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JP2024541000A - アデノ随伴ウイルスカプシドタンパク質の突然変異体 - Google Patents

アデノ随伴ウイルスカプシドタンパク質の突然変異体 Download PDF

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JP2024541000A
JP2024541000A JP2024524454A JP2024524454A JP2024541000A JP 2024541000 A JP2024541000 A JP 2024541000A JP 2024524454 A JP2024524454 A JP 2024524454A JP 2024524454 A JP2024524454 A JP 2024524454A JP 2024541000 A JP2024541000 A JP 2024541000A
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Japan
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aav1
mutant
vector
capsid protein
recombinant
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Application number
JP2024524454A
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Inventor
ジェ-ヒョン・ジャン
ユ・ジン・キム
Original Assignee
グルジーン・セラピューティクス・インコーポレイテッド
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Publication date
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Abstract

Figure 2024541000000001
本発明は、アデノ随伴ウイルス血清型1(AAV1)カプシドタンパク質の突然変異体であって、前記突然変異体は、野生型のAAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列と比較して430位のセリンがシステインに置換され、647位のイソロイシンがバリンに置換されたAAV1カプシドタンパク質の突然変異体、前記AAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸、前記AAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸を含む組換えAAV1ベクター、前記ベクターを含む薬剤学的組成物を提供する。特に、AAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸を含む組換えウイルスベクターは、気管支を通じてエアロゾル状態で伝達する際、肺血管標的細胞における導入遺伝子の発現が向上されて肺動脈高血圧症の予防または治療に有用である。

Description

本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質の突然変異体に関し、特にAAV1カプシドタンパク質の突然変異体を含む組換えウイルスベクターは、気管支を通じてエアロゾル状態に伝達する際、肺血管標的細胞における導入遺伝子の発現に有用である。
遺伝子治療を効果的に行うためには、治療遺伝子を所望の標的細胞に伝達し、高い発現効率が得られるようにする遺伝子伝達技術の開発が最優先される。
このような遺伝子伝達技術のうち、AAVは、非病原性ウイルスとして浸透された感染細胞に副作用がなく、対象細胞の遺伝子情報に突然変異を起こす確率が低いため、他の遺伝子治療技術に対して安全性に優れている。
AAV(Adeno-Associated Virus)は、分裂または分裂しない細胞の両方に感染させることができるnon-envelopedの一本鎖DNAウイルスである。AAVは、ヘルパーウイルスが存在する場合にのみ複製が可能であり、ヒトにとっては非病原性である。このような特徴により様々な細胞に遺伝子を導入する有用な方法であり、遺伝子治療のための有用なベクターとして使用されている。
AAVは、様々な血清型(serotype)が存在し、血清型によってhostやウイルスの特徴が異なることが知られている。血清型2(AAV2)は、古くから広く研究されてきた血清型で、様々な細胞を感染させることができる。血清型1(AAV1)、血清型5(AAV5)、血清型6(AAV6)は、より組織感染特異性を持つ血清型で、AAV1は、筋肉、肝臓、気道、中枢神経系などに、AAV5は、中枢神経系、肝臓、網膜などに、AAV6は、心臓、筋肉、肝臓などに対する遺伝子導入効率が高いことが知られている。特定組織への遺伝子伝達特性が血清型によって異なるが、依然として他組織への伝達が容易であるため、組織特異性を向上させて安全性と効率性を改善させることができる新しいAAVベクターの開発が必須的であるといえる。
一方、肺動脈高血圧症は、特別な理由もなく肺細動脈が狭くなる疾患で、肺動脈の圧力が上昇して右心室の機能が低下する疾患である。息切れ、めまいなど日常でよく経験するものが主な症状であるため、そのまま見過ごされたり、他の疾患と考えられやすい。このような理由で患者が診断を受けるまで時間がかかる場合が多い。
実際、疾病管理本部の調査によると、肺動脈高血圧症の正確な診断にかかる時間は平均1.5年であった。また、正確な診断のためには、高コストに加えて体内にワイヤを入れる心臓カテーテル検査が必要であった。
血液が心臓から肺に円滑に伝達されず、呼吸困難、心不全、ひどい場合は死亡に至ることもある。医学技術の持続的な発展にもかかわらず、肺動脈高血圧症の5年生存率は、半分程度に過ぎない。予後が非常に悪いので、適切な早期診断と治療が重要である。
AAVカプシドタンパク質を変形させることによって遺伝子導入効率を向上させる試みが行われているが、肺血管を標的部位とするアデノ随伴ウイルスに対する研究は、まだ報告されていない。
国際公開番号第2017-201121号(2017.11.23.) 日本特許公開2021-0010372号(2021.02.04.)
