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JP3576608B2 - 貼付剤および貼付製剤 - Google Patents

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JP3576608B2 JP28034294A JP28034294A JP3576608B2 JP 3576608 B2 JP3576608 B2 JP 3576608B2 JP 28034294 A JP28034294 A JP 28034294A JP 28034294 A JP28034294 A JP 28034294A JP 3576608 B2 JP3576608 B2 JP 3576608B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は経皮吸収製剤に関し、詳しくは皮膚表面に貼付するだけで経皮吸収用薬物を持続的かつ速やかに体内に吸収させることができると共に、貼付部位の皮膚面に対して優れた密着性や皮膚接着性を発揮し、しかも、皮膚面からの剥離時には痛みや角質損傷を起こさない経皮吸収製剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、薬物を皮膚面を通して生体内へ投与するための経皮吸収製剤としてハップ剤やテープ剤などの皮膚面貼付型の外用剤が種々開発されており、これらの中で、特に、全身性の薬理作用を発揮する薬物を含有したテープ剤が注目されている。
【0003】
このような実情の中で、ニトログリセリンやイソソルビドジニトレート、各種ステロイド薬、非ステロイド薬、麻酔薬、抗高血圧薬などを薬理活性物質として粘着剤中に含有させたテープ状の経皮吸収製剤が提案、開発され、一部は上市に至っている。これらの経皮吸収製剤はアクリル系や合成ゴム系の粘着剤に各種経皮吸収用薬物を混合したものであって、皮膚面に貼付するだけで薬物が皮膚面を通して持続的に体内に吸収されるものであり、優れた薬理作用を発揮するものである。
【0004】
しかしながら、これらの製剤は皮膚面に貼付する製剤であるために、長期間にわたる貼付では貼付部位の皮膚面に刺激などに起因するカブレを発生する可能性を有する製剤でもある。つまり、一般的な経皮吸収製剤は適用皮膚面に製剤を確実に固定させる目的で、通常、比較的強接着力を有する粘着剤を使用していたり、強接着力を有する粘着シートで製剤全体をオーバーコートし、このシートの接着力によって皮膚固定を行っている。ところが、このようにして皮膚面への接着性(密着性)を高めた場合、含有する薬物の皮膚移行性は全般的に向上するが、剥離除去する際に適用皮膚面の角質細胞に損傷を与えてしまい、貼り替えながらの長期間連続貼付において顕著な皮膚刺激を生じる恐れがある。
【0005】
そこで、この強接着に起因する皮膚刺激を低減する目的で、特開平3−220120号公報に記載のような所謂、ゲル状の経皮吸収製剤が提案されている。この製剤はアクリル系粘着剤層中に、相溶性の高い油性の液体成分を比較的多量に含有させて粘着剤層にソフト感を付与したものであって、皮膚面への貼付中は柔軟な粘着剤層によって皮膚刺激性が低減でき、使用後の剥離除去時には角質損傷を起こさずにスムースに剥離できるという画期的な経皮吸収製剤である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような貼付型の経皮吸収製剤は、皮膚面に貼付して使用するものであるので、皮膚接着性(密着性)と皮膚低刺激性とのバランスを維持し、しかも含有する薬物の皮膚移行性や経皮吸収性を良好にする必要があり、これらの点を全て満足する経皮吸収製剤を開発することは今後の究極の課題でもある。
【0007】
上記特開平3−220120号公報の製剤は従来の経皮吸収製剤にない優れた効果を発揮するものであるが、皮膚接着力や皮膚密着性の点で未だ改良の余地がある。