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JP2687001B2 - 流体継手のスリップ制御装置 - Google Patents

流体継手のスリップ制御装置

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JP2687001B2
JP2687001B2 JP33541188A JP33541188A JP2687001B2 JP 2687001 B2 JP2687001 B2 JP 2687001B2 JP 33541188 A JP33541188 A JP 33541188A JP 33541188 A JP33541188 A JP 33541188A JP 2687001 B2 JP2687001 B2 JP 2687001B2
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differential pressure
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卓治 藤原
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、ロックアップクラッチが設けられた流体継
手において、このロックアップクラッチのスリップ状態
を制御する流体継手のスリップ制御装置に関するもので
ある。
(従来の技術) 一般に、ロックアップクラッチが設けられた流体継手
(トルクコンバータ)においては、エンジンのトルク変
動が車輪に伝達されて車両の乗心地性が低下する低車速
時にロックアップクラッチを解放状態とし、トルク増大
機能およびトルク変動吸収機能を有するコンバータ状態
に作動する一方、エンジンのトルク変動がそれ程問題と
ならない高車速時には、ロックアップクラッチを締結状
態として入出力軸間を直結し、流体継手内のスリップに
よるエネルギ損失を低減して燃費性能を改善するロック
アップ状態に作動するようにしている。
また、上記のようなロックアップクラッチを備えた流
体継手において、低車速で低負荷状態の領域では、燃費
性能向上の点からはコンバータ状態よりロックアップ状
態とするのが好ましいが、ロックアップ状態とするとエ
ンジンのトルク変動が車輪に直接伝達されて車体に振動
が発生することになる。
そこで、例えば、特開昭61−52427号公報に開示され
ているように、燃費性能のある程度の改善とトルク変動
の伝達を軽減して変速ショクおよび車体振動の抑制を図
ることから、ロックアップクラッチをロックアップ状態
とコンバータ状態との中間的な所定のスリップ状態に制
御して、入出力間に所定の回転差を生じさせるように制
御を行うスリップ制御装置が公知である。
上記スリップ制御装置における制御は、ロックアップ
クラッチを締結方向に作用する締結室の圧力と解除方向
に作用する解除室の圧力との差圧を調整し、該ロックア
ップクラッチが所定のスリップ状態となるように差圧制
御するようにした機構が採用されている。そして、上記
差圧制御によってロックアップクラッチの入力側の回転
数と出力側の回転数とが所定の回転差として、燃費性と
走行性の両立を得るようにする。
具体的なスリップ制御としては、入出力回転差に基づ
いてロックアップクラッチに供給する作動油圧を調整す
るフィードバック制御、あるいは、ロックアップクラッ
チに供給する作動圧を設定値に保持する制御で行うよう
にしている。
(発明が解決しようとする課題) しかして、前記のようなロックアップクラッチのスリ
ップ制御を回転差のフィードバック制御で行うもので
は、流体継手に伝達される入力トルクの大きさおよびそ
の変動によっては、入出力間の回転差が目標値に達する
までの応答遅れ時間が大きくなって適正なスリップ状態
が得られなくなったり、応答速度を高めるためにフィー
ドバック制御における制御ゲインを大きく設定すると、
制御の安定性に欠けてハンチング現象が発生したり制御
精度の点で問題が生じる恐れがある。
また、ロックアップクラッチに対する作動圧を設定値
に維持制御するものでは、スリップ制御開始時における
入力トルクの大きさがエンジンの運転状態や車両の走行
状態等に応じて変動した場合に、適正なスリップ状態も
変化することに対応することができない恐れがある。
特に、入出力間に所定の回転差が生じるようにロック
アップクラッチのスリップ制御を行うには、入力トルク
すなわちエンジン出力の変化に対してロックアップクラ
ッチに送給する作動圧を変更する必要があるが、要求さ
れる差圧が変化したときの駆動信号をそのデューティ値
によって制御する際に、運転状態の変化にそのまま対応
