本発明の態様は以下の説明および本発明の特定の実施形態を対象とする関連する図面に開示されている。「本発明の実施形態」という用語は、本発明の全ての実施形態が論じた特徴、利点、プロセス、または作動モードを含んでいることを必要とせず、本発明の範囲から逸脱することなく代替の実施形態を考案してもよい。さらに、より関連のある他の詳細を不明確にすることがないように、本発明の周知の要素は詳細に説明せず、または省略する。
以下の説明には(簡潔化および便利性のため、ならびに最近Li技術が一般化しているため)LiおよびLiイオン電池に関連するいくつかの例を記載しているが、(Naイオン、Mgイオン、Kイオン、Caイオン、Alイオン、およびその他の)他の再充電可能なおよび一次の、金属および金属イオン電池にも種々の態様が適用できることが認識されよう。さらに、以下の説明にはリチウムがない(たとえば充電された)状態における材料処方のいくつかの例を記載しているが、Liを含む電極(たとえば部分的または完全に放電した状態)にも種々の態様が適用できることが認識されよう。
同様に、以下の説明にはLiF化学に関連するいくつかの例を記載しているが、他のハロゲン化リチウム化学(たとえばLiCl等)にも種々の態様が適用できることが認識されよう。
本明細書に記載した成分、材料、方法およびその他の手法、またはその組合せが、種々の実施形態に従って適用される、金属イオン(たとえばLiイオン)電池の例を図1に示す。ここでは説明のために円筒形の電池を示しているが、所望に応じてプリズム状またはパウチ状(ラミネート型)電池等の他の種類の配置も用いてよい。例示の電池100には負アノード102、正カソード103、アノード102とカソード103との間に配されたセパレーター104、セパレーター104に含浸された電解質(図示せず)、電池ケース105、および電池ケース105をシールするシール部材106が含まれている。
本明細書の設計には液体および固体の電解質の両方が用いられる。この種のLi系またはNa系の電池用の従来の液体電解質は一般に(炭酸塩の混合物等の)溶媒の混合物中の(Liイオン電池にはLiPF6、Naイオン電池にはNaPF6またはNaClO4等の)単一のLiまたはNa塩からなっている。Liイオン電池の電解質において最も一般に用いられる塩はたとえばLiPF6であるが、より一般的でない塩にはテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB((C2O4)2)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF2(C2O4))、種々のリチウムイミド(SO2FN−(Li+)SO2F、CF3SO2N−(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N−(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N−(Li+)SO2CF2CF3、CF3SO2N−(Li+)SO2CF2OCF3、CF3OCF2SO2N−(Li+)SO2CF2OCF3、C6F5SO2N−(Li+)SO2CF3、C6F5SO2N−(Li+)SO2C6F5またはCF3SO2N−(Li+)SO2PhCF3、その他)、その他が含まれる。Mgイオン、Kイオン、Caイオン、およびAlイオン電池用の電解質は、これらの電池が開発の初期段階にあるので、あまり標準的ではないことが多い。これらは異なった塩および溶媒を含んでもよい(ある場合には、ある用途向けに有機溶媒をイオン液体で置き換えてもよい)。
さらに、フッ素系カソードに対して固体電解質は、カソード電位が高い場合に酸化に対する安定性が高い、カソードと電解質との間の望ましくない副反応が少ない、ならびに安全性が高いといういくつかの利点を有している。固体セラミック電解質の例には、硫化物系電解質(Li2S−P2S5、Li2S−Ga2S3−GeS2、Li2S−SiS2等)、ハロゲン化物系電解質、リチウム−オキシ−ハロゲン化物系およびリチウム金属−オキシ−ハロゲン化物系電解質(たとえばLi3−O−Cl、Li3−O−Cl0.5I0.5、Li2−H−O−Cl0.5Br0.5、Li1.5−H0.5−Al0.3−O−Cl0.5Br0.5等)、酸化物系電解質(Li−La−Ti−Oガーネット、Li−La−Ta−Oガーネット、Li−Si−Oガラス、Li−Ge−Oガラス、Li9SiAlO8等)、混合硫化酸化物電解質(Li2S−SiS2−Li4SiO4、LiI−La2O2S−La2O2S2等)、ならびに他の多くが含まれる。セラミックは充電と放電のサイクルの間に起こる体積変化に適合しにくいので、固体電解質を転換系カソードとともに用いることは困難であった。これらをフッ素系カソードとともに用いることは、フッ素系活性カソード粒子が大きな体積変化を示すために、特に困難であった。
金属イオン電池に用いられる従来のカソード材料はインターカレーション型のものである。電池が放電している間、これらの材料の格子間の位置に金属イオンが挿入され、ここを占有する。しかしこれらのカソードの重量容量および、より重要なことに体積容量は、典型的にはそれぞれ活物質gあたり約220mAh未満および電極レベルで約700mAh/cm3と小さい。インターカレーション型カソードの容量はこのように小さいので、金属イオン電池のエネルギー密度および比エネルギーが制限される。
フッ素系カソードは、ある場合には300mAh/gを超える(および電極レベルでは1200mAh/cm3を超える)極めて大きな容量によって、顕著な技術的可能性を提供し得る。たとえばFeF3は712mAh/gの理論的比容量を提供し、FeF2は571mAh/gの理論的比容量を提供し、MnF3は719mAh/gの理論的比容量を提供し、CuF2は528mAh/gの理論的比容量を提供し、NiF2は554mAh/gの理論的比容量を提供し、PbF2は219mAh/gの理論的比容量を提供し、BiF3は302mAh/gの理論的比容量を提供し、BiF5は441mAh/gの理論的比容量を提供し、SnF2は342mAh/gの理論的比容量を提供し、SnF4は551mAh/gの理論的比容量を提供し、SbF3は450mAh/gの理論的比容量を提供し、SbF5は618mAh/gの理論的比容量を提供し、CdF2は356mAh/gの理論的比容量を提供し、ZnF2は519mAh/gの理論的比容量を提供する。
さらに、フッ化物を生成する元素が安価な場合には、フッ素系カソードは低コストの可能性も提供する。多くのフッ化物生成元素の5年平均卸売り商品コストは適度に安価である。たとえば2013年にはFeのコストはわずかに0.2ドル/kg程度、Cuのコストはわずかに4〜9ドル/kg程度、Znのコストはわずかに1〜2ドル/kg程度、Cdのコストはわずかに1ドル/kg程度、Pbのコストはわずかに1〜2ドル/kg程度、Sbのコストはわずかに6〜15ドル/kg程度であった。
しかし、大きな理論容量および大きな理論エネルギー密度を有する多くのフッ化物(CuF2、NiF2、PbF2、BiF3、BiF5、SnF2、SnF4、SbF3、CdF2、ZnF2、その他)は、以前観察された安定性の欠如ならびに金属フッ化物が炭素添加物と機械的に混合され、または炭素粒子の外表面に堆積される従来のカソード構成で用いた場合に実験的に観察された極めて大きな分極のために、再充電可能なLiイオン電池における使用には実用的でないと考えられてきた。
これらのいわゆる「非実用的な」フッ化物(CuF2、PbF2、SnF2、CdF2、ZnF2、その他)のいくつかの、より一般に用いられている(およびまだあまり実用的ではない)FeF2およびFeF3に対する1つの利点は、放電カーブがより平坦で、しばしば(たとえばCuF2の場合)エネルギー密度が大きいことである。
いわゆるインターカレーションカソード化合物の中への/からのLiイオンの挿入/抽出(ここでLiはインターカレーション結晶の間隙の中に挿入/インターカレートされる)の間に観察される構造的、化学的、および体積の相違が小さいのと対照的に、フッ化物はセルのサイクリングに伴って劇的な構造変化および顕著な体積変化を示す。金属フッ化物系カソードへの電気化学的なLiの挿入の間に、置換/転換プロセスが起こり、ここでLiは固体のフッ化物生成元素(金属もしくは半金属、またはある場合には半導体等)を置き換え、固体のLiFおよび典型的には径がわずかに2〜10ナノメートルのフッ化物生成元素のクラスターが生成する。理論的には、フッ化物のLi容量はその化学量論および以下の反応(これは充電と放電の間の完全に可逆的な電気化学的変換を仮定している)によるフッ化物生成金属の密度によって決定される。
ここでMはフッ化物生成元素である。
機構的には、より高い酸化状態を有する金属の金属フッ化物(たとえばFeF
3)のいくつかへのLiの初期の挿入はインターカレーションとして起こると考えられる。たとえば、LiとFeF
3との電気化学反応の間に、最初にLiが構造の中にインターカレートして、
を生成する。
追加的なLiの挿入の後でのみ、転換反応によって、
に従って反応生成物がLiFと相互連通したFeナノ粒子とに変換される。
上記の背景技術の項で述べたように、従来のフッ素系カソードには、(i)低い電導性、(ii)低いイオン電導性、(iii)電気化学的リチウム化の間の体積増加ならびにLiFおよび金属クラスターの生成、という制限の問題がある。その他の制限には(iv)フッ化物の電解質との(特に高い電位における)反応の間の、電池の劣化を引き起こす気体の発生、(v)電解質との表面反応の間の、抵抗を増大させ、電気化学反応の可逆性を低下させる表面種の生成、(vi)抵抗を増大させ、アノード上の固体電解質界面相(SEI)に損傷を与え、電池セルの電力性能とサイクル安定性の両方を低下させる、サイクリングの間の金属の酸化および金属フッ化物の溶解、(vii)これも不可逆的な抵抗成長および容量損失をもたらす、電池の作動中の不可逆的な構造変化(LiFおよび金属クラスター/ナノ粒子の不可逆的な成長等)、ならびに(viii)機能的なセルを形成するために金属フッ化物含有カソードと反応性で取扱いが困難なLi含有アノードとを連結させる必要性が含まれる。本開示により、上記の困難さのいくつかが克服され、安定で高容量、高エネルギー密度のフッ素系カソードを製造することが可能になる。
電極の周囲または金属フッ化物材料を含む個別の粒子の周囲に好適な保護シェルを形成させることによって、上記の制限の少なくともいくつかは克服することができるが、その全ては克服できないことが多い(たとえば、コアシェル材料であってもなおLi含有アノードの使用を必要とする)。さらに、シェルの形成はしばしば困難で、高価で、(サイクリングまたは貯蔵中の、特に部分的または完全に放電した状態における安定性を達成するための)信頼性が十分でなく、潜在的な危険がある。たとえば、(特にHFのない、またはFのない雰囲気下における60℃を超える温度で)CuF2含有材料の周囲に種々のシェルを形成させると、一般にはCuF2のCu金属への転換、HF蒸気、F2ガス、(シェルの堆積のために用いた特定の化学合成ルートによる)種々の他のフッ素化化合物等の望ましくない反応が引き起こされる。HFまたはFを含む雰囲気を用いることによってある場合にはCuF2の分解または転換反応を防止できるかも知れないが、それにより製造コストおよびこの操作の間の潜在的危険性が顕著に増大する。いったん生成しても、(電極の電気化学的リチウム化によって誘導される)膨張によって、初期または引き続くサイクルの間にシェル中でクラックおよび亀裂を発生させるに十分大きな応力が誘導されれば(疲労)、生成した保護シェルはセルの作動中に破壊される。いったん破壊されれば、シェルは副反応を防止するために必須な安定性を提供することができない。本開示はそのような困難を克服し、電池のサイクリング中の応力により良く耐える好適なコーティングを堆積させる合成ルートを提供する。
金属フッ化物材料を好適な骨格マトリックス材料の中に埋め込み、それによりフッ化物含有複合体を形成させることによって、補足的な利点が得られる。この試みおよび粒子構造によって、電池の作動中の粒子および電極における体積変化が低減される。この試みおよび粒子構造によって、(たとえば金属クラスターの不可逆的な成長を防止することによって)サイクリング中の電極における不可逆的な変化を有意に低減させ、それによりセルの劣化および抵抗の増大を低減させることができる。この試みおよび粒子構造によって、カソード粒子のイオン性および/または電気抵抗を有意に低減させることができる。しかしながら、金属フッ化物材料のいくつか(たとえばCuF2)については、そのような粒子構造の形成は困難で、高価で、または危険である。本開示は複合体の有利な構造を提供するのみでなく、フッ化物が骨格マトリックス材料の中に埋め込まれる複合粒子の好適な形成への進歩した試みについても記述する。
本開示によって、活物質としてフッ化物を含む電池電極のための進歩した複合材料が提供される。開示する複合材料は、従来用いられた遷移金属フッ化物(FeF2、FeF3、CoF2、およびNiF2等)の代わりに、金属または金属合金のクラスターまたはナノ粒子と混合されたフッ化リチウム(LiF)を含む。この粒子構造によって以下の利点が得られる。(i)これらのカソードの中に既にLiが存在するので、材料は顕著に膨張しない。(ii)これらの複合粒子を含むカソードはLiを含まないアノード(グラファイトアノード、Si含有アノード、Sn含有アノード等)に適合する。および(iii)LiFは他の多くの金属フッ化物よりも(特にCuF2よりも)顕著により安定で反応性が低いので、これらの粒子の周囲に保護シェルを形成させる方が有意により簡単で安価である。
