JP3539054B2 - カラーインクジェット記録用インク組成物セットおよび記録方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、カラーインクジェ
ット記録用のインク組成物およびカラーインクジェット
記録方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】インクジェット記録方法を用いてカラー
画像を形成する場合、少なくともマゼンタインク、イエ
ローインクおよびシアンインクを用いるのが一般的であ
る。それぞれのインクは、それ自体が優れた色再現範囲
を有することが重要で、さらにマゼンタインク、イエロ
ーインクおよびシアンインクを重ねて印刷してレッド、
グリーン、ブルー、およびブラックを形成した場合にも
良好な色再現性を実現できることが重要である。

【０００３】さらに、インクジェット記録に用いられる
カラーインク組成物には、保存によって組成や物性が変
化せず、ノズルの目詰まりを起こさないなど、インクジ
ェット記録用インク組成物に一般的に要求される性能も
満たしていなければならない。

【０００４】このような要求に対して、例えば特開平５
−２１４２５９号公報ではＣ．Ｉ．アシッドイエロー２
３、Ｃ．Ｉ．ダイレクトレッド２２７、およびＣ．Ｉ．
アシッドブルー９よりなる特定の染料セットを使用した
インクセットによって、また米国特許第５，２７３，５
７３号明細書ではＣ．Ｉ．アシッドイエロー２３、Ｃ．
Ｉ．アシッドレッド５２、およびＣ．Ｉ．アシッドブル
ー９よりなる特定の染料セットを使用したインクセット
によって、優れた色再現性が得られることが開示されて
いる。

【０００５】しかし、このような染料を用いた従来のイ
ンクジェット記録による印刷物においては、水が付着し
たり、光にさらされることによって印刷物が劣化すると
いう問題があった。インクジェット記録専用に用意され
た紙およびフィルムへ印刷する場合は特に堅牢性が求め
られており、紙の改良によって堅牢性の向上がなされて
はいるものの、従来のカラーインクジェット記録の抱え
る問題を解決するには不十分であった。すなわち、従来
のカラーインクジェット記録では印刷物が光にさらされ
た場合に退色するという問題があった。また前述のよう
に２色および３色のインクを重ね打ちして画像を形成す
るため、重ね打ちする部分のデュウティー（ｄｕｔｙ：
単位面積当たりのインク吐出ドット数）を抑える方法が
用いられるが、１色のインクで印刷した部分よりインク
の付着量は多くなるのが普通であり、こういった印刷物
を湿度の高い環境に放置するとにじみが発生して品質を
損なう場合があるという問題があった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明者らはカラーイ
ンクジェット記録用インク組成物、インク組成物セット
および記録方法などに要求される諸特性を満足し、上記
の問題を解決する手段を鋭意研究した結果、特定の染料
と溶剤とを組み合わせてなるマゼンタインク組成物、更
にそのマゼンタインク組成物と、特定のイエローインク
組成物と特定のシアンインク組成物とからなるインク組
成物セットによって、前記の課題を達成することができ
ることを見出した。

【０００７】従って、本発明の主な目的は、カラーイン
クジェット記録において、印刷のデュウティーにかかわ
らず、湿気によって印刷物ににじみが生じることなく、
かつ優れた耐光性を有するインク組成物、インク組成物
セットおよび記録方法を提供することにある。

【０００８】また本発明の他の目的は、カラーインクジ
ェット記録において、優れた色再現性を有するインク組
成物、インク組成物セットおよび記録方法を提供するこ
とにある。

【０００９】

【００１０】

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は、それぞれが、
少なくとも、染料、水溶性高沸点低揮発性有機溶剤、お
よび水を含有するカラーインクジェット記録用インク組
成物であって、染料としてＣ．Ｉ．ダイレクトレッド２
２７を０．３〜３．５重量％含むマゼンタインク組成物
と、染料としてＣ．Ｉ．ダイレクトイエロー８６とＣ．
Ｉ．ダイレクトイエロー１３２とを１：３〜３：１の重
量比で、かつ、それぞれを０．３〜３．０重量％含むイ
エローインク組成物と、染料としてＣ．Ｉ．ダイレクト
ブルー８６およびＣ．Ｉ．ダイレクトブルー１９９から
なる群から選択される染料の少なくとも１種類を１．０
〜４．０重量％含むシアンインク組成物との組み合せか
らなるカラーインクジェット記録用インク組成物セット
に関する。

【００１２】更にまた、本発明は、少なくとも、マゼン
タインク組成物、イエローインク組成物およびシアンイ
ンク組成物を用いてカラー画像を形成するカラーインク
ジェット記録方法であって、前記のインク組成物セット
を用いる、カラーインクジェット記録方法にも関する。

