JP2022140222A - シンチレータ材、放射線検出装置およびシンチレータ材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐湿性に優れ、放射線によって良好に可視光を発光するシンチレータ材、放射線検出装置およびシンチレータ材の製造方法を提供する。【解決手段】放射線により励起されて可視光を発光するシンチレータ材であって、シリカの一部が結晶化したクリストバライト構造を有し、蛍光体材料であるSrI2:Eu2+がクリストバライト構造中に取り込まれてナノコンポジット化しており、クリストバライト構造にアルカリ金属イオンを含むシンチレータ材。【選択図】図1
Description
本発明は、シンチレータ材、放射線検出装置およびシンチレータ材の製造方法に関する。
従来から放射線検出装置には、放射線によって励起され可視光を発光するシンチレータ材として、NaI:TlやCaI:Tlなどのヨウ化物が用いられていた。ヨウ化物系のシンチレータ材は、空気中の水分を取り込んで水和する潮解性を有しており、気密性の高い容器に封入して用いる必要がある。そこで従来の放射線検出装置では、ヨウ化物系のシンチレータ材と光検出部をアルミニウム製の缶である容器に封緘して、光取り出し口にガラス製の窓部材を接着し、容器内に配置した光検出部で可視光を検出していた。
しかし、外気中の水蒸気が微量ずつ容器と窓部材の接着部分から容器内に侵入するため、ヨウ化物系シンチレータが水和することによって劣化し、長期間にわたって使用するためには放射線検出装置の管理とメンテナンスを適切に行う必要があった。また、容器内への水分の侵入を抑制するためには、気密性の高い封止をする必要があり、製造工程において工数が増加し作業性が低下するという問題があった。
そこで特許文献1では、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+を取り込ませて、ナノコンポジット化したシンチレータ材を用いることで耐湿性を向上させることが提案されている。
しかし、特許文献1の技術では、クリストバライト構造にSrI2:Eu2+を取り込ませてナノコンポジット化する必要があり、SiO2に取り込まれるSrI2:Eu2+の量を多くして、放射線吸収率を高めて発光量を大きくすることが困難であった。
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、耐湿性に優れ、放射線によって良好に可視光を発光するシンチレータ材、放射線検出装置およびシンチレータ材の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のシンチレータ材は、放射線により励起されて可視光を発光するシンチレータ材であって、シリカの一部が結晶化したクリストバライト構造を有し、蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が前記クリストバライト構造中に取り込まれてナノコンポジット化しており、前記クリストバライト構造にアルカリ金属イオンを含むことを特徴とする。
このような本発明のシンチレータ材では、クリストバライト構造にSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンを含んでいることで、蛍光体材料の耐湿性を向上させて、放射線によって良好に可視光を発光することができる。
また、本発明の一態様では、前記アルカリ金属イオンは、Li,Na,K,RbまたはCsの何れかである。
また、本発明の一態様では、前記クリストバライト構造に含まれるSiに対して、前記アルカリ金属イオンが0.1~10mol%の比率で含まれる。
また、本発明の一態様では、前記蛍光体材料を単結晶または多結晶で含む。
また、本発明の一態様では、前記シリカは、表面から内部にわたって空隙が分布する多孔質体である。
また、本発明の一態様では、前記多孔質体は、平均粒径(D50)が2~50μmのSiO2粒子の集合体である。
また、本発明の一態様では、前記SiO2粒子は、アルカリ金属成分を含有している。
また、本発明の一態様では、前記クリストバライト構造に含まれるSiに対して、Srイオンが0.9~15mol%、Iイオンが2.0~40mol%、Euイオンが0.1~5.0mol%の比率で含まれる。
また、本発明の放射線検出装置は、上記何れか一つに記載のシンチレータ材と、400nm以上500nm以下の波長を検出する光検知部を備えることを特徴とする。
また、本発明のシンチレータ材の製造方法は、蛍光体材料であるSrI2:Eu2+およびアルカリ金属材料を含む原料粉末を形成する粉末調整工程と、表面から内部にわたって空隙が分布する多孔質体のシリカを形成する多孔質体形成工程と、前記多孔質体と前記原料粉末を接触させて加熱処理する熱処理工程とを備えることを特徴とする。
本発明では、耐湿性に優れ、放射線によって良好に可視光を発光するシンチレータ材、放射線検出装置およびシンチレータ材の製造方法を提供することができる。
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1は、本実施形態に係るシンチレータ材を用いた放射線検出装置10の構造を示す模式図である。図1に示すように放射線検出装置10は、容器11と、窓部材12と、シンチレータ材13と、光電子増倍管14(PMT:PhotoMultiplier Tube)と、ブリーダ回路15を備えている。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1は、本実施形態に係るシンチレータ材を用いた放射線検出装置10の構造を示す模式図である。図1に示すように放射線検出装置10は、容器11と、窓部材12と、シンチレータ材13と、光電子増倍管14(PMT:PhotoMultiplier Tube)と、ブリーダ回路15を備えている。
容器11は、開口部を有する略円筒形状の部材であり、内部にシンチレータ材13、光電子増倍管14、ブリーダ回路15を収容する。開口部には窓部材12が接着剤等で気密に固定されている。容器11を構成する材料は限定されないが、一例としてはアルミニウムを用いることができる。また、容器11の形状は円筒形状に限定されず、内部に収容する各部材の形状や大きさに合わせて適宜設計することができる。また容器11には、図示しない配線孔が形成されており、外部から配線孔を介してブリーダ回路15に配線が接続されている。