(金属酸化物の生成を伴う)金属クラスター/ナノ粒子の酸化を避けるようにフッ化リチウム(LiF)を金属のクラスターまたはナノ粒子と混合して生成することは困難であるので、本開示は所望の純金属の代わりに望ましくない金属酸化物が生成することを最小化または除外する好適な方法の例を提供する。
本開示によって、上記の複合材料中の種々の形状または層を有する対応する金属クラスターまたはナノ粒子における好適な金属組成物が提供される。この改良された金属組成物により、数例を挙げれば機械的および電気化学的安定性の改良、サイクリング中のエネルギー損失の低減、および速度性能の改良等のカソード特性の改良が可能になる。
本開示によって、種々の形状または層を有する金属のクラスターまたはナノ粒子と混合され、さらに骨格材料マトリックス中に(たとえば骨格マトリックス粒子中に)埋め込まれたフッ化リチウム(LiF)(またはLiCl等の他のハロゲン化物)を含む複合体の有利な構造も提供され、それによりさらに安定性が改良され、サイクリング中の体積変化が低減され、これらの複合体基づくカソードの他の特性(速度性能等)が改良される。
多くの用途には、骨格マトリックス材料は個別の粒子(粉末)の形態であることが有利である。構造的および化学的な安定性を顕著に改良するには、各複合粒子の骨格マトリックスは、単一のモノリシック粒子(単体粒子)の形態であるのが好ましい。多くの用途には、骨格マトリックス材料粒子は(たとえば個別の粒子の機械的特性または安定性を向上させるために)実質的に球形の形状であるのが有利である。多くの用途には、骨格マトリックス材料粒子は径が均一であること(たとえばいわゆる「D90」パラメーターと「D10」パラメーターの差がいわゆる「D50」もしくはメディアン粒径より小さいこと、より好ましくは平均粒径の50%より小さいこと、さらにより好ましくは平均粒径の20%より小さいこと)が有利である。この場合、安定性および十分に高い速度を向上させるために粒子構造を最適化することができ、電解質イオン輸送のための直線的なチャネルを電極内に形成することによって電極レベルのイオン抵抗を最小化することができる。さらに述べるように、骨格マトリックス材料は電導性である(たとえば約0.000001S/mを超え、好ましくは0.001S/mを超え、より好ましくは0.1S/mを超え、さらにより好ましくは約10S/mを超える電導性を示す)ことも有利である。多くの用途には、骨格マトリックス材料粒子もしくは複合粒子(金属のクラスターまたはナノ粒子と混合されたフッ化リチウムで満たされた多孔質骨格マトリックス材料を含む粒子等)を含む電極がこれらの粒子の表面に化学結合した(または焼結された)電導性添加物(たとえばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラファイトフレーク等)を含むことが有利である。この場合、フッ素系複合粒子は電極の劣化が有意に遅いので、セル中の電気化学的サイクリングの間に、より良い安定性を示す。近傍の複合粒子に結合した電導性添加物が追加的に相互に化学結合を形成することもさらに有利である。
本開示によって、各複合粒子が少なくとも部分的に活物質(金属クラスターまたは金属ナノ粒子と混合されたフッ化リチウム材料等)を包み込むシェルを含むこれらの複合体の構造も改良され、シェルはセルの作動中に、活性フッ化物材料によって収蔵され、放出されるLiイオンを実質的に透過し、電解質溶媒分子および(好ましくは)上記の金属クラスター/ナノ粒子の金属のイオンを実質的に透過しない。活物質(金属クラスターまたは金属ナノ粒子と混合されたフッ化リチウム材料等)が骨格マトリックス材料中に埋め込まれれば、シェルは骨格マトリックス材料と埋め込まれた活物質(金属クラスターまたは金属ナノ粒子と混合されたフッ化リチウム材料等)とを含む複合体を少なくとも部分的に包み込む。保護シェルの存在によって金属フッ化物と電解質との望ましくない副反応が顕著に低減され、それによりセルサイクルの安定性と全体の性能が改良される。Liイオン透過性保護シェルの好適な構造、Liイオン透過性保護シェル材料の好適な組成、およびシェルを製作するための好適な方法も提供される。
本開示により、上記の複合体を製作するための好適な方法も提供される。
上で簡潔に述べたように、本開示によって、遷移金属フッ化物を用いる代わりに、混合されたフッ化リチウム(LiF)/金属マトリックスナノ複合材料が提供される。一例においては、この材料は完全にリチウム化された(放電した)状態の金属フッ化物カソード材料とみることができる。しかしこの材料は単にリチウム化された遷移金属フッ化物よりも顕著に大きな設計の可変性およびカソード特性の最適化を提供し、それにより顕著に良好なカソードの形成が可能になる。一例においては、この材料は過剰のLiF(これは引き続く加工中にLiFのいくらかが失われる場合に有益である)または過剰の金属ナノ粒子(これは電気絶縁性金属フッ化物マトリックスの中に電導性材料を保持することによって、および残留する金属が転換反応中に金属クラスター/ナノ粒子の形成のための不均一な核形成部位として作用することによって、カソードの速度能力の改良に有益である)を有し得る。この材料の別の利点は化学的および熱的抵抗性が高いことである。たとえば、CuF2をH2、Cまたはその他の還元剤の存在下で極めて穏和な(時には約80℃〜約200℃と低い)温度で加熱すると、CuF2のCu2+イオンはCu0金属に還元される(これは同時にLiFを生成することなく起こるので、この材料を用いて電池を組み立てた場合にはCuF2に戻る電気化学反応が起こることは阻止されることに注意されたい)。対照的に、混合されたLiF/Cuマトリックスを同様の条件で加熱すると、(LiFはCuF2よりも安定で、Cu金属は既に還元状態にあるので)これは主として影響を受けないままである。したがって、LiF/Cu複合マトリックス粒子の周囲における保護外側シェル(この材料を電解質との望ましくない相互作用から保護するシェル)および/または電導性シェル(個別の粒子と電流コレクターとの間の電気的連結を提供するシェル)の形成が(たとえば、H2の発生を含むCVDプロセスを用いること、または前駆体材料の熱分解を用いることなどによる)昇温した還元性環境で起こり、したがって顕著に高い品質(良好な機械的安定性、良好な一体性、良好な均一性等)が得られる。さらに、この材料は構造中に既にLiを有しているので、セルの作動中にさらなる膨張が起こることが防止され、したがって電極、複合粒子、または外側保護シェルの亀裂が顕著に低減されまたは最小化される。
図2A〜図2Dに、LiF/M(Mは金属または合金である)ナノ複合粒子の好適な構造の選択された例を示す。
図2Aに、LiF201とM202との相互貫入マトリックスが単一粒子を生成する比較的簡単な例を示す。LiFは電気的に孤立しているので、複合体の電導性材料からLiF体積中のLi原子の大部分(好ましくは少なくとも90%)までの最も遠い距離が約10ナノメートルを超えないことが好ましい。この複合材料の速度性能および容量利用率を最大化するために、金属のクラスターまたはナノ粒子の大部分が電気的に結合していることが好ましい。LiF/Mナノ複合粒子の中で別の電導性材料(たとえば別の金属、電導性炭素、電導性ポリマー、電導性酸化物等)を用いることも、これらのカソード材料の電導性、機械的および電気化学的安定性、ならびに速度能力に関連して有利である。ある設計(たとえばこの他の金属がその電導性または機械的安定性を向上させるために複合体に添加される場合)においては、この他の金属成分はフッ素化に対してより高い抵抗を示す(したがって電気化学的サイクリング中に一次金属成分は金属から金属フッ化物の状態に変化するが、この金属は金属状態のままである)。
図2Bにやや異なった例を示す。ここではLiF201が多孔質粒子を形成し、その孔は金属M202で満たされてLiF/Mナノ複合体を形成している。ある用途においては、LiF粒子がモノリシック(単体)であることが構造的および化学的な安定性の改良のために有利である。そのような多孔質LiFの形成には、犠牲的テンプレート(LiFの生成の後に分解、溶解、またはその他の機構によって除去され、それによりLiFの内部に孔を生じる材料)の使用が関与している。(少なくとも部分的にM202で満たされた)LiF201の内部の孔は、閉じていても開いていてもよい。閉鎖孔の場合には、金属M202は電解質との望ましくない相互作用からLiF201によって保護されている。一方、そのような複合体の内部で電気的連結を維持することが重要である。この目的を達成するため、多孔質LiF201の閉鎖孔内の隣接する個別の電導性M202粒子(または層)の間の距離は、1つの粒子から隣り合う別の粒子への、またはこれらの粒子から別の電導性材料への電子の量子力学的トンネリングが可能な程度に十分に小さくされる(典型的には約3〜6nm未満)。これは典型的には多孔質LiF201の中の孔壁の幅が狭いことに言い換えられる。
あるいは、多孔質LiF201の内部の孔は相互連通していてもよい。この場合には、電導性M202は(図2Aに関して上で説明したように)相互連通したネットワークを形成する。あるいは、電導性金属フィラーM202は連続的な相互連通体を形成しない種々の形状の個別のクラスターまたは粒子を形成するが、たとえばコネクター204(たとえば別の金属、電導性炭素、電導性ポリマー、電導性酸化物等)として示される別の電導性材料と電気的に接続し、それによりLiF/Mナノ複合体の内部で電気的に接続されたネットワークを形成してもよい。
図2Cに、さらに別のやや異なった例を示す。ここでは金属M202が多孔質(かつ好ましくはモノリシック)粒子を形成し、その孔はLiF201で満たされてLiF/Mナノ複合体を形成している。そのような多孔質金属の形成には、犠牲的テンプレート材料(Mの生成の後に分解、溶解、またはその他の機構によって除去され、それによりMの内部に孔を生じる材料)の使用が関与している。(少なくとも部分的にLiF201で満たされた)M202の内部の孔は、閉じていても開いていてもよい。大部分の金属の内部におけるLiの拡散は比較的遅いので、閉鎖孔は典型的には(特に低温において)LiF/Mナノ複合粒子の内部におけるLiの輸送を遅くする。しかし、Liの移動度を十分に高くするように多孔質金属M202の内部の孔壁が十分に(たとえば約10〜20nm未満に)薄く保たれ、または多孔質金属M202の組成が(たとえば顆粒境界におけるLiの拡散係数が高い混合金属を用いることによって)調節されれば、そのような構造は金属フッ化物電極に十分に高い速度性能をなお提供することができよう。そのような粒子においては、そのような構造の安定性を維持するために(式1をバランスさせるために必要な金属原子の数に対して)過剰のM202原子を提供することが有利である。換言すれば、多孔質M202の金属原子のいくつかは、式1で表わされる電気化学的反応に寄与するよりは、複合体の機械的安定性を保持するため、およびその電導性を向上させるために作用している。金属原子の過剰量は典型的には約0.1at.%〜約60at.%の範囲である。過剰量が減少すると複合電極のエネルギー密度が増大する。約60at.%を超えると、セルの比エネルギー密度と体積エネルギー密度の両方が望ましくない低レベルにまで減少する。約0.1at.%未満では複合粒子に安定性を提供するには低すぎる。多孔質M202の内部の開放孔は、LiF/Mナノ複合粒子の内部における(たとえば複合体の成分の表面または顆粒境界を通しての)Liの輸送を速くするために用いられる。
種々の種類のLiF/Mナノ複合粒子の内部の別の電導性材料(たとえば別の金属、電導性炭素、電導性ポリマー、電導性酸化物等)の使用は、カソードの性能特性(たとえば安定性、速度等)を向上させるために有利である。
ある用途においては、LiF201がドーパントを含むことがその電導性を向上させるために有利である。
図2Dおよび図2Eに、LiF201/M202ナノ複合体含有電池電極粒子が機能性シェル203によってさらにコートされた例を示す。シェル203の機能は電解質とMとの間、または電解質とLiFとの間の望ましくない反応を防止することであってよい。シェル203の機能は(LiFが電気絶縁性なので)電導性を改良することであってよい。シェル203の機能は、たとえば電荷移動抵抗を低減させ、または安定化、またはその他の好適かつ有用な機能を提供することによって、活物質/電解質界面(または界面相)の特性を改良することであってよい。
図3A〜図3Eに、その性能および安定性をさらに改良し、または複合体の速度性能または安定性を低下させることなしに粒子径を増大させる(それにより、ナノ複合体粉末の取扱いおよび電池電極にキャストすることが容易になる)ために、LiF301/M302ナノ複合体を骨格マトリックス材料305の中にさらに埋め込む(活物質コアを形成させる)例を示す。骨格マトリックス材料305によってサイクリング中のカソードの構造変化が最小化され、その機械的安定性が改良され、電池の作動中の金属クラスター/ナノ粒子の寸法の不可逆的な成長が防止される(または顕著に制限される)。さらに、骨格マトリックス材料によってカソード内で用いられるいずれのポリマーバインダーといずれの電導性添加物との接触も安定化される。骨格マトリックス材料305は電導性であってよい。この場合には、複合粒子の電導性はさらに増大する(そしてその結果、セルの出力性能も向上する)。骨格マトリックス材料305はイオン電導性であってよい。この場合には、複合粒子のイオン電導性はさらに増大する(そしてその結果、セルの出力性能も向上する)。各複合粒子の骨格マトリックス材料305は(活物質と混合された、または共に摩砕されたブロック粒子を構築する個別の骨格マトリックス材料の凝集体と異なり)好ましくは単一のモノリシック粒子であり、したがって骨格マトリックス材料粒子の全ての、または少なくとも実質的に全ての原子は(たとえば共有結合、イオン結合、金属結合、または混合結合によって)化学結合している。各複合粒子の骨格マトリックス材料は、その孔がM302ナノクラスターまたは金属ナノ粒子と混合された活性LiF材料301で満たされた多孔質マトリックス粒子であるとみることができる。
