JP2765775B2 - 自動車用内装部品における装飾シートの圧着方法および圧着装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、自動車用ドアトリム
等の自動車用内装部品における装飾シートの圧着方法な
らびに圧着装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】最近、自動車室内の居住性を高めるため
に、自動車用ドアトリム等の自動車用内装部品の材質を
グレードアップさせるか、あるいはクロス等の装飾シー
トをドアトリム表面の適宜箇所に装着する工法が試みら
れている。

【０００３】図８は、自動車用ドアトリムの構成の概要
を示すもので、図面において、自動車用ドアトリム１
は、所要形状に成形された芯材２ａの表面に表皮材２ｂ
を貼着一体化して形成したドアトリム本体２と、このド
アトリム本体２の表面適宜箇所に装飾性をさらに付与す
るために装着されるクロス等の装飾シート３とから構成
されている。

【０００４】そして、ドアトリム本体２に対して、装飾
シート３を圧着する従来工法は、図９に示す装置を使用
している。

【０００５】すなわち、従来の圧着装置は、トリム本体
２をセットするための圧着用下型４と、トリム本体２表
面に接着剤を介して装飾シート３を圧着する圧着用上型
５と、圧着用上型５の駆動機構として、油圧シリンダ６
ａを連結して、上下動可能な上側ベース６に対して圧着
用上型５がスプリング７を介して取付けられており、装
飾シート３の端末処理を行なう木目込み用バー８が上側
ベース６に固定されている。

【０００６】したがって、図１０に示すように、油圧シ
リンダ６ａの動作により、上側ベース６が下降して、圧
着用下型４と圧着用上型５との間でトリム本体２と装飾
シート３とを圧着固定する。

【０００７】このとき、油圧シリンダ６ａのプレス圧力
は、スプリング７の弾性により一部吸収されるため、油
圧シリンダ６ａのプレス圧と圧着用上型５から加わる押
圧力は同一ではない。

【０００８】さらに、上側ベース６がさらに下降して、
スプリング７のバネ力により圧着用上型５は停止した状
態で木目込み用バー８のみが下降して、装飾シート３の
端末部分をトリム本体２の木目込み用溝部２ｃ内に圧入
して、装飾シート３の端末処理を行なうというものであ
る。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】このように従来の圧着
装置を使用した装飾シートの圧着方法によれば、通常、
トリム本体２と装飾シート３との良好な圧着を得るに
は、圧着用上型５からのプレス圧力が２００ｇ／cm² 必
要であり、スプリング７により油圧シリンダ６ａのプレ
ス圧の一部が吸収されるため、油圧シリンダのプレス圧
力を非常に大きく設定しなければならず、設備が大掛か
りなものになるという不具合が指摘されている。

【００１０】さらに、油圧シリンダ６ａのプレス圧力を
大きく設定した場合、木目込み用バー８による木目込み
工程においても、木目込み用バー８から装飾シート３の
端末部分に加わる圧力が大きくなり、特に装飾シート３
の材質としてＰＶＣシートを使用した場合、端末部分が
異常に伸ばされ、木目込み用溝部２ｃから装飾シート３
の端末部分がはみ出し、見栄えの低下を招くという欠点
も指摘されている。

【００１１】また、装飾シート３の圧着工程および装飾
シート３端末部分の木目込み工程への移行は、油圧シリ
ンダ６ａのプレス圧力とスプリング７のバネ圧により決
定されるため、木目込み工程に入るタイミングを自由に
設定することができず、材質の厚み等により、圧着時間
を調整する等の作業が非常に面倒になるという欠点も指
摘されている。

【００１２】この発明は、このような事情に鑑みてなさ
れたもので、本発明の目的とするところは、トリム本体
の表面所定箇所に装飾シートを圧着する際、プレス圧力
を低く設定しても、良好な圧着力ならびに木目込み圧が
確保でき、品質性能を損うことなく装置のコンパクト化
が図れ、かつ圧着時間，木目込み時間等の調整も容易に
行なえる装飾シートの圧着方法および圧着装置を提供す
ることにある。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、トリム本体の表面所定箇所に装飾シート
を圧着するとともに、装飾シートの端末をトリム本体に
設けた木目込み用溝部内に圧入する自動車用内装部品に
おける装飾シートの圧着方法において、昇降用シリンダ
の動作により、上側ベースと一体に圧着用上型を下降さ
せ、圧着用上下型の型締めにより、トリム本体の表面所
定箇所に装飾シートを圧着する工程と、圧着用上型と上
側ベースとの間に設置されたエアシリンダ内のエアを排
除して、上側ベースを下降させることにより、上側ベー
スと連結する木目込み用バーで装飾シートの端末をトリ
ム本体の木目込み用溝部内に圧入する工程と、からなる
ことを特徴とする。

