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JP2022047001A - 熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法 - Google Patents

熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法 Download PDF

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JP2022047001A JP2020152686A JP2020152686A JP2022047001A JP 2022047001 A JP2022047001 A JP 2022047001A JP 2020152686 A JP2020152686 A JP 2020152686A JP 2020152686 A JP2020152686 A JP 2020152686A JP 2022047001 A JP2022047001 A JP 2022047001A
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Abstract

【課題】比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい熱伝導性シートの提供。【解決手段】熱伝導性シート1は、高分子マトリクス2と、異方性充填材3と、非異方性充填剤4とを含有し、異方性充填材3が熱伝導性シート1の厚み方向Bに配向しており、熱伝導性シート1の比重が2.7未満であり、熱伝導性シート1の熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、熱伝導性シート1の比誘電率が7.0以下である。【選択図】図1

Description

本技術は、熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法に関する。
電子機器の高性能化に伴って、半導体素子の高密度化、高実装化が進んでいる。これに伴って、電子機器を構成する電子部品からの発熱をさらに効率的に放熱することが重要である。例えば、半導体装置は、効率的に放熱するために、電子部品が、熱伝導性シートを介して、放熱ファン、放熱板等のヒートシンクに取り付けられている。熱伝導性シートとしては、例えば、シリコーン樹脂に、無機フィラーなどの充填剤を含有(分散)させたものが広く使用されている。この熱伝導性シートのような放熱部材は、更なる熱伝導率の向上が要求されている。例えば、熱伝導性シートの高熱伝導性を目的として、バインダ樹脂などのマトリックス内に配合されている無機フィラーの充填率を高めることが検討されている。しかし、無機フィラーの充填率を高めると、熱伝導性シートの柔軟性が損なわれたり、粉落ちが発生したりするため、無機フィラーの充填率を高めることには限界がある。
無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、高熱伝導率を目的として、窒化ホウ素、黒鉛等の鱗片状粒子、炭素繊維などをマトリクス内に充填させることもある。これは、鱗片状粒子等の有する熱伝導率の異方性によるものである。例えば、炭素繊維の場合は、繊維方向に約600~1200W/m・Kの熱伝導率を有することが知られている。また、窒化ホウ素の場合は、面方向に約110W/m・K程度の熱伝導率を有し、面方向に対して垂直な方向に約2W/m・K程度の熱伝導率を有することが知られている。このように、炭素繊維の繊維方向や鱗片状粒子の面方向を、熱の伝達方向であるシートの厚み方向と同じにする、すなわち、炭素繊維や鱗片状粒子をシートの厚み方向に配向させることによって、熱伝導率が飛躍的に向上することが期待できる。
特許文献1には、炭素繊維を厚み方向に配向させた熱伝導性シートが記載されている。しかし、炭素繊維を厚み方向に配向させた熱伝導性シートは、導電性であるため、絶縁性を求める用途では使用が制限されてしまう。また、熱伝導性シートの熱伝導性を高めるには、通常、比誘電率が高い熱伝導性フィラー(例えば、導電性フィラー、アルミナ、窒化アルミニウムなど)を使用するため、熱伝導性シートを高熱伝導化させようとすると、比誘電率も高くなってしまう。
特許文献2には、マトリックス樹脂に窒化アルミニウムを高充填した熱伝導性シートが記載されている。しかし、特許文献2に記載の技術のように、マトリックス樹脂に窒化アルミニウムやアルミナのような熱伝導性フィラーを高充填すると、熱伝導率とともに比誘電率も高くなってしまい、比重も大きくなってしまう。
特開2012-001638号公報 特許6692512号公報
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法を提供する。
本技術に係る熱伝導性シートは、高分子マトリクスと、異方性充填材と、非異方性充填剤とを含有し、異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下である。
本技術に係る熱伝導性シートの製造方法は、高分子マトリクスと、異方性充填材と、非異方性充填剤とを含有する熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、熱伝導性シートは、異方性充填材が熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下である。
本技術によれば、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい熱伝導性シートを提供することができる。
図1は、熱伝導性シートの一例を示す断面図である。 図2は、異方性充填剤の一例である、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素を模式的に示す斜視図である。 図3は、熱伝導性シートを適用した半導体装置の一例を示す断面図である。
本明細書において、異方性充填剤又は非異方性充填剤の平均粒径(D50)とは、異方性充填剤又は非異方性充填剤の粒子径分布全体を100%とした場合に、粒径分布の小粒子径側から粒子径の値の累積カーブを求めたとき、その累積値が50%となるときの粒子径をいう。なお、本明細書における粒度分布(粒子径分布)は、体積基準によって求められたものである。粒度分布の測定方法としては、例えば、レーザー回折型粒度分布測定機を用いる方法が挙げられる。
<熱伝導性シート>
図1は、本技術に係る熱伝導性シート1の一例を示す断面図である。熱伝導性シート1は、高分子マトリクス2と、異方性充填材3と、非異方性充填材4とを含有する。熱伝導性シート1は、異方性充填材3と非異方性充填剤4とが高分子マトリクス2に分散しており、異方性充填材3が熱伝導性シート1の厚み方向Bに配向している。そして、熱伝導性シート1は、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい。熱伝導性シート1の厚み方向Bに、異方性充填剤3が配向しているとは、熱伝導性シート1中の全ての異方性充填剤3のうち、熱伝導性シート1の厚み方向Bに長軸が配向している異方性充填剤3の割合が50%以上であることをいう。
熱伝導性シート1は、比誘電率が7.0以下である。熱伝導性シート1の比誘電率は、絶縁性を高める観点では低いほど好ましく、例えば、厚み方向Bの比誘電率が7.0以下であり、6.5以下であってもよく、6.0以下であってもよく、5.5以下であってもよく、5.4以下であってもよく、5.2以下であってもよい。熱伝導性シート1の比誘電率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
また、熱伝導性シート1は、熱伝導率が7.0W/m・K以上である。熱伝導性シート1の熱伝導率は、高熱伝導化の観点では高いほど好ましく、例えば、厚み方向Bの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、7.1W/m・K以上であってもよく、8.0W/m・K以上であってもよく、8.9W/m・K以上であってもよく、10.0W/m・K以上であってもよく、11.0W/m・K以上であってもよい。熱伝導性シート1の熱伝導率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
さらに、熱伝導性シート1は、比重が2.7未満である。熱伝導性シート1の比重は、電子部品の軽量化の観点では小さいほど好ましく、2.6以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.4以下であってもよく、2.3以下であってもよい。熱伝導性シート1の比重は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
このように、熱伝導性シート1は、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さいため、例えば、シールドやアンテナの分野において新たな応用が期待できる。例えば、熱伝導性シート1は、高速ワイヤレス通信機器など、高周波特性が必要な機器や、絶縁性が必要な用途に好適である。
