JP3568321B2 - 空気入りタイヤ及びそのタイヤ成形用金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤ及びそのタイヤ成形用金型に関わり、更に詳しくは、リムフランジを保護する隆起状突起を設けた空気入りタイヤにおいて、該隆起突起部に起因して発生するエア溜まりを抑制するようにした空気入りタイヤ及びそのタイヤ成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、偏平タイヤは、タイヤ断面高さが低くなるため、縁石や穴で装着したリムのフランジを損傷し易い。そこで、従来、その対策として、ビードベースからトレッド部側に22mmの点からタイヤ最大幅点の範囲にあるサイドウォール部にタイヤ周方向に沿って延びる環状の隆起状突起をそれぞれ突設し、リムフランジを保護するようにした提案がある。
【0003】
上記隆起状突起は、一般に、グリーンタイヤ成型時に、サイドウォール部からビード部にかけてその肉厚を隆起する分だけ厚くしておき、金型による形成時に、その突起部を隆起させて成型するようにしている。しかし、その隆起状突起は、リムフランジを保護するためにはリムフランジを完全にカバーするように大きく突出させる必要があり、加硫時に大きなボリューム変化が発生する。
【0004】
特に、ボリューム変化の大きい隆起状突起のリムフランジと対面するタイヤ内径側斜面部側には、エア溜まりが発生し易く、それによって、ゴム流れ不良によるクラック等の加硫故障を招く原因となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、リムフランジを保護する隆起状突起に起因する加硫時のエア溜まりの発生を抑制し、加硫故障を低減することが可能な空気入りタイヤ及びそのタイヤ成形用金型を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、左右のサイドウォール部にそれぞれリムフランジを保護する隆起状突起をタイヤ周方向に延設した空気入りタイヤにおいて、前記隆起状突起のリムフランジと対面するタイヤ内径側斜面を、その下端から上端にかけて延びる微小な凹部と凸部とを交互に配置した微小凹凸面に形成し、そのタイヤ内径側斜面上端にタイヤ周方向に連続して延びる微小凸部を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のタイヤ成形用金型は、サイドウォール部成形面にリムフランジを保護する隆起状突起を成形する成形凹部を設け、前記隆起状突起のタイヤ内径側斜面を成形する成形凹部の内径側壁面に該内径側壁面の開口側端から底側端にかけて延びる微小な第1エア抜き溝を微小な所定間隔を置いて設けて該内径側壁面を微小凹凸面に形成し、前記内径側壁面の底側端に、セットされたタイヤの周方向に連続して延びる微小な第2エア抜き溝を前記第1エア抜き溝に連通するようにして設け、該第2エア抜き溝に外部にエアを導出可能なエア抜き路を配設したことを特徴とする。
【0008】
このように本発明では、リムフランジを保護するために設けた隆起状突起を、そのリムフランジと対面するタイヤ内径側斜面をその下端から上端にかけて延びる微小な凹部と凸部とを交互に配置した微小凹凸面に形成し、そのタイヤ内径側斜面上端にタイヤ周方向に連続して延びる微小凸部を設ける構成とすることにより、この空気入りタイヤを成形する金型を、ボリューム変化の大きい隆起状突起のリムフランジと対面するタイヤ内径側斜面部側に溜まるエアを抜き出す専用のエア抜き溝を設ける構成にすることができる。そのため、リムフランジを保護する隆起状突起に起因するエア溜まりの発生を大幅に抑えて、加硫故障を大きく低減することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤの一例を示し、1はトレッド部、2はビード部、3はサイドウォール部である。左右のビード部2に連接してタイヤ径方向外側に左右のサイドウォール部3が延設され、この左右のサイドウォール部3間にタイヤ周方向に延在するトレッド部1が設けられている。
