JP3342989B2 - 塗装用プロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
塗装用プロピレン系樹脂組成物Info
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Description
及び印刷性を有する新規な塗装用プロピレン系樹脂組成
物に関するものであり、更に詳しくは、優れた低温塗装
性、接着性及び印刷性を有すると共に、高度な機械的強
度バランス(剛性、耐衝撃強度)、良好な成形加工性を
保持し、各種工業部品用の素材として好適な塗装用プロ
ピレン系樹脂組成物に関するものである。
脂材料は、多くの場合全体又は一部分が塗装仕上げされ
てから実用に供されている。しかし、これらのプロピレ
ン系樹脂材料は、その素材自体の構造に極性基を有して
いないことから、直接塗料を塗布した場合に実用レベル
の塗料付着強度を得ることが困難であった。それ故、こ
のようなプロピレン系樹脂材料は、多くの場合、予め成
形した材料の表面を予めTCE(トリクロロエタン)脱
脂処理し、プライマーを塗布したり、プラズマ処理を施
すこと等によって塗料付着性能を向上させていた。
な塗装方法においては、従来から以下に示すような問題
点があった。先ず、TCE(トリクロロエタン)脱脂処
理においては、地球環境の保全からモントリオール議定
書により1995年以降使用禁止になった。また、プラ
イマー塗布法においては、高価なプライマーを使用しな
ければならないことや、塗装工程数が多くなることか
ら、塗装コストが高くなるという欠点があるし、それ以
外にもプライマー中の溶媒を揮発させる必要があること
から火災の危険性を伴い安全性にも問題があった。
真空状態が必要であるために、高価な装置を設置しなけ
ればならず、しかも、バッチ式のためにコストの上昇を
避けることができなかった。更に、最近では複雑な形状
をした成形品が要求される様になったが、この様な複雑
な形状の成形品には均一なプラズマ処理が施し難く、ま
た、異物に接触すると塗料の付着性が低下するために、
塗装性能にばらつきを生じることもあり、取扱いが非常
に不便であった。従って、プロピレン系樹脂製成形品の
塗装におけるTCE(トリクロロエタン)脱脂処理、プ
ライマー塗布、プラズマ処理の工程を省略することがで
きれば、塗装工程の簡略化、作業環境の改善、コストの
低減化を図ることが可能となることから、これまでにも
これらの工程を省略しようと多くの研究がなされてき
た。
を含む樹脂組成物(特公平5−64660号公報)、不
飽和カルボン酸グラフトポリプロピレンを含む樹脂組成
物(特開平5−59231号公報)、エチレン系エラス
トマー及び帯電剤を付加したポリプロピレンを含む樹脂
組成物(特開平6−9835号公報)等が提案されてい
る。しかしながら、これらの組成物の成形品は、塗料を
直接塗布した場合、塗料付着強度が必ずしも十分でな
く、特に高度な機械的強度バランス、とりわけ高い剛性
・耐衝撃強度を同時に求める場合には、実用レベルの塗
料付着強度を得ようとすると、TCE(トリクロロエタ
ン)脱脂処理やプライマー塗布のどちらかの処理が事実
上必要であった。
塗布した場合の塗料付着強度は、塗料の種類によっては
著しく低下し、特にメラミン系塗料に対してはその傾向
が強く、実用レベルの塗料付着強度と、高度な機械的強
度バランス(高い剛性と低温耐衝撃強度)、良好な成形
加工性とを両立させることは困難なことであった。そこ
で、本発明者等は先にフィラーと共に特定のエラストマ
ー成分や変性プロピレン重合体を含むプロピレン系樹脂
組成物(特願平6−178944号公報参照)を提案
し、塗料焼付温度としては比較的低い140℃という難
条件で、しかも高い塗料付着強度が通常得難いメラミン
系塗料を使用するにも拘らず、実用レベルの塗料付着強
度を、高い物性・加工性バランスと共に発現させること
に成功した。
ダウンの観点から更なる塗料焼付温度の低温化や焼付時
間の短縮化が求められつつあり、具体的には130℃、
15分程度の焼付条件下で十分な塗料付着強度が必要と
