JP3562149B2 - 車両用冷却液輸送ホース - Google Patents
車両用冷却液輸送ホース Download PDFInfo
- Publication number
- JP3562149B2 JP3562149B2 JP17622296A JP17622296A JP3562149B2 JP 3562149 B2 JP3562149 B2 JP 3562149B2 JP 17622296 A JP17622296 A JP 17622296A JP 17622296 A JP17622296 A JP 17622296A JP 3562149 B2 JP3562149 B2 JP 3562149B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- hose
- layer
- rubber composition
- rubber
- vulcanization
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Rigid Pipes And Flexible Pipes (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
Description
【技術分野】
本発明は、自動車等の各種車両における、エンジンとラジエータとの接続や、エンジンとヒーターコアとの接続等に用いられる車両用冷却液輸送ホースの改良に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来より、自動車等の各種車両において、エンジンとラジエータとの間や、エンジンとヒーターコアとの間を接続して、水を主成分とする冷却液、例えば、水にエチレングリコール及び防錆剤等を混合した冷却液(ロング・ライフ・クーラント=LLC)を適量混合したものを流通させる車両用冷却液輸送ホースが知られている。そして、この種のホースの形成材料としては、一般に、EPDM等の耐水性に優れるエチレン−プロピレン系共重合体ゴムが用いられている。また、通常、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムには、カーボンブラック等の充填剤、プロセスオイル等の軟化剤、加硫剤、加硫促進剤等が添加され、それらを混練加工して得られたゴム配合組成物を用いて、目的とする冷却液輸送ホースが成形されているのである。
【0003】
また、そのような冷却液輸送ホースを与えるゴム組成物にあっては、カーボンブラック等の充填剤やプロセスオイル等の軟化剤の添加量が少ない場合、押出加工時の寸法安定性が悪くなり、また平滑な押出肌が得難くなり、更には製品コストが高くなる等の問題を生じるところから、従来では、それらの問題を回避するために、カーボンブラック等の充填剤を多量に配合、混練せしめて、ゴム組成物を調製する手法(高充填配合)が採用されてきた。
【0004】
而して、近年、そのような高充填配合のゴム組成物を用いて得られる車両用冷却液輸送ホースを使用するうちに、ホースの内面側に多数のスジ(糸状乃至樹枝状の細かい亀裂)が入り、甚だしい場合には、ホースの内面側から外面側に到達するような亀裂が入って、冷却液の液漏れが発生する問題が、指摘されてきている。その原因とするところは、最近の自動車等の車両においては、電気関連部品の装着率が上昇しており、そのため迷走電流が発生し易い環境となっていることに加えて、車両の軽量化や防錆性能の向上を目的として、アルミ材が多用化されてきたことにより、異種金属接触による局部電池の形成が起こり易い環境となっていること等が挙げられる。一方、ホースにおいては、カーボンブラック等の充填剤を多量に混練した高充填配合のゴム組成物から冷却液輸送ホースが形成されていることにより、ホース全体としての体積固有抵抗が低くなり、導電性の高いホースとなっているために、そのような冷却液輸送ホースに電気が流れることによって、ホースと冷却液中の化合物が電気化学的に反応して、次第にホースの劣化を招くことによるものと、考えられている。
【0005】
このため、本発明者は、先に、特開平6−262728号公報において、単層ホース若しくは多層ホースのうちの少なくとも最内層を、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とする、体積固有抵抗が104 Ωcm以上であるゴム材料にて形成してなる車両用冷却液輸送ホースを明らかにした。このようなホース構成によれば、少なくとも冷却液が接触するホース内面側の部位について、その体積固有抵抗を104 Ωcm以上に高めることによって、電流の発生し易い環境下においても、電気が流れ難く、ホース内面側におけるホースと冷却液との間の電気化学的な反応が効果的に防止され得ることとなり、以てそのような現象に起因するスジや亀裂の発生、更には液漏れ等の問題を有利に解消することが出来、電流の流れ易い車両内部においても、長期的に安定した性能を発揮することが可能となったのである。
