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JP3646442B2 - 非水電解液電池 - Google Patents

非水電解液電池 Download PDF

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JP3646442B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解液電池、特に異常反応時に発生する電池の内圧上昇に際して内圧を開放する安全弁の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、軽量であるとともに、高電位、高性能,長寿命といった利点を有することから、非水電解液電池が各種電子機器、特に携帯用電子機器の供給電源として用いられているようになっている。
【0003】
この非水電解液電池はリチウム塩を電解質塩として用いるものであり、その一例として、リチウムあるいはリチウム合金を負極活物質として用い、二酸化マンガンを正極活物質として用いる二酸化マンガンリチウム電池が知られている。この二酸化マンガンリチウム電池は、たとえば筒型の電池としてカメラ等で用いられている。
【0004】
ところで、このような非水電解液電池では、高電圧での充電等、誤った使用状態となされた場合、電池内で異常反応が発生し、電池の温度上昇や内圧上昇が生じてしまう。この温度上昇や内圧上昇を放っておくと、電池缶の膨張、さらには破裂に至る可能性がある。
【0005】
そこで、このような非水電解液電池では、電池の過度な内圧上昇を防ぐために、電池内が所定の内圧を越えたときに内圧を開放する安全弁が備えられるのが通常である。
【0006】
安全弁は、図7(a)に示すように貫通孔11aを有し、外周側が垂直に立ち上がった蓋板11上に、この蓋板11の貫通孔11aを閉塞する開裂膜12と、補強リング13が設けられ、図7(b)に示すように、上記蓋板11の外周縁部が内側に折り返されることで、これら開裂膜12と補強リング13の外周縁部が蓋板11に対して押さえ付けられる。なお、上記開裂膜12は、金属箔表面にプラスチックが被覆された積層フィルムであり、所定の圧力がかかると開裂するような強度となっている。
【0007】
このような安全弁を円筒形電池に組み込むには、発電要素が収容された円筒形電池缶の開口部に、上記安全弁と、排気孔が形成された正極端子を、絶縁ガスケットを介して当てがい、カシメ、密閉する。
【0008】
この安全弁が組み込まれた円筒形電池では、電池内圧が上昇すると、開裂膜12が正極端子側に膨張し、所定の圧力を越えたところで開裂する。これによって、電池缶内のガスが、蓋板の貫通孔、正極端子の排気孔を通過して外部に排気され、内圧上昇による電池缶の破裂が回避されることになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような安全弁を電池に組み込んだ場合、電池缶内で安全弁が大きな体積を占め、その分、電極の収容できる有効容積が減少する。このことは、電池容量の向上を図る上で不利になる。
【0010】
また、このような電池では、電池缶内の正極が安全弁の蓋板11を介して正極端子と接続され、このうち蓋板11と正極端子の接続は、蓋板11の折り返し部11bと正極端子の外周縁部を接触させることで行われる。この折り返し部11bと正極端子の外周縁部での接触の場合、接触面積が十分にとれず、電池の負荷特性を落とす原因となる。
【0011】
しかも、この安全弁では蓋板11を折り返す折り返し工程が非常に煩雑である上、折り返し部11aは曲面状になることから、カシメ工程に際して、ガスケットを十分に圧縮することができない。このため、電池の密閉性が低くなり、電解液の漏液が生じ易いといった問題がある。
【0012】