【００１３】

【発明の実施の形態】本発明によるマゼンタインク組成
物は、Ｃ．Ｉ．ダイレクトレッド２２７を、前記マゼン
タインク組成物の全重量に関して０．３〜３．５重量
％、好ましくは０．５〜２．５重量％含む。本発明によ
るこのマゼンタインク組成物によれば理想のマゼンタの
色調の再現が可能となる。とくに普通紙、とりわけ普通
酸性紙においても理想の色調を得ることができる。

【００１４】本発明によるマゼンタインク組成物におい
て、前記染料の含有量が０．３重量％未満になると充分
な発色性が得られず、３．５重量％を越えるとノズル目
詰まり特定が低下する。すなわち、前記染料の含有量が
上記範囲をはずれると、単独でも青味または赤味を帯び
たマゼンタとなり、理想的なマゼンタの色調の再現が得
られず、重ね打ちされた際にも良好なレッドおよびブル
ーの色再現を得ることができない。また、普通中性紙と
普通酸性紙との間で色再現性に大きな差異が生じてしま
うおそれがある。さらに、記録ヘッドのインク吐出口に
おいて目詰まりが生じやすくなるおそれがある。含有量
が０．５〜２．５重量％の範囲内になると、より自然な
マゼンタ色相が得られる点で好ましい。

【００１５】また、前記のマゼンタインク組成物と組み
合わせた本発明によるインク組成物セットで用いること
のできるイエローインク組成物は、Ｃ．Ｉ．ダイレクト
イエロー８６とＣ．Ｉ．ダイレクトイエロー１３２とを
１：３〜３：１、好ましくは１：２〜２：１の重量比
で、かつ、それぞれをイエローインク組成物の全重量に
関して、０．３〜３．０重量％、好ましくは０．５〜
２．０重量％含む。前記の２種の染料の含有量が上記範
囲をはずれると、重ね打ちされた際にも良好なレッドの
色再現を得ることができない。また、普通中性紙と普通
酸性紙との間で色再現性に大きな差異が生じてしまうお
それがある。さらに、記録ヘッドのインク吐出口におい
て目詰まりが生じやすくなるおそれがある。

【００１６】更に、前記のマゼンタインク組成物と組み
合わせた本発明によるインク組成物セットで用いること
のできるシアンインク組成物は、Ｃ．Ｉ．ダイレクトブ
ルー８６およびＣ．Ｉ．ダイレクトブルー１９９からな
る群から選択される染料の少なくとも１種類を、シアン
インク組成物の全重量に関して、１．０〜４．０重量
％、好ましくは１．５〜３．５重量％含む。前記の各染
料の含有量が上記範囲をはずれると、重ね打ちされた際
にも良好なブルーの色再現を得ることができない。ま
た、普通中性紙と普通酸性紙との間で色再現性に大きな
差異が生じてしまうおそれがある。さらに、記録ヘッド
のインク吐出口において目詰まりが生じやすくなるおそ
れがある。

【００１７】前記のマゼンタインク組成物、イエローイ
ンク組成物およびシアンインク組成物は、それぞれ、前
記の特定の染料のほかに、溶媒として、水溶性高沸点低
揮発性有機溶剤、および水を含有する。

【００１８】前記の水溶性高沸点低揮発性有機溶剤は、
前記染料の溶媒であれば特に限定されないが、好ましい
水溶性高沸点低揮発性有機溶剤の具体例を挙げれば以下
のとおりである。

【００１９】（１）一般式

【００２０】

【化４】

【００２１】（式中、Ｒ¹¹およびＲ¹²は、それぞれ独立
に、水素原子、メチル基またはエチル基であり、Ｒ¹³は
水素原子または炭素数１〜４の低級アルキル基、好まし
くは水素原子、メチル基またはエチル基であり、ｔは１
〜２０、好ましくは１〜１５の整数である）で表される
アルキレングリコール化合物。これらの化合物として
は、例えば、グリコール化合物、例えば、エチレングリ
コール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、
あるいはポリエチレングリコールまたはポリプロピレン
グリコール；モノエーテル化合物、例えば、エチレング
リコールモノメチル（またはエチル）エーテル、ジエチ
レングリコールモノメチル（またはエチル）エーテル、
トリエチレングリコールモノメチル（またはエチル）エ
ーテル；あるいは、ジエーテル化合物、例えば、トリエ
チレングリコールジメチル（またはエチル）エーテルを
挙げることができる。

