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JP3480767B2 - 薄膜キャパシタ - Google Patents

薄膜キャパシタ

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JP3480767B2
JP3480767B2 JP22815895A JP22815895A JP3480767B2 JP 3480767 B2 JP3480767 B2 JP 3480767B2 JP 22815895 A JP22815895 A JP 22815895A JP 22815895 A JP22815895 A JP 22815895A JP 3480767 B2 JP3480767 B2 JP 3480767B2
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thin film
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polarization
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周一 小松
久美 奥和田
伸 福島
隆 川久保
純誠 堤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】本発明は、半導体記憶装置などに用いられ
る薄膜キャパシタに係わり、特にエピタキシャル強誘電
体薄膜を利用した薄膜キャパシタに関する。
【従来の技術】
【0003】近年、メモリセルのキャパシタに強誘電体
薄膜を使用した半導体記憶装置(強誘電体メモリ)の開
発が行われており、一部では既に実用化されている。強
誘電体メモリは不揮発性であり、電源を落とした後も記
憶内容が失われず、しかも強誘電体薄膜の膜厚が十分薄
い場合には自発分極の反転が速く、DRAM(揮発性メ
モリ)並みに高速の書き込み,読み出しが可能である等
の特徴を有する。さらに、1ビットのメモリセルを1つ
のトランジスタと1つの強誘電体キャパシタで作成する
ことができるため、大容量化にも適している。
【0004】また最近、強誘電体メモリをDRAM動作
させる方法も検討されている。これは強誘電体薄膜の残
留分極を通常の動作中は反転させず、DRAMのメモリ
セルのキャパシタと同様に使用して、機器の電源を落と
す前にだけ強誘電体薄膜の残留分極を利用して不揮発性
メモリとして動作させるというものである。この技術
は、強誘電体メモリの最大の問題と考えられている強誘
電体薄膜の疲労、即ち分極反転を繰り返すに従って強誘
電性が劣化する現象を回避し得る有効な方法である。
【0005】ここで、強誘電体メモリに適した強誘電体
薄膜には、残留分極が大きいこと、残留電極の温度依存
性が小さいこと、分極反転の繰り返しに対する劣化(疲
労)が小さいこと、残留分極の長時間保持が可能である
こと(リテンション)などが必要である。また、強誘電
体メモリをDRAMとしても動作させる場合には、これ
らに加えてリーク電流が小さいことが必要である。
【0006】現在、上述したような強誘電体薄膜に用い
られる誘電体材料としては、主としてジルコン酸チタン
酸鉛(PZT)が用いられている。PZTは、ジルコン
酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)の
固溶体であるが、ほぼ1対1のモル比で固溶したものが
自発分極が大きく、低い電界でも反転することができ、
記憶媒体として優れていると考えられている。またPZ
Tは、強誘電相と常誘電相の転移温度(キュリー点)が
ほぼ300℃以上と比較的高いため、通常の電子回路が
使用される温度範囲(120℃以下)では、記憶された
内容が熱によって失われる心配は少ない。
【0007】しかしながら、PZTの良質な薄膜は以前
より成膜が難しいことが知られている。その理由は第一
に、PZTの主成分である鉛(Pb)は500℃以上で
蒸発しやすく、結果的に成膜時における組成の正確な制
御が難しいためである。また第二の理由として、PZT
はペロブスカイト型結晶構造を形成した時に初めて強誘
電性を示すが、成膜条件によってはペロブスカイト型結
晶構造の代わりに、強誘電性を示さないパイロクロア型
結晶構造が非常に得られやすいことが挙げられる。即
ち、一般にペロブスカイト型結晶構造を有するPZTの
薄膜を成膜するには約500℃以上程度の温度が必要で
あるが、温度を上げると今度はPbが蒸発してPZTが
所望の組成がずれてしまうという問題が生じる。
【0008】また、最近ではBi層状ペロブスカイト化
合物の一種であるBiSrTaなどに関する研
究が、強誘電体メモリなどへの応用を目指して盛んに行
われている。しかしながら、BiはPbと同様に低融点
の元素であるにも拘わらず、ヒステリシスを得るために
は十分な結晶化が必要であり、そのため高温(700℃
以上)で熱処理を施すことによりBiが蒸発する、或い
はBiが電極その他の中に拡散するなどの問題は避けら
れない。また、結晶的に異方性の強い材料であるにも拘
わらず、無配向の多結晶膜で利用しなければならない場
合には、微細化したときの強誘電特性のばらつきが懸念
されている。
【0009】このようにPZT薄膜やBi層状化合物薄
膜の良質な膜を再現性良く作成することは難しいにも拘
わらず、現在メモリの記憶媒体として広く検討されてい
る理由は、PZTやBi系化合物以外にメモリに適当な
強誘電体材料が見出されていないためである。
【0010】PZT以外では、チタン酸バリウム(Ba
TiO)が代表的な強誘電体として知られている。B
aTiOは、PZTと同じペロブスカイト型構造を持
ち、キュリー温度は約120℃であることが知られてい
る。Pbと比べるとBaは蒸発しにくいので、BaTi
の薄膜作成においては組成の制御が比較的容易であ
る。また、BaTiOを結晶化した場合には、ペロブ
スカイト型以外の(例えばパイロクロア型などの)結晶
構造をとることは殆どない。
【0011】これらの長所にも拘わらず、BaTiO
の薄膜キャパシタが強誘電体メモリの記憶媒体としてさ
ほど検討されていない理由として、PZTと比べて残留
分極が小さく、しかも残留分極の温度依存性が大きいこ
とがあげられる。この原因はBaTiO固有のキュリ
ー温度が比較的低い(約120℃)ことにある。キュリ
ー温度Tcとは、強誘電相から常誘電相へ相転移する、
強誘電体材料に固有な温度であり、たとえ室温で強誘電
性を示す材料でもキュリー温度より高温では強誘電性を
示さない。
【0012】このため、BaTiOを用いた薄膜キャ
パシタを利用して強誘電体メモリを作成した場合、何ら
かの理由で高温(120℃程度)に晒された場合に、記
憶内容が失われる恐れがあるばかりでなく、通常電子回
路が使用される温度範囲(85℃以下)でも残留分極の
