JP3579639B2 - 信号処理方法、装置及びプログラム記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば音楽鑑賞の際、音響信号と共に、加振器等の振動を外部に伝える振動体を耳介もしくは身体の一部に接触させて振動感覚を得ることで、迫力等を増すこと、また、聴覚障害者の聴覚情報の欠落を補うことを目的としたヘッドホンなどの音響機器などに適用され、特に入力音響信号に対し部分的に強調するようにした信号処理方法、その装置及びプログラム記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
音楽等を受聴する際、音楽信号を「耳で聞く」だけでなく、皮膚感覚で体感するために、加振器等をヘッドホンなどに内蔵して、その振動を外部に伝える振動体(加振器)を耳介もしくは身体の一部に接触させる音響装置は多数提案されている。図10は、この種の従来技術の一例を示している。CDプレイヤやMDプレイヤ等のステレオ信号再生装置100の左、右出力信号をそれぞれラウドスピーカ駆動信号と加振器駆動信号に分岐する。その左、右ラウドスピーカ駆動信号は、それぞれ左、右音量調整器101L,101Rで音量を調整された後、左、右ラウドスピーカ駆動用増幅器102L,102Rで増幅され、左、右のラウドスピーカ106L,106Rに入力される。一方、左、右加振器駆動信号は、それぞれ左、右低域通過フィルタ103L,103Rで振動皮膚感覚に寄与しない高周波数帯域信号を遮断された後、左、右振動量調整器104L,104Rで左、右加振器107L,107Rに送られる信号の大きさが調整された後、左、右加振器駆動用増幅器105L,105Rで増幅した信号が左、右加振器107L,107Rに送られ、ラウドスピーカ106L,106R、加振器107L,107Rを内蔵するヘッドホン筐体108L,108Rをそれぞれ加振器107L,107Rが揺らすことで耳介付近の皮膚に振動感覚を伝達する。ここで、加振器107L,107Rの最低共振周波数(以下、f0と称する)は、有効な振動感覚が得られる様に100Hz以下であることが多い。
【0003】
さらに振動感覚には定位は生じにくいため、ステレオ信号を混合しモノラルにして、同じ信号を左右の加振器107L,107Rに送ってもよい。
このような方法により、音楽信号に含まれる重低音信号(主に100Hz以下)の信号に同期した振動感覚を付加することが可能になり、迫力ある音楽再生、あるいは聴覚障害者が利用した場合、聞こえの欠落を補う効果が期待できる。
しかし、上記のように単にその信号の重低域成分によって振動感覚を得ようとすれば、必ずしも心地よい振動感覚が得られる保証はない。例えば重低音域での定常的な信号による連続的振動は、しばしば不快感を感じることがある。また、原信号に加振器のf0付近の周波数成分が含まれていなければ十分な振動感覚を得ることは出来ない。特に聴覚障害者の聴覚情報の欠落を振動感覚で補う目的のためにはこれでは不十分である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の一つ目の目的は、不快な定常的振動を抑制し、主に音楽のリズムを強調することができる信号処理方法、その装置及びプログラム記録媒体を提供することにある。
この発明の二つ目の目的は、入力原信号に加振器のf0付近の重低音成分が含まれていないとき、有効な振動成分を生成することができる音響信号処理方法、その装置及びプログラム記録媒体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、入力信号の立上りが急激な部分をアタック部分として検出し、そのアタック部分を強調する。
このアタック部分を検出し、強調(アタック強調)を基本とし、音響信号を複数の周波数帯域に分割し、その各帯域信号に対して、上記アタック部分検出、強調を行う。ただし、分割された複数の周波数帯域信号中の、所定周波数、つまり加振器のf0以上の帯域信号に対しては、各帯域信号をf0付近の帯域に周波数シフトし、その周波数シフトされた帯域信号に対し、アタック強調する。また、所定周波数以下の帯域信号に対してアタック強調が行われると、アタック強調され、かつ周波数シフトされた帯域信号が軽視されるように、アタック強調され、かつ周波数シフトされた帯域信号に対し重み付けを行う、これら処理された各帯域信号を合成する。
