JP2984885B2 - 伸線加工用ベイナイト線材または鋼線およびその製造方法 - Google Patents
伸線加工用ベイナイト線材または鋼線およびその製造方法Info
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Description
線材または鋼線およびその製造方法に関するものであ
る。本発明において、製品としての線材とは鋼片を線材
に圧延後に直接熱処理を施して伸線加工用とした線材を
意味し、製品としての鋼線とは伸線加工前または熱間圧
延後に、伸線加工に供すべく熱処理を施した鋼線、およ
び熱間圧延後冷間加工により第1次引抜加工を施した後
に、第2次引抜加工用として熱処理を施した鋼線を意味
する。
の用途に応じて、伸線加工されるが、この伸線加工の前
に、線材または鋼線を予め伸線加工に適した状態にして
おく必要がある。従来、高炭素鋼線材または鋼線に関し
ては、伸線加工前に組織を均一で微細なパーライトと少
量の初析フェライトの混合組織にする必要から、パテン
ティングと呼ばれる線材または鋼線独特の熱処理が施さ
れる。これは線材または鋼線をオーステナイト化温度に
加熱した後、適度な冷却速度で冷却して、パーライト変
態を完了させて微細パーライトと少量の初析フェライト
の混合組織にする熱処理方法である。
の製造方法では、オーステナイト化温度にある線材を溶
融塩に浸漬し、800〜600℃間の冷却速度を15〜
100℃/secにとることにより、微細なパーライト
と少量の初析フェライトの混合組織にする熱処理方法を
行っている。しかし、パーライト組織では伸線加工工程
において高減面率における延性の劣化、捻回試験での割
れの発生(以下デラミネーションと称する)が問題とな
っている。
において、前記の如き問題点を生じない伸線加工性に優
れた線材または鋼線およびこれらの製造方法を提供する
ことを課題とする。
本発明に従い特定量のC、Mn、SiとAlまたはTi
の何れか1種または2種を含み、さらに必要に応じて特
定量のCrを含み、PおよびS量の上限値が制限された
化学組成からなり、かつ規定された引張強さおよび絞り
値を有するベイナイト組織の線材または鋼線を提供する
ことによって解決される。
の冷却にあたり、或いはオーステナイト化温度に加熱後
の鋼線の熱処理において、TTT線図におけるノーズ位
置までの冷速を大きくとることによりパーライト組織の
生成を防止し、その後350〜500℃に等温保持する
ことによって得られるベイナイト線材または鋼線を提供
することによって解決しようとするものである。つまり
線材圧延後あるいは鋼線加熱後に、1100〜755℃
の温度範囲から60〜300℃/secの冷却速度によ
り350〜500℃の温度範囲に冷却し、この温度に一
定時間以上保持してミクロマルテンサイト組織の発生を
抑えることにより、伸線加工性に優れたベイナイト組織
の線材または鋼線を得ることができ、かくして高減面率
においても伸線加工性に優れた線材または鋼線が得られ
る。
記のとおりである。 (1) 重量%で C:0.70〜1.20%、 Mn:0.30〜0.90%、 Si:0.15〜1.00% を含有し、合金成分としてさらに Al:0.006〜0.100%、 Ti:0.01〜0.35% のいずれか1種または2種を含有し、 P:0.02%以下、 S:0.01%以下 に制限され、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
かつ下記式(1)および(2)により規定される引張強
さと絞り値を有することを特徴とする伸線加工用ベイナ
イト線材または鋼線。
50%を含有することを特徴とする前項1記載の伸線加
工用ベイナイト線材または鋼線。
0%以上で、かつHvが450以下のミクロ組織を有す
ることを特徴とする前項1又は2記載の伸線加工用ベイ
ナイト線材または鋼線。 (4) 重量%で C:0.70〜1.20%、 Mn:0.30〜0.90%、 Si:0.15〜1.00% を含有し、合金成分としてさらに Al:0.006〜0.100%、 Ti:0.01〜0.35% のいずれか1種または2種を含有し、 P:0.02%以下、 S:0.01%以下 に制限され、残部Feおよび不可避的不純物からなる組
成の鋼片を線材に圧延後、1100〜755℃の温度範
囲から60〜300℃/secの冷却速度で350〜5
00℃の温度範囲に冷却し、この温度範囲に下記式
(3)で定める時間Y秒以上保定することを特徴とする
伸線加工用ベイナイト線材の製造方法。