温度依存性が大きく、動作が不安定である。従って、従
来よりBaTiOからなる強誘電体薄膜を使用した薄
膜キャパシタは、強誘電体メモリの記憶媒体としての用
途には適さないと考えられていた。
【0013】これに対して、最近Pt/MgO単結晶基
板の上にエピタキシャル成長した膜厚60nmのBaT
iO膜において、キュリー温度が200℃以上に上昇
するという報告がなされている(文献:飯島賢二他、応
用物理、第62巻第12号(1993),P1250〜
1251)。
【0014】この文献によれば、このような現象が生じ
るのは、Ptの格子定数に合わせるようにしてエピタキ
シャル成長したBaTiOペロブスカイト格子におい
てはa軸が縮み、c軸長が伸びるためであろうと考えら
れている。しかしながらこの文献では、このような現象
を観測しているのは膜厚60nm以下のBaTiO
おいてであり、これより厚い膜では(臨界膜厚より大き
くなるため)ミスフィット転移により、本来の格子定数
に戻ってしまうとしている。
【0015】一方、強誘電体膜膜は、膜厚が1μm以下
の領域では一般に薄くなればなるほど残留分極が小さく
なる傾向があるといわれている。実際、上記文献で作成
したBaTiOエピタキシャル膜では、100nm以
下の膜では残留分極が2〜3μC/cm以下であるこ
とが報告されている。従って、膜厚が60nm以下の領
域では、仮にキュリー温度を上昇させることができたと
しても、強誘電体薄膜としては、実用的な残留分極が得
られない状況である。
【0016】以上述べた理由から、従来チタン酸バリウ
ムの薄膜キャパシタが、仮にキュリー温度をエピタキシ
ャル効果により高くすることができたとしても、強誘電
体メモリの記憶媒体として使用されることは難しいと考
えられてきた。
【発明が解決しようとする課題】
【0017】上述したような従来の強誘電体エピタキシ
ャル薄膜における問題点に対して本発明者等は、下部電
極(例えばPt)の格子定数に比較的近い格子定数を持
つ誘電体材料(例えば、BaSr1―xTiO)を
選択し、かつまたRFマグネトロンスパッタリング法と
いう成膜過程でミスフィット転位が比較的入りにくい成
膜方法を採用することにより、膜厚200nm程度と比
較的厚い膜厚であるにも拘わらず、エピタキシャル効果
によって得られる本来の格子定数よりも膜厚方向に格子
定数(c軸)が伸び、面内方向の格子定数(a軸)が縮
んだ状態を保つことができることを見出し、その結果と
して強誘電体のキュリー温度Tcを高温側にシフトさ
せ、室温領域で大きな残留分極を示し、かつ85℃程度
まで温度を上げても十分大きな残留分極を保持できる強
誘電体薄膜を実現可能であることを確認している。
【0018】例えば、下部電極として酸化されにくいP
t(格子定数a=0.39231nm)を使用し、誘電
体としてチタン酸バリウムストロンチウム(BaSr
1―xTiO,以下BSTと略記する)の組成領域x
=0.30〜0.90を用いることにより、本来室温で
は強誘電性を示さないはずの組成領域(x≦0.7)で
も強誘電性が発現し、またもともと室温で強誘電性を示
す組成領域(x>0.7)においては、本来室温以上に
あるキュリー温度がさらに上昇するという、実用上好ま
しい強誘電特性を実現できることを実験的に確認してい
る。
【0019】ところが、本発明者らのその後の実験か
ら、この系すなわち、下部電極としてPt、誘電体とし
てBSTエピタキシャル膜を用い、強誘電性を発現、或
いは強誘電性を強化した強誘電体薄膜の場合、不揮発性
メモリの記憶媒体として用いる際には、次のような欠点
があることが明らかになった。即ち、Baの量が少ない
領域、例えばx=0.5の組成を選んだ場合には、エピ
タキシャル効果により室温で強誘電的なD−Eヒステリ
シス曲線が観測されるものの、図1(a)に示すよう
に、その残留分極の値が0.08C/m程度と小さ
く、しかもヒステリシスの角型が悪い。このように角型
の悪いヒステリシス特性をもつ強誘電体薄膜を不揮発性
メモリに用いた場合には、“0”と“1”の判別がノイ
ズに埋もれてしまいやすく、安定動作が難しいことが予
想される。
【0020】一方、残留分極を大きくする目的でBaの
量が多い組成領域、例えばBST(x=0.9)やBa
TiOを選んだ場合には、図1(b)に示すように、
室温で0.2C/mと大きな残留分極が得られ、角型
も良いものが得られるものの、ヒステリシスの中心が正
電圧(上部電極を正とする)側に大きくずれてしまう。
このような強誘電体薄膜を不揮発性メモリに用いた場合
には、一方向の分極だけが極度に安定化し、他方向の分
極を長時間保持することが困難になり、やはり不揮発メ
モリの安定動作が難しいことが予想される。
【0021】下部電極としてPtを用い,この上に誘電
体としてBSTやBaTiOをエピタキシャル成長し
た場合に、D−Eヒステリシス曲線の中心位置が正電圧
方向に大きくずれる原因としては、次のような理由が考
えられる。
【0022】もともと、BaTiO(a=0.399
2nm,c=0.4036nm)とPt(a=0.39
231nm)の格子定数の違いにより、Pt上にエピタ
キシャル成長したBaTiOのa軸は、図2に示すよ
うに、Ptのa軸に合わせるように成長し、その結果、
BaTiOのc軸は本来のc軸より伸ばされると考え
られる。これにより、BaTiOのキュリー温度は上
昇し、室温における残留分極の大きさは本来のバルクの
値より大きいものが得られる。しかしながら、PtとB
STやBaTiOとの格子定数の不整合が大きすぎる
ため、図3に示すように、特に下部電極近傍ではミスフ
ィット転位が発生し、エピタキシャル効果によって導入
された歪みの一部が緩和され、BaTiOの本来の格
子定数に近づこうとする。強誘電体の場合、自発分極の
大きさと歪みの大きさには密接な関係があり、膜中に2
次元応力Hが存在する場合には、膜厚方向の歪みx
自発分極Pの関係は、弾性コンプライアンスS12
電歪定数Q11を使って次の式で表すことができる。
【0023】 x=2×S12×H+Q11×P …(1) 即ち、エピタキシャル効果によって自発分極が発現、或
いは自発分極が強調されている強誘電体薄膜の場合、ミ
スフィット転位の発生により不可避的に歪みxや2次
元応力Hが緩和されるが、外部電界をゼロに保った場合
にはこの影響により自発分極Pの値も膜厚方向に下部
電極から離れるに従って次第に小さくなるはずであるこ
とをこの式は意味している。
【0024】このように歪み或いは応力の緩和が原因で
自発分極Pの大きさが膜厚方向に分布している場合に
は、膜中に次の式で表されるようなみかけ上の空間電荷
qが存在しているかのように、誘電体膜中に内部電界E
を作ると考えられる。
【0025】q=−divP …
(2) E=q/2ε このような内部電界Eによって、最終的には膜中に生じ
た分極の分布は中和されるものと考えられる。なお、こ
の様子を図4に示す。(a)は分極分布、(b)は電荷