窓部材12は、放射線を透過する材料で構成された板状の部材であり、容器11の開口部に配置されて容器11の内部を気密に封止している。窓部材12を構成する材料は限定されず、公知のガラス材料を用いることができる。窓部材12の外周と容器11の開口部の間は接着剤等が塗布されており、隙間からの水蒸気の侵入を抑制するために気密封止されている。
シンチレータ材13は、窓部材12と光電子増倍管14の間に配置され、放射線が照射されることで可視光を発光する蛍光材料を含有する部材である。本実施形態では、蛍光材料として、マトリックス相であるシリカの一部が結晶化したクリストバライト構造に、単結晶または多結晶のSrI2:Eu2+が取り込まれてナノコンポジット化されたものを用いている。また、クリストバライト構造中には、アルカリ金属イオンが含まれている。
光電子増倍管14は、微量の光子を検出して電気信号を出力する部材である。光電子増倍管14の構造は公知のものを用いることができ、一例としては、高真空のガラス容器中に光電陰極、複数の二次電子増倍電極(ダイノード)、陽極、およびその他の電極を封入した構造を有するものを用いることができる。光電子増倍管14の入射窓側にはシンチレータ材13が配置されており、出力側にはブリーダ回路15が接続されている。
ブリーダ回路15は、高電圧電源からの電圧を複数の分割抵抗を介して光電子増倍管14に供給するとともに、光電子増倍管14からの電流を出力する部材である。高電圧電源からの複数の電圧は、光電子増倍管14の各ダイノードに供給されている。ブリーダ回路15の出力は、図示しない配線を介して検出信号として外部の信号処理部に伝達される。
図1に示した放射線検出装置10では、ガンマ線などの放射線が窓部材12を介してシンチレータ材13に入射すると、シンチレータ材13中の蛍光体材料が励起され、波長範囲が400nm以上500nm以下の青色光で発光する。シンチレータ材13で発光した青色光の光子は、光電子増倍管14の入射窓から光電陰極に到達し、光電陰極で電子に変換される。光電陰極で生じた電子がダイノードに衝突すると、ダイノードに印加されている電圧によって多数の電子が放出され、複数のダイノードの間で電子放出が連鎖的に生じることで、1つの光子で生じた電子が雪崩のように増幅される。光電子増倍管14で増幅された電子による電流は、検出信号としてブリーダ回路15を介して外部の信号処理部に伝達され、信号処理部が光子と電流と検出信号の関係から光子数を算出する。また、信号処理部では、算出された光子数から放射線の強度を算出する。
次に、本実施形態のシンチレータ材13に用いる蛍光体材料についてさらに詳細に説明する。 シリカは、SiO4四面体がSi-O-Si結合で連結された基本骨格を有するアモルファス構造である。Si-O-Siの結合角度は、145°±10°の角度を有している。シリカを加熱すると、1000℃あたりまでは熱膨張率が小さいが、1000℃を超えたあたりから熱膨張率がなだらかに上昇する。これは、シリカ表面のOH基から活性水素が発生し、シリカの一部にSi-O-Si結合の切断、再配列が起こるためである。この時、Si-O-Siの結合角は180°になり、SiO4連結網の中に大きな空隙が生じる。この空隙は、Sr2+,Cs+,Ca2+,Eu2+,Tl+等の金属の陽イオンおよびハロゲン等の陰イオンにとってポケットとなり、これらイオンがSiO4連結網の中に取り込まれる。
取り込まれたイオンは熱拡散により、陽イオンと陰イオンとが結合を起こし、イオン結晶核が生成する。イオン結晶核が生成されたことに触発され、マトリックス相のシリカも結晶化しクリストバライトが生成すると考えられる。このようにして、発光ハロゲン化金属塩の取り込みとSiO2の結晶化が並行して起こり、ナノコンポジット型のシンチレー
タ材料が生成されたものと推察される。
タ材料が生成されたものと推察される。
SiO2のナノコンポジット化が進行する温度では、温度が高過ぎるため原料中のIが
昇華し、十分な量のSrI2:Eu2+結晶を取り込むことが困難である。そこで、Iの
昇華を抑制して低温で合成し、クリストバライト構造にSrI2:Eu2+を多く含有す
ることが重要となる。
昇華し、十分な量のSrI2:Eu2+結晶を取り込むことが困難である。そこで、Iの
昇華を抑制して低温で合成し、クリストバライト構造にSrI2:Eu2+を多く含有す
ることが重要となる。
クリストバライト構造に含まれるアルカリ金属イオンは、Li,Na,K,Rb,Csが挙げられる。また、クリストバライト構造に含まれるアルカリ金属イオンは、Siの10molに対して0.01mol以上1.00mol以下(0.1mol%以上10mol%以下)の比率で含まれることが好ましい。
アルカリ金属イオンが0.1mol%未満の場合には、クリストバライト構造に取り込まれるSrI2:Eu2+量が少なく、放射線吸収率と可視光の発光強度を高めることが困難である。また、アルカリ金属イオンが10mol%より多い場合には、クリストバライト構造を構成できずSiO2とアルカリ金属イオンがガラス化して、SrI2:Eu2+を中に取り込めず、放射線吸収と可視光発光が困難になる。
上述したように、本実施形態の放射線検出装置10では、シンチレータ材13としてクリストバライト構造にSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンを含んでいるナノコンポジットを用いることで、耐湿性に優れ放射線によって発光した可視光を検出し、放射線の検出感度を高めることができる。また、低温で合成できIの昇華を抑制できるため、クリストバライト構造にSrI2:Eu2+を多く含有させることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、シンチレータ材13のマトリックス相であるシリカとして、SiO2の多孔質体を用いる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、シンチレータ材13のマトリックス相であるシリカとして、SiO2の多孔質体を用いる。