熱伝導性シート1の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、熱伝導性シートの厚みは、0.05mm以上とすることができ、0.1mm以上とすることもできる。また、熱伝導性シートの厚みの上限値は、5mm以下とすることができ、4mm以下であってもよく、3mm以下であってもよい。熱伝導性シート1の取り扱い性の観点から、熱伝導性シート1の厚みは、0.1~4mmとすることが好ましい。熱伝導性シート1の厚みは、例えば、熱伝導性シート1の厚みBを任意の5箇所で測定し、その算術平均値から求めることができる。
以下、熱伝導性シート1の構成要素の具体例について説明する。
<高分子マトリクス>
高分子マトリクス2は、異方性充填剤3と非異方性充填剤4とを熱伝導性シート1内に保持するためのバインダ樹脂である。高分子マトリクス2は、熱伝導性シート1に要求される機械的強度、耐熱性、電気的性質等の特性に応じて選択される。高分子マトリクス2としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂の中から選択することができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン-αオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレン-エーテル共重合体(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル等のポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン- ブタジエンブロック共重合体又はその水添化物、スチレン-イソプレンブロック共重合体又はその水添化物、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、架橋ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。架橋ゴムの具体例としては、天然ゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴムが挙げられる。
高分子マトリクス2としては、例えば、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性を考慮するとシリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂としては、例えば、アルケニル基を有するシリコーンを主成分とし、硬化触媒を含有する主剤と、ヒドロシリル基(Si-H基)を有する硬化剤とからなる、2液型の付加反応型シリコーン樹脂を用いることができる。アルケニル基を有するシリコーンとしては、例えば、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができる。硬化触媒は、アルケニル基を有するシリコーン中のアルケニル基と、ヒドロシリル基を有する硬化剤中のヒドロシリル基との付加反応を促進するための触媒である。硬化触媒としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒が挙げられ、例えば、白金族系硬化触媒、例えば白金、ロジウム、パラジウムなどの白金族金属単体や塩化白金などを用いることができる。ヒドロシリル基を有する硬化剤としては、例えば、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができる。高分子マトリクス2は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱伝導性シート1中の高分子マトリクス2の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、熱伝導性シート1中の高分子マトリクス2の含有量は、25体積%超とすることができ、30体積%以上であってもよく、32体積%以上であってもよく、36体積%以上であってもよい。また、熱伝導性シート1中の高分子マトリクス2の含有量の上限値は、70体積%以下とすることができ、60体積%以下であってもよく、50体積%以下であってもよく、40体積%以下であってもよい。熱伝導性シート1中の高分子マトリクス2の含有量は、熱伝導性シート1の比誘電率、熱伝導率、比重の観点から、25~60体積%とすることが好ましく、26~40体積%がより好ましく、32~36体積%がさらに好ましい。
<異方性充填剤>
異方性充填剤3は、形状に異方性を有する熱伝導性フィラーである。異方性充填剤3としては、長軸と短軸と厚みとを有する熱伝導性フィラー、例えば、鱗片状の熱伝導性フィラーが挙げられる。鱗片状の熱伝導性フィラーとは、長軸と短軸と厚みとを有する熱伝導性フィラーであって、高アスペクト比(長軸/厚み)であり、長軸を含む面方向に等方的な熱伝導率を有するものである。鱗片状の熱伝導性フィラーの短軸とは、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸を含む面において、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸に交差する方向であって、鱗片状の熱伝導性フィラーの最も短い部分の長さをいう。厚みとは、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸を含む面の厚みを10点測定して平均した値をいう。異方性充填剤3のアスペクト比は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、異方性充填剤3のアスペクト比は、10~100の範囲とすることができる。異方性充填剤3の長軸、短軸及び厚みは、例えば、マイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)、粒度分布計などにより測定できる。
異方性充填剤3の材質は、特に限定されず、例えば、窒化ホウ素(BN)、雲母、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、シリカ、酸化亜鉛、二硫化モリブデン等が挙げられ、比誘電率、熱伝導率、比重の観点では窒化ホウ素が好ましい。また、絶縁性の観点では、異方性充填剤3は、導電性の材料である炭素繊維を実質的に含まないことが好ましい。異方性充填剤3は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
図2は、異方性充填剤3の一例である、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素3Aを模式的に示す斜視図である。図2中、aは鱗片状の窒化ホウ素3Aの長軸を表し、bは鱗片状の窒化ホウ素3Aの厚みを表し、cは鱗片状の窒化ホウ素3Aの短軸を表す。異方性充填剤3としては、比誘電率、熱伝導率、比重の観点から、図2に示すように結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素3Aを用いることが好ましい。本技術では、異方性充填剤3として、球状の熱伝導性フィラー(例えば球状の窒化ホウ素)よりも安価な鱗片状の熱伝導性フィラー(例えば、鱗片状の窒化ホウ素3A)を用いることで、低コストで、優れた熱特性(高熱伝導率)と誘電特性(低誘電率)と軽量化(低比重)とを両立させた熱伝導性シート1が得られる。
異方性充填剤3の平均粒径(D50)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、異方性充填剤3の平均粒径の下限値は、10μm以上とすることができ、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、35μm以上であってもよい。また、異方性充填剤3の平均粒径の上限値は、150μm以下とすることができ、100μm以下であってもよく、90μm以下であってもよく、80μm以下であってもよく、70μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、45μm以下であってもよい。熱伝導性シート1の熱伝導率の観点では、異方性充填剤3の平均粒径は、20~100μmとすることが好ましい。第1の熱伝導性フィラー3のアスペクト比は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、鱗片状の熱伝導性フィラーのアスペクト比は、10~100の範囲とすることができる。第1の熱伝導性フィラー3の長軸と短軸との比(長軸/短軸)の平均値は、例えば、0.5~10の範囲とすることができ、1~5の範囲とすることもでき、1~3の範囲とすることもできる。
熱伝導性シート1中の異方性充填剤3の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、熱伝導性シート1中の異方性充填剤3の含有量は、15体積%以上とすることができ、20体積%以上であってもよく、23体積%以上であってもよく、27体積%以上であってもよい。また、熱伝導性シート1中の異方性充填剤3の含有量の上限値は、例えば、45体積%以下とすることができ、40体積%以下であってもよく、35体積%以下であってもよく、30体積%以下であってもよい。熱伝導性シート1の比誘電率、熱伝導率、比重の観点から、熱伝導性シート1中の異方性充填剤3の含有量は、20~35体積%とすることが好ましく、20~30体積%とすることもでき、23~27体積%とすることもできる。
<非異方性充填剤>