及び電界分布、(c)は電位分布を示している。
【0026】ミスフィット転位によって歪みの緩和が激
しく起きるのは、下部電極近傍であることから、このよ
うなみかけの電荷qの分布は特に下部電極近傍に集中し
ていると考えられる。このような一様でない電荷分布が
誘電体の膜中に存在する場合には、この電荷が発生する
電界によって、上下電極間に電位差が生じる。この電位
差を打ち消すような電圧を外部からかけたときに、はじ
めて膜中の電界が中和されるので、そのような電圧位置
にヒステリシスの中心が移動するものと考えられる。
【0027】また、ミスフィット転位によって特定の分
極方向だけが安定化し、他方の分極方向が不安定化する
理由としては次のようなモデルも考えられる。即ち、図
5に摸式的に示したように、ミスフィット転位が入るこ
とによって、下部電極近傍で平均的に見れば、下部電極
に近い方の面内の格子定数aは小さく、下部電極に遠い
方の格子定数aは大きくなる。このとき、ペロブスカイ
ト型強誘電体を構成する元素の中で最も大きく分極に寄
与すると考えられるBサイトイオン(BaTiOを例
に取った場合にはTi4+イオン)が、より広い空間が
存在するa軸の長さが大きい方向において安定化し、よ
り狭い空間しかないa軸の短い方向では不安定化すると
考えられる。このため、自発分極としては下部電極か
ら、上部電極に向かう分極のみが安定化すると考えられ
る。
【0028】このようにしてミスフィット転位が導入さ
れたことにより、対称性の崩された強誘電体において
は、熱力学的に次のような現象が生じることが予想され
る。通常、強誘電体の熱力学現象論においては自由エネ
ルギーを分極Pの2乗,4乗,6乗で展開する。偶数項
のみを考慮するのは、結晶の対称性から、+Pと−Pは
自由エネルギー的には等価でなければならないとの前提
があるためである。
【0029】しかしながら、今問題にしているミスフィ
ットが導入されたエピタキシャル膜については、下部電
極(Pt)との格子不整合を緩和するために転位が導入
されており、膜厚方向に対してペロブスカイト型結晶の
鏡面対称性は崩れている。このため、+Pと−Pは等価
であるという前提は崩れていることになる。非対称性の
効果を調べるには、自由エネルギーGを分極Pによって
展開する際に、分極の奇数次の項を導入すれば良い。し
かし、対称性からのずれがわずかである場合には、取り
敢えず最低次の奇数項、即ちPの一乗の項の影響を調べ
れば十分であると考えられる。この項の係数をeとする
と、 G=aP+bP+cP+eP …(3) この式から、電界EとPの関係は次の式で与えられる。
【0030】E=(dG/dP)=2aP+4bP
6cP+e 従って、 E−e=2aP+4bP+6cP …(4) この式は、外部電界Eから一定のバイアス電界eを差し
引いた電界が膜中にかかっている状態と全く同じ結果と
なる。即ち、P−Eヒステリシス曲線が電界eだけシフ
トすることになる。
【0031】このようなヒステリシス曲線の対称性を崩
す原因となるミスフィット転位が、下部電極近傍で多く
発生するのは、下部電極と誘電体のもともとの格子定数
の差が大きすぎるためである。例えば、Ptの格子定数
との差が小さい組成Ba0.50Sr0.50TiO
(立方晶:a=0.3952nm)をPt上にRFスパ
ッタリング法によりエピタキシャル成長させた場合に
は、本来室温では常誘電相にあるはずであるにも拘わら
ず、室温で強誘電的なD−Eヒステリシスが観測される
(図1(a))。これに伴い、膜厚方向の格子定数は本
来の格子定数と比べて伸びており(約0.398n
m)、一方面内の格子定数はほぼPtに等しい(約0.
3925nm)ことから強誘電性の発現がエピタキシャ
ル効果によるものであることを示している(図6)。
【0032】しかしながらこの場合には、ヒステリシス
の中心位置がほぼゼロボルト付近にある。これは、Pt
とBSTの格子定数の差が比較的小さいために、下部電
極の近傍でBSTの成長過程でミスフィットに起因する
転位がそれ程多くは発生しないためと考えられる。
【0033】本発明は、上記事情を考慮して成されたも
ので、その目的とするところは、エピタキシャル効果を
利用して強誘電性を発現した強誘電体薄膜、或いはエピ
タキシャル効果により強誘電性が強化された強誘電体薄
膜を利用し、残留分極の値が十分大きく、かつヒステリ
シスの中心位置がゼロボルト付近にあり、またリーク電
流の低減に寄与することのできる薄膜キャパシタを提供
することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】上記課題を解決するために本発明は、次の
ような構成を採用している。
【0035】(請求項1) 即ち、本発明(請求項1)は、表面に立方晶系の(10
0)面又は正方晶系の(001)面が現れている導電性
の基板と、この基板の上にエピタキシャル成長されたペ
ロブスカイト型結晶構造を有するキュリー温度が200
℃以下の誘電体材料からなる誘電体膜と、この誘電体膜
の上に形成された上部電極とを備えた薄膜キャパシタに
おいて、前記基板表面の格子定数をaとし、立方晶系
又は正方晶系に属するペロブスカイト型結晶構造のa軸
長で表される前記誘電体材料本来の格子定数をaとす
るとき、下記の式を同時に満たすことを特徴とする。
【0036】 1.002≦a/a≦1.015 a≧0.3935nm なお本発明で、誘電体材料固有のキュリー温度を200
℃以下と規定した理由は、キュリー温度が200℃を越
える材料は、通常鉛或いはビスマスを主成分として含有
するため薄膜作成時に鉛やビスマスの蒸発に起因する組
成の変動を抑えることが難しく、ひいては良質な誘電体
膜を得るのが困難だからである。また、鉛やビスマス
は、集積化した場合に誘電体膜中から他の電極、絶縁膜
などに拡散しやすいために組成の制御が難しい。さら
に、キュリー温度が200℃を越える誘電体材料に関し
ては、もともとキュリー温度が十分高いので、そのまま
で使用してもさほど支障はなく、本発明を適用すること
で得られる効果も小さい。
【0037】本発明で用いるペロブスカイト型結晶構造
の誘電体材料の例としては、チタン酸バリウム(BaT
iO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、
チタン酸カルシウム(CaTiO)、スズ酸バリウム
(BaSnO)、ジルコニウム酸バリウム(BaZr
)などに代表される単純ペロブスカイト型酸化物、
マグネシウム酸タンタル酸バリウム(Ba(Mg1/3
Ta2/3)O)、マグネシウムニオブ酸バリウム
(Ba(Mg1/3Nb2/3)O)などの複合ペロ
ブスカイト型酸化物、さらにこれらのなかから複数の酸
化物を同時に固溶させたものなどがあげられる。これら
は、エピタキシャル成長により強誘電性が得られる材料
である。
【0038】さらに望ましい組成に言及すれば、組成式
がABOで表されるペロブスカイト型結晶構造を有す
