JP3674949B2 - 採血針 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は採血針に関し、さらに詳細にはその一端を被検者の血管に穿刺し、他端を真空採血管内に連通させて、真空採血管内の負圧に応じた量の血液を採取できるようにした採血針に関する。本発明の採血針によれば、他端を真空採血管に連通させる前に一端が被検者の静脈に穿刺されたこと、いわゆるフラッシュバックを確認できる。
【0002】
【従来の技術】
従来から真空採血管による採血に際して、真空採血管を取り付ける前にフラッシュバックを確認できるような採血針が提案されている。このような採血針としては、例えば、略筒状のハブと、該ハブの軸方向両端から延出する鋭利な先端を有する針管と、該針管の一端を包囲するように前記ハブに嵌着された有底筒状の弾性キャップとからなり、前記ハブに前記弾性キャップ内部と外部とを連通させる通気孔が設けられ、該通気孔内に空気透過性血液不透過性フィルタが設けられた採血針(特公平7−32766号公報、特開平7−379号公報、特開平8−150134号公報、特許第3086024号公報等)等が挙げられる。
これらの採血針は、フラッシュバックを確認するために、該採血針を被検者の静脈に穿刺した時に該採血針内に血液が流入するように空気は外部へ逃がしながら、その流入した血液は外部へ漏れることがないように、空気透過性血液不透過性フィルタを設けたものである。前記空気透過性血液不透過性フィルタとしては、メンブレンフィルタや焼結フィルタなどが用いられている。しかし、前記公報に記載された採血針は、ハブの成形時に該ハブの内部に弾性キャップ内部と外部とを連通させる通気孔を形成する必要がある。前記通気孔は、前記ハブ自体を小さくするために、その孔径をなるべく小さく形成することが好ましいので、前記ハブの構造は自然と複雑になり、成形が困難になってしまう。また、前記採血針は、採血針を被検者の静脈に穿刺した時に該採血針内に流入した血液が、いったん弾性キャップ内部を満たした後、ハブ内の通気孔を通って初めてフラッシュバックが確認されるため、被検者への穿刺からフラッシュバック確認までにある程度の時間を必要とする。
【0003】
また、フラッシュバックを容易にかつより迅速に確認できる採血針も開発されている(特公平2−21809号公報、特開昭58−212455号公報、特開平4−141151号公報等等)。
特公平2−21809号公報に記載された採血針は、第一のカヌラと第二のカヌラを有し、第一のカヌラを固定する部材と第二のカヌラを固定する部材を固着させて採血針を形成する際に、前記固定部材の固着面に間隙を形成させて、該間隙に流入した血液を目視することによりフラッシュバックを確認しうるものである。しかし、この採血針は、採血針の基端側に真空採血管を接続した際に、該真空採血管内の負圧が間隙に設けられたフィルタに直接かかるため、該フィルタを通して外部から空気が流入するおそれがある。またそれによって、真空採血管の採血量が減少する可能性がある。
また、特開昭58−212455号公報に記載された採血針は、ゴムさやの口部分にフィルタが狭持されており、透明のゴムさやに流入した血液を目視することによりフラッシュバックを確認しうるものである。しかし、このような採血針は、ゴムさやの上にホルダが設けられ、さらにその上から手で保持されるため、フラッシュバックの確認が非常に困難である。また、ゴムさやに嵌合されたフィルタは、採血管を着脱するときのゴムさやの伸縮に耐えきれず、血液が漏れるおそれがある。
さらに、特開平4−141151号公報に記載された採血針は、二つの針が間隔Lを隔てて透明なハブに固定されており、間隔Lの部分からハブを介してフラッシュバックを確認しうるものである。