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JP3075472B2 - ポリイミド/エポキシ樹脂複合体及びその製法 - Google Patents

ポリイミド/エポキシ樹脂複合体及びその製法

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Publication number
JP3075472B2
JP3075472B2 JP10224917A JP22491798A JP3075472B2 JP 3075472 B2 JP3075472 B2 JP 3075472B2 JP 10224917 A JP10224917 A JP 10224917A JP 22491798 A JP22491798 A JP 22491798A JP 3075472 B2 JP3075472 B2 JP 3075472B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
epoxy resin
polyamic acid
polyimide
composite
uncured
Prior art date
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Expired - Lifetime
Application number
JP10224917A
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English (en)
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JPH11116803A (ja
Inventor
康久 永田
Original Assignee
東邦レーヨン株式会社
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Filing date
Publication date
Application filed by 東邦レーヨン株式会社 filed Critical 東邦レーヨン株式会社
Priority to JP10224917A priority Critical patent/JP3075472B2/ja
Publication of JPH11116803A publication Critical patent/JPH11116803A/ja
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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性に優れ、エ
レクトロニクス、輸送機器、航空・宇宙分野等に広く使
用されているポリイミドと、エポキシ樹脂成分との複合
体に関するものである。詳しくは、ポリイミドの前駆体
であるポリアミック酸の三次元網目構造に、硬化のエ
ポキシ樹脂成分のモノマー又はオリゴマーを複合させ、
特異な相互侵入網目高分子構造の複合体を与えた後、ポ
リアミック酸成分は脱水・閉環反応によりイミド化を完
結させ、未硬化の硬化性樹脂成分は、熱、光又は電子線
等の手段により高分子量化させて得られる新規なポリイ
ミド/エポキシ樹脂複合体、及びその製法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジア
ミンを有機溶媒中で重縮合させて得られたポリアミック
酸を前駆体とし、加熱脱水又は脱水剤よる化学的反応に
より脱水・閉環させ、ポリイミド樹脂を得る方法は公知
である。
【0003】ポリイミド樹脂は、その優れた耐熱性、耐
摩耗性、耐薬品性、電気絶縁性、機械的特性から、電気
・電子材料、接着剤、塗料、複合材料、繊維又はフィル
ム材料等に広く使用されている。
【0004】一般に、ポリイミド樹脂の前駆体であるポ
リアミック酸の重合は、ポリマー濃度が5〜20重量%
となるように有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物と
芳香族ジアミンを重付加反応させる方法で行われ、有機
溶媒に均一に溶解した高分子量のポリアミック酸溶液が
得られる。このポリアミック酸溶液から溶媒を除去させ
て、フィルムあるいは成形物が作られる。更に、この成
形体を高温処理又は化学的処理により脱水・閉環反応を
進め、ポリイミド成形体を得るのが通常の方法である。
【0005】ポリイミドに硬化性樹脂成分を混合させた
ブレンド物に関しては、特開昭62−30122号、特
開昭63−86746号、特開昭63−175854号
等の公報に示されており、その技術は公知である。その
技術の目的は、主に耐熱性の改善、成形性の改良等であ
る。
【0006】しかしながら、特定のモノマー組成により
達成された三次元網目構造のポリアミック酸の分子鎖の
中に未硬化の硬化性樹脂成分である反応性モノマーある
いは反応性オリゴマーを混在させ、ポリアミック酸と未
硬化の硬化性樹脂成分の相互侵入網目高分子構造(IP
N構造)を形成させた後、ポリアミック酸成分は加熱あ
るいは化学的処理により脱水・閉環反応させてポリイミ
ド化を完結させ、未硬化の硬化性樹脂成分は熱、光又は
電子線等の手段で、硬化反応により高分子量化させて得
られたポリイミド/硬化樹脂複合体に関しては、報告が
なされていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、テト
ラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン及び多価アミン
を主成分としたポリアミック酸と未硬化のエポキシ樹脂
成分を複合させて得られる、新規なポリアミック酸/未
硬化のエポキシ樹脂複合体の高分子ゲルを前駆体とし
て、ポリアミック酸成分の脱水・閉環反応と未硬化のエ
ポキシ樹脂成分の硬化反応を行わせることによって、フ
ィルム等を含む強靱な成形体を与え、且つ、耐熱性に優
れた新しい相互侵入網目構造のポリイミド/エポキシ樹
脂複合体、及び、その製法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、テトラカルボ
ン酸二無水物、芳香族ジアミン、並びにひとつの分子構
造中に三個以上のアミノ基及び/又はアンモニウム塩基
を有する多価アミンを主成分としたポリアミック酸と未
硬化のエポキシ樹脂を複合した相互侵入網目高分子構造
のポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体を前駆
体として、ポリアミック酸成分の脱水・閉環反応と未硬
化のエポキシ樹脂の硬化反応により得られる相互侵入網
目高分子構造のポリイミド/エポキシ樹脂複合体である
ことを特徴とする。
【0009】また本発明は、上記ポリイミド/エポキシ
樹脂複合体において、多価アミンが、テトラカルボン酸
二無水物100モルに対し2〜25モル用いられている
ことを特徴とする。
【0010】また本発明は、上記ポリイミド/エポキシ
樹脂複合体において、ポリイミド/エポキシ樹脂複合体
に用いられた未硬化のエポキシ樹脂が、熱、光、電子線
によって硬化する反応性モノマー及び/又は反応性オリ
ゴマーを主成分とした樹脂又は樹脂組成物であることを
特徴とする。
【0011】また本発明の相互侵入網目高分子構造のポ
リイミド/エポキシ樹脂複合体の製造方法は、テトラカ
ルボン酸二無水物、芳香族ジアミン、並びにひとつの分