【００２２】（２）一般式：

【００２３】

【化５】

【００２４】（式中、Ｒ²¹は炭素数１〜４の直鎖若しく
は分枝鎖のアルキレン基であり、ｓは１〜６、好ましく
は１〜４の整数である）で表される２価アルコール化合
物。これらの化合物としては、例えば、１，３−プロパ
ンジオール、１，４−、１，３−、若しくは１，２−ブ
タンジオール、１，５−、１，４−、１，３−、若しく
は１，２−ペンタンジオール、または１，６−、１，５
−、１，４−、１，３−、若しくは１，２−ヘキサンジ
オールを挙げることができる。

【００２５】（３）一般式：

【００２６】

【化６】

【００２７】（式中、Ｒ³¹およびＲ³²は、それぞれ独立
に、水素原子または炭素数１〜４の低級アルキル基、好
ましくは水素原子、メチル基またはエチル基であり、Ｒ
³³は炭素数１〜６の直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシア
ルキル基である）で表される３価アルコール化合物、例
えば、グリセリン、または１，２，６−ヘキサントリオ
ール。

【００２８】（４）一般式：

【００２９】

【化７】

【００３０】（式中、Ｒ⁴¹は、水素原子または炭素数１
〜４の低級アルキル基、好ましくは水素原子、メチル基
またはエチル基であり、Ｒ⁴²は、水素原子、炭素数１〜
４の低級アルキル基、または−〔ＣＨ₂ＣＨ（Ｒ⁴¹）Ｏ
Ｈ〕基であり、ｕは１〜３の整数であり、ｖは０、１ま
たは２であって、ｕとｖとの和が３である）で表される
エタノールアミン化合物。これらの化合物としては、例
えば、モノエタノールアミン、Ｎ，Ｎ−ジメチルエタノ
ールアミン、Ｎ，Ｎ−ジエチルエタノールアミン、ジエ
タノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロ
パノールアミン、またはＮ−ｎ−ブチルジエタノールア
ミンを挙げることができる。

【００３１】（５）その他の好ましい水溶性高沸点低揮
発性有機溶剤としては、例えば、場合によりメチル基若
しくはエチル基でＮ置換されていることのある２−若し
くは３−ピロリドン化合物、例えば、２−ピロリドン、
Ｎ−メチル−２−ピロリドン；場合によりメチル基で
Ｎ，Ｎ’−ジ置換されていることのあるイミダゾリジノ
ン化合物、例えば、１，３−ジメチル−２−イミダゾリ
ジノン；炭素数２〜４のチオグリコール化合物、例え
ば、チオグリコールまたはチオジグリコール；トリメチ
ロール置換の炭素数２〜４の低級アルカン化合物、例え
ば、トリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパ
ン；あるいは尿素。

【００３２】本発明においては、前記（１）〜（５）に
列挙した有機溶剤を単独または任意の組み合わせで使用
することができる。これらはノズルの目詰まりを防止す
るなどの機能を有し、保湿剤として有効ではあるが、イ
ンクジェット専用紙およびフィルム印刷物の湿気による
にじみに対しては、溶剤の吸湿性が悪影響を与えるた
め、インク組成物の全重量に関して好ましくは５〜３０
重量％、より好ましくは９〜２０重量％の範囲で含有さ
れる。

【００３３】本発明によるインク組成物セットは、少な
くとも前記の特定の染料、水溶性高沸点低揮発性有機溶
剤、および水をそれぞれ含有する前記のマゼンタインク
組成物、イエローインク組成物およびシアンインク組成
物の組み合わせからなる。

【００３４】前記のマゼンタインク組成物、イエローイ
ンク組成物およびシアンインク組成物によるインクジェ
ット記録プリントから直接得られるマゼンタ、イエロー
およびシアンの各色はもとより、２色（２種）のインク
組成物を重ね打ちして形成するレッド、グリーンおよび
ブルー、更にそれら３色（３種）のインク組成物を重ね
打ちして形成するブラックの色調には、染料の種類およ
び量の組み合わせ方が大きく関与しており、本発明のマ
ゼンタインク組成物、更には前記のイエローインク組成
物、および前記のシアンインク組成物のセットを得るこ
とができる。またさらに、本発明のマゼンタインク組成
物、更には前記のイエローインク組成物および前記のシ
アンインク組成物のセットを用いて３色を重ね打ちして
形成したブラックについても理想の色調に非常に近い印
刷物が得られ、ブラック染料を用いたインクの色再現性
にも優れた印刷物を実現することができる。本発明のイ
ンク組成物セットにおいて、前記の特定染料とは異なる
種類の染料を用いたり、染料の含有量が上記範囲をはず
れたものを組み合わせた場合は、各色において理想の色
調を得ることができない。また記録ヘッドのノズルにお
いて目詰まりが生じやすくなり、安定したインク吐出を
行うことができない。