また、皮膚刺激性の低減のためには製剤の大きさ(面積)をできる限り小さくすることが好ましいが、該公報に記載のものでは小面積化に伴う皮膚接着力の確保や薬物の皮膚移行性、経皮吸収性に対しても充分に改良の余地がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するべく更に検討を重ねた結果、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主単量体として用いたアクリル系共重合体に、液体成分として特定の脂肪酸エステルおよび特定のモノグリセリドを添加し、さらに粘着剤層を架橋することによって、上記課題が解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の経皮吸収製剤は、支持体の片面に経皮吸収用薬物を含有する粘着剤層を形成してなる経皮吸収製剤において、粘着剤層中に(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能性単量体を必須成分とする単量体混合物を共重合してなるアクリル系共重合体と、炭素数が12〜16の高級飽和脂肪酸と炭素数が1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステルと、炭素数が8〜10の高級飽和脂肪酸とグリセリンからなるモノグリセリドと、経皮吸収用薬物(但し、イソソルビドジニトレートを除く)が含有されていると共に、粘着剤層が架橋されており、脂肪酸エステルとモノグリセリドの合計含有量が、アクリル系共重合体100重量部に対して60〜200重量部であり、脂肪酸エステルとモノグリセリドの含有比率が、1:0.05〜1:0.25であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の経皮吸収製剤に用いる支持体としては、粘着剤層に含有される脂肪酸エステル、モノグリセリドや経皮吸収用薬物が支持体中を通って背面から失われて含有量の低下を起こさないものが好ましい。具体的にはポリエステル、ナイロン、サラン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン、金属箔などの単独フィルムまたはこれらの積層フィルムなどを用いることができる。これらのうち支持体と後述する粘着剤層との間の接着力(投錨力)を良好とするために、支持体を上記材質からなる無孔のプラスチックフィルムと多孔質フィルムとの積層フィルムとすることが好ましい。この場合、粘着剤層は多孔質フィルム側に形成するようにすることが好ましい。
【0011】
このような多孔質フィルムとしては、粘着剤層との投錨力が向上するものが採用されるが、具体的には紙、織布、不織布、機械的に穿孔処理を施したシートなどが挙げられ、これらのうち取り扱い性などの点からは、特に紙、織布、不織布が好ましい。多孔質フィルムは投錨力向上、製剤全体の柔軟性および貼付操作性などの点から10〜500μm、プラスタータイプや粘着テープタイプのような薄手の製剤の場合には10〜200μmの範囲のものを採用する。また、多孔質フィルムとして織布や不織布を用いる場合、目付け量を5〜30g/m2、好ましくは6〜15g/m2とすることがよい。
【0012】
本発明の経皮吸収製剤において上記支持体の片面に形成される粘着剤層は、経皮吸収用薬物と、アクリル系共重合体と、脂肪酸エステルと、モノグリセリドとを必須成分として含んだ適度な弾性を有する架橋構造体であり、所謂ゲル状の形態を有するものであって、適度な皮膚接着力と凝集力を備えている。本発明の粘着剤層が有する接着力は、後述する測定方法においてベークライト板への接着力が80〜250g/24mm幅の値を示す。
【0013】
上記本発明における粘着剤層の主基材となるアクリル系共重合体は、脂肪酸エステルやモノグリセリドと相溶するものであって、適度な皮膚接着性と粘着剤層の保型性を有するものである。なお、一般的に粘着剤として用いられている天然ゴムや合成ゴムなどのゴム系粘着剤やシリコーン系の粘着剤では、脂肪酸エステルやモノグリセリドとの相溶性が充分ではなかったり、経皮吸収用薬物の溶解性や放出性が著しく低かったりするので、本発明にて用いることは好ましくない。また、このような粘着剤は本発明に用いるアクリル系共重合体と比べて架橋反応に関与する官能基量などの調整が難しく、また、再現性のある架橋処理を行いがたいという問題も有するので本発明に適したものとは云えないのである。
【0014】
このようなアクリル系共重合体は、通常のアクリル系粘着剤に用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として、これに官能性単量体を共重合することによって得ることができる。
【0015】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的にはアルキル基がブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルなどの炭素数4〜13の直鎖アルキル基や分岐アルキル基などを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができ、これらは一種もしくは二種以上用いることができる。