しかし、この採血針は、採血管のゴム栓に穿刺する側の針を包囲する軟質キャップの一部がフィルタ部材で形成されているため、フィルタ部分が採血管着脱時のゴムさやの伸縮に耐えきれずに破損して血液が漏れるおそれがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明はフラッシュバックの確認が迅速でかつ容易であり、真空採血管の採血量が減少するおそれがなく、またハブの構造が簡単で成形および製造が容易な採血針を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために種々鋭意検討した結果、2本の針管を備えたハブ内に摺動部材を設け、該摺動部材がハブの先端側または基端側へ摺動することにより、採血管装着前はハブ内部と外部雰囲気とがフィルタを介して連通し、採血管装着時にはハブ内部と外部雰囲気との連通が阻止され、採血管内の負圧がフィルタにかかるのを防ぐことで、所期の目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は軸方向に貫通した連通孔を有する透明または半透明のハブと、該ハブの連通孔の基端部に摺動可能に配置される筒状の摺動部材と、該ハブの連通孔の先端部に配置され先端側から延出する先端側針管と、該摺動部材の内腔と連通し該摺動部材の基端側から延出する基端側針管と、該摺動部材の基端部に気密的に取りつけられて該基端側針管を収納しうる弾性キャップとからなり、前記ハブの連通孔の中間部位には該連通孔内部と外部雰囲気とを空気透過性血液透過性のフィルタを介して連通する通気孔が形成されており、該通気孔は前記摺動部材がハブの先端側へ摺動したときに該摺動部材に塞がれて、ハブの連通孔内部が外部雰囲気と連通することを阻止することを特徴とする採血針である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の採血針を添付図面に示す好適な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの説明に限定されるものではない。
図1は、本発明の採血針の採血管装着前の状態の一実施例を示す縦断面図であり、図2は図1に示す採血針の採血管装着後の状態を示す縦断面図である。
本発明の採血針1において、先端とは患者に穿刺する側(図中、左側)を、基端とは真空採血管(図示せず)に穿刺する側(図中、右側)を指す。
【0008】
本発明の採血針1は、略筒状の透明または半透明のハブ2を有する。該ハブ2は射出成形等により中空の管体に成形され、軸方向に貫通された連通孔21が設けられる。該ハブ2は、後述する方法によってフラッシュバックを容易に確認できるように、透明ないし半透明の材質により好ましく形成される。該ハブ2の材質としては、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ABS樹脂等があげられる。
【0009】
前記ハブ2の連通孔21は、その先端部に患者の血管に穿刺する先端側針管31が鋭利な刃先311を先端側に向けた状態で挿入されて固定されるため、該連通孔21の先端部の内径は該先端側針管31の外径よりも若干大きく形成されている。前記先端側針管31は、例えば接着剤Sを用いて前記ハブ2の先端部に気密的に固着されている。該接着剤Sとしては、エポキシ硬化剤やUV硬化型接着剤等が用いられる。該接着剤Sは、前記ハブ2と先端側針管31との間隙の一部を埋めるように使用されても差し支えない。また、前記先端側針管31は、接着剤Sを使用せず、超音波や高周波などによって融着することにより、前記ハブ2に固着されていてもよい。該先端側針管31の材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、あるいはこれらの合金などの金属材料があげられる。
【0010】
前記ハブ2の連通孔21の中間部位には、該連通孔21内部と外部雰囲気とを空気透過性血液不透過性のフィルタ4を介して連通するための通気孔22が形成されている。該通気孔22は、例えば図1に示すように採血針1の軸方向と垂直な方向に形成される。該通気孔22は、空気および血液が静脈圧により押されて通過できるものであれば大きさも形状も特に限定されないが、好ましくは該間隙の断面積が1〜10mm2である。前記通気孔22は、フィルタ4を固定する部分においてのみ、その断面積が大きく形成されていてもよい。
前記空気透過性血液不透過性のフィルタ4は、好ましくは前記通気孔22の外部口部に設けられる。該フィルタ4としては、疎水性のメンブレンフィルタや焼結フィルタなど、気体を通過させかつ液体を通過させない細孔を有するものであれば特に限定されない。該フィルタ4は、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等からなる焼結フィルタであり、さらに好ましくは、血液と接触すると膨潤して焼結体の細孔を塞ぐ吸水性ポリマーを含有している焼結フィルタである。前記吸水性ポリマーとしては、デンプンやアクリル酸塩などがあげられ、その含有率は焼結フィルターの全重量に対して好ましくは5〜30%である。該フィルタ4は通気孔22に嵌合あるいは融着により固定される。