LiF301と金属または合金M302材料とのこの混合は、既に図2A、図2B、および図2Cに述べたものと同様の構造(たとえばM302で満たされた孔を有する多孔質LiF301、LiF301で満たされた孔を有する多孔質M302、相互に貫入した多孔質LiF301および多孔質M302等)を有してよい。これらの複合骨格マトリックス材料粒子中の孔は、製作手順に応じて、および骨格マトリックス材料305のイオン電導性に応じて、相互連通していても閉じていてもよい(骨格マトリックス材料305のイオン電導性があまり高くない場合またはイオン電導性が十分に高くない場合には、開放孔の方が好ましい)。骨格マトリックス材料305の特徴的な平均孔幅(または孔径)は、好ましくは約1nm〜約500nmの範囲である(速度を高くしたい場合には、これはより好ましくは約2nm〜約30nmの範囲である)。骨格マトリックス材料305の孔壁の特徴的な平均厚みは、好ましくは約0.1nm〜約50nmである。骨格マトリックス材料の孔壁の厚みが約0.1nm未満であると、電導性が不十分および/または機械的強度が不十分になる。骨格マトリックス材料の孔壁の厚みが約50nmを超えると、骨格マトリックス材料305の体積分率が望ましくないレベルにまで増大し、カソードの体積容量および重量容量が(所与の用途には)許容できるレベル未満に低下する。ある場合には、骨格マトリックス材料が孔壁の厚みの分布を有し、孔壁のいくつかが厚く(たとえば約1nm〜約50nm)、機械的支持の役割を果たし、一方他の孔壁は薄く(たとえば約0.1nm〜約1nm)、他の機能を果たす(たとえば複合体の電導性を高める、サイクリング中のM302およびLiF301のクラスターの成長を防止するなど)ことが有利である。
図3Eに、LiF301/M302ナノ複合体含有電池電極粒子が機能性シェル303でさらにコートされた例を示す。図3Cに、LiF301/M302ナノ複合体含有電池電極粒子がたとえばコネクター304として示される電導性材料をさらに含む例を示す。
図2A〜図2Eおよび図3A〜図3Eの粒子の形状は示した例のようにほぼ球状、もしくは引き伸ばされた形、平面形状の形態、繊維様の形状、または所与の用途に適した任意の他の形状でよい。しかし、ある場合にはカソード粒子はほぼ球状またはほぼ楕円形状であることが電極の速度性能を向上させるために有利である。これらの粒子を含む電極の速度性能をさらに向上させるために、殆ど全ての(たとえば90%を超える)粒子がほぼ同じ寸法である(たとえば±20%またはそれ未満でも、均一であればあるほど良い)ことが有利である。そのように高い寸法の均一性により、電極内でのコロイド状結晶様構造の形成が可能になり、密に充填された球の内部における整列された孔の形成が得られる。この電極構造は、いわゆる転換型活物質(たとえば上記のフッ化物、ならびにたとえばLi2S、S、Si、Sn等)を含む粒子には特に有利である。それは、これらの材料が典型的にはより大きな割合のバインダーを必要とし、より小さな粒子を含み、実質的な(たとえば5%を超える)体積変化および過剰の電解質の分解の問題を有しており、これらの全てが電極内でのイオン輸送を低下させ、それにより電極の速度性能を低下させるからである。
ある設計においては、上記のフッ化リチウム含有複合体の金属クラスターまたは金属ナノ粒子M202/M302は、セル内においてより有利な電気化学的挙動(数例を挙げればより良い速度性能、小さなヒステリシス、より良いサイクル安定性、より良い低温性能、より良い高温性能、より良い安定性、より容易な生産性等)を示す2種以上の金属原子を含んでもよい。これらの性能の改良の由来は、(i)電池の作動中に繰り返される転換反応の間の金属クラスターの成長を防止する、(ii)複合体中の金属およびLiFのクラスターの寸法を最小化する、(iii)転換反応に低いエネルギー経路を与える、(iv)金属イオンのいくつか(たとえばCu2+イオン)が複合粒子から溶出することを防止する、および(v)副反応を最小化する、個々の金属原子の間の好ましい結合に関連していると考えられ、または他の既知もしくは未知の現象に関連していると思われる。ある場合には、複合体の形成において混合金属を用いることによって、得られる粒子の形態および構造の制御が改良される。ある設計においては、異なった組成の金属クラスターまたは金属ナノ粒子が単一の複合粒子中に存在してもよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はいくつかの金属からなっており、それにより性能が改良される。ある設計においては、金属原子の少なくともいくつかの間の結合は(異なった金属原子の電気陰性度がいくらか異なるため)部分的にイオン性である。ある設計においては、「混合金属」クラスターまたはナノ粒子の金属は室温の平衡条件下では同一の結晶構造(たとえば全面心立方、FCC、または全体心立方、BCC)を示す。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子は金属の固溶体を含んでもよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子は金属間化合物を含んでもよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子は、これらの粒子の中心から周辺へと金属クラスター/ナノ粒子の組成が変化するコアシェル構造を示してもよい。ある設計においては、金属クラスター/ナノ粒子の平均組成は、金属−LiF−骨格マトリックス材料複合粒子の中心から周辺へと変化してもよい。
ある設計においては、M202/302の金属クラスターまたは金属ナノ粒子はCu原子を含んでもよい。ある設計においては、クラスター/ナノ粒子中のCu原子の原子分率は(クラスター/ナノ粒子中の全金属原子の一部として)約10at.%〜約100at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はFe原子を含んでもよい。ある設計においては、Feの平均原子分率は約3at.%〜約100at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はNi原子を含んでもよい。ある設計においては、Niの平均原子分率は約0.05at.%〜約100at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はCo原子を含んでもよい。ある設計においては、Coの平均原子分率は約0.05at.%〜約100at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はTi原子を含んでもよい。ある設計においては、Tiの平均原子分率は約0.01at.%〜約21at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はZn原子を含んでもよい。ある設計においては、Znの平均原子分率は約0.05at.%〜約46at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はBi原子を含んでもよい。ある設計においては、Biの平均原子分率は約0.01at.%〜約100at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はPb原子を含んでもよい。ある設計においては、Pbの平均原子分率は約0.01at.%〜約5at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はSb原子を含んでもよい。ある設計においては、Sbの平均原子分率は約0.01at.%〜約35at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はSn原子を含んでもよい。ある設計においては、Snの平均原子分率は約0.05at.%〜約26at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はCd原子を含んでもよい。ある設計においては、Cdの平均原子分率は約0.01at.%〜約50at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はCr原子を含んでもよい。ある設計においては、Crの平均原子分率は約0.001at.%〜約2at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はZr原子を含んでもよい。ある設計においては、Zrの平均原子分率は約0.1at.%〜約28at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はNb原子を含んでもよい。ある設計においては、Nbの平均原子分率は約0.1at.%〜約40at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はMo原子を含んでもよい。ある設計においては、Moの平均原子分率は約0.01at.%〜約20at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はHf原子を含んでもよい。ある設計においては、Hfの平均原子分率は約0.01at.%〜約41at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はTa原子を含んでもよい。ある設計においては、Taの平均原子分率は約0.01at.%〜約35at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はSi原子を含んでもよい。ある設計においては、Siの平均原子分率は約0.01at.%〜約1at.%の範囲でよい。Siの量がこれより多いとガス状のSiF4が生成し、これが材料の加工中またはセルの作動中に漏れ出すことがある。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はLa原子を含んでもよい。ある設計においては、Laの平均原子分率は約0.01at.%〜約20at.%の範囲でよい。ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子はCe原子を含んでもよい。ある設計においては、Ceの平均原子分率は約0.01at.%〜約20at.%の範囲でよい。
ある設計においては、(図2A〜図2EのM202または図3A〜図3EのM302等の)金属クラスター、金属ナノ粒子または多孔質金属粒子は、化学蒸着(CVD)もしくは原子層堆積(ALD)プロセス等の蒸着ルート、またはある場合には(たとえば高圧の金属蒸気が得られて利用できる場合には)金属蒸気の凝縮によって製造することができる。ある設計においては、金属(または合金)クラスターまたはナノ粒子は、(たとえば加熱によって)分解し、または還元される種々の金属前駆体(たとえば有機金属化合物または金属塩)から製造することができる。
カソード複合体の構築に骨格マトリックス材料305を利用する場合には、金属クラスター/ナノ粒子を骨格マトリックス材料305の孔の中に浸潤させ、または(骨格マトリックス材料粒子等の)骨格マトリックス材料305の表面上に堆積させることができる。浸潤温度は金属粒子の過剰の成長を防止するために十分低くてよい(それらの最小の特徴的寸法は好ましくは50nm以内、より好ましくは5nm以内に留まる)。金属表面上における酸化物の生成を防止することが重要なので、堆積チャンバー内の酸素含有反応性種(O2、CO2、H2O等)の濃度を(堆積中にチャンバー内に入るO原子の全量が好ましくは堆積される金属原子の総数よりも顕著に少なく、好ましくは10at.%またはそれ未満になるように)好ましくは最小に保つ。
ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子は、骨格マトリックス材料基材の上に(たとえば多孔質骨格マトリックス粒子の孔の中に)無電解堆積または電解堆積によって製造され、または堆積される。
ある設計においては、金属クラスター、金属ナノ粒子、または多孔質金属は、溶液のバルクの中における均一な核生成によって、または骨格マトリックス材料の表面上における不均一な核生成によって、湿式合成ルートを経て製造することができる。
ある設計においては、金属クラスターまたは金属ナノ粒子(たとえば図2A〜図2EのM202または図3A〜図3EのM302)は相互連通していてもよい。ある設計においては、これらの相互連通した金属ナノ粒子は金属フォームまたは(たとえば図2Cに示す)多孔質金属粉末の形態であってよい。フォーム壁(または多孔質金属における孔壁)の厚みは約1nm〜約50nmの範囲であってよく、混合されたLiF−金属ナノ複合体系カソードにおいて、より高い電気化学的速度性能を達成するためには壁厚が薄いことが好ましい。ある設計においては、金属フォームまたは多孔質金属粉末は骨格材料を含んでよい。