した駆動信号の設定を行うと、差圧の制御の応答性、安
定性の面で問題が生じる恐れがある。
さらに、前記のようにフィードバック制御で行ってい
るスリップ制御での制御応答性を改善するために、運転
状態の変動に対して目標回転差を求めて差圧を設定し、
この差圧になるように駆動信号を出力するようにして、
運転状態の変化に対しフィードバック制御によらずにフ
ィードフォワード的な制御を行おうとすると、応答性の
改善の反面、目標値の近傍での制御安定性の確保が不十
分となる可能性がある。
そこで、本発明は上記事情に鑑み、運転状態が変化す
る過渡時においても要求回転差に対応した適切な差圧制
御によるロックアップクラッチのスリップ制御を行うよ
うにした流体継手のスリップ制御装置を提供することを
目的とするものである。
(課題を解決するための手段) 上記目的を達成するため本発明の流体継手のスリップ
制御装置は、第1図にその基本構成を示すように、入力
要素と出力要素の間で流体を介してトルクを伝達するコ
ンバータ機能を有する流体継手Aは、入力要素と出力要
素とが直結可能なロックアップクラッチBを備えてい
る。
このロックアップクラッチBの締結力は、締結方向に
作用する締結室の圧力と解除方向に作用する解除室の圧
力との差圧の調整を駆動信号のデューティ値で行うスリ
ップ制御装置Cによって制御される。
上記スリップ制御装置Cは、入出力回転差の目標回転
差を設定する目標回転差設定手段Dと、現在の入出力回
転差を検出する入出力回転差検出手段Eとを備え、目標
回転差設定手段Dの信号が差圧設定手段Fに出力され
る。該差圧設定手段Fは、目標回転差に対応して前記ロ
ックアップクラッチBの目標差圧を求めるものである。
また、上記差圧設定手段Fおよび入出力回転差検出手
段Eの信号を受けた駆動信号決定手段Gは、設定差圧に
対応する駆動信号のデューティ値を、現在の入出力回転
差と目標回転差との偏差およびデューティ値の変化状態
に基づいて決定するように構成したものである。
さらに、前記駆動信号決定手段Gは、入出力回転差と
目標回転差との偏差が正および負に大きくなるほど大き
な比率で、デューティ値の変化状態を反映させて最終的
なデューティ値を決定するのが望ましい。また、前記駆
動信号決定手段Gは、設定差圧に対するデューティ値の
変化が大きいときには最終的なデューティ値変化も大き
くし、設定差圧に対する駆動信号の変化が小さいときに
は最終的なデューティ値変化も小さく決定することが好
ましい。
(作用) 上記のような流体継手のスリップ制御装置では、ロッ
クアップクラッチの締結室と解除室との差圧制御でスリ
ップ状態を制御するについて、上記差圧を目標回転差に
対応して設定すると共に、現在の入出力回転差と上記目
標回転差との偏差を求め、この偏差に基づき差圧に対応
するデューティ値を求めると同時に、デューティ値の変
化状態に基づいて実際に出力する駆動信号のデューティ
値を決定し、回転差に対応する差圧の制御を応答性と安
定性を考慮して精度良く行っている。
(実施例) 以下、図面に沿って本発明の実施例を説明する。第2
図は流体継手のスリップ制御装置の一例を、それが適用
された車両のパワープラントと共に示す。
パワープラントは、エンジン本体10と自動変速機20と
からなり、エンジン本体10(4気筒)における各気筒に
は、スロットル弁14が配設された吸気通路16からの吸入
空気と燃料噴射弁から噴射される燃料とで形成される混
合気が供給されて圧縮燃焼され、発生トルクが自動変速
機20を含む動力伝達経路を介して車輪に伝達される。
なお、上記エンジン本体10においては、エンジン回転
数が所定値以上でスロットル全閉の減速時には燃料供給
が停止され、この燃料カット状態からエンジン回転数が
所定値未満となると燃料供給を再開するように減速燃料
制御が行われる。
前記自動変速機20は、流体継手24(トルクコンバー
タ)と、多段歯車式の変速機構26と、それらの制御に用
いられる作動油圧を形成するための変速制御用ソレノイ
ド弁1〜5、ロックアップ制御用ソレノイド弁6および
調圧用ソレノイド弁7が備えられた油圧回路部30とを有
している。
流体継手24は、第3図に油圧回路部30における流体継
手24の動作制御に関与する部分を伴って示すように、エ
ンジン本体10の出力が入力される入力軸25と出力軸39と
の間に、流体を介してトルク伝達を行うコンバータ部27
と、直結状態もしくはスリップ状態でトルク伝達を行う
ロックアップクラッチ21とが並設されている。コンバー
タ部27は、入力軸25と一体に回転するドライブプレート
32に固着された入力要素としてのポンプインペラー34
と、出力軸39と一体に回転するタービンランナー36と、