【００３５】インクジェット記録専用紙およびフィルム
への印刷物の湿気によるにじみ、また耐光性は、インク
組成物に用いられる染料と大きく関わっているため、本
発明のインク組成物セットは、印刷物の保存性において
も極めて有効である。

【００３６】本発明のインク組成物セットを構成する各
インク組成物は、場合により、上記の水溶性高沸点低揮
発性有機溶剤以外の有機溶剤を含んでいることができ
る。具体例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチル
アセトアミド等のアミド類；アセトン、ジアセトンアル
コール等のケトンまたはケトンアルコール類；テトラヒ
ドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類；メチルア
ルコール、エチルアルコール、ｎ−プロピルアルコー
ル、ｎ−ブチルアルコール等の炭素数１〜５のアルキル
アルコール類；スルフォランが挙げられる。これらの有
機溶剤は単独でも混合しても使用することができ、前記
のインク組成物の全重量に関して１０重量％以下の量で
添加されることが好ましい。

【００３７】本発明のインク組成物セットを構成する各
インク組成物は、場合により、多価アルコール低級アル
キルエーテルを含むことができる。好ましい多価アルコ
ール低級アルキルエーテルは、一般式：

【００３８】

【化８】

【００３９】（式中、Ｒ⁵¹およびＲ⁵²は、それぞれ独立
に、水素原子、または炭素数３〜６のアルキル基（好ま
しくはブチル基）であり、Ｒ⁵³は水素原子または炭素数
１〜４の低級アルキル基、好ましくは水素原子、メチル
基またはエチル基であり、ｔは１〜８、好ましくは１〜
４の整数であるが、但し、Ｒ⁵¹およびＲ⁵²の少なくとも
一方は炭素数３〜６のアルキル基（好ましくはブチル
基）である）で表される化合物である。これらの多価ア
ルコール低級アルキルエーテルとしては、例えば、モ
ノ、ジまたはトリエチレングリコール−Ｃ_3-6−アルキ
ルエーテル、モノ、ジまたはトリプロピレングリコール
−Ｃ_3-6−アルキルエーテル、より好ましくはトリエチ
レングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコ
ールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエ
チルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテ
ル、またはプロピレングリコールモノブチルエーテルな
どを挙げることができ、もっとも好ましいものはトリエ
チレングリコールモノブチルエーテルである。この多価
アルコール低級アルキルエーテルの含有量は、インク組
成物全重量に関して、好ましくは７〜１２重量％、より
好ましくは７〜１０重量％である。

【００４０】本発明のインク組成物において、水溶性高
沸点低揮発性有機溶剤および多価アルコール低級アルキ
ルエーテルの合計含有量が、インク組成物全重量に関し
て、１５〜３０重量％であることが好ましい。これは、
両者の合計含有量が前記範囲内であると、普通紙上での
色再現性、吐出安定性、および間欠吐出特性のいずれに
関しても優れたインクが得られるからである。

【００４１】また、本発明のインク組成物セットを構成
する各インク組成物は、場合により、下記一般式（Ｉ）
で表されるアセチレングリコールを含むことができる。

【００４２】

【化９】

【００４３】前記式中、Ｒ¹、Ｒ²、Ｒ³およびＲ⁴はそれ
ぞれ独立して、炭素数１〜６の直鎖または分枝鎖のアル
キル基であり、ｎおよびｍはそれらの合計が０〜３０、
好ましくは０〜１５となる数である。

【００４４】アセチレングリコールの好ましい具体例を
次の表１に示す。

【００４５】

【表１】

【００４６】表１に示す化合物の内で、Ｎｏ．１のアセ
チレングリコールがもっとも好ましい。これらのアセチ
レングリコールは市販されているものを利用することが
可能であり、例えばサーフィノール８２、１０４、４４
０、４６５（製造元：Air Product and Chemicals, I
nc. 、販売元：信越化学工業株式会社）を利用すること
ができる。アセチレングリコールの含有量は、インク組
成物全重量に関して、好ましくは０．５〜１．２重量
％、より好ましくは０．５〜１重量％である。

【００４７】前記の多価アルコール低級アルキルエーテ
ルとアセチレングリコールとをそれぞれ前記の含有量で
組み合わせて用いることによって、カラーインクジェッ
ト記録においてしばしば問題とされる、隣接するドット
間の混色などによる印字品質の劣化を防止することがで
きる。