非異方性充填剤4は、上述した異方性充填剤3以外の熱伝導性フィラーであり、形状に異方性を有しない熱伝導性フィラーである。例えば、非異方性充填剤4には、球状、粉末状、顆粒状などの熱伝導性フィラーが含まれる。非異方性充填剤4の材質は、熱伝導性シート1の絶縁性を確保できるものが好ましく、例えば、セラミックフィラーが好ましく、具体例としては、酸化アルミニウム(アルミナ、サファイア)、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、ジルコニア、炭化ケイ素などが挙げられる。非異方性充填剤4は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に、非異方性充填剤4としては、熱伝導性シート1の熱伝導率、比重の観点から、窒化アルミニウムと球状のアルミナとを併用することが好ましく、窒化アルミニウム粒子とアルミナ粒子と酸化亜鉛粒子と水酸化アルミニウム粒子とを併用することも好ましい。
窒化アルミニウム粒子の平均粒径(D50)は、熱伝導性シート1の比重の観点から、30μm未満とするのが好ましく、0.1~10μmであってもよく、0.5~5μmとすることが好ましく、1~3μmであってもよく、1~2μmであってもよい。また、アルミナ粒子の平均粒径(D50)は、熱伝導性シート1の比重の観点から、0.1~10μmとすることが好ましく、0.1~8μmであってもよく、0.1~7μmであってもよく、0.1~2μmであってもよい。酸化亜鉛粒子の平均粒径(D50)は、熱伝導性シート1の比重の観点から、1~5μmとするのが好ましく、0.5~3μmであってもよく、0.5~2μmであってもよい。水酸化アルミニウム粒子の平均粒径(D50)は、熱伝導性シート1の比重の観点から、1~10μmとするのが好ましく、2~9μmであってもよく、6~8μmであってもよい。
熱伝導性シート1中の非異方性充填剤4の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。熱伝導性シート1中の非異方性充填剤4の含有量は、10体積%以上とすることができ、15体積%以上であってもよく、20体積%以上であってもよく、25体積%以上であってもよく、30体積%以上であってもよく、35体積%以上であってもよい。また、熱伝導性シート1中の非異方性充填剤4の含有量の上限値は、50体積%以下とすることができ、45体積%以下であってもよく、40体積%以下であってもよい。
非異方性充填剤4として、窒化アルミニウム粒子と、アルミナ粒子とを併用する場合、熱伝導性シート1中、アルミナ粒子の含有量は10~25体積%とすることが好ましく、窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%とすることが好ましい。また、非異方性充填剤4として、窒化アルミニウム粒子と、アルミナ粒子と、酸化亜鉛粒子と、水酸化アルミニウム粒子とを併用する場合、熱伝導性シート1中、アルミナ粒子の含有量は10~25体積%とすることが好ましく、窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%とすることが好ましく、酸化亜鉛粒子の含有量は0.1~3体積%とすることが好ましく、水酸化アルミニウム粒子の含有量は0.1~3体積%とすることが好ましい。
熱伝導性シート1は、本技術の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外の他の成分をさらに含有してもよい。他の成分としては、例えば、カップリング剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤などが挙げられる。例えば、熱伝導性シート1は、異方性充填剤3及び非異方性充填剤4の分散性をより向上させて、熱伝導性シート1の柔軟性をより向上させる観点で、カップリング剤で処理した異方性充填剤3及び/又はカップリング剤で処理した非異方性充填剤4を用いてもよい。
以上のように、異方性充填剤3と非異方性充填剤4とが高分子マトリクス2に分散している熱伝導性シート1は、比重が2.7未満であり、熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、比誘電率が7.0以下である。すなわち、熱伝導性シート1は、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい。
<熱伝導性シートの製造方法>
本技術に係る熱伝導性シートの製造方法は、下記工程Aと、工程Bと、工程Cとを有する。
<工程A>
工程Aでは、異方性充填剤3と非異方性充填剤4とを高分子マトリクス2に分散させることにより、熱伝導性シート形成用組成物を調製する。熱伝導性シート形成用組成物は、異方性充填剤3と、非異方性充填剤4と、高分子マトリクス2との他に、必要に応じて各種添加剤や揮発性溶剤とを公知の手法により均一に混合することにより調製できる。
<工程B>
工程Bでは、調製された熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する。成形体ブロックの形成方法としては、押出成形法、金型成形法などが挙げられる。押出成形法、金型成形法としては、特に制限されず、公知の各種押出成形法、金型成形法の中から、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物の粘度や熱伝導性シートに要求される特性等に応じて適宜採用することができる。
例えば、押出成形法において、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物をダイより押し出す際、あるいは金型成形法において、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を金型へ圧入する際、高分子マトリクス2が流動し、その流動方向に沿って異方性充填剤3が配向する。
成形体ブロックの大きさと形状は、求められる熱伝導性シート1の大きさに応じて決めることができる。例えば、断面の縦の大きさが0.5~15cmで横の大きさが0.5~15cmの直方体が挙げられる。直方体の長さは必要に応じて決定すればよい。
<工程C>
工程Cでは、成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シート1を得る。工程Cで得られる熱伝導性シート1は、厚み方向Bに異方性充填剤3がほぼ配向している。スライスにより得られるシートの表面(スライス面)には、異方性充填剤3が露出する。スライスして得られた熱伝導性シート1は、表面が平滑化されるため、他の部材との密着性を向上させることができ、熱伝導性と比非誘電率をより良好にすることができる。成形体ブロックをスライスする方法としては、特に制限はなく、成形体ブロックの大きさや機械的強度により公知のスライス装置の中から適宜選択できる。成形体ブロックのスライス方向としては、成形方法が押出成形法である場合、押出し方向に異方性充填剤3が配向しているものもあるため、押出し方向に対して60~120度であることが好ましく、70~100度の方向であることがより好ましく、90度(垂直)の方向であることがさらに好ましい。
このように、工程Aと、工程Bと、工程Cとを有する熱伝導性シートの製造方法では、高分子マトリクス2と、異方性充填剤3と、非異方性充填剤4とを含有する熱伝導性シート1であって、異方性充填材3が熱伝導性シート1の厚み方向Bに配向しており、比重が2.7未満であり、熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、比誘電率が7.0以下である熱伝導性シート1が得られる。
本技術に係る熱伝導性シート1の製造方法は、上述した例に限定されるものではない。例えば、工程Cの後に、工程Cでスライスした面をプレスする工程をさらに有していてもよい。熱伝導性シート1の製造方法がプレスする工程をさらに有することで、工程Cで得られたシートの表面がより平滑化され、他の部材との密着性をより向上させることができる。プレスの方法としては、平盤と表面が平坦なプレスヘッドとからなる一対のプレス装置を使用することができる。また、ピンチロールでプレスしてもよい。プレスの際の圧力としては、例えば、0.1~100MPaとすることができ、0.1~1MPaとすることもできる。プレスの効果をより高め、プレス時間を短縮するために、プレスは、高分子マトリクス2のガラス転移温度(Tg)以上で行うことが好ましい。例えば、プレス温度は、0~180℃とすることができ、室温(例えば25℃)~100℃の温度範囲内であってもよく、30~100℃であってもよい。
<電子機器>
本技術に係る熱伝導性シート1は、例えば、発熱体と放熱体との間に配置させることにより、発熱体で生じた熱を放熱体に逃がすためにそれらの間に配された構造の電子機器(サーマルデバイス)とすることができる。電子機器は、発熱体と放熱体と熱伝導性シート1とを少なくとも有し、必要に応じて、その他の部材をさらに有していてもよい。
発熱体としては、特に限定されず、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの集積回路素子、トランジスタ、抵抗器など、電気回路において発熱する電子部品等が挙げられる。また、発熱体には、通信機器における光トランシーバ等の光信号を受信する部品も含まれる。
