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JP2020080811A - 新規なホイップドクリームおよびその製造方法 - Google Patents

新規なホイップドクリームおよびその製造方法 Download PDF

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JP2020080811A JP2018225066A JP2018225066A JP2020080811A JP 2020080811 A JP2020080811 A JP 2020080811A JP 2018225066 A JP2018225066 A JP 2018225066A JP 2018225066 A JP2018225066 A JP 2018225066A JP 2020080811 A JP2020080811 A JP 2020080811A
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Abstract

【課題】チーズを使用しないにも関わらず、今までにない新規なフレッシュチーズ様で芳醇な風味がありつつ、苦味はなく、シュワッと感が強いホイップドクリーム及びその製造方法を提供すること。【解決手段】油脂をホイップドクリーム全体中25〜50重量%含有し、乳脂肪を該油脂全体中5〜50重量%含有し、炭酸ガスで起泡されており、pHが6〜8.5を示すホイップドクリーム。起泡前材料全体中、起泡性水中油型乳化油脂組成物を50〜100重量%含有し、乳脂肪を1〜25重量%含有する起泡前材料であって、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中に油脂を25〜50重量%、水を30〜65重量%含有する起泡前材料を、炭酸ガスで起泡させてpHが6〜8.5のホイップドクリームを得る。【選択図】なし