多孔質体は、シンチレータ材のマトリクス相であるシリカで構成された成形体であり、シリカの表面から内部にわたって空隙が分布している。多孔質体の形状および構造は限定されないが、厚さ1mm~5mm程度の板状の成形体を用いることができる。また、多孔質体の形成方法は限定されないが、平均粒径(D50)が2~50μmのSiO2粒子を焼結した集合体を用いることができる。多孔質体に含まれるシリカの充填率は、体積比で30~80%程度が好ましい。充填率が30%未満では、多孔質体の強度が不足して取り扱いが困難になる、また、充填率が80%を超えると、多孔質体の内部に蛍光体材料を取り込ませることが困難になる。
また、SiO2粒子を焼成して集合体とするためには、SiO2粒子はアルカリ金属成分を含有していることが好ましい。SiO2粒子に含有されるアルカリ金属成分としては、Li,Na,K,Rb,Csが挙げられる。SiO2粒子に含有されるアルカリ金属成分の含有量としては、Siの10molに対して0.01mol以上1.00mol以下(0.1mol%以上10mol%以下)の比率で含まれることが好ましい。SiO2粒子にアルカリ金属成分が含有されことで、SiO2粒子同士が焼結され、粒子間に空隙を有する多孔質体の成形体を得ることができる。
本実施形態のシンチレータ材の製造方法では、粉末調整工程において、蛍光体材料であるSrI2:Eu2+およびアルカリ金属材料を用意し、不活性ガス雰囲気中で粉砕/混合して原料粉末を形成する。また、多孔質体形成工程において、SiO2粒子とアルカリ金属材料の混合粉末を用意し、不活性ガス雰囲気中で粉砕/混合し、さらに大気雰囲気中で焼成して多孔質体のシリカを形成する。次に、熱処理工程において、原料粉末と多孔質体を接触させて、不活性雰囲気で加熱処理して焼成してシンチレータ材を得る。原料粉末と多孔質体の接触方法が限定されないが、原料粉末上に多孔質体を配置するとしてもよい。熱処理工程によって、多孔質体のシリカの一部は結晶化したクリストバライト構造を有し、蛍光体材料であるSrI2:Eu2+がクリストバライト構造中に取り込まれてナノコンポジット化する。また、クリストバライト構造には、アルカリ金属イオンが含まれる。
得られたシンチレータ材では、クリストバライト構造に含まれるSiに対して、Srイオンが0.9~15mol%、Iイオンが2.0~40mol%、Euイオンが0.1~5.0mol%の比率で含まれることが好ましい。イオン含有量がこれらの数値範囲よりも少ないと、SrI2:Eu2+の取り込み量が低下して発光量が低下してしまう。また、イオン含有量がこれらの数値範囲よりも多いと、シンチレータ材の内部から過剰な元素が染み出し、染み出した箇所を起点に亀裂が入って粒子割れが発生する。粒子割れが発生すると、クリストバライト構造中に取り込まれたSrI2:Eu2+が大気中に曝され、耐湿性が低下してしまう。また、Srイオンが15mol%以上では、SiO2中へのSrI取り込み量が低下し、発光性能が低下する。また、Iイオンが40mol%以上でも、SiO2中へのSrI取り込み量が低下し、発光性能が低下する。Euイオンが5.0mol%以上になると濃度消光を起こし、発光性能が低下する。
上述したように本実施例のシンチレータ材およびシンチレータ材の製造方法では、マトリクス相であるシリカを多孔質体で構成している。これにより、蛍光体材料であるSrI2:Eu2+がクリストバライト構造中に取り込まれる量を増加させ、耐湿性に優れ放射線によって発光した可視光を検出し、放射線の検出感度を高めることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図2を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。図2は、本実施形態に係るシンチレータ材を用いた放射線検出装置20の構造を示す模式図である。図2に示すように放射線検出装置20は、受光素子21と、シンチレータ材23を備えている。
次に、本発明の第3実施形態について図2を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。図2は、本実施形態に係るシンチレータ材を用いた放射線検出装置20の構造を示す模式図である。図2に示すように放射線検出装置20は、受光素子21と、シンチレータ材23を備えている。
受光素子21は、半導体材料で構成されて、光を受光することで電子が生じる部材である。受光素子21は公知のものを用いることができ材料や構造は限定されないが、例えばシリコンやIII-V族化合物系半導体材料を材料としたフォトダイオード(PD:Photo Diode)やアバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photo Diode)を用いることができる。受光素子21には、図示しない電極に配線が接続されており、配線を介して光の強度に応じた電圧または電流が出力される。
シンチレータ材23は、受光素子21の受光面側に配置され、放射線が照射されることで可視光を発光する蛍光材料を含有する部材である。第1実施形態と同様に本実施形態でも、シンチレータ材23としてクリストバライト構造にSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンを含んでいるナノコンポジットを用いる。
図2に示した放射線検出装置20では、ガンマ線などの放射線がシンチレータ材23に入射すると、シンチレータ材23中の蛍光体材料が励起され、波長範囲が400nm以上500nm以下の青色光で発光する。シンチレータ材23で発光した青色光の光子は、受光素子21の受光面に到達し、光の強度に応じて電流または電圧が検出信号として外部の信号処理部に伝達される。信号処理部では、検出信号から光子数と放射線の強度を算出する。
本実施形態の放射線検出装置20でも、シンチレータ材23としてクリストバライト構造にSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンを含んでいるナノコンポジットを用いることで、耐湿性に優れ放射線によって発光した可視光を検出し、放射線の検出感度を高めることができる。
(ガンマ線照射による発光量の測定)
図1に示した放射線検出装置のシンチレータ材13として、以下に示す実施例1~3および比較例1~4の材料を用いてガンマ線による発光量を測定した。本実施形態では、ガンマ線源には137Csの662keVを用いている。
図1に示した放射線検出装置のシンチレータ材13として、以下に示す実施例1~3および比較例1~4の材料を用いてガンマ線による発光量を測定した。本実施形態では、ガンマ線源には137Csの662keVを用いている。