10〜0.50%を含有する前項4記載の伸線加工用ベ
イナイト線材の製造方法。 (6) 重量%で C:0.70〜1.20%、 Mn:0.30〜0.90%、 Si:0.15〜1.00% を含有し、合金成分としてさらに Al:0.006〜0.100%、 Ti:0.01〜0.35% のいずれか1種または2種を含有し、 P:0.02%以下、 S:0.01%以下 に制限され、残部Feおよび不可避的不純物からなる組
成の鋼線を1100〜755℃の温度範囲に加熱した
後、60〜300℃/secの冷却速度で350〜50
0℃の温度範囲に冷却し、この温度範囲に下記式(3)
で定める時間Y秒以上保定することを特徴とする伸線加
工用ベイナイト鋼線の製造方法。
10〜0.50%を含有する前項6記載の伸線加工用ベ
イナイト鋼線の製造方法。
出発鋼片及び鋼線の化学組成の限定理由は次のとおりで
ある。Cは鋼の強度と延性を支配する基本的な元素であ
り、高炭素化するほど強度が向上する。C量の下限は焼
入性と強度を確保するために0.70wt%とし、上限
は初析セメンタイトの発生を防止するために1.20w
t%とした。
える。またSiは鋼を固溶強化する元素であるととも
に、鋼線のリラクセーションロスを低減できる元素であ
る。しかし、スケール生成量を減少させ、メカニカルデ
スケーリング性を悪くするほか、線材のボンデ潤滑性を
やや低下させる。そのためSi量の上限は1.00wt
%とした。
える。またMnは鋼に固溶して強化する元素であるが、
添加量を増加させると線材中心部において偏析を生じや
すくなる。偏析部は焼入性が向上し変態終了時間が長時
間側にずれるため、未変態部がマルテンサイトとなり伸
線加工中の断線につながる。そこでMnの上限は0.9
0wt%とした。
定し、細粒オーステナイトにするために最も経済的な元
素であるが、Nが低い時はAlは必須の元素ではない。
上限は非金属介在物の増加を考慮して0.100wt%
とした。下限はAlの効果が現れる0.006wt%と
した。Tiは現在既にTi脱酸鋼、主として普通炭素鋼
のオーステナイト結晶粒の調整作用に利用されている。
上限はTi介在物の増加を抑えることと、鋼中への固溶
炭窒化物の生成を抑えるため0.35wt%とした。下
限はこれらの作用が効果的に現れる0.01wt%とし
た。
iの両元素のいずれか1種あるいは2種を含有する。
性を劣化させるため、できる限り低く抑える必要があ
る。Pの上限は0.02wt%、Sの上限は0.01w
t%とした。Crは鋼の強度を増加させる元素であり、
必要に応じて添加され得る。Crの添加により強度は増
加するが、焼入性も向上し、変態終了線が長時間側に移
動する。これにより熱処理に必要な時間も長くなるた
め、上限を0.50wt%とし、下限は強度を増すため
に0.10wt%とした。
得るための圧延条件と熱処理条件について述べる。線材
圧延後の冷却開始温度または鋼線加熱温度を755〜1
100℃と限定したのは、755℃がオーステナイト変
態点の下限であり、一方1100℃を超えるとオーステ
ナイト粒の異常成長が生じるからである。
00℃の恒温保持温度範囲迄の冷却速度を60〜300
℃/secと限定したのは、60℃/secが上部ベイ
ナイト組織生成の臨界冷却速度の下限であり、他方30
0℃/secは工業的に可能な冷却速度の上限であるか
らである。冷却後の恒温保持温度を350〜500℃と
定めた理由は、350℃が上部ベイナイト組織生成の下
限温度であり、他方500℃が上部ベイナイト組織生成
の上限温度であるからである。
持に必要な時間はTTT線図の変態終了線から求められ
るが、冷却槽での浸漬時間が不十分な場合はマルテンサ
イトが発生し、伸線加工中の断線の原因となる。そこで
変態終了時間以上に保持する必要があるので、350〜
500℃の温度範囲に保持する時間の下限を下記(3)
式で定める時間Y秒とした。
述べる。引張強さはC含有量に強く依存するため、式
(1)のようにC量との関係で与えられる。ベイナイト
組織を有する線材または鋼線は、従来のパーライト組織
を有する線材または鋼線に比較し、セメンタイトの析出
が粗くなるため、同一組成において引張強さが低くな
る。伸線加工工程においては、初期の引張強さが低い方
が伸線加工性が良くなり、高減面率まで伸線可能にな
る。そこで伸線加工性を劣化させない限界として式
(1)のように引張強さを限定した。上限を超えた場
合、伸線加工性が劣化し、伸線加工途中での断線やデラ
ミネーションを招く。
す重要な因子である。同一の引張強さにおいても、絞り
値の高い方が伸線加工中の加工硬化率が低く、高減面率
