JP3572938B2 - 耐スティッキング性及び耐食性に優れた電磁鋼板 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、主としてモーターやトランス等の鉄芯材料として使用される、表面に絶縁皮膜を有する電磁鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁鋼板はモーターやトランス等の鉄芯材料として広く利用されており、通常、渦電流損失を低減するための絶縁皮膜を鋼板表面にコーティングして使用される。
モーターやトランス等の鉄芯の多くは、絶縁皮膜が形成された電磁鋼板を所定形状に打ち抜くか若しくは剪断した後、積層し、この積層体を溶接またはカシメにより固定し、必要に応じて歪取焼鈍を施した後、捲き線を施して製品となる。
【0003】
このような鉄芯用の材料である電磁鋼板の絶縁皮膜には、絶縁性が高いことに加え、皮膜密着性、溶接性、耐食性、打ち抜き性等に優れていることが要求される。さらに、歪取焼鈍が施される場合には、焼鈍時に鋼板どうしが密着(スティッキング)すると電気的短絡が生じて鉄損が増加する問題を生じることから、焼鈍時に鋼板どうしが密着しないこと、すなわち耐スティッキング性に優れていることが要求される。
【0004】
従来、このような諸特性を得るために以下のような技術が提案されている。
特開平3−240970号には、歪取焼鈍後の皮膜特性(耐焼付け性、潤滑性)の優れた電磁鋼板の製造方法として、クロム酸と、Al、Mg等の酸化物と、樹脂粒子径が0.2〜0.5μmの有機樹脂エマルジョン(アクリル、スチレン、酢酸ビニル及び/又はこれらの共重合体樹脂)及び樹脂粒子径が1〜50μmの有機樹脂エマルジョン(メチルメタアクリレート、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン等の樹脂及び/又はこれらの共重合体樹脂、架橋体樹脂)とからなる処理液を電磁鋼板の表面に塗布し、焼き付けることにより絶縁皮膜を形成する方法が示されている。
【0005】
特許第2662148号には、電磁鋼板の表面に、樹脂粒子径0.5〜3.0μmのエポキシ、スチレン、フェノール、メラミン、ポリエステル、酢酸ビニル、アクリル、シリコン系エマルジョン樹脂の1種又は2種以上と、Al、Mg、Ca、Znのクロム酸塩の1種又は2種以上を主成分とする処理剤が塗布焼付けされて、表面粗さRaが0.15〜0.6μmの絶縁皮膜が形成され、且つ、エマルジョン樹脂により表面に形成される球面状の突起物形状が直径3μm以下、高さ3μm以下である皮膜特性に優れた無方向性電磁鋼板が示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの従来技術には下記のような問題がある。
特開平3−240970号の技術は、有機樹脂エマルジョンとして粒子径0.2〜0.5μmの樹脂微粒子に加えて、所定の表面粗さを得るために粒径の大きい粗大樹脂粒子(実質的に数μm以上の粒子径を有する樹脂粒子)を使用している。このため添加した粗大樹脂粒子により耐スティッキング性は向上するものの、塩化物イオンが存在するような厳しい腐食環境中での耐食性は劣ったものとなる。また、粗大樹脂粒子の添加による樹脂粒子の凝集や皮膜中での樹脂粒子の不均一化により、皮膜特性が安定しないという問題も生じる。
【0007】
また、特許第2662148号の技術は、絶縁皮膜に所定の表面形状を与えるために0.5〜3.0μmの粒子径の有機樹脂エマルジョンを単独で使用しているが、絶縁皮膜厚が0.5〜0.6μm以下の薄膜になった場合、樹脂粒子が欠落して皮膜中に含有されにくくなり、その結果、樹脂粒子によって期待される耐スティッキング性の効果が減少するとともに、欠落部では錆が発生し易くなり、耐食性も著しく劣ったものとなる。特に、近年においてはモーター等の高効率化等の観点から絶縁皮膜は薄膜化する傾向にあり、このような薄膜の絶縁皮膜においては、特許第2662148号の技術では十分な耐スティッキング性と耐食性は得られない。
【0008】
したがって本発明の目的は、耐スティッキング性と耐食性がともに優れ、しかも、絶縁皮膜として要求される他の諸特性にも優れた絶縁皮膜を有する電磁鋼板、とりわけ、0.5〜0.6μm以下の薄膜の絶縁皮膜を形成した場合にも優れた耐スティッキング性と耐食性が得られる電磁鋼板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、無機−有機系絶縁皮膜を形成する際の無機成分に配合される有機樹脂エマルジョンの樹脂粒子径に着目し、耐スティッキング性と耐食性がともに優れた絶縁皮膜を得るための条件について種々の実験と検討を行い、その結果以下のような知見を得た。
