JP2021025128A - 方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]圧延方向と交差する方向に延在しかつ溝深さ方向が板厚方向となる溝が表面に形成された方向性電磁鋼板であって、
前記鋼板の幅方向の両端から幅中央方向に少なくとも10mmまでの範囲の組織が微細化されてなり、
前記両端から幅中央方向に10mmまでの微細化された組織は、平均結晶粒径が5mm以下であり、かつ、Goss方位からのずれ角が10°以下となる結晶粒の存在頻度が50%以下である、方向性電磁鋼板。
[2]鋼板表面の幅方向の両端から幅中央方向に少なくとも1mmまでの範囲には、溝が形成されていない、[1]に記載の方向性電磁鋼板。
[3]鋼板表面に形成された溝が、連続的に圧延方向と交差する方向に延在する、[1]または[2]に記載の方向性電磁鋼板。
本発明によれば、鋼板表面に溝が形成されている方向性電磁鋼板コイルの機械強度が大幅に向上するので、コイルから前記鋼板を払い出して通板する際、通板性が改善することで破断による生産性低下が防止される。
まず、鋼板端部の組織と機械強度の関係を明らかにした実験結果を説明する。表面にレジストインクを塗布した板厚0.23mm、板幅800mmの冷間圧延板にレーザを圧延方向と直交する向きに走査して、圧延方向に5mmの間隔を置いてレーザを照射してレジストインクを剥離した。なお、この方法では、レーザが照射された部分のレジストインクが剥離(除去)される。レーザ照射は、2台のシングルモードファイバーレーザを鋼板幅方向に設置し、ガルバノスキャナー方式によってレーザ照射エネルギー25J/m、レーザ走査幅400mmで実施し、鋼板の幅方向の一方の端から他端まで連続的にレジストインクを完全に剥離した。
(i)鋼板全幅×鋼板圧延方向100mmの領域を組織観察領域とする(図9)。板幅方向中央の[幅方向100mm]×[圧延方向100mm]の領域に関して組織観察および結晶方位測定を行う(図10)。
(ii)結晶方位測定結果から、上記[幅方向100mm]×[圧延方向100mm]の領域について、Goss方位からのずれ角が10°以下となる結晶粒の存在頻度が90%以上であれば、その領域を「基準となる二次再結晶組織」に設定する(図10)。
(iii)組織観察結果から、鋼板全幅にわたって5mmピッチで圧延方向に対して交差する結晶粒界を計測する(図11)。
(iv)各ピッチにおける圧延方向単位距離当たりの交差数を計算する(図11)。
(v)基準となる二次再結晶組織(領域)での平均交差数に対して、2倍以上の交差数となる点が連続的に出現する場合、その範囲(ピッチ間)を微細結晶組織の領域と判定する(図12)。
次に、平均結晶粒径と破断張力の関係を調査した。実験1と異なる点は以下のとおりである。今回の実験では研削は実施せず、代わりに、焼鈍分離剤を塗布した後、各鋼板端部から幅中央方向に10mmの範囲にホウ酸水溶液をノズルで追加吹付けし、その後に焼き付け処理を行った。その際、ホウ酸水溶液の濃度を0質量%〜10質量%に変化させた。それ以外は実験1と同様の方法で実験を行った。ホウ酸水溶液を塗布したのは、ホウ素が仕上げ焼鈍中に鋼板に浸入し、二次再結晶挙動に影響を与えることを狙ったためである。
更なる通板性改善策として、鋼板両端部の領域に意図的に溝を形成しないことを検討した。溝を形成しないと磁区細分化効果が得られないので、磁気特性が劣化する問題が発生するが、鋼板両端部では、もともと鋼板を巻き取ってコイルとして載置したときのコイル下端部ではコイル重量による座屈変形、コイル上端部ではコイル焼鈍時の過加熱による温度分布差により発生する応力起因の変形が起こり、鋼板両端部からある程度の範囲は不可避的に製品が採取できない部分となる。よって、通板性改善に必要な溝の未形成部が大きくなければ、そのような製品が採取できない部分に溝の未形成部が収まるので、実現性が高いと考え、検討を行った。
鋼板の端部領域の組織改善により、通板性は大幅に改善することが明らかになったが、二次再結晶組織中の溝形成挙動の改善によりさらに改善が可能かの検討を行った。溝形成は、図6(c)に示すように1本の連続溝(圧延方向と交差する方向に途切れなく連続的に延在する溝)で形成される場合もあるが、レーザ照射などでレジストを剥離した後エッチングで溝を形成する場合は複数のレーザ照射装置を使用して線状のレジスト剥離をつなぎ合わせる場合もある。すなわち、それぞれの照射装置から照射されるレーザが鋼板全幅にわたって走査される必要はなく、各照射装置による走査範囲の和が、鋼板全幅をカバーするように製造すればよい。この場合、溝の延伸方向に対して溝が不連続となる部分が生じる。この場合、図6(b)のように溝を形成すると鉄損が劣化するために、図6(a)に示すように板幅方向に隣り合う溝が、溝幅方向と直交する投影面上で重なるように溝を形成するのが一般的である。なお、以下、板幅方向に隣り合う溝を、溝幅方向と直交する投影面上に投射したときに溝同士が重なる領域をラップ部という(図6(a)参照)。ラップ部を有するように溝を形成した場合、ラップ部では板厚が薄い領域が大きくなるため、通板性が劣化する可能性があると考え、不連続な溝形成と通板性の関係を調査することとした。
本発明は、表面に溝が形成された方向性電磁鋼板に関するものである。以下、本発明の方向性電磁鋼板の鋼素材(スラブ)の成分組成について説明する。前記方向性電磁鋼板としては、特に限定されず任意のものを用いることができるが、鉄損低減の観点からSiを2.0〜8.0質量%の範囲で含有する成分組成を有することが好ましく、加えて通板性の観点からSiを2.5〜4.5質量%の範囲で含有する成分組成を有することがより好ましい。