タイヤ内側には2層のカーカス層4A,4Bが配設されている。左右のビード部2にはビートコア5がそれぞれ埋設され、そのビートコア5の外周にはビードフィラー6が設けられている。内側のカーカス層4Aの両端部4aがビードフィラー6を挟み込むようにしてビートコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。
【0010】
外側のカーカス層4Bは、その両端部4bがビードコア5の周りにタイヤ外側から内側に巻き下ろされている。トレッド部1のカーカス層外周側には、複数のベルト層7が埋設されている。ベルト層7の外周側にはベルトカバー層8が配設されている。トレッド部表面1Aには、タイヤ周方向に延びる複数の主溝9が形成されている。
【0011】
ビードベースからトレッド部側に22mmの点D(タイヤ径方向において)からタイヤ最大幅点Eの範囲にある左右のサイドウォール部3のビード部側外表面には、装着されたリムXの左右のフランジX1を保護する隆起状突起10がそれぞれ設けられている。この隆起状突起10は、タイヤ周方向に沿って環状に延設されている。タイヤ子午線断面形状が、略台形状に形成され、リム組み時、隆起状突起10はリムフランジ最大幅位置pよりタイヤ幅方向外側に突出し、リムフランジX1を完全にカバーしている。
【0012】
本発明では、上述した構成の空気入りタイヤにおいて、隆起状突起10のリムフランジX1と対面するタイヤ内径側斜面10aが、ビード部2の外表面2a側と接するその下端10a1から上端10a2にかけて、図2示すように連続的に延びる微小な幅と深さを有する直線状の凹部mと凸部nとを交互に配置した微小凹凸面に形成されている。上端10a2には、タイヤ周方向に連続して延びる環状の微小凸部10a3が設けられている。
【0013】
図3は、上記空気入りタイヤを成形するための金型を示す。この金型Mは、上下一対の環状に形成された上型M1と下型M2とからなる2分割構造になっている。上型M1には、タイヤ赤道面より一方側のトレッド部を成形するトレッド部成形面11Aと、一方側のビード部2を成形するビード部成形面12Aと、一方のサイドウォール部3を成形するサイドウォール形成面13Aとが設けられている。
【0014】
下型M2には、タイヤ赤道面より他方側のトレッド部を成形するトレッド部成形面11Bと、他方側のビード部を成形するビード部成形面12Bと、他方のサイドウォール部を成形するサイドウォール部形成面13Bとが設けられている。上型M1及び下型M2の両トレッド部成形面11A,11Bには、タイヤ周方向に延びる主溝9を成形するための環状の主溝成形用突起部14が複数設けられている。成形されたタイヤのビードベースからトレッド部側に22mmの点Dからタイヤ最大幅点Eまでの範囲を成形するサイドウォール部成形面13A,13Bのビード部成形面側には、上記隆起状突起10を成形するための成形凹部15が設けられている。この成形凹部15は、セットされたタイヤの周方向に延び、環状に形成されている。
【0015】
成形凹部15は、底面15aとその両壁面15b,15cとを有し、ビード部成形面12A,12B側に続く内径側壁面15cが隆起状突起10のタイヤ内径側斜面10aを成形する成形面になっている。
この内径側壁面15cは、ビード部成形面12A,12B側と接する開口側端15c1から底面15aと接する底側端15c2にかけて、図3に示すように連続して延びる微小な幅と深さを有する直線状の第1エア抜き溝xが微小な所定間隔を置いて形成され、内径側壁面15cは微小凹凸面になっている。底側端15c2が位置する底面15aには、セットされたタイヤの周方向に連続して延びる微小な幅と深さを有する環状の第2エア抜き溝yが設けられている。
【0016】