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意努力した結果、肺動脈高血圧症の根本的な遺伝的原因を解決する遺伝子治療剤を伝達する潜在力のある肺血管を標的とする新しいアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型1のカプシドを基本骨格とするタンパク質変異体を開発することにより、本発明を完成した。
したがって、本発明の目的は、組換えAAVによる標的細胞への遺伝子導入効率の向上及び/又は遺伝情報発現効率の向上のためにAAV1カプシドタンパク質の突然変異体を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記AAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記AAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸を含む組換えAAV1ベクターを提供することである。
また、本発明のさらに他の目的は、前記組換えAAV1ベクターを含む薬剤学的組成物を提供することである。
また、本発明のさらに他の目的は、治療的有効量の前記薬剤学的組成物を対象体に投与する段階を含む、肺高血圧症の予防または治療方法を提供することである。
本発明は、肺血管を特異的に標的化して高効率遺伝子伝達能を有する組換えAAV1カプシド変異体に関し、AAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸を含む組換えウイルスベクターは、気管支を通じてエアロゾル状態で伝達する際、肺血管標的細胞における導入遺伝子の発現に有用であり、肺血管疾患の予防または治療が可能である。
図1は、組換えAAV1ベクター(#2-3変異体)の3D構造を示したものである。 図2aは、#2-3変異体の開裂地図を示したものである。 図2bは、pHelperプラスミド開裂地図を示したものである。 図2cは、pCMV GFPプラスミド開裂地図を示したものである。 図2dは、pCMV LacZプラスミド開裂地図を示したものである。 図3は、本発明による配列番号5で表される組換えAAV1ベクター(#2-3変異体)の全塩基配列を示したものである。 図4は、野生型AAV1ベクターの全塩基配列を示したものである。 図5は、野生型AAV1と本発明の組換えAAV1ベクター(#2-3変異体)のパッケージング効率(packaging efficiency)を定量的PCR分析を通じてゲノミック力価を比較したものである。 図6は、ヒト肺動脈平滑筋細胞(HPASMC)の形質導入効率の向上を全培養細胞のうちGFPを発現する細胞の割合で分析したものである。 図7は、組換えAAV1ベクター(#2-3変異体)の肺組織内の血管特異性を確認するため、8週齢のC57BL/6雄マウスから摘出された肺の全体にマウントβ-ガラクトシダーゼを染色してLacZ発現を確認した肺組織内の効率的な局所伝達結果を示したものである。 図8は、組換えAAV1ベクター(#2-3変異体)の肺血管平滑筋細胞標的化を定量化したものである。 図9は、1xPBS(pH7.4)上で組換えAAV1ベクター(#2-3変異体)のブラウン運動(Brownian motion)を確認したものである。 図10は、組換えAAV1ベクター(#2-3変異体)をintratracheal injectionした後、血管smooth muscle cellへのターゲティング及び分布を確認したものである。 図11は、組換えAAV1ベクター(#2-3変異体)の直径100μm以上のサイズの血管内のLacZ発現をx-gal染色を通じて確認したものである[V:Vessel血管、B:Bronchiole気管支]。
以下、本発明をより詳細に説明すると、次の通りである。
本発明は、アデノ随伴ウイルス血清型1(AAV1)カプシドタンパク質の突然変異体に関する。
本発明で使用される用語の「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」とは、遺伝子治療法において使用するすべてのアデノ随伴ウイルスをそれらの誘導体、ウイルス亜型、自然発生及び組換え形態を含んで指す。AAVの様々な血清型は、多数の互いに異なる細胞タイプを形質導入するための組換え遺伝子伝達ウイルスとして使用してもよい。AAVの様々な血清型のゲノム配列だけでなく、天然末端反復体(terminal repeat:TR)の配列、Repタンパク質及びカプシドサブユニットは、当業界で公知である。このような配列は、文献またはジェンバンク(GenBank)などのパブリックデータベースで見つけることができる。例えば、ジェンバンク(GenBank)登録番号NC_002077(AAV-1)、AF063497(AAV-1)を参照してもよい。
本発明で使用される用語の「血清型」とは、血清学的またはDNA配列分析法によって同定され、その抗原特性によって区別できるAAVの細分された一部分を意味する。
本発明で使用される用語の「カプシド」とは、ウイルスのゲノムに存在するcap遺伝子にコードされるタンパク質で、ウイルスの外殻を構成するタンパク質を意味する。野生型AAVゲノムまたはcap遺伝子は、3種類のカプシドタンパク質(VP1、VP2及びVP3)をコードする。本明細書では、そのすべてがカプシドタンパク質に含まれる。野生型AAV1カプシドタンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む。
一具現例において、本発明は、アデノ随伴ウイルス血清型1(AAV1)カプシドタンパク質の突然変異体であって、前記突然変異体は、野生型のAAV1カプシドタンパク質のアミノ酸配列と比較して430位のセリンがシステインに置換され、647位のイソロイシンがバリンに置換されたAAV1カプシドタンパク質の突然変異体を含む。
一具現例において、本発明によるAAV1カプシドタンパク質の突然変異体は、配列番号3で表されるアミノ酸配列(VP1)を含むか、またはそれからなる。VP2は、配列番号3のT138から最後までのアミノ酸配列に対応し、VP3は、配列番号3のM203から最後までのアミノ酸配列に対応する。