放熱体としては、特に限定されず、例えば、ヒートシンクやヒートスプレッダなど、集積回路素子やトランジスタ、光トランシーバ筐体などと組み合わされて用いられるものが挙げられる。放熱体としては、ヒートスプレッダやヒートシンク以外にも、熱源から発生する熱を伝導して外部に放散させるものであればよく、例えば、放熱器、冷却器、ダイパッド、プリント基板、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、金属カバー、筐体等が挙げられる。
図3は、本技術に係る熱伝導性シート1を適用した半導体装置50の一例を示す断面図である。例えば、熱伝導性シート1は、図3に示すように、各種電子機器に内蔵される半導体装置50に実装され、発熱体と放熱体との間に挟持される。図3に示す半導体装置50は、電子部品51と、ヒートスプレッダ52と、熱伝導性シート1とを備え、熱伝導性シート1がヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持される。熱伝導性シート1が、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に挟持されることにより、ヒートスプレッダ52とともに、電子部品51の熱を放熱する放熱部材を構成する。熱伝導性シート1の実装場所は、ヒートスプレッダ52と電子部品51との間や、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に限らず、電子機器や半導体装置の構成に応じて、適宜選択できる。
以下、本技術の実施例について説明する。実施例では、熱伝導性シートを作製し、熱伝導性シートの比誘電率、熱伝導率及び比重を測定した。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、シリコーン樹脂32体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)27体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)19体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)20体積%と、カップリング剤1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。押出成形法により、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、60℃のオーブンで4時間加熱させて成形体ブロックを形成した。なお、金型の内面には、剥離処理面が内側となるように剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けておいた。得られた成形体ブロックの長さ方向に直交する方向に、成形体ブロックをスライサーでシート状にスライスすることにより、厚さ2mmの、異方性充填剤である鱗片状の窒化ホウ素が熱伝導性シートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同様の熱伝導性シートを得た後、スライス面を剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムで挟んで、プレス機でプレスした。プレス条件は、圧力0.5MPa、80℃で3分間とした。
<実施例3>
実施例3では、シリコーン樹脂36体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)23体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)20体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)20体積%と、カップリング剤1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で、異方性充填剤である鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
<実施例4>
実施例4では、シリコーン樹脂36体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)23体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)20体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)18体積%と、酸化亜鉛(D50が1μm)1体積%と、水酸化アルミニウム(D50が1μm)1体積%と、カップリング剤1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で、異方性充填剤である鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
<比較例1>
比較例1では、シリコーン樹脂25体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)29体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)45体積%と、カップリング剤を1体積%を均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。調製した熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、剥離処理された剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に塗布し、60℃のオーブンで4時間加熱させて、厚さ2mmの熱伝導性シートを形成した。
<比較例2>
比較例2では、シリコーン樹脂19体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)16体積%と、窒化アルミニウム(D50が80μm)35体積%と、窒化アルミニウム(D50が30μm)29体積%と、カップリング剤を1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。調製した熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、剥離処理された剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に塗布し、80℃のオーブンで4時間加熱させて、厚さ2mmの熱伝導性シートを形成した。
<熱伝導率>
ASTM-D5470に準拠した熱抵抗測定装置を用いて、荷重1kgf/cmをかけて熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の熱伝導率(W/m・K)をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
<比誘電率>
JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。結果を表1に示す。
<比重>
熱伝導性シートの縦、横の長さと厚みから求めた体積と熱伝導シートの重量を測定することにより、熱伝導性シートの比重を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2022047001000002
実施例1~4で得られた熱伝導性シートは、高分子マトリクスと、異方性充填材と、非異方性充填剤とを含有し、異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、比重が2.7未満であり、熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、比誘電率が7.0以下であることが分かった。
また、実施例1,2の結果から、熱伝導性シートの表面がスライスした後にプレスした面であることにより、熱伝導率がより向上することが分かった。
比較例1で得られた熱伝導性シートは、比重が2.7未満を満たさず、熱伝導率が7.0W/m・K以上を満たさず、比誘電率が7.0以下を満たさないことが分かった。また、比較例2で得られた熱伝導性シートは、比重が2.7未満を満たさず、比誘電率が7.0以下を満たさないことが分かった。比較例1,2で得られた熱伝導性シートは、異方性充填材を含まなかったため、異方性充填材が熱伝導性シートの厚み方向に配向していないことが原因と考えられる。
1 熱伝導性シート、2 高分子マトリクス、3 異方性充填剤、3A 鱗片状の窒化ホウ素、a 長軸、b 厚み、c 短軸、4 非異方性充填剤、50 半導体装置、51 電子部品、52 ヒートスプレッダ、53 ヒートシンク
本技術は、熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法に関する。
電子機器の高性能化に伴って、半導体素子の高密度化、高実装化が進んでいる。これに伴って、電子機器を構成する電子部品からの発熱をさらに効率的に放熱することが重要である。例えば、半導体装置は、効率的に放熱するために、電子部品が、熱伝導性シートを介して、放熱ファン、放熱板等のヒートシンクに取り付けられている。熱伝導性シートとしては、例えば、シリコーン樹脂に、無機フィラーなどの充填を含有(分散)させたものが広く使用されている。この熱伝導性シートのような放熱部材は、更なる熱伝導率の向上が要求されている。例えば、熱伝導性シートの高熱伝導性を目的として、バインダ樹脂などのマトリックス内に配合されている無機フィラーの充填率を高めることが検討されている。しかし、無機フィラーの充填率を高めると、熱伝導性シートの柔軟性が損なわれたり、粉落ちが発生したりするため、無機フィラーの充填率を高めることには限界がある。