【0010】
(1) 絶縁皮膜中に分散させる有機樹脂エマルジョンの樹脂粒子径を大きくすると耐スティッキング性は向上するが、一方で樹脂粒子径が大きくなるにしたがって耐食性は劣化する。
(2) このような問題に対して、絶縁皮膜中に分散させる有機樹脂エマルジョンとして、特定の粒子径を有する微細粒子有機樹脂エマルジョンとこれよりも大きい特定の粒子径を有する有機樹脂エマルジョンとを複合添加することにより、耐スティッキング性と耐食性がともに優れた絶縁皮膜が得られる。
【0011】
(3) また、これら複合添加する2種類の有機樹脂エマルジョンを特定の割合で配合した場合に、特に優れた耐スティッキング性と耐食性が得られる。
(4) 絶縁皮膜中の無機成分と有機成分の比率を最適化し、且つ無機成分の一部として硼酸及び/又は硼酸塩を添加することにより、耐スティッキング性と耐食性はさらに向上する。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下のような構成からなることを特徴とする。
【0012】
[1] 電磁鋼板の表面に、無水クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩の中から選ばれる少なくとも1種と、2価又は3価の金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩の中から選ばれる少なくとも1種を含む無機系水溶液(a)と、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、樹脂粒子径が0.01〜0.14μmである有機樹脂エマルジョン(b1)と、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、樹脂粒子径が0.6〜1.5μmである有機樹脂エマルジョン(b2)とを主成分とし、且つ有機樹脂エマルジョン(b 1 )と有機樹脂エマルジョン(b 2 )の樹脂固形分の配合比が、重量比で有機樹脂エマルジョン(b 1 )/有機樹脂エマルジョン(b 2 )=70/30〜90/10、CrO 3 換算量での無機成分(a)100重量部に対する有機樹脂エマルジョン(b 1 )と有機樹脂エマルジョン(b 2 )の樹脂固形分での合計の配合量が20〜50重量部に調整された処理液を塗布し焼付することにより形成された膜厚0.2〜2.0μmの絶縁皮膜を有することを特徴とする耐スティッキング性及び耐食性に優れた電磁鋼板。
【0013】
[2] 電磁鋼板の表面に、無水クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩の中から選ばれる少なくとも1種と、2価又は3価の金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩の中から選ばれる少なくとも1種を含む無機系水溶液(a)と、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、樹脂粒子径が0.01〜0.14μmである有機樹脂エマルジョン(b1)と、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、樹脂粒子径が0.6〜1.5μmである有機樹脂エマルジョン(b2)と、硼酸及び/又は硼酸塩と、有機還元剤とを主成分とし、且つ有機樹脂エマルジョン(b 1 )と有機樹脂エマルジョン(b 2 )の樹脂固形分の配合比が、重量比で有機樹脂エマルジョン(b 1 )/有機樹脂エマルジョン(b 2 )=70/30〜90/10、CrO3換算量での無機成分(a)100重量部に対する有機樹脂エマルジョン(b1)と有機樹脂エマルジョン(b2)の樹脂固形分での合計の配合量が20〜50重量部、硼酸及び/又は硼酸塩の合計の配合量が5〜60重量部、有機還元剤の配合量が10〜80重量部に調整された処理液を塗布し焼付することにより形成された膜厚0.2〜2.0μmの絶縁皮膜を有することを特徴とする耐スティッキング性及び耐食性に優れた電磁鋼板。
【0014】