【0016】
また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは上記例示のものに限定されるものではなく、本発明の特性を変化させない範囲であれば、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや炭素数14以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを併用してもよい。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合することができる官能性単量体としては、共重合反応に関与する不飽和二重結合を分子内に少なくとも一個有すると共に、カルボキシル基(例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸など)やヒドロキシル基(例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルなど)、スルホキシル基(例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸など)、アミノ基(例えば(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルエステルなど)、アミド基(例えば(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなど)、アルコキシル基(例えば(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステルなど)、などの官能基を側鎖に有するものが使用できる。これら以外に共重合できる単量体としては、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロビオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリンなどを用いることができる。
【0018】
これらの単量体は一種もしくは二種以上共重合することができるが、粘着特性としての接着性や凝集性、粘着剤層中に含有する経皮吸収用薬物の放出性、粘着剤層を架橋処理する際の反応性などの点から、カルボキシル基含有単量体やヒドロキシル基含有単量体の少なくとも一種を必須成分とし、必要に応じて上記にて例示の他の単量体を共重合することが特に好ましいものである。上記官能性単量体の共重合量は目的に応じて全単量体量中、2〜40重量%、好ましくは3〜35重量%の範囲となるように任意に設定することができる。
【0019】
本発明において粘着剤層中に配合する脂肪酸エステルおよびモノグリセリドは、常温で液状(もしくはワックス状)のものであって上記アクリル系共重合体と相溶して粘着剤層中に均一に分布している。その結果、これらの成分は粘着剤層を可塑化させる作用を示すので、粘着剤層にソフト感を付与し、本発明の経皮吸収製剤を皮膚面から剥離するときに、皮膚接着力に起因する痛みや皮膚刺激性を低減できるのである。さらに、粘着剤層が上記のように可塑化されるので、含有する経皮吸収用薬物の自由拡散性が良好となって皮膚面上への放出性(皮膚移行性)も向上するようになる。
【0020】
従って、本発明にて用いる脂肪酸エステルやモノグリセリドは、粘着剤層を可塑化する作用を発揮するものであればよいが、必要以上に炭素数の多い脂肪酸や少ない脂肪酸からなるものでは前記アクリル系共重合体との相溶性が悪くなったり、製剤を調製する際の加熱工程で揮散したりするおそれがある。また、分子内に二重結合を有する脂肪酸からなるものでは酸化分解などを生じて保存安定性に問題を生じることがある。さらに、本願発明のような経皮吸収製剤の場合は、単位面積あたりの経皮吸収用薬物の含有量が多いと製剤中で飽和溶解度以上の薬物が結晶するが、添加する脂肪酸エステルやモノグリセリドの種類によっては薬物の結晶析出を阻害したり、析出速度を遅くしたりすることがあり、得られる製剤の外観に不良を生じたり、保存安定性に悪影響を及ぼすことがある。
【0021】
