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JP3585576B2 - 高分子水分散体及びその製造方法 - Google Patents

高分子水分散体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は高分子化合物の水分散体及びその製造方法に関し、詳しくは、皮膚化粧料、毛髪化粧料、医療材料、繊維材料、紙加工材料、包装材料、被覆材料、食品材料等に有用な、キトサンを含有する高分子水分散体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、セルロースに次ぐバイオマスとしてキトサンが注目されている。キトサンはカニやエビ等の甲殻類の甲皮に含まれるキチンをアルカリ処理等で部分的に脱アセチル化して得られる塩基性多糖であり、1級アミノ基を有して且つ天然物で安全性も高い高分子化合物として、様々な分野での利用が検討されている。キトサンの主な性能としては、皮膜形成性、アミノ基に由来する繊維や毛髪、皮膚に対する高い親和性、酸物質吸着能、抗菌性等が知られており、化粧水、パック剤、ヘアセット剤、デオドラント剤といった化粧品から、可食性フィルム、繊維或いは繊維処理剤、樹脂改質剤、粘着剤等、広範囲の用途への利用が検討或いは報告されている。
【0003】
キトサンが近年注目されるようになった理由としては、上に述べた種々の性能が明らかにされたことに加え、製造・精製技術の進歩によって高純度で且つ一定の品質のものが安定に供給されるようになったこと、加工技術の進歩によって形態や物性の制御がある程度可能になったこと等が挙げられる。
キトサンは水その他の溶媒に不溶のフレーク或いは(微)粉末状固体であり、これを酸中和や誘導体化することにより水可溶となる。この水溶液からフィルムやゲル、さらに繊維や微粒子等への加工が行われる。中でもキトサンの微粒子化に関する研究が最近目立っており、キトサン単独或いは他の高分子や無機物との複合物において、粒径、粒径分布、多孔密度、孔径、比表面積、有効アミノ基含量等、その他種々な物性の異なる微粒子が得られている(特開昭62−70201 号公報、特開昭63−17902 号公報、特開昭63−210101号公報、特公平7−25905 号公報等参照)。
【0004】
一方、繊維や微粒子といった固体としての利用とは別に、キトサンを水系で利用する場合、アミノ基による皮膚・毛髪・繊維への親和性、皮膜形成性、抗菌性、高い安全性といったキトサンの特徴を生かした広い用途展開が考えられる。しかし、アミノ基含有量の高いキトサンは酸中和や修飾によってしか水に溶解せず、その水溶液の粘度も非常に高いという欠点を有する。従って、使用するキトサンの性能(特にアミノ基含量)、使用量、或いは用途自体が大きく制限されているのが現状である。
この様な状況の中で、キトサンを高濃度で含有する高分子水分散体及びその製造法を開発することは非常に有用である。
【0005】
これまでキトサンを含有する高分子水分散体は知られておらず、前述した種々のキトサン系微粒子についても水中での分散安定性も悪いため、そのまま水分散性の高分子微粒子としての使用に耐え得るものはない。例えば、有機酸にキトサンを溶解させ、それを(共)重合させる手法で、平均粒径が50μm 〜200 μm 程度と比較的小さなキトサン−有機酸重合体の複合微粒子が得られているが(高分子論文集、VoL.37, No3, 185(1980)、特開平3−41105 号公報等参照)、放置すると直ちに粒子の沈降が起こるもので、水中での分散安定性という点では全く不十分である。
従って、本発明の目的は、キトサンを高濃度で含有する分散安定性の良好な高分子水分散体及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法によりキトサンを高濃度で含有し且つ水中で安定に分散可能な高分子水分散体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、平均粒径が200nm以下であり、キトサンが粒子表面または粒子表面及び内部に存在していることを特徴とする高分子水分散体を提供するものである。
また、本発明は、酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体をキトサンのアミノ基当たりに換算して 0.5 〜5倍 mol および非重合性の酸をキトサンのアミノ基当たりに換算して 0.1 〜2倍 mol用いてアミノ基の全部または一部を中和したキトサンの存在下、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体を水中で重合することを特徴とする、平均粒径が200nm以下であり、キトサンが粒子表面または粒子表面及び内部に存在している高分子水分散体の製造方法を提供するものである。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるキトサンとは、(1,4) −2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するキチンの脱アセチル化物であり、(1,4) −2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するものである。一般に、天然に存在するキチンはアセトアミド基の一部がアミノ基となっているため、本発明で用いられるキトサンとは脱アセチル化度が30%以上のものを指す。また、本発明においては、キトサンのアミノ基や水酸基の一部がアシル化、エステル化、エーテル化、その他の反応によって修飾されたキトサン誘導体も含むものである。本発明においてキトサンの分子量は特に限定されないが、1万〜100 万程度のものを使用するのが好ましい。
