JP3640290B2 - ポジ型ホトレジスト塗布液及びそれを用いた表示素子用基材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板全体にわたって均一な膜厚の塗膜形成が可能であるとともに、粒子の発生がなく、保存安定性に優れる非化学増幅型のポジ型ホトレジスト塗布液、及びこの塗布液を用いて面内均一性に優れる塗膜を設けてなる表示素子用基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子や液晶素子などの製造において、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド基含有化合物を含む非化学増幅型のポジ型ホトレジストを用いることが知られている。
このようなホトレジストは、通常有機溶剤に溶解した形で使用されるが、その有機溶剤としては、これまでエチルセロソルブアセテートが好ましいとされてきた。
しかるに、近年、レジスト溶剤の安全性が問題にされるようになり、これまで使用されてきたエチルセロソルブアセテートに代わって、より安全性の高い溶剤として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(特開昭61−7837号公報)、モノオキシモノカルボン酸エステル(特開昭62−123444号公報)などが提案されている。
【0003】
しかしながら、これらの溶剤は単独で使用した場合、感光剤であるキノンジアジド基含有化合物に対する溶解性が不十分なため、塗布液として保存中に粒子が発生する上、塗膜の均一性、基板との密着性がよくないという欠点がある。これらの欠点を改善するため、酢酸ブチルや2‐ヘプタノン等と混合して用いることが提案されている(特開平5−34918号公報、特開平6−67420号公報、特開平6−317901号公報、特開平7−56333号公報など)。
一方において、γ‐ブチロラクトンを乳酸メチルや2‐ヘプタノンと混合して用いることも知られている(特開平4−362645号公報、特開平5−34919号公報)。
【0004】
ところで、近年の半導体デバイス、液晶デバイスに使用される基板の大型化により、基板全体にわたって均一な膜厚の塗膜形成が困難になり、その結果、マスクパターンに忠実なレジストパターン寸法が得られないという問題が起ってきた。
また、粒子が一旦析出するとデバイス製造の量産ラインを中止しなければならないため、粒子が発生しない保存安定性に優れるレジスト塗布液が望ましいが、これまで知られている溶剤は、この要望にこたえることができず、より保存安定性に優れるレジスト塗布液の出現が強く望まれていた。
【0005】
化学増幅型レジストに対する溶剤としては、3‐メトキシプロピオン酸メチル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとγ‐ブチロラクトンとの混合溶剤が知られているが(特開平10−133377号公報)、樹脂成分が異なる、非化学増幅型レジストに対してこれを用いた場合に、長期間にわたって安定な溶液を形成することは全く予測できなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、基板全体にわたって均一な膜厚の塗膜形成が可能であるとともに、粒子の発生がなく、保存安定性に優れる非化学増幅型のポジ型ホトレジスト塗布液を提供するとともに、この塗布液を用いて面内均一性が優れた塗膜を形成させた表示素子用基材を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、塗布性及び保存安定性の良好な非化学増幅型のポジ型ホトレジスト塗布液を開発するために鋭意研究を重ねた結果、溶剤として特定の組成を有する混合溶剤を用いることにより、前記目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)キノンジアジド基含有化合物を、(C)有機溶剤に溶解してなる非化学増幅型のポジ型ホトレジスト塗布液において、(C)成分として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60〜98重量%とγ‐ブチロラクトン40〜2重量%との混合溶剤を用いることを特徴とするポジ型ホトレジスト塗布液、並びに、このポジ型ホトレジスト塗布液の塗膜をガラス角基板上に形成させてなる表示素子用基材を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のポジ型ホトレジスト塗布液は非化学増幅型のものであって、その(A)成分であるアルカリ可溶性樹脂としては、従来非化学増幅型のポジ型ホトレジストにおいて、アルカリ可溶性樹脂として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このようなものとしては、例えば、m‐クレゾール、p‐クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノールなどのフェノール類をホルムアルデヒドやこれとサリチルアルデヒドとの混合アルデヒドで酸触媒下常法により製造して得られるノボラック樹脂などがある。
特に基板にガラス角基板が用いられる液晶用ポジ型ホトレジストに使用する場合、より安価な樹脂が望まれるため、m‐クレゾールとp‐クレゾールをホルムアルデヒドで縮合して得られるクレゾールノボラック樹脂が好適である。
これらのアルカリ可溶性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
一方、本発明のポジ型ホトレジスト塗布液における(B)成分のキノンジアジド基含有化合物としては、従来非化学増幅型のポジ型レジストにおいて、感光性成分として使用されているキノンジアジド基を有する化合物の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このキノンジアジド基含有化合物としては、例えばナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐4‐スルホニルハライド又はナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐5‐スルホニルハライドと、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのポリヒドロキシベンゾフェノン類、あるいはビス(4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジメチルフェニル)‐2‐ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