無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、高熱伝導率を目的として、窒化ホウ素、黒鉛等の鱗片状粒子、炭素繊維などをマトリクス内に充填させることもある。これは、鱗片状粒子等の有する熱伝導率の異方性によるものである。例えば、炭素繊維の場合は、繊維方向に約600~1200W/m・Kの熱伝導率を有することが知られている。また、窒化ホウ素の場合は、面方向に約110W/m・K程度の熱伝導率を有し、面方向に対して垂直な方向に約2W/m・K程度の熱伝導率を有することが知られている。このように、炭素繊維の繊維方向や鱗片状粒子の面方向を、熱の伝達方向であるシートの厚み方向と同じにする、すなわち、炭素繊維や鱗片状粒子をシートの厚み方向に配向させることによって、熱伝導率が飛躍的に向上することが期待できる。
特許文献1には、炭素繊維を厚み方向に配向させた熱伝導性シートが記載されている。しかし、炭素繊維を厚み方向に配向させた熱伝導性シートは、導電性であるため、絶縁性を求める用途では使用が制限されてしまう。また、熱伝導性シートの熱伝導性を高めるには、通常、比誘電率が高い熱伝導性フィラー(例えば、導電性フィラー、アルミナ、窒化アルミニウムなど)を使用するため、熱伝導性シートを高熱伝導化させようとすると、比誘電率も高くなってしまう。
特許文献2には、マトリックス樹脂に窒化アルミニウムを高充填した熱伝導性シートが記載されている。しかし、特許文献2に記載の技術のように、マトリックス樹脂に窒化アルミニウムやアルミナのような熱伝導性フィラーを高充填すると、熱伝導率とともに比誘電率も高くなってしまい、比重も大きくなってしまう。
特開2012-001638号公報 特許6692512号公報
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法を提供する。
本技術に係る熱伝導性シートは、高分子マトリクスと、異方性充填材と、非異方性充填とを含有し、異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下である。
本技術に係る熱伝導性シートの製造方法は、高分子マトリクスと、異方性充填材と、非異方性充填とを含有する熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、熱伝導性シートは、異方性充填材が熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下である。
本技術によれば、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい熱伝導性シートを提供することができる。
図1は、熱伝導性シートの一例を示す断面図である。 図2は、異方性充填の一例である、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素を模式的に示す斜視図である。 図3は、熱伝導性シートを適用した半導体装置の一例を示す断面図である。
本明細書において、異方性充填又は非異方性充填の平均粒径(D50)とは、異方性充填又は非異方性充填の粒子径分布全体を100%とした場合に、粒径分布の小粒子径側から粒子径の値の累積カーブを求めたとき、その累積値が50%となるときの粒子径をいう。なお、本明細書における粒度分布(粒子径分布)は、体積基準によって求められたものである。粒度分布の測定方法としては、例えば、レーザー回折型粒度分布測定機を用いる方法が挙げられる。
<熱伝導性シート>
図1は、本技術に係る熱伝導性シート1の一例を示す断面図である。熱伝導性シート1は、高分子マトリクス2と、異方性充填材3と、非異方性充填材4とを含有する。熱伝導性シート1は、異方性充填材3と非異方性充填4とが高分子マトリクス2に分散しており、異方性充填材3が熱伝導性シート1の厚み方向Bに配向している。そして、熱伝導性シート1は、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい。熱伝導性シート1の厚み方向Bに、異方性充填3が配向しているとは、熱伝導性シート1中の全ての異方性充填3のうち、熱伝導性シート1の厚み方向Bに長軸が配向している異方性充填3の割合が50%以上であることをいう。
熱伝導性シート1は、比誘電率が7.0以下である。熱伝導性シート1の比誘電率は、絶縁性を高める観点では低いほど好ましく、例えば、厚み方向Bの比誘電率が7.0以下であり、6.5以下であってもよく、6.0以下であってもよく、5.5以下であってもよく、5.4以下であってもよく、5.2以下であってもよい。熱伝導性シート1の比誘電率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
また、熱伝導性シート1は、熱伝導率が7.0W/m・K以上である。熱伝導性シート1の熱伝導率は、高熱伝導化の観点では高いほど好ましく、例えば、厚み方向Bの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、7.1W/m・K以上であってもよく、8.0W/m・K以上であってもよく、8.9W/m・K以上であってもよく、10.0W/m・K以上であってもよく、11.0W/m・K以上であってもよい。熱伝導性シート1の熱伝導率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
さらに、熱伝導性シート1は、比重が2.7未満である。熱伝導性シート1の比重は、電子部品の軽量化の観点では小さいほど好ましく、2.6以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.4以下であってもよく、2.3以下であってもよい。熱伝導性シート1の比重は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
このように、熱伝導性シート1は、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さいため、例えば、シールドやアンテナの分野において新たな応用が期待できる。例えば、熱伝導性シート1は、高速ワイヤレス通信機器など、高周波特性が必要な機器や、絶縁性が必要な用途に好適である。
熱伝導性シート1の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、熱伝導性シートの厚みは、0.05mm以上とすることができ、0.1mm以上とすることもできる。また、熱伝導性シートの厚みの上限値は、5mm以下とすることができ、4mm以下であってもよく、3mm以下であってもよい。熱伝導性シート1の取り扱い性の観点から、熱伝導性シート1の厚みは、0.1~4mmとすることが好ましい。熱伝導性シート1の厚みは、例えば、熱伝導性シート1の厚みBを任意の5箇所で測定し、その算術平均値から求めることができる。
以下、熱伝導性シート1の構成要素の具体例について説明する。
<高分子マトリクス>
高分子マトリクス2は、異方性充填3と非異方性充填4とを熱伝導性シート1内に保持するためのバインダ樹脂である。高分子マトリクス2は、熱伝導性シート1に要求される機械的強度、耐熱性、電気的性質等の特性に応じて選択される。高分子マトリクス2としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂の中から選択することができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン-αオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレン-エーテル共重合体(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル等のポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン- ブタジエンブロック共重合体又はその水添化物、スチレン-イソプレンブロック共重合体又はその水添化物、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、架橋ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。架橋ゴムの具体例としては、天然ゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴムが挙げられる。