【００４８】本発明のインク組成物セットを構成する各
インク組成物は、インク組成物としての種々の特性を改
善するための添加剤を含有していることができる。例え
ば、粘度、表面張力、ｐＨ、または比抵抗等の各種物性
値の調整や防腐、防カビ等の目的で、脂肪酸塩、アルキ
ル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アル
キルナフタレンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性
剤；アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキ
ルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェ
ニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソ
ルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤；セ
ルロース類、ポリビニルピロリドンポリビニルアルコー
ル、水溶性樹脂等の水溶性の天然あるいは合成高分子
物；ジエタノールアミン、トリエタノールアミン類；塩
化リチウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウムの無機
塩類、ベンゾトリアゾールなどを含有していることがで
きる。

【００４９】本発明による前記のマゼンタインク組成物
を、慣用のインクカートリッジに収納して、慣用のカラ
ーインクジェット記録装置に挿入し、カラーインクジェ
ット記録方法を実施することができる。更に、前記のマ
ゼンタインク組成物を収納する前記のインクカートリッ
ジと、前記のイエローインク組成物を収納するインクカ
ートリッジと、前記のシアンインク組成物を収納するイ
ンクカートリッジとを組み合わせて挿入するか、あるい
は前記のマゼンタインク組成物と、前記のイエローイン
ク組成物と、前記のシアンインク組成物とを、それぞれ
別々に、仕切られた画分中に収納するインクカートリッ
ジを挿入したカラーインクジェット記録装置を用いて、
カラーインクジェット記録方法を実施することができ
る。

【００５０】本発明によるインクジェット記録方法は、
好ましくは前記マゼンタインク組成物と前記イエローイ
ンク組成物と前記シアンインク組成物と、更に場合によ
り慣用のブラックインク組成物との組み合わせを用いて
カラーインクジェット記録を行うものである。本発明の
カラーインクジェット記録方法によれば、マゼンタ、イ
エローおよびシアンの三色それぞれにおいて色再現性に
優れることに加えて、それらのインク組成物の内いずれ
か二色を重ね打ちすることによって、それぞれ理想とさ
れる色調に近いレッド、グリーンおよびブルーを、記録
紙の紙質の影響を受けずに得ることができる。すなわ
ち、マゼンタインクとイエローインクとを重ね打ちして
得られるレッド、およびマゼンタインクとシアンインク
とを重ね打ちして得られるブルーは、それぞれ紙質（例
えば、酸性度の高い普通記録紙）の影響を受けずに種々
の記録紙上で、それぞれ理想とされる色調に非常に近い
ものとして再現される。

【００５１】さらに本発明の好ましい態様によれば、マ
ゼンタインク組成物、イエローインク組成物およびシア
ンインク組成物の吐出量は、レッド、グリーンまたはブ
ルーを形成するにあたりいずれも同量でよい。通常、上
記のようなインク組成物の重ね打ちにおいて、レッド、
グリーンおよびブルーの色調は、イエロー、マゼンタお
よびシアンの各色のインク組成物のノズルからの吐出量
をそれぞれの色調ごとに調整して行うことも理論上は可
能であるが、繁雑であり実用的でない。すなわち、マゼ
ンタインク組成物の吐出量をブルーとグリーンとの場合
で相違させることは実用的でない。従って、マゼンタ、
イエローおよびシアンの各インク組成物の吐出量を一定
のままで、良好な色調のレッド、グリーンおよびブルー
を再現することができる点でも本発明は、非常に優れて
いる。

【００５２】

【実施例】本発明を以下の実施例によってさらに詳細に
説明する。ただし本発明はこれらの実施例によって限定
されるものではない。

【００５３】＜実施例１〜６および比較例１〜５＞表２
〜表４に示す配合成分から、実施例１〜６および比較例
１〜６の１２種のインク組成物セットを調製した。比較
例１の比較用セットは、３色の各インク組成物中に本発
明の特定染料とは異なる種類の染料のみを含有させた例
である。比較例２および３の比較用セットは、本発明の
特定染料と、それとは異なる種類の染料とを併用したマ
ゼンタインク組成物およびイエローインク組成物、並び
に本発明の特定染料とは異なる種類の染料のみを含有さ
せたシアンインク組成物からなるセットである。比較例
４および５の比較用セットは、染料含有量が本発明の特
定範囲外であるインク組成物を含むセットである。比較
例６はブラック染料を含むインク組成物である。

【００５４】表２〜表４において、ＴＥＧｍＢＥはトリ
エチレングリコールモノブチルエーテル、ＤＥＧｍＢＥ
はジエチレングリコールモノブチルエーテルを表す。ま
た、表２〜表４のインク組成物の各配合成分の量の単位
は重量％であり、残量はイオン交換水である。