【００１４】さらに、本発明方法に使用する装置は、ト
リム本体をセットする圧着用下型と、昇降用シリンダに
より昇降可能な上側ベースにエアシリンダを介して設置
され、トリム本体の表面所定箇所に装飾シートを圧着す
る圧着用上型と、この圧着用上型の縁部に沿って配置さ
れ、上側ベースに連結される木目込み用バーとからな
り、上記エアシリンダ内へのエアの導入，排除操作によ
り、圧着用上型の押圧力を可変させることを特徴とす
る。

【００１５】

【作用】以上の構成から明らかなように、従来のように
スプリングによりプレス圧が吸収されることがなく、エ
アシリンダにエアを導入すれば、油圧シリンダからのプ
レス圧を直接圧着用上型にかけることができるため、初
圧を最大に設定できる。

【００１６】したがって、油圧シリンダのプレス圧を低
く設定できるため、木目込み時の装飾シート端末に加わ
る圧力も適正値に保て、伸びやすい材料を使用しても木
目込み用溝部から端末がはみ出す等の不具合はない。

【００１７】また、エアシリンダからエアを排除すれ
ば、圧着工程から木目込み工程に移行できるため、エア
シリンダからエアを排除するタイミングを調整すること
により、圧着工程にかかる時間と木目込み工程にかかる
時間とを随時調整することが可能となる。

【００１８】

【実施例】以下、本発明による自動車用内装部品におけ
る装飾シートの圧着方法ならびに圧着装置の実施例につ
いて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。

【００１９】図１は本発明方法により装飾シートをドア
トリム本体に取付けた自動車用ドアトリムの構成を示す
断面図、図２は本発明による圧着装置の一実施例を示す
断面図、図３ないし図７は本発明方法の各工程を示す断
面図である。

【００２０】まず、図１において、本発明方法ならびに
装置により製作された自動車用ドアトリム１０は、ドア
トリム本体２０と、このドアトリム本体２０の表面所定
箇所、この実施例ではウエスト部分に装着される装飾シ
ート３０とから大略構成されている。

【００２１】さらに、ドアトリム本体２０は、プレス成
形，モールドプレス成形あるいは、射出成形等により所
要形状に成形される芯材２１と、この芯材２１の表面に
真空成形等により一体貼着される表皮材２２とから構成
され、芯材２１は、ポリプロピレン樹脂に木粉，あるい
はタルク等のフィラーを混入した複合樹脂材料を使用
し、表皮材２２としては、発泡塩ビシート，塩ビシート
裏面にポリエチレンフォーム等の発泡層をラミネートし
たものが装飾性ならびに緩衝性等から見て好適である。

【００２２】また、装飾シート３０には、ドアトリム本
体２０の表皮材２２と風合い，色彩の異なるクロスが本
実施例では使用されている。

【００２３】なお、ドアトリム本体２０には、装飾シー
ト３０の下端縁に沿って木目込み用溝部２３が凹設され
ており、この木目込み用溝部２３内に装飾シート３０の
下縁端末３０ａが圧入されて、装飾シート３０の端末処
理が行なわれている。

【００２４】ところで、本発明の特徴は、この上記装飾
シート３０をドアトリム本体２０に圧着する圧着方法な
らびに圧着装置にある。

【００２５】まず、本発明による圧着装置の一実施例を
図２に基づいて説明する。

【００２６】本発明による圧着装置は、ドアトリム本体
２０をセットする圧着用下型４０と、圧着用下型４０の
上方に位置し、上下動可能に構成された上側ベース５０
と、上側ベース５０に対して、エアシリンダ６０を介し
て取付けられ、装飾シート３０をドアトリム本体２０に
圧着固定するための圧着用上型７０と、この圧着用上型
７０とは独立して、上側ベース５０に固定される木目込
み用バー８０とから構成されている。

【００２７】なお、上側ベース５０は油圧シリンダ等の
昇降用シリンダ５１を備えており、この昇降用シリンダ
５１のプレスストローク寸法だけ上下動可能であり、エ
アシリンダ６０は、そのピストンロッド６１に圧着用上
型７０が取付けられており、このエアシリンダ６０内に
エアを導入あるいは排除することより、圧着用上型７０
は上側ベース５０と一体動作を行なうか、またエアシリ
ンダ６０により上側ベース５０のプレス圧をエアシリン
ダ６０で吸収して、圧着用上型７０に少ないプレス圧し
か加わらないように構成されている。