よって、本発明に用いる脂肪酸エステルとしては、炭素数が12〜16、好ましくは12〜14の高級脂肪酸と炭素数が1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステルが採用される。このような高級脂肪酸としては、好ましくはラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)であり、特にミリスチン酸を用いることがよい。また、低級1価アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールが挙げられ、これらは直鎖アルコールに限定されず分岐アルコールであってもよい。好ましくはイソプロピルアルコールが用いられる。従って、最も好ましい脂肪酸エステルは、ミリスチン酸イソプロピルである。
【0022】
一方、モノグリセリドとしては炭素数が8〜10の高級脂肪酸とグリセリンからなるモノグリセリドが採用される。このような高級脂肪酸としては、好ましくはカプリル酸(オクタン酸、C8)、ペラルゴン酸(ノナン酸、C9)、カプリン酸(デカン酸、C10)であり、特にカプリル酸を用いたカプリル酸モノグリセリドを用いることが好ましい。
【0023】
本発明の経皮吸収製剤において上記脂肪酸エステルとモノグリセリドは、その合計含有量がアクリル系共重合体100重量部に対して60〜200重量部、好ましくは70〜180重量部の範囲に設定する。また、脂肪酸エステルとモノグリセリドの含有比率が、1:0.05〜1:0.25、好ましくは1:0.065〜1:0.24、さらに好ましくは1:0.08〜1:0.18の範囲に設定する。なお、上記含有比率の変化は極めて微妙に本発明の効果に影響するので、使用する脂肪酸エステルおよびモノグリセリドは純度85%以上の高純度のものを用いることが好ましい。
【0024】
脂肪酸エステルとモノグリセリドとの合計含有量および含有比率が上記範囲から逸脱した場合には、実用的な皮膚接着性や低皮膚刺激性を得ることができず、また、経皮吸収用薬物の放出性(皮膚移行性)の点でも充分ではない。このような問題点は経皮吸収製剤としての製品の大きさ(面積)が小さいほど顕著に現れる。
【0025】
さらに、必要に応じて上記脂肪酸エステルおよびモノグリセリド以外の有機液状成分を粘着剤層中に含有させることもできる。この場合の含有量は粘着特性や経皮吸収用薬物の放出性を阻害しない範囲で設定すればよい。このような有機液状成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類、オリーブ油、ヒマシ油、スクワレン、ラノリンなどの油脂類、酢酸エチル、エチルアルコール、1,3−ブタンジオール、ジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、オレイン酸などの有機溶剤、液状界面活性剤、流動パラフィンなどの炭化水素類などが挙げられる。
【0026】
本発明の経皮吸収製剤における粘着剤層は、経皮吸収用薬物と、上記アクリル系共重合体、脂肪酸エステル、モノグリセリドを必須成分として配合し、適当な架橋手段によって架橋処理を施して、所謂ゲル状態とし、含有する脂肪酸エステルやモノグリセリドのような液状成分の流出を防止し、さらに凝集力を粘着剤層に付与する。架橋反応は紫外線照射や電子線照射などの放射線照射による物理的架橋や、ポリイソシアネート化合物や有機過酸化物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート化合物、多官能性化合物などの架橋剤を用いた化学的架橋処理などが用いられる。これらの架橋手段のうち、放射線照射や有機過酸化物を用いた場合、条件によっては分解反応を生じることがあり、また、高反応性のイソシアネート類や、通常の架橋反応に用いる金属塩や有機金属塩では配合後に溶液の増粘現象が生じて粘着剤層作成時の塗工作業性に劣ることがある。また、予めジアクリレートなどの多官能性のモノマーをアクリル系共重合体調製時に配合して共重合する方法も考えられるが、この場合も重合時に溶液粘度が上昇する可能性がある。従って、本発明においてはこれらの架橋剤のうち、反応性や取り扱い性の点から、三官能性イソシアネート、チタンまたはアルミニウムからなる金属アルコラート、あるいは金属キレート化合物が好適である。これらの架橋剤は、塗工、乾燥するまでは溶液の増粘現象を起こさず、極めて作業性に優れたものである。この場合の架橋剤の配合量はアクリル系共重合体100重量部に対して0.01〜2.0重量部程度である。
【0027】