作用
入力された音楽信号を複数の周波数帯域に分割する。分割した帯域のうち、加振器のf0付近よりも高域の各帯域においては、例えば400Hz付近の帯域を1/4にシフトダウンして100Hz信号を合成するなどしてf0付近まで周波数シフトする。次に各帯域ごとにエンベロープもしくは瞬時パワーとその平均値を計算し、その比、もしくは差を取ることで信号の変動の大きさ、アタック係数を算出する。次にアタック係数から、各帯域ごとに信号のアタック部分、すなわち立ち上がりの急激な部分を強調し、定常な部分を抑圧するための係数、アタック強調係数を算出する。次に、アタック強調係数を各帯域の信号に乗算し、さらに加振器のf0付近の帯域信号の有無等に応じて、各帯域に重み係数を乗じて、全ての帯域を加算、再合成する。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1にこの発明の実施例を示し図10と対応する部分に同一符号を付けてある。図1に示す通り、この発明による信号処理部110L,110Rが、この例では図10に示した従来技術における低域通過フィルタ103L,103Rの部分に設けられる。信号処理部110L,110Rは同一構成であり、その実施例を図2に示す。
【0007】
入力端子200から入力された音楽信号を複数の帯域通過フィルタ201で複数の帯域信号に分割する。例えばf0が100Hzの時、中心周波数が63Hz,125Hz,250Hz,500Hzの各帯域通過フィルタにて分割する。このとき、加振器107のf0よりも低い周波数帯域成分と高い周波数帯域成分で処理方法が異なる。まず、f0よりも低い周波数帯域成分の処理を説明する。
これらの帯域信号の処理は、そのf0以下の帯域通過フィルタ201Lよりの通過成分についてアタック強調係数計算部203においてアタック強調係数を計算し、その係数を、帯域通過フィルタ201Lを通過した成分に乗算器206で乗算し、その乗算出力信号を加算器207へ送る。また、アタック強調係数計算部203の計算結果より、高域成分重み係数計算部204において高域成分の重み係数を計算する。高域成分の重み係数については後で説明する。
【0008】
次に加振器107のf0よりも高い周波数帯域成分の処理方法を説明する。これらの高い周波数帯域成分は、そのまま加振器107に送られても十分な振動感覚を得ることは出来ない。よって、これらの帯域の成分は加振器107のf0付近まで周波数シフトする。つまり帯域通過フィルタ201Hを通過した成分を周波数シフト器202で周波数シフトする。このとき、高い周波数帯域成分ほど、大きなシフト幅が必要であり、これら全てのf0より高い周波数帯域成分を加振器107のf0付近まで周波数シフトする。前記数値例では中心周波数125Hz,250Hz,500Hzの各帯域信号をそれぞれ周波数を1/2,1/2,1/4とする。このようにしてあらゆる入力信号に対して、加振器107を有効に駆動することを可能とする。
【0009】
周波数シフトした成分に対し、アタック強調係数を計算、乗算するところは加振器107のf0よりも低い周波数帯域成分に対する処理と同じである。アタック強調係数の計算は周波数シフト前の帯域通過信号又は周波数シフトされた帯域信号を用いて行う。何れにしても帯域信号中の急激な立上りを検出できる係数を計算すればよい。乗算器206でアタック強調係数を乗算した各帯域処理成分に前述の高域成分重み係数計算部204で計算した高域成分重み係数を乗算器208で乗算し、加算器207へ送る。
【0010】
加算器207で各帯域成分についての処理信号を加算し、出力端子205から出力する。
次にアタック強調係数計算部203の具体例を図3を用いて説明する。以下では入力信号は例えば22kHzで標本化されたデジタル信号であるとする。