子構造中に三個以上のアミノ基及び/又はアンモニウム
塩基を有する多価アミンを主成分として反応させたポリ
アミック酸溶液を、未硬化のエポキシ樹脂又はエポキシ
樹脂組成物を複合させ、0〜100℃に保つことでポリ
アミック酸の架橋反応を溶液中で進めて得られる三次元
網目構造のポリアミック酸成分と、未硬化のエポキシ樹
脂とが共存した、ポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹
脂複合体の高分子ゲルを処理し、ポリアミック酸の脱水
・閉環反応と未硬化のエポキシ樹脂の硬化反応とを行わ
せることを特徴とする。
【0012】この新規なポリイミド/エポキシ樹脂複合
体の前駆体であるポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹
脂複合体は、全体の97重量%を超えない量の有機溶媒
を含んだ高分子ゲルの状態でも流動を起こさず、形状を
保持できるような自己支持性のある三次元網目構造体の
高分子ゲルを与えるものであり、これより溶媒を除去し
ポリアミック酸成分の脱水・閉環反応と未硬化のエポキ
シ樹脂の硬化反応により高分子量化して得られたポリイ
ミド/エポキシ樹脂複合体は、ポリイミドの優れた耐熱
性等の特性と、既存のエポキシ樹脂の特性とを兼備した
特異な性質の複合体を与える。
【0013】本発明のポリイミド/エポキシ樹脂複合体
は、以下のような手法により調製される。 (1)有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物、芳香
族ジアミン及び多価アミンを混合し、重付加反応させる
ことにより、有機溶媒に均一に溶解したポリアミック酸
溶液を得る。 (2)未硬化のエポキシ樹脂である反応性モノマー及び
/又は反応性オリゴマーを主成分としたエポキシ樹脂又
はエポキシ樹脂組成物を、前述のポリアミック酸溶液に
複合させる。この場合、予め有機溶媒中に未硬化のエポ
キシ樹脂を含ませた溶液中でポリアミック酸の重付加反
応を行わせるか、重付加反応により得られたゲル化に至
っていないポリアミック酸溶液に、未硬化のエポキシ樹
脂を添加する等の方法により、未硬化のエポキシ樹脂と
ポリアミック酸の複合化を行わせる。 (3)ポリアミック酸溶液と未硬化のエポキシ樹脂を複
合した混合溶液が、ゲル化を起こす前にフィルム等の形
状に賦形させるために、混合溶液を基材上等に流延又は
成形型に流入させる。 (4)上記溶液を、0〜100℃の間の温度条件で少な
くとも1分間以上静置し、複合体の一成分であるポリア
ミック酸の官能基による架橋反応を有機溶媒中で進行さ
せることで三次元網目構造を形成させ、有機溶媒と未硬
化のエポキシ樹脂を含んだポリアミック酸の高分子ゲル
を得る。 (5)有機溶媒と未硬化のエポキシ樹脂を含んだポリア
ミック酸の高分子ゲルより、有機溶媒を除去し、成形体
を得る。 (6)成形体を構成しているポリアミック酸成分の脱水
・閉環反応と、未硬化のエポキシ樹脂の硬化反応とを完
結させ、ポリイミド/エポキシ樹脂複合体を得る。
【0014】以下、調製方法の詳細を述べる。
【0015】まず最初に、有機溶媒中でテトラカルボン
酸二無水物、芳香族ジアミン及び多価アミンを混合し、
重付加反応させることにより、有機溶媒に均一に溶解し
たポリアミック酸溶液を調製する。
【0016】本発明において、テトラカルボン酸二無水
物、芳香族ジアミン及び多価アミンを重付加反応させる
ことにより、最初は有機溶媒に均一に溶解したポリアミ
ック酸溶液が得られる。しかし、このポリアミック酸溶
液の状態は中間的なものであり、ポリアミック酸に含ま
れる官能基による架橋反応が有機溶媒中で徐々に進行す
ることにより、ポリアミック酸成分の三次元網目構造が
形成され、最終的には有機溶媒を含んだポリアミック酸
の高分子ゲルとなるものである。
【0017】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミンの重付加反応において、この反応は、
結局のところ、テトラカルボン酸二無水物とアミン類と
の反応であり、調製方法としては、窒素ガスのような不
活性雰囲気下、芳香族ジアミンと多価アミンを有機溶媒
で溶解させた溶液中にテトラカルボン酸二無水物を加え
ればよい。テトラカルボン酸二無水物は、固形で加えて
も、溶媒で溶解させた液状で加えてもよい。テトラカル
ボン酸二無水物に、芳香族ジアミンと多価アミンを加え
る方法でもよい。
【0018】本発明で用いられるテトラカルボン酸二無
水物の代表例としては、ピロメリット酸二無水物、3,
3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無
水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカ
ルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテ
トラカルボン酸二無水物、2,2′,6,6′−ビフェ
ニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフ
タレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナ
フタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス
(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、
ジフェニルスルホン−3,3′,4,4′−テトラカル
ボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニ
ル)エーテル二無水物、3,4,9,10−ペリレンテ
トラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5
−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,
5,8−テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,
2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、エチレングリ
コールビス(アンヒドロトリメリテート)などであり、
単独又は二種以上の混合物で用いることができる。
【0019】この中でも、テトラカルボン酸二無水物と
して、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラ
カルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無
水物の単独又は二種以上の混合物で用いることが、耐熱
性が高く、機械的特性に優れたポリイミド複合体を得る
上で好ましい。
【0020】テトラカルボン酸二無水物と反応させる芳
香族ジアミンの代表例としては、メタフェニレンジアミ
ン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフ
ェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルメタ
ン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−
ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジ
フェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスル
ホン、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,
4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミ
ノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニル
エーテル、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,
3′−ジアミノベンゾフェノン、2,2′−ビス(4−
アミノフェニル)プロパン、ベンジジン、3,3′−ジ
アミノビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、2,5
−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、ビス
〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、
ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホ
ン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エ
ーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニ
ル〕エーテル、2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェ
ノキシ)フェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−
(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,
4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,
4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−
ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2′−ビ
ス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフ
ロロプロパン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−
ジアミノナフタレン及びこれらの誘導体等が挙げられ
る。また、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド
化合物も使用できる。これらは、単独又は二種以上の混
合物で用いることができる。この中でも、芳香族ジアミ
ンとして、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジ
アミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニ
ルエーテルの単独又は二種以上の混合物で用いること
が、耐熱性が高く、機械的特性に優れたポリイミド複合
体を得る上で好ましい。
【0021】本発明において多価アミンとは、ひとつの
分子構造中に三個以上のアミン基及び/又はアンモニウ
ム塩基を有する化合物を示す。
【0022】多価アミンの代表例としては、3,3′,
4,4′−テトラアミノジフェニルエーテル、3,
3′,4,4′−テトラアミノジフェニルメタン、3,
3′,4,4′−テトラアミノベンゾフェノン、3,
3′,4,4′−テトラアミノジフェニルスルホン、
3,3′,4,4′−テトラアミノビフェニル、1,
2,4,5−テトラアミノベンゼン、3,3′,4−ト
リアミノジフェニルエーテル、3,3′,4−トリアミ
ノジフェニルメタン、3,3′,4−トリアミノベンゾ
フェノン、3,3′,4−トリアミノジフェニルスルホ
ン、3,3′,4−トリアミノビフェニル、トリアミノ
ベンゼン及びこれらの化合物の官能基を第四級アンモニ
ウム塩の形に変えた化合物類、例えば3,3′,4,
4′−テトラアミノビフェニル・四塩酸塩等が挙げられ
る。第四級アンモニウム塩としては塩酸塩の他に、硫酸
塩、硝酸塩の形で用いることもできる。これらの化合物
の中には、多価アミンの官能基の全てが第四級アンモニ
ウム塩の形でないものも含まれる。
【0023】また、上記物質の中には水和物として存在
しているものもあり、これらの多価アミン類は単独又は
二種以上の混合物で用いることもできる。脂肪族類の多
価アミンを使用することも可能である。
【0024】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミンを主成分としたポリアミック酸を得る
反応において用いられる有機溶媒は、反応に対して不活
性であると同時に、使用するモノマー類及び重合された
高分子量物を溶解させることが必要で、代表的なものと
しては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメ
チルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、
N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシ
ド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルメ
トキシアセトアミド、ヘキサメチルホスホアミド、ピリ
ジン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ク
レゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類
や、ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンゾニトリル、
ジオキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0025】これらの溶媒は、単独又は二種以上混合し
て使用される。
【0026】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミンを主成分としたポリアミック酸を得る
には、有機溶媒中、−10〜30℃の温度条件下、特に
好ましくは−5〜20℃の温度範囲で反応させる。反応
時間は5時間以内、好ましくは2時間以内である。
【0027】反応温度が−10℃より低い場合は、取扱
性や反応方法の難しさに加え、温度が低過ぎるため反応
自身が充分に進まない場合があり、好ましくない。反応
温度が30℃を超える場合は、架橋反応が有機溶媒中で
進行する速度が大で、ポリアミック酸成分の三次元網目
構造が形成される、所謂ゲル化に至るまでの反応が速す
ぎて、未硬化のエポキシ樹脂を複合化させる以前にゲル
化現象が起こり、ポリアミック酸と未硬化のエポキシ樹
脂との均一な複合体が得られない場合がある。従って、
ポリアミック酸成分は、−10〜30℃の温度条件下、
特に好ましくは−5〜20℃の温度条件下で反応させ
る。
【0028】一般に、テトラカルボン酸二無水物と芳香
族ジアミンからポリアミック酸を調製する場合、分子量
を上げるために両成分を、できる限り等モルで反応させ