[3] 上記[1]又は[2]の電磁鋼板において、有機樹脂エマルジョン(b2)の樹脂粒子径が0.6〜1.0μmであることを特徴とする耐スティッキング性及び耐食性に優れた電磁鋼板。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細をその限定理由とともに説明する。
本発明において、絶縁皮膜を形成する基板となる鋼板は、モーターやトランス等の電気機器に利用される鉄芯用の電磁鋼板である。このような電磁鋼板としては、無方向性電磁鋼板や方向性電磁鋼板が一般的であるが、これ以外にも軟鋼板、ステンレス鋼板、その他の特殊鋼板等でもよく、基板となる鋼板は特に限定されない。本発明の効果は、これら何れの鋼板を基板とした場合でも得ることができる。
【0017】
また、基板となる電磁鋼板は、その表面に予め亜鉛系めっきまたはその他金属めっき皮膜、化成処理皮膜等の表面処理の1種または2種以上を施したものでもよく、本発明において電磁鋼板の表面とは、これら表面処理皮膜を有する場合にはその最上層皮膜の表面を言うものとする。
【0018】
本発明の電磁鋼板の表面に形成される絶縁被膜は、無水クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩の中から選ばれる少なくとも1種と、2価又は3価の金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩の中から選ばれる少なくとも1種を含む無機系水溶液(a)に、樹脂粒子径が0.01〜0.14μmである特定の樹脂エマルジョンの1種又は2種以上からなる有機樹脂エマルジョン(b1)、樹脂粒子径が0.6〜1.5μmである特定の樹脂エマルジョンの1種又は2種以上からなる有機樹脂エマルジョン(b2)を配合し、さらに必要に応じて硼酸及び/又は硼酸塩と有機還元剤を配合した処理液を塗布し焼付することにより形成される皮膜である。
【0019】
処理液中の無機系水溶液(a)は、無水クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩の中から選ばれる少なくとも1種と、2価又は3価の金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩の中から選ばれる少なくとも1種を含む無機系水溶液である。
クロム酸塩及び重クロム酸塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、モリブデン、亜鉛、アルミニウム等の塩を用いることができる。
【0020】
また、水溶液中に溶解させる2価又は3価の金属の酸化物としては、例えばMgO、CaO、ZnO等が、水酸化物としてはMg(OH)2、Ca(OH)2、Zn(OH)2等が、炭酸塩としてはMgCO3、CaCO3、ZnCO3等が挙げられ、これらを無水クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩の少なくとも1種を主剤に用いた水溶液に溶解させて、無機系水溶液とする。
これらの無機成分によりクロム化合物を含む無機−有機系絶縁皮膜を形成することができる。
【0021】
上記無機成分を含む処理液中には、樹脂粒子径が異なる有機樹脂エマルジョン(b1)と有機樹脂エマルジョン(b2)が配合される。
前記有機樹脂エマルジョン(b1)は、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、且つ樹脂粒子径が0.01〜0.14μmの樹脂エマルジョンであり、また、前記有機樹脂エマルジョン(b2)は、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、且つ樹脂粒子径が0.6〜1.5μmの樹脂エマルジョンである。本発明では、このような大きさが異なる特定粒子径の2種類の有機樹脂エマルジョンを複合添加することに大きな特徴がある。
【0022】
樹脂エマルジョンとして上記有機樹脂エマルジョン(b1)を単独で用いた場合には、積層後の歪取焼鈍時に絶縁皮膜中の有機樹脂自体の凹凸による物理的効果が得られず、歪取焼鈍時に原板自体の粗さに起因した凸部にのみ応力が集中し、この応力集中と焼鈍時の熱により絶縁皮膜が破壊され、スティッキングを生じてしまう。一方、樹脂エマルジョンとして上記有機樹脂エマルジョン(b2)を単独で用いた場合には、特に絶縁皮膜厚が0.5〜0.6μm以下の薄膜となると樹脂粒子が皮膜中に取り込まれにくくなり、有機樹脂エマルジョン(b2)で期待される耐スティッキング性の改善効果が著しく低下し、また、皮膜中に有機樹脂エマルジョン(b2)の樹脂粒子が取り込まれても、これが容易に欠落するために皮膜欠陥部が生じ、この結果、耐食性と絶縁性が低下してしまう。