各第1エア抜き溝xは、底側端15c2に設けられた第2エア抜き溝yに連通している。第2エア抜き溝yには、外部にエアを導出可能な複数のエア抜き用のベントホール16が所定の間隔を置いて配置されている。なお、上型M1及び下型M2には、従来同様に、適所にベントホールが形成され、エア抜きが行えるようになっている。
【0017】
このような構成の金型Mによれば、グリーンタイヤをセットし、ブラダーを用いて通常の方法により加硫した際に、ボリューム変化の大きい隆起状突起10のリムフランジX1と対面するタイヤ内径側斜面10a部側に溜まろうとするエアは、タイヤ内径側斜面10aを成形する成形凹部15の内径側壁面15cに形成された専用の第1エア抜き溝xに沿って底側端15c2に設けられた専用の第2エア抜き溝yに逃げ、そこからベントホール16を介して外部に排出することができる。
そのため、ボリューム変化の大きい隆起状突起10のリムフランジX1と対面するタイヤ内径側斜面部側にエア溜まりが発生し難くなるので、それによって、ゴム流れを良好にしクラック等の加硫故障の発生を大きく抑えることができる。従って、加硫故障の大幅な低減を図ることができる。
【0018】
第1エア抜き溝xと第2エア抜き溝yを通ってエアが抜けると、その両溝x,yには、加硫中のゴムが流れ込むため、加硫が終了してでき上がった空気入りタイヤは、図1,2に示すように、隆起状突起10のリムフランジX1と対面するタイヤ内径側斜面10aが上記のような凹凸面に形成され、そのタイヤ内径側斜面上端10a2にタイヤ周方向に連続して延びる微小凸部10a3を設けた構成になる。
【0019】
本発明では、上記金型Mにおいて、成形凹部15の内径側壁面15cを微小凹凸面にする方法としては、好ましくは、ローレット加工により行うのがよい。その使用番手としては、JISに規定された#12〜#42にすることができる。当然のことながら、ローレット加工に代えて、通常の機械加工により微小凹凸面を形成するようにしてもよい。その場合、微小凹凸面を形成する第1エア抜き溝xの溝深さは0.2〜1.0mm、その溝幅は0.5〜2.0mm、第1エア抜き溝xの配置間隔としては0.5〜2.0mmにすることができる。
【0020】
上記第1エア抜き溝xは、平面視において、環状に形成された各型M1,M2の径方向(セットされたグリーンタイヤの径方向)に沿って配列したり、或いは、その径方向に対して多少傾斜させるようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、第2エア抜き溝yに集まったエアを外部へ逃がすエア抜き路としてベントホール16を用いたが、それに限定されず、従来公知のエア抜き手段であればよく、例えば、スリット等のエア抜き路を設けるようにしてもよい。
【0021】
また、上記金型Mは、上型M1と下型M2とからなる上下一対の2つ割り構造の場合について説明したが、タイヤの一方のサイドウォール部を成形する上型と、他方のサイドウォール部を成形する下型、及びタイヤのトレッド部と両ショルダー部とを一体的に成形する複数のセクターとビード部分を成形する上下のビードリングを有するセクショナル型の金型であってもよい。
図5は、本発明の空気入りタイヤの他の例を示す。図1の空気入りタイヤにおいて、断面台形状に形成した隆起状突起10に代えて、隆起状突起10のタイヤ子午線断面形状を略3角形状に形成したものである。このような隆起状突起10であっても、そのタイヤ内径側斜面10aを上記と同様に凹部mと凸部nとを交互に配置した微小凹凸面に形成し、その上端10a2にタイヤ周方向に連続して延びる環状の微小凸部10a3を設けるようにしてもよい。
【0022】
なお、本発明の空気入りタイヤ及び金型における微小とは、溝や凹部の場合、その深さが0.2〜1.0mm、その表面における幅が0.5〜2.0mm、凸部の場合にはその高さが0.2〜1.0mm、その基端部における幅が0.5〜2.0mmの場合を言う。
【0023】
【実施例】