両者間のステータ35とワンウェイクラッチ38を備え、ロ
ックアップクラッチ21は出力軸39にスプライン嵌合され
たトーションダンパ23および該トーションダンパ23にコ
イルスプリング23aを介して連結されたクラッチプレー
ト22とを備えている。
上記ロックアップクラッチ21の配設により、クラッチ
プレート22の背面側にドライブプレート32との間に解除
室43が形成され、反対側には締結室44が形成されてい
る。解除室43には油圧回路部30から油路42を通じて、ク
ラッチプレート22を解放作動する油圧が供給され、ま
た、締結室44には油路41を通じてクラッチプレート22を
締結作動する油圧が供給される。そして、ロックアップ
クラッチ21は、締結室44に油圧が送給されてポンプイン
ペラー34とタービンランナー36とを直結にするロックア
ップ状態と、解除室43に油圧が送給されてポンプインペ
ラー34とタービンランナー36とを非締結とする解放状態
(コンバータ状態)とに作動され、さらに、締結室44と
解除室43との両方に油圧が送給されて差圧ΔPが所定の
範囲内にある時には、ポンプインペラー34とタービンラ
ンナー36との相対回転を許容するスリップ状態となり、
その差圧ΔPが大であるほどスリップ量が低減して前記
ロックアップ状態に近付く。尚、締結室44は、逆止弁46
が配された油路47を通じてオイルクーラ48に接続されて
いる。
油圧回路部30における流体継手24の動作制御に関与す
る部分には、ロックアップシフト弁51、ロックアップ調
圧弁52、前記ロックアップ制御用ソレノイド弁6および
調圧用ソレノイド弁7が設けられている。ロックアップ
シフト弁51は、ポートa,d,hへの油圧調整に伴う分割さ
れた第1スプール56と第2スプール57の作動によってポ
ートb,c,e〜gの連通開閉およびドレンを切り換えるも
のである。また、ロックアップ調圧弁52は、ポートi,n
への油圧調整に伴うスプール60の作動によってポートj
〜mの連通開閉およびドレンを切り換えるものである。
そして、ロックアップシフト弁51においては、ポート
a,d,hには調圧用ソレノイド弁7またはロックアップ制
御用ソレノイド弁6によって調圧されたオイルポンプ45
の油圧が供給され、流体継手24の油圧の供給を切り換え
てコンバータ状態とロックアップ状態とスリップ状態と
に切換え作動する。また、ロックアップ調圧弁52におい
ては、ポートiにはスロットル開度に対応してスロット
ル圧形成部61で調圧されたスロットル圧Ptが供給される
一方、ポートnには調圧用ソレノイド弁7によって調圧
されたデューティ制御圧Pdが供給され、流体継手24の締
結室44と解除室43との差圧ΔPの調整によるスリップ量
の制御を行うものである。
上記ロックアップシフト弁51およびロックアップ調圧
弁52の作動による流体継手24の状態変化についての説明
はここでは省略するが、その詳細については同一出願人
による特願昭63−278607号の明細書の記載を参照された
い。
また、第2図に示すように、前記油圧回路部30の動作
制御を行うべく、油圧回路部30に内蔵された変速制御用
ソレノイド弁1〜5、ロックアップ制御用ソレノイド弁
6および調圧用ソレノイド弁7に、駆動信号Ca〜Cgをそ
れぞれ出力するコントロールユニット100が設けられて
いる。このコントロールユニット100には、スロットル
弁14の開度Thを検出するスロットル開度センサ81から得
られる検出信号Stと、車速Vを検出する車速センサ82か
ら得られる検出信号Svと、シフトレバーの操作位置を検
出するシフトポジションセンサ83から得られる検出信号
Ssと、エンジン回転数Ne(入力回転数)を検出するエン
ジン回転数センサ84から得られる検出信号Snと、タービ
ンランナー36の回転数(出力回転数)を検出するタービ
ン回転数センサ85から得られる検出信号Smと、アクセル
ペダルの踏込量を検出するアクセルセンサ86から得られ
る検出信号Saと、自動変速機20に供給される作動油の温
度を検出する油温センサ87から得られる検出信号Suと、
ブレーキペダルの踏込量を検出するブレーキセンサ88か
ら得られる検出信号Sbとが供給されると共に、自動変速
機20の制御に必要な他の検出信号Sxも供給される。
コントロールユニット100は、上記各種の検出信号に
基づいて自動変速機20における変速制御およびロックア
ップクラッチ21の動作制御を所期の特性で行うものであ
る。
このコントロールユニット100による自動変速機20の
変速制御およびロックアップクラッチ21の動作制御を行
うにあたっては、コントロールユニット100の内蔵メモ
リにマップ化されて記憶されている第4図に示すような
シフトパターンから、その制御領域を判定する。このシ
