見栄えを良くすることができる。
また、本実施例の外被材4は、少なくとも一辺以上が封止されていない構造を有している。この場合、外被材4の封止されていない折り曲げ部49に芯材2の端面4を揃えることで、外被材4の折り曲げ回数の少ない構造にすることができ、外被材4の折り曲げによるダメージ機会を減らして、芯材2の角部に接する箇所でのクラックなどを低減できる。
図43〜図45は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル51の構成を示している。図43には、図44や図45に示す真空断熱パネル51を構成する真空断熱部52を示しているが、これは実際には上記実施例で示した真空断熱パネル1と同じものである。すなわち、抄紙タイプのグラスウールシートであるシート体2A,2B,2Cを複数枚積層して芯材2とし、この芯材2の埋設部28に吸着剤3を配置して、吸着剤3を含む芯材2を外被材4で包み、外被材4の内部を減圧しした後に、外被材4の開口部を封止することで、芯材2の全周囲を包んで密閉した真空断熱部52が得られる。なお、芯材2となる抄紙タイプのグラスウールシートは、シート状に製造されるため、積層する場合には任意の寸法にカットしたシート体2A,2B,2Cを順次積み重ねて、既定の枚数にして外被材4に挿入される。
図44に示す真空断熱パネル51は、平面視同形をなす2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせた外被材4の適所にシール部54を形成して、複数の空間55を区画形成し、この空間55に図43で示した吸着剤(図示せず)を含む芯材2をそれぞれ挿入して、各空間55を減圧封止する。その結果、複数の真空断熱部52を直列に連結した真空断熱パネル51を得ることができる。
また、別な図45に示す真空断熱パネル51は、平面視同形をなす3枚のシート部材4A,4B,4Cを重ね合わせ、その端部にシール部56を形成した外被材4により、シート部材4A,4Bの間と、シート部材4B,4Cの間にそれぞれ空間55を区画形成し、この空間55に図43で示した吸着剤(図示せず)を含む芯材2をそれぞれ挿入して、各空間55を減圧封止する。その結果、複数の真空断熱部52を並列に連結した真空断熱パネル51を得ることができる。
これらの各図に示す真空断熱パネル51は、外被材4により複数の独立した空間55をそれぞれ形成して、外被材4内を多室化し、各空間55に芯材2を挿入して真空封止していることから、仮に真空断熱パネル51の一部に不良が発生して、空間55の一部の真空度が失われたとしても、残りの空間55の真空度を維持することができる。したがって、真空断熱パネル51全体として、断熱機能を保持することが可能になる。
以上のように、本実施例における真空断熱パネル51は、例えば図44や図45に示すように、一組の外被材4と複数組の芯材2で構成され、外被材4により形成される複数の空間55内に、芯材2を個々に入れて、それぞれの芯材2が独立して減圧保持されるようになっている。
従来は一組の外被材に一組の芯材を使用して、真空断熱パネルを形成していたが、これでは外被材のどこか一箇所でもピンホールなどの真空を破壊する不良が発生すると、真空断熱パネル全体としての機能が失われる。
これに対して本実施例の真空断熱パネル51は、外被材4により形成される複数の空間55内に、芯材2を個々に入れて、それぞれの芯材2が独立して減圧保持される構成となっているので、真空断熱パネル51の一部に不良が発生しても、真空断熱パネル51全体として、断熱機能を保持することが可能になる。
図46は、本実施例における断熱体としての真空断熱パネル1の構成を示している。真空断熱パネル1は上述したように、複数枚積層した無機質繊維からなる薄肉のグラスウールシートを芯材2とし、ガスおよび水蒸気の透過を阻害する外被材4で芯材2を包み、外被材4の内部を真空封止することで得られる。
外被材4は、平面視同形をなす2枚のシート部材4A,4Bを重ね合わせ、シート部材4A,4Bの外周部(端部)をヒートシールして形成されるもので、芯材2を内部に密封収納した状態で、芯材2を含まない外被材4のみで構成されるヒレ部16が、芯材2の外周端部から外被材4の外周端部にかけて形成される。特に本実施例では、芯材2を外被材4で包んでヒレ部16を折り返した後、外被材4の内部を減圧した状態で、実施例7で示した上下ヒーターによるシール装置40を用いて、シート部材4A,4Bを熱溶着させたシール部58を、折り返したヒレ部16の上下2か所に形成する。このシール部58は、前述の耳部6,6’に相当する。