されている。これに対し、上述の各種組成物等の成形品
においては、塗料(特にメラミン系塗料)を直接塗布し
た場合、130℃(15分)での焼付では、実用レベル
の塗料付着強度を得るのが困難であった。
化や、低い塗料焼付温度でも実用塗料付着強度を発現可
能とする等の目的を達成するために、鋭意研究を重ねた
結果、特定のプロピレン系樹脂組成物を用いて成形した
成形品が塗料を直接塗布し、130℃、15分で焼付し
たにも拘らず、実用十分な塗料付着強度を有し、且つ高
度な機械的強度バランスと成形加工性を有していること
を見い出して本発明を完成するに至った。
脂組成物は、下記の成分(a) 〜成分(f) からなることを
特徴とするものである。 成分(a) : 結晶性ポリプロピレン部分(A単位部)とエチレン・プロピレンラ ンダム共重合部分(B単位部)とを含有するプロピレン・エチレンブロック共重 合体: 100重量部 成分(b) : ブテン−1含量が25〜40重量%、密度が0.87g/cm3 以 下かつメルトフローレート(230℃、2.16kg)が10g/10分以下の エチレン・ブテン−1二元共重合ゴム: 10〜80重量部 成分(c) : 実質的に全体の長さが15μm以下で、平均粒径が1.5〜6μm 、かつ平均アスペクト比が5以上のタルク、平均粒径が8〜100μm、かつ平 均アスペクト比が10以上のマイカ、又は、平均直径が6μm以下で、かつ平均 アスペクト比が5以上の繊維状フィラーから選ばれた少なくとも一種のフィラー : 5〜80重量部 成分(d) : 無水マレイン酸又は次の化学式で表わされる水酸基含有無水マレイ ン酸誘導体が、プロピレン系重合体に該成分(d) 全体の3〜25重量%の割合で グラフトした変性プロピレン単独重合体又は同プロピレンとエチレンとのブロッ ク或いはランダム共重合体: 5〜40重量部
を表わす。) 成分(e) :燐オキシ酸化合物: 0.05〜4重量部 成分(f) :末端に水酸基を有するジエンポリマー又はその水素添加物: 0〜10重量部
成分(a) のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、
結晶性ポリプロピレン部分(A単位部)とエチレン・プ
ロピレンランダム共重合部分(B単位部)を含有するプ
ロピレン・エチレンブロック共重合体であって、上記A
単位部はプロピレンの単独重合によって得られるもので
あり、また、上記B単位部はプロピレンとエチレンとの
ランダム共重合によって得られるものである。ここでA
単位部は、特に耐熱剛性の点で該プロピレン・エチレン
ブロック共重合体中に、好ましくは60〜95重量%、
より好ましくは75〜94重量%の割合を占めているこ
とが良く、また、その密度は同じく耐熱剛性の点で0.
9070g/cm3 以上が好ましく、0.9086g/
cm3 以上であることがより好ましい。また、B単位部
は、特に塗料付着性と耐衝撃性の点で該プロピレン・エ
チレンブロック共重合体中に、好ましくは5〜40重量
%、より好ましくは6〜25重量%の割合を占めている
ことが良く、そのエチレン含量は同じく塗料付着性と耐
衝撃性の点で好ましくは20〜80重量%、より好まし
くは25〜50重量%の割合を占めているものが良い。
全体のメルトフローレート(以下単に「MFR」と略記
する。)は5〜100g/10分、特に10〜50g/
10分のものが好ましく、また、該プロピレン・エチレ
ンブロック共重合体全体の重量平均分子量/数平均分子
量(Mw/Mn)は成形加工性及び成形品外観の点で7
以上、特に8以上のものが好ましい。なお、該プロピレ
ン・エチレンブロック共重合体のB単位部の含量は、2
gの試料を沸騰キシレン300g中に20分間浸漬して
溶解させた後、室温まで冷却し、それによって析出した
固相をガラスフィルターで瀘過、乾燥して求めた固相重
量から逆算した値である。また、上記重量平均分子量/
数平均分子量(Mw/Mn)の値はゲルパーミエーショ
ンクロマトグラフィー(GPC)により測定したもので
あり、エチレン含量の値は赤外線スペクトル分析法等に
より、また、MFRの値はJIS−K7210(230
℃、2.16kg)に準拠して測定したものである。