【0006】
ところで、そのような冷却液輸送ホースの最内層を構成するゴム材料の体積固有抵抗を104 Ωcm以上とするには、全体のゴム配合量中に占めるカーボンブラックの配合量の割合をコントロールすることが最も効果的であるが、加工性や製品物性を考慮して、前記したカーボンブラックの高充填配合を行なうと、必然的に体積固有抵抗が低くなるところから、目的とする104 Ωcm以上の体積固有抵抗となるようにカーボンブラックの配合量を減量すると、ポリマー使用量の増大による材料コストの上昇に加えて、強度等の物性の低下、更には押出肌や押出加工性の悪化等の問題が新たに惹起されるようになるのである。
【0007】
また、かかる冷却液輸送ホースの最内層を構成するゴム材料としては、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムの中でも、コスト等の実用性の面から、通常、硫黄加硫系が有利に用いられる。そのような硫黄加硫系においては、ZnOが加硫促進助剤として用いられているところから、そのようなZnOが加硫反応においてZn化合物を生成し、そして、それから生じるZnイオンが電気化学的な反応の起点及び促進要因となり、そのため、ZnOの添加は、前記した電気劣化に対して不利であることが判明したのである。そこで、可能であれば、ZnOを加硫系より排除することが好ましいのであるが、通常の硫黄加硫においては、ZnOの添加は必須とされ、ZnOなしでは架橋(加硫)反応が成立しなくなるのである。
【0008】
加えて、加硫剤としての硫黄と共に、加硫促進助剤としてのZnOや加硫促進剤としての硫黄化合物を用いる、通常の硫黄加硫系では、それら成分の未反応過剰残渣が存在すると共に、反応残渣として種々のZn化合物やS化合物が生成して、それらは実際の冷却液と接触する使用環境下において、ホース中より冷却液中へ引き出されるようになるのである。また、一部のものについては、冷却液中の化合物と反応して、新たな化合物を生成したりする。このように、冷却液中に引き出された化合物及び新たに生成する化合物が、車両用冷却システムにおいて、フィルタの目詰まり等の悪影響をもたらしているのである。
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、電流の流れ易い車両内部においても、ホースの電気化学的な劣化反応が効果的に防止され、長期的に安定した性能を有する車両用冷却液輸送ホースを、強度を代表とする諸物性の低下や加工性の悪化を伴うことなく提供し、更にはその耐抽出性を改善することにある。
【0010】
【解決手段】
そして、そのような課題を解決するために、本発明は、単層ホース、若しくは多層ホースのうちの少なくとも最内層が、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とするゴム組成物を加硫して得られる、体積固有抵抗が104 Ωcm以上であるゴム材料にて形成されてなる車両用冷却液輸送ホースにして、前記ゴム組成物が、ヨウ素吸着量:10〜30mg/g、DBP吸油量:110ml/100g以上のカーボンブラックを36〜41重量%の割合において含有すると共に、該ゴム組成物の加硫が、ZnOを加硫系に存在せしめることなく、有機過酸化物を用いて行なわれていることを特徴とする車両用冷却液輸送ホースを、その要旨とするものである。
【0011】
このように、本発明は、先ず、ホース最内層を構成するゴム材料を与えるゴム組成物に添加されるカーボンブラックとして、ヨウ素吸着量:10〜30mg/g、DBP(ジブチルフタレート)吸油量:110ml/100g以上にて規定されるストラクチャの発達したソフトカーボンを用いるようにしたものであり、これによって、強度を代表とする諸物性の低下及び加工性等の悪化を伴うことなく、ホースの電気劣化性を効果的に改善せしめ得たのであるが、それは、次のような事実に基づくものである。即ち、添加せしめられるカーボンブラックの粒子径が大きい程、換言すればヨウ素吸着量が低い程、電気抵抗の向上に効果はあるものの、材料強度や硬度が低下する傾向にあるのであり、また同様な粒子径であっても、そのストラクチャを大きくする、即ちDBP吸油量が増大することで、材料強度や硬度を向上させつつ、高い電気抵抗を保つことが可能であるとの知見に基づいて、本発明にあっては、所定の低いヨウ素吸着量と高いDBP吸油量を有するカーボンブラックを用いるようにしたものであって、それにより、ホース最内層材料の電気抵抗(体積固有抵抗)を有利に104 Ωcm以上と為し得たのである。
【0012】