る誘電体の組成式において、Aとしては主としてBaか
らなるものであるが,Baの一部Sr,Caのうち少な
くとも一種類の元素で置換しても構わない。Bとしては
主としてTiであるが、同様にTiの一部をZr,H
f,Sn,(Mg1/3Nb2/3),(Mg1/3
2/3),(Zn1/3Nb2/3),(Zn1/3
Ta2/3)のうち少なくとも一種類からなる元素で置
換しても構わない。
【0039】これらの組成が望ましい理由は、これらの
構成元素の酸化物(BaO,SrO,CaOなど)の融
点がいずれも1000℃以上と十分高温にあるために、
例えば600℃程度で成膜してもこれらの構成元素が蒸
発しにくく、組成ずれが生じにくいためである。従っ
て、本来Aサイトを低融点元素のPbなどで置換するこ
とは望ましくないが、仮に置換しなければならない場合
でも20%以下であることが好ましい。また、これらの
元素を組み合わせて構成されるペロブスカイト型酸化物
のキュリー温度は、Pbで全く置換しない場合、最もキ
ュリー温度が高いBaTiOにおいても120℃であ
り、材料本来のキュリー温度のままでは、上述したよう
に強誘電体薄膜として実用的ではない。
【0040】また本発明は、ペロブスカイト型誘電体の
本来の格子定数aと、基板として用いる導電性基板の
格子定数aとの関係を、 1.002≦a/a≦1.015 の範囲に規定するものである。
【0041】本発明でa/aの比率を1.002以
上に限定する理由は、これより小さい比率では、エピタ
キシャル効果によってキュリー温度の上昇が見られない
か、見られてもごく小さいためである。一方、a/a
の比率を1.015以下に限定する理由は、これより
大きい比率では、誘電体の膜を基板にエピタキシャル成
長させる際に、途中でミスフッィト転移が入るため、7
0nm以上の厚い誘電体膜について、やはり十分なキュ
リー温度の上昇が得られないためである。なお、a
の比率が1.011以下の範囲にあれば、格子定数
のミスフィットが小さいために、成膜温度に依らず比較
的結晶性の良いエピタキシャル成長の誘電体膜が得られ
やすい。
【0042】また本発明においては、下部電極として用
いる、導電性材料の格子定数をaとしたときに、 a≧0.3935nm であるものを用いることを特徴とする。
【0043】このような領域に下部電極の格子定数を限
定する理由は、本来のキュリー温度が比較的高く、この
ため比較的容易に大きな残留分極が得られやすい強誘電
体組成(例えばBaTiO)の格子定数は比較的大き
い傾向にあるのに対し、aの値が0.3935nm未
満の場合には、このような誘電体膜をエピタキシャル成
長させた場合に、格子の不整合の影響が大き過ぎ、下部
電極近傍の誘電体膜内部に、多くのミスフィット転位が
発生し、ヒステリシスの中心位置が正電圧側に大きくず
れてしまい、一方向の分極のみが安定化し、他方向の分
極が不安定化するために、良好な分極の保持特性が得ら
れないためである。なお、上式はaの値の下限を与え
るものであるが、上限については、a/aの比率が
1.002以上という条件により、誘電体の格子定数と
の関係に基づいて限定されるものである。
【0044】実際に上記の条件を満たす導電性を示す下
部電極としては、PtとAu或いはAgとの合金、Pd
とAu或いはAgの合金、SrRuOとBaRuO
との固溶系などがあげられる。図7にこれらの系におい
て、ベガード則から予想される組成と格子定数の関係を
示す。
【0045】Ptの格子定数は0.39231nmなの
で、単体として下部電極に用いた場合には、本発明にお
いて下部電極の格子定数aが満たさなければならない
条件、即ち a≧0.3935nm を満たすことができない。しかしながら、例えばPtに
格子定数がPtより大きな貴金属であり比較的酸化され
にくいAu或いはAgを、Me/(Me+Pt)≧0.
05の関係を満たす量(但し、MeはAu或いはAgの
少なくとも一方)を、固溶させることによって上記の条
件を満足する導電性の下部電極を実現することができ
る。
【0046】また、Pdの格子定数は0.38898n
mなので、単体として下部電極に用いた場合には、本発
明において下部電極の格子定数aが満たさなければな
らない条件、 a≧0.3935nm を満たすことができない。しかしながら、例えばPdに
格子定数がPdより大きな貴金属であり比較的酸化され
にくいAu或いはAgを、Me/(Me+Pt)≧0.
20の関係を満たす量(但し、MeはAuあるいはAg
の少なくとも一方)を、固溶させることによって上記の
条件を満足する導電性の下部電極を実現することができ
る。
【0047】また同様に、ペロブスカイト型導電性酸化
物SrRuOの格子定数は、0.393nmなので、
単体では上記aに関する条件を満たさないが、BaR
uOを一部固溶することによって格子定数が伸び、上
記条件を満足することができる。
【0048】本発明において、これらのペロブスカイト
型誘電体を、基板の上にエピタキシャル成長させる時の
成長方位としては、ペロブスカイト型誘電体の(10
0)面と導電性基板の(100)面が平行に成長させる
ことが望ましい。また誘電体膜の成膜方法としては、反
応性蒸着、RFスパッタリング、MOCVD、レーザー
アブレーション、ゾルゲル法などの方法があげられが、
特に大きな歪みを導入しやすやすい、スパッタリング法
が好ましい。 (請求項2) また、本発明(請求項)は、少なくとも表面が正方晶
系の(001)面及び立方晶系のいずれかに属する結晶
構造を有する導電性材料からなる導電性基板と、この基
板の上にエピタキシャル成長された正方晶系又は立方晶
系のペロブスカイト型結晶構造を有する誘電性材料から
なる誘電体膜と、この誘電体膜の上に形成された上部電
極とを具備した薄膜キャパシタにおいて、前記誘電性材
料本来のキュリー温度が150℃以下で、ペロブスカイ
ト型結晶構造のa軸長で表される誘電性材料本来の格子
定数aと、正方晶系又は立方晶系のペロブスカイト型
結晶構造のa軸長で表される導電性材料本来の格子定数
と、正方晶系又は立方晶系のペロブスカイト型結晶
構造のa軸長で表される上部電極材料本来の格子定数a
とが、下記の式を同時に満たすことを特徴とする。
【0049】 1.002≦a/a≦1.015 1.002≦a/a≦1.015 なお本発明で、誘電体材料固有のキュリー温度を150
℃以下と規定した理由は、キュリー温度が150℃を越
える材料は、通常鉛或いはビスマスを主成分として含有
するため薄膜作成時に鉛やビスマスの蒸発に起因する組
成の変動を抑えることが難しく、ひいては良質な誘電体
膜を得るのが困難だからである。また鉛やビスマスは、
集積化した場合に誘電体膜中から他の電極、絶縁膜など
に拡散しやすいために組成の制御が難しい。さらに、キ
ュリー温度が150℃を越える誘電体材料に関しては、
もともとキュリー温度が十分高いので、そのままで使用
してもさほど支障はなく、本発明を適用することで得ら