重合体は、高立体規則性重合触媒を用いてスラリー重
合、気相重合、或いは、液相塊状重合により製造される
ものであり、該プロピレン・エチレンブロック共重合体
を製造する重合方式としてはバッチ重合、連続重合どち
らの方式も採用することができる。このプロピレン・エ
チレンブロック共重合体を製造するに際しては、どちら
の部分を先にして重合しても良いが、最初にプロピレン
の単独重合によって結晶性ポリプロピレン部分(A単位
部)を形成し、次にプロピレンとエチレンのランダム共
重合によってエチレン・プロピレンランダム共重合部分
(B単位部)を形成したものが品質上から好ましい。具
体的な方法としては、塩化マグネシウムに四塩化チタ
ン、有機酸ハライド及び有機珪素化合物を接触させて形
成した固体成分に、有機アルミニウム化合物成分を組み
合わせた触媒を用いて、プロピレンの単独重合を行な
い、次いで、プロピレンとエチレンとのランダム共重合
を行なうことによって製造することができる。また、こ
のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、本発明の
効果を損なわない範囲内で他の不飽和化合物、例えばブ
テン−1等のα−オレフィン、酢酸ビニルの様なビニル
エステル等を含有する三元以上の共重合体であってもこ
れらの混合物であっても良い。
成分(a) 〜成分(f) の各成分は、本成分(a) のプロピレ
ン・エチレンブロック共重合体100重量部を基準とし
て配合される。また、成分(b) 以下の各成分の配合割合
は後記する如くである。
共重合ゴム成分(EBM) 本発明の塗装用プロピレン系樹脂組成物を構成する上記
成分(b) のエチレン・ブテン−1二元共重合ゴム成分
は、ブテン−1含量25〜40重量%、好ましくは30
〜40重量%、特に好ましくは30〜36重量%、密度
0.87g/cm3 以下、好ましくは0.84〜0.8
7g/cm3 、特に好ましくは0.85〜0.87g/
cm3 、かつMFR(230℃、2.16kg)10g
/10分以下、好ましくは0.2〜8g/10分のエチ
レン・ブテン−1二元共重合ゴム(EBM)である。上
記範囲以外のエチレン・ブテン−1二元共重合ゴム(E
BM)は、塗料付着性能と機械的強度バランスが不良
で、不適当である。ここで示差熱量計(以下DSC、例
えばセイコー電子工業製RDC−220)で測定(20
℃/分)される融解ピーク温度が35℃以下のものや、
X線法で測定される結晶化度が従来(5〜12%程度)
より格段に低い1%以下のものは組成物の塗料付着強度
と耐衝撃強度を向上させることができる点で特に好まし
い。従来、エチレン・ブテン−1二元共重合ゴム(EB
M)においては、25重量%を超えたブテン−1含量の
ものや、密度が0.87g/cm3 以下、すなわち、低
結晶性のもの、更には、融解温度が35℃以下のものや
結晶化度が1%以下のものは、その製造が極めて困難
(特にペレット状)であったが、重合触媒や重合プロセ
ス等の改良で製造可能となり、本発明の効果を発現させ
ることが可能となった。なお、ブテン−1含量は赤外線
スペクトル分析法等の常法によって測定される値であ
る。これらのエチレン・ブテン−1二元共重合ゴムは、
ベール状、ペレット状、フレーク状、クラム状等を問わ
ず、また、その製造法も特に限定されない。
成分(b) のエチレン・ブテン−1二元共重合ゴム(EB
M)の配合割合は、上記成分(a) 100重量部に対し
て、10〜80重量部、好ましくは30〜80重量部、
特に好ましくは40〜80重量部配合される。配合割合
が、上記範囲未満では塗料付着性能や耐衝撃強度が劣
り、上記範囲を超えると成形品外観、耐熱剛性や寸法安
定性が劣るようになり実用性がない。
(c) のフィラー成分は、実質的に全体の長さが15μm
以下、好ましくは10μm以下であって、平均粒径が
1.5〜6μm、好ましくは1.5〜4μm、かつ平均
アスペクト比が5以上、好ましくは6以上のタルク、平
均粒径が8〜100μm、かつ平均アスペクト比が10
以上、好ましくは15以上のマイカ、又は、平均直径が
6μm以下、好ましくは0.1〜5μmで、かつ平均ア