また、本発明では、ゴム材料に使用するポリマーは、通常のエチレン−プロピレン系共重合体ゴムを用いるものであるところから、加工コストの上昇等の実用上の問題が何等惹起されることはなく、加えて、積層せしめられる他のゴム層との間の接着性の問題等の制約も受けることが少ないのであり、更に、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とするゴム組成物が、ZnOを加硫系に存在せしめることなく、有機過酸化物を用いてパーオキサイド加硫せしめられるものであるところから、硫黄加硫系を採用した場合に惹起される未反応過剰残渣の存在や各種のZn化合物やS化合物の生成がなく、そのために、それらの冷却液への抽出の問題を解消して、耐抽出性が著しく改善され得ると共に、ZnOを用いるものでないところから、Znイオンが生ずるようなこともなく、それ故に、そのようなZnイオンに基づくところの電気劣化の問題を効果的に解消せしめ、加えて、得られるパーオキサイド加硫物は、通常の硫黄加硫物に比べて架橋点の結合エネルギが大きいところから、ホースへの流電によって引き起こされる電気化学反応に対しても、より有利となるのである。
【0013】
なお、かかる本発明に従う車両用冷却液輸送ホースの好ましい態様の一つによれば、前記ゴム組成物は、前記カーボンブラックを30重量%以上、36重量%未満の割合において含有すると共に、更に、クレー及びタルクのうちの少なくとも何れか一方からなる白色充填剤を6〜16重量%の割合において含有している。ここで配合せしめられる白色充填剤としてのクレーやタルクは、ゴム材料の体積固有抵抗を高めるものであって、そのために、その充填によって、カーボンブラックの配合量の割合は相対的に減少せしめられることとなるのである。
【0014】
【発明の実施の形態】
ところで、本発明に従う車両用冷却液輸送ホースは、単層、多層の何れの構成であってもよいが、少なくとも、冷却液に接するホースの内面側の部位が、ストラクチャの発達した所定のカーボンブラックを用いて、体積固有抵抗が104 Ωcm以上とされたゴム材料にて形成されている必要がある。かかるゴム材料は、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とするゴム組成物を所定の加硫系にて加硫して得られるものである。
【0015】
そして、本発明にあっては、かかるエチレン−プロピレン系共重合体ゴムに配合せしめられて、ゴム組成物を構成するカーボンブラックとして、ヨウ素吸着量が10〜30mg/gであり且つDBP(ジブチルフタレート)吸油量が110ml/100g以上であるものを用い、しかも、その配合量が、ゴム組成物中において36〜41重量%の割合となるようにするものであり、これによって、初めて、強度を代表とする諸物性の低下及び押出肌や押出加工性等の悪化を伴うことなく、目的とするホースの電気劣化性を効果的に改善せしめ得ることとなったのである。
【0016】
これに対して、配合せしめられるカーボンブラックのヨウ素吸着量が10mg/gよりも低いものの使用の場合にあっては、電気抵抗の向上には効果が認められるものの、材料強度や硬度等の物性が低下し、また押出肌や押出加工性が悪化して、充分なホース特性を実現することが困難となるのであり、一方、ヨウ素吸着量が30mg/gを越えるようなカーボンブラックを配合せしめた場合にあっては、電気抵抗の向上効果を充分に奏せしめることが困難となり、目的とする体積固有抵抗を実現することが困難となる。
【0017】
また、カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸油量が110ml/100gよりも低い場合には、強度や硬度、更には加工性の改善を充分に図り得なくなるところから、本発明にあっては、DBP吸油量が110ml/100g以上のカーボンブラックを用いる必要があるのである。なお、そのようなDBP吸油量の上限は、一般に500程度とされる。
【0018】
さらに、そのような本発明に従うカーボンブラックの配合量に関しても、そのゴム組成物中の含有量が36重量%よりも少なくなると、強度等の物性の低下や加工性の悪化等の問題を惹起し、本発明の目的を良好に達成し得なくなるのであり、一方、41重量%を越えるような割合になると、電気抵抗が低下して、目的とする104 Ωcm以上の体積固有抵抗を与えることが困難となる。
【0019】
なお、上記のヨウ素吸着量及びDBP吸油量を満たすカーボンブラックは、従来から種々市販されてきており、例えばショウブラックIP200(昭和キャボット)、シーストG−FY(東海カーボン)、旭#55−HS(旭カーボン)等を挙げることが出来、それらの中から適宜に選択、使用されるものである。
【0020】