れる効果も小さい。
【0050】また、本発明で用いるペロブスカイト型結
晶構造の誘電体材料の例としては、(請求項1)で説明
したものを用いることができる。さらに、誘電性材料と
して、一般式ABO(但し式中、AはBa,Sr,C
aからなる群より選ばれた少なくとも1種、BはTi,
Zr,Hf,Sn,(Mg1/3Nb2/3),(Mg
1/3Ta2/3),(Zn1/3Nb2/3),(Z
1/3Ta2/3),(Mg1/2Te1/2),
(Co1/21/2),(Mg1/21/2),
(Mn1/21/2),(Sc1/2Nb1/2),
(Mn1/2Nb1/2),(Sc1/2
1/2),(Fe1/2Nb1/2),(In1/2
Nb1/2),(Fe1/2Ta1/2),(Cd
1/3Nb2/3),(Co1/3Nb2/3),(N
1/3Nb2/3),(Co1/3Ta2/3),
(Ni1/3Ta2/3)からなる群より選ばれた少な
くとも1種)で表されるペロブスカイト組成を有するも
のであってもよい。
【0051】また本発明は、ペロブスカイト型誘電体の
本来の格子定数aと、基板として用いる導電性基板の
格子定数aの関係を、 1.002≦a/a≦1.015 の範囲に規定するものである。
【0052】本発明でa/aの比率を1.002以
上に限定する理由は、これより小さい比率では、エピタ
キシャル効果によってキュリー温度の上昇が見られない
か、見られてもごく小さいためである。一方、a/a
の比率を1.015以下に限定する理由は、これより
大きい比率では、誘電体の膜を基板にエピタキシャル成
長させる際に、途中でミスフッィト転移が入るため、7
0nm以上の厚い誘電体膜について、やはり十分なキュ
リー温度の上昇が得られないためである。なお、ad/
asの比率が1.011以下の範囲にあれば、格子定数
のミスフィットが小さいために、成膜温度に依らず比較
的結晶性の良いエピタキシャル成長の誘電体膜が得られ
やすい。
【0053】また本発明においては、ペロブスカイト型
誘電体の本来の格子定数aと、上部電極として用いる
電極材料の格子定数aの関係を 1.002≦a/a≦1.015 の範囲に規定するものである。
【0054】このような領域に上部電極の格子定数を限
定する理由は、下部電極の場合と同様に、1.002よ
り小さい比率では、エピタキシャル効果によってキュリ
ー温度の上昇が見られないか見られてもごく小さく、
1.015より大きい比率では、上部電極を誘電体膜に
エピタキシャル成長させる際に、途中でミスフィット転
位が入ることによって、やはり十分なキュリー温度の上
昇が見られないためである。
【0055】本来のキュリー温度が比較的高く、このた
め比較的容易に大きな残留分極が得られやすい強誘電体
組成(例えばBaTiO)の格子定数は比較的大きい
傾向にあるのに対して、下部電極に酸化されにくいPt
などの比較的小さい格子定数を持つ導電性材料を用いた
場合には、このような誘電体膜を下部電極からエピタキ
シャル成長させた場合に、格子の不整合の影響が大きす
ぎ、下部電極近傍の誘電体膜内部に、多くのミスフィッ
ト転位が発生し、ヒステリシスの中心位置が正電圧側に
大きくずれてしまい、一方向の分極のみが安定化し、他
方向の分極が不安定化するために、良好な分極の保持特
性が得られなかった。
【0056】本発明で、上部電極をペロブスカイト型誘
電体からエピタキシャル成長させる理由は、下部電極近
傍のミスフィット転位によるヒステリシスの正電圧側へ
のずれを、上部電極と誘電体の格子の不整合を利用し
て、上部電極近傍にミスフィット転位を発生させ、下部
電極と逆方向の自発分極を安定化させることによって、
下部電極の場合とは逆方向の負電圧側へヒステリシスを
移動させ、室温で残留分極値が大きく、かつヒステリシ
スの中心位置がゼロボルト付近にあるエピタキシャル成
長強誘電体薄膜を実現させるためである。
【0057】また本発明において、ペロブスカイト型誘
電体を基板の上にエピタキシャル成長させる時の成長方
位や成膜方法としては、(請求項1)で説明したものが
望ましい。
【発明の実施の形態】
【0058】以下、本発明の実施形態について、図面を
参照して説明する。
【0059】(実施形態1−1) 請求項1に関する第1の実施形態について説明する。
【0060】まず、図(a)に平面図を、図(b)
に断面図を示すように、表面が平滑なMgO(100)
単結晶基板1の上に、下部電極2として(100)配向
のAu−Pt合金(Au/(Pt+Au)=0.20)
薄膜を基板温度400℃でRFマグネトロンスパッタリ
ング法により形成し、これを本実施形態における導電性
の基板とした。このとき、Au−Pt膜の膜厚は約50
nmとした。X線回折により、Au−Pt膜が(10
0)配向膜であることを確認すると共に、このような方
法でスパッタ法により形成した場合にはAuとPtが良
く混ざり合い二相分離せず単一の格子定数を示すこと、
並びにこの合金膜の格子定数が約0.3952nmであ
り、ほぼベガード則に従うことを確認した。
【0061】次いで、上記のAu−Pt膜の上に、強誘
電体膜3として膜厚約200nmのBaTiO膜をR
Fマグネトロンスパッタリング法により形成した。スパ
ッタターゲットとしてはBaTiO焼結体(4インチ
径、5mm厚)を用いた。成膜中の基板温度を600℃
とし、スパッタの雰囲気はアルゴン(Ar)と酸素(O
2)の混合ガスとした。作成した膜の組成をICP法で
分析し、いずれもほぼ化学量論組成であることを確認し
た。
【0062】この場合、Au−Pt膜の格子定数a
0.3952nm、BaTiO(正方晶系)のa軸の
本来の格子定数aは約0.39920nmであり(B
aTiOの本来のc軸は0.40361nm)、本実
施形態についてはa/a=1.010である。従っ
て、請求項1においてa/aが満たすべき、1.0
02以上1.015以下という条件の範囲内である。ま
た、aが満たすべき条件、即ちaが0.3935n
m以上という条件も同時に満たしている。
【0063】次に、第1の比較例として上述した実施形
態と同様な方法で、表面が平滑なMgO(100)単結
晶基板1の上に、下部電極として(100)配向のPt
薄膜を基板温度400℃でRFマグネトロンスパッタリ
ング法により形成し、比較例における導電性の基板とし
た。このとき、Pt膜の膜厚を約50nmとした。X線
回折により、Pt膜が(100)配向膜であることを確
認すると共に、この膜の格子定数が約0.3923nm
とほぼバルクの値に近いことを確認した。
【0064】このPt膜の上に、強誘電体膜3として膜
厚約200nmのBaTiO膜を実施形態と同様のR
Fマグネトロンスパッタリング法により形成した。この
場合、Pt膜の格子定数aは0.3923nm、Ba
TiO(正方晶系)のa軸の本来の格子定数aは約
0.39920nmであるから、この比較例については
/a=1.017となり、請求項1における1.