本発明の経皮吸収製剤の粘着剤層に含有する経皮吸収用薬物は、その治療目的の応じて任意に選択することができ、例えばコルチコステロイド類、鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、性ホルモン剤、抗鬱剤、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤、生体医薬などの種類の薬物であって、皮膚面上に滞留するもではなく、皮下もしくは血中にまで浸透して局所作用もしくは全身作用を発揮する経皮吸収可能な薬物が使用できる。これらの薬物は必要に応じて二種以上併用することもできる。また、上記粘着剤層への均一な分散性や経皮吸収性の点から、これらの薬物のうち脂溶性薬物(溶解量0.4g以下/水100ml・常温)を用いることが好ましく、具体的にはエストラジオールの如きエストロゲンやニフェジピン、ケトプロフェン、クロニジンなどが特に好適な薬物として挙げられる。
【0028】
これらの経皮吸収用薬物の含有量は、薬物種や投与目的に応じて適宜設定することができるが、通常、粘着剤中に1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%程度の範囲で含有させる。含有量が1重量%に満たない場合は、治療や予防に有効な量の放出が期待できない場合があり、また、40重量%を超えると増量による効果の増大が期待できないので経済的にも不利であるばかりか、皮膚に対する接着性にも劣る傾向を示す。なお、本発明においては上記薬物は粘着剤中に全部が溶解している必要はなく、粘着剤への溶解度以上の薬物を含有させて未溶解状態の薬物が含有されていてもよいものである。この場合、未溶解状態の薬物は経皮吸収製剤中で含有量にバラツキがないように均質分散している必要がある。
【0029】
但し、長期間に及ぶ持続放出性の付与や単位面積当たりの含有量を増加させての放出量の増大、皮膚刺激性の軽減のための製剤の小型化などの観点からは、上記重量範囲にかかわらず含有させてもよいことは云うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
本発明の経皮吸収製剤は以上のような構成からなるものであって、架橋された粘着剤層中に経皮吸収用薬物としての経皮吸収用薬物を含有し、経皮吸収用薬物の保持基材としてはアクリル系共重合体と、これに相溶する特定の脂肪酸エステルおよびモノグリセリドを含有するものである。従って、粘着剤層には凝集力を維持しながらソフト感を付与しているので、皮膚面に貼付中の刺激が少なく、しかも剥離除去時に適用皮膚面の角質損傷などの皮膚刺激を与えることも少なく、粘着特性と低皮膚刺激性とのバランスが極めて良好で、しかも優れた薬理効果も期待できるものである。なお、皮膚面から本発明の経皮吸収製剤を痛みなく除去できる指標として、皮膚面から製剤を剥離除去した際の角質剥離量を吸光度分析した結果、ボランティアを用いた本発明品の角質剥離量は、脂肪酸エステルおよびモノグリセリドを含有しない対照品と比べて1/5〜2/3であり、対照品と比べて剥離時の痛みや皮膚接着性の点で明らかに有利なものであった。
【0031】
また、本発明の経皮吸収製剤における粘着剤層は、所謂ゲル構造体であるので、含有する経皮吸収用薬物の拡散移動での自由度が大きく放出性が良好となる。しかも、モノグリセリドの配合によって凹凸の多い皮膚面に対しても密着性が良好となって皮膚接着面積が増大し、皮膚接着力を維持しながら薬物の放出性(皮膚移行性)も向上させるものである。
【0032】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお、以下の文中で部とあるのは全て重量部を意味するものである。
【0033】
<アクリル系共重合体Aの調製>不活性ガス雰囲気下でアクリル酸2−エチルヘキシルエステル72部と、N−ビニル−2−ピロリドン25部、アクリル酸3部とを酢酸エチル中で共重合させてアクリル系共重合体Aの溶液を調製した。
【0034】
<アクリル系共重合体Bの調製>不活性ガス雰囲気下でアクリル酸2−エチルヘキシルエステル95部と、アクリル酸5部とを酢酸エチル中で共重合させてアクリル系共重合体Bの溶液を調製した。
【0035】
<アクリル系共重合体Cの調製>不活性ガス雰囲気下でアクリル酸2−エチルヘキシルエステル70部と、酢酸ビニル25部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル5部とを酢酸エチル中で共重合させてアクリル系共重合体Cの溶液を調製した。