(実施例1)
実施例1に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてNaを含むものである。原料として、SiO2,SrI2(融点402℃),NH4I,EuF3およびNaIを用意し、これらのモル比が10:0.46:0.08:0.04:0.02となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において850℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して実施例1のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、26,500[photons/Mev]の発光量が得られた。原料にアルカリ金属を含めているため、クリストバライト構造化するための温度を850℃まで下げることができた。
実施例1に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてNaを含むものである。原料として、SiO2,SrI2(融点402℃),NH4I,EuF3およびNaIを用意し、これらのモル比が10:0.46:0.08:0.04:0.02となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において850℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して実施例1のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、26,500[photons/Mev]の発光量が得られた。原料にアルカリ金属を含めているため、クリストバライト構造化するための温度を850℃まで下げることができた。
(実施例2)
実施例2に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてKを含むものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,Eu2O3およびKBrを用意し、これらのモル比が10:0.50:0.04:0.015:0.10となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において850℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して実施例2のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、22,300[photons/Mev]の発光量が得られた。
実施例2に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてKを含むものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,Eu2O3およびKBrを用意し、これらのモル比が10:0.50:0.04:0.015:0.10となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において850℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して実施例2のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、22,300[photons/Mev]の発光量が得られた。
(実施例3)
実施例3に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてCsを含むものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,EuI3およびCsClを用意し、これらのモル比が10:0.40:0.10:0.06:1.80となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において900℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して実施例3のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、20,100[photons/Mev]の発光量が得られた。
実施例3に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてCsを含むものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,EuI3およびCsClを用意し、これらのモル比が10:0.40:0.10:0.06:1.80となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において900℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して実施例3のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、20,100[photons/Mev]の発光量が得られた。
(比較例1)
比較例1に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンを含まないものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,EuF3およびCsClを用意し、これらのモル比が10:0.46:0.28:0.04となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において1000℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して比較例1のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、12,000[photons/Mev]の発光量が得られた。