【００５５】

【表２】

【００５６】

【表３】

【００５７】

【表４】

【００５８】表２〜表４の組成で混合したインクを充分
攪拌した後、孔径０．８μｍのメンブレンフィルタを用
いてろ過し、得られたインク組成物およびセットについ
て、以下の１０種の性能を評価した。

【００５９】＜評価試験＞ 〔Ａ〕印刷特性評価 （ａ）試験に用いた印刷機 ＭＪ−７００Ｖ２Ｃ（セイコーエプソン製）を用い、応
答周波数３．６ｋＨｚ、解像度３６０ドット／インチ、
およびインク吐出量０．０５μｇ／ドットに調整して行
った。

【００６０】（ｂ）試験に用いた記録紙 （１）普通中性紙（再生紙）（Ｘｅｒｏｘ−Ｒ；富士ゼ
ロックス株式会社） （２）ボンド紙〔Ｎｅｅｎａｈ ｂｏｎｄ（２５％コッ
トンファイバー）；Ｎｅｅｎａｈ ｂｏｎｄ社〕 （３）普通酸性紙（Ｃａｎｏｎ Ｄｒｙ；キャノン販売
株式会社） （４）普通酸性紙（ＥＰＰ；エプソン販売株式会社） （５）普通中性紙（Ｘｅｒｏｘ ４０２４ ３Ｒ７２
１；Ｘｅｒｏｘ社）。

【００６１】（ｃ）試験方法 ＜試験１：単色印字品質＞各インク組成物を用いてアル
ファベットを印字し、目視により印字の「にじみ」およ
び「ひげ」の発生の有無を観察した。その結果を次の４
段階で評価した。 ◎・・・「にじみ」および「ひげ」の両方がほとんど観
察されなかった。 ○・・・紙によっては、「にじみ」または「ひげ」がわ
ずかに認められた。 △・・・紙によっては、「にじみ」または「ひげ」が認
められた。 ×・・・どの紙においても「にじみ」または「ひげ」が
観察された。

【００６２】＜試験２：混色印字品質＞各インク組成物
の組み合わせにおいて、一色のインク組成物をべタ印字
（１００％デュウティーの塗りつぶし印字）し、次にそ
のべタ印字に接するように他の二色のインク組成物をべ
タ印字して三色のべタ印字がそれぞれ接するようにし、
境界部のブリードを目視により観察した。その結果を次
の４段階で評価した。

【００６３】◎・・・いずれの組み合わせにおいても混
色による「にじみ」および「ひげ」の両方がほとんど観
察されなかった。 ○・・・紙によっては混色による「にじみ」または「ひ
げ」がわずかに認められる組み合わせがあった。 △・・・紙によっては混色による「にじみ」または「ひ
げ」が観察される組み合わせがあった。 ×・・・どの紙においても混色による「にじみ」または
「ひげ」が観察された。

【００６４】＜試験３：色再現性＞各インク組成物の組
み合わせを用いて、イエロー、マゼンタ、シアン、レッ
ド、グリーン、ブルー、およびブラックのべタ印字を行
った。すなわち、レッドはイエローインクとマゼンタイ
ンクとを重ね打ちし、グリーンはイエローインクとシア
ンインクとを重ね打ちし、ブルーはマゼンタインクとシ
アンインクとを重ね打ちし、そしてブラックはイエロー
インクとマゼンタインクとシアンインクを重ね打ちし
た。

【００６５】そのべタ印字の印字画像（３×３ｃｍ）に
ついて、ＣＩＥ（Ｃｏｍｍｉｓｉｏｎ Ｉｎｔｅｒｎａ
ｔｉｏｎａｌｅ ｄｅ ｌ‘Ｅｃｌａｉｒａｇｅ）で規
定されている色差表示法のＬ^*ａ^*ｂ^*表色系を、Ｍａｃ
ｂｅｔｈ ＣＥ−７０００分光光度計（Ｍａｃｂｅｔｈ
社製）を用いて測定した。前記の測定値と表５に記載の
ＩＳＯ ２８４５−１９７５の色調基準値との色差を次
の式（II）から求め、色再現性を評価した。

【００６６】

【表５】

【００６７】得られた色差ΔＥ^*ａｂの記録紙５紙の平
均値を次の基準で判定した。 ◎・・・２０以下、 ○・・・２０を越え３０以下、 ×・・・３０を超える。

【００６８】＜試験４：速乾性＞各インク組成物セット
を用い、それぞれのインク組成物について単色のべタ印
字と、二色を組み合わせて重ねるべタ印字とを行った。
印字から所定時間経過後、印字を行った記録紙と同一種
類の紙を２００ｇ／ｃｍ２の荷重で密着させ、二枚の紙
間にインクの移りが発生するか否かを観察した。その結
果を次の４段階で評価した。