そこで、本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、安全弁の占める容積が小さく、また、安全弁の蓋板と正極端子との接触面積が十分に確保され、さらに、安全弁によってガスケットが十分に圧縮され、耐漏液性に優れた非水電解液電池を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明に係る非水電解液電池は、開口部を有する電池缶内に負極と正極が収納され、この電池缶の開口部側の端部に、前記電池缶の開口部を密閉するとともに電池缶が所定の内圧を越えたときに内圧を開放する安全弁と、略中心部に電池缶の外側に突出する凸部を有するとともに上記凸部の周りが平坦部が形成され、上記突部に排気孔が設けられた正極端子が、絶縁ガスケットを介して取り付けられてなる非水電解液電池において、上記安全弁は、貫通孔が形成された蓋板と、この蓋板の貫通孔を閉塞する開裂膜と、補強リングよりなり、上記蓋板は、上記貫通孔の周りに、上記貫通孔側から上記電池缶の外側に向かって順に高さが高くなる2段の段差部を有し、上記開裂膜と補強リングは、上記蓋板の貫通孔側に位置する1段目の段差部上に収められ、上記補強リングは、上記開裂膜とともに上記1段目の段差部上に収められたとき、その上面の高さ位置が、上記蓋板の最外周の2段目の段差部の高さ位置よりも高くなる厚さを有し、上記正極端子は、上記平坦部と上記補強リングとの一部を重ねるとともに、上記平坦部の外周側を上記蓋板の最外周の2段目の段差部に接合されたものである。
【0014】
この非水電解液電池では、安全弁の蓋板に2段の段差部が形成されているので、段差の少ない蓋板に比べて強度が得られる。したがって、蓋板の板厚をある程度薄くした場合でも電池のカシメ時にかかる外力に十分に耐えられ、そのような薄い板厚とすることで安全弁の占有容積が小さくなる。
【0015】
また、この安全弁では、開裂膜と補強リングが蓋板の1段目の段差部に収容されており、それよりも外周側の段差部と正極端子が接合されることで蓋板と正極端子が導通される。
【0016】
つまり、この安全弁では、蓋板の周縁部を折り返さなくても正極端子との導通が図れるので、煩雑な折り返し工程が不要であり、安全弁の作製工程を簡易化できる。また、折り返し部を有さない分、占有容積が小さくなる。
【0017】
さらに、このような蓋板の段差部と正極端子の平坦部との電気的接触では、良好な接触状態が得られ、またこれらの接触面積を制御することによって電気抵抗が容易に低められる。したがって、電池の負荷特性が改善される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
この実施の形態の非水電解液電池は、図1に示すように、開口部を有する電池缶1内に渦巻状電極素子4が収容され、この電池缶1の開口部が、安全弁2と、正極端子3によって封口されて構成される。
【0020】
上記電池缶1は、円筒状に成型され、円筒の一端が閉塞され、他の一端が開口部とされている。この電池缶1は、たとえば鉄に熱伝導性の高いニッケル等がメッキされて構成され、その円筒の外周面には絶縁性の外装ラベルが被覆されている。
【0021】
この電池缶1内には、負極と正極よりなる渦巻状電極素子4が収容される。
【0022】
負極には、帯状のリチウム箔あるいはリチウム合金箔等が用いられる。この負極には負極リード(図示せず)の一端が溶接され、当該負極リードの他の一端は電池缶に溶接される。
【0023】
また、正極には、MnO2等が活物質として用いられる。この活物質を用いて正極を構成するには、MnO2と導電剤及び結着剤よりなる正極合剤を帯状の集電体の両面に配し、成型する。なお、正極には正極リード9の一端が溶接され、当該正極リード9の他の一端は後述の安全弁2の蓋板5に溶接される。
【0024】
これら負極と正極は、セパレータを介して積層され、渦巻状に巻回された形で上記電池缶1内に収納される。
【0025】
また、この電池缶1には、非水電解液が注入される。この非水電解液は、有機溶媒に電解質塩となるリチウム塩が溶解されてなるものである。
【0026】
有機溶剤としては、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート,γ−ブチロラクトン等のエステル類や、ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン,置換テトラヒドロフラン,ジオキソラン,ピラン及びその誘導体,ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等のエーテル類や、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の3置換−2−オキサゾリジノン、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用しても2種類以上混合して使用しても構わない。