比較として、従来の真空断熱パネル1の要部構成を図47に示す。従来は、外被材4で芯材2を包み、外被材4の内部を強制的に減圧した後、外被材の開口部を封止して、全周囲を密閉した状態に保持した真空断熱パネル1を製造していた。この場合、外被材4のヒレ部16は折り返さずに、そのままシール装置40でシールされる。つまり、外被材4の開口部におけるシール部58は一箇所のみであり、シール部58からの阻害ガス侵入による長期信頼性の低下が起こる。
これに対して、本実施例の真空断熱パネル1は、複数枚積層した無機質繊維からなるシートまたはボードを芯材2とし、ガスおよび水蒸気の透過を阻害する外被材4で芯材2を包み、外被材4のヒレ部16を折り返した後に、外被材4の内部を減圧し、最後にヒレ部16に上下合わせて二箇所以上のシール部58を設けて、外被材4の端部をシールする構成となっている。
この場合、外被材4のヒレ部16を折り返して、ヒレ部16の上下二箇所以上にシール部58を設けることで、従来に比べてシール部58からの阻害ガスを侵入しにくくして、優れた長期信頼性を有する真空断熱パネル1を提供することが可能になる。
また本実施例では、折り返した上下のシール部58どうしが融着される構成であることが好ましい。この場合、個々のシール部58が外被材4の端部をシールするだけでなく、シール部58どうしもさらに融着して外被材4の端部をシールすることで、さらに優れた長期信頼性を有する真空断熱パネル1を提供できる。また、ヒレ部16の耳折りが不要になり、ヒレ部16の最小化につながる真空断熱パネル1を提供できる。
また本実施例では、外被材4が三層以上のラミネート袋からなり、且つその表層がプラスチック材料からなる融着層であることが好ましい。このようにすれば、ヒレ部16を折り返したときに、外被材4の表層となる融着層が内側に向かい合い、この融着層を介して上下のシール部58どうしを容易に融着することが可能になる。
また、本実施例で用いるシール部58は、その幅が一箇所につき8mm以上であることが好ましい。このような幅でそれぞれのシール部58を形成すれば、優れた長期信頼性を有する真空断熱パネル1を提供できる、とする本実施例の効果を発揮することが可能になる。
図48は、本実施例における真空断熱パネル1の完成状態を示している。同図において、真空断熱パネル1は、繊維状のグラスウールシートを積層した断熱材からなる芯材2と、積層シート状のフィルムで袋状に封止された水分の吸着剤3とを、フィルム状の外被材4に収納して内部を真空維持したものである。吸着剤3は、例えば酸化カルシウム,シリカゲル,ゼオライトなどの水分吸着性能を有する無機物からなる。また外被材4は、ガスバリア性を有し、芯材2及び吸着剤3を収納して内部を真空維持できれば、どのような材料でも構わず、例えばアルミニウムなどの金属を表面に蒸着したプラスチックフィルムなどの積層袋が用いられる。61は、真空断熱パネル1の表面に形成された凹部であって、これは前述の溝部35に相当する。
次に、上記真空断熱パネル1の製造工程について、図49~図52を参照しながら詳しく説明する。
図49は、芯材2を外被材4に収容して真空封止する前の芯材2の斜視図である。本実施例の芯材2は、複数の芯部2A,2B,2Cを組み合わせて構成される。それぞれの芯部2A,2B,2Cは、型や刃物(図示せず)を使用して、芯材2の母材を所定寸法にすることで得る。その際、凹部61を形成する部分は、芯材2の底面をなす平板状の芯部2Aの上面に間引いて配置された複数の芯部2B,2Cを使用して得る。芯部2B,2Cは動かないように、芯部2Aに糸止めなどをして固定するのが好ましい。
さらに芯材2には、凹部61を逃げた位置に、吸着剤3の挿入部を設けるために、予め切刃62を入れておく。芯材2の乾燥工程を経た後、図50に示すように、切刃62を入れた箇所の芯材2を取り除いて薄肉化し、そこに吸着剤3を挿入する。その後、取り除いた芯材2を適量剥いだものを、吸着剤3の上に被せるように戻すことで、吸着剤3が直接外被材4に当たらないようにする。