また、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムには、かかる本発明に従うカーボンブラックと共に、パーオキサイド加硫を実現すべく、加硫剤として有機過酸化物が配合せしめられ、更に必要に応じて、コエージェントや、プロセスオイル等の軟化剤、老化防止剤、加工助剤等が添加せしめられて、ゴム組成物が構成されることとなるが、特に、本発明にあっては、そのようなゴム組成物には、ZnOが添加せしめられることはないのである。
【0021】
ここにおいて、かかる加硫剤として用いられる有機過酸化物は、一般的なゴム組成物におけるパーオキサイド加硫(架橋)に通常使用されているものであって、具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられ、それらの中より、加硫(架橋)条件等に合わせて適宜に選択されることとなる。そして、このような有機過酸化物は、一般に、EPDMの100重量部に対して、0.1〜10重量部程度の割合において用いられることとなる。
【0022】
加えて、コエージェントは、加硫(架橋)助剤とも称されるものであって、モノマー架橋助剤とポリマー架橋助剤があり、有利にはモノマー架橋助剤が用いられることとなるが、具体的には、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、エチレンジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−メチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,2′−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、オリゴエステルアクリレート、アルミニウム(メタ)アクリレート、ジンク(メタ)アクリレート、マグネシウム(メタ)アクリレート、カルシウム(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルクロレンデート、ジビニルベンゼン、2−ビニルピリジン、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、p−キノンジオキシム、p,p′−ジベンゾイルキノンジオキシム、1,2−ポリブタジエン、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられ、そして、そのようなコエージェントは、EPDMの100重量部に対して、0.1〜10重量部程度の割合で配合されることとなる。
【0023】
また、本発明においては、上記の如きゴム組成物に対して、白色充填剤、特にクレー(中でも焼成クレー)及びタルクのうちの少なくとも何れか一方からなる白色充填剤が、有利に添加、配合せしめられることとなる。この特定の白色充填剤は、それ自身の体積固有抵抗が非常に高いものであるところから、その配合によって相対的にカーボンブラックの配合割合が減少し、電気抵抗が向上せしめられることとなる。尤も、かかる白色充填剤は、カーボンブラックに比べ、補強効果が少ないため、電気抵抗や強度、硬度等の物性、更には加工性を考慮して、その配合量が調整され、特に本発明にあっては、そのような白色充填剤は、合計量において、6〜16重量%の割合において配合せしめられることとなる。そして、そのような割合の白色充填剤が配合された場合にあっては、カーボンブラックの配合量は30重量%以上、36重量%未満の割合とされるのである。
【0024】
勿論、本発明にあっては、かかる白色充填剤の添加は必須でなく、また6重量%よりも少ない白色充填剤の添加を排除するものでも決してないが、そのような白色充填剤の少量添加や不添加の場合にあっては、前記したカーボンブラックの配合量は、有利には36〜41重量%とされ、これによって、本発明の目的が有利に達成されることとなる。
【0025】
そして、このようにして調製された、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムとして、特定のヨウ素吸着量及びDBP吸油量を有するカーボンブラックの所定量を含有し、且つパーオキサイド加硫のための架橋剤としての有機過酸化物を含有し、更に必要に応じて、クレー及び/又はタルクからなる白色充填剤を所定量含有するが、ZnOは含有することのないゴム組成物を用いて、少なくともホース最内層が形成されることにより、目的とするホースの成形が行なわれ、そして、有機過酸化物を用いるパーオキサイド加硫における通常の条件下での加硫操作が実施されて、加硫が行なわれることによって、特性に優れた車両用冷却液輸送ホースが形成されることとなるのである。即ち、ホースの電気化学的劣化が効果的に阻止され得ることとなると共に、耐抽出性も効果的に向上せしめられ、また引張強度も10MPa以上、有利には11MPa以上と為され、更に押出肌も滑らかな、押出加工性の良好なホースが得られるのである。