【0023】
これに対して有機樹脂エマルジョン(b1)と有機樹脂エマルジョン(b2)を複合添加した場合には、耐スティッキング性と耐食性がともに優れた絶縁皮膜を得ることができる。このように大きさが異なる特定粒子径の2種類の有機樹脂エマルジョンを複合添加することにより優れた特性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、有機樹脂エマルジョン(b1)と併用することにより有機樹脂エマルジョン(b2)が皮膜中に取り込まれやすくなるためであると考えられる。
【0024】
有機樹脂エマルジョン(b1)及び有機樹脂エマルジョン(b2)は、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなる。これ以外の有機樹脂エマルジョンでは、クロム酸系無機水溶液中での安定性が悪いため、同水溶液中に配合後短時間後で劣化し、ゲル状ブツの発生や処理液全体のゲル化を起こし、実用上問題があるため好ましくない。
【0025】
有機樹脂エマルジョン(b1)の樹脂粒子径が0.14μm超では、上述したような薄膜の絶縁皮膜を形成する際に、有機樹脂エマルジョン(b2)の樹脂粒子を皮膜中に取り込む効果が十分に得られず、このため耐スティッキング性と耐食性が劣る。また、有機樹脂エマルジョン(b1)のより好ましい樹脂粒子径は0.01〜0.14μmであり、これにより特に優れた耐スティッキング性が得られる。
【0026】
また、有機樹脂エマルジョン(b2)の樹脂粒子径が0.6μm未満では耐スティッキング性が劣り、一方、1.5μm超では十分な耐食性が得られず、また耐スティッキング性も劣る傾向がある。また、特に優れた耐食性と耐スティッキング性が必要とされる場合には、有機樹脂エマルジョン(b2)の樹脂粒子径は0.6〜1.0μmとすることが望ましい。
【0027】
上記有機樹脂エマルジョン(b1)と有機樹脂エマルジョン(b2)の処理液中での配合量は、CrO3換算量での無機成分(a)100重量部に対して樹脂固形分の合計で20〜50重量部とする。有機樹脂エマルジョン(b1)と有機樹脂エマルジョン(b2)の合計の配合量が20重量部未満では、これら複合添加される有機樹脂エマルジョンによる耐スティッキング性、耐食性および密着性の改善効果が十分に得られず、また、皮膜中での有機樹脂の割合も少なくなるため打ち抜き性も劣る。一方、配合量が50重量部を超えると耐食性が劣化するため好ましくない。
【0028】
また、有機樹脂エマルジョン(b1)/有機樹脂エマルジョン(b2)の樹脂固形分の配合比は、特に耐スティッキング性及び耐食性の観点から重量比で70/30〜90/10とする。この配合比が70/30未満(有機樹脂エマルジョン(b2)の割合が30%を超える)では耐食性及び耐スティッキング性が劣る傾向があり、一方、90/10を超える(有機樹脂エマルジョン(b2)の割合が10%未満)と耐スティキング性が劣る傾向があるため好ましくない。
【0029】
また、処理液中に含まれる6価Crイオンを還元して皮膜を不溶化するために、処理液中に有機還元剤を添加することが好ましい。通常、有機還元剤としてはポリエチレングリコール、エチレングリコール、ショ糖等の多価アルコールが用いられる。この有機還元剤の配合量は、CrO3換算量での無機成分(a)100重量部に対して10〜80重量部とすることが好ましい。有機還元剤の配合量が10重量部未満では未還元の6価Crイオンが残存するため皮膜の耐水性が劣り、一方、80重量部を超えると処理液中で還元反応が進行し、処理液がゲル化してしまう。
【0030】
また、処理液中に硼酸及び/又は硼酸塩を添加すると耐スティッキング性がさらに向上するため好ましい。この硼酸及び/又は硼酸塩の合計の配合量は、CrO3換算量での無機成分(a)100重量部に対して5〜60重量部とすることが好ましい。硼酸及び/又は硼酸塩の合計の配合量が5重量部未満では耐スティッキング性の改善効果が十分に得られず、一方、60重量部を超えると耐食性が劣化するため好ましくない。
【0031】