本願の実施例では、本発明によるAAV1カプシドタンパク質の突然変異体を#2-3と命名した。
本発明で使用される用語の「野生型」とは、種の中で、野生の集団に最も多くみられる型を意味する。突然変異型について、野生型は、基本と考えられる表現型またはその個体を指す。野生型は別名として「正常型」とも呼ばれる。また、本明細書において「突然変異体」とは、突然変異を起こした遺伝子が形質的な変化として現れるタンパク質、ウイルス、細胞、個体などを意味する。また、本明細書において「突然変異体」とは、突然変異を起こした遺伝子そのものを指すこともある。
一具現例において、本発明は、前記AAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸を含む。本発明の核酸は、前記AAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする。本発明の核酸は、AAV1カプシドタンパク質をコードする核酸(cap遺伝子)の塩基配列において少なくとも1つの塩基が他の塩基に置換されることにより、作製される。本発明の核酸は、DNAの形態で存在してもよいが、場合によってはRNAの形態であってもよく、DNAとRNAとのキメラであってもよい。また、本発明の核酸には相補的な核酸(例えば、cDNA)も含まれる。本発明の核酸は、シングル-ストランドであってもよく、ダブル-ストランドであってもよいが、好ましくは、ダブル-ストランドである。
本発明は、AAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸として特に限定されないが、一具現例において配列番号4で表される塩基配列を有する核酸が挙げられる。
本発明の核酸は、適切な制御配列と作動可能に連結してもよい。制御配列には、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流の調節ドメイン、内部リボソーム進入部位(internal ribosome entry sites:IRES)、エンハンサーなどが含まれる。プロモーター配列には、誘導性プロモーター配列、構成的プロモーター配列が含まれる。制御配列は、カプシドタンパク質の由来となるAAVに固有のものであってもよく、外来性のものであってもよく、天然配列であってもよく、合成配列であってもよい。本発明の核酸を含むAAV1カプシドタンパク質の突然変異体を発現可能な組換えDNAも本発明に含まれる。
前記組換えDNAは、試験管内、生体外及び生体内の細胞に本発明の核酸を伝達し、当該細胞にAAV1カプシドタンパク質の突然変異体を発現する能力を与えるのに有用である。そして、本発明の核酸が伝達された細胞は、組換えAAV粒子を製造するのにも有用である。当該組換えDNAは、特に真核細胞、好ましくは、動物細胞、より好ましくは、哺乳類細胞に本発明の核酸を伝達または導入するために使用してもよい。
本発明では、ベクターとして使用されているDNAに本発明の核酸を保有させて組換えDNAを作製してもよい。例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーマルDNA、ウイルスゲノムなどを使用してもよい。
例えば、プラスミドに本発明のAAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸(cap遺伝子)を保有させることにより、パッケージングプラスミドを作製してもよい。パッケージングプラスミドは、さらにレプリカーゼ(Rep)タンパク質をコードする核酸(rep遺伝子)などの任意の核酸配列を含んでもよい。好ましくは、rep遺伝子は、AAV2由来のRepを追加してもよい。
公知のパッケージングプラスミドに搭載されたcap遺伝子の核酸配列において、PLA2ドメインコード領域における少なくとも1つの塩基を他の塩基に置換することによっても、本発明の核酸を含む組換えDNAを作製しうる。前記パッケージングプラスミドとして特に限定されないが、cap遺伝子を搭載したパッケージングプラスミド、好適にはcap遺伝子とrep遺伝子を搭載したパッケージングプラスミドが挙げられる。一例として、本発明では、本発明のAAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸(cap遺伝子)とrep遺伝子を搭載したパッケージングプラスミドである配列番号5で表される組換えAAV1ベクター、p#2-3を作製した。
核酸に塩基の置換を導入する方法は、公知の方法により行うことができ、特に限定されないが、市販の試薬、例えば、Mutagenesis Basal Kit(TAKARA BIO INC.)を使用し、キットに付属の説明書に従ってPCRを行うことによって達成しうる。
したがって、本発明は、遺伝子治療の適用のための新規のAAV1#2-3変異体であって、AAV1カプシドタンパク質変異体をコードする核酸を含む組換えAAV1ベクターを含む。
本発明の組換えAAVベクターは、標的細胞への遺伝子導入に有用である。本発明の組換えAAVベクターによって導入された遺伝子は、前記標的細胞において強く発現される。
本明細書で使用される用語の「AAVベクター」とは、アデノ随伴ウイルス(AAV)の成分を含むか、またはこれらの成分から由来し、脳、心臓、肺、骨格筋、肝臓、腎臓、脾臓または膵臓などの任意の多くの組織タイプのヒト細胞を含む哺乳類細胞を試験管内または生体内にかかわらず、感染させるのに適した任意のベクターを指す。用語の「AAVベクター」とは、関心のあるタンパク質をコードする少なくとも核酸分子を含むAAV型ウイルス粒子(またはビリオン)を指すために使用されてもよい。
本明細書で使用される用語の「AAVウイルス」または「AAVウイルス粒子」または「rAAVベクター粒子」とは、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質(野生型AAVのすべてのカプシドタンパク質による)及びカプシド内に移入された(encapsidated)ポリヌクレオチドrAAVベクターからなるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド、例えば、哺乳類細胞に伝達される移植遺伝子)を含む場合、これは典型的に「rAAVベクター粒子」または単に「rAAVベクター」と呼ばれる。したがって、rAAV粒子の生成は必然的にrAAVの生成を含むが、このようなベクターがrAAV粒子内に含まれるためである。