【0011】
前記ハブ2の先端部外周には、リブ23が設けられていてもよい。該リブ23は、患者に穿刺する側の針先を保護するための針キャップ(図示せず)と係合して、該針キャップ内で採血針1が回転することを防止するため等に使用される。また、該ハブ2の基端部外周には、ねじ部24が設けられており、該ねじ部24には真空採血管を保持するためのホルダ(図示せず)の口部が螺合しうるようになっている。
【0012】
前記ハブ2の連通孔21の基端部には筒状の摺動部材5が摺動可能に配置される。また、該摺動部材5の内腔51は、その基端側に真空採血管のゴム栓に穿刺する基端側針管32が鋭利な刃先321を基端側に向けた状態で挿入されて固定される。したがって、該摺動部材5の外径は、ハブ2の連通孔21の内径よりも若干小さく、好ましくは1〜3mmである。また、該摺動部材5の内径は、基端側針管32の外径よりも若干大きいことが好ましく、具体的には針管の外径よりも0.1〜0.5mm大きいことが好ましい。該摺動部材5を形成する材料は特に限定されないが、ハブ2の連通孔21の気密性を保つためにエラストマーであることが好ましく、具体的にはポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂等が好ましく用いられる。
該基端側針管32は前記先端側針管31と同様に、接着剤Sを用いた接着によって、あるいは超音波や高周波などを用いた融着によって、該摺動部材5に固定される。また、該基端側針管32の材料も先端側針管31と同様のものが使用される。
【0013】
前記摺動部材5の基端部には、基端側がより大きい外径を有する段部52が形成されており、該段部52に弾性キャップ6が気密的に取りつけられる。該段部52は、先端側の外径が小さい部分と基端側の外径が大きい部分の径の差が、0.6〜1.4mmであるのが好ましい。該摺動部材5の段部52よりも基端側は、弾性キャップ6を取りつけやすいように、基端側に向かって外径が減少するテーパー状に形成されていてもよい。
前記弾性キャップ6は有底筒状形状を有しており、基端側針管32の刃先321を収納できる大きさに形成される。該弾性キャップ6の材質としては、天然ゴム、イソプレンゴムやシリコンゴムなどの合成ゴム、エラストマー等、ゴム弾性を有するものがあげられる。
【0014】
前記摺動部材5は、採血針1使用前には、該連通孔21内部が通気孔22によりフィルタ4を介して外部雰囲気と連通するように、ハブ2の連通孔21の基端側に位置している。
採血針1には、該摺動部材5がこの状態で位置決めされるように、位置決め手段が設けられていてもよい。該位置決め手段の一例として、図1に示すように、ハブ2の連通孔21内に設けられた凹部25と摺動部材5の外周面に設けられた凸部53との嵌合によるものが用いられる。該凸部の高さおよび凹部の深さは、摺動部材5の摺動抵抗が極端に大きくならないように、0.01〜0.1mmであることが好ましい。
【0015】
本発明の採血針1は、ハブ2のねじ部24にホルダ(図示せず)を螺合した状態で、先端側針管31の刃先311を患者の静脈に穿刺して使用される。この時、先端側針管31内の空気はハブ2の連通孔21を通り、通気孔22および該通気孔22に設けられたフィルタ4を通って外部へと逃れる。これにより、静脈内の血液が先端側針管31内に流入する。該血液はハブ2の連通孔21、摺動部材5の内腔51、基端側針管32内部および弾性キャップ6内部の一部または全部を満たした後、通気孔22内に流入して、空気透過性血液不透過性のフィルタ4によりせき止められる。
前記採血針1は、このような機構により連通孔21に流入した血液を、ハブ2を介して外部から目視することにより、フラッシュバックが確認できる。したがって、本発明の採血針1は、従来の採血針のように、弾性キャップ内に流入した血液を目視してフラッシュバックを確認するものや、弾性キャップ内部と外部雰囲気とを連通させる通気路に流入した血液を目視してフラッシュバックを確認するものと比較して、フラッシュバック確認に要する時間が大幅に短縮でき、患者の負担が軽減される。
【0016】