【００２８】このように、本発明による圧着装置は、従
来上側ベース５０にスプリングを介して圧着用上型７０
が取付けられていたが、このスプリングに代えてエアシ
リンダ６０を配置することにより以下に記載する格別の
作用効果が期待できる。

【００２９】すなわち、図２に示す圧着装置を使用して
ドアトリム本体２０に装飾シート３０を圧着し、さらに
装飾シート３０の下縁端末３０ａを木目込み用溝部２３
内に圧入する木目込み工程について、図３ないし図７に
基づいて詳細に説明する。

【００３０】まず、図３に示すように、圧着用下型４０
の型面上にドアトリム本体２０をセットするとともに、
このドアトリム本体２０のウエスト部分に接着剤を塗布
し、さらにその上に装飾シート３０をセットする。この
とき、圧着用上型７０と連結する上側ベース５０は上方
位置にある。

【００３１】そして、圧着装置にドアトリム本体２０お
よび装飾シート３０のセットが完了すれば、図４に示す
ように、エアシリンダ６０内にエアが導入され、エアシ
リンダ６０のピストンロッド６１に取付けられた圧着用
上型７０が下降して、圧着用上型７０は装飾シート３０
の真上位置まで下降する。

【００３２】そして、図５に示すように、昇降用シリン
ダ５１が作動して、上側ベース５０が下降し、圧着用上
下型４０，７０の係合圧締めにより、ドアトリム本体２
０のウエスト部分に装飾シート３０が強固に圧着され
る。

【００３３】このとき、従来のようにスプリングによる
プレス圧の吸収がないため、昇降用シリンダ５１のプレ
ス圧が直接圧着用上型７０から装飾シート３０に加わる
ため、、昇降用シリンダ５１の設定圧力が小さくとも、
装飾シート３０の圧着に必要なプレス圧２００ｇ／cm²
が良好に確保できる。

【００３４】次いで、圧着工程が完了すれば、図６に示
すように、エアシリンダ６０内のエアを排除することに
より、エアシリンダ６０を緩衝機構として利用し、上側
ベース５０の下降を続行させれば、圧着用上型７０は停
止した状態で木目込み用バー８０のみが下降して、ドア
トリム本体２０の木目込み用溝部２３内に装飾シート３
０の下縁端末３０ａを圧入し、端末処理を行なう。

【００３５】このとき、エアシリンダ６０を緩衝機構と
して利用することにより、昇降用シリンダ５１のプレス
圧力を低く設定しても、木目込み用バー８０単独の動作
が可能であるため、従来のように木目込み圧が異常に大
きくなることがないため、例えば塩ビシート等の伸びや
すい材料を装飾シート３０に使用しても、装飾シート３
０の下縁端末３０ａが伸び切ることがなく、見栄えの低
下が生じることがない。

【００３６】また、エアシリンダ６０内のエアを排除す
れば、圧着工程から木目込み工程に移行するが、エアシ
リンダ６０からエアを排除するタイミングを任意に調整
することにより、圧着工程時間および木目込み工程時間
を随時調整することができる。

【００３７】最後に、図７に示すように、エシリンダ６
０内にエアを導入するとともに、昇降用シリンダ５１を
動作させ、上側ベース５０を最上方位置まで上昇させた
後、圧着用下型４０上の圧着工程および木目込み工程を
経た製品を取り出せばよい。

【００３８】このように、本発明による圧着装置は、従
来のスプリングに代えてエアシリンダ６０を使用するこ
とにより、昇降用シリンダ５１のプレス圧を低く設定で
き、装置のコンパクト化が可能になるとともに、エアシ
リンダを任意に調整することにより、木目込み工程のタ
イミングを自由に設定できるなど実用的価値が高い。

【００３９】

【発明の効果】以上説明した通り、本発明は、以下に記
載する格別の作用効果を有する。

【００４０】（１）本発明に係る圧着装置は、従来のス
プリングに代えて、エアシリンダを使用し、エアシリン
ダにエアを導入することにより、昇降用シリンダのプレ
ス圧が低くても、良好な圧着力および木目込み圧力を保
証できるため、プレス装置の小型化が図れ、設備の省力
化に貢献できるという効果を有する。