「パッケージング」とは、AAV粒子の組立体及びカプシド内の移入を引き起こす一連の細胞内事件を指す。
AAV「rep」及び「cap」遺伝子は、アデノ随伴ウイルスの複製及びカプシド内の移入タンパク質を暗号化するポリヌクレオチド配列を指す。AAV rep及びcapは、本明細書においてAAV「パッケージング遺伝子」と呼ばれる。
AAVに対する「ヘルパーウイルス」とは、AAV(例えば、野生型AAV)が哺乳類細胞によって複製され、パッケージングされるようにするウイルスを指す。アデノウイルス、ルペスウイルス、及びワクシニアなどのフォックスウイルスを含む、AAVに対する様々な、このようなヘルパーウイルスは、当業界で公知である。サブグループCのタイプ5のアデノウイルスが最もよく使用されるが、アデノウイルスは、多数の異なるサブグループを含む。ヒト、非ヒト哺乳類及び鳥類由来の数多くのアデノウイルスが公知であり、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ヘルペス科のウイルスは、例えば、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viruses:HSV)及びエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein-Barr viruses:EBV)だけでなく、サイトメカロウイルス(cytomegaloviruses:CMV)及び仮性狂犬病ウイルス(pseudorabies viruses:PRV)を含むが、これらはやはりATCCなどの寄託機関から入手可能である。
「ヘルパーウイル機能(ら)」とは、AAV複製及びパッケージング(本明細書に記載された複製及びパッケージングのための他の要求事項とともに)を許容するヘルパーウイルスゲノムにおいて暗号化された機能(ら)を指す。本明細書に記載されたように、「ヘルパーウイルス機能」は、ヘルパーウイルスを提供するか、または例えばトランスでプロデューサー細胞に必須機能(ら)を暗号化するポリヌクレオチド配列を提供することによって含まれる、様々な方法で提供されてもよい。例えば、少なくとも1つのアデノウイルスタンパク質を暗号化するヌクレオチド配列を含むプラスミドまたは他の発現ベクターは、rAAVベクターとともにプロデューサー細胞に形質感染される。
一具現例において、本発明によるAAV1ベクターは、野生型カプシドタンパク質を含むAAV1ベクターと比較すると、標的組織に対して向上された形質導入プロファイルを有する。すなわち、本発明によるAAV1ベクターは、明確な組織標的化能力(例えば、組織向性(tissue tropism))を有する。
本明細書において、用語の「向性(tropism)」とは、特定タイプの細胞または組織を感染または形質導入させるためのAAVウイルス粒子に存在するAAVカプシドタンパク質の特異性を意味する。
特定タイプの細胞または組織に対するAAVカプシドの向性は、本明細書の実施例に開示されたような当業界でよく知られている標準分析法を使用し、AAV1カプシドタンパク質を含んで特定タイプの細胞または組織を感染させるか、または形質導入するAAVベクター粒子の能力を測定することにより、決定されてもよい。
すなわち、「向性」とは、少なくとも1つの特定の細胞タイプを感染させるAAVベクターまたはビリオンの能力を意味するが、ベクターが少なくとも1つの特定の細胞タイプに細胞を形質導入するように機能するかどうかを含むこともできるところ、すなわち、向性は、特定の細胞または組織タイプ(ら)へのAAVベクターまたはビリオンの優先的な導入及び/又は特定の細胞または組織タイプへの進入を容易にする細胞表面との優先的な相互作用の後、場合によって、及び好ましくは、細胞内においてAAVベクターまたはビリオンによって運搬される配列の発現(例えば、転写及び場合によっては翻訳)、例えば、組換えウイルスの場合、異種ヌクレオチド配列(ら)の発現を意味する。
本明細書で使用する用語の「形質導入」とは、少なくとも1つの特定の細胞タイプを感染させるAAVベクターまたはビリオンの能力を意味するところ、すなわち、形質導入は、AAVベクターまたはビリオンを細胞内に導入し、AAVベクターまたはビリオン内に含まれた遺伝物質を細胞に伝達してベクターゲノムから発現を得ることを意味する。すべての場合ではないが、一部の場合には形質導入と向性は相関関係がある。
本願に記載のAAVは、少なくとも1つのカプシドタンパク質において新しい、または増強された組織向性の特性を付与するアミノ酸変形を含む。本願発明によるAAV1変形は、肺血管(例えば、肺動脈)を標的とする。
本明細書で使用される用語の「肺組織または肺血管の向性」とは、肺組織または肺血管に対する向性を意味する。
一具現例において、ペプチド-変形したハイブリッドAAVカプシドタンパク質の肺血管の向性は、ペプチドを有していない野生型AAVカプシドタンパク質の肺血管の向性に比べて少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%以上またはそれ以上に増加する。
また、本発明は、前記組換えAAV1ベクターを含む薬剤学的組成物を含む。前記組成物は、薬剤学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。