002以上1.015以下という条件から逸脱してい
る。
【0065】次に、第2の比較例として上述した実施形
態と同様な方法で、表面が平滑なMgO(100)単結
晶基板1の上に、下部電極として(100)配向のPt
薄膜を基板温度400℃でRFマグネトロンスパッタリ
ング法により形成し、比較例における導電性の基板とし
た。このとき、Pt膜の膜厚を約50nmとした。X線
回折により、Pt膜が(100)配向膜であることを確
認すると共に、この膜の格子定数が約0.3923nm
であることを確認した。
【0066】このPt膜の上に、強誘電体膜3として膜
厚約200nmの(Ba0.5Sr0.5)TiO
(BST)をRFマグネトロンスパッタリング法により
形成した。このとき、スパッタリングターゲットとして
(Ba0.5Sr0.5)TiOの焼結体(4インチ
径、5mm厚)を用いたが、それ以外の条件は実施形態
と同じ方法を用いた。この場合、下部電極であるPt膜
の格子定数aは0.3923nm、BST(立方晶
系)のa軸の本来の格子定数aは約0.3952nm
であるから、この比較例についてはa/a=1.0
07となり、請求項1の満たすべき条件のうち、a
が1.002以上1.015以下という条件は満た
すものの、aが0.3935nm以上とする条件は満
たしていない。
【0067】最後に、これらのBaTiO膜及びBS
T膜の上に上部電極4としてPtの膜をRFスパッタリ
ングにより作成した。Pt膜はリフトオフ法によって、
100μm×100μmの形状に加工した。
【0068】このようにして作成したBaTiO膜及
びBST膜のX線回折には、共にペロブスカイト型結晶
構造の(001),(002),(003)面からの回
折線のみが現れており、これらの膜が(001)面が配
向したペロブスカイト型構造を持つことを示していた。
また、これらの膜のRHEED観察から、これらの膜が
エピタキシャル成長していることが確認された。
【0069】X線回折の(003)回折角から求めた格
子定数(c軸)は、実施形態及び比較例1(BaTiO
膜)ではそれぞれ約0.4230nm,0.4225
nmであった。BaTiO膜の本来のc軸長は、約
0.40361nmであるから、エピタキシャル効果に
よりそれぞれ約4.8%,4.7%c軸が伸びたことに
なる。
【0070】これに対して、比較例2のBST膜エピタ
キシャル膜のc軸は0.4066nmであった。この組
成のバルクは本来立方晶に属するため、a軸とc軸は等
しく、約0.3952nmであることが知られている。
従って、エピタキシャル薄膜においては、バルクに比べ
てc軸が2.8%伸びていることになる。
【0071】図は、本実施形態(BaTiO膜)と
比較例1,2(BaTiO膜及びBST膜)の比誘電
率の温度依存性である。容量は、周波数100kHz、
交流電圧の振幅0.1Vで測定し、電極面積,膜厚及び
真空の誘電率を使ってエピタキシャル膜の比誘電率を算
出した。いずれのエピタキシャル膜においても、室温か
ら温度を上げるに伴って比誘電率が増加し、比誘電率が
最大値を取ると予想される温度Tmaxは約200℃以
上である。なお、BaTiO及びBSTの本来のキュ
リー温度は、それぞれ120℃及び約−30℃であるこ
とが知られている。
【0072】このように、本実施形態及び比較例におい
て、キュリー温度が本来のキュリー温度より上昇した理
由は、BaTiO膜或いはBST膜が格子定数の小さ
な下部電極の上にエピタキシャル成長したことにより、
面内に圧縮応力がかかり、その結果面内のa軸が縮み膜
厚方向のc軸が伸びたためと考えられる。
【0073】図10は、このようなBaTiO膜及び
BST膜を使用した薄膜キャパシタの分極対電界(P−
E)ヒステリシス曲線である。このヒステリシス曲線
は、ソーヤタワー回路を用い、500Hzの交流電圧を
印加して室温(22℃)で測定した。
【0074】図10(a)は本実施形態の薄膜キャパシ
タに関するP−E曲線である。分極と電界の関係に明瞭
にヒステリシスを持ち、この薄膜キャパシタが強誘電性
を持つことを示している。ヒステリシス曲線から求めた
残留分極の大きさは約0.22C/mであった。ま
た、ヒステリシス曲線がほぼ中心に位置している。一
方、図10(b)は比較例1の強誘電体薄膜キャパシタ
におけるP−Eヒステリシス曲線であるが、この図から
求めた残留分極は0.24C/mと本実施形態に匹敵
する大きさを持つものの、ヒステリシスの位置はプラス
電圧側に大きくずれている。
【0075】このように、本実施形態においてはヒステ
リシスがほぼ中心に位置するのに対し、比較例1におい
てヒステリシス曲線がプラス側にずれた理由としては、
下部電極として用いたPt−Au合金或いはPtと強誘
電体膜であるBaTiOの格子定数の不整合の度合が
大きく異なるため、エピタキシャル成長の過程におい
て、ミスフィットディスロケーションが導入される度合
いが異なるためと考えられる。
【0076】図11は、本実施形態及び比較例1のBa
TiO膜を化学エッチングすることにより膜厚を約2
00nmから約30nmまで変化させ、その都度X線回
折により測定したc軸の長さの膜厚に対してプロットし
たものである。本実施形態においては膜厚に対するc軸
の変化は小さいのに対し、比較例1においてはc軸の大
きさが膜厚によって大きく変化している。比較例1にお
いては、下部電極との格子不整合が大きいために特に下
部電極近傍にてミスフィットディスロケーションが多く
導入されており、これによってヒステリシスの中心から
のずれがもたらされたものである。
【0077】また、図12に、本実施形態と比較例1に
よるBaTiOエピタキシャル成長膜の、リーク電流
密度の電圧依存性を示す。リーク電流の測定は、上部電
極にプラスの電圧をゼロボルトから20Vまで徐々に増
加させながら行った。比較例1においては、図10
(b)に示したヒステリシス曲線において分極が反転す
る電圧にほぼ対応した電圧を印加したときに、急激なリ
ーク電流の増加が観測されたが、本実施形態においては
この電圧に相当する電圧を印加してもほぼ一定のリーク
電流密度を保っている。比較例1において、リーク電流
が増大する理由は下部電極付近において、結晶の対称性
が大きく崩れたことにより、上向きの分極のみが極度に
安定化し、外部電圧をかけても分極反転しない領域が残
るため、外部から印加した電界以外に、分極の不連続
(いわゆる分極のheadtohead)による強い電
界が発生して重畳され、下部電極の近傍のみに非常に強
い電界が発生したためと考えられる。
【0078】図10(c)は、比較例2のBSTエピタ
キシャル膜のP−Eヒスリテシス曲線を示したものであ
る。ヒステリシス曲線はほぼ中心に位置するものの、残
留分極の大きさは、0.08C/mと小さい値しか得
られない。このように、下部電極と誘電体の格子定数の
不整合の度合が比較的小さい場合には、ミスフィットデ
ィスロケーションが導入される度合が少ないために、ヒ
ステリシス曲線のずれは小さい。しかしながら、下部電
極として格子定数の小さいPtを使用した場合には、ヒ
ステリシス曲線がずれないような誘電体の選択として
は、もともとキュリー温度の低いBSTのような組成を
選ばざるを得なくなり、その結果大きな残留分極を得る
ことは期待できない。
【0079】上述した実施形態と同様にして、下部電極
としてPt−Ag合金をMgO基板上にエピタキシャル
成長し、さらにその上にBaTiOエピタキシャル薄
膜を作成したところ、Ag/(Pt+Ag)比率が0.
05以上の組成を用いることにより、残留分極が大き
く、しかもヒステリシス曲線のずれない強誘電体薄膜が
得られた。
【0080】(実施形態1−2) 請求項1に関する第2の実施形態について説明する。
【0081】実施形態1−1と同様にして、下部電極と
してPd−Ag合金或いはPd−AuをMgO基板上に
エピタキシャル成長し、さらにその上にBaTiO
ピタキシャル薄膜を作成したところ、Ag/(Pd+A
g)比率或いはAu/(Pd+Au)比率が0.20以
上の組成を用いることにより、残留分極が大きく、しか
もヒステリシス曲線のずれない強誘電体薄膜が得られ
た。
【0082】(実施形態1−3) 請求項1に関する第3の実施形態について説明する。
【0083】実施形態1−1と同様にして、下部電極と
してペロブスカイト型導電性酸化物であるSrRuO
−BaRuO固溶体をMgO基板上にエピタキシャル
成長し、さらにその上にBaTiOエピタキシャル薄
膜を作成したところ、Ba/(Sr+Ba)比率が0.