【0027】
また、電解質としては、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、リンフッ化リチウム、塩化アルミン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等が使用される。
【0028】
このような電池缶1の開口部は、安全弁2と正極端子3によって封口される。
【0029】
上記安全弁2は、図2に示すように、貫通孔5aが形成された蓋板5と、この蓋板5の貫通孔5aを閉塞する開裂膜6と、補強リング7よりなる。
【0030】
上記蓋板5は、ステンレス等の金属材料によって構成されており、貫通孔5aを略中心とした円形状に成形され、図3に示すように、貫通孔5aの周りには、外周側で高さ位置が高くなるように、少なくとも2段の段差部5b,5cが形成されている。
【0031】
このうち、上記開裂膜6と補強リング7は、貫通孔5a側から1段目の段差部5b上に収容され、溶着される。
【0032】
上記開裂膜6は、所定の圧力がかかったときに開裂するような強度となされたフィルムである。この開裂膜6としては、たとえば金属箔の表面に高分子樹脂を被覆させた積層フィルムが使用される。この積層フィルムにおいて、金属箔としてはアルミニウム箔等が用いられ、高分子樹脂としてはポリプロピレンやポリエチレン等が用いられる。この開裂膜6は、上記蓋板5の貫通孔5a側から1段目の段差5bの外径より若干小径となされた円形状とされている。
【0033】
上記補強リング7は、上記開裂膜の周縁部を補強するためのものである。この補強リング7は、上記開裂膜6と同じ程度の外径となされており、略中心部に貫通孔7aが形成されることでリング状とされている。
【0034】
また、上記正極端子3は、鉄等によって構成されている。この正極端子3は、図1に示すように安全弁2の蓋板5と略等しい外径の円形状に成形され、略中心部に電池の外側に突出する突出部3bを有し、この突出部3bの周りが平坦部3cとされている。なお、この突出部3bの周面には排気孔3aが形成されている。
【0035】
これら安全弁2と正極端子3とは、安全弁2を構成する蓋板5の最外周の段差部(この場合、貫通孔側から2段目の段差部)5c上に正極端子3の平坦部3cが接合され、この状態で、電池缶1の開口部に、絶縁ガスケット8を介して当てがわれる。そして、電池缶1の開口部側の端部がカシメられることで電池缶1内が密閉され、電池が構成される。
【0036】
このような電池において安全弁は次のように動作する。
【0037】
すなわち、誤使用によって電池内で異常反応が発生し、電池内圧が上昇した場合には、安全弁2の開裂膜6が正極端子3側に膨張し、所定の圧力を越えたところで開裂する。これによって、電池缶1内のガスが、蓋板5と補強リング7の貫通孔5a,7a、正極端子3の排気孔3aを通過して外部に排気され、内圧上昇による電池缶1の破裂が回避されることになる。
【0038】
ここで、安全弁2はこのような機能を有するが、この実施の形態の非水電解液電池では、安全弁2の蓋板5に少なくとも2段の段差部5b,5cが形成されているので、段差の少ない蓋板に比べて強度が得られる。したがって、蓋板5の板厚をある程度薄くした場合でも電池のカシメ時にかかる外力に対して十分に耐えられ、そのような薄い板厚とすることで安全弁2の占有容積を小さくすることが可能である。
【0039】
また、この安全弁2では、開裂膜6と補強リング7が蓋板5の1段目の段差部5bに収容されており、それよりも外周側の段差部5cと正極端子3の平坦部3cが接合されることで蓋板5と正極端子3が導通される。
【0040】
つまり、この安全弁2では、蓋板5の周縁部を折り返さなくても正極端子3との導通が図れるので、煩雑な折り返し工程が不要であり、安全弁2の作製工程を簡易化できる。また、折り返し部を有さない分、占有容積が小さくなる。
【0041】
しかも、蓋板5の周縁部が折り返されていないことから、蓋板5の直角となっている周縁部によって絶縁ガスケットが直接圧縮され、電池の密閉性が改善される。
【0042】
さらに、このような蓋板5の段差部5cと正極端子3の平坦部3cとの電気的接触では、良好な接触状態が得られ、またこれらの接触面積を制御することによって電気抵抗が容易に低められる。したがって、電池の負荷特性が改善される。
【0043】