Cは、一次再結晶時の集合組織の改善のために必要な元素であり、その効果を得るためには0.01質量%以上含有させるのが好ましい。一方、Cが0.08質量%を超えると、脱炭焼鈍で、磁気時効の起こらない0.0050質量%以下に低減することが難しくなる。よって、Cは0.01〜0.08質量%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.03〜0.07質量%の範囲である。
Mnは、熱間加工性を改善するのに有効な元素であるが、0.005質量%未満では、上記効果は得られず、一方、1.0質量%を超えると、磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005〜1.0質量%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは0.010〜0.2質量%の範囲である。
上記成分組成を有するスラブを、常法に従い加熱する。加熱温度は、1150〜1450℃が好ましい。
上記加熱後に、熱間圧延を行う。鋳造後、加熱せずに直ちに熱間圧延を行ってもよい。薄鋳片の場合には、熱間圧延を行うこととしてもよく、あるいは、熱間圧延を省略してもよい。熱間圧延を実施する場合は、粗圧延最終パスの圧延温度を900℃以上、仕上げ圧延最終パスの圧延温度を700℃以上で実施することが好ましい。
その後、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。このとき、ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度として800〜1100℃の範囲が好適である。熱延板焼鈍温度が800℃未満であると、熱間圧延でのバンド組織が残留し、整粒した一次再結晶組織を実現することが困難になり、二次再結晶の発達が阻害される。一方、熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、熱延板焼鈍後の結晶粒径が粗大化しすぎるために、整粒した一次再結晶組織の実現が極めて困難となる。
その後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施す。中間焼鈍温度は800℃以上1150℃以下が好適である。また、中間焼鈍時間は、10〜100秒程度とすることが好ましい。
その後、脱炭焼鈍を行う。脱炭焼鈍では、焼鈍温度を750〜900℃とし、酸化性雰囲気P(H2O)/P(H2)を0.25〜0.60とし、焼鈍時間を50〜300秒程度とすることが好ましい。
その後、焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤は、主成分をMgOとし、塗布量を8〜15g/m2程度とすることが好適である。
その後、二次再結晶およびフォルステライト被膜の形成を目的として仕上げ焼鈍を施す。焼鈍温度は1100℃以上とし、焼鈍時間は30分以上とすることが好ましい。
張力コーティングを形成する際のコーティング液の塗布・焼き付け処理にて平坦化焼鈍も同時に行い、形状を矯正することも可能である。平坦化焼鈍は、焼鈍温度を750〜950℃とし、焼鈍時間10〜200秒程度で実施するのが好適である。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板への溝形成方法は、特に限定されるものではなく、レーザ法、プレス機械法、エッチング法等の公知の方法により溝を形成することができる。溝形成タイミングについても特に限定されるものではなく、最終板厚になった冷延板や脱炭焼鈍後の一次再結晶焼鈍板、あるいは仕上げ焼鈍後の二次再結晶焼鈍板いずれでも可能である。以上の3つでは、最終の平坦化焼鈍で溝加工による歪を除去できるので、工程削減の観点から好ましい。ただし、張力コーティング形成後の製品板に溝加工を行っても本発明の効果が損なわれることはない。
本発明の最も重要なポイントは、(a)鋼板(コイル)両端の機械強度アップが有効であり、鋼板両端から幅中央方向に少なくとも10mmまでの範囲において、鋼板組織を平均結晶粒径5mm以下に微細化させること、(b)微細化していても各結晶粒の方位がほぼ同じ場合、すべり系が同じになるため、ある一定の方向に対する耐力しかアップしないので、できる限りランダムな結晶方位であることが好ましいことから、少なくともGoss方位からのずれ角が10°以下の結晶粒の存在頻度を50%以下とすることである。
Claims (3)
- 圧延方向と交差する方向に延在しかつ溝深さ方向が板厚方向となる溝が表面に形成された方向性電磁鋼板であって、
前記鋼板の幅方向の両端から幅中央方向に少なくとも10mmまでの範囲の組織が微細化されてなり、
前記両端から幅中央方向10mmまでの微細化された組織は、平均結晶粒径が5mm以下であり、かつ、Goss方位からのずれ角が10°以下となる結晶粒の存在頻度が50%以下である、方向性電磁鋼板。 - 鋼板表面の幅方向の両端から幅中央方向に少なくとも1mmまでの範囲には、溝が形成されていない、請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
- 鋼板表面に形成された溝が、連続的に圧延方向と交差する方向に延在する、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板。
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