フトパターンは、縦軸にスロットル開度Thが横軸に車速
Vがとられてあらわされ、シフトアップ時の各変速段の
領域がシフトアップ変速線Ua,Ub,Ucで示され、領域が変
化したときがシフトアップ変速時となり、一方、シフト
ダウン時の各変速段の領域がシフトダウン変速線Dd,De,
Dfで示され、領域が変化したときがシフトダウン変速時
となる。また、比較的高車速側で低スロットル開度の領
域に設定されたロックアップ作動線Lg(4速),Li(3
速)の内側がロックアップ状態に移行する際のロックア
ップ領域で、ロックアップ状態からの解除がロックアッ
プ解除線Lh(4速),Lj(3速)によって示され、領域
変化時がロックアップ状態への作動および解除制御時と
なる。さらに、比較的低車速側で低スロットル開度の領
域に設定されているスリップ制御実行線Rjの内側がスリ
ップ制御領域で、この領域に移行した際にスリップ制御
を開始し、これより外側に設定されたスリップ制御解除
線Rkの外側の領域に移行した際にスリップ制御を解除す
るように制御するものである。
そして、コントロールユニット100は、上記変速線Ua
〜Uc,Dd〜Dfの判定からシフトアップ条件もしくはシフ
トダウン条件が成立したことが検知される場合には、変
速機構26における変速段を切り換えるべく駆動信号Ca〜
Ceを選択的に送出し、変速制御を行う。また、ロックア
ップ作動条件および後述のスリップ制御条件がいずれも
成立していない場合には、ロックアップ制御用ソレノイ
ド弁6および調圧用ソレノイド弁7への駆動信号Cf,Cg
の供給を停止する。それにより、両ソレノイド弁6,7が
閉状態とされ、ロックアップシフト弁51およびロックア
ップ調圧弁52は第3図の実線の位置となり、レギュレー
タ弁49により調圧された油圧がそのまま解除室43に供給
されると共に、締結室44の油圧がオイルクーラ48に排出
され、ロックアップクラッチ21は解放状態となってコン
バータ部27によるトルク伝達とされる。
さらに、ロックアップ作動条件が成立すると、駆動信
号Cfがロックアップ制御用ソレノイド弁6に供給されて
開状態とされ、調圧用ソレノイド弁7は駆動信号Cgの停
止により閉状態とされる。それにより、ロックアップシ
フト弁51が鎖線の位置、ロックアップ調圧弁52が実線の
位置となり、レギュレータ弁49により調圧された油圧が
締結室44に供給される一方、解除室43の油圧がオイルパ
ンに排出され、ロックアップクラッチ21は締結状態とな
って入出力が直結したロックアップ状態とされる。
一方、スロットル開度Thおよび車速Vがスリップ制御
領域となって定常スリップ制御条件が成立した場合、シ
フトアップ条件となって変速スリップ制御条件が成立し
た場合、および、スロットル開度が全閉でエンジン回転
数が所定値以上の減速時で減速スリップ制御条件が成立
した場合には、駆動信号Cfがロックアップ制御用ソレノ
イド弁6に供給されて開状態とされ、調圧用ソレノイド
弁7には20%以上のデューティ値dを有する駆動信号Cg
の供給により所定開度に作動される。それにより、ロッ
クアップシフト弁51では第1スプール56が実線の位置、
第2スプール57が鎖線の位置となり、ロックアップ調圧
弁52はポートiのスロットル圧Ptとポートnのデューテ
ィ制御圧Pd(デューティ値が大なる程低い値)との差圧
に応じた距離だけ実線の位置から鎖線方向に移動し、レ
ギュレータ弁49により調圧された油圧が締結室44に供給
されると共に、解除室43にはデューティ値に応じて減圧
された油圧が供給され、ロックアップクラッチ21は締結
室44の油圧から解除室43の油圧を減じた差圧ΔPに応じ
た入出力回転差ΔNを入力軸25と出力軸39との間に生じ
させるスリップ状態となる。
この場合、上記差圧ΔPは、前記スロットル圧Ptとデ
ューティ制御圧Pdとスプリング62の付勢力Faとから、
C1,C2を定数とすると、 ΔP=C1(Pt−Pd)+Fa/C2 であらわされ、差圧ΔPはスロットル圧Ptとデューティ
制御圧Pdとにより規定される。そして、スロットル圧Pt
は、スロットル開度Thに対して、例えば第5図に示され
る特性を有するように形成され、また、デューティ制御
圧Pdは、駆動信号Cgのデューティ値dに対して、例えば
第6図に示される特性を有するように形成される。その
結果、上記差圧ΔPは、20%,50%,80%のデューティ値
dをパラメータとしてあらわされた第7図に示すよう
に、スロットル開度Thおよびデューティ値dが大きくな
るほど大きな値となる。
また、上記ロックアップクラッチ21による締結状態で
の入力軸25から出力軸39に伝達し得る最大トルクとして