高分子マトリクス2としては、例えば、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性を考慮するとシリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂としては、例えば、アルケニル基を有するシリコーンを主成分とし、硬化触媒を含有する主剤と、ヒドロシリル基(Si-H基)を有する硬化剤とからなる、2液型の付加反応型シリコーン樹脂を用いることができる。アルケニル基を有するシリコーンとしては、例えば、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができる。硬化触媒は、アルケニル基を有するシリコーン中のアルケニル基と、ヒドロシリル基を有する硬化剤中のヒドロシリル基との付加反応を促進するための触媒である。硬化触媒としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒が挙げられ、例えば、白金族系硬化触媒、例えば白金、ロジウム、パラジウムなどの白金族金属単体や塩化白金などを用いることができる。ヒドロシリル基を有する硬化剤としては、例えば、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができる。高分子マトリクス2は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱伝導性シート1中の高分子マトリクス2の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、熱伝導性シート1中の高分子マトリクス2の含有量は、25体積%超とすることができ、30体積%以上であってもよく、32体積%以上であってもよく、36体積%以上であってもよい。また、熱伝導性シート1中の高分子マトリクス2の含有量の上限値は、70体積%以下とすることができ、60体積%以下であってもよく、50体積%以下であってもよく、40体積%以下であってもよい。熱伝導性シート1中の高分子マトリクス2の含有量は、熱伝導性シート1の比誘電率、熱伝導率、比重の観点から、25~60体積%とすることが好ましく、26~40体積%がより好ましく、32~36体積%がさらに好ましい。
<異方性充填
異方性充填3は、形状に異方性を有する熱伝導性フィラーである。異方性充填3としては、長軸と短軸と厚みとを有する熱伝導性フィラー、例えば、鱗片状の熱伝導性フィラーが挙げられる。鱗片状の熱伝導性フィラーとは、長軸と短軸と厚みとを有する熱伝導性フィラーであって、高アスペクト比(長軸/厚み)であり、長軸を含む面方向に等方的な熱伝導率を有するものである。鱗片状の熱伝導性フィラーの短軸とは、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸を含む面において、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸に交差する方向であって、鱗片状の熱伝導性フィラーの最も短い部分の長さをいう。厚みとは、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸を含む面の厚みを10点測定して平均した値をいう。異方性充填3のアスペクト比は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、異方性充填3のアスペクト比は、10~100の範囲とすることができる。異方性充填3の長軸、短軸及び厚みは、例えば、マイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)、粒度分布計などにより測定できる。
異方性充填3の材質は、特に限定されず、例えば、窒化ホウ素(BN)、雲母、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、シリカ、酸化亜鉛、二硫化モリブデン等が挙げられ、比誘電率、熱伝導率、比重の観点では窒化ホウ素が好ましい。また、絶縁性の観点では、異方性充填3は、導電性の材料である炭素繊維を実質的に含まないことが好ましい。異方性充填3は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
図2は、異方性充填3の一例である、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素3Aを模式的に示す斜視図である。図2中、aは鱗片状の窒化ホウ素3Aの長軸を表し、bは鱗片状の窒化ホウ素3Aの厚みを表し、cは鱗片状の窒化ホウ素3Aの短軸を表す。異方性充填3としては、比誘電率、熱伝導率、比重の観点から、図2に示すように結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素3Aを用いることが好ましい。本技術では、異方性充填3として、球状の熱伝導性フィラー(例えば球状の窒化ホウ素)よりも安価な鱗片状の熱伝導性フィラー(例えば、鱗片状の窒化ホウ素3A)を用いることで、低コストで、優れた熱特性(高熱伝導率)と誘電特性(低誘電率)と軽量化(低比重)とを両立させた熱伝導性シート1が得られる。
異方性充填3の平均粒径(D50)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、異方性充填3の平均粒径の下限値は、10μm以上とすることができ、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、35μm以上であってもよい。また、異方性充填3の平均粒径の上限値は、150μm以下とすることができ、100μm以下であってもよく、90μm以下であってもよく、80μm以下であってもよく、70μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、45μm以下であってもよい。熱伝導性シート1の熱伝導率の観点では、異方性充填3の平均粒径は、20~100μmとすることが好ましい。第1の熱伝導性フィラー3のアスペクト比は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、鱗片状の熱伝導性フィラーのアスペクト比は、10~100の範囲とすることができる。第1の熱伝導性フィラー3の長軸と短軸との比(長軸/短軸)の平均値は、例えば、0.5~10の範囲とすることができ、1~5の範囲とすることもでき、1~3の範囲とすることもできる。
熱伝導性シート1中の異方性充填3の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、熱伝導性シート1中の異方性充填3の含有量は、15体積%以上とすることができ、20体積%以上であってもよく、23体積%以上であってもよく、27体積%以上であってもよい。また、熱伝導性シート1中の異方性充填3の含有量の上限値は、例えば、45体積%以下とすることができ、40体積%以下であってもよく、35体積%以下であってもよく、30体積%以下であってもよい。熱伝導性シート1の比誘電率、熱伝導率、比重の観点から、熱伝導性シート1中の異方性充填3の含有量は、20~35体積%とすることが好ましく、20~30体積%とすることもでき、23~27体積%とすることもできる。
<非異方性充填
非異方性充填4は、上述した異方性充填3以外の熱伝導性フィラーであり、形状に異方性を有しない熱伝導性フィラーである。例えば、非異方性充填4には、球状、粉末状、顆粒状などの熱伝導性フィラーが含まれる。非異方性充填4の材質は、熱伝導性シート1の絶縁性を確保できるものが好ましく、例えば、セラミックフィラーが好ましく、具体例としては、酸化アルミニウム(アルミナ、サファイア)、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、ジルコニア、炭化ケイ素などが挙げられる。非異方性充填4は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に、非異方性充填4としては、熱伝導性シート1の熱伝導率、比重の観点から、窒化アルミニウムと球状のアルミナとを併用することが好ましく、窒化アルミニウム粒子とアルミナ粒子と酸化亜鉛粒子と水酸化アルミニウム粒子とを併用することも好ましい。
窒化アルミニウム粒子の平均粒径(D50)は、熱伝導性シート1の比重の観点から、30μm未満とするのが好ましく、0.1~10μmであってもよく、0.5~5μmとすることが好ましく、1~3μmであってもよく、1~2μmであってもよい。また、アルミナ粒子の平均粒径(D50)は、熱伝導性シート1の比重の観点から、0.1~10μmとすることが好ましく、0.1~8μmであってもよく、0.1~7μmであってもよく、0.1~2μmであってもよい。酸化亜鉛粒子の平均粒径(D50)は、熱伝導性シート1の比重の観点から、1~5μmとするのが好ましく、0.5~3μmであってもよく、0.5~2μmであってもよい。水酸化アルミニウム粒子の平均粒径(D50)は、熱伝導性シート1の比重の観点から、1~10μmとするのが好ましく、2~9μmであってもよく、6~8μmであってもよい。
熱伝導性シート1中の非異方性充填4の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。熱伝導性シート1中の非異方性充填4の含有量は、10体積%以上とすることができ、15体積%以上であってもよく、20体積%以上であってもよく、25体積%以上であってもよく、30体積%以上であってもよく、35体積%以上であってもよい。また、熱伝導性シート1中の非異方性充填4の含有量の上限値は、50体積%以下とすることができ、45体積%以下であってもよく、40体積%以下であってもよい。
非異方性充填4として、窒化アルミニウム粒子と、アルミナ粒子とを併用する場合、熱伝導性シート1中、アルミナ粒子の含有量は10~25体積%とすることが好ましく、窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%とすることが好ましい。また、非異方性充填4として、窒化アルミニウム粒子と、アルミナ粒子と、酸化亜鉛粒子と、水酸化アルミニウム粒子とを併用する場合、熱伝導性シート1中、アルミナ粒子の含有量は10~25体積%とすることが好ましく、窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%とすることが好ましく、酸化亜鉛粒子の含有量は0.1~3体積%とすることが好ましく、水酸化アルミニウム粒子の含有量は0.1~3体積%とすることが好ましい。