【0008】
本発明の高分子水分散体における高分子化合物としては、特に制限はないが、アクリル系、ウレタン系、エステル系等の高分子化合物が挙げられ、その中ではアクリル系高分子化合物が好ましい。
本発明のキトサンを含有する高分子水分散体は、酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体および非重合性の酸を用いてアミノ基の全部または一部を中和したキトサンの存在下、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体を水中で重合することにより得られる。
【0009】
本発明に用いられる酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸モノマー;スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル、ビニルスルホン酸等の不飽和スルホン酸モノマー;ビニルホスフェート、ビス((メタ)アクリロイロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等の不飽和リン酸モノマー等が挙げられ、これらは単独使用だけでなく2種以上を併用することも可能である。また、これらの中では水中での重合性、特に他のエチレン性不飽和単量体との共重合性に優れた不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、その中でも特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体の使用量は、キトサンのアミノ基当たりに換算して 0.1〜10倍molの範囲内であり、小粒径且つ低粘度のものを得るためには 0.5〜5倍molであることが好ましい。
【0010】
本発明において使用される非重合性の酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、ジクロル酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸が挙げられ、これらは単独使用でも2種以上を併用することも可能である。但し、これらの酸は、使用する酸官能基を有する不飽和単量体と比較して酸性度が低いものを選択する方がより好ましい。これらの非重合性の酸の使用量は、キトサンのアミノ基当たりに換算して0.05〜5倍mol の範囲内であるが、得られる高分子水分散体の安定性を考慮した場合、 0.1〜2倍mol の範囲であることが好ましい。
酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体および非重合性の酸の合計使用量は、キトサンを水に溶解させることができれば特に制限はない。
【0011】
また、本発明において、アミノ基の全部または一部を中和したキトサンの存在下に重合させるラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、上記の酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体単独でもよく、あるいは酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体以外の単量体、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン;塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオライド等のハロゲン化オレフィン;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸或いはメタクリル酸のエステルである(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの4級化物、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルおよびこれらの4級化物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびこれらの4級塩等のアクリルアミドまたはメタクリルアミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;その他、N−ビニルピロリドン等を併用することもできる。
【0012】
また、本発明においては、多官能性単量体を用いても良く、多官能性単量体としては、ジビニルベンゼン、テトラアリロキシエタン、N,N−メチレンビス−アクリルアミド、1,3 −ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5 −ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6 −ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、N,N−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独使用だけでなく2種以上を併用することも可能である。また、反応性基を有する化合物で、エチレン性不飽和単量体と反応し得る化合物であれば、連鎖移動剤、停止剤等を共存させることも可能である。