05以上の組成を用いことにより、残留分極が大きく、
しかもヒステリシス曲線のずれない強誘電体薄膜が得ら
た。 (実施形態2−1) 請求項に関する第1の実施形態について説明する。こ
こで、平面及び断面の構造は前記図と同じであるの
で、これを参照する。
【0084】まず、図に示すように、表面が平滑なM
gO(100)単結晶基板1の上に、下部電極2を形成
する導電性材料として(100)配向のPtの薄膜を、
基板温度400℃でRFマグネトロンスパッタリング法
により成膜し、これを本実施形態における導電性基板と
した。ここで、基材のMgO(100)単結晶基板1は
立方晶系に属するNaCl型結晶構造を有するもので、
Ptの薄膜は約50nmの膜厚で基材の上にエピタキシ
ャル成長して、立方晶系の結晶構造を有していた。
【0085】次いで、得られた導電性基板の上に、誘電
体膜3として膜厚約230nmの正方晶系の(Ba
0.85Sr0.15)TiO(BST)薄膜をRF
マグネトロンスパッタリング法により形成した。スパッ
タターゲットとしては、形成すべき膜と同じ組成のBS
T焼結体(4インチ径、5mm厚)を用いた。成膜中の
基板温度を600℃、スパッタ雰囲気はArとOの混
合ガスとした。作成した膜の組成をICP法で分析し、
いずれもほぼ化学量論組成であることを確認した。
【0086】ここで、導電性基板の上に誘電体膜として
形成されたBSTの薄膜は、そのX線回折図にペロブス
カイト型結晶構造の(001),(002),(00
3)面からの回折線のみが現れており、これら誘電体膜
3においては(001)面が配向したペロブスカイト型
結晶構造が得られていることが分った。またRHEED
観察から、これら誘電体膜3は導電性基板の上にエピタ
キシャル成長していることが確認された。この場合、P
t本来の格子定数aは0.39231nm、BST本
来の格子定数aは約0.3978nmであり、本実施
形態についてはa/a=1.014である。従っ
て、請求項3においてa/aが満たすべき、1.0
02以上1.015以下という条件の範囲内である。
【0087】次に、このBSTの薄膜上に、高温に耐え
られるレジストとしてAlNを用いてパターニングを行
い、上部電極としてPtの膜を基板温度400℃でRF
スパッタリング法によって形成し、リフトオフ法によっ
て、100μm×100μmの形状に加工して、本実施
形態の薄膜キャパシタを形成した。
【0088】第1の比較例として、このBSTの薄膜上
に、通常の有機物レジストでパターニングを行い、上部
電極としてPtの膜を室温でRFスパッタリング法によ
って形成し、リフトオフ法によって比較例1の薄膜キャ
パシタを形成した。この場合、上部電極に下部電極と同
じPtを用いるので、請求項3においてa/aが満
たすべき、1.002以上1.015以下という条件の
範囲内である。
【0089】RHEED観察から、400℃で成膜した
本実施形態の上部電極のPt膜は、エピタキシャル成長
しているのに対して、室温で成膜した比較例1の上部P
t電極は配向していないことが確認された。
【0090】次に、第2の比較例として、上述した実施
形態と同様な方法で、表面が平滑なMgO(100)単
結晶基板1の上に、下部電極2として(100)配向の
Pt薄膜を基板温度400℃でRFマグネトロンスパッ
タリング法により形成し、比較例2における導電性の基
板とした。このとき、Pt膜の膜厚は約50nmとし
た。X線回折により、Pt膜が(100)配向膜である
ことを確認すると共に、この膜の格子定数が約0.39
23nmであるとほぼバルク値に近いことを確認した。
【0091】このPt膜の上に、強誘電体膜3として膜
厚約200nmのBaTiO膜を実施形態と同様のR
Fスパッタリング法により形成した。スパッタターゲッ
トとしては、BaTiO焼結体(4インチ径、5mm
厚)を用いた。成膜中の基板温度を600℃、スパッタ
雰囲気はArとOの混合ガスとした。作成した膜の組
成をICP法で分析し、いずれもほぼ化学量論組成であ
ることを確認した。この場合、Ptの格子定数a
0.3923nm、BaTiO(正方晶系)のa軸の
本来の格子定数aは0.39920nmであるから、
この比較例についてはa/a=1.017となり、
請求項3における1.002以上1.015以下という
条件から逸脱している。
【0092】さらに、このBaTiO膜の上に有機物
レジストでパターニングを行い、上部電極としてPtの
膜を室温でRFスパッタリング法で作成した。Pt膜は
リフトオフ法によって、100μm×100μmの形状
に加工した。この場合、上部電極に下部電極と同じPt
を用いているので、この比較例についてはa/a
1.017となり、請求項における1.002以上
1.015以下という条件からも逸脱している。
【0093】本実施形態と比較例1,2の誘電体膜につ
いて、ペロブスカイト型結晶構造を有する格子のc軸方
向の格子定数をX線回折図の(003)回折角から求め
たところ、実施形態と比較例1で形成したBSTの薄膜
では、それぞれ約0.420nmと、0.417nmで
あった。BST膜の本来のc軸長が0.400nmであ
るから、エピタキシャル効果によって、それぞれ約5
%、4.2%c軸が伸びたことになる。
【0094】これに対して、比較例2のBaTiO
ピタキシャル膜のc軸は0.403nmであり、これは
BaTiO本来の格子定数と同等の値である。
【0095】本実施形態と比較例1でc軸方向の格子定
数が長くなった理由は、BST本来の格子定数aが下
地のPt本来の格子定数aより適度に大きいため、誘
電体膜を下地であるPtの薄膜の上にエピタキシャル成
長させる際に、BSTが膜面内方向でPtの格子定数に
一致するようにミスフィット転位がそれ程入ること無く
成長し、結果的にペロブスカイト型結晶構造を有する格
子が歪んで、膜面内方向について格子定数が縮む一方、
膜厚方向で格子定数が伸びたためであると考えられる。
さらに、本実施形態のほうが比較例1よりもc軸の伸び
が大きくなった理由は、本実施形態では上部電極もエピ
タキシャル成長させているために、下部電極に加えて、
上部電極近傍でも歪みが発生しており、膜面内方向の格
子歪みが増幅されているためだと予想される。
【0096】続いて、上述したような実施形態及び比較
例1,2の薄膜キャパシタの各種特性を評価した。ま
ず、図13は、本実施形態及び比較例1,2の薄膜キャ
パシタの容量の温度依存性を示す特性図である。但しこ
こでは、交流電圧の周波数100kHz、振幅0.1V
として容量を測定した。図13で示されるように、本実
施形態の薄膜キャパシタと、比較例1の薄膜キャパシタ
においては、室温から温度を上げるにつれて容量が増加
し、最大の容量値が得られる温度Tmaxは、約200
℃であった。なおこのTmaxは、バルク材のキュリー
温度に相当する温度であり、BST本来のキュリー温度
は約60℃であることが知られているから、本実施形態
と比較例1で誘電体のキュリー温度が誘電材料本来のキ
ュリー温度よりも上昇していることが明らかである。
【0097】一方、比較例2の薄膜キャパシタは、Tm
axがBaTiO本来のキュリー温度とほぼ同じ約1
20℃であり、誘電体膜のキュリー温度は誘電材料本来
の値は殆ど変化していない。ここでこれらの違いが生じ
るのは、本実施形態と比較例1では誘電体膜の成長段階
でミスフィット転位がそれ程入らず、上述したようにペ
ロブスカイト型結晶構造を有する格子が歪んだ状態が保
たれるのに対し、比較例2においては誘電体膜の成長初
期状態でペロブスカイト結晶構造を有する格子が歪んで
も、誘電体膜の成長段階でミスフィット転位が入って元
に戻ってしまうためであると予想される。
【0098】図14は、このようなBST膜とBaTi
膜を使用した薄膜キャパシタの分極対電界(P−
E)ヒステリシス曲線である。ヒステリシス曲線は、ソ
ーヤタワー回路を用い、500Hzの交流電圧を印加し
て室温(22℃)で測定した。図14(a)は本実施形
態の薄膜キャパシタに関するP−E曲線である。分極と
電界の関係に明瞭にヒステリシスを持ち、この薄膜キャ
パシタが強誘電性を持つことを示している。ヒステリシ
ス曲線から求めた残留分極の大きさは約0.22C/m