スペクト比が5以上の繊維状フィラーから選ばれた少な
くとも一種のものである。上記範囲以外のものは、組成
物の機械的強度バランスが不良であり、不適当である。
と機械的強度バランスをより一段と高度化させることが
できるので特に好ましい。ここで、タルクの長さが「実
質的に」とは、殆どのタルク粒子がこの範囲にあるもの
を言う。タルクは、例えばタルク原石を衝撃式粉砕機や
ミクロン型粉砕機で粉砕し、更にミクロンミル、ジェッ
ト型粉砕機で微粉砕した後、サイクロンやミクロンセパ
レーター等で分級調整し製造する。原石は中国産が金属
不純物成分が少ないので好ましい。マイカは、白マイ
カ、金マイカ、黒マイカ等の種類や製法の異なるものが
あり、特にそれらについては限定されないが、好ましく
は白マイカ及び金マイカであり、特に湿式粉砕や湿式分
級の白マイカ及び金マイカが好ましい。繊維状フィラー
としては、ガラス繊維、炭素繊維、硼酸アルミニウム繊
維、チタン酸カリウム繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊
維、炭酸カルシウム繊維等を挙げることができる。これ
らの中で好ましいものは平均直径が0.2〜5μmのも
のであり、平均アスペクト比が10以上のものである。
乱方式粒度分布計を用いて測定した値であり、そのよう
な測定装置としては、例えば堀場製作所製LA−500
型は測定精度が優れているので望ましい。また、直径、
長さとアスペクト比は顕微鏡等により測定した値であ
る。これらフィラーは、界面活性剤、カップリング剤、
金属石鹸等で表面処理を施したものでも良い。該表面処
理したフィラーは、塗料付着性、機械的強度、成形加工
性、成形品外観及び寸法安定性等の更なる向上に有効で
ある。
成分(c) のフィラーの配合割合は、上記成分(a) 100
重量部に対して、5〜80重量部、好ましくは5〜60
重量部、特に好ましくは10〜60重量部配合される。
配合割合が上記範囲未満では耐熱剛性や寸法安定性が劣
り、また、上記範囲を超えると成形品外観や耐衝撃強度
が劣るようになり実用性がない。 (d) 成分(d) :変性プロピレン系重合体 本発明の塗装用プロピレン系樹脂組成物を構成する成分
(d) の変性プロピレン系重合体は、無水マレイン酸又は
次の化学式で表わされる水酸基含有無水マレイン酸誘導
体が、プロピレン系重合体中に該成分(d) 全体の3〜2
5重量%、好ましくは5〜20重量%の割合でグラフト
した変性プロピレン単独重合体、変性プロピレン・エチ
レンブロック共重合体又は変性プロピレン・エチレンラ
ンダム共重合体である。グラフトは、該プロピレン系重
合体の主鎖の少なくとも片末端、及び/又は、該主鎖中
にグラフトモノマーが結合した形で行なわれる。
を表わす。)ここで、プロピレン系重合体の主鎖部の数
平均分子量は1,000〜20,000が好ましく、特
に3,000〜15,000が好ましい。該変性プロピ
レン系重合体の製造法は、特に限定されない。例えば、
予めプロピレン系重合体を熱酸化せしめた後、官能基を
グラフトしたり、押出機や溶液中でグラフトされる方法
等を挙げることができる。
成分(d) の変性プロピレン系重合体の配合割合は、上記
成分(a) 100重量部に対して、5〜40重量部、好ま
しくは10〜40重量部、特に好ましくは10〜35重
量部配合される。配合割合が上記範囲未満では塗料付着
性能が劣り、また、上記範囲を超えると機械的強度バラ
ンスが劣るようになり実用性がない。
(e) の燐オキシ酸化合物成分は、燐原子に直接酸素原子
が結合している構造(燐オキシ酸構造)を有する化合物
であり、これらの中でも燐酸エステル構造をとっている
ものが好ましく、特に好ましくは酸性燐酸エステル誘導
体である。具体例としては、燐酸モノブチルエステル、
燐酸ジブチルエステル、燐酸モノ(2−エチルヘキシ
ル)エステル、燐酸ジ(2−エチルヘキシル)エステ
ル、燐酸モノ(イソデシル)エステル、燐酸ジ(イソデ
シル)エステル、燐酸モノ(ラウリル)エステル、燐酸
ジ(ラウリル)エステル、燐酸モノ(トリデシル)エス
テル、燐酸ジ(トリデシル)エステル、燐酸モノ(ノリ