【0013】
本発明の方法における上記重合に使用される重合開始剤としては、水溶性或いは油溶性のペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が一般的に使用される。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物:2,2’−アゾビス−2−アミノプロパン塩類(V−50等が含まれる)、4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノン酸等のアゾ化合物が挙げられ、これらは単独使用だけでなく2種以上を併用することも可能である。また、必要に応じて適当な還元剤との組み合わせの上レドックス開始剤として使用することも可能である。これらの重合開始剤は重合系に直接添加しても、重合性単量体に溶解して添加しても良く、その使用量は全重合性単量体の重量に対して0.05〜10重量%の範囲が適当である。
【0014】
本発明において、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体を水中で重合する際に、親水性或いは疎水性溶剤を適宜併用することも可能であり、これらは重合終了時に減圧留去等の操作によって除去されるものであっても、そのまま製品中に含有させるものであっても良い。この際使用される親水性或いは疎水性溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、パラフィン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;グリセリン、1,3 −ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオール類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、エチルカルビトール、ジメチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;その他ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用することも可能であり、その使用量は用いる溶剤の種類によって異なるものではあるが、水に対し30重量%以下の範囲であることが好ましい。
【0015】
さらに本発明の重合に際し、場合によっては界面活性剤やキトサン以外の水溶性高分子化合物を適宜併用することも可能である。この場合用いられる界面活性剤としては、アニオン型、ノニオン型、カチオン型の通常の界面活性剤を使用することができ、例えば、ドデシル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのサルフェート塩類等のアニオン性界面活性剤;オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用することも可能であり、その使用量は水性溶媒に対し10重量%以下が好ましい。
また水溶性高分子化合物は反応液に溶解或いはコロイド分散するものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、デンプン、グアーガム等のノニオン性水溶性高分子化合物、これらに疎水基、カチオン基、アニオン基等を導入することにより得られる誘導体、ポリアクリル酸(ナトリウム)等のイオン性水溶性高分子化合物、ポリ(スチレン−アクリル酸(ナトリウム))共重合体等の自己乳化型高分子化合物が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用することも可能であり、その使用量はキトサンの重量に対して50重量%以下が好ましい。これらの中で水酸基を有するノニオン系の水溶性高分子化合物、特にプルランまたはポリビニルアルコールを用いると、他の物性を維持しつつ低粘度化が可能となり好ましい。
【0016】
本発明の高分子水分散体を製造するに際しては、まず、キトサン、酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体および非重合性の酸を水に溶解させてキトサン/酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体−非重合性の酸の水溶液を調製する。次にこの水溶液に、ラジカル重合開始剤、更に必要によりラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体や、水溶性高分子化合物を加え、攪拌下、20〜80℃の範囲の温度で 0.5〜24時間重合反応を行うことにより、目的とするキトサンを含有する高分子水分散体が得られる。エチレン性不飽和単量体は昇温後系中へ滴下しても良い。この水分散体は水留去等の操作を行うことにより濃縮することも可能である。また、濾過或いは加熱/減圧脱水等、一般的な高分子水分散体に通常用いられる任意の精製処理の適用も可能である。
【0017】
本発明の高分子水分散体の平均粒径は1μm 以下であるが、安定性を考慮した場合には300nm 以下であることが好ましく、さらに好ましくは200nm 以下である。高分子水分散体の平均粒径が1μm を超えると水中での分散安定性が低下し好ましくない。