4‐ヒドロキシ‐2,5‐ジメチルフェニル)‐2‐ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4‐ヒドロキシ‐2,3,5‐トリメチルフェニル)‐2‐ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4‐ヒドロキシ‐2,3,5‐トリメチルフェニル)‐3‐ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4‐ヒドロキシ‐2,3,5‐トリメチルフェニル)‐4‐ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐5‐シクロヘキシルフェニル)‐3,4‐ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐5‐シクロヘキシルフェニル)‐4‐ヒドロキシフェニルメタン、1‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)イソプロピル]‐4‐[1,1‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンなどのトリスフェノール類とを、トリエチルアミンやトリエタノールアミンなどのアミン触媒の存在下、ジオキサンやγ‐ブチロラクトンなどの有機溶剤中において縮合反応させ、完全エステル化又は部分エステル化することにより、得られたものなどを挙げることができる。
【0011】
特に、2,3,4,4´‐テトラヒドロキシベンゾフェノン1モルに対し、ナフトキノン‐1,2‐ジアジド4又は5‐スルホン酸クロリドを2〜4モルの割合で反応させて得たエステルは、解像性及びパターン形状のパターニング特性が非常に優れ好ましいものであるが、反面従来の溶剤に対する溶解性が悪く、粒子発生の原因となっていたため、利用分野が制限されるのを免れなかったが、本発明によると、その保存安定性の問題が解決されるので、広範囲にわたり、パターニング特性のよい塗膜を提供することができる。
【0012】
本発明においては、この(B)成分のキノンジアジド基含有化合物は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量については、前記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、10〜40重量部の割合で用いるのが好ましい。この量が10重量部未満では実用的な形状を有するレジストパターンが得られにくいし、40重量部を超えると感度が低下する傾向がみられる。レジストパターンの形状及び感度の面から、キノンジアジド基含有化合物の特に好ましい使用量は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、15〜30重量部の範囲である。
【0013】
本発明のポジ型ホトレジスト塗布液においては、(C)成分の溶剤として、(イ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60〜98重量%と(ロ)γ‐ブチロラクトン40〜2重量%との混合溶剤を用いることが必要である。上記(ロ)成分の量が2重量%未満では保存安定性の効果が充分に発揮されないし、40重量%を超えると、このγ‐ブチロラクトンは高沸点であることから、レジストパターンの耐熱性、レジストパターンと基板間の密着性、レジストパターン形状及び残膜率が低下する原因となる。保存安定性及びレジストパターンの耐熱性、基板間の密着性、形状、残膜率などを考慮すると、上記(イ)成分と(ロ)成分の好ましい混合割合は、(イ)成分が70〜95重量%で、(ロ)成分が30〜5重量%である。
【0014】
本発明塗布液における溶剤の使用量については特に制限はないが、通常固形分濃度が10〜50重量%、好ましくは20〜30重量%の範囲になるように用いられる。
本発明塗布液においては、必要に応じ、(D)成分としてフッ素系又はケイ素系界面活性剤を含有させることができる。
【0015】
半導体素子製造に用いられるシリコンウエーハは現在8インチ基板が使用されているが、将来は12インチ基板へと移行する。また、液晶素子製造に用いられるガラス角基板も360mm×460mmから550mm×650mm、さらには600mm×720mmへとますます大型化される。
このような大型基板においては、レジスト塗膜の面内均一性をより向上させるために、フッ素系又はケイ素系あるいはフッ素−ケイ素系界面活性剤を、該塗布液の固形分に対し、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.02〜0.4重量%の割合で含有させるのが有利である。
【0016】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのような従来用いられている溶剤に、このような界面活性剤を添加すると、基板上のレジスト塗膜の面内均一性は向上するものの、感光剤との相互作用によって、一層粒子が発生しやすくなる。
これに対し、前記(C)成分の溶剤を用いた本発明の塗布液に、該界面活性剤を含有させると、粒子の発生をもたらすことなく、レジスト塗膜の面内均一性を向上させることができるので、好都合である。
【0017】
フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。このフッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラードFC−430、FC−431(住友スリーエム社製)のようなフッ化アルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する直鎖上の非イオン性フッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0018】
ケイ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。このケイ素系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂社製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業社製)のようなアルキルシロキサン基とエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基が結合した非イオン性ケイ素系界面活性剤、商品名X−70−090(信越化学工業社製)のようなアルキルシロキサン基とエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基にパーフルオロアルキルエステル基が結合した非イオン性含フッ素ケイ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0019】