熱伝導性シート1は、本技術の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外の他の成分をさらに含有してもよい。他の成分としては、例えば、カップリング剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤などが挙げられる。例えば、熱伝導性シート1は、異方性充填3及び非異方性充填4の分散性をより向上させて、熱伝導性シート1の柔軟性をより向上させる観点で、カップリング剤で処理した異方性充填3及び/又はカップリング剤で処理した非異方性充填4を用いてもよい。
以上のように、異方性充填3と非異方性充填4とが高分子マトリクス2に分散している熱伝導性シート1は、比重が2.7未満であり、熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、比誘電率が7.0以下である。すなわち、熱伝導性シート1は、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい。
<熱伝導性シートの製造方法>
本技術に係る熱伝導性シートの製造方法は、下記工程Aと、工程Bと、工程Cとを有する。
<工程A>
工程Aでは、異方性充填3と非異方性充填4とを高分子マトリクス2に分散させることにより、熱伝導性シート形成用組成物を調製する。熱伝導性シート形成用組成物は、異方性充填3と、非異方性充填4と、高分子マトリクス2との他に、必要に応じて各種添加剤や揮発性溶剤とを公知の手法により均一に混合することにより調製できる。
<工程B>
工程Bでは、調製された熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する。成形体ブロックの形成方法としては、押出成形法、金型成形法などが挙げられる。押出成形法、金型成形法としては、特に制限されず、公知の各種押出成形法、金型成形法の中から、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物の粘度や熱伝導性シートに要求される特性等に応じて適宜採用することができる。
例えば、押出成形法において、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物をダイより押し出す際、あるいは金型成形法において、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を金型へ圧入する際、高分子マトリクス2が流動し、その流動方向に沿って異方性充填3が配向する。
成形体ブロックの大きさと形状は、求められる熱伝導性シート1の大きさに応じて決めることができる。例えば、断面の縦の大きさが0.5~15cmで横の大きさが0.5~15cmの直方体が挙げられる。直方体の長さは必要に応じて決定すればよい。
<工程C>
工程Cでは、成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シート1を得る。工程Cで得られる熱伝導性シート1は、厚み方向Bに異方性充填3がほぼ配向している。スライスにより得られるシートの表面(スライス面)には、異方性充填3が露出する。スライスして得られた熱伝導性シート1は、表面が平滑化されるため、他の部材との密着性を向上させることができ、熱伝導性と比非誘電率をより良好にすることができる。成形体ブロックをスライスする方法としては、特に制限はなく、成形体ブロックの大きさや機械的強度により公知のスライス装置の中から適宜選択できる。成形体ブロックのスライス方向としては、成形方法が押出成形法である場合、押出し方向に異方性充填3が配向しているものもあるため、押出し方向に対して60~120度であることが好ましく、70~100度の方向であることがより好ましく、90度(垂直)の方向であることがさらに好ましい。
このように、工程Aと、工程Bと、工程Cとを有する熱伝導性シートの製造方法では、高分子マトリクス2と、異方性充填3と、非異方性充填4とを含有する熱伝導性シート1であって、異方性充填材3が熱伝導性シート1の厚み方向Bに配向しており、比重が2.7未満であり、熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、比誘電率が7.0以下である熱伝導性シート1が得られる。
本技術に係る熱伝導性シート1の製造方法は、上述した例に限定されるものではない。例えば、工程Cの後に、工程Cでスライスした面をプレスする工程をさらに有していてもよい。熱伝導性シート1の製造方法がプレスする工程をさらに有することで、工程Cで得られたシートの表面がより平滑化され、他の部材との密着性をより向上させることができる。プレスの方法としては、平盤と表面が平坦なプレスヘッドとからなる一対のプレス装置を使用することができる。また、ピンチロールでプレスしてもよい。プレスの際の圧力としては、例えば、0.1~100MPaとすることができ、0.1~1MPaとすることもできる。プレスの効果をより高め、プレス時間を短縮するために、プレスは、高分子マトリクス2のガラス転移温度(Tg)以上で行うことが好ましい。例えば、プレス温度は、0~180℃とすることができ、室温(例えば25℃)~100℃の温度範囲内であってもよく、30~100℃であってもよい。
<電子機器>
本技術に係る熱伝導性シート1は、例えば、発熱体と放熱体との間に配置させることにより、発熱体で生じた熱を放熱体に逃がすためにそれらの間に配された構造の電子機器(サーマルデバイス)とすることができる。電子機器は、発熱体と放熱体と熱伝導性シート1とを少なくとも有し、必要に応じて、その他の部材をさらに有していてもよい。
発熱体としては、特に限定されず、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの集積回路素子、トランジスタ、抵抗器など、電気回路において発熱する電子部品等が挙げられる。また、発熱体には、通信機器における光トランシーバ等の光信号を受信する部品も含まれる。
放熱体としては、特に限定されず、例えば、ヒートシンクやヒートスプレッダなど、集積回路素子やトランジスタ、光トランシーバ筐体などと組み合わされて用いられるものが挙げられる。放熱体としては、ヒートスプレッダやヒートシンク以外にも、熱源から発生する熱を伝導して外部に放散させるものであればよく、例えば、放熱器、冷却器、ダイパッド、プリント基板、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、金属カバー、筐体等が挙げられる。
図3は、本技術に係る熱伝導性シート1を適用した半導体装置50の一例を示す断面図である。例えば、熱伝導性シート1は、図3に示すように、各種電子機器に内蔵される半導体装置50に実装され、発熱体と放熱体との間に挟持される。図3に示す半導体装置50は、電子部品51と、ヒートスプレッダ52と、熱伝導性シート1とを備え、熱伝導性シート1がヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持される。熱伝導性シート1が、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に挟持されることにより、ヒートスプレッダ52とともに、電子部品51の熱を放熱する放熱部材を構成する。熱伝導性シート1の実装場所は、ヒートスプレッダ52と電子部品51との間や、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に限らず、電子機器や半導体装置の構成に応じて、適宜選択できる。
以下、本技術の実施例について説明する。実施例では、熱伝導性シートを作製し、熱伝導性シートの比誘電率、熱伝導率及び比重を測定した。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、シリコーン樹脂32体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)27体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)19体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)20体積%と、カップリング剤1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。押出成形法により、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、60℃のオーブンで4時間加熱させて成形体ブロックを形成した。なお、金型の内面には、剥離処理面が内側となるように剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けておいた。得られた成形体ブロックの長さ方向に直交する方向に、成形体ブロックをスライサーでシート状にスライスすることにより、厚さ2mmの、異方性充填である鱗片状の窒化ホウ素が熱伝導性シートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同様の熱伝導性シートを得た後、スライス面を剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムで挟んで、プレス機でプレスした。プレス条件は、圧力0.5MPa、80℃で3分間とした。