【００６９】◎・・・全ての印字において、印字から１
秒未満の時間でもインク移りが認められなかった。 ○・・・全ての印字において、印字後１秒以上２秒未満
の時間ではインク移りが認められなかった。 △・・・全ての印字において、印字後２秒以上５秒未満
の時間ではインク移りが認められなかった。 ×・・・いずれかの印字において印字後５秒以上経過し
てもインク移りが認められた。

【００７０】＜試験５：吐出安定性（１）（ノズルの目
詰まり回復性）＞各インク組成物を、個別にプリンタに
セットして印刷し、全ノズルからインク滴が吐出するこ
とを確認した。その後、記録ヘッドにキャップをせずに
プリンタを４０℃および相対湿度２５％の環境に放置し
た。７日後および１ヶ月後に印字操作を行った際に、全
ノズルの吐出が可能となるまでの回復動作（ポンプで約
ｌｍｌ吸収することによるクリーニング操作）の回数に
より次の３段階で評価した。

【００７１】７日後の判定： ◎・・・１回で正常な印字を行うことができた。 ○・・・２〜４回で正常な印字を行うことができた。 ×・・・５回以上で正常な印字を行うことができた。

【００７２】１ヶ月後の判定： ○・・・直ちに、又は回復動作３回以内で正常な印字を
行うことができた。 △・・・回復操作４〜１０回後に正常な印字を行うこと
ができた。 ×・・・回復動作１１回以上の後に正常な印字を行うこ
とができたか、又は正常な印字に回復しなかった。

【００７３】＜試験６：吐出安定性（２）（長時間連続
記録）＞各インク組成物を用いて印字を５℃、２０℃、
または４０℃の各温度環境下で４８時間連続印字を行っ
た。ドットの抜けおよびインクの飛び散りが合計１０回
観察されるまでの時間を測定した。その印字状態を次の
３段階で評価した。 ○・・・全ての温度においてドット抜けがなく、安定に
印字が可能であった。 △・・・いずれかの温度において、時間が経過するにつ
れドット抜けが発生した。 ×・・・いずれかの温度において、印字初期からドット
抜けが発生した。

【００７４】＜試験７：高速応答性能＞記録ヘッドの駆
動周波数を１０ｋＨｚとし、各インク組成物を常温で連
続して印字を行った。ドット抜けおよびインクの飛び散
りが合計１０回観察されるまでの時間を測定した。その
結果を次の４段階で評価した。 ◎・・・すべてのインク組成物において４８時間以上。 ○・・・いずれかの色のインク組成物において２４〜４
８時間。 △・・・いずれかの色のインク組成物において１〜２４
時間。 ×・・・いずれかの色のインク組成物において１時間以
内。

【００７５】＜試験８：間欠吐出安定性＞１５℃、およ
び相対湿度２０％の環境下で、各インク組成物の一行印
字を行った後、一定時間印字を休止し、その後印字を再
開した。印字再開時の最初の１ドット目のドット抜け又
は飛行曲がりが観察されるまでの休止時間を次の７段階
で評価した。以下の１〜４は実用上良好であるといえ
る。 １・・・６０秒以上、 ２・・・４０〜６０秒、 ３・・・３０〜４０秒、 ４・・・２０〜３０秒、 ○・・・１０〜２０秒、 △・・・５〜１０秒、 ×・・・５秒未満。

【００７６】〔Ｂ〕記録物の耐湿性評価 （ａ）試験に用いた印刷機および印刷条件 前記〔Ａ〕（ａ）で用いた印刷機を前記〔Ａ〕（ａ）と
同じ印刷条件で使用した。

【００７７】（ｂ）試験に用いた記録紙 （１）インクジェット専用紙：スーパーファイン専用紙
（エプソン販売） （２）インクジェット専用フィルム：専用光沢フィルム
（エプソン販売） どちらも、水溶性高分子であるポリビニルアルコールを
含むインク受容層を有するものである。

【００７８】（ｃ）試験方法 ＜試験９：耐湿性＞各インク組成物を用いて、ベタ印字
（１００％デュウティーの塗りつぶし印字）、２００％
べタ印字（インクを２倍吐出する塗りつぶし印字）、ま
たは３００％べタ印字（インクを３倍吐出する塗りつぶ
し印字）のそれぞれの内側に白抜き文字を有する印字パ
ターンを印刷した。この印刷物を４０℃、および相対湿
度９０％の環境に２時間放置した後、印刷部分のにじみ
を次の基準に従って目視で判定した。 ◎・・・にじみなし。 ○・・・わずかににじみがある。 ×・・・にじみがある。