【0036】
なお、上記にて得た各共重合体の溶液は、残存モノマーを低減させるために、乾燥後の厚みが100μmとなるように剥離紙上に塗工し、100℃で10分間乾燥させたのち、アクリル系共重合体を回収し、酢酸エチルに再溶解して使用した。
【0037】
<実施例および比較例>下記表1〜4に示す配合に従って粘着剤層形成用組成物の粘稠溶液を調製し、得られた溶液をポリエステル製セパレータ(75μm厚)上に、乾燥後の厚みが60μmとなるように塗布、乾燥して粘着剤層を作製した。次いで、この粘着剤層をポリエステル製不織布(目付け量8g/m2)とポリエステルフィルム(2μm厚)との積層フィルムの不織布側に貼り合わせて、実施例品および比較例品を作成した。
【0038】
なお、架橋剤の配合量はアクリル系共重合体の固形分100部に対して、0.4部(共重合体A)、0.15部(共重合体B)、0.3部(共重合体C)とし、上記のように支持体(積層フィルム)に貼り合わせののち、70℃で60時間加熱熟成した。
【0039】
【表1】
Figure 0003576608
【0040】
【表2】
Figure 0003576608
【0041】
【表3】
Figure 0003576608
【0042】
【表4】
Figure 0003576608
【0043】
上記各実施例および比較例にて作製した経皮吸収製剤について、以下に示す安定性試験を行い、その結果を表5〜7に示した。なお、比較例2737は、粘着剤層に凝集力がなく凝集破壊を起こし、また、比較例は粘着力が弱すぎて実用的でなかったので、下記安定性試験を行うことができなかった。
【0044】
<安定性試験>各サンプルを包装材料にて密封して、40℃、75%R.Hの加湿条件下で保存し、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月経過後の薬物含量(単位面積当り)を測定した。初期含量を100%として保存後の含量(%)を算出した。また、その際に製剤表面の外観を目視観察し、結晶が析出するなどして外観が明らかに不均一に変化したものは他の試験から除外した。
【0045】
【表5】
Figure 0003576608
【0046】
【表6】
Figure 0003576608
【0047】
【表7】
Figure 0003576608
【0048】
上記安定性試験の結果から、比較例10121518222328303438は含量安定性および外観安定性の少なくとも一方が不良であった。次に、上記安定性試験で比較的安定であった実施例品および比較例品について下記試験をさらに行い、その結果を表8および9に示した。
【0049】
<接着力試験>ベークライト板に幅24mmに裁断した帯状の各サンプルを貼付し、荷重300gのローラを1往復させて密着させたのち、180度方向に300mm/分の速度で剥離して、接着力(剥離力)を測定した。
【0050】
<皮膚接着力試験>ボランティア(5名)の下腕部内側に、12mm幅で50mm長さに裁断した各サンプルを6時間貼付したのち、180度方向に100mm/分の速度で剥離して皮膚接着力(剥離力)を測定した。但し、経皮吸収用薬物としてクロニジンを用いた実施例10〜12および比較例293536については、クロニジンのみを配合しないプラセボ製剤を作製して試験を行った。
【0051】
なお、この試験において各実施例品は、角質細胞がほとんど剥離除去されなかった。一方、各比較例品は角質細胞が剥離しており、角質細胞同士の相間強度が界面接着力よりも小さいものであることが明らかである。従って、表8および9における各比較例の数値は角質細胞同士の相間強度の値である。
【0052】
<角質剥離量>ボランティア(5名)の下腕部内側に、12mm幅で50mm長さに裁断した各サンプルを6時間貼付したのち剥離して、このサンプルを以下の染色液に24時間浸漬したのち、蒸留水で洗浄して剥離した角質細胞の染色を行った。但し、この試験に用いた染色液は支持体を構成する不織布に浸む込むので、この試験の場合には支持体を9μm厚のポリエステルフィルム単層に代えた。さらに、経皮吸収用薬物としてクロニジンを用いた実施例10〜12および比較例293536については、クロニジンのみを配合しないプラセボ製剤を作製して試験を行った。
【0053】
Figure 0003576608
【0054】