前記「薬学的に許容可能な担体」は、組成物の有効成分と組み合わせると、成分が意図しない免疫反応などの支障をきたす生理学的反応を引き起こすことなく、生物学的活性を有することを可能にする任意の物質を含む。薬学的に許容可能な担体としては、水、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline)、オイル/水エマルジョンなどのエマルジョン、及び湿潤剤(wetting agent)を含む。このような担体を含む組成物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,current Ed.,Mack Publishing Co.,Easton Pa.18042,USA;A. Gennaro (2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,20th edition,Lippincott,Williams,& Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,7th ed.,Lippincott,Williams,& Wilkins;and Handbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbe et al.,3rd ed.Amer.Pharmaceutical Assocに記載されているように、周知の従来の方法によって剤形化される。
一具現例において、本発明による薬剤学的組成物は、肺動脈高血圧症の予防または治療のための薬剤学的組成物であってもよい。
本明細書で使用される用語の「治療」とは、疾患関連症候群、合併症、症状又は生化学的徴候の進行、発達、重症度又は再発を反転、緩和、改善、阻害又は遅延又は予防しようとする目的で対象に行われた任意類型の介入又は過程、又は対象に活性剤を投与することを指す。治療は、疾患のある対象体又は疾患のない対象体(例えば、予防用)に対して行われてもよい。
また、一具現例において、本発明は、治療有効量の前記薬剤学的組成物を対象体に投与する段階を含む肺動脈高血圧症の予防または治療方法を含む。
本明細書で使用する「投与」とは、当業者に公知の様々な方法と伝達系のうち任意のものを用いて対象に治療剤又は治療剤を含む組成物を物理的に導入することを指す。好ましい投与経路は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄、硝子体内、又は例えば注射又は注入による他の非経口投与経路を含む。本明細書で使用する用語の「非経口投与」とは、一般に注射による腸内及び局所投与以外の投与方式を意味し、これに制限されないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病変内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、硝子体内、関節内、皮膜下、蜘蛛膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び注入だけでなく、生体内電気穿孔を含む。
本明細書で使用する用語の「治療有効量」とは、対象の疾患又は障害を「治療」したり、疾患又は障害(例えば、肺動脈高血圧症)の危険、潜在性、可能性又は発生を減少させるのに効果的な薬物単独又は他の治療剤と組み合わせた薬物の量を指す。「治療有効量」は、疾患又は障害(例えば、本明細書に開示の肺動脈高血圧症)を有するか、有する危険のある対象体に一部の改善又は実益を提供する薬物又は治療剤の量を含む。これによって、「治療有効量」は、疾患又は障害の危険、潜在性、可能性又は発生を減少させたり、又は一部緩和、軽減を提供し/又は少なくとも1つの指標(例えば、肺動脈高血圧症)を減少させ/又は疾患又は障害の少なくとも1つの臨床症状を減少させる量である。
本明細書で使用する用語の「対象体」とは、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。用語の「非ヒト動物」は、すべての脊椎動物、例えば、哺乳類及び非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両棲類、爬虫類などのような非哺乳類を含む。
以下、本発明による実施例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記の実施例によって制限されるものではない。
[実施例]
実施例1:AAVライブラリーを用いた肺血管tropic AAV1カプシドタンパク質変異体の選別
1)AAV1カプシドタンパク質変異体の選別
野生型AAV変異体(AAV1、AAV2、AAV4、AAV6、AAV8、AAV9)のcap遺伝子にerror-prone PCRを用いたランダムポイント突然変異誘発及び各血清型の3-fold protrusionにrandom 7mer/9merを挿入してプラスミドプールを作製した。AAVプラスミドライブラリー7-70ng、pBluescript 25μg,pHelper 25μgをカルシウム-ホスフェート複合体(calcium-phosphate complex)を形成し、AAV293細胞にトランスフェクションしてAAVパッケージングを行い、各変異体のcap遺伝子情報を搭載したAAVライブラリープールを作製した。
8週齢のC57BL/6雄マウスをイソフルラン(isoflurane)で呼吸麻酔した後、気道部位の皮膚を1cmほど切開した。PenWu micro-aerosolizer(BioJane,Shanghai,China)(1.25" length of intratracheal portion,700μm of outer diameter,430μm of inner diameter)にPBSのうち1×1011vg/100μlのAAVライブラリープールをロードして気道にニードルが通過する様子を確認し、気管内注射(intratracheal injection)を行った。