ることが好ましい。本発明でもポリアミック酸成分の架
橋点間分子量と架橋度を最適化するため、テトラカルボ
ン酸二無水物/芳香族ジアミンのモル比を(100)/
(50〜100)、テトラカルボン酸二無水物/芳香族
ジアミン/多価アミンのモル比を(100)/(50〜
100)/(2〜25)の範囲内にとどめ、且つ、テト
ラカルボン酸二無水物とアミン類(芳香族ジアミンと多
価アミン)の反応基の当量比(酸価/アミン価の比)を
0.95〜1.05の範囲内に合わせることが、自己支
持性のあるポリアミック酸の高分子ゲルを得る上で好ま
しいが、アミン過剰の状態でも組成によっては強靱な複
合体が得られる。
【0029】一般にこの範囲を外れた組成でもモノマー
を配合し反応させた場合、ポリアミック酸の重合度が上
がらず、得られる複合体の性質、例えば機械的性質等も
著しく低いものとなる。
【0030】反応させるテトラカルボン酸二無水物/多
価アミンのモル比は、(100)/(2〜25)である
ことが好ましく、特に好ましくは、(100)/(4〜
15)の範囲であるが、用いるモノマーの種類により、
その好適な組成範囲が若干ずれる場合もありうる。
【0031】多価アミンは、ポリアミック酸成分の架橋
点として働き、その配合比によりポリアミック酸の高分
子ゲルに存在する網目濃度(架橋密度)を変化させる。
多価アミンの配合モル数が、テトラカルボン酸二無水物
100モルに対し、2モルより小さいと、溶液中でのポ
リアミック酸成分の架橋点が少なくなり、三次元網目構
造が不完全になり、自己支持性のなる高分子ゲルとなり
にくい。多価アミンの配合モル数が25モルより大きい
と、三次元網目構造の架橋点の増加と架橋点間分子量の
低下を招き、ポリアミック酸複合体の性能を変化させ、
最終的に得られるポリイミド/エポキシ樹脂複合体をむ
しろ脆性的にし、強度と耐熱性低下させる傾向が出てく
る。従って、多価アミンの配合モル数は、テトラカルボ
ン酸二無水物100モルに対し、2〜25モルの範囲内
がよい。
【0032】これらのテトラカルボン酸二無水物、芳香
族ジアミン及び多価アミン成分は、単独又は二種以上の
混合物で用いられるため、得られるポリマーは共重合体
のものを含む。また、特定の成分から成るポリアミック
酸と、このポリアミック酸の構成成分の少なくとも一種
類が異なるポリアミック酸混合した、ポリアミック酸の
ブレンドも含まれる。
【0033】この様にして得られたポリアミック酸溶液
は、前述のようにポリアック酸の高分子ゲルに至るまで
の中間的なものであり、ポリアミック酸に含まれる官能
基による架橋反応が有機溶媒中で徐々に進行することに
より、ポリアミック酸成分の三次元網目構造が形成され
ゲル化を起こし、最終的には有機溶媒を含んだポリアミ
ック酸の高分子ゲルを与える。また、テトラカルボン酸
二無水物、芳香族ジアミン及び多価アミン成分を主とす
る重付加反応により生成された重合物の中には、三次元
網目構造に関与しない線状の高分子量物も含まれる。こ
れらは、有機溶媒で抽出されることで存在が確認され
る。
【0034】次に、ポリアミック酸成分に未硬化のエポ
キシ樹脂として、硬化する前の反応性モノマー及び/又
は反応性オリゴマーを主成分としたエポキシ樹脂又はエ
ポキシ樹脂組成物を混合し、複合化させる。
【0035】未硬化のエポキシ樹脂をポリアミック酸成
分と複合させる方法については、未硬化のエポキシ樹脂
である反応性モノマー又はオリゴマーを主成分としたエ
ポキシ樹脂又はエポキシ樹脂組成物を、主に有機溶媒に
溶解させ、前述のゲル化前のポリアミック酸溶液に加
え、混合するのがよい。また、予め有機溶媒中に未硬化
のエポキシ樹脂を含ませた溶液中で、ポリアミック酸成
分の重付加反応を行わせて複合させてもよい。しかし、
この場合、未硬化のエポキシ樹脂である反応性モノマー
あるいはオリゴマーが、ポリアミック酸のモノマー成分
であるテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン及び
多価アミンと反応して、副生成物を形成しないように条
件を選択する配慮が必要である。
【0036】ポリアミック酸成分に複合される未硬化の
エポキシ樹脂は、少なくとも有機溶媒に可溶な反応性モ
ノマー及び/又は反応性オリゴマーを主成分としたエポ
キシ樹脂又はエポキシ樹脂組成物であり、最終的には硬
化反応により三次元的な架橋物を与える。
【0037】エポキシ樹脂には、ビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂(例えば、シェル化学社製エピコート82
8)、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂(例え
ば、チバ・ガイギー社製EPN1138)、クレゾール
・ノボラック型エポキシ樹脂〔例えば、日本化薬(株)
社製EOCN102〕、グリシジルアミン型エポキシ樹
脂(例えば、チバ・ガイギー社製アラルダイトMY72
0)が代表例として挙げられる。硬化剤としては、ジシ
アンジアミドやジアミノジフェニルスルホン(略語:D
DS)等のアミン系硬化剤の他に、無水フタル酸や無水
ナルジック酸等の酸無水物系硬化剤を用いるのが一般で
ある。
【0038】未硬化のエポキシ樹脂は、熱可塑性樹脂の
ような異種の樹脂あるいは充填剤や添加剤等を含んだ樹
脂組成物としてポリアミック酸に混合させ、複合体とす
る場合もある。
【0039】その他、アスペクト比(繊維長/繊維径)
が2以上の炭素質繊維や、アルミナ繊維等のセラミック
ス繊維や金属繊維や、有機繊維等の繊維物質もポリアミ
ック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体つまりはポリイミ
ド/エポキシ樹脂複合体に含ませることができる。
【0040】また、複合体の中には他の物質、例えば、
各種金属化合物、低分子有機化合物、無機充填剤、着色
剤等が含まれてもよい。
【0041】これらの物質は、単独又は二種以上を混合
して用いることも可能である。
【0042】混合の際に未硬化のエポキシ樹脂を溶解さ
せる溶媒としては、代表的なものとして、N,N−ジメ
チルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の
アミド系溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール
等のフェノール類、ジメチルスルホン、テトラメチレン
スルホン、ジメチルスルホキシド等のスルホン系溶媒、
ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭
化水素類、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶
媒、ケトン類、アルコール類、N−メチル−2−ピロリ
ドン、ベンゾニトリル、ピリジン、ジオキサン、ポリリ
ン酸、N,N−ジエチルアニリン等が挙げられる。これ
ら溶媒は、単独又は二種以上混合して使用される。
【0043】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミン成分からなるポリアミック酸と未硬化
のエポキシ樹脂との混合時に使用する有機溶媒の量は、
得られるポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体
が有機溶媒中に3〜40重量%、好ましくは5〜30重
量%含まれるように調製することが取扱性の面で好まし