入力端子300には各帯域通過成分(信号)が入力される。まず実効値計算部301でその入力成分(信号)の瞬時実効値rmsを計算する。この計算は実効値の定義通り二乗平均値の平方根を計算しても良いし、簡易な方法として絶対値の短時間平均を計算しても良い。これら実効値と絶対値の短時間平均値との両者を含めて短時間平均値rmsと記す。この短時間平均値は数十ミリ秒の平均であり、いわゆる処理フレームである。この短時間平均値rmsは長時間平均化部302に送られ、短時間平均値rmsの長時間平均化実効値avrが計算される。この平均化の方法には、例えば重み付き移動平均法などがある。この平均時間は数百ミリ秒乃至数秒である。これらrmsとavrはアタック係数計算部303に送られ、アタック係数akcが計算される。
【0011】
akcは、平均的な信号の大きさからの瞬時の大きさの差異の尺度を表わすもので次式の計算方法が考えられる。
akc=rms/(avr+ε) (1)
akc=rms−avr (2)
ここでεはその帯域信号が小さいときにアタック係数が過度に大きくなるのを防ぐための小さな正の実数である。要はrmsとavrとの差異に基づいてakcを求める。
【0012】
このアタック係数akcからアタック強調係数計算部304において、アタック強調係数gを算出する。アタック係数akcが大きいほど強調係数gも大きくなる関数を選ぶ、例えば(1)式のakcを用いる場合を例にすると図4に示すようになる。横軸は20log10akc、縦軸は20log10gを表している。(1)式の計算方法において、akcが1より大きいときには、信号の平均的な大きさよりもその瞬時の大きさが大きいことを意味する。そして、akcが大きいほど、信号の立上りは速いことになる。よって、akcが1以上(20log10akc≧0)の時にgを1以上(20log10g≧0)、akcが1より小さい時(20log10akc<0)にgを1より小さくする(20log10g<0)ことで、アタック部分を強調するための係数が得られる。つまりこの例ではakcが1以上でアタック部の利得を増大して強調し、かつakcが1以下では、利得を下げてつまりアタック部以外を抑圧する。このakcからgを求めることは、図4の場合は実線の折線の3つの線分部分についての関数にakcを代入してそれぞれgを演算して求めてもよく、あるいはakcとgとの対応のテーブルを作っておき、akcでそのテーブルを参照してgを求めてもよい。またakcとしては図5中破線で示すようにakc≧1でg=1とし、akc<1でgを1以下として、アタック部分以外を抑圧することにより結果としてアタック部分を強調してもよい。あるいは、図4中に1点鎖線で示すように、akc≧1で利得を増大させアタック部分を強調し、akc<1でg=1とし、つまりアタック部分以外では利得を1としてもよい。
【0013】
このgの値は、瞬時に大きく変動してしまうため、そのまま帯域処理信号(成分)に乗算すると、信号が不連続になり自然性を損ねたり、異音を生じてしまうことがある。そこで、スムージング部305において、gがなめらかに変動するようにする。その処理結果をgsとすると、例えば、
gs=gs′+δ×(g−gs′) (3)
を演算する。gs′は一時刻前のgs,δは変動の滑らかさを決める1以下0より大きな係数で、小さいほどなめらかに変動する。アタックを強調するのが目的であるから、gがgs′よりも大きいときには1、もしくはそれに近い大きな値にδを設定し、gs′よりもgが小さな時には小さなδに設定することが有効である。このgs>gの時のδの設定でその帯域信号中の定常な信号をどのくらいの速さで抑圧するかを調整することが可能となる。
【0014】
例えばスムージング部305内において大小判定部305aによりg>gs′か否かの判定を行い、g>gs′ならばδ≒1を出力し、g>gs′でないならば小さなδ値、例えば0.1を出力し、この大小判定部305aで出力されたδを用いて(3)式を計算して、gsを出力する。このδの値、特にg>gs′でない場合は、アタック部分を強調した後、その後の部分をどの程度の速度で抑圧するかは利用者の好みもあるため、スムージング部305にδ設定部306を設けて、g>gs′でない時のδの値、場合によってはg>gs′の時のδの値も設定できるようにされている。
【0015】