【0018】
【発明の効果】
本発明の方法によると、キトサンを高濃度で含有し、且つ長期間の保存安定性或いは機械的安定性に優れた高分子水分散体を得ることが出来る。この微粒子は、キトサンと酸官能基を有する高分子とのポリイオンコンプレックスを核とし、これを非重合性の酸により中和/可溶化されたキトサンがイオン性を有する保護コロイドとして安定化する構造をとると推定される。従って、核粒子と保護コロイドがしっかりと結合した状態となり、さらに、酸中和されたキトサンがイオン性を有するため、水和層の立体障害および電気二重層の静電反発の二つの因子が粒子の安定化に寄与することになる。
このような本発明で得られる高分子水分散体の特徴的な構造に起因する効果として、キトサンを高濃度化できるという一般の高分子水分散体の利点に加え、キトサンが核粒子および保護コロイドの両成分中に存在することで、粘度上昇を引き起こさずに全固形分中に占めるキトサン含量を高められるという点が挙げられる。また、核粒子と保護コロイドの強固な結合と、立体障害及び静電反発の二つの安定化因子の導入を同時に達成したことで、従来得られている保護コロイドタイプのラテックスと比べて、小粒径化と高い分散安定性の付与が可能となった点が挙げられる。
【0019】
さらに、本発明により得られた高分子水分散体は、用いる重合性単量体によっては常温での皮膜形成性を付与することが可能である。これらの微粒子から得られたフィルムは、小粒径および特殊な粒子構造の二つの効果によって均一且つ透明なものである。また、組成によっては500kg/cm以上の非常に高い強度を有するフィルムを得ることが出来る。これは、室温成膜、未架橋系において一般の高分子水分散体では決して達成できないレベルである。
【0020】
【実施例】
次に、本発明を実施例を示して詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0021】
実施例1
市販のフレーク状キトサン(SK−10;甲陽ケミカル(株)製、脱アセチル化度85%以上、重量平均分子量13,000)50.0gにメタクリル酸25.0g(キトサンのアミノ基に対して1.25倍mol )、コハク酸 27.75g(キトサンのアミノ基に対して 1.0倍mol )を加え、さらにイオン交換水を加えて1000gとした。これを室温で攪拌させながらキトサンを溶解させた後、若干の不溶物を 200メッシュの金網で濾過して除去することにより、キトサン/メタクリル酸−コハク酸水溶液を調製した。
還流冷却管、温度計、攪拌翼、窒素吹き込み口を備えたガラス製重合容器に、上の操作で得られたキトサン/メタクリル酸−コハク酸水溶液1000g、過硫酸アンモニウム 0.3gを仕込み、1時間窒素置換を行った後、攪拌下70℃で5時間重合反応を行うことにより、目的とする水分散体を得た。
この反応液を 300メッシュの金網で濾過して凝集物がほとんど生成していないことを確認した後、60℃で減圧脱水することにより固形分濃度を任意に調節し、高分子水分散体を得た。
【0022】
実施例2
市販のフレーク状キトサン(SK−10;甲陽ケミカル(株)製、脱アセチル化度85%以上、重量平均分子量13,000)50.0gにメタクリル酸30.0g(キトサンのアミノ基に対して 1.5倍mol)、コハク酸 27.75g(キトサンのアミノ基に対して 1.0倍mol)を加え、さらにイオン交換水を加えて1000gとした。これを室温で攪拌させながらキトサンを溶解させた後、若干の不溶物を 200メッシュの金網で濾過して除去することにより、キトサン/メタクリル酸−コハク酸水溶液を調製した。
還流冷却管、温度計、攪拌翼、窒素吹き込み口を備えたガラス製重合容器に、上の操作で得られたキトサン/メタクリル酸−コハク酸水溶液1000g、過硫酸アンモニウム 0.3g、アクリル酸n−ブチル 100gを仕込み、1時間窒素置換を行った後、攪拌下70℃で5時間重合反応を行うことにより、目的とする水分散体を得た。
この反応液を 300メッシュの金網で濾過して凝集物がほとんど生成していないことを確認した後、60℃で減圧脱水することにより固形分濃度を任意に調節し、高分子水分散体を得た。
【0023】
実施例3
実施例2において、メタクリル酸の代わりにアクリル酸37.3g(キトサンのアミノ基に対して 2.2倍mol)を用いる以外は実施例2と同様にしてキトサン/アクリル酸−コハク酸水溶液を調製した。
還流冷却管、温度計、攪拌翼、窒素吹き込み口を備えたガラス製重合容器に、上の操作で得られたキトサン/アクリル酸−コハク酸水溶液1000g、過硫酸アンモニウム 0.3g、アクリル酸n−ブチル50gを仕込み、実施例2と同様にして高分子水分散体を得た。
【0024】
実施例4
実施例2において、メタクリル酸の量を24.0g(キトサンのアミノ基に対して1.2 倍mol)とし、コハク酸の代わりに酢酸 10.58g(キトサンのアミノ基に対して0.75倍mol)を用いる以外は実施例2と同様にしてキトサン/メタクリル酸−酢酸水溶液を調製した。
還流冷却管、温度計、攪拌翼、窒素吹き込み口を備えたガラス製重合容器に、上の操作で得られたキトサン/メタクリル酸−酢酸水溶液1000g、過硫酸アンモニウム 0.3g、アクリル酸2−エチルヘキシル 100gを仕込み、実施例2と同様にして高分子水分散体を得た。
【0025】
実施例5