い。ポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体の濃
度が3重量%未満では、得られたゲルの自己支持性が悪
く、40重量%超ではポリアミック酸成分の固形分濃度
が高過ぎるため、ポリアミック酸成分と未硬化のエポキ
シ樹脂の混合が難しい傾向にある。
【0044】以上のような操作によって、有機溶媒に均
一に溶解したポリアミック酸と未硬化のエポキシ樹脂の
複合された混合溶液が得られる。
【0045】ポリアミック酸と未硬化のエポキシ樹脂の
混合溶液は、0〜100℃の温度範囲で少なくとも1分
間以上静置することにより、ポリアミック酸成分に含ま
れる官能基による三次元架橋反応が有機溶媒中で進み、
ゲル化現象が起こり、有機溶媒を含んだポリアミック酸
/未硬化のエポキシ樹脂複合体の高分子ゲルが生成され
る。
【0046】ポリアミック酸溶液と未硬化のエポキシ樹
脂が複合された混合溶液より、フィルム等を賦形するた
めに、混合溶液を基材上等に流延又は成形型に流入させ
た後、ゲル化を起こさせることにより、均一なゲル状の
フィルム等が得られる。
【0047】混合溶液を流延させる基材としては、表面
の平滑なフィルム状の素材が用いられ、ステンレス等の
金属フィルム、ポリエステル等の高分子フィルム等が主
として用いられる。また、基材としてガラス板等も使用
できる。お互いの分子鎖が相互に侵入されたポリイミド
/エポキシ樹脂複合体を得るためには、前駆体であるポ
リアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体において、
テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン及び多価ア
ミンの重合物であるポリアミック酸が三次元網目構造を
形成する、所謂ゲル化を起こす前に未硬化のエポキシ樹
脂を混合させておくことが望まれる。ポリアミック酸と
未硬化のエポキシ樹脂を複合させる他の方法として、予
め調製されゲル化を起こしたポリアミック酸の高分子
に、未硬化のエポキシ樹脂を溶解あるいは分散させられ
た溶液を接触させ、ポリアミック酸高分子ゲルの三次元
網目構造中に未硬化のエポキシ樹脂を含む溶液を侵入さ
せる方法により、両者を複合した高分子ゲルを得る方法
もある。有機溶媒を含んだポリアミック酸/未硬化のエ
ポキシ樹脂複合体の高分子ゲルより、有機溶媒を除去す
ることにより、フィルム等の成形体を得ることができ、
ポリイミド/エポキシ樹脂複合体の前駆体として用いら
れる。
【0048】脱溶媒は、常圧又は真空下で溶媒を蒸発さ
せるか、有機溶媒の溶媒置換等の方法により行わせるこ
とができる。
【0049】ポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複
合体の高分子ゲルより、有機溶媒を蒸発させ除去するた
めには、第一段階として常圧又は真空下で100℃以下
の温度で処理することが好ましい。最初から100℃以
上の温度で処理した場合、急激な溶媒の蒸発による成形
体の発泡、あるいはポリアミック酸成分の脱水・閉環反
応によるイミド化の進行等の不都合が起こり好ましくな
い。脱溶媒により、ポリアミック酸/未硬化のエポキシ
樹脂複合体中に含まれる溶媒の含有率を50重量%以
下、好ましくは40重量%以下に調製した後、基材上よ
り離脱させ、ポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複
合体の成形体が得られる。また、基材上で、引き続き更
に加熱温度を上げ、ポリアミック酸成分の脱水・閉環反
応と未硬化のエポキシ樹脂の硬化反応を進めてもよく、
このような処理により、均質で良好な成形体が得られ
る。
【0050】溶媒を含んだポリアミック酸/未硬化のエ
ポキシ樹脂複合体の高分子ゲルを、ポリアミック酸複合
体の貧溶媒を凝固浴として浴中に浸漬せしめ、複合体中
に残存する有機溶媒の溶媒置換を行わせ、続いて乾燥さ
せることによりポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂
複合体の成形体を得ることもできる。
【0051】この場合、凝固液としては、水、メタノー
ルやエタノール等のアルコール類、アセトン等のような
ケトン類の単独又は混合系が考えられる。少量であれ
ば、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、
1,2−ジクロロエタンのような塩素系溶媒等を凝固液
の中に含んでもよいが、前駆体であるポリアミック酸/
未硬化のエポキシ樹脂複合体を溶解あるいは膨潤させ
て、その形状を著しく損ねるような凝固液は使用できな
い。
【0052】以上のような操作によって、ポリアミック
酸成分と未硬化のエポキシ樹脂の複合された成形体が得
られ、ポリイミド/エポキシ樹脂複合体の前駆体として
用いられる。
【0053】ポリイミド/エポキシ樹脂複合体は、前駆
体であるポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体
に含まれるポリアミック酸成分の脱水・閉環反応と未硬
化のエポキシ樹脂の硬化反応を完結させることにより得
られる。
【0054】ポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複
合体中に含まれるポリアミック酸成分の脱水・閉環反応
を行わせ、イミド化を完結させる方法としては、一般の
ポリイミド樹脂で用いられているイミド化の方法と同様
の方法を採用することができる。
【0055】例えば、高温処理によりイミド化を完結さ
せる場合は、ポリアミック酸の複合体を50〜200℃
の温度で少なくとも10秒以上乾燥させ、更に150〜
500℃、好ましくは200〜450℃の高温で熱処理
する。複合フィルムの場合、フィルムの一対の両端を固
定枠、チャックあるいはピンガイド等で固定させて処理
すると、寸法安定性や機械的特性に優れたフィルムが得
られやすい。
【0056】また、ポリアミック酸複合体を脱水剤に浸
漬あるいは複合体中に脱水剤を含ませるような化学的処
理によりポリアミック酸成分を脱水・閉環反応させる方
法がある。
【0057】化学的処理による脱水・閉環反応において
は、アミン類を触媒として、酸無水物を脱水剤として用
いるのが効果的である。酸無水物の例としては、無水酢
酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族酸無水
物、無水安息香酸などの芳香族酸無水物がある。これら
は、単独又は二種以上の混合物として用いることができ
る。
【0058】触媒としてのアミン類の例としては、トリ
メチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミ
ン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、
α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノ
リン、ルチジン等の第三級アミンの中から選ばれる少な
くとも一種のアミンが挙げられる。
【0059】化学的脱水反応において添加する酸無水物
の量は、ポリアミック酸に存在するカルボキシル基1当
量に対して1〜5当量、好ましくは1〜3当量である。
触媒の量は、ポリアミック酸に存在するカルボキシル基
1当量に対して0.01〜1.5当量、好ましくは0.