一般に振動の皮膚感覚の感度は、音知覚に比べると鈍い。つまり、振動感覚のダイナミックレンジは狭いので、加振器駆動信号のダイナミックレンジを圧縮することも有効である。そこで、アタック強調とダイナミックレンジの圧縮処理を同時に行う場合のアタック強調係数計算方法を説明する。
帯域別信号(成分)の大きさの最大基準値をthd、ダイナミックレンジ圧縮の比率をrtとすると、アタック強調及びダイナミックレンジ圧縮係数g2は、
g2=(thd/(rms+ε))rt (4)
を計算して求める。ここで、εはrmsが小さいときにg2が過渡に大きくなることを防ぐための小さな正の実数である。rtを1にすると、g2を帯域信号に乗算することで、ほぼその大きさが全てthdとなる。rtを0.5にするとダイナミックレンジは1/2に圧縮される。rtを0にするとg2は全てのrmsで1になりダイナミックレンジは圧縮されない。また、rtを負の値にするとダイナミックレンジは伸長される。つまり小さい信号をより小さくする係数になる。この関係を図5に示す。横軸が20log10rms、縦軸はg2を乗算した後の出力を示している。そこで、rtを前述のアタック係数akcの関数にすることを考える。アタック係数が大きいときに強調、アタック係数が小さいときに抑圧する係数にしたいのであるから、アタック係数が大きいとき、つまりakc≧1の時にrtを正の値にすればg2は大きな値となり、アタック係数が小さいとき、つまりakc<1の時にrtを負の値にすれば(thd/(rms+ε))は1より大であるからg2は小さくなる。さらにアタック係数akcが大きいほどより1に近いrtに、逆にakcが小さいほどrtを負でかつ絶対値の大きな値にすれば、図5から、アタック部分がより強調され、定常部分がより抑圧されることがわかる。
【0016】
g2をスムージングする過程は、gを用いる先の方法と同じであるので割愛する。このようにアタック部の強調と、アタック信号のダイナミックレンジを抑圧するアタック強調係数を求めるには、図3中に破線で示すように短時間平均値rmsとアタック係数akcとをアタック強調係数計算部304′に入力して、圧縮比率取得部304aにおいてakcから圧縮比率rtを求める。このrtを求めるのは、演算によってもよく、あるいはテーブルを参照することによってもよい。この求めたrtを用いて(4)式を計算してg2を求め、このg2をスムージング部305へ出力すればよい。
【0017】
次に図2中の周波数シフト器202の具体例を説明する。
図6は周波数シフト器202をオクターブ単位で行う場合の例である。まず、入力端子400に入力した信号siを2値化器401で2値化し、また絶対値計算器403で絶対値をとる。2値化した値をdg、絶対値をevとすると、
dg=1(si≧0)
dg=−1(si<0) (5)
ev=|si| (6)
次に、2値化した値dgの系列を、分周器402で1/Nに分周する。ここでNは分周の周期を表し、オクターブ単位で分周するためにはNは2,4,8,…,2m (m=1,2,3…)の値をとる。入力信号siは前段で帯域制限された信号である。その帯域の中心周波数をfmとすると、加振器107のf0付近までオクターブ単位でシフトするためには、
m′=log2 (fm/f0) (7)
を計算し、その結果m′から最も近いm(自然数)を選べば良い。例えばf0=130Hz,fm=1000Hzであると、m′は2.943であるから3を選んで、3オクターブダウン、つまり1/8に分周すれば良い。分周した結果とevを乗算器404で乗算し、低域通過フィルタ405で2値化によって高域に発生する高調波成分を除去して出力端子406から出力する。
【0018】
この方法では、厳密には単振動オシレータ信号に振幅変調がかかった信号でなければ正確なmオクターブシフトダウンは出来ない。しかし、音楽信号の場合は調波構造が多く、基本波の倍、その倍…という成分が主として含まれ、雑音成分が比較的少ないから、前述のように通過中心周波数が63Hz,125Hz,250Hz,500Hzで隣接帯域が互いに一部重なっているような通過帯域特性のフィルタを用いて、近似的に単一周波数に近い波形にすることができる。
【0019】
次に図2中の高域成分重み係数計算部204の具体例を説明する。
まず、加振器のf0付近の周波数成分がないことを検出し、その場合に1を出力し、加振器のf0付近の成分が大きい場合に0を出力する。