ルフェノキシエチル)エステル等を挙げることができ
る。
成分(e) の燐オキシ酸化合物成分の配合割合は、上記成
分(a) 100重量部に対して、0.05〜5重量部、好
ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.5〜2
重量部配合される。配合割合が上記範囲未満では塗料付
着性能が劣り、また、上記範囲を超えると機械的強度バ
ランスが劣るようになり実用性がない。
に応じて用いられる上記成分(f) のジエンポリマーは、
末端に水酸基を有するジエンポリマー又はその水素添加
物である。それらの中で、末端に水酸基を有するジエン
ポリマーとしては、例えば、ポリヒドロキシポリブタジ
エンがある。具体的には末端に少なくとも1個の水酸基
を有し、分子量が200〜100,000、好ましくは
500〜50,000、特に好ましくは800〜10,
000の、常温で液体、半固体、固体のポリマーが含ま
れる。1分子当たりの平均水酸基数は一般に1〜10、
特に1.5〜5のものが好ましく、水酸基価が一般に1
5〜250、好ましくは25〜125(KOHmg/
g)のものが好ましい。
1,3−ジエンを原料に用いて、周知の方法、例えば、
ラジカル重合法、アニオン重合法等によって製造したも
のである。具体的には、例えば、特開昭51−7139
1号公報に記載される方法を挙げることができる。この
ものをラジカル重合により製造する場合には、過酸化水
素を重合開始剤として用いてジエン系モノマーを重合す
ることにより得られる。また、アニオン重合により製造
する場合には、共役ジエンを周知の方法に従って、アニ
オン重合触媒、例えばアルカリ金属又は有機アルカリ金
属化合物を用いて重合させることにより得られた末端に
少なくとも一つにアルカリ金属が結合した構造のリビン
グポリマーに、例えばモノエポキシ化合物、ホルムアル
デヒド、アセトアルデヒド、アセトン、若しくは、ハロ
ゲノアルキレンオキシド、ポリエポキシド等を反応させ
れば良い。これらポリマーの原料モノマーとしては、少
なくとも1種類の共役ジエンモノマーが使用される。共
役ジエンモノマーとしては、1,3−ブタジエン、1,
3−ペンタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3
−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,
3−ブタジエン等を挙げることができる。
の水素添加物としては、上述の末端に水酸基を有するジ
エンポリマーを、通常の方法、例えば、特開昭51−7
1391号公報に記載される方法等で水素添加すること
によって得られるものである。水素添加の程度はポリマ
ー中に含まれる二重結合を全部又は部分的に水素添加し
たものであっても良いが、特に沃素価が通常0〜20、
特に0〜5(g/100g)のものが好ましい。これら
の末端に水酸基を有するジエンポリマー又はその水素添
加物は、それぞれ単独でも、複数の混合物として使用す
ることもできる。
成分(f) のジエンポリマーの配合割合は、上記成分(a)
100重量部に対して、0〜10重量部、好ましくは
0.5〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部配合
される。配合割合が上記範囲未満では塗料付着性能が劣
り、また、上記範囲を超えると機械的強度バランスが劣
るようになり実用性がない。
分) 本発明の塗装用プロピレン系樹脂組成物においては、本
発明の効果を著しく損なわない範囲で、或いは、更に性
能の向上を計るために、上記成分(a) 〜成分(f) の必須
成分以外に、以下に示す任意の添加剤や配合材成分を配
合することができる。具体的には、着色するための顔
料、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、光安定
剤、核剤、上記成分(a) 〜成分(f) 以外の各種樹脂、各
種ゴム、各種フィラー等の配合材を挙げることができ
る。これらの中でも、エチレン・プロピレン二元共重合
ゴム(EPM)や、エチレン・プロピレン・ジエン三元