なお、このような安全弁2では、補強リング7の外径をa、正極端子3の平坦部3cの内径をbとしたときに、a>bなる関係を満たし、且つ、図4に示すように、電池缶のカシメ前において、補強リング7の上面の高さ位置が、上記蓋板5の最外周の段差部5cの高さ位置よりも、高さ差hが0.2mm未満の範囲で高くなされているのが望ましい。a>bなる関係を満たすようにすること、すなわち正極端子3の平坦部3cと補強リング7とを一部重ならせ、且つ、補強リング7の上面の高さ位置を、蓋板5の最外周の段差部5cの高さ位置よりも若干高くすると、正極端子3の平坦部3cによって補強リング7が下側に押し付けられるようになる。これにより、補強リング7や開裂膜6の熱溶着の信頼性が向上し、電池の密閉性が改善される。なお、補強リング7の上面の高さ位置がこれよりも高くなると、蓋板5の最外周の段差部5cと正極端子3の平坦部3cとの間にスペースが空いてしまい、電気的接触が得られなくなる。
【0044】
また、この補強リング7には、貫通孔7aが形成されるが、この貫通孔7aの形状は、図5に示すように、当該貫通孔7aの内方に向かって突出する尖頭部7bを有するような形状であるのが望ましい。この例では、貫通孔7aが、二つの円の一部が重ねられた如き形状とされており、内方に突出する2つの尖頭部7bを有している。このような尖頭部7bが形成されていると、電池内圧の上昇によって開裂膜6が正極端子3側に膨張したときに、この貫通孔7aの尖頭部7bに当該開裂膜6が接触し、速やかに破断する。つまり、電池内圧の上昇が始まってから比較的速い段階で安全弁が動作するので、電池の安全性がより改善されることになる。
【0045】
以上は電池の基本的な構成であるが、この非水電解液電池には、図6に示すように、さらに蓋板5の最外周の段差部5cと正極端子3の平坦部3cとの間に、リング状の感温抵抗素子10を介在させても良い。
【0046】
この感温抵抗素子10は電池の通常使用条件下では導電性を示し、この感温抵抗素子10を介して蓋板5と正極端子3とが導通される。一方、電池温度が異常上昇した場合には、この感温抵抗素子10の抵抗値が上昇し、蓋板5と正極端子3間で電流が遮断される。これにより、電池内の異常反応が停止する。
【0047】
但し、この感温抵抗素子10は、補強リング7の外径をa、当該感温抵抗素子10の内径をcとしたときに、a>cなる関係を満たすことが望ましい。a>cなる関係を満たすようにすること、すなわち感温抵抗素子10と補強リング5を一部重ならせることによって、この感温抵抗素子10を介して正極端子3の平坦部によって補強リング7が下側に押し付けられるようになる。これにより、補強リング7や開裂膜6の熱溶着の信頼性が向上し、電池の密閉性が改善される。
【0048】
また、この感温抵抗素子10を用いる場合、蓋板5の最外周の段差部5cと感温抵抗素子10の接触面積Aは、感温抵抗素子の一主面における面積をBとしたときにA≧0.25Bなる関係を満たすことが望ましい。接触面積Aがこの範囲よりも小さい場合には電気的抵抗が高くなり、電池の負荷特性が損なわれる。
【0049】
【実施例】
以下に、本発明を適用した具体的な実施例について実験結果に基づいて説明する。
【0050】
実施例1
帯状負極としてLi箔(長さ:240mm,幅:23mm)を用意した。
【0051】
また、帯状正極を次のようにして作製した。
【0052】
まず、熱処理を施したMnO2を正極活物質として90質量部、導電剤となるグラファイトを6質量部、結着剤となるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を4質量部を混合して正極合剤を調製した。そして、この正極合剤を、正極集電体となるステンレス製エクスパンドメタルの両面に配し、帯状に成型することで正極(長さ245mm,幅24.5mm)を作製した。
【0053】
これら正極と負極、さらにセパレータとなる微多孔性ポリエチレンフィルムを、外径17mm、高さ34mmの電池缶の中に適切に収まるように寸法調節した。そして、正極と負極を、セパレータを介して積層し、渦巻状に多数回巻回することで渦巻状電極素子を作製した。
【0054】
このようにして作製された渦卷状電極素子を電池缶に収納し、負極からニッケル製負極リードを導出して電池缶に溶接した。
【0055】
続いて、安全弁を次のようにして作製した。
【0056】