加振器のf0付近成分の有無は、リズムを構成する適当な一定時間間隔Tr[sec](例えば1秒程度)内で、図2における周波数シフト実施境界よりも低い周波数帯域の少なくとも一つの帯域成分(信号)のアタック強調係数gsが1以上であったときに、f0成分があったと判断して、重み係数gh=0を出力する。これは、例えばリズム楽器等は、音の持続時間が短く、一定間隔をおいて鳴らされるものだからである。逆にf0以下の全ての帯域信号成分のアタック強調係数がTr[sec]の間、1より小さい時、それらの成分が存在しないと判断し、重み係数gh=1を出力する。
【0020】
つまり、リズム楽器では、ある音が周期的に発生し、加振器はこの周期性を強調するためのものである。f0以下の帯域でアタック強調ができ、更にf0以上の帯域でアタック強調をすると、f0以下のアタック強調により周期性が強調された上に、更にその間に、f0以上の帯域によるアタック強調が入ると、本来のリズムの周期性がくずれ、加振器を用いる意味がなくなるおそれがある。よって、このような場合は重み係数ghを0として、f0以上の帯域信号を除去する。一方、f0以下の帯域成分中に、アタック部分がない場合でも、f0以上の帯域成分中に、アタック部分があり、これを検出して、強調することによりリズムを強調することが可能となる。よってこのような場合は重み係数ghを1とする。
【0021】
次に重み係数ghのもう一つの計算方法の実施例を説明する。上記の実施例では0から1、1から0と不連続に更新されるため、不自然な振動になるおそれがある。そこで、重み係数ghが連続的に更新する場合は例えば次のようにすればよい。
まず、図2における周波数シフト実施境界よりも低い周波数帯域の少なくとも一つのアタック強調係数が1以上であったときに、成分があったと判断して、重み係数ghを小さくする。ここで、一つ前の時刻の重み係数をgh′とすると、現時刻の重み係数ghを以下のようにする。
【0022】
gh=αgh′ (8)
ここで、αは0以上で1より小さい実数である。0にすると瞬時に減衰される前述の方法と同じである。1に近いほど、徐々に減衰される。
逆に周波数シフト実施境界よりも低い周波数帯域の全てのアタック強調係数が1より小さい時に、重み係数を徐々に大きくする。
gh=gh′+β(1−gh′) (9)
βは0より大きく1以下の実数である。1にすると、瞬時に重み係数が1になる。0に近いほど、1に向かって徐々に重み係数が大きくなり、徐々に周波数シフト成分を加えていくことになる。つまり図2中の高域成分重み係数計算部204内に判定部204aを設け、周波数シフト実施境界よりも低い周波数帯域の少くとも1つのアタック強調係数gsが1以上であるか否かを判定し、1以上のものがあれば(8)式を演算して重み係数ghを出力し、1以上のものがないと判定されると、(9)式を計算して重み係数ghを出力する。
【0023】
また、重み係数を全て零にすれば、結果的にf0より下の周波数帯域信号だけを用いてアタック強調することになる。例えば、ベースドラム等が常にリズムを刻んでいることが確実な音楽信号等を対象とするのであれば、それでも有効であり、周波数シフト等を含むf0よりも高域の処理を省略しても同じであることから、処理を軽くすることが可能となる。
上述した処理をコンピュータにより実行させることもできる。例えば図7に示すように、入力部11、出力部12、記憶部13、信号処理プログラムが格納されたメモリ14、CPU15がバス16に接続されている。メモリ14に格納された信号処理プログラムはハードディスク、フロッピーディスク、CDROMなどあるいは通信データとしてサーバからインストロールされたものであり、CPU15がこのプログラムを実行することにより、例えば図8に示す処理が行われる。
【0024】
即ち入力部11から入力信号が入力されると、記憶部13に順に格納すると共に、順次、図2中に示したように複数の周波数帯域信号に分割し、各帯域信号ごとに記憶部13に格納する(S1)。