【００７９】〔Ｃ〕記録物の耐光性評価 （ａ）試験に用いた印刷機および印刷条件 前記〔Ａ〕（ａ）で用いた印刷機を前記〔Ａ〕（ａ）と
同じ印刷条件で使用した。

【００８０】（ｂ）試験に用いた記録紙 （１）インクジェット専用紙：スーパーファイン専用紙
（エプソン販売） （２）普通紙：Ｘｅｒｏｘ−Ｐ（富士ゼロックス株式会
社）。

【００８１】（ｃ）試験方法 ＜試験１０：耐光性＞ 試験３と同様の方法で印刷し、記録物をキセノンフェー
ドテスタ（島津製作所）で６０時間光を照射した。試験
前後の色差ΔＥ^*ａｂを（II）式で計算し、次の基準に
従って判定した。 ◎・・・２０以下。 ○・・・２０を越え４０以下。 ×・・・４０を越える。

【００８２】前記の試験１〜１０の結果を表６〜表７に
示す。表６〜表７において、Ｍはマゼンタ、Ｙはイエロ
ー、Ｃはシアン、Ｒはレッド、Ｇはグリーン、Ｂはブル
ー、そしてＫはブラックである。

【００８３】

【表６】

【００８４】

【表７】

【００８５】

【発明の効果】本発明によれば特にインクジェット専用
紙およびフィルムへの印刷において、デュウティーにか
かわらず、湿気によるにじみが全く発生せずに、優れた
耐光性を有する、極めて保存性の良好な印刷物を得るこ
とができる。

【００８６】また本発明によれば、マゼンタ、イエロー
およびシアンは勿論、それぞれのインクを重ね打ちして
形成されるレッド、グリーン、ブルーおよびブラックに
おいても理想の色調に非常に近く、優れた色再現性を得
ることができる。特に３色の重ね打ちによってなるブラ
ックは、ブラック染料を用いたインクにも優る理想的な
色調を実現することができる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平７−228808（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−179841（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−88048（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−24006（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−287495（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−214259（ＪＰ，Ａ) 国際公開94／026828（ＷＯ，Ａ１) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C09D 11/00 - 11/20 B41J 2/01 - 2/21 B41M 5/00

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 それぞれが、少なくとも、染料、水溶性
   高沸点低揮発性有機溶剤、多価アルコール低級アルキル
   エーテル、下記一般式（Ｉ）で表されるアセチレングリ
   コール、および水を含有するカラーインクジェット記録
   用インク組成物であって、 それぞれが、多価アルコール低級アルキルエーテル７〜
   １２重量％、下記一般式（Ｉ）で表されるアセチレング
   リコールを０．５〜１．２重量％含み、かつ、インク組
   成物に含まれる水溶性高沸点低揮発性有機溶剤および多
   価アルコール低級アルキルエーテルの合計含有量が１５
   〜３０重量％であり、 染料としてＣ．Ｉ．ダイレクトレッド２２７を０．３〜
   ３．５重量％含むマゼンタインク組成物と、 染料としてＣ．Ｉ．ダイレクトイエロー８６とＣ．Ｉ．
   ダイレクトイエロー１３２とを１：３〜３：１の重量比
   で、かつ、それぞれを０．３〜３．０重量％含むイエロ
   ーインク組成物と、 染料としてＣ．Ｉ．ダイレクトブルー８６およびＣ．
   Ｉ．ダイレクトブルー１９９からなる群から選択される
   染料の少なくとも１種類を１．０〜４．０重量％含むシ
   アンインク組成物との組み合せからなるカラーインクジ
   ェット記録用インク組成物セット。 【化１】 前記式中、Ｒ¹、Ｒ²、Ｒ³およびＲ⁴はそれぞれ独立し
   て、炭素数１〜６のアルキル基であり、ｎおよびｍはそ
   れらの合計が０〜３０となる数である。
2. 【請求項２】 請求項１に記載のマゼンタインク組成
   物、イエローインク組成物、およびシアンインク組成物
   を、それぞれ別々に、仕切られた画分中に収納するイン
   クカートリッジ。
3. 【請求項３】 請求項２に記載のインクカートリッジを
   含有する、カラーインクジェット記録用装置。
4. 【請求項４】 少なくとも、マゼンタインク組成物、イ
   エローインク組成物およびシアンインク組成物を用いて
   カラー画像を形成するカラーインクジェット記録方法で
   あって、請求項１に記載のインク組成物セットを用い
   る、カラーインクジェット記録方法。