共重合ゴム(EPDM)は、塗料付着強度、耐衝撃強度
や経済性の向上に効果的である。
合割合で配合して、一軸押出機、二軸押出機、バンバリ
ーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグ
ラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒す
ることによって本発明の塗装用プロピレン系樹脂組成物
が得られる。この場合、各成分の分散を良好にすること
ができる混練・造粒方法を選択することが好ましく、通
常は二軸押出機を用いて混練・造粒が行なわれる。この
混練・造粒の際には、上記成分(a) 〜成分(f) 、場合に
より成分(g) の配合物を同時に混練しても良く、また性
能向上を計るべく各成分を分割、例えば、先ず成分(a)
と成分(b) 成分の一部または全部を混練し、その後に残
りの成分を混練・造粒することも出来る。
は、各種成形方法、すなわち、射出成形、射出圧縮成形
(プレスインジェクション)、圧縮成形、押出成形(シ
ート成形、フィルム成形、ブロー成形)等にて成形する
ことによって、各種成形品を得ることができるが、これ
ら各種成形方法の中でも、射出成形(ガス射出成形も含
む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)により
成形することが好ましい。
性、具体的には成形品に塗料(特に、一般的に高い塗料
付着性能を得ることが困難なメラミン系)を直接塗布す
るだけで、かつメラミン系塗料を使用するには従来より
も低い130℃の温度での焼付で、実用十分な塗料付着
性能を得ることができる上に、高度な機械的強度バラン
ス及び良好な成形加工性を有し、接着性や印刷性も良好
であるため、各種工業部品用成形材料として、実用に充
分な性能を有している。
に詳細に説明するために、以下に実験例を示して具体的
に説明するが、本発明はこれらの実験例によって限定さ
れるものではない。 [I] 原材料 (1) 成分(a) …いずれもパウダー状 a−1:密度が0.9091g/cm3 の結晶性ポリプ
ロピレン部分(A単位部)91重量%、エチレン含量が
39重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合部分
(B単位部)9重量%を各々含有し、成分(a) 全体の重
合MFR(230℃、2.16kg)が11g/10
分、成分(a) 全体のMw/Mnが8.4であるプロピレ
ン・エチレンブロック共重合体 a−2:密度が0.9093g/cm3 の結晶性ポリプ
ロピレン部分(A単位部)92重量%、エチレン含量が
40重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合部分
(B単位部)8重量%を各々含有し、成分(a) 全体の重
合MFR(230℃、2.16kg)が20g/10
分、成分(a) 全体のMw/Mnが8.2であるプロピレ
ン・エチレンブロック共重合体 (2) 成分(b) …いずれもペレット状 b−1:ブテン−1含量33重量%、MFR(230
℃、2.16kg)1.1g/10分、密度0.86g
/cm3 、DSC融解ピーク温度26℃、X線法による
結晶化度1%以下(殆ど認められない)のエチレン・ブ
テン−1二元共重合ゴム(EBM) b−2:ブテン−1含量32重量%、MFR(230
℃、2.16kg)6.3g/10分、密度0.86g
/cm3 、DSC融解ピーク温度25℃、X線法による
結晶化度1%以下(殆ど認められない)のエチレン・ブ
テン−1二元共重合ゴム(EBM)
平均粒径が2.7μmで平均アスペクト比が6のタルク c−2:平均直径が0.4μmで、平均アスペクト比が
33の塩基性硫酸マグネシウム繊維 (4) 成分(d) …フレーク状 d−1:MFR(230℃、2.16kg)が60g/
10分、数平均分子量6,800、エチレン含量が4重
量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体を熱酸化
し、更にアゾ系ラジカル開始剤により主鎖の両末端と主