その1つの帯域信号の1フレーム(例えば50ミリ秒)分のデータを記憶部13から読み出し(S2)、その読み取ったデータについてアタック強調係数gsを計算する(S3)。この計算は例えば図3を参照して説明したように行う。この計算したgsはその帯域信号対応に記憶部13に記憶する。またアタック強調係数を計算してない帯域信号があれば(S4)、ステップS2に戻って、別の帯域信号を1フレーム分取出してgsの計算を行う。なお、長時間平均値avrを計算するために必要なrmsは各帯域ごとに常に必要な量を記憶部13に保持しておく。
【0025】
全ての帯域信号についてgsの計算を行うと、f0より高い帯域信号を1フレーム分記憶部13から取出し(S5)、その取出した帯域信号に対し、例えば図6に示した処理によりf0付近の帯域に周波数シフトし、その周波数シフトした帯域信号を記憶部13に格納する(S6)。その後、また周波数シフトすべき帯域信号があるか調べ(S7)、またあればステップS5に戻ってその帯域信号を取出して周波数シフトして同様の処理を行う。f0以上の帯域信号の全てに対して周波数シフト処理が終了すると、次のステップS8に移る。
【0026】
ステップS8では、記憶部13内の、f0以下の帯域について求めたgs中に1以上のものが1つでもあるかを調べ、先に図2中の高域成分重み係数計算部204について述べたように、重み係数ghを0又は1にするか、(8)式又は(9)式の演算により求める。記憶部13内の各帯域信号(又は周波数シフトした帯域信号)に対し、その帯域のgsをそれぞれ乗算し、また周波数シフトした帯域信号に対しては重み係数ghを乗算する(S9)。
【0027】
これらgsが乗算されたf0以下の帯域信号と、gsとghが乗算され、かつ周波数シフトされた帯域信号を合成して出力部12から出力する(S10)。
その後、ステップS1以下の次のフレームの信号についての処理を行い、実時間処理がなされる。なおステップS2,S3,S4によるアタック強調係数計算とステップS5,S6,S7による周波数シフトとの順序を入れかえてもよい。図9にこの発明の効果の例を示す。GLAYの「Winter Again」のサビの一部分の信号を入力とし、図9Aは図10に示した従来の低域通過フィルタ103を通した波形であり、図9B、Cは(3)式及び(4)式を用いて処理した波形をそれぞれ示し、前者はδ=0.02、後者はδ=0.1とした場合である。図9Aはピーク成分の他に持続信号が存在しているが、図9B,Cは各ピーク成分ごとに持続信号成分が抑圧され、リズムが強調されている、またδを大きくした図9Cの方が、その抑圧が大きくなることがわかる。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明のようにこの発明によれば、音楽等を受聴する際、振動を皮膚感覚で体感する音響機器で、その振動を得る加振器を駆動する信号を加工する信号処理部において、定常的振動を抑制し、アタック部分を強調する、及び加振器の共振周波数帯域の成分の有無を検出し、その成分が存在しないときに高域成分から低域に周波数シフトした合成信号を出力する、これらのことが可能となり、以下の効果が期待できる。
【0029】
(1)リズムが強調され、ポピュラー系音楽では、よりダイナミックな振動感覚を得ることが可能となる。また、聴覚障害者が音楽を受聴する際には、聞こえの欠落を振動知覚によるリズムで補う効果が期待できる。
(2)定常な信号による連続的な振動を抑えることができるため、快適な振動感覚を得ることが可能となる。
(3)例えばクラシック系の音楽などで、原信号では加振器を振動させる重低域成分が存在しない場合であっても、周波数シフトにより振動させることが可能となり、特に聴覚障害者のための補聴機能として、聞こえの足りない部分を補う効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の利用方法を説明するブロック図。
【図2】この発明の一実施例を示すブロック図。
【図3】図2中のアタック強調係数計算部203の具体例を示すブロック図。
【図4】アタック係数から強調係数を計算する場合の関係を示す図。
【図5】ダイナミックレンジ圧縮の比率を変化させたときの入力と出力の関係を示す図。
【図6】図2中の周波数シフト器202の具体例を示すブロック図。
【図7】この発明装置をコンピュータにより機能させる場合の構成例を示すブロック図。