まず、蓋板を用意した。この蓋板は、ステンレス製の皿状の円板である。この蓋板には、略中心部にガス抜きのための貫通孔が形成されており、この貫通孔の周りに2段の段差部が形成されている。
【0057】
そして、この蓋板の貫通孔側から1段目の段差部上に、20μm厚のAl箔に40μm厚のポリエチレン系樹脂をラミネートした積層フィルム(開裂膜)と、補強リングを収め、熱溶着することで安全弁を作製した。なお、この補強リングには、2つの円を一部重ねた如き形状の貫通孔が形成されている。
【0058】
次に、一端が閉塞され、他の一端が開口された円筒状の電池缶を用意する。この電池缶は、開口部側の端部近傍にくびれが形成され、このくびれによって電池缶内に形成される凸部上にアスファルトを塗布した絶縁ガスケットを取り付けた。
【0059】
そして、渦巻状電極素子の正極集電体からは、ステンレス製の正極リードを導出して蓋板に溶接した。
【0060】
続いて、上記電池缶の中に、プロピレンカーボネート60体積部とジメトキシエタン40体積部よりなる混合溶媒中にLiCF3SO3を0.7mol/l溶解させた電解液を注入した。
【0061】
次いで、先に作製した安全弁を、電池缶に取り付けられた絶縁ガスケット上に載せ、さらに、安全弁を構成する蓋板の上に、リング状の感温抵抗素子と、凸部を有するとともにこの凸部の周りが平坦部とされた正極端子を配設し、電池缶2をカシメることで素電池(一次電池)を作製した。
【0062】
そして、この素電池の正極端子の上に、ポリプロピレン製のワッシャー7を配置した。次いで、熱収縮性プラスチックフィルムを基材とした外装ラベルを、裏面に接着剤を塗布した後、上記素電池の外周面に巻き付け、接着した。その後、素電池の上下にはみ出ている外装ラベルを熱収縮させることでワッシャーを押さえ、直径17mm、高さ34mmの円筒型非水電解液電池を作製した。
【0063】
なお、この非水電解液電池において、安全弁の蓋板及び補強リング、感温抵抗素子、正極端子の寸法は次の通りである。
【0064】
安全弁:
蓋板の最外周の段差部の高さ位置と補強リングの上面との高さ位置の高さ差h;0.18mm、補強リングの外径a;11.1mm
正極端子の外周平坦部の内径b:9.6mm
感温抵抗素子の内径c:5mm
比較例1
安全弁を次のようにして作製したこと以外は実施例1と同様にして非水電解液電池を作製した。
【0065】
図6(a),(b)に示すように、外周部が垂直に立ち上がった蓋板を用意し、この蓋板の内側に開裂膜と補強板を配設した。そして、これら開裂膜と補強板を温度160℃で1分間熱溶着することで蓋板に固定し、さらに蓋板の外周部をカシメることで安全弁を作製した。
【0066】
但し、ここでは、安全弁の体積が実施例1で作製した安全弁の体積よりも大きいため、正極の幅を24mmにした。
【0067】
以上のようにして作製した非水電解液電池について、まず、1.2Aで3秒間放電を行った後、7秒間中断するといったパルス放電を、終止電圧1.3Vまで行った。その際の放電容量を表1に示す。
【0068】
【表1】
Figure 0003646442
【0069】
表1からわかるように、実施例1の電池では、正極の幅が広くとれていることから、比較例1の電池に比べて大きな放電容量が得られる。
【0070】
このことから、少なくとも2段の段差部を有する蓋板の1段目の段差部上に開裂膜と補強リングを収めて安全弁を構成し、蓋板の最外周の段差部と正極端子の平坦部を接触させるようにすると、安全弁の占有容積が小さくなり、放電容量が改善されることがわかった。
【0071】
次に、実施例1、比較例1で作製した電池のうち50個を、温度80℃下で20日間貯蔵した。また、他の50個を、温度100℃下で24時間貯蔵した。そして、貯蔵後の電解液の漏液の発生の有無を調べた。漏液が発生した電池個数を表2に示す。
【0072】
【表2】
Figure 0003646442
【0073】
表2に示すように、実施例1の電池では、温度80℃下での貯蔵、温度100℃下での貯蔵のいずれにおいても漏液の発生が抑えられている。これに対して、比較例1の電池では、温度80℃下での貯蔵では2個の電池に漏液が認められ、温度100℃下での貯蔵では4個の電池に漏液が認められる。
【0074】
このことから、少なくとも2段の段差部を有する蓋板の1段目の段差部上に開裂膜と補強リングを収めて安全弁を構成し、蓋板の最外周の段差部と正極端子の平坦部を接触させるようにすると、蓋板を折り返し、この折り返し部と正極端子の平坦部を接触させるのに対して、電池の密閉性が改善されるようになることがわかった。