2〜1当量である。
【0060】化学的処理による脱水・閉環反応において
は、ポリイミド/エポキシ樹脂複合体の前駆体であるポ
リアミック酸複合体に含まれる未硬化のエポキシ樹脂
が、その種類によっては酸無水物やアミン類などの脱水
剤に溶解あるいは膨潤する場合がある。このような場合
は、予め脱水剤を含ませた複合体の高分子ゲルから成形
体を調製するか、化学的脱水処理する前に未硬化のエポ
キシ樹脂の硬化反応だけを進める等の処置をしておくと
よい。
【0061】未硬化のエポキシ樹脂は、熱、光、電子線
によって硬化する反応性モノマー及び/又は反応性オリ
ゴマーを主成分としたエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂組
成物であり、これらはポリアミック酸成分をポリイミド
にするための加熱処理時に、同時に硬化反応を進める
か、あるいは予めポリアミック酸との複合体の段階で光
や電子線を照射し、硬化を完結させてもよい。
【0062】以上のような手順により、ポリイミド/エ
ポキシ樹脂複合体が得られる。
【0063】ポリイミド/エポキシ樹脂複合体に含まれ
るエポキシ樹脂成分は、複合体全量の1〜80重量%で
あることが好ましい。
【0064】本発明のポリイミド/エポキシ樹脂複合体
に用いられる未硬化のエポキシ樹脂が1重量%より少な
い領域では、未硬化のエポキシ樹脂を入れることによる
性能の改善、例えば成形性の改善あるいは可撓性の付与
等のような性質の改善が顕著でない。また、未硬化のエ
ポキシ樹脂が80重量%以上の場合、前駆体であるポリ
アミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体の三次元網目
構造が不完全なものとなり、自己支持性のある高分子ゲ
ルの形成が難しいため、相互侵入網目高分子構造を形成
することによる性能の改善効果が薄れる傾向にある。
【0065】本発明での調製方法により得られたポリア
ミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体の高分子ゲル
は、有機溶媒中で2〜50倍の体積膨潤度〔膨潤前後の
体積比〕を示す新しい構造の高分子ゲルであり、溶媒の
出入りにより可逆的に収縮・膨潤を繰返す構造体であ
る。ポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体の高
分子ゲルの体積膨潤度は、ポリアミック酸を形成するモ
ノマー成分の種類や配合比による架橋密度の変化、高分
子ゲル中に含まれる有機溶媒の種類により、2〜50倍
の範囲内で変化し、架橋密度をコントロールすることに
より、ポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体の
高分子ゲルの体積膨潤度を設定することも可能である。
【0066】ポリアミック酸と未硬化のエポキシ樹脂と
の相溶性の悪さから、溶媒に溶解させた各成分を混合さ
せた後あるいは溶媒を除去させる過程で相分離を起こ
し、不均質な複合体を与えることもあるが、このような
場合でも自己支持性のあるポリアミック酸の高分子ゲル
を経由するため、少なくともポリアミック酸を含む成分
は三次元的につながった連続相を形成しているものであ
る。
【0067】本発明のポリイミド/エポキシ樹脂複合体
の前駆体であるポリアミック酸複合体の高分子ゲルにお
いて、ポリアミック酸成分は主に共有結合及び水素結合
的な三次元網目構造から成る構造体と推定され、室温に
おいて自己支持性のあるゲル状の構造体を与え、未硬化
のエポキシ樹脂はポリアミック酸の三次元網目構造の中
に分子状に混合していると考えられる。これを高温処理
あるいは化学的脱水処理することでポリアミック酸成分
のイミド化が完結し、ポリイミドと異種のエポキシ樹脂
との間で相互侵入網目構造(IPN構造)を形成させた
分子構造になる。
【0068】従って、ポリイミド/エポキシ樹脂複合体
はポリイミドの優れた耐熱性等の特性や既存のエポキシ
樹脂の特性が付与された特異な性質を与えるものであ
る。
【0069】ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸
と未硬化のエポキシ樹脂との混合溶液中でゲル化反応が
起こり、両成分の分子鎖がランダムに溶液中に広がった
状態で高分子ゲルを生成させる。更に、ポリアミック酸
成分は加熱あるいは化学的処理により脱水・閉環反応さ
せてポリイミド化を完結させ、未硬化のエポキシ樹脂は
熱、光又は電子線等の手段により高分子量化させてポリ
イミド/エポキシ樹脂複合体を得ている。従って、この
ポリイミド/エポキシ樹脂複合体は、特異な相互侵入網
目高分子構造を与える。この構造は、ポリアミック酸と
未硬化のエポキシ樹脂を機械的混合あるいは溶融・溶解
させて両者を混ぜ込む等の単純な物理的混合で得られた
ものとは明らかに異なるものである。これは、複合に際
しポリアミック酸/未硬化のエポキシ樹脂複合体の高分
子ゲルを経由させるという化学的な手法を用いているか
らであり、この系は、物理的に単純混合した系では達成
されないような新しい分子鎖凝集構造の複合体であり、
耐熱性、靱性の発現があるなど、特異な性質を有する相
互侵入網目構造の複合体である。
【0070】ポリイミド/エポキシ樹脂複合体の形状
は、繊維、フィルム状のものを含む。