染色した各サンプルを12mm×5mmの大きさに裁断し、1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液5ml中に、これらのサンプルを一昼夜浸漬して付着した角質細胞からの色素の抽出を行い、この抽出液の吸光度(595nm)を分光光度計にて測定した。対照サンプルには皮膚面に貼付しなかったサンプルを用い、同様の抽出操作を行い、上記サンプルとの差スペクトルにより吸光度を求め、剥離した角質細胞量の比較を行った。即ち、測定した吸光度が高いほど剥離した角質細胞量が多いのである。
【0055】
なお、実体顕微鏡にて計数した剥離角質細胞数と上記吸光度との間には、良好な相関関係が認められた。
【0056】
<痛み度>5cm2の大きさに裁断した各サンプルをボランティア(5名)の上腕部内側に貼付し、1時間経過後の剥離時の痛みを測定した。痛みの評価は下記基準に基づき、その平均値を求めた。
1:痛みなし。2:痛みを感じる。3:僅かに痛い。4:痛い。5:強く痛い。
【0057】
【表8】
Figure 0003576608
【0058】
【表9】
Figure 0003576608
【0059】
上記表8および9から明らかなように、本発明品は接着力を適度に有すると共に、角質細胞の剥離量も少なく、剥離時の痛みも少ないものである。一方、比較例品は角質細胞の剥離量が多く、剥離時に痛みが伴う。なお、比較例品における皮膚接着力は皮膚面からの角質細胞の剥離を伴うことから、皮膚面との界面での接着力を示してはおらず、角質細胞の剥離強度を示すものであるので、測定値自体はさほど大きな値を示さないものである。
【0060】
上記表9に示す試験の結果から、角質細胞の剥離量が多い比較例、比較例17、比較例2526、比較例3536、および脱落の多かった比較例20を除き、比較的良好な結果を示したサンプルについて下記に示すウサギ貼付試験により血中濃度を測定した。その結果を表10〜13に示した。
【0061】
<ウサギ貼付試験>
(1)エストラジオール移行量(表10)
エスラジオールを含む経皮吸収製剤を20cm2(40mm×50mm)に裁断し、予め除毛したウサギの背部に貼付して、48時間後に剥離した。経皮吸収製剤中の貼付前後でのエストラジオールの量変化(量減少)によって、皮膚移行量を計算した。
【0062】
【表10】
Figure 0003576608
【0063】
薬物血中濃度(表11〜13)
各サンプルを予め除毛したウサギの背部に貼付して、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間の各時間経過毎に各々2ml採血し、ガスクロマトグラフィーにて血中の薬物濃度を測定した。なお、サンプルの大きさは、経皮吸収用薬物としてクロニジンを用いた製剤のみ3cm2(17.3mm角)とし、それ以外は50cm2(70.7mm角)とした。
【0064】
【表11】
Figure 0003576608
【0065】
【表12】
Figure 0003576608
【0066】
【表13】
Figure 0003576608
【0067】
上記表10〜13の結果から明らかなように、本発明品は薬物が速やかに吸収すると共に、経皮吸収性も向上するものである。

Claims (3)

  1. 支持体の片面に経皮吸収用薬物を含有する粘着剤層を形成してなる経皮吸収製剤において、粘着剤層中に(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能性単量体を必須成分とする単量体混合物を共重合してなるアクリル系共重合体と、炭素数が12〜16の高級飽和脂肪酸と炭素数が1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステルと、炭素数が8〜10の高級飽和脂肪酸とグリセリンからなるモノグリセリドと、経皮吸収用薬物(但し、イソソルビドジニトレートを除く)が含有されていると共に、粘着剤層が架橋されており、脂肪酸エステルとモノグリセリドの合計含有量が、アクリル系共重合体100重量部に対して60〜200重量部であり、脂肪酸エステルとモノグリセリドの含有比率が、1:0.05〜1:0.25であることを特徴とする経皮吸収製剤。
  2. 経皮吸収用薬物がエストロゲンである請求項1記載の経皮吸収製剤。
  3. 支持体が多孔質フィルムまたは多孔質フィルムと無孔のプラスチックフィルムとの積層フィルムであって、多孔質フィルム側に粘着剤層を形成してなる請求項1記載の経皮吸収製剤。
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