まで伸線加工することができる。ベイナイト組織を有す
る線材は、従来のパーライト組織を有する線材に比較
し、セメンタイトの析出が粗くなるため、同一引張強さ
においても絞り値が高くなる。そこで伸線加工限界を劣
化させない限界として式(2)のように絞り値を限定し
た。下限に達しなかった場合、伸線加工性が劣化し、伸
線加工途中での断線やデラミネーションを招く。
は鋼線は、前記の如く規定される引張強さ及び絞り値を
有するのに加えて、上部ベイナイト組織が面積率で80
%以上で、かつHvが450以下のミクロ組織を有する
ことによって、伸線加工性がより一層優れたものとな
る。
鋼の例、EおよびFは比較鋼の例である。E鋼はC量が
上限超、F鋼はMn量が上限超である。
0×500mm鋳片とし、さらに分塊圧延により122
mm角断面の鋼片を製造した。これらの鋼片を分塊圧延
でビレットに製造後、表2に示す直径の線材に圧延し、
DLP(Direct Lead Patentin
g)冷却を行った。これらの線材を平均減面率17%で
1.00mmφまで伸線し、引張試験、捻回試験を行っ
た。
を用い、JISZ2241記載の方法で行った。捻回試
験は試験片長さ100d+100に切断後、チャック間
距離100d、回転速度10rpmで破断するまで回転
させた。dは鋼線の直径を表わす。
せて示す。 No.5〜No.10は比較例である。 No.5は冷却速度が遅すぎたためにパーライトが生成
し、伸線加工性が低下し、伸線途中で断線が生じた。
パーライトが生成し、伸線加工性が低下し、伸線途中で
断線が生じた。 No.7は恒温変態処理時間が短かったためにマルテン
サイトが発生し、伸線加工性が低下し、伸線途中で断線
が生じた。 No.8は冷却開始温度が低すぎたためにベイナイト組
織が生じず、伸線加工性が低下し、伸線途中で断線が生
じた。
イトが生成し、伸線加工性が低下した。 No.10はMn量が高すぎたために中心偏析に伴うミ
クロマルテンサイトが発生し、伸線加工性が低下した。
明例、E及びFは比較例である。E鋼はC量が上限超、
F鋼はMn量が上限超である。これらの鋼線を表4に示
す条件でオーステナイト化し、熱処理した後、平均減面
率17%で1.00mmφまで伸線し、引張試験、捻回
試験を行った。
を用い、JISZ2241記載の方法で行なった。捻回
試験は試験片長さ100d+100に切断後、チャック
間距離100d、回転速度10rpmで破断するまで回
転させた。dは鋼線の直径を表わす。このようにして得
られた特性値を表4に併せて示す。
り、本発明の熱処理条件を全て満たしているので、伸線
後1.0mmφにおいてもデラミネーションが発生せず
伸線可能である。またNo.5〜No.10は比較例で
ある。No.5は冷却速度が遅すぎたためにパーライト
が生成し、伸線加工性が低下し、伸線途中で断線が生じ
た。
ーライトが生成し、伸線加工性が低下し、伸線途中で断
線が生じた。No.7は恒温変態処理時間が短かったた
めマルテンサイトが発生し、伸線加工性が低下し、伸線
途中で断線が生じた。No.8は加熱温度が低すぎたた
めに、ベイナイト組織率が零となり、伸線加工性が低下
し、伸線途中で断線が生じた。
トが生成し、伸線加工性が低下した。No.10はMn
量が高すぎたため、パーライトが生成し、絞り値も低い
ので伸線性が低下した。
れた線材または鋼線は、従来法に比べてより一段と高減
面率まで伸線が可能で、耐デラミネーション特性も改善
されている。従って、本発明によれば伸線加工性が優れ
たベイナイト線材または鋼線を提供し得る。
Claims (7)
- 【請求項1】 重量%で C:0.70〜1.20%、 Mn:0.30〜0.90%、 Si:0.15〜1.00% を含有し、合金成分としてさらに Al:0.006〜0.100%、 Ti:0.01〜0.35% のいずれか1種または2種を含有し、 P:0.02%以下、 S:0.01%以下 に制限され、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
かつ下記式(1)および(2)により規定される引張強
さと絞り値を有することを特徴とする伸線加工用ベイナ
イト線材または鋼線。 TS≦85×(C)+60─(1) RA≧−0.875×(TS)+158─(2) ただし、C:炭素含有量(wt%) TS:引張強さ(kgf/mm2) RA:絞り(%) - 【請求項2】 合金成分として、さらにCr:0.10
〜0.50%を含有することを特徴とする請求項1記載