<実施例3>
実施例3では、シリコーン樹脂36体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)23体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)20体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)20体積%と、カップリング剤1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で、異方性充填である鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
<実施例4>
実施例4では、シリコーン樹脂36体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)23体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)20体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)18体積%と、酸化亜鉛(D50が1μm)1体積%と、水酸化アルミニウム(D50が1μm)1体積%と、カップリング剤1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で、異方性充填である鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
<比較例1>
比較例1では、シリコーン樹脂25体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)29体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)45体積%と、カップリング剤を1体積%を均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。調製した熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、剥離処理された剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に塗布し、60℃のオーブンで4時間加熱させて、厚さ2mmの熱伝導性シートを形成した。
<比較例2>
比較例2では、シリコーン樹脂19体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)16体積%と、窒化アルミニウム(D50が80μm)35体積%と、窒化アルミニウム(D50が30μm)29体積%と、カップリング剤を1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。調製した熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、剥離処理された剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に塗布し、80℃のオーブンで4時間加熱させて、厚さ2mmの熱伝導性シートを形成した。
<熱伝導率>
ASTM-D5470に準拠した熱抵抗測定装置を用いて、荷重1kgf/cmをかけて熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の熱伝導率(W/m・K)をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
<比誘電率>
JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。結果を表1に示す。
<比重>
熱伝導性シートの縦、横の長さと厚みから求めた体積と熱伝導シートの重量を測定することにより、熱伝導性シートの比重を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2022047001000006
実施例1~4で得られた熱伝導性シートは、高分子マトリクスと、異方性充填材と、非異方性充填とを含有し、異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、比重が2.7未満であり、熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、比誘電率が7.0以下であることが分かった。
また、実施例1,2の結果から、熱伝導性シートの表面がスライスした後にプレスした面であることにより、熱伝導率がより向上することが分かった。
比較例1で得られた熱伝導性シートは、比重が2.7未満を満たさず、熱伝導率が7.0W/m・K以上を満たさず、比誘電率が7.0以下を満たさないことが分かった。また、比較例2で得られた熱伝導性シートは、比重が2.7未満を満たさず、比誘電率が7.0以下を満たさないことが分かった。比較例1,2で得られた熱伝導性シートは、異方性充填材を含まなかったため、異方性充填材が熱伝導性シートの厚み方向に配向していないことが原因と考えられる。
1 熱伝導性シート、2 高分子マトリクス、3 異方性充填、3A 鱗片状の窒化ホウ素、a 長軸、b 厚み、c 短軸、4 非異方性充填、50 半導体装置、51 電子部品、52 ヒートスプレッダ、53 ヒートシンク

Claims (13)

  1. 高分子マトリクスと、異方性充填材と、非異方性充填剤とを含有し、上記異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、
    当該熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、
    当該熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、
    当該熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下である、熱伝導性シート。
  2. 上記異方性充填材が窒化ホウ素である、請求項1に記載の熱伝導性シート。
  3. 上記異方性充填材の含有量が20体積%以上である、請求項1又は2記載の熱伝導性シート。
  4. 上記非異方性充填材が、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
  5. 上記非異方性充填材が、アルミナと窒化アルミニウムとを含む、請求項4に記載の熱伝導性シート。
  6. 高分子マトリクスと、異方性充填材と、非異方性充填剤とを含有する熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
    上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
    上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
    上記熱伝導性シートは、上記異方性充填材が上記熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、上記熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、上記熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、上記熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下である、熱伝導性シートの製造方法。
  7. 上記熱伝導性シートの表面が、上記工程Cでスライスした面である、請求項6に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  8. 上記熱伝導性シートの表面が、上記工程Cでスライスした後にプレスした面である、請求項6に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  9. 上記異方性充填材が窒化ホウ素である、請求項6~8のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  10. 上記異方性充填材の含有量が20体積%以上である、請求項6~9のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  11. 上記非異方性充填材が、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6~10のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  12. 上記非異方性充填材が、アルミナと窒化アルミニウムとを含む、請求項11に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  13. 発熱体と、
    放熱体と、
    発熱体と放熱体との間に配置された請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性シートとを備える、電子機器。
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