図50は、芯材2に吸着剤3を装着した状態で、これらを袋状の外被材4に入れて、真空封止装置(図示せず)の内部にセットし、外被材4の内部を減圧して真空封止して得た真空断熱パネル1を示している。なお、芯材2に吸着剤を装着したものを別部材、例えばポリプロピレンシートなどに包んで圧縮し、圧縮した状態でシート周囲をヒートシールして成形体にしてから外被材4に挿入し、真空封止装置の内部にセットし、減圧前にシートの一端を開いてから外被材4の内部を減圧して真空封止してもよい(図示せず)。
図50に示すように、真空断熱パネル1は、大気圧により押されて、芯材2を間引いた側だけでなく、その反対側にも凹部61’が形成され、必要とする凹部61は本来よりも浅い状態になっている。この凹部61に、図51や図52に示すローラー65を直線方向に向かって回転させながら圧縮し、凹部61の深さを所定寸法に成形して、完成状態の真空断熱パネル1を得る。
図51は、上記真空断熱パネル1の断面を示しており、凹部61を所定寸法に形成するために、ここでは回転するローラー65と、そのローラー65に一体形成された凸部66とを含む図示しないプレス機を用いている。ローラー65の凸部66で凹部61を一側から圧縮することで、従動ローラー67の上面に載置された真空断熱パネル1の反対側(他側)の凹部61’は略平坦になる。
図52は、外被材4の内部を真空封止した後で、真空断熱パネル1の凹部61の表面に、ギャップ調整したローラー65を用いて、凹部61の深さを所定寸法に形成する状態を示している。具体的には、図50に示す状態の真空断熱パネル1を、送りローラー68で案内しながらローラー65に向かって搬送する。ローラー65が回転することにより、ローラー65の凸部66が真空断熱パネル1の表面を圧縮しながら、直線状に所定深さの凹部61を徐々に形成すると同時に、従動ローラー67に押し付けられた真空断熱パネル1の裏面側では、本来必要のない凹部61’が矯正されて略平坦となり、結果的に図48に示すような、真空断熱パネル1の表面側にのみ、所定寸法の深さを有する凹部61を形成した真空断熱パネル1が得られる。
このように本実施例では、芯材2と水分の吸着剤3を有し、芯材2と吸着剤3を覆い内部を減圧して封止した外被材4を備え、直線状に所定の深さと幅を有する凹部61を一つ以上形成した真空断熱パネル1において、凹部61は芯材2を直線状に間引いて外被材4に挿入して真空封止した後、直線方向にローラー65を回転しながら形成されるものとなっている。
従来は、真空断熱パネルに溝加工を行なう方法として、外被材の内部を真空封止した真空断熱パネルに対し、後加工で金型に凸部を設けたプレス機で圧縮する考えや、ローラーに凸部を設けて、そのローラーを回転させながら圧縮する考えが提案されている。これらの方法は、何れも後加工で所定深さの凹部を圧縮により形成するので、真空断熱パネルの厚みが薄くなる。そのため、必要な厚さの真空断熱パネルを得るには、芯材厚みを予め厚くしておく必要があり、芯材の使用量が多くなってコストアップの要因となっていた。また、一度に所定の深さの凹部を形成させなければならず、外被材にダメージを与えてしまい、外被材の破れや外被材のバリア性が低下して、真空断熱パネルとしての断熱性能が劣化する。
そこで本実施例のように、芯部2Aの上面に複数の芯部2B,2Cを間引いて配置して、芯材2に予め凹部61を形成すれば、外被材4の内部を真空封止した後の大気圧により、真空断熱パネル1にはある程度の深さの凹部61が形成され、予め凹部61を形成していない平板状の真空断熱パネル1に対し、後加工で所定の深さの凹部61をローラー65で圧縮して形成する場合と比べて、同じ厚さの真空断熱パネル1を得るのに、芯材2の使用量を少なくすることができる。また、芯材2に予め凹部61が形成されているので、ローラー65による後加工では真空断熱パネル1に対する圧縮力が小さく済み、その結果、所定の深さの凹部65を形成するのに、外被材4へのダメージを少なくすることができる。
また本実施例では、真空断熱パネル1の凹部61を、図示しないプレス機により圧縮して所定深さに形成している。この場合も、上述の効果を得ることができる他に、プレス機を用いて所定深さの凹部61を、真空断熱パネル1に形成することが可能になる。
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、各実施例に示す芯材2は、平面視で四角形以外の形状であっても構わない。また、各実施例に記載された特徴を、別な一乃至複数の実施例と組み合わせてもよい。