【0026】
ところで、図1〜図5には、本発明に従う車両用冷却液輸送ホースの代表的な例の幾つかが示されているが、それら各種の冷却液輸送ホースにおいて、その少なくとも最内層が、上記せる如き、本発明に従うゴム組成物からなるゴム材料にて形成されることとなるのである。即ち、先ず、図1は、本発明の適用される最も基本的な構造である、単層ホース10を示しており、そこにおいては、ホース全体が、本発明に従うゴム組成物からなるゴム材料で形成されているのである。一方、多層ホースの具体例の一つが、図3に示されており、そこにおいて、多層ホース14は、本発明に従うゴム材料にて形成された内層16を有する一方、かかる内層16上に、通常のEPDM等のゴム材料を用いて、一体的に形成された外層18を有する構造を呈するものであって、このような多層ホースの場合には、少なくともその最内層が、前記本発明に従うゴム材料で形成されることとなるのである。
【0027】
また、図2には、内部に補強糸層12を有する多層ホース14の一例が示されており、そこでは、補強糸層12の内側に位置する内層16と補強糸層12の外側に位置する外層18とが、何れも、前記本発明に従うゴム材料で形成された構造となっている。更に、図4に示される例にあっては、前記本発明に従うゴム材料にて内層16が形成されている一方、該内層16上に、補強糸層12が設けられ、更にその上に、通常のEPDM等のゴム材料にて外層18が形成された構造とされている。更にまた、図5に示される例にあっては、図4に示される多層ホース14の内層16と補強糸層12との間に、通常のEPDM等のゴム材料からなる中間層17が設けられてなる構造とされている。
【0028】
このように、本発明にあっては、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、各種のホース構造が適宜に採用され得るものであり、そしてそのような各種のホース層構成は、その用途に応じて適宜に選択されるものであり、それによって、各層構成に伴う所定の効果を得ることが可能である。
【0029】
なお、何れのホース構造の場合にも、ホースの通電に対する耐久性を有利に向上させる上において、前記本発明に従うゴム組成物からなるゴム材料で形成する層(10、16)の厚みを0.3mm以上、好ましくは0.5mm以上とすることが、推奨される。
【0030】
また、補強糸層12は、通常のゴムホースに用いられているものがそのまま採用され、例えばポリエステル繊維、アラミド繊維等の合成繊維を主体とする糸のブレード編みやスパイラル編み等によって形成される。また、外層18及び中間層17の形成材料には、耐候性、耐熱性、耐透水性等に優れる材料を使用することが好ましく、例えば通常のEPDMやEPM等のゴム材料等が好適に用いられることとなる。但し、前述したように、内層16に対する接着性との関係で、内層16の加硫形態、加硫条件に応じて、中間層17及び外層18の形成材料には、硫黄加硫物若しくはパーオキサイド加硫物が適宜に選択使用されることとなる。
【0031】
そして、そのような本発明に従う車両用冷却液輸送ホースは、従来より公知の各種手法に従って製造することが出来、例えば、図4の如き多層ホース14は、以下のようにして、順次、積層形成することにより製造することが出来る。
【0032】
(a) 先ず、内層形成用の本発明に従うゴム組成物、即ちEPDMを主体とし、ヨウ素吸着量:10〜30mg/g、DBP吸油量:110ml/100g以上のカーボンブラックを所定割合において含有すると共に、加硫剤としての有機過酸化物を含むが、ZnOは含むことのない、加硫によって体積固有抵抗が104 Ωcm以上であるゴム材料を与えるゴム組成物を調製し、それを押出成形機より押し出すことにより、内層16を与える管状体を成形する。
【0033】
(b) 次いで、内層16の外周面に、必要に応じて接着剤(ゴム糊等)を塗布した後、繊維補強糸をブレード編み若しくはスパイラル編みする等の手法によって、補強糸層12を形成する。
【0034】
(c) その後、かかる形成された補強糸層12の外周面に、必要に応じて所定の接着剤(ゴム糊等)を塗布した後、その上に外層形成用のゴム組成物を押し出して、目的とする外層18を所定厚さに形成する。
【0035】
(d) そして、このようにして得られた積層管を加硫(架橋)せしめて、一体化することにより、目的とするホースを得ることが出来るのである。なお、この際の加硫条件としては、通常、140〜170℃程度の温度、及び20〜90分程度の加硫時間が採用されることとなる。
【0036】
尤も、かかる多層ホース14における内層16は、上述の如く押出成形手法にて形成され得る他、前記本発明に従うゴム組成物をゴム糊にして、ホース内面に塗布することによっても、形成することが可能である。また、従来と同様に、加硫に際して、例えば、金属マンドレルにホースを挿入する等して、その曲り管成形加工を行なうことも、適宜に採用されるところである。