の伝達可能トルクTsは、クラッチプレート22の摩擦係数
μと有効半径rと係合面積Aに対し、 Ts=ΔP・μ・r・A であらわすことができ、差圧ΔPが大きくなるほど大き
な値となる。そして、流体継手24の入力トルクTiは、入
力軸25に伝達されるエンジンの発生トルクTeに等しく、
伝達可能トルクTsより大きい場合には、前記入出力回転
差ΔNが生じることになる。上記入力トルクTiと入出力
回転差ΔNとの関係は、作動油の温度が例えば90℃で、
1〜4kg/cm2に設定された差圧ΔPをパラメータとし
て、第8図のような特性となる。
上記のようなことから、流体継手24におけるロックア
ップクラッチ21についてのスリップ制御が行われるにあ
たっては、先ず、変速スリップ制御条件が成立していな
いもとで定常スリップ制御条件が成立したことが検知さ
れる場合には、エンジン発生トルクTeの値がスロットル
開度Thとエンジン回転数Neとに基づいて検出される。な
お、エンジン発生トルクTeの値は、予めスロットル開度
Thおよびエンジン回転数Neに応じて設定されたマップか
ら求められ、例えば、第9図に示すように、横軸にエン
ジン回転数Neがとられ、スロットル開度Th(1/8〜6/8)
をパラメータとして曲線a1〜a6で示される。
このようにして検出されたエンジン発生トルクTeの値
に油温補正を行って伝達トルクTrを求めるもので、補正
係数K1は作動油の温度が90℃で1、90℃より高いほど1
より大きな値に、90℃より低いほど1より小さな値に設
定され、この補正係数K1をエンジン発生トルクTeに掛け
て伝達トルクTrを求める。
さらに、上記伝達トルクTrは、スロットル開度Thの変
化量によって補正される。この補正は、上記のようにエ
ンジン出力トルクTeの検出を、エンジン回転数Neとスロ
ットル開度Thのマップから求めているが、アクセル開度
が急に踏み込まれた加速時に、スロットル開度Thの変化
量すなわち変化速度が大きいと、実際のエンジン出力の
上昇が遅れ、マップ値とずれるのをスロットル開度変化
量が大きくなるほど伝達トルクTrの値が小さくなるよう
に修正するものである。該補正は、スロットル開度Thの
変化量ΔThを前回のスロットル開度との差から算出し、
この変化量ΔThが正値で加速時のときには、第10図に示
すようなマップから、該変化量ΔThが大きくなるほど1
以下の小さな値に設定されている補正係数K2を求め、こ
の補正係数K2を伝達トルクTrに掛けて補正する。なお、
スロットル開度変化量ΔThが大きくなると、第4図の定
常スリップ制御領域から外れるものである。
そして、上記伝達トルクTrの値に対応して、流体継手
24における入力軸25と出力軸39との間に、エネルギ損失
の低減とエンジンが発生するトルク変動の吸収とが共に
図られることになる所定の目標回転差No、例えば、80〜
150rpmを生じさせるように差圧ΔPの値を、第8図の入
力トルクTiと入出力回転差ΔNと差圧ΔPとの関係が書
き込まれたマップから読み出されて設定されるが、上記
目標回転差Noを現在の入出力回転差ΔNに応じて制御応
答性および前記収束性の点から最適値に設定する。
この目標回転差Noの設定は、入出力回転差ΔNを入力
回転数(エンジン回転数Ne)から出力回転数を減算して
求め、目標回転差No(初期値)を読み込み、両者の偏差
ΔN−Noの値により、第11図または第12図マップから補
正値αまたはβを検索し、目標回転差Noに加減算して補
正するものである。補正値αは入出力回転差ΔNが目標
回転差Noより所定値以上大きいときの補正値で、目標回
転差Noを低く補正して差圧ΔPを大きくし、入出力回転
差ΔNを低下させる方向に応答性を向上するものであ
る。また、補正値βは入出力回転差ΔNが目標回転差No
より所定値以上小さいときの補正値で、目標回転差Noを
高く補正して差圧ΔPを小さくし、入出力回転差ΔNを
上昇させる方向に応答性を向上し、最終的には前記最適
の目標回転差Noに収束させるものである。
前記目標回転差Noと伝達トルクTrの関係から差圧ΔP
を求め、さらに、この差圧ΔPとスロットル開度Thより
前記第7図の特性に応じて対応するデューティ値Dkを求
めるが、最終的に出力するデューティ値dは制御系の安
定性を確保することから、前記入出力回転差ΔNと目標
回転差Noの偏差ΔN−Noの値により、読込みデューティ
値Dkの変化量を反映させるようにしている。すなわち、
デューティ値dの決定は、上記偏差ΔN−Noから補正係
数F1,F2の値を、第13図のようなマップから検索する。
また、今回求めたデューティ値Dkと前回値Dk−1と前々
回値Dk−2により、後述のフローチャートで詳述するよ
うな計算式によって更新値ΔDを求め、前回値Dk−1に