1週間後、0.9%の生理食塩水を心臓を通じて流して灌流(perfusion)を行い、肺を摘出した。均質化(Homogenization)後、DNAミニキット(Qiagen)を用いて肺全体からDNAを抽出し、AAV cap遺伝子特異的フォワードプライマー(forward primer)5’-GCGGAAGCTTCGATCAACTACG-3’(配列番号7)、リバースプライマー(reverse primer)5’-CGCAGAGACCAAAGTTCAACTGA-3’(配列番号8)を用いて、肺全体に向性(tropism)を示すAAV変異体のcap遺伝子を増幅した。これを肺向性(tropic)AAVライブラリープールで作製し、前記と同様に気管内注射(intratracheal injection)を行った(1×1011vg/100μl)。1週間後に灌流(perfusion)及び肺摘出を行い、30秒間choppingして小片にした後、コラゲナーゼIIを用いてsingle細胞解離(cell dissociation)を行った。このとき、DNase Iを添加してdead cellから放出されたchromosomal DNAによる細胞クラスタリング(cell clustering)を防止し、cell lossを最小化しようとした。これを37℃で4~6時間インキュベーションした後、ピペッティングを通じて単一細胞の形態のtotal lung populationを得て、red blood cell lysisを常温で光を遮断した状態で行った後、70μmのporeを持つcell strainerでろ過してFACSバッファーに細胞を移した。その後、血管向性(tropism)を示すAAV変異体を選別するために、10μgのAPC(Anti-alpha smooth muscle actin antibody)を添加した後、4℃でインキュベーションを行った。その後、APC positive cellsをsortingして血管関連細胞を選別し、cell lysis及びDNA extraction後、プライマー(5’-GCGGAAGCTTCGATCAACTACG-3’:配列番号9)及び(5’-CGCAGAGACCAAAGTTCAACTGA-3’:配列番号10)を用いて細胞内に移入されたAAV変異体のcap遺伝子を増幅した。増幅されたcap gene遺伝子は、両末端にHindIIIとNotI配列を含み、これをpSub2プラスミドにHindIII/NotI restriction及びligationを通じてサブクローニングしてDH10βに電気穿孔後、プラスミドを精製して(Qiagen Plasmid Maxi Kit)血管向性プラスミドプール(pool)の形態で保管した(pSub2は、pSub201(ATCC)に基づいてUC Berkeley,David Schaffer Laで作製したプラスミドで、HindIIIとNotIを用いてcap geneをsubcloningできるように作製される、Reference 1.Narendra Maheshri et al.,Nature Biotechnology,2006;2.James T Koerber,Nature Protocols,2006)。計3roundのin vivo選別を経て選別された多様な変異体のうち、肺動脈高血圧症の予防及び治療用AAV遺伝子伝達体として#2-3変異体が最終選定され、これはAAV1ベースのpoint mutation S430C、I647Vを保有していることが確認された(図1)。
2)組換えAAV1ベクター(AAV1#2-3変異体)の作製
(1)パッケージングプラスミド突然変異体の作製
血管向性プラスミドプールにおいてHindIII/NotI制限酵素を通じて多数の血管向性cap遺伝子をcap遺伝子の挿入のために、HindIII及びNotIが導入されているpXX2(UC Berkeley,David Schaffer Lab)にsubcloningしてreporter geneを搭載するための多数の血管特異的プラスミド突然変異体の作製を完了した。
(2)AAV293細胞へのプラスミド導入
AAV1#2-3変異体の作製
突然変異体プラスミド 17μg、ITR flanked reporter gene(pCMV-GFPまたはpCMV-LacZまたはpCMV-FGF12-IRES-GFP)17μg、pHelper 17μgをcalcium-phosphate complexを形成し、AAV293細胞にトランスフェクションし、約48時間後、細胞ペレットのみを集めて凍結-解凍(freezing-thawing)を通じて細胞内のAAVを抽出した。その後、遠心分離を通じて細胞破壊物(cell debris)を除去し、ベンゾナーゼ(benzonase)10U/mLを37℃で30分間インキュベーションしてウイルス産生細胞から出た核酸を除去した。
作製された#2-3変異体の開裂地図は図2に示し、全塩基配列は図3と同じである。
野生型AAV1の作製
AAV2のrep遺伝子とAAV1のcap遺伝子を含むパッケージングプラスミド17μg、ITR flanked reporter gene(pCMV-GFPまたはpCMV-LacZまたはpCMV-FGF12-IRES-GFP)17μg、pHelper 17μgをcalcium-phosphate complexを形成し、AAV293細胞にトランスフェクションし、約48時間後、細胞ペレットのみを集めて凍結-解凍(freezing-thawing)を通じて細胞内のAAVを抽出した。その後、遠心分離を通じて細胞破壊物(cell debris)を除去し、ベンゾナーゼ(benzonase)10U/mLを37℃で30分間インキュベーションしてウイルス産生細胞から出た核酸を除去した。
3)AAV1#2-3変異体の精製
AAV溶液をイオディキサノールの勾配(gradient)を用いて超遠心分離を行った。イオディキサノール溶液を15%、25%、40%、54%で作製し、順番に超遠心分離チューブにロードし、その上にAAV溶液をロードした。チューブシーリング(Tube sealing)後、Optima XE-90 Ultracentrifuge(BECKMAN COULTER)及びVti65.2 rotorを用いて超遠心分離を行った(42,000RPM、18℃、2時間)。54%と40%のイオディキサノールの中間に位置するAAV層を抽出し、それをAmicon(登録商標)Ultra-15 Centrifugal Filter(MWCO 100,000)を用いて0.01%Tween 20を含むPBSバッファーでバッファー交換(buffer exchange)を行った。
4)AAV1#2-3変異体力価の測定