【図8】図7に示した装置の処理手順の例を示す流れ図。
【図9】この発明の効果を説明するための波形図。
【図10】従来技術を示すブロック図。
Claims (9)
- 入力信号の立上りが急激な部分(アタック部分)を検出する過程と、
上記入力信号の検出したそのアタック部分を強調する過程と
を有することを特徴とする信号処理方法。 - 音響信号を複数の周波数帯域に分割する過程と、
これら分割された周波数帯域信号中の、予め決められた周波数以上の帯域信号ごとに、その帯域信号を上記予め決められた周波数付近帯域信号に周波数シフトする過程と、
上記各周波数帯域信号ごとに、その信号の立上りが急激な部分(アタック部分)をそれぞれ検出する過程と、
上記予め決められた周波数以下の帯域信号のその検出されたアタック部分を、上記周波数シフトされた帯域信号の、その帯域信号について検出されたアタック部分を、それぞれ強調する過程と、
上記予め決められた周波数以下の帯域信号に対するアタック部分の強調がなされると、上記周波数シフトされた帯域信号のアタック部分の強調を弱めるように上記周波数シフトされた帯域信号に重み付けする過程と、
上記重み付けされた周波数シフト帯域信号と上記予め決められた周波数以下の上記アタック部分が強調された帯域信号とを合成する過程と
を有する信号処理方法。 - 請求項1又は2の方法において、
上記アタック部分の検出は、入力された信号の短時間平均値と、その入力された信号の長時間平均値との差異をアタック係数として求め、アタック係数の大小に応じてアタック部分を求めることを特徴とする信号処理方法。 - 請求項3記載の方法において、
上記アタック係数に応じた圧縮比率をもって上記アタック部分を強調して、信号のダイナミックレンジを同時に圧縮することを特徴とする信号処理方法。 - 入力信号が入力されてその入力信号の立上りの程度を求めてアタック強調係数として出力するアタック強調係数計算手段と、
上記入力信号と上記アタック強調係数が入力されて、その入力信号の立上りが急激な部分を上記アタック強調係数に応じて強調して出力するアタック強調手段と
を具備する信号処理装置。 - 音響信号が入力されて複数の周波数帯域信号に分割して出力する周波数帯域分割手段と、
上記分割された周波数帯域信号中の予め決められた周波数以上の周波数帯域信号ごとにこれら周波数帯域信号を上記予め決められた周波数付近に周波数シフトする周波数シフト手段と、
上記分割された各周波数帯域信号ごとにその帯域信号又は上記周波数シフトされた帯域信号が入力されて、その入力された信号の立上りの程度を求めてアタック強調係数として出力するアタック強調係数計算手段と、
上記予め決められた周波数以下の周波数帯域信号を、また上記予め決められた周波数以上の周波数帯域信号についてはそれぞれその周波数シフトされた帯域信号を、それぞれ対応するアタック強調係数により強調するアタック強調手段と、上記予め決められた周波数以上のアタック強調された周波数シフト帯域信号に、上記予め決められた周波数以下のアタック強調係数に応じ、これにより強く強調される場合は、強調を弱くするような重み付けを行う重み付け手段と、
上記予め決められた周波数以下のアタック強調された周波数帯域信号と、上記重み付けされた周波数シフト帯域信号とを合成して出力する合成手段と
を具備する信号処理装置。 - 請求項5又は6記載の装置において、
上記アタック強調係数計算手段は入力された信号の短時間平均値を求める手段と、上記入力された信号の長時間平均値を求める手段と、上記短時間平均値と上記長時間平均値の差異を示す値より上記アタック強調係数を求める手段とよりなることを特徴とする信号処理装置。 - 請求項5乃至7の何れかに記載の装置において、
上記アタック強調係数計算手段は、上記アタック強調係数に応じた圧縮比率を有するアタック強調係数を計算する手段であることを特徴とする信号処理装置。 - 請求項1乃至4の何れかの方法をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体。
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