タイヤサイズを255/40ZR17で共通にし、隆起状突起のタイヤ内径側斜面を図2の微小凹凸面に形成し、そのタイヤ内径側斜面上端にタイヤ周方向に連続して延びる微小凸部を設けた図1の構成の本発明タイヤ1と、本発明タイヤ1において、凹凸部の延在する方向をタイヤ径方向に対し斜め(30°)にした本発明タイヤ2、本発明タイヤ1において、タイヤ内径側斜面上端に微小凸部を設けていない比較タイヤ1と微小凹凸面を形成してない比較タイヤ2、及び隆起状突起に微小凹凸面と微小凸部を設けていない従来タイヤとをそれぞれ各100本作製した。
【0024】
なお、金型の成形凹部の内径側壁面に形成する微小凹凸面は、#30のローレット加工により施した。また、第2エア抜き溝は断面半円弧状に形成され、その半径は0.5mmである。
各試験タイヤにおいて、隆起状突起のタイヤ内径側斜面に発生したクラック等の加硫故障の発生状況を観察し、故障発生度合いを調べたところ、表1に示す結果を得た。なお、表1に示す結果は、タイヤ100本中に、故障が発生したタイヤの本数である。
【0025】
【表1】
表1から明らかなように、本発明タイヤは、リムフランジを保護する隆起状突起に起因するエア溜まりの発生を抑制し、加硫故障を大幅に改善することができるのが判る。
【0026】
【発明の効果】
上述したように本発明は、リムフランジを保護する隆起状突起を設けた空気入りタイヤにおいて、隆起状突起のリムフランジと対面するタイヤ内径側斜面を、その下端から上端にかけて延びる微小な凹部と凸部とを交互に配置した微小凹凸面に形成し、そのタイヤ内径側斜面上端にタイヤ周方向に連続して延びる微小凸部を設けたので、隆起状突起に起因するエア溜まりの発生を大きく抑え、加硫故障を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図である。
【図2】図1のAーA矢視拡大図である。
【図3】図1の空気入りタイヤを成形する本発明のタイヤ成形用金型の一例を示す要部断面図である。
【図4】図3のBーB矢視拡大図である。
【図5】本発明の空気入りタイヤの他の例を示すタイヤ子午線半断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部 2 ビード部
3 サイドウォール部 10 隆起状突起
10a タイヤ内径側斜面 10a1 下端
10a2 上端 10a3 微小凸部
12A,12B ビード部成形面 15 成形凹部
15c 内径側壁面 15c1 開口側端
15c2 底側端 16 ベントホール(エア抜き路)
M 金型 M1 上型
M2 下型 X リム
X1 リムフランジ m 凹部
n 凸部 x 第1エア抜き溝
y 第2エア抜き溝
Claims (4)
- 左右のサイドウォール部にそれぞれリムフランジを保護する隆起状突起をタイヤ周方向に延設した空気入りタイヤにおいて、
前記隆起状突起のリムフランジと対面するタイヤ内径側斜面を、その下端から上端にかけて延びる微小な凹部と凸部とを交互に配置した微小凹凸面に形成し、そのタイヤ内径側斜面上端にタイヤ周方向に連続して延びる微小凸部を設けた空気入りタイヤ。 - リム組み時、前記隆起状突起をリムフランジ最大幅位置pよりタイヤ幅方向外側に突出するようにした請求項1記載の空気入りタイヤ。
- サイドウォール部成形面にリムフランジを保護する隆起状突起を成形する成形凹部を設け、前記隆起状突起のタイヤ内径側斜面を成形する成形凹部の内径側壁面に該内径側壁面の開口側端から底側端にかけて延びる微小な第1エア抜き溝を微小な所定間隔を置いて設けて該内径側壁面を微小凹凸面に形成し、前記内径側壁面の底側端に、セットされたタイヤの周方向に連続して延びる微小な第2エア抜き溝を前記第1エア抜き溝に連通するようにして設け、該第2エア抜き溝に外部にエアを導出可能なエア抜き路を配設したタイヤ成形用金型。
- 前記成形凹部の内径側壁面にローレット加工を施して、微小凹凸面を形成した請求項3記載のタイヤ成形用金型。
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