CMV-FGF12-IRES-GFPを搭載している野生型AAV1(wtAAV1)とAAV1#2-3変異体の力価は、Dnase I(5U)に抵抗性を有するウイルスをプロテイナーゼK処理してウイルスゲノムを抽出した後、CMVに対する定量的PCR(qPCR)プライマー(5’-ATGGTGATGCGGTTTTGGCAG-3’:配列番号11及び5’-GGCGGAGTTGTTACGACATTTTGG-3’:配列番号12)を用いてそれぞれのstandardとともにqPCRを行って定量した。
野生型AAV1と組換えAAV1ベクター(#2-3変異体)のパッケージング効率(packaging efficiency)をgenomic titer比較して図5に示した。これは、#2-3変異体が野生型AAV1に比べてパッケージング効率が向上したもので、進化論的に優れた個体を維持できる可能性を意味する。
実施例2:組換えAAV1変異体の感染の確認
1)インビトロ実験
レポーター遺伝子として遺伝子伝達効率及び位置分析のためにCMV-GFPを搭載した野生型AAV1と#2-3変異体をそれぞれパッケージングし、HPASMC(Human pulmonary arterial smooth muscle cell;2×10cells/20μL)に感染させた。
それぞれのウイルスは、CMV-FGF12-IRES-GFPを搭載し、GFPを搭載した場合はHPASMC感染(MOI 10,000)48時間後にフローサイトメトリー(flow cytometry)を通じて全培養細胞のうちGFP発現細胞の割合(%)を分析して感染能を確認し、その結果を図6に示した。
図6は、ヒト肺動脈平滑筋細胞(HPASMC)の形質導入効率の向上を全培養細胞のうちGFPを発現する細胞の割合で分析したもので、#2-3変異体の野生型AAV1に対して血管細胞への優れた遺伝子伝達効能及びヒトプライマリー細胞(ヒト肺動脈平滑筋細胞)への向性(tropism)も優れていることを示す。
2)インビボ実験
CMV-LacZを搭載したAAV1野生型と#2-3変異体をそれぞれパッケージングし、8週齢のC57BL/6 maleマウスの気管内にエアロゾル形態で注入(5×1011vg/100μl)した。
組換えAAV1ベクター(#2-3 variant)の肺組織内の特異性を確認するために、8週齢のC57BL/6雄マウスに注入1週間後に摘出された肺に全体をマウントβ-ガラクトシダーゼで染色してLacZ発現を確認した結果を図3に示し、これにより肺組織に効率的に局所伝達されたことを確認した。
また、組換えAAV1ベクター(#2-3 variant)の肺組織内血管特異性を確認するために、8週齢のC57BL/6雄マウスを注入1週間後に肺を摘出してx-gal染色を通じて肺血管でのLacZ発現の有無を確認し、その結果を図7に示した。これにより肺血管に効率的に伝達されたことを確認した。
実施例3:組換えAAV1変異体の肺血管平滑筋細胞ターゲティング効率の確認
肺組織内の血管平滑筋細胞ターゲティング効率を評価するために、single cell levelにおいて複数の細胞に移入されたviral genomeをquantificationしようとした。LacZを搭載した#2-3変異体とwtAAV1をパッケージングし、8週齢のC57BL/6マウスにintratracheal injection(5×1011vg/100μl)を行った。注射後の3日目または7日目に肺を摘出し、single cell dissociationを行った後、それぞれのcell sortingのためのα-smaにconjugationされた抗体(α-sma-Alexa488,abcam,ab184675)を4℃で一晩のインキュベーションを行った。
Initial injection doseに対して各細胞内に移入されたviral genome比を計算し、wtAAV1値でnormalizationを行い、#2-3変異体のwtAAV1に対して増減倍数(fold change)を確認した。(*p-value<0.01)
図8に示すように、α-smaにコンジュゲーションされた抗体を用いて平滑筋細胞をsortingしたサンプル内のviral genome比は、wtAAV1に対して#2-3変異体がDay3では3.7±0.9倍増加、Day7では2.7±0.5倍増加する傾向を示した。
実施例4:組換えAAV1変異体の運動性の確認
#2-3変異体とwtAAV1をエアロゾルformでintratracheal injection後、気道壁とextracellular matrix、血管壁など様々な障壁を通過して血管smooth muscle cellに到達する。これを可能にした原因の一つとして、#2-3のtropismだけでなくAAV1のmobilityも優れていることを証明するために、液相(PBS相)でのブラウン運動(Brownian motion)を確認した。
1)1xPBS、静的(static)状態
1xPBS(pH7.4)を条件としてwtAAV1または#2-3変異体を1.0E+09vg/mlの濃度で分散してstatic状態での軌道を観察した結果、wtAAV1に対して#2-3は、diffusion形態の動きを示すことを確認した。
MSD(平均二乗変位、Mean squared displacement)をmsd(τ)=<Δr(τ)2>=<[r(t+τ)-r(t)]>式(r(t)は、時間tにおけるvector位置、τは、2つの位置(各ベクター別に得られた軌跡での差)間のlag time)を用いて測定し、Log10(MSD1s)/pixelでまとめて比較した結果、AAV1(2.21±0.49)に対して#2-3(3.12±0.17)は、統計的に有意な増加を示した(*p-value<0.01)。すなわち、1×PBS、pH7.4の条件で#2-3変異体が動いた距離がwtAAV1よりも増加したことを示した(図9)。
ブラウン運動とは、液体や気体の中で粒子が不規則に動く運動を意味し、diffusionは、比較的方向性を持って動く粒子の運動を表す。Diffusionは、ブラウン運動のmacroscopic表現と見なすことができ、ブラウン運動の平均的な動きを計算してdiffusion形態を予測しうる。