これらの界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明のポジ型ホトレジスト塗布液には、必要に応じ、感度向上剤として、前記(B)成分の原料として用いた被エステル化合物であるトリスフェノール類のような重量平均分子量200〜600程度の低分子量フェノールなどを、密着性向上剤として、2‐ヒドロキシエチルピリジンのようなヒドロキシアルキル含窒素複素環化合物などを、また、照射放射線の吸収能を有するハレーション防止剤などを含有させてもよい。
【0021】
さらには、必要に応じて相容性のある添加物、例えばレジスト膜の性能などを改良するための付加的樹脂、可塑剤、安定剤あるいは現像して得られるパターンをより一層可視的にするための着色料、コントラスト向上剤などの慣用成分を添加させることができる。
【0022】
本発明はまた、このようにして得られたポジ型ホトレジスト塗布液の塗膜をガラス角基板上に形成させてなる表示素子用基材をも提供するものである。この表示素子用基材は、前記の360mm×460mm、550mm×650mm、600mm×720mm以上のガラス角基板、特に液晶素子製造用のガラス角基板に好適に用いられる。
【0023】
【発明の効果】
本発明のポジ型ホトレジスト塗布液は、安全性の高い溶剤を用いた非化学増幅型のものであって、基板全体にわたって均一な膜厚の塗膜形成が可能であるとともに、粒子の発生がなく、保存安定性にも優れている。
【0024】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、得られたポジ型ホトレジスト塗布液の諸物性は以下の方法により評価した。
【0025】
(1)面内均一性
調製したポジ型ホトレジスト塗布液をCr膜が形成された360mm×460mmのガラス角基板上に膜厚1.5μmになるようにスピンナー塗布したのち、ホットプレートの温度を130℃とし、約1mmの間隔をあけ、60秒間第1回目の乾燥を行い、次いでホットプレート上で110℃、60秒間第2回目の乾燥を施し塗膜を得た。
この塗膜が形成された基板を目視により観察し、基板全面に均一に塗膜が形成されている場合を○、不均一な塗布むらがある場合を×とした。
(2)保存安定性
調製したポジ型ホトレジスト塗布液を30℃で密閉した褐色の瓶にて1か月間保存し、0.3μmの粒子の発生数を調べた。
(3)パターニング特性
調製したポジ型ホトレジスト塗布液を上記ガラス基板上に膜厚1.5μmになるようにスピンナー塗布したのち、(1)の第1回目及び第2回目の乾燥を施し、テストマスクパターンを介してコンタクト露光装置MPA−600FA(キャノン社製)を用いて露光を行った。
次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて65秒間パドル現像することにより、レジストパターンを形成し、その際の解像度、レジストパターン形状を求めた。
【0026】
実施例1
m‐クレゾールとp‐クレゾールとを重量比で60:40の割合で混合し、これにホルマリンを加え、シュウ酸触媒を用いて常法により縮合させ、重量平均分子量10000のクレゾールノボラック樹脂を製造した。
このクレゾールノボラック樹脂100重量部、2,3,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン1モルとナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐5‐スルホニルクロリド2.3モルとのエステル化反応生成物27重量部及び界面活性剤「FC−430」0.3重量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMEAと略す)324重量部とγ‐ブチロラクトン(以下γ−Bと略す)36重量部(重量比9:1)との混合溶剤に溶解したのち、これを孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、ポジ型ホトレジスト塗布液を調製した。
この塗布液の物性を表1に示す。
【0027】
実施例2
実施例1における界面活性剤「FC−430」の代りに、界面活性剤「メガファックペインタッド31」を用いた以外は、実施例1と同様にしてポジ型ホトレジスト塗布液を調製した。この塗布液の物性を表1に示す。
【0028】
実施例3
実施例1における界面活性剤「FC−430」の代りに、界面活性剤「X−70−090」を用いた以外は、実施例1と同様にしてポジ型ホトレジスト塗布液を調製した。この塗布液の物性を表1に示す。
【0029】
実施例4
実施例3におけるPGMEA/γ−B(重量比9:1)の代りに、PGMEA/γ−B(重量比8:2)の混合溶剤を用いた以外は、実施例3と同様にしてポジ型ホトレジスト塗布液を調製した。この塗布液の物性を表1に示す。
【0030】
比較例1〜3
実施例3における混合溶剤を、PGMEA単独、PGMEA/γ−B(重量比5:5)の混合溶剤又は2‐ヘプタノン(以下HPと略す)とγ−Bとの混合溶剤(重量比9:1)に変えた以外は、実施例3と同様にしてポジ型ホトレジスト塗布液を調製した。これらの塗布液の物性を表1に示す。
【0031】
【表1】
Claims (4)
- (A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)キノンジアジド基含有化合物を、(C)有機溶剤に溶解してなる非化学増幅型のポジ型ホトレジスト塗布液において、(C)成分として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60〜98重量%とγ‐ブチロラクトン40〜2重量%との混合溶剤を用いることを特徴とするポジ型ホトレジスト塗布液。
- (B)成分が2,3,4,4´‐テトラヒドロキシベンゾフェノン1モルとナフトキノン‐1,2‐ジアジドスルホン酸2〜4モルとのエステルである請求項1記載のポジ型ホトレジスト塗布液。
- (D)成分としてフッ素系又はケイ素系界面活性剤を固形分重量に基づき0.01〜0.5重量%含有する請求項1又は2記載のポジ型ホトレジスト塗布液。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載のポジ型ホトレジスト塗布液の塗膜をガラス角基板上に形成させてなる表示素子用基材。
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