加算して最終的なデューティ値dを決定する。
そして、コントロールユニット100は、設定された差
圧ΔPに対応したデューティ値dを有する駆動信号Cgを
形成して、それを調圧用ソレノイド弁7に供給する定常
スリップ制御を行う。
コントロールユニット100の処理を第14図〜第17図の
フローチャートに沿って説明する。第14図はスリップ制
御のメインルーチンを示し、制御スタート後、ステップ
S1でスリップ制御の種類を判定し、定常スリップS2か減
速スリップS3か変速時スリップS4かを、後述の第15図の
制御領域判別ルーチンで判別されたスリップ状態に対応
して判定される。
まず、定常スリップ制御S2の場合には、ステップS5で
エンジン出力トルクTeを、検出したエンジン回転数Neと
スロットル開度Thとにより、前記第9図の特性に基づい
て求める。そして、ステップS6でこのエンジン出力トル
クTeを油温に応じて前記補正係数K1によって補正して、
伝達トルクTr(入力トルクTi)を求めるものである。
次に、ステップS7は上記伝達トルクTrをスロットル開
度Thの変化量ΔTh、すなわち変化速度によって第10図の
特性に基づいて補正し、加速時にスロットル開度の変化
に対して実際のエンジン出力の上昇遅れによるずれを抑
制する。
続いて、ステップS8で差圧ΔPを求めるものであり、
その詳細ステップを第16図に示す。まず、ステップS20
で入出力回転差ΔNの計算を、エンジン回転数Ne(入力
回転数)からタービン回転数Nt(出力回転数)を減算し
て求め、ステップS21で目標回転差Noの初期値(例えば1
50rpm)を読み込む。そして、ステップS22で両者の偏差
ΔN−Noを計算し、ステップS23で該偏差ΔN−Noが正
か否かを判定する。この判定がYESのときには、ステッ
プS24の判定で入出力回転差ΔNが目標回転差Noより所
定値E1以上大きい場合に、ステップS25で上記偏差ΔN
−Noの値により、第11図のマップから補正値αを検索
し、ステップS26でこの補正値αを目標回転差Noから減
算して小さな値に補正する。一方、前記ステップS23の
判定がNOのときには、ステップS27の判定で入出力回転
差ΔNが目標回転差Noより所定値E2以上小さい場合に、
ステップS28で上記偏差ΔN−Noの絶対値により、第12
図のマップから補正値βを検索し、ステップS29でこの
補正値βを目標回転差Noに加算して大きな値に補正す
る。また、ステップS24またはS27の判定がNOの場合並び
に上記のように目標回転差Noを補正した後には、ステッ
プS30で目標回転差Noと伝達トルクTrの関係から、第8
図のマップにより差圧ΔPの値を求めるものである。
そして、ステップS9に進んで、上記差圧ΔPとスロッ
トル開度Thより対応するデューティ値Dkを第7図に基づ
いて求め、ステップS10で最終的に出力するデューティ
値dを計算し、このデューティ値dをステップS19でソ
レノイド弁7に出力して駆動する。
上記ステップS10のデューティ計算の詳細は、第17図
に示すように、ステップS40で上記偏差ΔN−Noの値に
より補正係数F1,F2の値を、第13図のようなマップから
検索する。この補正係数F1,F2は、上記偏差ΔN−Noが
正および負に大きくなるほど大きな値に設定されてい
る。そして、ステップS41で今回求めた前記デューティ
値Dkを読み込み、ステップS42の計算で更新値ΔDを求
め、前回値Dk−1に加算して最終的なデューティ値dを
決定する(S43)。上記ステップS42の計算は、今回のデ
ューティ値Dkと前回値Dk−1との差に補正係数F1を掛け
た値に、前回値Dk−1と前々回値Dk−2との差に補正係
数F2を掛けた値を加算して求めるものであり、状態の変
化が大きい場合にはデューティ値変化を大きくし、状態
の変化が少いときにはデューティ値dの変動を小さくし
て安定させるようにしている。
次に、減速スリップ制御S3の場合は、ステップS12で
減速時の最低伝達トルクをマップから検索する。この減
速時にはエンジンが車輪からトルクが伝達される状態に
あるので、予め実験等により求められて、内蔵メモリに
エンジン回転数に応じて記憶された、車輪からエンジン
に伝達される上記最低伝達トルクを読み出す。そして、
前記ステップS6に進んで、上記伝達トルクに対応した所
定の目標回転差Noとなるように差圧ΔPを求め、デュー
ティ値dを設定し減速スリップ制御を行う。
一方、変速時スリップ制御S4の場合は、ステップS13
で変速時スリップ制御の開始時か否かを判定し、開始時
にはステップS14で直前の状態がスリップ制御状態かそ
れ以外のコンバータ状態かロックアップ状態かを判定す
る。直前の状態がスリップ制御状態の場合には、ステッ