であった。また、ヒステリシス曲線がほゼロボルト付
近に位置している。一方、図14(b)は比較例1の強
誘電体薄膜キャパシタにおけるP−Eヒステリシス曲線
であるが、この図から求めた残留分極は0.20C/m
と本実施形態に匹敵する大きさを持つものの、ヒステ
リシスの位置はプラス電圧側に大きくずれている。
【0099】このように、本実施形態においてはヒステ
リシスがほぼ中央に位置するのに対し、比較例1にヒス
テリシス曲線がプラス側にずれた理由としては、誘電体
膜が下部電極だけにエピタキシャル成長しているため
に、下部電極近傍にだけミスフィット転位が多く導入さ
れているために、結晶格子の対称性が崩れて、これによ
ってヒステリシスの中心からのずれがもたらされたもの
である。
【0100】また図15に、本実施形態と比較例1によ
るBSTエピタキシャル成長膜の、リーク電流密度の電
圧依存性を示す。リーク電流の測定は、上部電極にプラ
スの電圧を0Vから20Vまで徐々に増加させながら行
った。比較例1においては、図14(b)に示したヒス
テリシス曲線において分極が反転する電圧にほぼ対応し
た電圧を印加したときに、急激なリーク電流の増加が観
測されたが、本実施形態においてはこの電圧に相当する
電流を印加してもほぼ一定のリーク電流密度を保ってい
る。比較例1において、リーク電流が増大する理由は下
部電極付近において、結晶の対称性が大きく崩れたこと
により、上向きの分極のみが極度に安定化し、外部電圧
をかけても分極反転しない領域が残るため、外部から印
加した電界以外に、分極の不連続による強い電界が発生
して重畳され、下部電極の近傍のみに非常に強い電界が
発生したためと考えられる。
【0101】このように本実施形態においては、誘電体
膜のキュリー温度が誘電性材料本来のキュリー温度より
も上昇しており、これに伴い残留分極値が大きく、しか
もヒステリシス曲線のずれない、薄膜キャパシタが実現
されている。なお、本発明は上述した各実施形態に限定
されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種
々変形して実施することができる。本発明は基本的には
薄膜キャパシタの改良であるが、ペロブスカイト型結晶
構造を有する誘電体膜を用いた素子であれば、例えば弾
性表面波素子やフィルタ等の圧電素子、赤外線センサ等
の焦電素子に適用することも可能である。
【発明の効果】
【0102】以上詳述したように本発明によれば、エピ
タキシャル強誘電体薄膜において、残留分極の値が大き
く、しかも中心位置からずれないいわゆるインプリント
特性のないヒステリシス曲線が得られ、またリーク電流
密度の低減にも効果がある。従って、本発明による強誘
電体薄膜を用いれば、デジタルデータの長時間の保持特
性に優れた強誘電体記憶素子を実現することが可能とな
り、工業的に大きく寄与するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】エピタキシャル成長した強誘電体薄膜における
分極(P)と電圧(V)の関係を示す特性図。
【図2】Ptの上にエピタキシャルBST薄膜におい
て、c軸が伸びるメカニズムを示す摸式図。
【図3】Pt膜の上にエピタキシャル成長したBaTi
O3及びBST膜の格子定数の膜厚依存性を示す特性
図。
【図4】分極の分布が上下電極間の電位差をもたらすメ
カニズムを示す摸式図。
【図5】ミスフィット転位の導入によって結晶の対称性
が崩されるメカニズムを示す摸式図。
【図6】Pt/MgO(100)上のBSTエピタキシ
ャル膜における格子定数の膜厚依存性を示す特性図。
【図7】下部電極に用いた導電材において、ベガード則
から予想される組成と格子定数の関係を示す予想図。
【図8】実施形態1−1における薄膜キャパシタの構造
を示す平面図と断面図。
【図9】実施形態1−1における比誘電率の温度依存性
を示す特性図。
【図10】実施形態1−1における薄膜キャパシタの分
極対電界(P−E)ヒステリシス曲線を示す特性図。
【図11】実施形態1−1における膜厚と格子定数との
関係を示す特性図。
【図12】実施形態1−1における電圧とリーク電流密
度との関係を示す特性図。
【図13】実施形態−1における薄膜キャパシタの容
量の温度依存性を示す特性図。
【図14】実施形態−1における薄膜キャパシタの分
極対電界(P−E)ヒステリシス曲線を示す特性図。
【図15】実施形態−1における電圧とリーク電流密
度との関係を示す特性図。
【符号の説明】
1…単結晶基板 2…下部電極 3,3a,3b…強誘電体膜 4…上部電極
フロントページの続き (72)発明者 福島 伸 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 川久保 隆 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 堤 純誠 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 佐野 賢也 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (56)参考文献 特開 平2−275685(JP,A) 特許2878986(JP,B2) Jpn.J.Appl.Phys., 日本,Vol.33(1994),pp.5297 −5300 Jpn.J.Appl.Phys., 日本,Vol.34(1995),pp.3597 −3601 Jpn.J.Appl.Phys., 日本,Vol.32(1993),pp.4186 −4189 Jpn.J.Appl.Phys., 日本,Vol.32(1993),pp.L 1157−L1159 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 27/105 H01L 27/108 H01L 21/8242 H01G 4/33 H01L 21/822 H01L 27/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に立方晶系の(100)面又は正方晶
    系の(001)面が現れている導電性の基板と、この基
    板の上にエピタキシャル成長されたペロブスカイト型結
    晶構造を有するキュリー温度が200℃以下の誘電体材
    料からなる誘電体膜と、この誘電体膜の上に形成された
    上部電極とを備えた薄膜キャパシタにおいて、 前記基板表面の格子定数をaとし、立方晶系又は正方
    晶系に属するペロブスカイト型結晶構造のa軸長で表さ
    れる前記誘電体材料本来の格子定数をaとするとき、 1.002≦a/a≦1.015 なる関係を満たすと同時に、 a≧0.3935nm であることを特徴とする薄膜キャパシタ。
  2. 【請求項2】少なくとも表面が正方晶系の(001)面
    及び立方晶系のいずれかに属する結晶構造を有する導電
    性材料からなる導電性基板と、この基板の上にエピタキ
    シャル成長された正方晶系又は立方晶系のペロブスカイ
    ト型結晶構造を有する誘電性材料からなる誘電体膜と、
    この誘電体膜の上に形成された上部電極とを具備した薄
    膜キャパシタにおいて、 前記誘電性材料本来のキュリー温度が150℃以下で、
    ペロブスカイト型結晶構造のa軸長で表される誘電性材
    料本来の格子定数aと正方晶系又は立方晶系のペロブ
    スカイト型結晶構造のa軸長で表される導電性材料本来
    の格子定数aとが、 1.002≦a/a≦1.015 なる関係を満たすと同時に、正方晶系又は立方晶系のペ
    ロブスカイト型結晶構造のa軸長で表される上部電極材
    料本来の格子定数aと、前記格子定数aが、 1.002≦a/a≦1.015 なる関係を満たすことを特徴とする薄膜キャパシタ。
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Jpn.J.Appl.Phys.,日本,Vol.33(1994),pp.5297−5300
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