【0075】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の非水電解液電池では、安全弁が、貫通孔が形成された蓋板と、この蓋板の貫通孔を閉塞する開裂膜と、補強リングよりなり、上記蓋板は、貫通孔の周りに少なくとも2段の段差部を有し、上記開裂膜と補強リングは、蓋板の貫通孔側から1段目の段差部上に収められているので、安全弁の占有容積が小さく、その分、電極の収容容積を確保することができる。また、この安全弁は、煩雑な折り返し工程が不要であるので作製工程が簡易化できる。さらに、この安全弁では、正極端子との導通が、蓋板の最外周の段差部と、正極端子の平坦な外周部との接触によってなされるので、良好な接触状態が得られ、電池の負荷特性が改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した非水電解液一次電池の一例を示す要部概略断面図である。
【図2】上記非水電解液一次電池に組み込まれた安全弁を分解して示す断面図である。
【図3】安全弁を構成する蓋板の段差を示す斜視図である。
【図4】蓋板の最外周の段差部と、補強リングの上面との高さ関係を示す断面図である。
【図5】安全弁を構成する補強リングの一例を示す平面図である。
【図6】本発明を適用した非水電解液一次電池の他の例を示す要部概略断面図である。
【図7】従来の非水電解液一次電池の安全弁を示すものであり、(a)は蓋板をカシメる前の状態を示す断面図、(b)は蓋板をカシメた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 電池ケース、2 安全弁、3 正極端子、4 渦巻状電極素子、5 蓋板、6 開裂膜、7 補強リング、10 感温抵抗素子

Claims (6)

  1. 開口部を有する電池缶内に負極と正極が収納され、
    この電池缶の開口部側の端部に、前記電池缶の開口部を密閉するとともに電池缶が所定の内圧を越えたときに内圧を開放する安全弁と、略中心部に電池缶の外側に突出する凸部を有するとともに上記凸部の周りが平坦部が形成され、上記突部に排気孔が設けられた正極端子が、絶縁ガスケットを介して取り付けられてなる非水電解液電池において、
    上記安全弁は、貫通孔が形成された蓋板と、この蓋板の貫通孔を閉塞する開裂膜と、補強リングよりなり、
    上記蓋板は、上記貫通孔の周りに、上記貫通孔側から上記電池缶の外側に向かって順に高さが高くなる2段の段差部を有し、
    上記開裂膜と補強リングは、上記蓋板の貫通孔側に位置する1段目の段差部上に収められ、
    上記補強リングは、上記開裂膜とともに上記1段目の段差部上に収められたとき、その上面の高さ位置が、上記蓋板の最外周の2段目の段差部の高さ位置よりも高くなる厚さを有し、
    上記正極端子は、上記平坦部と上記補強リングとの一部を重ねるとともに、上記平坦部の外周側を上記蓋板の最外周の2段目の段差部に接合されていることを特徴とする非水電解液電池。
  2. 上記補強リングの外径をa、上記正極端子の平坦部の内径をbとしたときに、a>bなる関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の非水電解液電池。
  3. 上記蓋板の最外周の2段目の段差部上には、リング状の感温抵抗素子が設けられ、上記正極端子の平坦部が上記感温抵抗素子に接合されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液電池。
  4. 上記補強リングの外径をa、上記正極端子の平坦部の内径をb、上記感温抵抗素子の内径をcとしたときに、a>b及びa>cなる関係を満たすことを特徴とする請求項3記載の非水電解液電池。
  5. 上記補強リングは、上記開裂膜と同じ外径を有し、中心部に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液電池。
  6. 上記補強リングの貫通孔には、該貫通孔の内方に向かって突出する尖頭部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液電池。
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