の伸線加工用ベイナイト線材または鋼線。 - 【請求項3】 上部ベイナイト組織が面積率で80%以
上で、かつHvが450以下のミクロ組織を有すること
を特徴とする請求項1又は2記載の伸線加工用ベイナイ
ト線材または鋼線。 - 【請求項4】 重量%で C:0.70〜1.20%、 Mn:0.30〜0.90%、 Si:0.15〜1.00% を含有し、合金成分としてさらに Al:0.006〜0.100%、 Ti:0.01〜0.35% のいずれか1種または2種を含有し、 P:0.02%以下、 S:0.01%以下 に制限され、残部Feおよび不可避的不純物からなる組
成の鋼片を線材に圧延後、1100〜755℃の温度範
囲から60〜300℃/secの冷却速度で350〜5
00℃の温度範囲に冷却し、この温度範囲に下記式
(3)で定める時間Y秒以上保定することを特徴とする
伸線加工用ベイナイト線材の製造方法。 Y=exp(19.83−0.0329×T)─(3) 但し、T:保定温度(℃) - 【請求項5】 出発鋼片が合金成分として、さらにC
r:0.10〜0.50%を含有する請求項4記載の伸
線加工用ベイナイト線材の製造方法。 - 【請求項6】 重量%で C:0.70〜1.20%、 Mn:0.30〜0.90%、 Si:0.15〜1.00% を含有し、合金成分としてさらに Al:0.006〜0.100%、 Ti:0.01〜0.35% のいずれか1種または2種を含有し、 P:0.02%以下、 S:0.01%以下 に制限され、残部Feおよび不可避的不純物からなる組
成の鋼線を1100〜755℃の温度範囲に加熱した
後、60〜300℃/secの冷却速度で350〜50
0℃の温度範囲に冷却し、この温度範囲に下記式(3)
で定める時間Y秒以上保定することを特徴とする伸線加
工用ベイナイト鋼線の製造方法。 Y=exp(19.83−0.0329×T)─(3) 但し、T:保定温度(℃) - 【請求項7】 出発鋼線が合金成分として、さらにC
r:0.10〜0.50%を含有する請求項6記載の伸
線加工用ベイナイト鋼線の製造方法。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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DE69424783T DE69424783T2 (de) | 1993-04-06 | 1994-04-06 | Bainitstange oder stahldraht zum drahtziehen und verfahren zu deren herstellung |
EP94912061A EP0693571B1 (en) | 1993-04-06 | 1994-04-06 | Bainite rod wire or steel wire for wire drawing and process for producing the same |
US08/532,755 US5647918A (en) | 1993-04-06 | 1994-04-06 | Bainite wire rod and wire for drawing and methods of producing the same |
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JP4-88734 | 1992-04-09 | ||
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JP5079899A Expired - Lifetime JP2984885B2 (ja) | 1992-04-09 | 1993-04-06 | 伸線加工用ベイナイト線材または鋼線およびその製造方法 |
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JP5490192B2 (ja) | 2011-12-28 | 2014-05-14 | 東京エレクトロン株式会社 | マイクロ波加熱処理装置および処理方法 |
TWI516611B (zh) | 2013-10-08 | 2016-01-11 | 新日鐵住金股份有限公司 | 線材、過共析變韌鐵鋼線、及該等之製造方法 |
-
1993
- 1993-04-06 JP JP5079899A patent/JP2984885B2/ja not_active Expired - Lifetime
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