また、処理液中には以上述べた主成分の他に、皮膜の耐食性や耐熱性等の向上を目的としてMg、Ca、Al又はZnのリン酸塩の1種又は2種以上、シリカ等の酸化物等の1種又は2種以上を配合することができ、これら添加成分の合計の配合量がCrO3換算量での無機成分(a)100重量部に対して20重量部以下であれば本発明の基本的な効果には何ら影響はない。
【0032】
本発明の電磁鋼板の絶縁皮膜は、上記の処理液を鋼板表面に塗布し、焼付することにより形成される。絶縁皮膜の膜厚は0.2μm〜2.0μmとする。本発明の効果は、特に絶縁皮膜の膜厚が0.6〜0.5μm以下の薄膜の場合においても問題なく得られるという利点がある。本発明において絶縁皮膜の膜厚とは、電磁鋼板表面から皮膜の最表層までの平均的な厚さを指すが、皮膜に極端な凹凸のある場合は、電磁鋼板表面から皮膜最表層の凸部までの厚さと電磁鋼板表面から皮膜最表層の凹部までの厚さの平均値とする。
【0033】
絶縁皮膜の膜厚が0.2μm未満では絶縁性、耐スティッキング性、耐食性が劣り、一方、膜厚が2.0μmを超えると占積率や溶接性が劣る。特に好ましい膜厚は0.3〜1.0μmである。
なお、絶縁皮膜の形成方法は、通常、上記処理液をロールコーター等で電磁鋼板表面に塗布した後、熱風乾燥炉やインダクションヒーターで焼き付ける方法が採られる。
【0034】
【実施例】
表1〜表6に示す絶縁皮膜形成用の処理液(No.1〜No.41)を調整した。これらの処理液は、無水クロム酸の水溶液にMgOを溶解した無機系水溶液(さらに、No.27以外は硼酸も含む)に対して表1〜表6に示す有機樹脂エマルジョンを添加して調整した。これら処理液を板厚0.5mmの電磁鋼板の表面に所定膜厚になるようにロールコーターにより塗布した後、到達板温280℃で焼き付け、絶縁皮膜を形成した。
このようにして得られた電磁鋼板について、耐スティッキング性、耐食性、皮膜密着性、耐臭気性、打ち抜き性を評価するため下記の試験を行なった。その結果を表7〜表9に示す。
【0035】
(a)耐スティッキング性
鋼板を48mmφに打ち抜いてこれを11枚積層し、締め付け圧力40kgf/cm2で締め付けた状態で焼鈍(800℃×2時間、N2ガス雰囲気中)を行った。焼鈍後、締め付けを解除し、板/板間の何箇所でスティックが生じているかを調べ、スティック発生箇所の数で耐スティッキング性を評価した。その評価基準は以下の通りである。
◎ :スティック発生0箇所
○+:スティック発生1〜2箇所
○ :スティック発生3〜4箇所
△ :スティック発生5〜7箇所
× :スティック発生8箇所以上
【0036】
(b)耐食性
鋼板を70mm×150mmのサイズに剪断し、この供試材の裏面及びエッジ部をシールした後、塩水噴霧試験を15時間行ない、試験後の赤錆発生面積率により耐食性を評価した。その評価基準は以下の通りである。
◎:赤錆発生面積率20%以下
○:赤錆発生面積率20%超、40%以下
△:赤錆発生面積率40%超、60%以下
×:赤錆発生面積率60%超
【0037】
(c)皮膜密着性
(1)歪取焼鈍無し
供試材に10mmφの曲げ加工を施した後、その曲げ部にテープ剥離試験を実施し、テープへの剥離皮膜の有無を目視で判定することにより皮膜密着性を評価した。
(2)歪取焼鈍有り
歪取り焼鈍(750℃×2時間、N2ガス雰囲気中)を施した供試材に10mmφの曲げ加工を施した後、その曲げ部にテープ剥離試験を実施し、テープへの剥離皮膜の有無を目視で判定することにより皮膜密着性を評価した。
これらの試験による評価基準は以下の通りである。
【0038】
(d)耐臭気性
供試材を打抜き後、積層し、この積層体の端面をTIG溶接し、その際に発生する臭気(溶接ガス)の程度を10名の評価者により評価した。その評価基準は以下の通りである。
◎:不快臭を感じた人0名
○:不快臭を感じた人1名〜3名
△:不快臭を感じた人4名〜5名
×:不快臭を感じた人6名以上
【0039】
(e)打ち抜き性
金型材質SKD−1の角型ダイスを用い、クリアランス6%で軽油系の打抜油を使用して連続打ち抜き試験を行い、かえり高さが50μmに達するまでの打抜き回数を調べた。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【0048】
【表9】
【0049】
【発明の効果】
以上述べた本発明の電磁鋼板によれば、耐食性及び耐スティッキング性がともに優れ、しかも、皮膜密着性、耐臭気性、打ち抜き性等の特性も良好である。また、特に0.6〜0.5μm以下の薄膜の絶縁被膜を形成した場合にも優れた耐スティッキング性と耐食性が得られる。