ある設計においては、LiFクラスター、LiF層、LiFナノ粒子、またはLiF多孔質粒子(図2A〜図2EのLiF201および図3A〜図3EのLiF301)は、化学蒸着(CVD)または原子層堆積(ALD)プロセス等の蒸着ルートを用いることによって製造することができる。ある設計においては、LiFは化学反応の経過中に、またはLiF溶液からの溶媒の蒸発によって溶液から堆積される。ある設計においては、(たとえば溶媒残留物の除去または結合の改良等のために)堆積後のアニーリングを行なってもよい。
(たとえば図3A〜図3Eのように)カソード複合体の構築のために骨格マトリックス材料を用いる場合には、金属を浸潤させる前または後に、LiFを骨格マトリックス材料の孔内に浸潤させ、またはその表面上に堆積させてよい。(たとえば図2Cのように)多孔質金属を用いる場合には、多孔質金属粉末にLiFを浸潤させて混合されたLiF−金属ナノ複合体を形成させる。ある設計においては、LiFとMとの接着を改良するために(または界面の表面積を増大させるために)、Mクラスター/ナノ粒子表面をわずかに酸化してM−OまたはM−H(M=金属または合金/混合物;H=Cl、F、I、もしくはBr等のハロゲン化物)結合を生成させてもよい。
金属(M)およびLiFクラスター/ナノ粒子/多孔質粒子を引き続いて形成させ、または堆積させる代わりに、最初に金属フッ化物(MFx)(ナノ)粒子を形成させ(または骨格マトリックス材料中に堆積または浸潤させ)、次いで(好ましくは無水雰囲気下またはLiFもしくはMとの望ましくない相互作用を誘起する溶媒がない他の雰囲気下で)化学的リチウム化手順の1つを使用することによってLiF/Mナノ複合体に変換してもよい。これらの化学的リチウム化プロセスによってMFxから金属(M)がその金属状態に還元され、同時にLiFが生成する。
図4A〜図4Cに、そのような生成プロセスの例を示す。図4Aによれば、所望の金属フッ化物組成物を含む粒子が最初に製造される(ブロック401A)。これらのMFx含有粒子の寸法は典型的には約1nm〜約50ミクロン(ある設計においては、約50nm〜約10ミクロンであってよい)。ある設計においては、これらの粒子は約25wt.%〜約100wt.%の金属フッ化物を含んでよい。残りは(i)電気化学的に不活性な材料、(ii)電気化学的に活性な材料、(iii)(所望であれば)過剰のLiFまたは過剰のMのための前駆体、または(iv)別の有用な材料(たとえばドーパント、界面活性剤、犠牲的テンプレート材料、または骨格マトリックス材料のための前駆体)であってよい。「電気化学的に活性な材料」は一般に約50mA/g(Li容量)を超えてLiまたは他の金属イオンを電気化学的に受容し放出することができる材料を意味する。カソードにおける容量を大きくするには金属フッ化物の含量が大きいことが好ましい。
引き続いて、反応器の温度制御された雰囲気にMFx組成物を入れる(ブロック402A)。得られるM/LiF複合体における構造的特徴の寸法および形態にはリチウム化の温度が影響するので、温度の制御は有用である。ある温度(および組成)において、MFx粒子のリチウム化の際にMおよびLiFは相互貫入ネットワークを形成する。他の温度(および組成)においては、MFxのリチウム化の間にLiFがその孔を満たした多孔質Mが生成する。さらに他の温度(および組成)においては、Mがその孔を満たした多孔質LiFが生成する。ある条件においては、得られるM/LiF複合粒子は主としてMFx粒子の最初の形状を保持している。このような状況は多くの場合において(たとえば複合体の形態の制御が重要な場合に)好ましい。リチウム化反応の温度が高すぎる場合は、MクラスターまたはLiFクラスターの寸法が望ましくない程度に大きくなり、M/LiF複合体の形態は最初のMFx粒子の形態および寸法から顕著に乖離する。残念ながら、化学的リチウム化は極めて発熱性の高いプロセスであり、化学的リチウム化反応に際して熱が放出される。そのような反応があまりに速く進み、反応器からの熱の回収があまりに遅ければ、反応温度の制御が失われ、所望のM/LiF複合体の形態が得られない可能性がある。第3のステップにはMFx組成物のリチウム化が関与する(ブロック403A)。たとえば後堆積(たとえばCVD、ALD、または溶液からの沈殿および引き続く還元等の湿潤化学ルート)によって、過剰の金属(M)がM/LiF複合体に導入される。あるいは、化学的リチウム化に先立って金属前駆体をMFx粒子に加えてもよい。この場合には、リチウム化手順によって同時に金属前駆体が還元されて、複合体の追加的な金属成分が形成される。過剰のLiFは、たとえば後堆積によって(たとえばCVD、ALD、または湿潤化学ルートによって)M/LiF複合体に導入される。あるいは、複合マトリックス材料のフッ素化によって、化学的リチウム化の間の追加的なLiFの生成のために必要な過剰のフッ素を提供してもよい。化学反応の副生物は合成の後で除去される。
ある設計においては、リチウム化(図4Aのブロック403A)は気体雰囲気下で進行し、ここではリチウム化剤または還元剤は蒸気またはガス分子として送達される。この試みの利点はその正確さおよび制御にあるが、コストが高い、速度が遅い、および利用できる好適なリチウム化剤/還元剤の化学物質が限られる(しばしば高価である)という欠点がある。その他の設計においては、リチウム化(図4Aのブロック403A)は固体相で(粉末を混合することによって)進行する。この試みの欠点には、反応速度や局所温度の均一性を制御することに伴う困難さ、およびその結果として得られる複合体の形態を制御することの困難さが含まれる。さらに、生成したリチウム化複合体の反応性が高すぎて安全に取り扱うことが困難になることが多い。さらに他の設計においては、リチウム化プロセス(図4Aのブロック403A)は溶液中で行なわれる。(たとえば粉末を乾燥状態で混合することによるリチウム化に比べて)この試みの利点は、(たとえば、液体は気体よりも電導性が高いので、リチウム化剤または還元剤、その濃度の選択によって、および反応器の温度によって制御される)反応速度がより正確に制御できることである。ある種のリチウム化剤または還元剤を用いることによってリチウム化をより制御でき、したがって有利である。リチウム化剤または還元剤の好適な例には、これだけに限らないが、以下(i)水素化アルキルホウ素リチウム(水素化トリエチルホウ素リチウム等を含む)、(ii)アルキルリチウム試薬(トリ−sec−ブチルボロヒドリド、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、およびtert−ブチルリチウム等を含む)、(iii)アルキルリチウムマグネセート(トリ−n−ブチルリチウムマグネセートおよびジブチル(イソプロピル)マグネシウム酸リチウム等を含む)、(iv)多環式芳香族炭化水素のラジカルアニオン(リチウムナフタレンラジカルアニオンおよびリチウムアントラセンラジカルアニオン等を含む)、(v)リチウムケトンラジカルアニオン(リチウムベンゾフェノンケチル等を含む)、(vi)水素化アルミニウムリチウム、および(vii)水素化ホウ素リチウムが含まれる。これらのリチウム化/還元剤のいずれも、炭化水素もしくはエーテル系溶媒またはそれらの混合物中の溶液であってよい。ある設計においてはMFxの化学的リチウム化はリチウム化剤と還元剤を個別に用いて行なってもよく、この場合には還元剤が金属イオンMx+を金属状態のM0に変換し、別のリチウム化剤がLi+カチオンを提供してこれがF−アニオンと結合してLiFを生成する。そのような試みも、リチウム化の間の速度および放熱を制御する新たな自由度が加わり、さらに全体としてのプロセスコストの低減が可能になるので有利である。リチウム化剤には任意のLi+含有塩(たとえば炭酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、硝酸リチウム、リン酸リチウム、硫酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメチル)スルホンアミド)が含まれ、還元剤はMx+/Mの還元電位より低い還元電位を有する還元形の任意の化合物(たとえばリチウムの代わりに1族または2族の金属カチオンを含む上記の任意の還元/リチウム化剤、ヒドラジン、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト(II)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)コバルト(II)、SmX2(X=F、Cl、Br、I)、Ni(0)化合物、スズアルキルヒドリド)であってよい。得られた(金属およびLiF成分を含む)複合粒子は、次いで(たとえば濾過、洗浄、および乾燥によって)溶液から分離される(ブロック404A)。
多くのリチウム化/還元剤は空気および湿気との反応性があり、乾燥した不活性な雰囲気下で取り扱う必要がある。理想的にはリチウム化/還元剤は副反応なしに、および容易に除去できる反応副生物を伴って、LiFおよびMFxを産生させる必要がある。副生物は有機溶媒による抽出または低圧もしくは高温での蒸発/昇華によって除去できる。アルキルリチウム試薬は、有機溶媒によって抽出できるか、または低圧もしくは高温での蒸発によって除去できる短鎖炭化水素副生物を産生する。アルキルリチウム試薬の欠点はアルキレート金属塩を産生する(たとえばM(アルキル)xを産生する)ことであり、これはこの場合には望ましくない反応である。(ケチルラジカルアニオンまたは多環芳香族炭化水素ラジカルアニオン等の)有機ラジカルアニオンの副生物は、有機溶媒で抽出できるか、蒸発もしくは昇華によって低圧もしくは高温で除去できる無電荷の有機小分子である。アルキルリチウムマグネセート、アルキルマグネシウム化合物、および炭化水素の副生物は、有機溶媒による抽出で容易に除去できるか、または(たとえば低圧もしくは高温で)蒸発によって除去することができる。水素化トリアルキルホウ素リチウムは水素ガスおよびトリアルキルボランを産生し、これらは蒸発によって容易に除去できるが、トリアルキルボランは自然発火性であるので、この試薬は安全性および取扱いの容易さからはあまり望ましくない。
化学的還元剤との反応は、具体的にはテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、もしくはジオキソラン等のエーテル系溶媒、またはC5〜C9アルキル鎖等の炭化水素溶媒等の有機溶媒中で行なう。O2による酸化または水による酸化もしくは水和を防止するため、反応は不活性雰囲気下で行なう。リチウム化反応の温度は典型的には約−78℃〜約600℃の範囲である(あまりに低い温度では反応速度が過度に制限され、あまりに高い温度では制御困難になる)。反応の圧は約0.05atm〜約50atmの範囲である(典型的には大気圧付近が好適である)。可溶性還元剤の濃度は反応溶媒中で約0.001M〜約10Mの範囲(ある場合にはそれ以上)である。金属カチオンMn+に対するリチウムカチオンLi+のモル比は約0.5n〜約100nの範囲である。反応の副生物および溶媒は濾過、遠心、蒸発、昇華、炭化、それらの組合せ、またはその他の方法によって除去される。
上記のリチウム化法のいくつかは、再充電可能なLiおよびLiイオン電池における使用のための他の転換型電極材料(たとえばS、Si、Sn等)をリチウム化するために有用である。
ある設計においては、引き続く材料加工ステップ(たとえば複合粒子の周囲にシェルを形成させる、複合体から電極を形成させる等)の実施に先立ってその安定性を向上するために、リチウム化された粒子を保護表面層(たとえば炭素または炭化水素)によってコートすることが有利である。ある設計においては、そのような保護コーティングは、リチウム化された複合体(たとえばM−LiFまたはM−LiF−骨格マトリックス材料)を(たとえばほぼ室温〜約700℃の温度範囲で)炭化水素ガスの気流に曝すことによって堆積される。ある設計においては、引き続く材料加工ステップ(たとえば複合粒子の周囲にシェルを形成させる、複合体から電極を形成させる等)の実施に先立ってその望ましくない劣化(たとえば複合体の金属M成分の酸化)を防ぐために、リチウム化された粒子(保護表面層でコートされていてもいなくても)を空気、O2、湿気、またはその他の有害な雰囲気に曝さないことが有利である。
図4Bに、最初にMFx組成物が多孔質骨格マトリックス材料(たとえば多孔質モノリシック骨格マトリックス材料)中に浸潤され(ブロック401B)、次いで任意選択によりMFx骨格マトリックス複合材料が温度制御された反応器の中に入れられ(ブロック402B)、化学的リチウム化が行なわれ(ブロック403B)、得られる骨格マトリックス/M/LiF複合体が副生物から分離される(ブロック404B)点を除き、同様の生成プロセスの例を示す。
2種以上の金属原子をMナノ粒子/ナノクラスターに導入するため、いくつかの(2種以上の)異なった金属フッ化物(たとえばM1Fx1、M2Fx2、M3Fx3、M4Fx4、それらの種々の混合物または固溶体等)をナノ複合体生成に用いてもよい(同時に、または逐次的に導入してもよい等)。この試みの利点には、引き続く加工ステップの間の望ましくない高い反応性ならびにMナノ粒子/ナノクラスターの望ましくない拡散および成長が低減されることが含まれる。別の利点は、電池セルのカソードとして種々の金属原子を含む複合体の電気化学的性能が優れていることである。
図4Cに同様であるがより一般的な生成プロセスの例を示す。ここでは好適なMFx骨格マトリックス複合材料が産生され(ブロック401C)、温度制御された反応器の中に入れられ(ブロック402C)、化学的に(またはある設計においては電気化学的に)リチウム化され(ブロック403C)、副生物から分離される(ブロック404C)。
多くの場合には、所望の組成、形状、寸法、および形態を有する金属フッ化物MFx粒子を制御して生成させることは困難なことがある。さらに、ある種の金属フッ化物組成物を骨格マトリックス材料の孔の中に浸潤させることはさらに困難なことがある。
図5Aに、骨格マトリックス材料の孔内に、または骨格マトリックス材料の表面上に金属フッ化物MFxを浸潤させる好適な方法の例を示す。ここでは可溶性フッ化物前駆体の使用がMFxの生成に関与している。この方法には以下の手順が含まれる。(i)フッ化物前駆体の溶液の調製(ブロック501A)、(ii)(任意選択で)この溶液の骨格マトリックス材料孔内への浸潤、または骨格マトリックス材料表面上への堆積(任意選択のブロック502A)、(iii)引き続く溶媒の蒸発(ブロック503A)(フッ化物の担持量を大きくするため、ステップiiおよびiiiを多数回繰り返してもよい)、および(iv)フッ化物前駆体をフッ化物および除去できる揮発性種に分解するための熱アニーリング(ブロック504A)。
説明的な例として、フルオロケイ酸の塩(たとえばFeSiF6・H2O)の水溶液を骨格マトリックス材料の孔に浸潤させて乾燥し、生成した塩を(たとえば不活性のアルゴン(Ar)ガス中で)アニーリングすることによって金属フッ化物(たとえばフッ化鉄FeF2)に変換してもよい。アニーリングプロセスによってFeSiF6・H2OはFeF2(より一般的にはFeFx)、水蒸気、および揮発性のSiF4(FiF4の沸点=86℃)に分解され、揮発性化合物は除去される。
図5Bに、所望の組成、形状、寸法、および形態を有する金属フッ化物MFx粒子の生成のために用いられる同様の方法を示す。この場合には、所望の組成、形状、寸法、および形態を有する、より制御しやすいフッ化物前駆体粒子が最初に産生され(ブロック501B)、次いで他の種とアニールされまたは反応してMFx粒子(ブロック502B)および副生物に転換される。副生物は(好ましくはガス状で)系から除去される。これらの変換の間に粒子の全体形状を保持するために、合成条件(たとえば温度、圧力、反応種の濃度等)が制御される。
図5Cに、金属フッ化物/骨格マトリックス複合粒子の生成に用いられる別の例示的な方法を示す。この場合には、所望の組成、形状、寸法、および形態を有するフッ化物前駆体粒子が最初に産生され(ブロック501C)、骨格マトリックス材料の前駆体の粒子に埋め込まれる(ブロック502C)。(本明細書で別に述べるように)フッ化物および前駆体材料の両方のために広範囲の前駆体が用いられる。具体的な例としては、フッ化物前駆体粒子として、金属粒子(たとえばCu、Fe等の(ナノ)粒子)または金属塩粒子(たとえばCuCl2、FeCl2等の(ナノ)粒子)が用いられる。骨格マトリックス材料のための前駆体は、炭化可能な有機材料(たとえばポリマー)または有機金属材料または別の好適な材料であってよい。金属フッ化物または骨格マトリックス材料をより好適な材料組成物(たとえばより高い電導性、より高い硬度、より低い反応性等)に改質または転換するために、複合体の(たとえば不活性雰囲気下での)(任意選択の)熱処理(任意選択のブロック503C)が用いられる。次のステップにはフッ素化反応(ブロック504C)およびそれに続く、(たとえば骨格マトリックス材料の過剰のフッ素化が望ましくない場合には)不活性雰囲気下での加熱等による反応副生物または過剰のFの(任意選択の)除去(任意選択のブロック505C)が含まれる。複合粒子の所望の形態を得るために、各ステップにおける合成条件(たとえば温度、圧力、反応種の濃度等)が制御される。
そのような試みの1つの例示的な実施形態においては、金属または合金(ナノ)粒子(たとえばCu、Cu−Fe、Cu−Ni、Cu−Fe−Ni、またはその他の好適な金属粒子で好ましくは10wt.%を超えるCuを含むもの)が合成され、ポリマー材料(または多孔質もしくは緻密な炭素を含む炭素等のその他の好適な骨格マトリックス材料)によってコートされ、金属−ポリマー(または金属−炭素)複合粒子が産生される。ある設計においては、これらの粒子は凝集しており、したがって多数の(ナノ)粒子がポリマー材料中に埋め込まれる。ある設計においては、多数の個別の金属粒子がポリマー材料中に埋め込まれる。ある設計においては、1つの金属組成物の金属粒子(たとえば凝集した粒子)が別の金属組成物によって少なくとも部分的にコートされる(ある設計においては、別の金属組成物はフッ素化反応に対してより抵抗性があり、したがって電気化学的サイクリングの間に電導性を保つ。たとえばCuまたはCu−Fe合金粒子の表面の少なくとも一部をNiでコートすると、これはフッ素化に対する抵抗性がより高く、フッ素中においてCuおよびFeよりも高い発火温度を有する)。ある設計においては、そのような金属コーティングプロセス(たとえば金属塩の還元)は金属(ナノ)粒子の凝集を誘起する。産生された金属−ポリマー(または金属−炭素)複合粒子は(たとえばナノ粒子の焼結を誘起し、またはポリマーを炭化するために)熱処理され、さらに(たとえば個別の複合粒子を分離するために)ボールミルで摩砕される。産生された粉末はフッ素化される。ある設計においては、金属組成物の一部(たとえばフッ素化への抵抗性がより大きい金属成分)は、少なくとも部分的に金属(電導性)状態のままであってよい。次のステップには(たとえば骨格マトリックス材料の過剰のフッ素化が望ましくない場合には)不活性雰囲気下での加熱等による反応副生物または過剰のFの任意選択による除去が含まれる。複合粒子の所望の形態を得るために、各ステップにおける合成条件(たとえば温度、圧力、反応種の濃度等)が制御される。ある設計においては、産生された金属フッ化物骨格マトリックス材料複合体は、引き続く加工ステップの間に、または電気化学的サイクリングの間に、雰囲気との望ましくない相互作用からMFxを保護するために作用する(たとえば炭素を含む)Liイオン透過性シェルでさらにコートしてもよい。
比較的揮発性の高い金属フッ化物(たとえばSbF5、SbF3、BiF5、SnF2、その他)の場合、活物質による骨格マトリックス材料の充填はフッ化物蒸気の毛管凝縮によって行なってよい。毛管作用により、蒸気は最も小さい孔から始まって優先的に骨格マトリックス材料の毛管に凝縮し、それにより蒸気との最も強い相互作用が得られる。
いくつかのMFx材料の生成、浸潤または堆積は(特にHFを含まない、およびF2を含まない雰囲気においては)時には困難なことがある。たとえばCuF2はその反応性および材料が湿気を吸収してCuOを生成する傾向のため、取扱いが困難である(CuF2は極めて吸湿性が高い)。水和したCuF2を含む複合材料を昇温下で処理するとCu(OH)Fおよび/または酸化銅が産生され、フッ化水素酸の蒸気が放出されることがある。
ナノ構造を有するCuF2の処理(生成/堆積)のためのいくつかの好適な方法を以下に開示する。
例として、水和されたCuF2(CuF2・2H2O等)(明青色の粉末)を最初に好適な溶媒(2,2’−ビピリジル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンもしくはトリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミンもしくはピリジン、またはその他の好適な溶媒)に溶解すると一般に青色の溶液が産生される。CuF2/骨格マトリックスナノ複合材料が望まれる場合には、この溶液を骨格マトリックス材料孔内に浸潤させる。小さな(たとえばC)孔の中に液体を導入し、溶媒を蒸発させるために真空を適用してもよい。CuF2の担持量を増大させるためにプロセスを追加的に繰り返してもよい。堆積したCuF2はまだ水和されるので、CuF2を脱水和してもよい。水和したCuF2を脱水和する1つの方法には、不活性ガス(ArまたはHe等)の気流下または約150〜約500℃の範囲の温度で真空下で加熱するステップが含まれる。別の方法には、水和したCuF2を高い(約150℃を超える)蒸発温度を有する溶媒(たとえばイオン液体)中に分散させ、懸濁液を不活性ガス気流下または真空下で熱処理するステップが含まれる。好適なアニーリング/熱処理条件の正確な温度範囲は骨格マトリックス材料の化学組成およびCuF2粒子の寸法による。たとえば、骨格マトリックス材料が電導性炭素等の還元剤から作られている場合には、あまりに高い温度(たとえば約400℃を超える)では材料のCu金属への還元が誘起される。あまりに低い温度では全てのH2O(およびCuF2に強く結合する他の溶媒)の除去が不十分になる。CuF2の生成を助けるため(たとえばCu(OH)Fの生成を避けるため)、その代わりにF2、HF、またはその前駆体(NH4F等)の存在下でアニーリング(加熱)を行なってもよい。
別の例として、無水CuF2を最初に好適な溶媒(無水2,2’−ビピリジル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンもしくは無水トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミンもしくは無水ピリジン、またはその他の好適な無水溶媒)に溶解すると一般に青色の溶液が産生される。CuF2/骨格マトリックスナノ複合材料が望まれる場合には、この溶液を骨格マトリックス材料孔内に浸潤させる。小さな(たとえばC)孔の中に液体を導入し、溶媒を蒸発させるために真空を適用してもよい。CuF2の担持量を増大させるためにプロセスを1回または数回繰り返してもよい。溶媒がCuF2に対して顕著な親和性を有している場合には、不活性ガス(ArまたはHe等)気流下または150〜500℃の範囲の温度で真空下で加熱するステップが用いられる。別の方法には、CuF2またはCuF2/骨格マトリックス材料ナノ複合体(粒子)を高い(約150℃を超える)蒸発温度を有するさらに別の溶媒(たとえばイオン液体)中に分散させ、懸濁液を不活性ガス気流下または真空下で熱処理するステップが含まれる。好適なアニーリング/熱処理条件の正確な温度範囲は骨格マトリックス材料の化学組成およびCuF2粒子の寸法による。いくつかの例においては、その代わりにF2、HF、またはその前駆体(NH4F等)の存在下でアニーリング(加熱)を行なってもよい。
CuSiF6は好適な前駆体の追加的な例である。CuSiF6の非水溶液が最初に産生され、粉末(粒子)として産生されるか、または(MFx/骨格マトリックス材料複合体の場合には)骨格マトリックス材料の孔内に浸潤される。(不活性雰囲気下における)加熱により、CuSiF6は分解してCuF2およびSiF4ガスが産生される。
無水CuSiF6および無水CuSiF6溶液を調製するためにいくつかの方法が利用できる。1つの試みにおいては、CuOを最初にH2SiF6水溶液に溶解する。OとH+が結合して水を生成し、Cu(II)SiF6の水溶液が得られる。この溶液を乾燥することによって水和Cu(II)SiF6が生成する。やや異なった試みにおいては、Cu金属電極を最初にH2SiF6水溶液に浸漬し、次いで電極に電流を流すことにより、正極でCuが酸化されてCu2+イオンが生成し、他極でH+イオンが還元されてH2ガスが生成し、それにより溶液中のH+がCu2+に置換される。特定の電流、および電極を遠く離して電解質容器の底部に正極を配置することによって、O2の発生およびCu2+の還元の代わりにCu2+の生成およびH+の還元が促進される。
いったん水和Cu(II)SiF6が産生されれば、水和された水は制御された条件下で注意深く加熱することによって除去される。CuOの生成を防止し、無水Cu(II)SiF6を産生させるため、最初に溶液から水を除去し(蒸発させ)て水和Cu(II)SiF6結晶を生成させ、次いでさらにH2Oを注意深く除去してもよい。一例においては、これらの水和Cu(II)SiF6結晶を次に好適な無水非水溶媒に溶解してもよい。そのような溶媒の例には、これだけに限らないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、NMP、メタノール、またはその他が含まれる。含水率を低下させるためにかなりの量の溶媒を用いてもよく、または溶液を室温もしくは昇温下で(大気圧下または真空下で、ある場合にはF2またはHFの蒸気の存在下で)繰り返し蒸発させ、無水溶媒をさらに加えて含水率を低下させてもよい。転換(置換)反応または他の機構の使用によって水和Cu(II)SiF6から水を除去してもよい。次いでこの非水塩溶液を用いて骨格マトリックス材料の孔内に含浸させ、またはナノ粒子もしくはナノ複合体を産生させる。別の例においては、混合溶媒中のCu(II)SiF6溶液のアゼオトロピック蒸留によって水を除去することができ、ここで1つの溶媒が水とアゼオトロープを形成する。芳香族炭化水素(トルエン、ベンゼン等)がこの目的のための好適な溶媒の例である。
別の試みにおいては、置換(または二重置換)反応が用いられる。一例においては、無水XSiF6および無水CuY(ここでXおよびYは正電荷および負電荷を有するイオンであり、XおよびYのそれぞれは2価の単一イオンであるか、1価の2つのイオンであってよい)を、XSiF6とCuYの両方が溶解し、CuSiF6またはXYは溶解しない無水溶媒に溶解する。沈殿した無水CuSiF6または非水XSiF6溶液はデカンティングによって回収される。いったん沈殿すれば、CuSiF6は好適な非水溶媒に溶解される。無水CuF2溶液についてもほぼ同様の試みが用いられる。
さらに別の試みにおいては、無水CuSiF6の生成にイオン交換が実施される。一例においては、XSiF6、CuY、およびCuSiF6(XおよびYは上記と同じ意味を有する)を溶解する非水溶媒を最初に用いる。即ち、カチオン交換膜の一方の側の上でXSiF6を溶解し、カチオン交換膜の他方の側の上でCuYを溶解する。Cu2+は膜を通って拡散してXを置換し、Xは膜を通して反対方向に拡散する。膜の一方側の元のCuY溶液が新しいCuY溶液と交換されると共に、この溶液中のCu2+の濃度が低下し、Xの濃度が増大して、膜の反対側では全てのXがCu2+で置換される。
残念なことに、種々の溶媒中において見出されたCuF2およびCuSiF6の溶解度が低いことから上記の方法の速度は遅く、これは望ましくない。本発明者らは、後のフッ素化反応中にCuFに転換されるCuF2前駆体粒子(たとえば他のCu塩、Cu酸化物、Cu炭化物、Cu窒化物、Cu金属等)の中間体生成(または使用)が、ある設計においては有利であることを確認した。金属フッ化物系複合粒子(特にCuF2含有粒子)を産生させるこのようなプロセスは自明なことではなく、発明者らの知識によれば関連するCuF2(またはCu/LiF)含有カソードの合成に用いられたことはない。同様に、他の金属フッ化物ならびに混合金属フッ化物も、このような試みによって利点が得られる。
図6Aおよび図6Bに、所望の寸法および形態を有する金属フッ化物MFx組成物の生成のための別の好適な方法の2つの例を示す。
図6Aに示すように、1つの例示的な方法には以下の手順が含まれる。(i)フッ化物前駆体の溶液の調製(ブロック601A)、(ii)(任意選択で)この溶液の骨格マトリックス材料孔内への浸潤、または骨格マトリックス材料表面上への堆積(任意選択のブロック602A)、(iii)引き続く溶媒の蒸発(ブロック603A)(フッ化物の担持量を大きくするため、ステップiiおよびiiiを多数回繰り返してもよい)、(iv)フッ化物前駆体粒子の金属フッ化物への(たとえばフッ素化による)化学的変換(ブロック604A)、および(v)(任意選択で)反応副生物または過剰のFを系から除去するための熱処理またはその他の手順(たとえば部分的還元)(任意選択のブロック605A)。
図6Bに、同様であるが蒸気相(溶媒なし)からのフッ化物前駆体の導入を含む方法を示す。(i)好適な前駆体材料の選択(ブロック601B)、(ii)(任意選択で)(1)蒸気の浸潤、(2)CVD、もしくは(3)ALDルートを介するこの前駆体の骨格マトリックス材料孔内への浸潤、または骨格マトリックス材料表面上への堆積(任意選択のブロック602B)、(iii)前駆体粒子の金属フッ化物への(たとえばフッ素化による)化学的変換(ブロック603B)、(iv)(任意選択で)反応副生物または過剰のFを系から除去するための熱処理またはその他の手順(任意選択のブロック604B)。ある設計においては、多孔質骨格マトリックス材料粒子を用いてこれらにフッ化物前駆体を浸潤させる代わりに、骨格マトリックス材料前駆体を(フッ素化反応の前または後に)フッ化物前駆体に加えてもよい。骨格マトリックス材料前駆体はフッ素化ステップの間、熱処理(アニーリング)ステップの間、またはフッ素化反応ステップの後の追加的なステップ(たとえば選択的化学的変換)の間に、骨格マトリックス材料に転換してもよい。
金属フッ化物(MFx)前駆体の好適な例には、これだけに限らないが、(i)(混合金属、たとえば合金)を含む金属(M)、(ii)(混合金属酸化物を含む)金属酸化物(MOy)、(iii)(混合金属窒化物を含む)金属窒化物(MNz)、(iv)(混合金属塩を含む)その他の種々の金属塩、(v)(混合および三元炭化物を含む)種々の金属炭化物、および(vi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)の種々の組合せが含まれる。
前駆体塩の好適な例には、これだけに限らないが、数例を挙げれば金属塩化物(MClx)、金属臭化物(MBrx)、金属硝酸塩M(NO3)x、金属フルオロホウ酸塩(M(BF4)x)、金属硫酸塩(M(SO4)x)、金属トリフルオロメタンスルホン酸塩(M(OSO2CF3)x)、金属イソ酪酸塩(M[CO2CH(CH3)2]x)、金属酢酸塩(M(O2CCH3)x)、または金属アセチルアセトン酸塩が含まれる。既に述べたように、これらの前駆体金属、酸化物、窒化物、炭化物、および塩における金属の例には、Cu、Fe、Ni、Co、Ti、Zn、Bi、Pb、Sb、Sn、Cd、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Si、La、Ceおよびそれらの混合物が含まれる。ある設計においては、複合カソード粒子においてCuF2およびFeF3の高い分率を得るためにはCuおよびFeの分率を高くすることが有利であり、それにより高エネルギー密度のセルが得られる。前駆体塩はホモレプティックであってもヘテロレプティックであってもよい。
図6Aの方法において説明したように、上記(またはその他の)前駆体塩の溶液を骨格マトリックス材料の孔内に浸潤させ、次いで溶媒を蒸発させてもよい。浸潤させる溶液は単一の前駆体塩または異なった金属またはリガンドを含む2種以上の塩の混合物を含んでよい。溶媒の蒸発は、蒸発速度を制御するために周囲の、低くした、もしくは高くした圧力または温度で、気流下にもしくは静的に行なうことができる。次いでマトリックス材料の孔内に残留した塩は化学反応(フッ素化)によってMFxに転換される。骨格マトリックス材料中の金属フッ化物の担持量を増大させるために、前駆体塩の浸潤およびこれに続く金属フッ化物への転換のプロセスを数回繰り返してもよい。このプロセスの繰り返しのそれぞれにおいて同じまたは異なった前駆体塩または前駆体塩の混合物を用いてよい。骨格マトリックス材料の孔の外におけるMFxの生成を防止する一方で、多孔質骨格マトリックス材料を用い、高い分率のMFx充填孔が望ましい場合(複合カソード材料の比容量または体積容量を増大させるため)には、この繰り返しが特に有利である。骨格マトリックス材料の孔の外におけるMFxの生成はセルの安定性および性能を低下させ、したがって望ましくない。
フッ素化試薬は溶液系(たとえば、いくつかの例を挙げればテトラブチルアンモニウムフルオリドまたはテトラメチルアンモニウムフルオリドの非水溶液を用いる)または気相(たとえば、いくつかの例を挙げればフッ素(F2)またはフッ化窒素(NF3)等のフッ素化剤を用いる)であってよい。
浸潤した塩をガスで効果的にフッ素化するための好適な反応種を発生させるためにいくつかの方法が用いられる。たとえば、NF3ガスを(たとえば約200℃を超えて)加熱してFおよびNF2ラジカルに分解する。これらのラジカルは前駆体塩を金属フッ化物に変換する。たとえば金属塩化物(たとえばFeCl2もしくはCuCl2またはそれらの混合物)を金属フッ化物(たとえば、それぞれFeF2もしくはCuF2またはそれらの混合物)に変換する。
NF3ガスの分解によるフッ素化または他のフッ素化ガスを用いるフッ素化は、静的な反応容器内(フッ素化ガス流なし)またはフッ素化(たとえばNF3)ガスの連続流を有する反応容器内で実施することができる。
ある設計においては、フッ素化の均一性を向上させるために、フッ素化反応中に粒子を撹拌してもよい。ある設計においては、粉末を撹拌する目的で回転式反応器(たとえば回転キルン反応器)を用いてもよい。他のある設計においては、粉末の撹拌のためにミキサーを用いてもよい。ある設計においては、粉末の撹拌のために反応器を振動させてもよい。ある設計においては、粉末の撹拌のために(たとえば流動床反応器のように)気流を用いてもよい。
フッ素化にはNF3の代わりに他のガス(たとえばClF3、SF6、およびF2ガス)を用いてもよい。F2を用いることの代替法は、(F2の安全性の問題を最小化するために)無水フッ化水素(HF)の電気分解またはRFもしくはマイクロ波プラズマ源を用いてNF3、ClF3、もしくはSF6等のフッ素含有ガスを分解すること等によって、フッ素またはフッ素ラジカルを系内で発生させることである。プラズマ補助フッ素化を用いることは、それが高効率、高速度、および低温であることから特に魅力的である。
RF遠隔プラズマ源によるNF3の分解を介する(多孔質骨格マトリックス材料に浸潤した塩を含む)前駆体塩組成物のフッ素化は、広範囲の温度にわたって(たとえば室温未満から200℃を超えて)用いることができる高効率のフッ素化法であることが見出された。
図7に、プラズマ補助フッ素化反応の好適な実験装置の例を示す。遠隔プラズマ源704によって発生したフッ素は安定で、任意選択のヒーター(たとえばチューブ炉)706の内部にある反応容器707にパイプ705で容易に送ることができる。非反応性キャリアガス(N2、Ar、またはHe等)702とフッ素含有ガス701の混合物を制御し、それらの濃度および流量を制御することによって、反応容器内のフッ素およびフッ素ラジカルの濃度を変化させることができる。これらの非反応性および反応性ガスは、別のコンパートメント703の中で混合される。フッ素含有ガスの量は全気流に対して0%〜100%の範囲に変化させてよい。フッ素含有ガスとキャリアガスの混合物703の圧力および流量はプラズマ源の構成により、(流量の場合には)反応器の大きさによるが、圧力は典型的には0.07〜7kPa(約0.5〜50Torr)の範囲である。RFプラズマ源の出力は反応器の寸法により、0.1kW未満〜10,000kWを超える範囲である(小さな実験用反応器では出力は典型的には10kW未満であるが、大きな工業用設備ではこれより顕著に大きい)。未反応のフッ素およびフッ素生成物が存在すれば、その除去は別のコンパートメント(たとえばスクラバー708)で行なってよい。ある設計においては、産生された複合体から過剰のF(たとえば骨格マトリックス材料に結合したF)またはその他の副生物を除去するために(複合粒子の化学組成およびフッ素化反応条件によるが約40℃〜約700℃の温度範囲で)フッ素化後のアニーリングを行なってよい。ある設計においては、フッ素化粒子の安定性を向上させるために、フッ素化粒子を保護表面層(たとえば炭素または炭化水素)でコートすることが有利である。ある設計においては、そのような保護コーティングは、複合体を(たとえば、ほぼ室温〜約700℃の温度範囲で)炭化水素の気流に曝すことによって堆積される。ある設計においては、そのようなコーティングは、同じ「フッ素化」反応器内で堆積させてよい。ある設計においては、産生された複合粒子が追加ステップの完了に先立って空気または湿気に曝されないのであれば、産生された複合体(たとえばM−LiFまたはM−LiF−骨格マトリックス材料)粒子に対して引き続く加工ステップ(たとえばリチウム化、シェルの形成等)を行なうことが有利である。
多くの設計においては、フッ素化反応またはリチウム化反応の間に前駆体の全体の形状を保持することが極めて有利である。前駆体が骨格マトリックス材料の孔内に浸潤するならば、フッ素化されたまたはリチウム化された粒子がそのような孔の中に留まることが特に有利である。それは、孔の中に留まることによって、金属フッ化物系電池電極の性能(速度、安定性等)が向上するからである。残念ながら、フッ素化、リチウム化、またはその他の化学的もしくは物理的加工ステップによって、金属フッ化物またはその前駆体の多孔質マトリックス材料の内部からの拡散が引き起こされることがある(おそらくナノ粒子の表面積を最小化するため。そのような望ましくない物質輸送のためのエネルギーは、反応容器に供給される熱によって与えられるか、または発熱性化学反応の間に発生する。転換プロセスが溶液中で起こる場合には、そのような転換反応に関与する少なくとも1つの中間種は、粒子の外表面上への沈殿に先立って孔から移動するために十分高い溶解度を有するであろう)。プロセスは、金属フッ化物またはその前駆体のマトリックス材料の内部からの拡散を防止するための手段を含んでもよい。そのようなプロセスの例には、昇温下における移動度を低下させるための、浸潤した前駆体塩のより高い融点を有する別の前駆体への転換がある。具体的には、マトリックス材料に金属硝酸塩を浸潤させ、次いでO2の存在下で加熱して、金属硝酸塩を少なくとも部分的に金属酸化物に転換する。このプロセスは、骨格マトリックス材料中の金属酸化物の担持量を増大させるために、引き続くフッ素化の前に1回または複数回繰り返して行なってもよい。別の例には複数の金属塩を一緒に共浸潤することが含まれる。そのような変換反応の間に前駆体混合物の性能および安定性の改良が観察されたことは、フッ素化(またはリチウム化)反応または移動度を低下させる(および骨格材料孔からの外部への拡散の低下をもたらす)その他のプロセスの熱力学または速度論の変化に関連していると仮定される。
図8に、フッ素化に先立つCuCl2およびFeCl3の多孔質ミクロンスケール球状骨格マトリックス粒子への共浸潤の効果の例を示す。走査電子顕微鏡(SEM)画像の比較によって示されるように、多孔質骨格マトリックス粒子に浸潤させるフッ化物前駆体としての純CuCl2の使用によって(フッ素源としてNF3を用いるフッ素化反応の後で)骨格粒子の外表面にCuF2ナノ粒子が大量に結合する一方、CuCl2フッ化物前駆体へのFeCl3の(Cu:Fe重量比9:1、5:1、および3:1に対応する)添加によって、同一のフッ素化条件下で孔から外表面への(ナノ)粒子の移動が顕著に低減した。
MFx、M、またはLiFが電解質と直接接触すると、望ましくない多くの副反応が起こる可能性がある。そのような反応はCuF等のMFxのいくつかで特に速い。たとえば、Cu金属が電解質に曝されると、CuはLi/Li+に対して3.56VおよびLi/Li+に対して3.38VでそれぞれCu1+種およびCu2+種として酸化され、溶解する(引用したのは溶液中の1M Cu+またはCu2+の標準酸化電位である)。残念ながら、Cuのこれらの酸化電位はLiFおよびCu金属のCuF2への転換反応の酸化還元電位であるLi/Li+に対する3.55Vに極めて近い。したがって、Cu金属の溶解を防止するステップを行なわなければ、所望の酸化還元反応に並行してCu+およびCu2+の生成が起こる。溶液中におけるCu+およびCu2+の生成は電極におけるCuの損失を引き起こすと共に、[Cu(I)F4]3−または[Cu(II)F6]4−種の生成を通してLiFの溶解をも助長し、アノードにおいてSEIの損傷を起こす。その他のMFxも同様の限界を有する。LiF/MまたはLiF/M/骨格マトリックス材料ナノ複合体(粒子)の周囲にLi透過性のシェルを形成させることによってこれらの問題を克服し、活物質の溶解を防止することができる。
図9A〜図9Fに、LiF、M、またはMFx含有複合体における好適なシェルの例を示す。
図9Aに、電解質溶媒分子を実質的に透過しない材料から形成された保護層902を含んでもよいシェル901を示す。シェルは活物質の金属クラスターまたはナノ粒子の金属のイオンを実質的に透過しない材料から形成された保護層902を含んでよい。シェル901の厚みは約1nm〜約10ミクロンの範囲でよい(ある設計においては、シェルの厚みは好ましくは約1nm〜約100nmの範囲でよい)。最大のエネルギー密度が望ましいいくつかの用途においては、シェルの厚みは好ましくは複合粒子の半径の約0.05%〜約20%を含んでよい。
シェルは、たとえば炭素を含んでよい。シェルはほぼ(sp2結合した)グラファイト炭素のみから作られてよく、またはグラファイト(電導性)炭素からなる外側層を有してもよい。シェルは活性(たとえばLi収蔵性)材料層を含んでよく、ここで活性材料層は粒子のコアとは異なる活性材料から形成される。シェルはインターカレーション型の活性材料を含んでよく、ここでたとえばセルのカソード作動の電位範囲におけるインターカレーション材料の利用できるLi容量は約0.1mAh/g〜約300mAh/gの範囲でよい(ここで低い容量はカソードの作動の電位と異なる電位におけるLiのインターカレーションに起因する)。好適なリチウムインターカレーション型材料の例には、これだけに限らないが、層状、スピネル、かんらん石、またはタボライト結晶構造を有する種々の材料(酸化リチウムコバルト、種々のリチウムマンガン酸化物、種々のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、種々のリチウムコバルトアルミニウム酸化物、種々のリチウムリン酸塩等の種々のリチウムポリアニオン化合物、種々のリチウムケイ酸塩、たとえば結晶構造中にFを含むものを含む大きな(XO4、ここでXはP、Si、As、Mo、W、S、その他であってよい)アニオンを含むその他の種々のリチウム化合物等)が含まれる。シェルは、コアシェルカソード作動の電位範囲において安定な、リチウムを含まないインターカレーション型材料を含んでもよい。リチウムを含まないインターカレーション型材料の好適な例には、これだけに限らないが、いくつかの例を挙げれば種々の酸化物、窒化物、および硫化物が含まれる。活物質層の活物質は、活性フッ化物材料に比べて実質的に低い容量を有してよい。
図9Bに別の例を示す。ここでシェル901は骨格マトリックス材料よりも小さな平均孔径を有する多孔質層903を含んでよい。シェル901の多孔質層903における孔904は、フッ化リチウムを含む金属フッ化物905で少なくとも部分的に浸潤されてよい。別の例においては、シェルの多孔質層における孔はインターカレーション型活物質906で少なくとも部分的に満たされてよい。別の例においては、シェルの多孔質層における孔はカソード作動の電位範囲内で転換反応を受けない材料で少なくとも部分的に満たされてよい。
図9Cに別の例を示す。ここでシェル901は内側層907および外側層908を含む複合材料であってよい。内側層はたとえば骨格マトリックス材料よりも小さな平均孔径を有する多孔質層であってよく、外側層はたとえば(i)電解質溶媒分子を実質的に透過しない材料から形成された保護層、または(ii)複合粒子の全体における活物質(特定の金属クラスターまたは金属ナノ粒子と混合されたフッ化リチウム材料等)とは異なる活物質から形成された活物質層であってよい。
図9Dに別の例を示す。ここでシェル901は、複合材料の各材料がフッ化リチウムまたは(存在する場合には)骨格マトリックス材料と接触するように相互貫入した構造に配置された2種以上の材料(たとえば材料909および材料910)を含む複合材料であってよい。
図9Eに別の例を示す。ここで多層シェル901の少なくとも最上層911は電導性炭素を含んでよい。
図9Fにさらに別の例を示す。ここでシェル901は複合粒子の表面から中心に向けて徐々に変化する組成を有してよい。
ある設計においては、各複合粒子は、骨格マトリックス材料の外表面から骨格マトリックス材料の中心に向けて延在し、骨格マトリックス材料内に配置された活物質へのイオンの拡散のためのチャネルを提供する外部チャネル細孔をさらに含んでよい。外部チャネル細孔の少なくともある部分は、(i)骨格マトリックス材料とは異なるミクロ構造を有する多孔質材料,(ii)複合カソードの作動の電位範囲において転換反応を受けない活物質、および/または(iii)固体電解質材料で満たされてよい。外部チャネル細孔の表面は、(i)電導性材料、(ii)複合カソードの作動の電位範囲において転換反応を受けない活物質、および/または(iii)固体電解質材料の薄い(約0.3nm〜約50nm)層でコートされてよい。
ある設計においては、シェルはCVDまたはALD等のガス堆積法の1つの使用によって(少なくとも部分的に)堆積させてよい。ある設計においては、シェルの形成には多数のステップが関わり、最初にシェル前駆体が溶液中で適合した方法で堆積され、次いで熱分解および/または化学反応によってシェル材料に(少なくとも部分的に)変換される。ある設計においては、個々の粒子の周囲に共形の本質的に欠陥のないシェルを産生させるために多数の試みが組み合わされる。ある設計においては、シェルは(たとえばM/LiFまたはM/LiF/骨格マトリックス材料−複合粒子を含む電極を組み立てた後で)電気化学的に堆積させてよい。ある設計においては、シェルは、対応するMFxまたはMFx/骨格マトリックス材料複合体の化学的または電気化学的リチウム化によって産生された、M/LiFまたはM/LiF/骨格マトリックス材料複合体を含む電極の上に堆積させてよい。
ある設計においては、M/LiFまたはM/LiF/骨格マトリックス材料(ナノ)複合粒子は、セルにおける安定性または性能を改良するために、階層構造を示してもよい。
ある設計においては、M/LiFまたはM/LiF/骨格マトリックス材料(ナノ)複合粒子は、セルにおける安定性または性能を改良するために、徐々に変化する組成を示してもよい。いくつかの例においては、骨格マトリックス材料の体積分率は(ナノ)複合粒子の表面付近で増大(実質的にたとえば10%〜500%)してよく、(ナノ)複合粒子の中心で減少(実質的にたとえば10%〜500%)してよい。いくつかの例においては、骨格マトリックス材料の孔径は(ナノ)複合粒子の表面付近で減少し、または(ナノ)複合粒子の中心で増大してよい。いくつかの例においては、1つの大きな中心空隙が骨格マトリックス材料に存在してよい。そのような空隙はM/LiF複合体で部分的に(または完全に)満たされてよい。
ある設計においては、より高い速度性能を必要とする用途等では、M/LiFまたはM/LiF/骨格マトリックス材料複合体中に(LiFおよび対応するMFx生成に対して)過剰のM原子の存在が有利である。この過剰のM原子は電導性を増大させ、MFxのリチウム化の間の不均一核生成およびMの成長のためのサイトとしても作用し、それにより核生成の障壁を低減し、それに対応して電圧ヒステリシスを低減し、速度性能を改良する。ある設計においては、この過剰のM原子は、「過剰の」Mがフッ素化される傾向がないように、Fへの結合が弱い(電気化学反応において用いられるMの大多数に対して電気的により陽性である)金属から選択される。
ある設計においては、(たとえば(たとえば遷移)金属フッ化物のリチウム化の間にLiFの不均一核生成のためのサイトとして作用することによって)速度性能を改良するためにの「ドーパント」として、選択された金属フッ化物(MgF2およびNaF等)をLiFに添加してよい。1つの例示的な例においては、性能の改良のために(LiFに対して)約3%までのMgF2を添加してよい。別の例示的な例においては、LiFに対して約0.1%までのNaFを添加してよい。
図10は、電池電極における使用のためのM/LiF含有材料を製作する例示的な方法を示すフローチャートである。この例においては、製作方法には(i)金属フッ化物材料を支持骨格マトリックス材料(または骨格マトリックス材料前駆体)の中に埋め込み、それにより複合金属フッ化物−骨格マトリックス材料を形成させるステップ(ブロック1001)、(ii)複合体をリチウム化して骨格マトリックス材料の孔内で特定の金属クラスターまたは金属ナノ粒子と混合されたLiF材料を産生させるステップ(ブロック1002)、(iii)(任意選択で)産生された複合体を約100℃を超え約700℃未満の温度でアニールするステップ(任意選択のブロック1003)、および(iv)LiF/M/骨格マトリックス材料複合体を少なくとも部分的に包み込む保護シェルを堆積させるステップ(ブロック1004)が含まれる。
図11は、電池電極における使用のためのM/LiF含有材料を製作する別の例示的な方法を説明するフローチャートである。この例においては、製作方法には(i)多孔質支持骨格マトリックス材料(または骨格マトリックス材料前駆体)の孔中に第1の前駆体(たとえば金属塩または塩の混合物もしくは固溶体または純金属)材料を(たとえば蒸気から、溶液から、またはCVDもしくはALD反応によって)埋め込み、それにより第1の前駆体−骨格マトリックス材料を形成させるステップ(ブロック1101)、(ii)(任意選択で)第1の前駆体をフッ素化の間により好ましい特性(たとえば低減された移動度、低減された生成熱、またはより速い/より完全なフッ素化等)を示す第2の前駆体(たとえば金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、別の金属塩等)に転換するステップ(任意選択のステップ1102)、(iii)(たとえばプラズマ補助フッ素化装置を用いる、または他のフッ素化法による)金属フッ化物(MFx)(またはフッ化物混合物)の生成によって前駆体をフッ素化するステップ(ブロック1103)、(iv)(任意選択で)保護表面層を形成させるステップ(任意選択のブロック1104)、(v)(任意選択で)熱処理または他の後加工によって過剰のF(たとえばマトリックス材料が望ましくない部分的フッ素化を受けた場合)またはその他の副生物を除去するステップ(任意選択のブロック1105)、(vi)複合体の化学的リチウム化によって(たとえば水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ−sec−ブチルホウ素リチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、トリ−n−ブチルリチウムマグネセート、ジブチル(イソプロピル)マグネシウム酸リチウム、リチウムナフタリド、リチウムベンゾフェノンケチル、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウムを用いて、または他の方法で)骨格マトリックス材料の孔内で特定の金属クラスターまたは金属ナノ粒子と混合されたLiF材料を産生させる(およびある設計においては骨格マトリックス材料の組成を修飾する)ステップ(ブロック1106)、(vii)(任意選択で)産生された複合体を(たとえば不活性雰囲気で)約100℃を超え約700℃未満の温度で熱処理する(アニールする)ステップ(任意選択のブロック1107)、および(viii)LiF/M/骨格マトリックス材料複合体を少なくとも部分的に包み込む保護シェルを(CVD反応またはその他の好適な方法によって)堆積させるステップ(ブロック1108)が含まれる。
図12は、電池電極における使用のためのM/LiF含有複合体を製作する別の例示的な方法を説明するフローチャートである。この例においては、製作方法には(i)(たとえば多孔質粒子の形態の)多孔質骨格マトリックス材料中に金属クラスターまたは金属ナノ粒子を浸潤させるステップ(ブロック1201)、(ii)得られた骨格マトリックス材料/金属ナノ複合体にLiFを浸潤させるステップ(ブロック1202)、(iii)(任意選択で)産生された複合体を約100℃を超え約700℃未満の温度でアニールするステップ(任意選択のブロック1203)、および(iv)LiF−M−骨格マトリックス材料複合体を少なくとも部分的に包み込む保護シェルを堆積させるステップ(ブロック1204)が含まれる。
図13は、電池電極における使用のためのM/LiF含有複合体を製作する別の例示的な方法を説明するフローチャートである。この例においては、製作方法には(i)金属フッ化物材料をリチウム化して金属クラスターまたは金属ナノ粒子と混合されたLiF材料を産生させるステップ(ブロック1301)であって、金属フッ化物材料が個々の粒子の形態であっても、または粒子の凝集体の形態であってもよく、異なった金属フッ化物を含んでもよいステップ、(ii)(任意選択で)産生された複合体を約100℃を超え約700℃未満の温度でアニールするステップ(任意選択のブロック1302)、および(iii)LiF/M/骨格マトリックス材料複合体を少なくとも部分的に包み込む保護シェルを堆積させるステップ(ブロック1303)が含まれる。
図14A〜図14Bに、M/LiF含有複合電極を製作する例示的な方法を説明するフローチャートを示す。この例においては、製作方法には以下の(i)(たとえば溶液から、またはフッ素化によって前駆体ナノ粒子を金属フッ化物に転換することによって)金属フッ化物からなるナノ粒子(直径1ミクロン未満の粒子)を沈殿させまたは形成させるステップ(ブロック1401)、(ii)これらの金属フッ化物ナノ粒子を溶液中または蒸気相で骨格マトリックス材料前駆体層によってコートするステップ(ブロック1402)、(iii)(任意選択で)骨格マトリックス材料前駆体の中に埋め込まれたフッ化物ナノ粒子からなる凝集体を形成させるステップ(任意選択のブロック1403)(このブロックはブロック1402と同時に行なってもよいことが認識されよう)、(iv)(任意選択で)(たとえば遠心、濾過、および/または蒸発により)系から溶媒を除去または置き換えるステップ(任意選択のブロック1404)、(v)複合粒子を化学的にリチウム化して、特定の金属クラスターまたは金属ナノ粒子と混合され、骨格マトリックス材料前駆体に埋め込まれたLiF材料を産生させるステップ(ブロック1405)、(vi)(任意選択で)(たとえば遠心、濾過、および/または蒸発により)系から溶媒を除去するステップ(任意選択のブロック1406)、(vii)(任意選択で)複合体を昇温下(たとえば約70〜約700℃)でアニールするステップ(任意選択のブロック1407)、(viii)個々の粒子の周囲に保護表面シェル層を堆積させるステップ(ブロック1408)、(ix)産生されたコアシェル複合粒子とバインダー溶液とを含むスラリーを産生させるステップ(ブロック1409)、および(x)産生されたスラリーから金属箔電流コレクターの上に電極をキャストし、これを乾燥し、それにより電池電極を産生させるステップ(ブロック1410)が含まれる。
図15A〜図15Bに、M/LiF含有複合電極を製作する別の例示的な方法を説明するフローチャートを示す。この例においては、製作方法には以下の(i)好適な組成の多孔質骨格マトリックス材料の球状粒子を形成させるステップ(ブロック1501)、(ii)これらの多孔質粒子の孔内に第1の好適な前駆体(たとえば金属塩またはその他)を浸潤させるステップ(ブロック1502)、(iii)(任意選択で)第2の前駆体を主として骨格マトリックス材料の孔内に閉じ込めたままにするように第1の好適な前駆体をより好ましい特性を有する第2の好適な前駆体に(たとえば熱処理、酸化、還元またはその他の方法によって)転換するステップ(任意選択のブロック1503)、(iv)複合体をフッ素化し、それにより主として骨格マトリックス材料の孔内に閉じ込められた金属フッ化物を産生させるステップ(ブロック1504)、(v)(任意選択で)(たとえば熱処理または他の方法で)系からフッ素化反応の副生物または過剰のFを除去するステップ(任意選択のブロック1505)、(vi)産生された複合体を好適な条件下で好適な方法によってリチウム化して、骨格マトリックス材料の孔内に閉じ込められたLiFと金属の混合物を産生させるステップ(ブロック1506)、(vii)(任意選択で)(たとえば熱処理または他の方法で)リチウム化反応の副生物を除去するステップ(任意選択のブロック1507)、(viii)LiFおよび金属を骨格マトリックス材料の孔内に保持するように複合球状粒子の周囲に好適な方法によって好適な組成の共形の保護シェルを堆積させるステップ(ブロック1508)、(ix)(任意選択で)シェルの一体性を損なわず、かつ金属およびLiFの組成を変化させないように保護シェルの外表面の少なくとも一部(たとえば0.01〜100%)を官能基で官能化するステップ(任意選択のブロック1509)、(x)(任意選択で)産生された球状コアシェル粒子の外表面に電導性(たとえば炭素)添加物(たとえば炭素ナノチューブ、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、グラファイトフレーク等)を化学結合させるステップ(任意選択のブロック1510)、(xi)バインダーおよび産生された複合粒子を含むスラリーを産生させ、これを電流コレクター箔(たとえばAl箔)の上にキャストし、乾燥し、任意選択でカレンダリング(緻密化)するステップ(ブロック1511)が含まれる。
ある設計においては、骨格マトリックス材料は20〜100at.%の炭素を含んでよい。ある設計においては、骨格マトリックス材料を形成させるステップには、たとえば炭素含有前駆体を形成し、(任意選択で)炭素含有前駆体を酸化および炭化して炭化粒子を形成し、炭化粒子を昇温下で活性化して50vol.%より大きな孔容積を有する骨格マトリックス材料を形成させるステップが含まれる。
ある設計においては、シェルの少なくとも外側の部分は1つまたは複数の初期電池サイクルの間に電気化学的に堆積されてよく、その間に少なくともいくつかの電解質成分の電気化学的分解が起こる。
ある設計においては、保護層または保護シェル(またはコーティング)は、蒸気相から蒸着法によって堆積させてよい。そのような方法の例には、これだけに限らないが、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、プラズマ強化ALD、プラズマ強化CVD、蒸気浸潤、その他が含まれる。ある設計のためには、保護層または保護シェル材料は溶液から堆積させてよい。好適な方法の例には、ゾルゲル、レイヤーバイレイヤー堆積、ポリマー吸着、表面開始重合、ナノ粒子吸着、噴霧乾燥、その他が含まれる。
ある設計においては、保護層または保護シェル(コーティング)は炭素を含んでよい。ある設計においては、コーティング中の炭素含量は約10wt.%〜約100wt.%の範囲でよい。
本明細書に記載した種類の骨格マトリックスにおける使用には、これだけに限らないが、金属および半金属、ポリマー(カソードの作動電位範囲内で電導性であるポリマーを含む)、酸化物、炭化物(三元およびその他の混合炭化物を含む)、酸化炭化物(部分的にフッ素化されたものを含む)、酸化フッ化物、種々のインターカレーション型カソード材料、金属窒化物、炭素(炭素フッ化物等の部分的または完全にフッ素化されたものを含む)、炭素酸化フッ化物、その他の、いくつかの材料組成物が好適である。ある設計においては、骨格マトリックス材料が個々のモノリシックな(単体の)粒子の形態であることが有利である。ある設計においては、骨格マトリックス材料は約0.05at.%〜約50at.%のフッ素(F)を含んでよい。ある設計においては(たとえば化学的リチウム化を用いる場合)、このFの少なくとも一部は複合体カソード合成のリチウム化ステップの間にLiFに転換されてよい。ある設計においては、(たとえばカソードのエネルギー密度を最大化するために)個々の「骨格マトリックス材料−フッ化リチウム−金属複合体」粒子中の骨格マトリックス材料の体積分率は35〜40vol.%を超えないこと、より好ましくは25〜30vol.%を超えないこと、さらにより好ましくは15〜20vol.%を超えないことがさらに有利である。しかし骨格マトリックス材料の体積分率があまりに小さく(たとえば約3〜5vol.%未満に)なると、骨格マトリックス材料の機能性が典型的には望ましくない程度にまで低下する。ある設計においては、骨格マトリックス材料粒子が約20nm〜約20ミクロンの範囲の特徴的寸法を示すことがさらに有利である。大きな粒子はスラリー調製の間の取扱いが容易であるが、あまりに大きな粒子は(粒子の寸法はセルの化学反応および作動条件によるが、典型的には約20ミクロン未満である)速度性能を(所与の用途に対する)最小値未満に低下させることがある。ある設計においては、多孔質骨格マトリックス粒子を用いる場合には、骨格マトリックス材料孔(これはLiFと金属の混合物、金属フッ化物、その他の活物質で完全にまたは部分的に満たされてよい)の大部分(たとえば約70vol.%を超える)の特徴的寸法は、好ましくは約1nm〜約100nmの範囲であってよい。ある設計においては、多孔質骨格マトリックス粒子を用いる場合には、その粒子内の孔容積は好ましくは約60vol.%〜約95vol.%の範囲であってよい。ある設計においては、骨格マトリックス材料内の孔の少なくともいくつかは犠牲的テンプレート材料(たとえば犠牲的ポリマー、犠牲的金属、または犠牲的塩粒子)を用いて産生させてよい。骨格マトリックス材料内の孔は直線状でも曲線状でもよく、種々の形状(たとえばほぼスリット形状、円筒形状、球状、または不規則な曲線形状の細孔を含む他のいくつかの形状)であってよい孔が伸長したまたはスリット状の形状であれば、これらの孔の配向は骨格粒子の調製に依存し、単一粒子の内部で変化し得る。たとえば、粒子の中心においては孔はランダムにまたは半径に沿って配向し、表面に近ければ孔は粒子の表面に平行に配向し得る。この場合には優れた機械的特性が得られ、ある場合には保護コーティングまたはシェルの形成が単純になり、それにより金属または金属フッ化物は不可逆的な変化および電解質との望ましくない相互作用に対して安定化される。ある設計においては、多孔質骨格マトリックス材料粒子は粒子表面の近くで小さな孔を有する。この場合には優れた機械的特性が得られ、ある場合には保護コーティングまたはシェルの形成が単純になる。ある設計においては、多孔質骨格マトリックス材料粒子は粒子表面の近くで小さな孔容積を示す。この場合には優れた機械的特性が得られ、ある場合には保護コーティングまたはシェルの形成が単純になる。ある設計においては、多孔質骨格マトリックス材料の孔内に浸潤した金属フッ化物が化学的リチウム化を受ける際に、骨格マトリックス材料は複合粒子の機械的一体性に実質的な変化を生じずに不可逆的に変形することがある。ある設計においては(たとえば金属フッ化物または金属およびLiFの混合物が多孔質骨格マトリックス材料の孔内に浸潤する場合)、これらの複合体の電気化学的サイクリングの繰り返しの際の体積変化は、主として可逆的な弾性変形によって(たとえば5回のサイクル後の50%を超える弾性変形によって、および50回のサイクル後の90%を超える弾性変形によって)適合され得る。この場合にはセルの高い安定性が得られる。
ある設計においては、骨格マトリックス材料粒子は、電気化学的サイクリングの間の電極の安定性を向上させるために、その外表面に強く(たとえば化学的に)結合した電導性添加物(たとえばカーボンブラック粒子、カーボンナノチューブ、グラフェン、剥離グラファイト、炭素繊維、その他)を有してもよい。
上記のように、一例においては、多孔質炭素は電導性骨格マトリックス材料として機能し得る。孔壁の大部分が単層厚みである多孔質炭素は特に良好に機能し、「不活性な」炭素原子が占める体積を最小化しつつ大きな孔容積と十分に高い電導性の両方を提供することが見出された。実験的に測定された500m2/gを超える(より好ましくは1000m2/gを超える、さらにより好ましくは1500m2/gを超える)Brunauer、Emmet、Teller(BET)比表面積を有する多孔質炭素は、骨格マトリックス材料として良好に機能することが見出された。表面積が大きい多孔質炭素の例は活性炭である。これは炭素含有有機前駆体の熱分解およびそれに続く化学的もしくは物理的活性化(その孔容積および比表面積を向上させるための、得られた炭素の部分的酸化)によって産生される。従来産生された活性炭粒子は0.3nm〜100nmの範囲に大部分の孔を示すことが多い。ある設計においては、約1nm〜約50nmの範囲に大部分の孔(好ましくは70体積%を超える)を有する多孔質炭素が、骨格マトリックス材料として特に有用である。ある設計においては、多孔質炭素骨格マトリックス粒子は(真空中または不活性雰囲気で)約700℃〜約2000℃の温度に加熱することによって、電導性、フッ素化への抵抗性、または機械的強度を向上させることができる。
LiFと金属の混合組成物を含み、大きな体積容量(たとえば電極レベルで約700mAh/ccを超える、より好ましくは約800mAh/ccを超える、さらにより好ましくは約900mAh/ccを超える、さらにより好ましくは約1000mAh/ccを超える)を示すカソードを用いて電池を構築する場合に、高エネルギーセル(ならびに多くの場合にこのようなセルにおける単位エネルギーあたり最小のコストおよび最も好ましい性能)を達成するために、ある設計においては電池のアノードも比較的大きな(またはより大きい)体積容量(たとえば約800mAh/ccを超える、さらにより好ましくは約900mAh/ccを超える、ある設計においてより好ましくは約1000mAh/ccを超える、さらに約1100mAh/ccを超える)を示すことが好ましい。ある設計においては、そのような大容量のアノードはSiを含むことが好ましい。ある設計においては、そのような大容量のアノードは30at.%またはそれ以上のSiを含んでよい。ある設計においては、そのような大容量のアノードはより良い安定性および速い速度を達成するために5at.%またはそれ以上のCを含んでよい。ある設計においては、そのような大容量のアノードはセルのエネルギー密度をさらに向上させるためにLiを含むことが好ましい。ある設計においては、そのような大容量のアノードは3at.%またはそれ以上のLiを含んでよい。
本説明は当業者が本発明の実施形態を製作しまたは使用することを可能にするために提供するものである。しかし本発明は本明細書に開示した特定の処方、プロセスステップ、および材料に限定されず、当業者にはこれらの実施形態に対する種々の改変が容易に明白になることが認識される。即ち、本明細書に定義した一般的な原理は、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用される。