フラッシュバック確認後、前記ホルダ内に真空採血管(図示せず)が挿入され、前記基端側針管32の刃先321が該真空採血管の口部に設けられたゴム栓を穿刺して該真空採血管内部に挿入されることにより、該真空採血管内部に血液が流入して採血が行われる。このとき、前記ゴム栓の刺通抵抗によって該基端側針管32が先端側へと押される。これにより、摺動部材5は連通孔21内を先端側へ摺動して通気孔22を塞ぎ、ハブ2の連通孔21が通気孔22によって外部雰囲気と連通することを阻止する。
採血針1には、該摺動部材5がこの状態で位置決めされるように位置決め手段が設けられていてもよい。該位置決め手段の一例として、図2に示すように、ハブ2の連通孔21内で前記凹部25よりも先端側に設けられた凹部26と、前記摺動部材5の凸部53との嵌合によるものが用いられる。該摺動部材5には、位置決めをより確実にするため、前記連通孔21の凹部25と嵌合するように、該摺動部材5の外周面で前記凸部53よりも基端側に凸部54がさらに設けられていてもよい。
【0017】
真空採血管をホルダ内に挿入するとき、基端側針管32の刃先321が該真空採血管口部のゴム栓を貫通する前に、前記摺動部材5が先端側へと摺動して通気孔22を塞ぐように、ゴム栓の刺通抵抗および摺動部材5の摺動抵抗が考慮される必要がある。前記ゴム栓の刺通抵抗は、好ましくは500gf以上であり、前記摺動部材5の摺動抵抗は、好ましくは500gf以下であり、より好ましくは100〜300gfである。
【0018】
【発明の効果】
本発明の採血針は、ハブに設けられた連通孔に流入した血液を目視することによりフラッシュバックを確認するため、従来の採血針と比較して、フラッシュバックの確認に要する時間が大幅に短縮できる。また、従来の採血針のようにハブの内部に弾性キャップ内部と外部とを連通させる通気孔を形成する必要がなく、ハブの成形が容易である。さらに、前記構造を有する本発明の採血針は、採血針の基端側に真空採血管を接続する際に、該真空採血管内の負圧が直接フィルタにかからないため、該フィルタを通して外部から空気が流入するおそれがなく、真空採血管の採血量が減少するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の採血針の採血管装着前の状態の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】 図1に示す採血針の採血管装着後の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 採血針
2 ハブ
21 連通孔
22 通気孔
31 先端側針管
32 基端側針管
4 フィルタ
5 摺動部材
51 内腔
6 弾性キャップ
61、62、63、64 間隙
7 フィルタ
Claims (5)
- 軸方向に貫通した連通孔を有する透明または半透明のハブと、該ハブの連通孔の基端部に摺動可能に配置される筒状の摺動部材と、該ハブの連通孔の先端部に配置され先端側から延出する先端側針管と、該摺動部材の内腔の基端部に配置され基端側から延出する基端側針管と、該摺動部材の基端部に気密的に取りつけられて該基端側針管を収納しうる弾性キャップとからなり、前記ハブの連通孔の中間部位には該連通孔内部と外部雰囲気とを空気透過性血液不透過性のフィルタを介して連通する通気孔が形成されており、該通気孔は前記摺動部材がハブの先端側へ摺動したときに該摺動部材に塞がれて、ハブの連通孔内部が外部雰囲気と連通することを阻止することを特徴とする採血針。
- 前記採血針は、前記摺動部材が基端側へ摺動して通気孔が塞がれていない状態、および先端側へ摺動して通気孔が塞がれた状態で、それぞれ該摺動部材を位置決めするための位置決め手段を有する請求項1記載の採血針。
- 前記位置決め手段は、ハブの連通孔内に設けられた凹部または凸部と、摺動部材外周に設けられた凸部または凹部との嵌合によるものである請求項2記載の採血針。
- 前記通気孔は、採血針の軸方向と垂直な方向に形成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の採血針。
- 前記フィルタは前記通気孔の外部口部に設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の採血針。
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