比較例1に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンを含まないものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,EuF3およびCsClを用意し、これらのモル比が10:0.46:0.28:0.04となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において1000℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して比較例1のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、12,000[photons/Mev]の発光量が得られた。
(比較例2)
比較例2に係るシンチレータ材13は、アルカリ金属イオンとして過剰にNaを含むものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,EuF3およびNaIを用意し、これらのモル比が10:0.41:0.04:0.02:2.40となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において850℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して比較例2のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、発光量は0[photons/Mev]であった。
比較例2に係るシンチレータ材13は、アルカリ金属イオンとして過剰にNaを含むものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,EuF3およびNaIを用意し、これらのモル比が10:0.41:0.04:0.02:2.40となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において850℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して比較例2のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、発光量は0[photons/Mev]であった。
(比較例3)
比較例3に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてNaを微量に含むものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,EuI3およびNaIを用意し、これらのモル比が10:0.38:0.02:0.01:0.01となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において850℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して比較例3のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、12,200[photons/Mev]の発光量が得られた。
比較例3に係るシンチレータ材13は、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてNaを微量に含むものである。原料として、SiO2,SrI2,NH4I,EuI3およびNaIを用意し、これらのモル比が10:0.38:0.02:0.01:0.01となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気において850℃で3時間焼成した。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して比較例3のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、12,200[photons/Mev]の発光量が得られた。
(比較例4)
市販されているBGO(Bi4Ge3O12)をシンチレータ材13として用いた。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、15,000[photons/Mev]の発光量が得られた。
市販されているBGO(Bi4Ge3O12)をシンチレータ材13として用いた。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、15,000[photons/Mev]の発光量が得られた。
表1に、実施例1~3および比較例1~4でのガンマ線照射による発光量の測定結果を示す。表1に示したように、クリストバライト構造にアルカリ金属イオンを含む実施例1~3では、アルカリ金属イオンを含まない比較例1および市販のBGOである比較例4よりも発光量が大幅に向上している。また、アルカリ金属イオンであるNaを過剰に含ませて製造した比較例2では、後述するようにクリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれず、放射線を吸収して可視光を発光できていない。また、アルカリ金属イオンを微量に含む比較例3では、比較例1と同程度の発光量しか得られていない。
(シンチレータ材でのガンマ線吸収の測定)
次に、上述した実施例1~3および比較例1~3で作成したシンチレータ材によるガンマ線吸収率を測定した。図3は、シンチレータ材のガンマ線吸収率の測定装置30を示す模式図である。図3に示すように、ガンマ線吸収率の測定装置30は、光電子増倍管31と、検出用シンチレータ32と、評価サンプル33と、遮光シート34と、放射線源35を備えている。
次に、上述した実施例1~3および比較例1~3で作成したシンチレータ材によるガンマ線吸収率を測定した。図3は、シンチレータ材のガンマ線吸収率の測定装置30を示す模式図である。図3に示すように、ガンマ線吸収率の測定装置30は、光電子増倍管31と、検出用シンチレータ32と、評価サンプル33と、遮光シート34と、放射線源35を備えている。
光電子増倍管31は、微量の光子を検出して電気信号を出力する部材である。検出用シンチレータ32は、光電子増倍管31の入射窓に配置され、BGOを含有した部材であり、放射線源35から照射される放射線によって励起されて可視光を発光する。評価サンプル33は、上述した実施例1~3および比較例1~3で作成したシンチレータ材であり、光電子増倍管31と検出用シンチレータ32との間に配置されている。遮光シート34は、可視光を遮り放射線を透過する材料で構成されたシート状の部材であり、光電子増倍管31の入射窓と検出用シンチレータ32を覆って配置されている。また、遮光シート34は検出用シンチレータ32と評価サンプル33の間に挟まれている。放射線源35は、放射線を照射するための装置であり、本実施形態では241Amの60keVを用いている。
図3に示した測定装置30では、放射線源35から照射されたガンマ線は、評価サンプル33および遮光シート34を透過して検出用シンチレータ32に到達する。検出用シンチレータ32では、ガンマ線によってBGOが励起され可視光を発光する。検出用シンチレータ32で発光した光子は、光電子増倍管14に到達して検出信号として信号処理部に出力される。信号処理部では、検出信号に基づいて光子数を算出する。
このとき、評価サンプル33に入射したガンマ線によって、蛍光体材料も励起されて可視光を発光するが、遮光シート34で光が遮られるために、光電子増倍管31に入射する光子は検出用シンチレータ32で発光したものだけとなる。したがって、光電子増倍管31で検出された光子数を比較することで、評価サンプル33によって吸収されたガンマ線の量を測定することができる。
図3に示した測定装置30において、評価サンプル33を取り除いた状態で光電子増倍管31により検出用シンチレータ32の発光量を測定したものを基準値とする。また測定装置30において、評価サンプル33として実施例1~3および比較例1~3を置いた状態で光電子増倍管31により検出用シンチレータ32の発光量を測定し、基準値との比較でガンマ線吸収率を算出した。ここでガンマ線吸収率RAは、基準値での検出光子数(NA)を100%として、評価サンプル33を置いた状態での検出光子数(NB)の比率R(NB/NA)を求め、RA=(100-R)%として算出している。
表2に示したように、実施例1~3では評価サンプル33のシンチレータ材でガンマ線が20%程度以上吸収されており、クリストバライト構造にアルカリ金属イオンを含み蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が良好に取り込まれ、放射線で高効率に励起して可視光を発光できていることがわかる。それに対してアルカリ金属を含まない比較例1と、アルカリ金属イオンを微量に含む比較例3ではガンマ線の吸収は12%程度であり、放射線での励起により可視光を発光する効率が低いことがわかる。また、アルカリ金属イオンを過剰に含ませて製造した比較例2では、SrI2:Eu2+が取り込まれていないため放射線をほとんど吸収していない。
(実施例1~3および比較例1~3の分析結果)
次に、実施例1~3および比較例1~3で製造したシンチレータ材について、フレーム原子吸光光度法を用いて含まれる元素の比率を測定した。測定には蛍光X線装置(株式会社リガク製 RIX1000)を用いた。測定対象の元素と測定に用いてモノクロメーター、2θ測定範囲[deg.]、ステップ幅[deg.]を表3に示す。また、実施例1~3および比較例1~3の測定結果を表4に示す。表4においては、シンチレータ材における各元素の量として、Si元素の量を10molとした際のmol数で示している。したがって、表4中に示された数値を10倍した値がSiに対するmol%となる。
次に、実施例1~3および比較例1~3で製造したシンチレータ材について、フレーム原子吸光光度法を用いて含まれる元素の比率を測定した。測定には蛍光X線装置(株式会社リガク製 RIX1000)を用いた。測定対象の元素と測定に用いてモノクロメーター、2θ測定範囲[deg.]、ステップ幅[deg.]を表3に示す。また、実施例1~3および比較例1~3の測定結果を表4に示す。表4においては、シンチレータ材における各元素の量として、Si元素の量を10molとした際のmol数で示している。したがって、表4中に示された数値を10倍した値がSiに対するmol%となる。
表4に示したように、実施例1~3ではアルカリ金属イオンであるNa,K,Csがそれぞれ0.01mol(0.1mol%),0.05mol(0.5mol%),0.90mol(9.0mol%)含まれており、それに伴いSrとIの量が比較例1~3より多く含まれている。したがって、クリストバライト構造にアルカリ金属イオンがSiに対して0.1~10mol%含まれると、蛍光体材料であるSrI2:Eu2+の取り込み量を多くできることがわかる。比較例1ではアルカリ金属イオンが含まれておらず、比較例3ではアルカリ金属イオンであるNaが0.005mol(0.05mol%)と微量であるため、SrとIの含有量が実施例1~3よりも小さくなっている。
また、比較例2では、原材料に含まれていたSrI2はサンプル中から検出されていない(ND:Not Detectable)。つまり、アルカリ金属イオンであるNaが1.20mol(12.0mol%)と過剰に含まれているため、SiO2とNaがガラス化してしまい、クリストバライト構造を構成できないためシンチレータ材に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれていないことが確認できる。
(実施例4)
実施例4に係るシンチレータ材13は、多孔質体のシリカを用い、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてNaを含むものである。まず、多孔質体形成工程では、アモルファスSiO2とNaIを用意し、これらのmol比が10/0.1となるよう精秤し、窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕/混合した。その後、混合粉末を金型一軸成形し、成形体を白金坩堝等の不活性容器に入れ、大気雰囲気で700℃、1時間焼結することで、φ20mm、厚さ3mmの多孔質体を得た。
実施例4に係るシンチレータ材13は、多孔質体のシリカを用い、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてNaを含むものである。まず、多孔質体形成工程では、アモルファスSiO2とNaIを用意し、これらのmol比が10/0.1となるよう精秤し、窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕/混合した。その後、混合粉末を金型一軸成形し、成形体を白金坩堝等の不活性容器に入れ、大気雰囲気で700℃、1時間焼結することで、φ20mm、厚さ3mmの多孔質体を得た。
次に、粉末調製工程において、原料として、SrI2,NH4I,EuF3およびNaIを用意し、これらのモル比が0.46:0.08:0.04:0.02となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合し、原料粉末を得た。
その後、熱処理工程において、原料粉末上に多孔質体を載置し、窒素雰囲気で850℃、3時間焼成した。焼成後、原料粉末の上に載置した多孔質体を取り出して温純水で洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して実施例4のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、28,500[photons/Mev]の発光量が得られた。また、図3の測定装置30を用い、上述した方法でガンマ線吸収率を測定したところ、ガンマ線吸収率RAは26.3%であった。
(実施例5)
実施例5に係るシンチレータ材13は、多孔質体のシリカを用い、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてKを含むものである。まず、多孔質体形成工程では、アモルファスSiO2とKIを用意し、これらのmol比が10/0.1となるよう精秤し、窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕/混合した。その後、混合粉末をφ20mm、厚さ2mmの石英板上に載せ、大気雰囲気で680℃、1時間加熱処理することで、石英板上に被膜厚さ2mmの多孔質体を得た。
実施例5に係るシンチレータ材13は、多孔質体のシリカを用い、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてKを含むものである。まず、多孔質体形成工程では、アモルファスSiO2とKIを用意し、これらのmol比が10/0.1となるよう精秤し、窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕/混合した。その後、混合粉末をφ20mm、厚さ2mmの石英板上に載せ、大気雰囲気で680℃、1時間加熱処理することで、石英板上に被膜厚さ2mmの多孔質体を得た。
次に、粉末調製工程において、原料として、SrI2,NH4I,Eu2O3およびKBrを用意し、これらのモル比が0.50:0.04:0.015:0.10となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合し、原料粉末を得た。
その後、熱処理工程において、原料粉末上に多孔質体を載置し、窒素雰囲気で850℃、3時間焼成した。焼成後、原料粉末の上に載置した多孔質体を取り出して温純水で洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して実施例5のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、24,300[photons/Mev]の発光量が得られた。また、図3の測定装置30を用い、上述した方法でガンマ線吸収率を測定したところ、ガンマ線吸収率RAは24.5%であった。
(実施例6)
実施例6に係るシンチレータ材13は、多孔質体のシリカを用い、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてCsを含むものである。まず、多孔質体形成工程では、アモルファスSiO2とCsIを用意し、これらのmol比が10/0.1となるよう精秤し、窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕/混合した。その後、混合粉末をφ24mm、厚さ1mmのホウケイ酸ガラス上に載せ、大気雰囲気で650℃、1時間焼成することで、ホウケイ酸ガラス上に被膜厚さ0.5mmの多孔質体を得た。
実施例6に係るシンチレータ材13は、多孔質体のシリカを用い、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれ、アルカリ金属イオンとしてCsを含むものである。まず、多孔質体形成工程では、アモルファスSiO2とCsIを用意し、これらのmol比が10/0.1となるよう精秤し、窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕/混合した。その後、混合粉末をφ24mm、厚さ1mmのホウケイ酸ガラス上に載せ、大気雰囲気で650℃、1時間焼成することで、ホウケイ酸ガラス上に被膜厚さ0.5mmの多孔質体を得た。
次に、粉末調製工程において、原料として、SrI2,NH4I,EuI3およびCsClを用意し、これらのモル比が0.40:0.10:0.06:1.80となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合し、原料粉末を得た。
その後、熱処理工程において、原料粉末上に多孔質体を載置し、窒素雰囲気で700℃、10時間焼成した。焼成後、原料粉末の上に載置した多孔質体を取り出して温純水で洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して実施例6のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、22,100[photons/Mev]の発光量が得られた。また、図3の測定装置30を用い、上述した方法でガンマ線吸収率を測定したところ、ガンマ線吸収率RAは21.7%であった。
(比較例5)
比較例5に係るシンチレータ材13は、内部に空隙の無い石英板を用い、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれたものである。原料として、SrI2,NH4I,EuF3を用意し、これらのモル比が0.46:0.28:0.04となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、原料粉末上に石英板を載置し、窒素雰囲気で1000℃、3時間焼成した。焼成後、原料粉末の上に載置した多孔質体を取り出して温純水で洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して比較例5のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、13,000[photons/Mev]の発光量が得られた。また、図3の測定装置30を用い、上述した方法でガンマ線吸収率を測定したところ、ガンマ線吸収率RAは14.1%であった。
比較例5に係るシンチレータ材13は、内部に空隙の無い石英板を用い、クリストバライト構造に蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が取り込まれたものである。原料として、SrI2,NH4I,EuF3を用意し、これらのモル比が0.46:0.28:0.04となるよう精秤し、各原料を窒素ガス雰囲気中で石英乳鉢に入れ粉砕混合した。その後、原料粉末上に石英板を載置し、窒素雰囲気で1000℃、3時間焼成した。焼成後、原料粉末の上に載置した多孔質体を取り出して温純水で洗浄し、遊離のヨウ化物イオンを除去して比較例5のシンチレータ材13を得た。図1の放射線検出装置でガンマ線照射による発光を測定したところ、13,000[photons/Mev]の発光量が得られた。また、図3の測定装置30を用い、上述した方法でガンマ線吸収率を測定したところ、ガンマ線吸収率RAは14.1%であった。
実施例4~6および比較例5について、図1の放射線検出装置を用いたガンマ線照射による発光量の測定結果を表5に示す。また、図3の測定装置30を用いたガンマ線吸収率RAの測定結果を表6に示す。
(実施例4~6および比較例5の分析結果)
次に、実施例4~6および比較例5で製造したシンチレータ材について、フレーム原子吸光光度法を用いて含まれる元素の比率を測定した。測定には蛍光X線装置(株式会社リガク製 RIX1000)を用いた。実施例4~6および比較例5の測定結果を表7に示す。表7においては、シンチレータ材における各元素の量として、Si元素の量を10molとした際のmol数で示している。したがって、表7中に示された数値を10倍した値がSiに対するmol%となる。
次に、実施例4~6および比較例5で製造したシンチレータ材について、フレーム原子吸光光度法を用いて含まれる元素の比率を測定した。測定には蛍光X線装置(株式会社リガク製 RIX1000)を用いた。実施例4~6および比較例5の測定結果を表7に示す。表7においては、シンチレータ材における各元素の量として、Si元素の量を10molとした際のmol数で示している。したがって、表7中に示された数値を10倍した値がSiに対するmol%となる。
表7に示したように、実施例4~6ではアルカリ金属イオンであるNa,K,Csがそれぞれ0.01mol(0.1mol%),0.05mol(0.5mol%),0.90mol(9.0mol%)含まれており、それに伴いSrとIの量が比較例5の1.4倍程度多く含まれている。また、表4に示した実施例1~3と同等かそれ以上のSrとIを含んでいる。したがって、表面から内部にわたって空隙が分布する多孔質体をマトリクス相であるシリカとして用いることで、クリストバライト構造への蛍光体材料であるSrI2:Eu2+の取り込み量を多くできることがわかる。これによりシンチレータ材13の放射線吸収率を高め、蛍光体材料での発光量を向上させることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
10,20…放射線検出装置
30…測定装置
11…容器
12…窓部材
13,23…シンチレータ材
14,31…光電子増倍管
15…ブリーダ回路
21…受光素子
32…検出用シンチレータ
33…評価サンプル
34…遮光シート
35…放射線源
30…測定装置
11…容器
12…窓部材
13,23…シンチレータ材
14,31…光電子増倍管
15…ブリーダ回路
21…受光素子
32…検出用シンチレータ
33…評価サンプル
34…遮光シート
35…放射線源
Claims (10)
- 放射線により励起されて可視光を発光するシンチレータ材であって、
シリカの一部が結晶化したクリストバライト構造を有し、
蛍光体材料であるSrI2:Eu2+が前記クリストバライト構造中に取り込まれてナノコンポジット化しており、
前記クリストバライト構造にアルカリ金属イオンを含むことを特徴とするシンチレータ材。 - 請求項1に記載のシンチレータ材であって、
前記アルカリ金属イオンは、Li,Na,K,RbまたはCsの何れかであることを特徴とするシンチレータ材。 - 請求項1または2に記載のシンチレータ材であって、
前記クリストバライト構造に含まれるSiに対して、前記アルカリ金属イオンが0.1~10mol%の比率で含まれることを特徴とするシンチレータ材。 - 請求項1から3の何れか一つに記載のシンチレータ材であって、
前記蛍光体材料を単結晶または多結晶で含むことを特徴とするシンチレータ材。 - 請求項1から4の何れか一つに記載のシンチレータ材であって、
前記シリカは、表面から内部にわたって空隙が分布する多孔質体であることを特徴とするシンチレータ材。 - 請求項5に記載のシンチレータ材であって、
前記多孔質体は、平均粒径(D50)が2~50μmのアモルファスSiO2粒子の集合体であることを特徴とするシンチレータ材。 - 請求項6に記載のシンチレータ材であって、
前記SiO2粒子は、アルカリ金属成分を含有していることを特徴とするシンチレータ材。 - 請求項5から7の何れか一つに記載のシンチレータ材であって、
前記クリストバライト構造に含まれるSiに対して、Srイオンが0.9~15mol%、Iイオンが2.0~40mol%、Euイオンが0.1~5.0mol%の比率で含まれることを特徴とするシンチレータ材。 - 請求項1から8の何れか一つに記載のシンチレータ材と、
400nm以上500nm以下の波長を検出する光検知部を備えることを特徴とする放射線検出装置。 - 蛍光体材料であるSrI2:Eu2+およびアルカリ金属材料を含む原料粉末を形成する粉末調整工程と、
表面から内部にわたって空隙が分布する多孔質体のシリカを形成する多孔質体形成工程と、
前記多孔質体と前記原料粉末を接触させて加熱処理する熱処理工程とを備えることを特徴とするシンチレータ材の製造方法。
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