鎖中に,該成分(d) 全体の10重量%の割合で、無水マ
レイン酸基をグラフトし、更にこの無水マレイン酸基を
エタノールアミンにて変性した変性プロピレン重合体 (5) 成分(e) …液状 e−1:燐酸モノ(2−エチルヘキシル))エステル (6) 成分(f) …フレーク状 f−1:沃素価が1.3(g/10分)、水酸基価が8
5.6(KOHmg/cm3 のジエンポリマーの水素添
加物
アースプレーガンを用いて、塗膜厚さが約25μmにな
るようにスプレー塗布した。 (焼付処理)塗装した平板を、130℃で15分間焼付
乾燥した(比較例1には、140℃、20分間焼付乾燥
のデータも追加した)。その後48時間室温で放置し
た。
面に、片刃剃刀を用い、直行する縦横11本づつの平行
線を2mm間隔で引いて碁盤目を100個作った。その
上にセロハン粘着テープ(JIS−Z1522)を十分
圧着し、塗膜面と約30度に保ち、手前に一気に引き剥
がす作業を5回繰り返し、碁盤目で囲まれた部分の状態
を観察して、剥離しなかった碁盤目の数を記録した。 (耐温水碁盤目試験)先ず、焼付け処理した塗装済み試
験片を、40℃の温水中に240時間浸漬した後、24
時間室温で放置した。その後、片刃剃刀を用い、直行す
る縦横11本づつの平行線を2mm間隔で引いて碁盤目
を100個作った。その上にセロハン粘着テープ(JI
S−Z1522)を十分圧着し、塗膜面と約30度に保
ち、手前に一気に引き剥がす作業を5回繰り返し、碁盤
目で囲まれた部分の状態を観察して、剥離しなかった碁
盤目の数を記録した。この際、剥離の無かった試験片に
ついては、更に5回繰り返した。通常、最初の5回で剥
離が無ければ実用レベルである。
た。測定温度は23℃である。本値は耐熱性の目安とも
なる。特に1,400MPa以上のものは各種工業部品
用に有用であり、1,500MPa以上のものは特に有
用である。 (アイゾット衝撃強度)JIS−K7110に準拠(ノ
ッチ付き)して測定した。測定温度は−30℃である。
特に5KJ/m2 以上のものは各種工業部品用に有用で
あり、6KJ/m2 以上のものは特に有用である。
として、スクリューインライン式射出成形機を用いて、
スパイラル金型(流動断面形状:上辺=13mm、下辺
=14.5mm、厚み=3mm、ゲート=ダイレクト)
における流動長さを測定した。この際の成形条件は、成
形温度=220℃、金型温度=20℃、スクリュー回転
数70rpm、射出圧力=600kg/cm2 とした。
特に1,200mm以上のものは、成形加工性が良好で
ある。また、一部のサンプルについては、MFRをJI
S−K7210(230℃、2.16kg)に準拠し測
定した。この場合、MFRが8g/10分以上のものは
成形加工性が良好で、12g/10分以上のものは特に
良好である。
した。特に1.05g/cm3 以下、特に1.03g/
cm3 以下のものは、軽量にも拘らず、優れた強度を有
し、好ましい。
(e) 及び成分(f) を表1に示す割合で配合し、更にテト
ラキス〔メチレン‐3‐(3′,5′‐ジ‐t‐ブチル
‐4′‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン
を、成分(a) 〜成分(e) 或いは成分(a) 〜成分(f) の合
計量100重量部換算で0.1重量部を各々配合し、こ
れらを高速ミキサーにて充分に混合した(ただし、表1
のフィラーにおいて成分c−2を用いる場合には、繊維
部分は除外し、後段押出機にて途中フィードした。)。
その後、(株)神戸製鋼所製高速型二軸押出機(KCM
型)を用いて、210℃の温度条件下にて混練造粒し、
得られたペレットを上記射出成形機へ供給して、塗装用
シート試験片及び物性測定用試験片を成形して、評価を
行なった。その評価結果を表2に示す。表1及び表2に
示す様に、実施例1〜7に示す組成を持った樹脂組成物
は、いずれも良好な塗料付着性能、機械的強度バランス
及び成形加工性を有すると共に、軽量であった。一方、
比較例1〜7に示したものは、これらの性能バランスが
不良であった。
は、優れた塗装性、具体的にはTCE前処理やプライマ