プS15でデューティ値dの値をその時既に設定されてい
る変速直前の値に設定し、この値をステップS18で変速
中のデューティ値dとして、ソレノイド弁7を駆動する
(S19)。また、直前の状態がコンバータもしくはロッ
クアップ状態の場合には、ステップS16で定常スリップ
制御条件が成立したときと同様にエンジン回転数Neとス
ロットル開度Thとからエンジン出力トルクTiを検出し、
ステップS17でこれに基づく伝達トルクTrにより所定の
目標回転差Noを生じさせる差圧ΔPを設定し、この差圧
ΔPが得られるデューティ値dを決定して変速中のデュ
ーティ値dとして調圧用ソレノイド弁7を駆動し(S18,
S19)、この変速スリップ制御を変速動作が完了するま
で行う。
第15図は制御領域判別ルーチンで、ステップS50でス
ロットル開度Thおよび車速Vの検出値から、第4図のシ
フトパターンに基づいて定常スリップ制御領域内にある
か否かを判定する。定常スリップ制御領域内にある場合
には、ステップS51でシフトパターンのスロットル開度
が0上での4−3速シフトダウン変速線をノーマル状態
に戻した後、ステップS52で変速中か否かを判定する。
そして、変速中でない場合には定常スリップ制御S61を
行う一方、変速中の場合には、ステップS53の判定でシ
フトアップのときには変速スリップ制御S64を行い、シ
フトダウンときにはコンバータ制御S63(ロックアップ
解除)を行う。
また、定常スリップ制御領域外の場合には、ステップ
S54の判定で前記減速スリップ条件が成立すると、ステ
ップS55でブレーキの作動状態をブレーキスイッチのオ
ン状態で判定する。そして、ブレーキ操作時にはステッ
プS56でシフトパターンの4−3速シフトダウン変速線
を変更し、エンジンブレーキによる減速感を高める。そ
して、この減速スリップ条件の成立時には、ステップS5
7のへ変速判定により、変速中には変速スリップ制御(S
64)を行う一方、変速中でない場合には減速スリップ制
御(S65)を行う。
さらに、定常スリップ領域外で減速スリップ条件の非
成立状態の場合には、ステップS58でシフトパターンの
4−3速シフトダウン変速線をノーマル状態に戻した
後、ステップS59で変速中か否かを判定する。そして、
変速中でない場合には、ステップS60の判定による完全
ロックアップ領域のときにロックアップ制御(S62)を
行い、ロックアップ領域でないときにはコンバータ制御
(S63)を行う。さらに、上記ステップS59の判定により
変速中に場合には、ステップS53の判定でシフトアップ
のときには変速スリップ制御S64を行い、シフトダウン
ときにはコンバータ制御S63を行う。
上記のような制御態様の判別に基づき、定常、変速お
よび減速スリップ制御を行う際には、前記第14図に基づ
くスリップ制御を行うものである。なお、コンバータ制
御およびロックアップ制御は、公知の制御態様によって
行うもので詳細は省略している。
なお、コントロールユニット100は、シフトタダウン
条件が成立したことを検知した場合には、エンジンが減
速状態にあるときを除き、両ソレノイド弁6,7への駆動
信号Cf,Cgの供給を停止し、ロックアップクラッチ21を
解放状態に作動するものである。また、減速スリップ制
御条件が成立している状態でシフトアップ条件が成立し
たことを検知すると、変速スリップ制御を行い、さら
に、3−2速および2−1速へのシフトダウン条件が成
立したことが検知された場合には、両ソレノイド弁6,7
の駆動を停止し、ロックアップクラッチ21を解放状態と
する。
上記のような実施例によれば、定常スリップ制御時に
おいては、差圧ΔPをスロットル開度の変化量で補正し
た流体継手24の入力トルクTiに応じ、入出力回転差ΔN
に応じた最適な目標回転差Noを設定して制御応答性を高
めるように求め、最終的なデューティ値dを制御の安定
を図るように計算設定することにより、エンジンの運転
状態に適合し、しかも、流体継手24におけるエネルギ損
失の低減とエンジンが発生するトルク変動の吸収とが共
に図れる入出力回転差ΔNを応答性よく安定して生じさ
せることができる。それにより、車両における燃費性能
の向上を図ることができると共に、車体振動を抑制する
ことができる。
また、変速スリップ制御においても、伝達トルクTrに
応じて差圧ΔPが設定され、運転状態に適合したスリッ
プ制御が行える。さらに、減速スリップ制御において
も、伝達トルクTrに応じて入出力回転差の制御を行い、
車体振動の抑制および減速燃料カットなどとの関係で良
好な減速感が得られるものである。
なお、上記実施例においては、定常スリップ制御がス
ロットル開度および車速によって設定される第4図のシ