市販のフレーク状キトサン(SK−10;甲陽ケミカル(株)製、脱アセチル化度85%以上、重量平均分子量13,000)40.0gにメタクリル酸36.0g(キトサンのアミノ基に対して 2.3倍mol )、コハク酸11.1g(キトサンのアミノ基に対して0.5 倍mol)を加え、さらにイオン交換水を加えて 800gとした。これを室温で攪拌させながらキトサンを溶解させた後、若干の不溶物を 200メッシュの金網で濾過して除去することにより、キトサン/メタクリル酸−コハク酸水溶液を調製した。
市販のプルラン(PI−20;(株)林原製、重量平均分子量20万)10.0gにイオン交換水を加えて 200gとし、これを室温で攪拌させながらプルランを完全に溶解させてプルラン水溶液を調製した。
【0026】
還流冷却管、温度計、攪拌翼、窒素吹き込み口を備えたガラス製重合容器に、上の操作で得られたキトサン/メタクリル酸−コハク酸水溶液 800g、プルラン水溶液 200g、アクリル酸n−ブチル50g、過硫酸アンモニウム 0.3gを仕込み、1時間窒素置換を行った後、攪拌下70℃で5時間重合反応を行うことにより、目的とする水分散体を得た。
この反応液を 300メッシュの金網で濾過して凝集物がほとんど生成していないことを確認した後、60℃で減圧脱水することにより固形分濃度を任意に調節し、高分子水分散体を得た。
【0027】
実施例6
実施例5において、キトサンの量を30.0gとし、メタクリル酸の代わりにアクリル酸28.8g(キトサンのアミノ基に対して 2.8倍mol )、コハク酸の代わりに酢酸 8.5g(キトサンのアミノ基に対して1.0 倍mol )を用いる以外は実施例5と同様にしてキトサン/アクリル酸−酢酸水溶液を調製した。
還流冷却管、温度計、攪拌翼、窒素吹き込み口を備えたガラス製重合容器に、上の操作で得られたキトサン/アクリル酸−酢酸水溶液 800g、ポリビニルアルコール(PVA−205 ;クラレ(株)製、部分鹸化型、重量平均分子量3万)20.0g、アクリル酸2−エチルヘキシル50.0g、過硫酸アンモニウム 0.3gを仕込み、実施例5と同様にして高分子水分散体を得た。
【0028】
比較例1
実施例1において、コハク酸を用いず、メタクリル酸の量を36.0g(キトサンのアミノ基に対して 1.8倍mol )とする以外は実施例1と同様にしてキトサン/メタクリル酸水溶液を調製した。
このキトサン/メタクリル酸水溶液を用い、実施例1と同様にして高分子水分散体を得た。
【0029】
比較例2
実施例2において、メタクリル酸を用いず、コハク酸の代わりに酢酸14.1g(キトサンのアミノ基に対して 1.0倍mol )を用いる以外は実施例2と同様にしてキトサン/酢酸水溶液を調製した。
還流冷却管、温度計、攪拌翼、窒素吹き込み口を備えたガラス製重合容器に、上の操作で得られたキトサン/酢酸水溶液1000g、過硫酸アンモニウム 0.3g、アクリル酸n−ブチル50.0gを仕込み、実施例2と同様にして高分子水分散体を得た。
【0030】
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた高分子水分散体について、保存時の安定性、平均粒径、粘度、皮膜強度を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
<評価方法>
・保存時の安定性
高分子水分散体(固形分:10重量%)を40℃で1ケ月間放置した時の粒子沈降やゲル化の有無を調べた。
・平均粒径
光散乱法により測定した(粒度分布測定機LA−700;HORIBA(株)製)。
・粘 度
10重量%溶液の25℃におけるB型粘度を示した(B型粘度計、ローターNo.2, 60rpm, 25 ℃で測定)。
・皮膜強度
アプリケーターを用い室温成膜したフィルムを23℃×60%RHで3日間放置した後、同条件下で引っ張り試験を行って得られた値。
【0031】
【表1】
Figure 0003585576
【0032】
注)
*1 SK−10 ;甲陽ケミカル(株)製キトサン、脱アセチル化度85%以上、重量平均分子量13,000
*2 PI−20 ;(株)林原製プルラン、重量平均分子量20万
PVA−205 ;クラレ(株)製ポリビニルアルコール、部分鹸化型、重量平均分子量3万
*3 MAA ;メタクリル酸
AA ;アクリル酸
*4 n−BA;アクリル酸n−ブチル
2−EHA ;アクリル酸2−エチルヘキシル

Claims (4)

  1. 平均粒径が200nm以下であり、キトサンが粒子表面または粒子表面及び内部に存在していることを特徴とする高分子水分散体。
  2. 酸官能基を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体をキトサンのアミノ基当たりに換算して 0.5 〜5倍 mol および非重合性の酸をキトサンのアミノ基当たりに換算して 0.1 〜2倍 mol用いてアミノ基の全部または一部を中和したキトサンの存在下、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体を水中で重合することを特徴とする、請求項1記載の高分子水分散体の製造方法。
  3. 水酸基を有するノニオン系水溶性高分子化合物の存在下に重合を行う請求項2記載の高分子水分散体の製造方法。
  4. 水酸基を有するノニオン系水溶性高分子化合物がプルランまたはポリビニルアルコールである請求項3記載の高分子水分散体の製造方法。
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