【0037】
【実施例】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、そのような実施例の記載によって、本発明が、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0038】
先ず、下記表1及び表2に示される各配合組成に従って、各々の材料を秤り取り、均一に混練せしめて、各種のゴム組成物を調製した。なお、有機過酸化物としてはジクミルパーオキサイドを用い、またコエージェントとしてはジメタクリル酸エチレングリコールを用いた。次いで、その得られた各々のゴム組成物を用いて、公知の手法に従い、性能評価用のテストピースと共に、図1に示される如き単層構造のホース10(内径:30mm、厚さ:5.5mm)を作製した。なお、この単層ホース10の押出成形に際しては、各ゴム組成物の押出加工性を評価した。また、それら得られた各種のテストピース及び単層ホースには、通常の加硫操作が施された。具体的には、テストピースについては、プレス加硫操作を採用し、またホースの加硫には、スチーム加硫操作を採用して、何れも、160℃×45分条件下にて加硫を行なった。
【0039】
そして、かくして得られた各々のテストピースについて、その引張り強度、硬度及び体積固有抵抗を測定する一方、各単層ホースについては、それぞれ、図6に示される如き評価試験機に取り付け、通電に対する耐久試験(ブラボライザー試験)を実施した。なお、その試験条件としては、各ホース内に水/ロング・ライフ・クーラント(LLC)=50/50で調節した冷却液を内容積の75%になるように充填し、試験機の両端間に12Vの直流電圧を印加して、100℃の雰囲気下で336時間経過させた。しかる後、ホースを試験機より取り外して、ホース断面を観察することにより、評価した。また、抽出試験は、上記の水/ロング・ライフ・クーラント(LLC)=50/50の冷却液100mlをガラス容器に入れ、その中にテストピースの30gを投入し、88℃×96時間の熱処理を行なった後、遠心分離にかけ、沈殿物が安定した後に、その量を計測し、○:沈殿物なし、×:沈殿物有り、××:多量に沈殿物有りの基準にて評価した。以上の結果を併せて、下記表3に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
かかる表3の結果の対比から明らかなように、本発明例No.1〜7の如く、ヨウ素吸着量:10〜30mg/g、DBP吸油量:110ml/100g以上のカーボンブラックを30〜41重量%の割合において含有するが、ZnOは含有しないゴム組成物を用いて、パーオキサイド加硫にて、体積固有抵抗が104 Ωcm以上とされたものにあっては、引張り強度等の物性が高く、また押出加工性においても優れていると共に、抽出試験においては、優れた耐抽出性を示し、更にブラボライザー試験においても、何等の異常も認められてはいない。
【0044】
これに対して、比較例No.1〜No.7に示される如く、加硫系にZnOを存在せしめたり、硫黄加硫系にて加硫せしめたりした場合にあっては、耐抽出性が著しく劣るようになるのであり、またカーボンブラックのヨウ素吸着量が、本発明にて規定される範囲から外れるようになると、引張り強度や硬度等の物性や押出加工性が悪化したり、電気抵抗が低下して、体積固有抵抗が104 Ωcm以下となってしまい、ホース内面に亀裂が発生する問題を惹起することが認められ、またカーボンブラックのDBP吸油量が、本発明の範囲外となっても、引張り強度等の物性の向上や押出加工性の向上は充分に図られ得ず、更に、カーボンブラックの配合量が30重量%よりも少なくなっても、そのような物性や押出加工性を充分に向上せしめることは困難であることが認められる。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては、少なくともホース最内層が、EPDM材料から主として構成される、体積固有抵抗が104 Ωcm以上であるゴム材料にて形成されるようにして、電流の発生し易い環境に置かれても、電気が流れ難く、ホース内面側におけるホースと冷却液との間の電気化学的な反応が効果的に防止され得るようにした、車両用冷却液輸送ホースにおいて、そのようなゴム材料を与えるゴム組成物に配合されるカーボンブラックとして、ヨウ素吸着量:10〜30mg/gであり、DBP吸油量:110ml/100g以上のものを所定割合において含有せしめると共に、加硫系にZnOを存在せしめることなく、有機過酸化物を用いたパーオキサイド加硫を行なうことによって、強度等の諸物性の低下、更には加工性等の悪化を何等伴うことなく、かかる冷却液輸送ホースの電気劣化性を効果的に改善せしめ、更には耐抽出性を著しく向上せしめ得たものであり、そこに、本発明の大きな技術的意義が存するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う車両用冷却液輸送ホースの一例を示す横断面図である。