フトパターンにおけるスリップ制御領域にあることが検
知されたときに行われるようにしているが、その他、ス
ロットル開度および車速の一方が前記シフトパターンに
おける特定の領域であることを検知したときに行うよう
にしてもよい。
(発明の効果) 上記のような本発明によれば、ロックアップクラッチ
の締結室と解除室との差圧制御でスリップ状態を制御す
るについて、目標回転差に対応して差圧を設定すると共
に、現在の入出力回転差と上記目標回転差との偏差を求
め、この偏差に基づき差圧に対応するデューティ値を求
めると同時に、デューティ値の変化状態に基づいて実際
に出力する駆動信号のデューティ値を決定するようにし
たことにより、回転差に対応する差圧の制御を応答性と
安定性を考慮して精度良く実行することができるもので
ある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の構成を明示するための機能ブロック
図、 第2図は一実施例における流体継手のスリップ制御装置
を車両のパワープラントと共に示す概略構成図、 第3図は第2図に示される例の主要部を示す概略構成
図、 第4図〜第13図はスリップ制御における各種制御特性を
示す特性図、 第14図〜第17図はコントロールユニットの処理を説明す
るためのフローチャート図である。 A,24……流体継手、B,21……ロックアップクラッチ、C
……スリップ制御装置、D……入力トルク検出手段、E
……入出力回転数検出手段、F……差圧設定手段、G…
…駆動信号決定手段、6……ロックアップ制御用ソレノ
イド弁、7……調圧用ソレノイド弁、10……エンジン本
体、14……スロットル弁、20……自動変速機、30……油
圧回路部、34……ポンプインペラー、36……タービンラ
ンナー、43……解除室、44……締結室、51……ロックア
ップシフト弁、52……ロックアップ調圧弁、81……スロ
ットル開度センサ、82……車速センサ、100……コント
ロールユニット。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹本 和雄 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ ダ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭61−52427(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ロックアップクラッチの締結室と解除室と
    の差圧を駆動信号のデューティ値によって制御し、該ロ
    ックアップクラッチの締結力を調整して入出力回転差が
    制御可能な流体継手のスリップ制御装置において、目標
    となる上記入出力回転差を設定する目標回転差設定手段
    と、現在の入出力回転差を検出する入出力回転差検出手
    段と、上記目標回転差設定手段にて設定された目標回転
    差に対応して前記差圧を設定する差圧設定手段と、該差
    圧設定手段および入出力回転差検出手段の信号を受け、
    設定差圧に対応する駆動信号のデューティ値を、現在の
    入出力回転差と目標回転差との偏差およびデューティ値
    の変化状態に基づいて決定する駆動信号決定手段とを備
    えたことを特徴とする流体継手のスリップ制御装置。
  2. 【請求項2】前記駆動信号決定手段は、入出力回転差と
    目標回転差との偏差が正および負に大きくなるほど大き
    な比率で、デューティ値の変化状態を反映させて最終的
    なデューティ値を決定することを特徴とする請求項1に
    記載の流体継手のスリップ制御装置。
  3. 【請求項3】前記駆動信号決定手段は、設定差圧に対す
    るデューティ値の変化が大きいときには最終的なデュー
    ティ値変化も大きくし、設定差圧に対する駆動信号の変
    化が小さいときには最終的なデューティ値変化も小さく
    決定することを特徴とする請求項1に記載の流体継手の
    スリップ制御装置。
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JP3267836B2 (ja) * 1995-06-05 2002-03-25 トヨタ自動車株式会社 制御装置及びその設計方法、並びにクラッチのスリップ制御装置およびその設計方法
JP2010209947A (ja) * 2009-03-06 2010-09-24 Nissan Motor Co Ltd 自動変速機の制御装置
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