【0071】このような調製法によるポリイミド/エポ
キシ樹脂成分複合体の作製は、他に例がなく新規なもの
である。
【0072】ポリアミック酸成分の三次元網目構造を保
持させたままイミド化を進めたポリイミド/エポキシ樹
脂複合体は、ミクロレベルでは特異な分子構造を有する
ものと思われ、フィルムの場合は延伸等の機械的な処理
あるいは凝固浴中での溶媒置換による多孔質な凝固フィ
ルムの調製等により、特異性能を有するポリイミド/エ
ポキシ樹脂複合体の調製が可能である。
【0073】また、ポリイミドのモノマー成分に関し、
テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無
水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフ
ェニルテトラカルボン酸二無水物を選び、芳香族ジアミ
ンとして、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジ
アミン、4,4−ジアミノジフェニルエーテルを選ん
で、これらを組合せた系より作られたポリイミド複合体
は、耐熱性の高い複合体を与える。
【0074】本発明のポリイミド/エポキシ樹脂複合体
は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸成分と未
硬化のエポキシ樹脂の混合溶液の中で高分子ゲルを形成
させるという新規な手法を用いて得られた新しい構造の
相互侵入網目構造体を前駆体として、これを脱水・閉環
反応含む硬化反応により得られるものである。このもの
は、従来のポリマー混合系では得られない新しい構造の
相互侵入網目高分子構造を有し、ポリイミドの持つ耐熱
性や機械的特性等の優れた特性と既存のエポキシ樹脂の
特性とが付与された強靱な複合体である。
【0075】本発明の複合体は、エポキシ樹脂の種類や
配合組成比により、耐熱性と成形性を兼備した多用途に
有用な複合体を与えるものであり、各種成形材料、特殊
フィルム、特殊繊維の原料として好適に使用できる。ま
た、多孔性の材料を成形品として作製することもでき、
この多孔性材料は、物質分離作用のある機能性高分子材
料となる。
【0076】更に、ポリイミド/エポキシ樹脂複合体を
調製後、高温処理等により複合体の性質を改良し、通電
性等のような電気的性質等を付与させ、導電性フィル
ム、電極材料等に応用できる。
【0077】
【実施例】〔実施例1〕 300mlの四つ口セパラブルフラスコ中に、0.45
4gの精製したパラフェニレンジアミン(略称:PP
D)と0.158gの3,3′,4,4′−テトラアミ
ノビフェニル・四塩酸塩・二水和物(略称:TABT)
を採取し、20gの蒸留されたN−メチル−2−ピロリ
ドン(略称:NMP)を加え、撹拌し溶解させた。
【0078】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を5℃に
コントロールし、上記溶液を撹拌しながら1.611g
の精製した3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラ
カルボン酸二無水物(略称:BTDA)を固形のまま、
溶液の温度が上らないように注意しながら徐々に添加
し、全て加え終った後、撹拌を続け重付加反応を行わ
せ、均一なポリアミック酸溶液を調製した。
【0079】一方、市販のエポキシ樹脂であるアラルダ
イトMY720(チバ・ガイギー社製)を1.096
g、エピコート1001(シェル化学社製)を0.47
0g、硬化剤である4,4′−ジアミノジフェニルスル
ホンを0.657g採取し、100mlのビーカー中で
10gの蒸留されたNMPに溶解させた。これらのエポ
キシ樹脂組成物が完全に溶解された後、この溶液を前述
のポリアミック酸溶液に加え撹拌を続け、均一なポリア
ミック酸/エポキシ樹脂組成物の混合溶液を得た。この
混合溶液をガラス板上に流延した。溶液の塗布量は、ス
ペーサーによりコントロールし、約0.4mmの厚さに
なるようにした。しばらく静置すると流延された混合溶
液がゲル化を起こし、ポリアミック酸/エポキシ樹脂
(未硬化のモノマー成分)複合体のゲルフィルムが得ら
れた。
【0080】得られたポリアミック酸複合体のゲルフィ
ルムは、自重による形状変化を起こさず、自己支持性の
ものであった。
【0081】このポリアミック酸複合体のゲルフィルム
を30℃で真空乾燥させ、フィルム中の溶媒の含有量
を、全重量の5重量%に調整した後、ガラス板より剥離
させ、80℃で60分、120℃で60分乾燥機内で乾
燥させた後、鉄枠に固定し、150℃で1時間、200
℃で1時間、300℃で1時間の条件で連続的に処理し
て、ポリアミック酸成分の脱水・閉環反応とエポキシ樹
脂の硬化を行い、均一なポリイミド複合体フィルムを得
た。得られたフィルムは、薄い赤褐色で、厚さは約30
μmであった。
【0082】このポリイミド複合体フィルムの赤外吸収
スペクトルをとったところ、1780cm-1、1720
cm-1にイミド基の特性吸収帯が観測され、イミド基の
存在が確認された。
【0083】このフィルムの特性に関しては、熱重量分
析によるフィルムの5%重量減少温度、熱機械分析(T
MA)によるガラス転移温度及び材料試験機によるフィ
ルムの引張り特性を評価した。引張り特性は、得られた