【００４１】（２）本発明による装飾シートの圧着方法
によれば、木目込み用バーの押圧力を小さく設定できる
ため、ＰＶＣシート等比較的伸びやすい樹脂シートを使
用しても、木目込み工程において装飾シートの端末が伸
ばされることがなく、木目込み用溝部内に収容でき、見
栄えの低下を招くことがないという効果を有する。

【００４２】（３）本発明に係る装飾シートの圧着方法
によれば、エアシリンダからエアを排除するタイミング
を操作すれば、圧着時間および木目込み時間を任意に調
整できるため、素材の板厚，材質等を考慮して、圧着工
程に費す時間，木目込み工程に費す時間を任意に振り分
けることができ、きめ細かな対応が可能になるという効
果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明方法により製作した自動車用ドアトリム
の構成を示す断面図。

【図２】本発明に係る装飾シートの圧着装置の一実施例
の構成を示す断面図。

【図３】本発明方法の一工程を示すもので、素材のセッ
ト工程を示す断面図。

【図４】本発明方法の一工程を示すもので、エアシリン
ダへのエアを導入した状態を示す断面図。

【図５】本発明方法の一工程を示すもので、圧着工程を
示す断面図。

【図６】本発明方法の一工程を示すもので、木目込み工
程を示す断面図。

【図７】木目込み工程完了後の型開放状態を示す断面
図。

【図８】従来の自動車用ドアトリムの構成を示す断面
図。

【図９】従来の装飾シートの圧着装置の構成を示す断面
図。

【図１０】従来工法における装飾シートの圧着工程を示
す断面図。

【図１１】従来工法における装飾シートの端末木目込み
工程を示す断面図。

【符号の説明】

１０ 自動車用ドアトリム ２０ ドアトリム本体 ２１ 芯材 ２２ 表皮材 ２３ 木目込み用溝部 ３０ 装飾シート ３０ａ 下縁端末 ４０ 圧着用下型 ５０ 上側ベース ５１ 昇降用シリンダ ６０ エアシリンダ ７０ 圧着用上型 ８０ 木目込み用バー

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 政幸 静岡県富士市大渕2370番地の２ イズミ 産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平３−45331（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−308732（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−96625（ＪＰ，Ａ) 実開 平１−101833（ＪＰ，Ｕ) 実開 平１−117299（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B29C 65/00 - 65/54 B29C 65/70,65/78 B68G 7/02 B60R 13/02

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 トリム本体（２０）の表面所定箇所に装
   飾シート（３０）を圧着するとともに、装飾シート（３
   ０）の端末をトリム本体（２０）に設けた木目込み用溝
   部（２３）内に圧入する自動車用内装部品における装飾
   シートの圧着方法において、 昇降用シリンダ（５１）の動作により、上側ベース（５
   ０）と一体に圧着用上型（７０）を下降させ、圧着用上
   下型（４０，７０）の型締めにより、トリム本体（２
   ０）の表面所定箇所に装飾シート（３０）を圧着する工
   程と、 圧着用上型（７０）と上側ベース（５０）との間に設置
   されたエアシリンダ（６０）内のエアを排除して、上側
   ベース（５０）を下降させることにより、上側ベース
   （５０）と連結する木目込み用バー（８０）で装飾シー
   ト（３０）の端末をトリム本体（２０）の木目込み用溝
   部（２３）内に圧入する工程と、 からなることを特徴とする自動車用内装部品における装
   飾シートの圧着方法。
2. 【請求項２】 トリム本体（２０）の表面所定箇所に装
   飾シート（３０）を圧着するとともに、装飾シート（３
   ０）の端末をトリム本体（２０）に設けた木目込み用溝
   部（２３）内に圧入する自動車用内装部品における装飾
   シートの圧着装置において、 この圧着装置は、トリム本体（２０）をセットする圧着
   用下型（４０）と、昇降用シリンダ（５１）により昇降
   可能な上側ベース（５０）にエアシリンダ（６０）を介
   して設置され、トリム本体（２０）の表面所定箇所に装
   飾シート（３０）を圧着する圧着用上型（７０）と、こ
   の圧着用上型（７０）の縁部に沿って配置され、上側ベ
   ース（５０）に連結される木目込み用バー（８０）とか
   らなり、上記エアシリンダ（６０）内へのエアの導入，
   排除操作により、圧着用上型（７０）の押圧力を可変さ
   せることを特徴とする自動車用内装部品における装飾シ
   ートの圧着装置。