【図2】本発明に従う車両用冷却液輸送ホースの別の例を示す横断面図である。
【図3】本発明に従う車両用冷却液輸送ホースの更に別の例を示す横断面図である。
【図4】本発明に従う車両用冷却液輸送ホースの他の例を示す横断面図である。
【図5】本発明に従う車両用冷却液輸送ホースの更に他の例を示す横断面図である。
【図6】実施例において用いた評価試験機の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
10 単層ホース
12 補強糸層
14 多層ホース
16 内層
17 中間層
18 外層
Claims (2)
- 単層ホース、若しくは多層ホースのうちの少なくとも最内層が、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とするゴム組成物を加硫して得られる、体積固有抵抗が104 Ωcm以上であるゴム材料にて形成されてなる車両用冷却液輸送ホースにして、
前記ゴム組成物が、ヨウ素吸着量:10〜30mg/g、DBP吸油量:110ml/100g以上のカーボンブラックを36〜41重量%の割合において含有すると共に、該ゴム組成物の加硫が、ZnOを加硫系に存在せしめることなく、有機過酸化物を用いて行なわれていることを特徴とする車両用冷却液輸送ホース。 - 単層ホース、若しくは多層ホースのうちの少なくとも最内層が、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムを主体とするゴム組成物を加硫して得られる、体積固有抵抗が104 Ωcm以上であるゴム材料にて形成されてなる車両用冷却液輸送ホースにして、
前記ゴム組成物が、ヨウ素吸着量:10〜30mg/g、DBP吸油量:110ml/100g以上のカーボンブラックを30重量%以上、36重量%未満の割合において含有し、且つ、クレー及びタルクのうちの少なくとも何れか一方からなる白色充填剤を6〜16重量%の割合において含有すると共に、該ゴム組成物の加硫が、ZnOを加硫系に存在せしめることなく、有機過酸化物を用いて行なわれていることを特徴とする車両用冷却液輸送ホース。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17622296A JP3562149B2 (ja) | 1996-07-05 | 1996-07-05 | 車両用冷却液輸送ホース |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17622296A JP3562149B2 (ja) | 1996-07-05 | 1996-07-05 | 車両用冷却液輸送ホース |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1019173A JPH1019173A (ja) | 1998-01-23 |
JP3562149B2 true JP3562149B2 (ja) | 2004-09-08 |
Family
ID=16009769
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17622296A Expired - Fee Related JP3562149B2 (ja) | 1996-07-05 | 1996-07-05 | 車両用冷却液輸送ホース |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3562149B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3733742B2 (ja) * | 1998-05-08 | 2006-01-11 | 東海ゴム工業株式会社 | 水系媒体輸送ホース |
KR100512883B1 (ko) * | 1998-11-07 | 2005-10-26 | 코리아카본블랙 주식회사 | 고무보강성이 우수하고 고농도배합이 가능한 카본블랙 |
US6619329B2 (en) | 2000-10-03 | 2003-09-16 | Tokai Rubber Industries, Ltd. | Hose |
JP2013155270A (ja) * | 2012-01-30 | 2013-08-15 | Tokai Rubber Ind Ltd | ホース用ゴム組成物およびそれを用いたホース |
JP2017207106A (ja) * | 2016-05-17 | 2017-11-24 | 横浜ゴム株式会社 | ホース用ゴム組成物及びホース |