ポリイミドフィルムを5mm幅の短冊状に切り出し、チ
ャック間距離30mm、引張り速度5mm/分の試験条
件で測定した。測定は、23℃で行った。表2に示すよ
うに、このフィルムは、耐熱性に優れ、機械的特性も良
好であった。
【0084】〔比較例1〕(多価アミン不使用例) 300mlの四つ口セパラブルフラスコ中に、0.59
9gの精製したパラフェニレンジアミンを採取し、20
gの蒸留されたN−メチル−2−ピロリドン(略称:N
MP)を加え、撹拌し溶解させた。
【0085】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を5℃に
コントロールし、上記溶液を撹拌しながら1.786g
の精製した3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラ
カルボン酸二無水物を固形のまま、溶液の温度が上らな
いように注意しながら徐々に添加し、ポリアミック酸溶
液を得た。
【0086】一方、市販のエポキシ樹脂であるアラルダ
イトMY720(チバ・ガイギー社製)を1.176
g、エピコート1001(シェル化学社製)を0.50
4g、硬化剤である4,4′−ジアミノジフェニルスル
ホンを0.705g採取し、100mlのビーカー中で
10gの蒸留されたNMPに溶解させた。これらのエポ
キシ樹脂組成物が完全に溶解された後、この溶液をBT
DA/PPDから成る前述のポリアミック酸溶液に加え
撹拌を続け、均一なポリアミック酸/エポキシ樹脂組成
物の混合溶液を得た。
【0087】実施例1と同様に、混合溶液をガラス板上
に流延させたが、室温で5時間放置しても溶液はゲル化
を起こさず、流動的なものであった。また、溶媒を除去
して得られたポリアミック酸複合体フィルムをNMP溶
媒中に浸漬させたところ、NMPに溶解した。
【0088】このポリアミック酸複合体フィルムを実施
例1と同様な条件で処理し、ポリイミド複合フィルムを
得た。実施例1と同様に、フィルムの各種特性を評価し
た。実施例1と比較例1で得られた、ポリアミック酸の
状態と、ポリイミド複合体の特性を結果を下記の表2に
示す。併せて、使用した各成分の配合量比(重量比)を
表1に、エポキシ系樹脂の詳細を表3に、配合化合物の
名称及び化学構造式を表4〜表6に示す。
【0089】結果は表2に示すように、熱的特性は実施
例1に比べ低いものであった。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
【発明の効果】機械的特性に優れ、且つ耐熱性に優れ
た、新規な相互侵入網目構造のポリイミド/エポキシ樹
脂複合体を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 79/00 - 79/08 C08G 73/00 - 73/26 C08L 63/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジア
    ミン、並びにひとつの分子構造中に三個以上のアミノ基
    及び/又はアンモニウム塩基を有する多価アミンを主成
    分としたポリアミック酸と未硬化のエポキシ樹脂を複合
    した相互侵入網目高分子構造のポリアミック酸/未硬化
    のエポキシ樹脂複合体を前駆体として、ポリアミック酸
    成分の脱水・閉環反応と未硬化のエポキシ樹脂成分の硬
    化反応により得られる相互侵入網目高分子構造のポリイ
    ミド/エポキシ樹脂複合体。
  2. 【請求項2】 前記多価アミンが、テトラカルボン酸二
    無水物100モルに対し2〜25モル用いられている
    求項1記載のポリイミド/エポキシ樹脂複合体。
  3. 【請求項3】 前記ポリイミド/エポキシ樹脂複合体に
    用いられた未硬化のエポキシ樹脂成分が、熱、光、電子
    線によって硬化する反応性モノマー及び/又は反応性オ
    リゴマーを主成分とした樹脂又は樹脂組成物である請求
    項1記載のポリイミド/エポキシ樹脂複合体。
  4. 【請求項4】 前記エポキシ樹脂成分の硬化反応にジア
    ミノジフェニルスルホンが硬化剤として使用される請求
    項1記載のポリイミド/エポキシ樹脂複合体。
  5. 【請求項5】 テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジア
    ミン、並びにひとつの分子構造中に三個以上のアミノ基
    及び/又はアンモニウム塩基を有する多価アミンを主
    分として反応させたポリアミック酸溶液を、未硬化のエ
    ポキシ樹脂又はエポキシ樹脂組成物を複合させ、0〜1
    00℃に保つことでポリアミック酸の架橋反応を溶液中
    で進めて得られる三次元網目構造のポリアミック酸成分
    中に未硬化のエポキシ樹脂成分が相互侵入してなる相互
    侵入網目高分子構造のポリアミック酸/未硬化のエポキ
    シ樹脂複合体の高分子ゲルを処理し、ポリアミック酸の
    脱水・閉環反応と未硬化のエポキシ樹脂成分の硬化反応
    とを行わせることを特徴とする相互侵入網目高分子構造
    のポリイミド/エポキシ樹脂複合体の製法。
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