Claims (3)
- 電磁鋼板の表面に、無水クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩の中から選ばれる少なくとも1種と、2価又は3価の金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩の中から選ばれる少なくとも1種を含む無機系水溶液(a)と、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、樹脂粒子径が0.01〜0.14μmである有機樹脂エマルジョン(b1)と、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、樹脂粒子径が0.6〜1.5μmである有機樹脂エマルジョン(b2)とを主成分とし、且つ有機樹脂エマルジョン(b 1 )と有機樹脂エマルジョン(b 2 )の樹脂固形分の配合比が、重量比で有機樹脂エマルジョン(b 1 )/有機樹脂エマルジョン(b 2 )=70/30〜90/10、CrO 3 換算量での無機成分(a)100重量部に対する有機樹脂エマルジョン(b 1 )と有機樹脂エマルジョン(b 2 )の樹脂固形分での合計の配合量が20〜50重量部に調整された処理液を塗布し焼付することにより形成された膜厚0.2〜2.0μmの絶縁皮膜を有することを特徴とする耐スティッキング性及び耐食性に優れた電磁鋼板。
- 電磁鋼板の表面に、無水クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩の中から選ばれる少なくとも1種と、2価又は3価の金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩の中から選ばれる少なくとも1種を含む無機系水溶液(a)と、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、樹脂粒子径が0.01〜0.14μmである有機樹脂エマルジョン(b1)と、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ベオバ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂の各樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種又は2種以上からなり、樹脂粒子径が0.6〜 1.5μmである有機樹脂エマルジョン(b2)と、硼酸及び/又は硼酸塩と、有機還元剤とを主成分とし、且つ有機樹脂エマルジョン(b 1 )と有機樹脂エマルジョン(b 2 )の樹脂固形分の配合比が、重量比で有機樹脂エマルジョン(b 1 )/有機樹脂エマルジョン(b 2 )=70/30〜90/10、CrO3換算量での無機成分(a)100重量部に対する有機樹脂エマルジョン(b1)と有機樹脂エマルジョン(b2)の樹脂固形分での合計の配合量が20〜50重量部、硼酸及び/又は硼酸塩の合計の配合量が5〜60重量部、有機還元剤の配合量が10〜80重量部に調整された処理液を塗布し焼付することにより形成された膜厚0.2〜2.0μmの絶縁皮膜を有することを特徴とする耐スティッキング性及び耐食性に優れた電磁鋼板。
- 有機樹脂エマルジョン(b2)の樹脂粒子径が0.6〜1.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐スティッキング性及び耐食性に優れた電磁鋼板。
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JP12397098A JP3572938B2 (ja) | 1998-04-17 | 1998-04-17 | 耐スティッキング性及び耐食性に優れた電磁鋼板 |
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JP12397098A JP3572938B2 (ja) | 1998-04-17 | 1998-04-17 | 耐スティッキング性及び耐食性に優れた電磁鋼板 |
Publications (2)
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