ー塗布を施すことなく、成形品に塗料(特に、一般的に
150℃未満での焼付乾燥では、高い塗料付着性能を得
ることが困難なメラミン系)を直接塗布するだけで、か
つ130℃、15分程度の効率的な焼付乾燥条件下で
も、実用十分な塗料付着性能を得ることができ、しか
も、高度な機械的強度バランス(特に高い剛性と低温耐
衝撃強度)及び極めて優れた成形加工性を有し、更に、
軽量で、寸法安定性にも優れているので、各種の工業部
品として適用が期待でき、工業的に極めて重要な素材で
ある。
Claims (6)
- 【請求項1】下記の成分(a) 〜成分(f) からなることを
特徴とする塗装用プロピレン系樹脂組成物。 成分(a) : 結晶性ポリプロピレン部分(A単位部)とエチレン・プロピレンラ ンダム共重合部分(B単位部)とを含有するプロピレン・エチレンブロック共重 合体: 100重量部 成分(b) : ブテン−1含量が25〜40重量%、密度が0.87g/cm3 以 下かつメルトフローレート(230℃、2.16kg)が10g/10分以下の エチレン・ブテン−1二元共重合ゴム: 10〜80重量部 成分(c) : 実質的に全体の長さが15μm以下で、平均粒径が1.5〜6μm 、かつ平均アスペクト比が5以上のタルク、平均粒径が8〜100μm、かつ平 均アスペクト比が10以上のマイカ、又は、平均直径が6μm以下で、かつ平均 アスペクト比が5以上の繊維状フィラーから選ばれた少なくとも一種のフィラー : 5〜80重量部 成分(d) : 無水マレイン酸又は次の化学式で表わされる水酸基含有無水マレイ ン酸誘導体が、プロピレン系重合体に該成分(d) 全体の3〜25重量%の割合で グラフトした変性プロピレン単独重合体又は同プロピレンとエチレンとのブロッ ク或いはランダム共重合体: 5〜40重量部 【化1】 (式中、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を表わす。) 成分(e) :燐オキシ酸化合物: 0.05〜4重量部 成分(f) :末端に水酸基を有するジエンポリマー又はその水素添加物: 0〜10重量部 - 【請求項2】成分(a) が、A単位部がブロック共重合体
の60〜95重量%を占め、その密度が0.9070g
/cm3 以上であり、B単位部がブロック共重合体の5
〜40重量%を占め、そのエチレン含量が20〜80重
量%であり、かつ、成分(a)全体のメルトフローレート
(230℃、2.16kg)が5〜100g/10分
で、成分(a) 全体の重量平均分子量/数平均分子量が7
以上であるブロック共重合体である、請求項1に記載の
塗装用プロピレン系樹脂組成物。 - 【請求項3】成分(b) のエチレン・ブテン−1二元共重
合ゴム(EBM)が、示差熱量計による融解(ピーク)
温度が35℃以下のものである、請求項1に記載の塗装
用プロピレン系樹脂組成物。 - 【請求項4】成分(d) が、次の化学式で表わされる水酸
基含有無水マレイン酸誘導体がプロピレン系重合体に該
成分(c) 全体の5〜20重量%の割合でグラフトした数
平均分子量が4,000〜13,000の変性プロピレ
ン単独重合体又は同プロピレンとエチレンとのブロック
或いはランダム共重合体である、請求項1に記載の塗装
用プロピレン系樹脂組成物。 【化2】 - 【請求項5】成分(e) が酸性燐酸エステル誘導体であ
る、請求項1に記載の塗装用プロピレン系樹脂組成物。 - 【請求項6】樹脂組成物が、曲げ弾性率1,400MP
a以上、−30℃アイゾット衝撃強度5KJ/m2 以
上、スパイラル長さ1,200mm以上、かつ密度1.
05g/cm3 以下の性能を有するものである、請求項
1に記載の塗装用プロピレン系樹脂組成物。
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1995
- 1995-06-29 JP JP16391495A patent/JP3342989B2/ja not_active Expired - Fee Related
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