WO2023248936A1 (ja) * | 2022-06-22 | 2023-12-28 | Nok株式会社 | ゴム組成物 |
-
1996
- 1996-07-05 JP JP17622296A patent/JP3562149B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH1019173A (ja) | 1998-01-23 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR0128095B1 (ko) | 경화성 고무 조성물 | |
JPH0637576B2 (ja) | 歯付きベルト | |
WO2018130197A1 (zh) | 橡胶组合物及加工方法与应用,及生产阻燃制品的方法 | |
JPH05271475A (ja) | 加硫性ゴム組成物 | |
EP3822313B1 (en) | Highly insulated rubber composition, processing method therefor, and uses thereof | |
JP3562149B2 (ja) | 車両用冷却液輸送ホース | |
JPH10180941A (ja) | ゴム積層体 | |
JP5728284B2 (ja) | 水系ホース用ゴム組成物およびそれを用いた水系ホース | |
JP2005050666A (ja) | 燃料電池用ホース材料およびそれを用いてなる燃料電池用ホース | |
EP1243602B1 (en) | Rubber, rubber composition, and crosslinked object | |
DE602004012505T2 (de) | Gummischlauchmaterial | |
US6388015B1 (en) | Rubber composition, electric wire coating material, and electric wire | |
JP3591550B2 (ja) | 温水シール用加硫性ゴム組成物 | |
JP3209524B2 (ja) | 加硫性ゴム組成物 | |
WO2018130190A1 (zh) | 一种橡胶基电导非线性绝缘材料及其加工方法 | |
JPH04337185A (ja) | 複層ゴムホース | |
JP2809051B2 (ja) | 車両用冷却液輸送ホース | |
JP3733742B2 (ja) | 水系媒体輸送ホース | |
EP0383926B1 (en) | High-pressure hose | |
JP3624519B2 (ja) | ゴム組成物および耐熱電線被覆材 | |
JPH10212384A (ja) | パッキン用ゴム組成物およびゴムパッキン | |
JP6040283B1 (ja) | ケーブル接続部用保護部材およびケーブル接続部 | |
KR100711229B1 (ko) | 냉각기 호스용 고무 조성물 | |
JP3873885B2 (ja) | 燃料電池用ホース材料およびそれを用いてなる燃料電池用ホース | |
JP3624533B2 (ja) | ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040511 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040524 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080611 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090611 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090611 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100611 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110611 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110611 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120611 Year of fee payment: 8 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130611 Year of fee payment: 9 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |