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JP2020097665A - 塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体 - Google Patents

塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体 Download PDF

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JP2020097665A JP2018235738A JP2018235738A JP2020097665A JP 2020097665 A JP2020097665 A JP 2020097665A JP 2018235738 A JP2018235738 A JP 2018235738A JP 2018235738 A JP2018235738 A JP 2018235738A JP 2020097665 A JP2020097665 A JP 2020097665A
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Abstract

【課題】低温下における引張伸びを確保しつつ、初期および熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な、塩化ビニル樹脂組成物を提供する。【解決手段】(a)塩化ビニル樹脂と、(b)カルボン酸銅塩と、(c)可塑剤とを含み、(c)可塑剤の含有量が、(a)塩化ビニル樹脂100質量部当たり40質量部以上である、塩化ビニル樹脂組成物とする。【選択図】なし

Description

本発明は、塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体に関するものである。
塩化ビニル樹脂は、一般的に、耐寒性、耐熱性、耐油性などの特性に優れているため、種々の用途に用いられている。
具体的には、塩化ビニル樹脂は、例えば、自動車インスツルメントパネルの表皮等を形成する際に使用されている。ここで、自動車インスツルメントパネルは、発泡ポリウレタン層が、塩化ビニル樹脂の成形体からなる表皮等と基材との間に設けられた積層構造を有している。そして、自動車インスツルメントパネルの表皮を構成する塩化ビニル樹脂成形体には、例えば、エアバッグが膨張、展開した際に、破片が飛散することなく設計通りに割れる性能が求められている。
そこで、近年では、例えば、自動車インスツルメントパネルの製造に好適に用い得る、塩化ビニル樹脂成形体および塩化ビニル樹脂組成物の改良が試みられている。具体的には、塩化ビニル樹脂成形体の低温下における引張伸びを向上させることにより、自動車インスツルメントパネルの表皮として用いた際に低温下においても優れた延性を発揮して、エアバッグが膨張、展開した際に破片が飛散することなく設計通りに割れる塩化ビニル樹脂成形体を提供する技術が提案されている。
具体的には、例えば、特許文献1〜2には、塩化ビニル樹脂と、トリメリット酸エステル及びエステルを構成するアルキル基が分岐状のアルキル基であるピロメリット酸エステルを併用した可塑剤とを配合した塩化ビニル樹脂組成物が開示されている。そして、特許文献1〜2では、上記の組成を採用することにより、低温下における引張伸びに優れる塩化ビニル樹脂成形体を形成することを可能にしている。
国際公開第2015/141182号 国際公開第2014/091867号
ここで、近年では、より厳しい条件下であっても、エアバッグが膨張、展開した際に設計通りに割れる自動車インスツルメントパネルの表皮が求められている。しかし、特許文献1〜2に記載の塩化ビニル樹脂成形体では、自動車インスツルメントパネルの表皮として用いた際に、エアバッグが膨張、展開すると、設計された位置とは異なる、表皮部分の予期しない位置に割れ、ひびなどの破損(クラック)が生じ、表皮部分の破片が飛散する場合があった。
このような問題に対し、本発明者は、低温下における引張伸びに優れるだけでなく、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度が低い(即ち、粘性成分が多くてエネルギー吸収性に優れる)塩化ビニル樹脂成形体を自動車インスツルメントパネルの表皮として採用すれば、エアバッグが膨張、展開した際に予期しない位置でのクラックの発生および破片の飛散を抑制し得ることに着目した。
そこで、本発明は、低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を提供することを目的とする。
また、本発明は、当該塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な塩化ビニル樹脂組成物、および、当該塩化ビニル樹脂成形体を有する積層体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、塩化ビニル樹脂と、カルボン酸銅塩と、可塑剤とを、当該可塑剤の含有量が塩化ビニル樹脂に対して所定の量となるように含有した塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体を形成することにより、塩化ビニル樹脂成形体の、低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を低下させることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(a)塩化ビニル樹脂と、(b)カルボン酸銅塩と、(c)可塑剤とを含み、前記(c)可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部当たり40質量部以上であることを特徴とする。このように、(c)可塑剤を、(a)塩化ビニル樹脂および(b)カルボン酸銅塩と所定の割合で併用して塩化ビニル樹脂組成物を調製すれば、当該塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成される塩化ビニル樹脂成形体の、低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を低下させることができる。そして、当該塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体を自動車インスツルメントパネルの表皮として採用すれば、エアバッグが膨張、展開した際に当該表皮が設計通りに割れると共に、予期しない位置でのクラックの発生および破片の飛散を抑制することができる。
ここで、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、前記(b)カルボン酸銅塩の含有量が、前記(c)可塑剤100質量部当たり0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。塩化ビニル樹脂組成物中の(c)可塑剤に対する(b)カルボン酸銅塩の含有量を上記範囲内とすれば、当該塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度をより低下させることができるからである。
更に、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、前記(b)カルボン酸銅塩の融点が80℃以上200℃以下であることが好ましい。(b)カルボン酸銅塩の融点が80℃以上であれば、常温において(b)カルボン酸銅塩が融解することがないため、(b)カルボン酸銅塩の取り扱いが容易となる。また、(b)カルボン酸銅塩の融点が200℃以下であれば、成形時に(b)カルボン酸銅塩が融解するため、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体中において(b)カルボン酸銅塩が均一に分散する。そして、その結果、熱老化試験後における損失弾性率E'’のピークトップ温度を十分に低下させることができるからである。
なお、本発明において、(b)カルボン酸銅塩の「融点」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
また、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、粉体成形に用いられることが好ましい。塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形に用いれば、例えば自動車インスツルメントパネル用表皮などの自動車内装材として良好に使用し得る塩化ビニル樹脂成形体が容易に得られるからである。
そして、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、パウダースラッシュ成形に用いられることが好ましい。塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形に用いれば、例えば自動車インスツルメントパネル用表皮などの自動車内装材として良好に使用し得る塩化ビニル樹脂成形体が容易に得られるからである。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した塩化ビニル樹脂組成物のいずれかを成形してなることを特徴とする。上記塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体を成形すれば、得られる塩化ビニル樹脂成形体の、低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を低下することができる。
ここで、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、自動車インスツルメントパネル表皮用であることが好ましい。本発明の塩化ビニル樹脂成形体を自動車インスツルメントパネルの表皮として用いれば、当該表皮が、エアバック展開時に破片が飛散することなく設計通りに割れると共に、予期しない位置で破損し難くなる。
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した塩化ビニル樹脂成形体のいずれかとを有することを特徴とする。発泡ポリウレタン成形体および上述の塩化ビニル樹脂成形体を用いて積層体とすれば、当該積層体を自動車インスツルメントパネルなどの自動車内装部品として良好に使用し得る。
本発明によれば、低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を提供することができる。
また、本発明によれば、当該塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な塩化ビニル樹脂組成物、および当該塩化ビニル樹脂成形体を有する積層体を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂成形体および当該塩化ビニル樹脂成形体を有する積層体を製造する際に用いることができる。ここで、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて製造した塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、パウダースラッシュ成形などの粉体成形により製造することができる。そして、当該塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、自動車インスツルメントパネル用の表皮など、自動車内装材の一部として用いることができる。
(塩化ビニル樹脂組成物)
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(a)塩化ビニル樹脂と、(b)カルボン酸銅塩と、(c)可塑剤とを含み、(c)可塑剤の含有量が、(a)塩化ビニル樹脂に対して所定の範囲内であることを特徴とする。また、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上記成分に加え、任意に、添加剤などを更に含有していてもよい。
そして、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上記所定の成分を所定量含んでいるいため、当該塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体などの低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を低下させることができる。その結果、例えば当該塩化ビニル樹脂成形体を自動車インスツルメントパネルの表皮として採用した際に、表皮が、エアバッグの膨張、展開時に、予期せぬ位置でクラックを発生することなく設計通りに良好に割れることができる。
<(a)塩化ビニル樹脂>
ここで、塩化ビニル樹脂組成物に用いられる(a)塩化ビニル樹脂としては、例えば、1種類又は2種類以上の塩化ビニル樹脂粒子を含有することができ、任意に、1種類又は2種類以上の塩化ビニル樹脂微粒子を更に含有することができる。中でも、(a)塩化ビニル樹脂は、少なくとも塩化ビニル樹脂粒子を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂粒子および塩化ビニル樹脂微粒子を含有することがより好ましく、1種類の塩化ビニル樹脂粒子および2種類の塩化ビニル樹脂微粒子を併用することが更に好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂粒子」とは、粒子径が30μm以上の粒子を指し、「樹脂微粒子」とは、粒子径が30μm未満の粒子を指す。
また、(a)塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造され得る。
<<組成>>
(a)塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単量体単位からなる単独重合体の他、塩化ビニル単量体単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する塩化ビニル系共重合体が挙げられる。塩化ビニル系共重合体を構成し得る、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体(共単量体)の具体例としては、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;塩化アリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリル−3−クロロ−2−オキシプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類;アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその酸無水物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類;アリルアミン安息香酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのアリルアミンおよびその誘導体類;などが挙げられる。以上に例示される単量体は、共単量体の一部に過ぎず、共単量体としては、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日刊工業新聞社(1988年)第75〜104頁に例示されている各種単量体が使用され得る。これらの共単量体は、1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。なお、上記(a)塩化ビニル樹脂には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレンなどの樹脂に、(1)塩化ビニルまたは(2)塩化ビニルと前記共単量体とがグラフト重合された樹脂も含まれる。
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリ
ルを意味する。
<<塩化ビニル樹脂粒子>>
塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂粒子は、通常、マトリックス樹脂(基材)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂粒子は、懸濁重合法により製造することが好ましい。
[平均重合度]
ここで、塩化ビニル樹脂粒子の平均重合度は、800以上であることが好ましく、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2800以下であることが更に好ましい。塩化ビニル樹脂粒子の平均重合度が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度を十分確保しつつ、低温下における引張伸びをより良好にできるからである。また、塩化ビニル樹脂粒子の平均重合度が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性が向上すると共に、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の平滑性を向上させることができるからである。
なお、本発明において「平均重合度」は、JIS K6720−2に準拠して測定することができる。
[平均粒子径]
また、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径は、通常30μm以上であり、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、500μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性がより向上するからである。また、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性がより向上すると共に、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の平滑性をより向上させることができるからである。
なお、本発明において、「平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠し、レーザー回折法により体積平均粒子径として測定することができる。
[含有割合]
そして、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合は、(a)塩化ビニル樹脂100質量%に対して70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、100質量%とすることができ、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度を十分確保できる共に、低温下における引張伸びをより向上できるからである。また、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が更に向上するからである。
<<塩化ビニル樹脂微粒子>>
塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂微粒子は、通常、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂微粒子は、乳化重合法により製造することが好ましい。
[平均重合度]
ここで、塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度は、(a)塩化ビニル樹脂が含有する塩化ビニル樹脂微粒子全体として600以上であることが好ましく、900以上であることがより好ましく、2000以下であることが好ましく、1700以下であることがより好ましい。そして、例えば、ダスティング剤として異なる平均重合度を有する2種類の塩化ビニル樹脂微粒子を併用する場合は、一方の塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度を500以上1500以下とし;他方の塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度を1600以上2200以下とする:等、適宜選択することができる。ダスティング剤としての塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性がより良好になると共に、当該組成物を用いて形成される塩化ビニル樹脂成形体の低温下における引張伸びがより向上するからである。また、塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性がより向上し、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の表面平滑性がより向上するからである。
ここで、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性を更に向上させる観点からは、ダスティング剤としての塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度は、基材としての塩化ビニル樹脂粒子の平均重合度よりも小さいことが好ましい。
[平均粒子径]
また、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径は、通常30μm未満であり、10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上であることが好ましい。塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が上記下限以上であれば、例えばダスティング剤としてのサイズを過度に小さくすることなく、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を更に良好に発揮できるからである。また、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性がより高まり、形成される塩化ビニル樹脂成形体の平滑性を更に向上させることができるからである。
[含有割合]
そして、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合は、(a)塩化ビニル樹脂100質量%に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が更に向上するからである。また、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の低温下における引張伸びを更に良好にできるからである。
<(b)カルボン酸銅塩>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(b)カルボン酸銅塩を含むことを必要とする。塩化ビニル樹脂組成物が(b)カルボン酸銅塩を含むことで、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて得られる塩化ビニル樹脂成形体において、低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を低下させることができる。
ここで、(b)カルボン酸銅塩としては、ラウリン酸銅塩、ステアリン酸銅塩などの飽和脂肪酸銅塩;オレイン酸銅塩などの不飽和脂肪酸銅塩;マレイン酸銅塩などの不飽和多価脂肪酸銅塩;安息香酸銅塩などの芳香族カルボン酸銅塩;などが挙げられる。中でも、塩化ビニル樹脂組成物を用いて成形された成形体の耐熱収縮性を向上させる観点から、(b)カルボン酸銅塩としては、飽和脂肪酸銅塩、不飽和脂肪酸銅塩、不飽和多価脂肪酸銅塩などの脂肪酸銅塩が好ましい。
そして、(b)カルボン酸銅塩の具体例としては、例えば、ステアリン酸銅、オレイン酸銅、安息香酸銅などが挙げられる。
<<含有量>>
ここで、(b)カルボン酸銅塩の含有量は、(c)可塑剤100質量部当たり0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましく、0.03質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以下であることが特に好ましく、0.5質量部以下であることが最も好ましい。(c)可塑剤に対する(b)カルボン酸銅塩の含有量が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度をより良好に低下させることができるからである。また、(c)可塑剤に対する(b)カルボン酸塩の含有量が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の、低温での引張伸びの悪化を抑制することができるからである。
また、(b)カルボン酸銅塩の含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部当たり0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましく、0.03質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることが更に好ましい。(a)塩化ビニル樹脂に対する(b)カルボン酸銅塩の含有量が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を更に良好に低下させることができるからである。また、(a)塩化ビニル樹脂に対する(b)カルボン酸銅塩の含有量が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂成形体の低温での引張伸びの悪化を更に抑制することができるからである。
<<融点>>
また、(b)カルボン酸銅塩の融点は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましい。(b)カルボン酸銅塩の融点が上記下限以上であれば、常温において(b)カルボン酸銅塩が融解することがないため、(b)カルボン酸銅塩の取り扱いが容易となるからである。また、(b)カルボン酸銅塩の融点が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いた塩化ビニル樹脂成形体の形成時に、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体中において(b)カルボン酸銅塩が均一に分散しやすくなる。そして、その結果、熱老化試験後における損失弾性率E'’のピークトップ温度を十分に低下させることができるからである。
なお、融点を有さない、または、融点を確認できない(b)カルボン酸銅塩の場合には、当該(b)カルボン酸銅塩の沸点または昇華点は、200℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、300℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましい。融点を有さない、または、融点を確認できない(b)カルボン酸銅塩の場合、当該(b)カルボン酸銅塩の沸点または昇華点が上記の温度範囲内であれば、(b)カルボン酸銅塩の取り扱い性に優れるとともに、(b)カルボン酸銅塩が揮発しないため、(b)カルボン酸銅塩による効果が十分に発揮され得る。
<(c)可塑剤>
そして、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(c)可塑剤を含み、当該(c)可塑剤の含有量が、(a)塩化ビニル樹脂質量部100質量部当たり40質量部以上であることを必要とし、60質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、200質量部以下であることが好ましく160質量部以下であることがより好ましい。(c)可塑剤を上記の割合で含むことで、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて得られる塩化ビニル樹脂成形体に、低温下における良好な引張伸びを発揮させることができる。
そして、(c)可塑剤としては、既知の可塑剤を用いることができる。具体的には、可塑剤としては、以下の一次可塑剤および二次可塑剤などが挙げられる。
いわゆる一次可塑剤としては、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリ−n−プロピル、トリメリット酸トリ−n−ブチル、トリメリット酸トリ−n−ペンチル、トリメリット酸トリ−n−ヘキシル、トリメリット酸トリ−n−ヘプチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−n−ノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリ−n−ウンデシル、トリメリット酸トリ−n−ドデシル、トリメリット酸トリ−n−トリデシル、トリメリット酸トリ−n−テトラデシル、トリメリット酸トリ−n−ペンタデシル、トリメリット酸トリ−n−ヘキサデシル、トリメリット酸トリ−n−ヘプタデシル、トリメリット酸トリ−n−ステアリル、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(ここで、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていてもよい。)などの、エステルを構成するアルキル基が直鎖状である直鎖状トリメリット酸エステル〔なお、これらのトリメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
トリメリット酸トリ−i−プロピル、トリメリット酸トリ−i−ブチル、トリメリット酸トリ−i−ペンチル、トリメリット酸トリ−i−ヘキシル、トリメリット酸トリ−i−ヘプチル、トリメリット酸トリ−i−オクチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ−i−ノニル、トリメリット酸トリ−i−デシル、トリメリット酸トリ−i−ウンデシル、トリメリット酸トリ−i−ドデシル、トリメリット酸トリ−i−トリデシル、トリメリット酸トリ−i−テトラデシル、トリメリット酸トリ−i−ペンタデシル、トリメリット酸トリ−i−ヘキサデシル、トリメリット酸トリ−i−ヘプタデシル、トリメリット酸トリ−i−オクタデシル、トリメリット酸トリアルキルエステル(ここで、トリメリット酸トリアルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていてもよい。)などの、エステルを構成するアルキル基が分岐状である分岐状トリメリット酸エステル〔なお、これらのトリメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
ピロメリット酸テトラメチル、ピロメリット酸テトラエチル、ピロメリット酸テトラ−n−プロピル、ピロメリット酸テトラ−n−ブチル、ピロメリット酸テトラ−n−ペンチル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘキシル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘプチル、ピロメリット酸テトラ−n−オクチル、ピロメリット酸テトラ−n−ノニル、ピロメリット酸テトラ−n−デシル、ピロメリット酸テトラ−n−ウンデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ドデシル、ピロメリット酸テトラ−n−トリデシル、ピロメリット酸テトラ−n−テトラデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ペンタデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘキサデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘプタデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ステアリル、ピロメリット酸テトラ−n−アルキルエステル(ここで、ピロメリット酸テトラ−n−アルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていても良い。)などの、エステルを構成するアルキル基が直鎖状である直鎖状ピロメリット酸エステル〔なお、これらのピロメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
ピロメリット酸テトラ−i−プロピル、ピロメリット酸テトラ−i−ブチル、ピロメリット酸テトラ−i−ペンチル、ピロメリット酸テトラ−i−ヘキシル、ピロメリット酸テトラ−i−ヘプチル、ピロメリット酸テトラ−i−オクチル、ピロメリット酸テトラ−(2−エチルヘキシル)、ピロメリット酸テトラ−i−ノニル、ピロメリット酸テトラ−i−デシル、ピロメリット酸テトラ−i−ウンデシル、ピロメリット酸テトラ−i−ドデシル、ピロメリット酸テトラ−i−トリデシル、ピロメリット酸テトラ−i−テトラデシル、ピロメリット酸テトラ−i−ヘプタデシル、ピロメリット酸テトラ−i−オクタデシル、ピロメリット酸テトラアルキルエステル(ここで、ピロメリット酸タトラアルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていてもよい。)などの、エステルを構成するアルキル基が分岐状である分岐状ピロメリット酸エステル〔なお、これらのピロメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどのフタル酸誘導体;
ジメチルイソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸誘導体;
ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸誘導体;
ジ−n−ブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸誘導体;
ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−n−ヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体;
ジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソデシルセバケート、ジ−(2−ブチルオクチル)セバケートなどのセバシン酸誘導体;
ジ−n−ブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレエートなどのマレイン酸誘導体;
ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレートなどのフマル酸誘導体;
トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレートなどのクエン酸誘導体;
モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸誘導体;
ブチルオレエート、グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエートなどのオレイン酸誘導体;
メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸誘導体;
n−ブチルステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸誘導体(但し、12−ヒドロキシステアリン酸およびそのエステルを除く);
ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸誘導体;
トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸誘導体;
ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビス
チオグリコレートなどのグリコール誘導体;
グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体;
エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどのエポキシ誘導体;
アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤;
などが挙げられる。
また、いわゆる二次可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;塩素化パラフィン、トリエチレングリコールジカプリレートなどのグリコールの脂肪酸エステル、ブチルエポキシステアレート、フェニルオレエート、ジヒドロアビエチン酸メチルなどが挙げられる。
なお、これらの可塑剤は、1種のみを用いても良く、例えば、一次可塑剤、二次可塑剤などの2種以上を併用しても良い。また、二次可塑剤を用いる場合は、当該二次可塑剤と等質量以上の一次可塑剤を併用することが好ましい。
そして、上述した可塑剤の中でも、良好な引張伸びを得る観点からは、トリメリット酸エステルおよび/またはピロメリット酸エステルを用いることが好ましく、直鎖状トリメリット酸エステルを用いることがより好ましく、炭素数が異なるアルキル基を分子内に2つ以上有する直鎖状トリメリット酸エステルを用いることが更に好ましい。また、当該アルキル基の炭素数は6〜18であることがより好ましい。
<<含有割合>>
ここで、トリメリット酸エステルの含有割合は、(c)可塑剤の合計含有量(100質量%)に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、通常100質量%未満であり、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。トリメリット酸エステルの含有割合が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の低温下における引張伸びをより良好に保てるからである。また、トリメリット酸エステルの含有割合が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物および塩化ビニル樹脂成形体の、可塑剤によるべたつきを抑制できるからである。
<<含有量>>
また、トリメリット酸エステルの含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、40質量部以上であることが好ましく、150質量部以下であることが好ましい。トリメリット酸エステルの含有量が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の低温下における引張伸びをより良好に保てるからである。また、トリメリット酸エステルの含有量が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物および塩化ビニル樹脂成形体の、可塑剤によるべた付きをより抑制することができるからである。
<<含有割合>>
そして、ピロメリット酸エステルの含有割合は、(c)可塑剤の合計含有量(100質量%)に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、通常100質量%未満であり、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。ピロメリット酸エステルの含有割合が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を良好に低下させることができる。また、ピロメリット酸エステルの含有割合が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物および塩化ビニル樹脂成形体の耐ブロッキング性を向上させることができるため、塩化ビニル樹脂成形体等をより容易に製造し得るからである。
<<含有量>>
また、ピロメリット酸エステルの含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、40質量部以上であることが好ましく、150質量部以下であることが好ましい。ピロメリット酸エステルの含有量が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度をより良好に低下できるからである。また、ピロメリット酸エステルの含有量が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物および塩化ビニル樹脂成形体の耐ブロッキング性をより向上することができるからである。
更に、トリメリット酸エステルおよびピロメリット酸エステルの合計含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して40質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、110質量部以上であることが更に好ましく、170質量部以下であることがより好ましい。トリメリット酸エステルおよびピロメリット酸エステルの含有量を上記下限以上にすれば、例えば可塑剤としての効果が十分に発揮され、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の低温下における引張伸びを更に向上させることができるからである。また、トリメリット酸エステルおよびピロメリット酸エステルの含有量を上記上限以下にすれば、得られる塩化ビニル樹脂成形体の表面のべた付きを良好に抑えることができるからである。
なお、トリメリット酸エステルおよびピロメリット酸エステルの形態は特に限定されないが、(a)塩化ビニル樹脂との混合容易性の観点から、また、形成された塩化ビニル樹脂成形体表面でのブルーミング発生(成形体表面に配合成分が折出し、表面が白くなる現象)を抑制する観点からは、常温で液体であることが好ましい。
そして、中でも、可塑剤としては、エポキシ化大豆油を、トリメリット酸エステルおよびピロメリット酸エステルと併用することが好ましい。
また、トリメリット酸エステルおよび/またはピロメリット酸エステル以外のその他の可塑剤の含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましく、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。トリメリット酸エステルおよび/またはピロメリット酸エステル以外のその他の可塑剤の含有量が上記範囲であれば、低温下における引張伸びがより良好な塩化ビニル樹脂成形体をより容易に製造することができるからである。
<添加剤>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分以外に、各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライト、β−ジケトンなどの安定剤;離型剤;上記塩化ビニル樹脂微粒子以外のダスティング剤;およびその他の添加剤;などが挙げられる。
<<過塩素酸処理ハイドロタルサイト>>
塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る過塩素酸処理ハイドロタルサイトは、例えば、ハイドロタルサイトを過塩素酸の希薄水溶液中に加えて撹拌し、その後必要に応じて、ろ過、脱水または乾燥することによって、ハイドロタルサイト中の炭酸アニオン(CO 2−)の少なくとも一部を過塩素酸アニオン(ClO )で置換(炭酸アニオン1モルにつき過塩素酸アニオン2モルが置換)することにより、過塩素酸導入型ハイドロタルサイトとして容易に製造することができる。上記ハイドロタルサイトと上記過塩素酸とのモル比は任意に設定できるが、一般には、ハイドロタルサイト1モルに対し、過塩素酸0.1モル以上2モル以下が好ましい。
ここで、未処理(過塩素酸アニオンを一部導入していない未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは85モル%以上である。また、未処理(過塩素酸アニオンを一部導入していない未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは95モル%以下である。未処理(過塩素酸アニオンを一部導入していない未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率が上記の範囲内にあることにより、低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体をより容易に製造することができるからである。
なお、ハイドロタルサイトは、一般式:[Mg1−xAl(OH)]x+[(CO)x/2・mHO]x−で表される不定比化合物で、プラスに荷電した基本層[Mg1−xAl(OH)]x+と、マイナスに荷電した中間層[(CO)x/2・mHO]x−とからなる層状の結晶構造を有する無機物質である。ここで、上記一般式中、xは0より大きく0.33以下の範囲の数である。天然のハイドロタルサイトは、MgAl(OH)16CO・4HOである。合成されたハイドロタルサイトとしては、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HOが市販されている。合成ハイドロタルサイトの合成方法は、例えば特開昭61−174270号公報に記載されている。
ここで、過塩素酸処理ハイドロタルサイトの含有量は、特に制限されることなく、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、7質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。過塩素酸処理ハイドロタルサイトの含有量が上記範囲であれば、塩化ビニル樹脂組成物を成形してなる塩化ビニル樹脂成形体の引張伸びをより良好に維持することができるからである。
<<ゼオライト>>
塩化ビニル樹脂組成物は、ゼオライトを安定剤として含有し得る。ゼオライトは、一般式:Mx/n・[(AlO・(SiO]・zHO(一般式中、Mは原子価nの金属イオン、x+yは単子格子当たりの四面体数、zは水のモル数である)で表される化合物である。当該一般式中のMの種類としては、Na、Li、Ca、Mg、Znなどの一価又は二価の金属及びこれらの混合型が挙げられる。
ここで、ゼオライトの含有量は、特に制限されることなく、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下が好ましい。
<<β−ジケトン>>
β−ジケトンは、塩化ビニル樹脂組成物を成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の初期色調の変動をより効果的に抑えるために用いられる。β−ジケトンの具体例としては、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタンなどが挙げられる。これらのβ−ジケトンは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、β−ジケトンの含有量は、特に制限されることなく、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下が好ましい。
<<離型剤>>
離型剤としては、特に制限されることなく、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸エステルおよび12−ヒドロキシステアリン酸オリゴマーなどの12−ヒドロキシステアリン酸系潤滑剤が挙げられる。ここで、離型剤の含有量は、特に制限されることなく、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下とすることができる。
<<その他のダスティング剤>>
塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る、上記塩化ビニル樹脂微粒子以外の、その他のダスティング剤としては、炭酸カルシウム、タルク、酸化アルミニウムなどの無機微粒子;ポリアクリロニトリル樹脂微粒子、ポリ(メタ)アクリレート樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子、ポリアミド樹脂微粒子などの有機微粒子;が挙げられる。中でも、平均粒子径が10nm以上100nm以下の無機微粒子が好ましい。
ここで、その他のダスティング剤の含有量は、特に制限されることなく、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。その他のダスティング剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、その他のダスティング剤は、上述した塩化ビニル樹脂微粒子と併用してもよい。
<<その他の添加剤>>
塩化ビニル樹脂組成物が含有し得るその他の添加剤としては、特に制限されることなく、例えば、着色剤(顔料)、耐衝撃性改良剤、過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等)、酸化防止剤、防カビ剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、光安定剤、発泡剤等が挙げられる。
着色剤(顔料)の具体例は、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ポリアゾ縮合顔料、イソインドリノン系顔料、銅フタロシアニン系顔料、チタンホワイト、カーボンブラックである。1種又は2種以上の顔料が使用される。
キナクリドン系顔料は、p−フェニレンジアントラニル酸類が濃硫酸で処理されて得られ、黄みの赤から赤みの紫の色相を示す。キナクリドン系顔料の具体例は、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンバイオレットである。
ペリレン系顔料は、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸無水物と芳香族第一級アミンとの縮合反応により得られ、赤から赤紫、茶色の色相を示す。ペリレン系顔料の具体例は、ペリレンレッド、ペリレンオレンジ、ペリレンマルーン、ペリレンバーミリオン、ペリレンボルドーである。
ポリアゾ縮合顔料は、アゾ色素が溶剤中で縮合されて高分子量化されて得られ、黄、赤系顔料の色相を示す。ポリアゾ縮合顔料の具体例は、ポリアゾレッド、ポリアゾイエロー、クロモフタルオレンジ、クロモフタルレッド、クロモフタルスカーレットである。
イソインドリノン系顔料は、4,5,6,7−テトラクロロイソインドリノンと芳香族第一級ジアミンとの縮合反応により得られ、緑みの黄色から、赤、褐色の色相を示す。イソインドリノン系顔料の具体例は、イソインドリノンイエローである。
銅フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン類に銅を配位した顔料で、黄みの緑から鮮やかな青の色相を示す。銅フタロシアニン系顔料の具体例は、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルーである。
チタンホワイトは、二酸化チタンからなる白色顔料で、隠蔽力が大きく、アナタース型とルチル型がある。
カーボンブラックは、炭素を主成分とし、酸素、水素、窒素を含む黒色顔料である。カーボンブラックの具体例は、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、ボーンブラックである。
耐衝撃性改良剤の具体例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレンなどである。塩化ビニル樹脂組成物では、1種又は2種以上の耐衝撃性改良剤が使用できる。なお、耐衝撃性改良剤は、塩化ビニル樹脂組成物中で微細な弾性粒子の不均一相となって分散する。塩化ビニル樹脂組成物では、当該弾性粒子にグラフト重合した鎖及び極性基が(a)塩化ビニル樹脂と相溶し、塩化ビニル樹脂組成物の耐衝撃性が向上する。
酸化防止剤の具体例は、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、亜リン酸塩などのリン系酸化防止剤などである。
防カビ剤の具体例は、脂肪族エステル系防カビ剤、炭化水素系防カビ剤、有機窒素系防カビ剤、有機窒素硫黄系防カビ剤などである。
難燃剤の具体例は、塩素化パラフィン等のハロゲン系難燃剤;リン酸エステル等のリン系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物;などである。
帯電防止剤の具体例は、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、スルホン酸塩類等のアニオン系帯電防止剤;脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン系帯電防止剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類等のノニオン系帯電防止剤;などである。
充填剤の具体例は、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、クレーなどである。
光安定剤の具体例は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ニッケルキレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などである。
発泡剤の具体例は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のスルホニルヒドラジド化合物などの有機発泡剤;フロンガス、炭酸ガス、水、ペンタン等の揮発性炭化水素化合物、これらを内包したマイクロカプセルなどの、ガス系の発泡剤;などである。
<塩化ビニル樹脂組成物の調製方法>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記(a)塩化ビニル樹脂と、(b)カルボン酸銅塩と、(c)可塑剤と、必要に応じて更に配合される各種添加剤との混合方法としては、特に限定されることなく、例えば、上記塩化ビニル樹脂微粒子およびその他のダスティング剤を含むダスティング剤を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、ダスティング剤を添加、混合する方法が挙げられる。ここで、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、特に制限されることなく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましい。
<塩化ビニル樹脂組成物の用途>
そして、得られた塩化ビニル樹脂組成物は、粉体成形に好適に用いることができ、パウダースラッシュ成形により好適に用いることができる。
(塩化ビニル樹脂成形体)
本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した塩化ビニル樹脂組成物を、任意の方法で成形することにより得られることを特徴とする。そして、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて得られているため、低温下における良好な引張伸びを維持しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度が十分に低い。従って、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、自動車内装材、例えば自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等の表皮として好適に用いられ、特に、自動車インスツルメントパネルの表皮として好適に用いられる。
<<塩化ビニル樹脂成形体の成形方法>>
ここで、パウダースラッシュ成形時の金型温度は、特に制限されることなく、200℃以上とすることが好ましく、220℃以上とすることがより好ましく、300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。
そして、塩化ビニル樹脂成形体を製造する際には、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、上記温度範囲の金型に本発明の塩化ビニル樹脂組成物を振りかけて、5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下の間放置する。その後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた本発明の塩化ビニル樹脂成形体を金型から脱型する。そして、脱型された塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、金型の形状をかたどったシート状の成形体として得られる。
(積層体)
本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した塩化ビニル樹脂成形体とを有する。そして、本発明の積層体は、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成された塩化ビニル樹脂成形体を有しているため、低温下における引張伸びを良好に維持しつつ、初期および熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を十分低くすることができる。従って、本発明の積層体は、例えば、自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等といった自動車内装材として好適に用いられ、特に、自動車インスツルメントパネル用に好適に用いられる。
ここで、積層方法は、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、(1)発泡ポリウレタン成形体と、塩化ビニル樹脂成形体とを別途準備した後に、熱融着、熱接着、又は公知の接着剤などを用いることにより貼り合わせる方法;(2)塩化ビニル樹脂成形体上で発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行うことにより、塩化ビニル樹脂成形体上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する方法;などが挙げられる。中でも、工程が簡素である点、および、種々の形状の積層体を得る場合においても塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体とを強固に接着し易い点から、後者の方法(2)の方が好適である。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、加熱(熱老化試験)後の塩化ビニル樹脂成形体についての低温引張伸び、加熱(熱老化試験)後の塩化ビニル樹脂成形体についての損失弾性率E”のピークトップ温度、およびカルボン酸銅塩の融点は、下記の方法で測定および評価した。
<低温引張伸び>
<<加熱(熱老化試験)後>>
発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた積層体を試料とした。当該試料をオーブンに入れ、温度130℃の環境下で250時間、加熱を行った。次に、加熱後の積層体から発泡ポリウレタン成形体を剥離して、塩化ビニル樹脂成形シートのみを準備した。当該塩化ビニル樹脂成形シートを、JIS K6251に記載の1号ダンベルで打ち抜き、JIS K7113に準拠して、引張速度200mm/分で、加熱後の、温度−10℃における塩化ビニル樹脂成形シートの引張破断伸び(%)を測定した。引張破断伸びの値が大きいほど、加熱(熱老化試験)後における塩化ビニル樹脂成形体の、低温での引張伸びが良好である。
<動的粘弾性>
<<加熱(熱老化試験)後の損失弾性率E”のピークトップ温度>>
発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた積層体を試料とした。当該試料をオーブンに入れ、温度130℃の環境下で250時間、加熱を行った。次に、加熱後の積層体から発泡ポリウレタン成形体を剥離して、塩化ビニル樹脂成形シートのみを準備した。得られた塩化ビニル樹脂成形シートを、幅10mm×長さ40mmの寸法で打ち抜くことにより測定試料とした。そして、JIS K7244−4に準拠して、周波数10Hz、昇温速度2℃/分、測定温度−90℃〜+100℃の範囲で、当該測定試料についての損失弾性率E”のピークトップ温度(℃)を測定した。損失弾性率E”のピークトップ温度が低いほど、加熱(熱老化試験)後における塩化ビニル樹脂成形体の、低温での粘性が優れている。
<融点>
実施例で使用したカルボン酸銅塩についてJIS K0064に準拠して融点を測定したところ、ステアリン酸銅(II)の融点は115℃、オレイン酸銅(II)の融点は100℃であった。なお、安息香酸銅(II)については融点が確認できなかったが、当該安息香酸銅(II)の沸点(昇華点)は249℃であった。
(実施例1)
<塩化ビニル樹脂組成物の調製>
表1に示す配合成分のうち、可塑剤(トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、およびエポキシ化大豆油)と、ダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で上記可塑剤を全て添加し、更に昇温することにより、ドライアップ(可塑剤が、塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が温度70℃以下に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
<塩化ビニル樹脂成形体の製造>
上述で得られた塩化ビニル樹脂組成物を、温度250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、任意の時間放置して溶融させた後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とした。その後、当該塩化ビニル樹脂組成物を振りかけたシボ付き金型を、温度200℃に設定したオーブン内に静置し、静置から60秒経過した時点で当該シボ付き金型を冷却水で冷却した。金型温度が40℃まで冷却された時点で、塩化ビニル樹脂成形体としての、145mm×175mm×1mmの塩化ビニル樹脂成形シートを金型から脱型した。
<積層体の形成>
得られた塩化ビニル樹脂成形シート1枚を、200mm×300mm×10mmの金型の中に、シボ付き面を下にして敷いた。
別途、プロピレングリコールのPO(プロピレンオキサイド)・EO(エチレンオキサイド)ブロック付加物(水酸基価28、末端EO単位の含有量=10%、内部EO単位の含有量4%)を50部、グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価21、末端EO単位の含有量=14%)を50部、水を2.5部、トリエチレンジアミンのエチレングリコール溶液(東ソー社製、商品名「TEDA−L33」)を0.2部、トリエタノールアミンを1.2部、トリエチルアミンを0.5部、および整泡剤(信越化学工業製、商品名「F−122」)を0.5部混合して、ポリオール混合物を得た。また、得られたポリオール混合物とポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)とを、インデックスが98になる比率で混合した混合液を調製した。そして、調製した混合液を、金型内に敷かれた塩化ビニル樹脂成形シートの上に注いだ。
その後、その上から348mm×255mm×10mmのアルミニウム板で上記金型に蓋をして、金型を密閉した。金型を密閉してから5分間放置することにより、表皮としての塩化ビニル樹脂成形シート(厚さ:1mm)に、発泡ポリウレタン成形体(厚さ:9mm、密度:0.2g/cm)が裏打ちされた積層体が、金型内で形成された。そして、形成された積層体を金型から取り出して、上述の方法に従って、加熱(熱老化試験)後の、低温引張伸びおよび損失弾性率E”のピークトップ温度を測定、算出した。結果を表1に示す。
(実施例2)
表1に示す配合成分の通り、ステアリン酸銅(II)の配合量を0.1部に変更した以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物を調製した。得られた塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体および積層体を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
表1に示す配合成分の通り、ステアリン酸銅(II)の配合量を4部に変更した以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物を調製した。得られた塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体および積層体を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
表1に示す配合成分の通り、トリメリット酸エステルの配合量を130部、ステアリン酸銅(II)の配合量を0.1部に変更するとともに、ピロメリット酸エステルを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。得られた塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体および積層体を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
表1に示す配合成分の通り、ステアリン酸銅(II)0.05部に替えてオレイン酸銅(II)0.05部を用いた以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物を調製した。得られた塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体および積層体を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
表1に示す配合成分の通り、オレイン酸銅(II)の配合量を0.1部に変更した以外は実施例5と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。得られた塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体および積層体を製造した。
そして、実施例5と同様の方法により測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
表1に示す配合成分の通り、オレイン酸銅(II)の配合量を0.5部に変更した以外は実施例5と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。得られた塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体および積層体を製造した。
そして、実施例5と同様の方法により測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
表1に示す配合成分の通り、ステアリン酸銅(II)0.05部に替えて安息香酸銅(II)0.1部を用いた以外は実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。得られた塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体および積層体を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
表1に示す配合成分の通り、ステアリン酸銅(II)を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。得られた塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形体および積層体を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 2020097665
1)新第一塩ビ(株)製、製品名「ZEST(登録商標)2000Z」(懸濁重合法、平均粒子径:134μm、平均重合度:2000)
2)新第一塩ビ(株)製、製品名「ZEST(登録商標)PQLTX」(乳化重合法、平均粒子径:1.8μm、平均重合度:800)
3)東ソー(株)製、製品名「リューロンペースト(登録商標)761」(乳化重合法、平均粒子径:1.8μm、平均重合度:2100)
4)花王(株)製、製品名「トリメックスN−08」(トリメリテート系可塑剤(n−C8、C10)
5)(株)ADEKA製、製品名「アデカサイザーUL−80」
6)(株)ADKEA製、製品名「アデカサイザーO−130S」
7)協和化学工業(株)製、製品名「アルカマイザー(登録商標)5」
8)水澤化学工業(株)製、製品名「MIZUKALIZER DS」
9)昭和電工(株)製、製品名「カレンズDK−1」
10)(株)ADEKA製、製品名「アデカスタブSC−131」
11)(株)ADEKA製、製品名「アデカスタブLA−72」
12)堺化学工業(株)製、製品名「SAKAI SZ2000」
13)(株)ADEKA製、製品名「アデカスタブLS−12」
14)関東化学(株)製、製品名「ステアリン酸銅(II)(ステアリン酸第二銅、融点:115℃)
15)関東化学(株)製、製品名「オレイン酸銅(II)(オレイン酸第二銅、融点:100°)
16)関東化学(株)製、製品名「安息香酸銅(II)(無水)安息香酸第二銅、融点:123℃」
17)大日精化(株)製、製品名「DA PX 1720(A)ブラック」
表1より、塩化ビニル樹脂、カルボン酸銅塩、および可塑剤を含み、可塑剤の含有量が塩化ビニル樹脂100部当たり40部以上である実施例1〜8では、低温下における引張伸びを良好に確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を低下させることが分かった。また、カルボン酸銅塩を含まない比較例1では、低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度を十分に低下させることができないことが分かった。
本発明によれば、低温下における引張伸びを確保しつつ、熱老化試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を提供することができる。
また、本発明によれば、当該塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な塩化ビニル樹脂組成物、および当該塩化ビニル樹脂成形体を有する積層体を提供することができる。

Claims (8)

  1. (a)塩化ビニル樹脂と、(b)カルボン酸銅塩と、(c)可塑剤とを含み、
    前記(c)可塑剤の含有量が、前記(a)塩化ビニル樹脂100質量部当たり40質量部以上である、塩化ビニル樹脂組成物。
  2. 前記(b)カルボン酸銅塩の含有量が、前記(c)可塑剤100質量部当たり0.01質量部以上10質量部以下である、請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  3. 前記(b)カルボン酸銅塩の融点が80℃以上200℃以下である、請求項1または2に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  4. 粉体成形に用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  5. パウダースラッシュ成形に用いられる、請求項4に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  6. 請求項4または5に記載の塩化ビニル樹脂組成物を成形してなる、塩化ビニル樹脂成形体。
  7. 自動車インスツルメントパネル表皮用である、請求項6に記載の塩化ビニル樹脂成形体。
  8. 発泡ポリウレタン成形体と、請求項6または7に記載の塩化ビニル樹脂成形体とを有する、積層体。
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