すなわち、不規則に動き、所定の位置にとどまる軌跡を示すAAV1に対して#2-3変異体の軌跡は、比較的線形の動きを示し、diffusion形態の動きを示した。
実施例5:組換えAAV1変異体の肺血管の向性の確認
1)組換えAAV1変異体の肺組織内分布の確認
wtAAV1または#2-3変異体にAlexa594をタグ付けし、8週齢のC57BL/6雄マウスにintratracheal injectionを行い(3×1011vg/100μl)、注入48時間後に麻酔及び心臓に通じたperfusionを行って肺を摘出した。4%PFA固定後にsectioningし、α-sma-抗体(Alexa488)を用いて細動脈(arteriole)内のAAV分布のcolocalizationを確認した。
Intratracheal injection 24h後のAAV distributionを観察した結果、#2-3変異体は、Alexa594AAVカプシドにconjugationした蛍光物質)でタグ付けされたAAVベクターが細気管支(bronchiole)から細動脈に移動する現象が観察された。
Intratracheal injection後、48h time pointでは、ほとんどの#2-3ベクターが細気管支から細動脈に移動し、血管壁にAAVベクターがlocalizationされていることが確認され、これは血管内平滑筋細胞マーカーであるα-sma抗体ともcolocalizationされることを確認することにより、#2-3ベクターの肺血管の向性(blood vessel tropism)を確認した。これに対して、wtAAV1は48h time pointで、血管周辺部の空気袋(air sac)部分には多量のAAVベクターが存在していることが確認されたが、α-sma抗体とはcolocalizationされる現象を示さなかった(図10)。
すなわち、ウイルスに蛍光をかけて肺組織内での動きを確認した結果、wtAAV1は気管支の周りに留まっていたり、血管に到達できなかったのに対し、#2-3変異体は気管支を通過して血管側に急速に移動する様子が非常に円滑に起こり、血管細胞で集中的に#2-3ベクターの遺伝子が発見された。
2)LacZ発現現象による肺血管の向性の確認
LacZを搭載したwtAAV1または#2-3変異体を8週齢のC57BL/6オスマウスにintratracheal injectionを行い(3×1011vg/100μl)、2週間後に麻酔及び心臓によるperfusionを行い、sectioningしてX-gal染色を行った。wtAAV1に対して#2-3変異体は、血管部分におけるLacZ発現現象を観察した。
図11に示すように、#2-3ベクターは、wtAAV1に対して向上された移動性(mobility)を有し、肺組織内で気道と細胞外基質を通過して血管部分に物理的に到達する割合を向上させるとともに、血管に集まる血管tropismを示した。したがって、本発明の組換えAAV1である#2-3ベクターは、肺血管ターゲット疾患の治療及び予防用AAVベクターとして使用できるものと期待される。

Claims (15)

  1. アデノ随伴ウイルス血清型1(AAV1)カプシドタンパク質の突然変異体であって、前記突然変異体は、野生型のAAV1カプシドタンパク質のアミノ酸配列と比較して430位のセリンがシステインに置換され、647位のイソロイシンがバリンに置換されたAAV1カプシドタンパク質の突然変異体。
  2. 配列番号3で表されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のAAV1カプシドタンパク質の突然変異体。
  3. 請求項1に記載のAAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸。
  4. 配列番号4で表される塩基配列を有する、請求項3に記載の核酸。
  5. 請求項3に記載のAAV1カプシドタンパク質の突然変異体をコードする核酸を含む、組換えAAV1ベクター。
  6. 前記AAV1ベクターは、AAV1野生型ウイルスベクターと比較すると、標的組織に対して向上された形質導入プロファイルを有する、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
  7. 前記標的組織は、肺血管である、請求項6に記載の組換えAAV1ベクター。
  8. 前記肺血管は、肺動脈である、請求項7に記載の組換えAAV1ベクター。
  9. 配列番号7で表される、請求項5に記載の組換えAAV1ベクター。
  10. 請求項5に記載の組換えAAV1ベクターを含む、薬剤学的組成物。
  11. 前記組成物は薬剤学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項10に記載の薬剤学的組成物。
  12. 肺動脈高血圧症の予防または治療のための請求項10に記載の薬剤学的組成物。
  13. 前記組成物が静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病変内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、硝子体内、関節内、皮膜下、蜘蛛膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射により投与される、請求項10に記載の薬剤学的組成物。
  14. 治療的有効量の請求項5に記載の組換えAAV1ベクターを含む薬剤学的組成物を対象体に投与する段階を含む、肺動脈高血圧症の予防または治療方法。
  15. 前記組成物が静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病変内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、硝子体内、関節内、皮膜下、蜘蛛膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射により投与される、請求項14に記載の肺動脈高血圧症の予防または治療方法。
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