Description

本発明は、新規なホイップドクリームおよびその製造方法に関する。
ホイップドクリームは、パンや洋菓子などのベーカリー製品、あるいはプリンやムースなどの洋生菓子などの食品においてフィリング材やトッピング材、サンド材として広く用いられている。そのような中、近年、消費者ニーズの多様化に伴い、今までにない風味や食感のホイップドクリームが求められるようになって来ている。
特許文献1では、泡状にふんわりと膨らんだ起泡物(エスプーマ)の形態を長期間維持できる起泡物の調理法として、動物性生クリームと、餅米粉等のモチ種と、ゼラチン及び/又は寒天とを含む食材を混合させて加熱した後、エスプーマ用サイフォンに封入して、亜酸化窒素ガスや二酸化炭素ガスを封入した後に、前記エスプーマ用サイフォンを振る等の振動をさせてから、器に搾り出して起泡物を製造する方法が記載されている。しかし、この文献では、起泡物の風味については記載されていない。実際には、この文献で製造される起泡物は乳脂肪分が多く含まれるため、乳感が強い動物性生クリームの風味を有しており、また、苦味を感じるものであった。
また、従来、チーズを使用せずに、フレッシュチーズ様で芳醇な風味がありつつ、苦味はなく、シュワッと感が強いホイップドクリームは知られていなかった。なお本願において、シュワッと感とは、清涼感やピリピリした刺激感を伴う泡感を意味する。
特開2013−176359号公報
本発明の目的は、チーズを使用しないにも関わらず、今までにない新規なフレッシュチーズ様で芳醇な風味がありつつ、苦味はなく、シュワッと感が強いホイップドクリーム及びその製造方法、並びにこれを使用した食品を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定量の油脂及び特定量の乳脂肪を含有し、かつ、炭酸ガスで起泡された特定範囲のpHを示すホイップドクリームは、チーズを使用しないにも関わらず、今までにない新規なフレッシュチーズ様で芳醇な風味がありつつ、苦味はなく、シュワッと感が強いことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、油脂をホイップドクリーム全体中25〜50重量%含有し、乳脂肪を該油脂全体中5〜50重量%含有し、炭酸ガスで起泡されており、pHが6〜8.5を示すホイップドクリームに関する。前記ホイップドクリームは、オーバーランが100〜300%であることが好ましい。また、生クリームをホイップドクリーム全体中2〜50重量%含有することが好ましい。
また本発明は、前記ホイップドクリームがフィリング、トッピング、又はサンドされた食品にも関する。
さらに本発明は、起泡前材料全体中、起泡性水中油型乳化油脂組成物を50〜100重量%含有し、乳脂肪を1〜25重量%含有する起泡前材料であって、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中に油脂を25〜50重量%、水を30〜65重量%含有する起泡前材料を、炭酸ガスで起泡させてpHが6〜8.5のホイップドクリームを得ることを特徴とするホイップドクリームの製造方法にも関する。生クリームを起泡前材料全体中2〜50重量%含有することが好ましい。また、アルカリ性物質を起泡前材料全体中0.01〜0.5重量%含むことが好ましい。
本発明に従えば、チーズを使用しないにも関わらず、今までにない新規なフレッシュチーズ様で芳醇な風味がありつつ、苦味はなく、シュワッと感が強いホイップドクリーム及びその製造方法、並びにこれを使用した食品を提供することができる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明におけるホイップドクリームは、特定量の油脂及び乳脂肪を含有し、かつ、炭酸ガスで起泡された特定範囲のpHを示すものである。
本願では、ホイップドクリームに含まれる全成分を含む、起泡直前の材料を、起泡前材料という。起泡前材料は、乳脂肪を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物そのものであってもよいし、起泡性水中油型乳化油脂組成物に対し、乳脂肪含有成分及び/又は重曹等のアルカリ性物質を混合したものであってもよい。起泡を効率よく実現するため、起泡前材料全体中、起泡性水中油型乳化油脂組成物を50〜100重量%含有することが好ましい。重曹等のアルカリ性物質は、水溶液の形態として混合してもよい。そして当該起泡前材料を炭酸ガスで起泡させることにより、本発明のホイップドクリームとすることができる。
起泡性水中油型乳化油脂組成物は、乳脂肪を含んでもよい油脂、必要に応じて親油性乳化剤、安定剤、着色料、香料等の油溶性原料を含む油相と、水、必要に応じて親水性乳化剤、乳固形分、糖類、増粘剤、安定剤、着色料、香料、アルカリ性物質等の水溶性原料を含む水相とからなる。また、起泡前材料は、起泡性水中油型乳化油脂組成物、乳脂肪含有成分、アルカリ性物質の他、香料やカスタードなどの風味素材、ゼラチンなどの安定剤、糖類、増粘剤などを含んでもよい。
起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の水の含有量は30〜65重量%が好ましく、35〜60重量%がより好ましい。30重量%より少ないと、起泡性水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性が悪くなる場合がある。また65重量%を超えると、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が感じられない場合がある。
前記油脂は、食用油脂であれば特に限定されないが、乳脂肪と、乳脂肪以外の油脂に分けられる。調製済みの起泡性水中油型乳化油脂組成物に対し乳脂肪含有成分を添加する場合、起泡性水中油型乳化油脂組成物を構成する油脂は乳脂肪を含まなくともよいが、調製済みの起泡性水中油型乳化油脂組成物に対し乳脂肪含有成分を添加しない場合、起泡性水中油型乳化油脂組成物を構成する油脂は乳脂肪を必ず含有する。起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の油脂の含有量は、25〜50重量%が好ましく、30〜45重量%がより好ましい。25重量%より少ないと、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が感じられない場合がある。また50重量%を超えると、起泡性水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性が悪くなる場合がある。
また、前記油脂の総含有量は、ホイップドクリーム全体中25〜50重量%が好ましく、30〜45重量%がより好ましい。25重量%より少ないと、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が感じられない場合がある。また50重量%を超えると、起泡性水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性が悪くなる場合がある。
前記乳脂肪は、生クリームやバターなどの乳脂肪含有成分に含まれる脂肪分を指す。該乳脂肪の含有量は、ホイップドクリーム全体中又は起泡前材料全体中1〜25重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、1.4〜17.5重量%が更に好ましく、1.5〜15重量%が特に好ましく、2〜12.5重量%が最も好ましい。1重量%より少ないと、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が感じられない場合がある。また25重量%を超えると、フレッシュチーズ様の風味よりも、バターの風味が強く感じられる場合がある。
また、該乳脂肪の含有量は、ホイップドクリーム中の油脂全体中5〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、7〜35重量%が更に好ましく、8〜30重量%が特に好ましく、10〜25重量%が最も好ましい。5重量%より少ないと、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が感じられない場合がある。また50重量%を超えると、フレッシュチーズ様の風味よりも、バターの風味が強く感じられる場合がある。
乳脂肪含有成分としては、例えば、生クリーム、バター、バターオイル、バターミルク、全脂粉乳などを挙げることができるが、乳脂肪含有成分として生クリームを添加することが、風味の観点から好ましい。
前記生クリームを使用する場合、前記生クリームの含有量は、ホイップドクリーム全体中2〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、20〜35重量%が更に好ましい。2重量%より少ないと、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が劣る場合がある。また50重量%を超えると、フレッシュチーズ様の風味よりも、バターの風味が強く感じられる場合がある。なお、前記生クリームは、乳等省令で定義される「生乳、牛乳または特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分を18.0%以上にしたもの」をいい、本発明においては、乳脂肪分が30〜48%の生クリームが、良好なホイップ性を得る上で好ましい。
乳脂肪以外の前記油脂としては特に限定されないが、パーム系油脂、ラウリン系油脂(パーム核油、ヤシ油)、ナタネ油、コーン油、大豆油、綿実油、ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油等の植物性油脂、及び、牛脂、豚脂、魚油等の動物性油脂とこれら全ての油脂の分別油、硬化油、エステル交換油が挙げられる。中でも、パーム系油脂、ラウリン系油脂(パーム核油、ヤシ油)、ナタネ油、コーン油、大豆油、綿実油、ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油等の植物性油脂とこれら油脂の分別油、硬化油、エステル交換油が好ましく、パーム系油脂、ラウリン系油脂(パーム核油、ヤシ油)とこれら油脂の分別油、硬化油、エステル交換油がより好ましい。
前記親油性乳化剤は、例えば、HLBが1〜9のグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
前記親水性乳化剤は、例えば、HLBが7〜20のグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
前記香料は、香り成分を含む物であれば特に制限は無く、水溶性の物も、油溶性の物も使用でき、天然成分や人工成分に関わらず、食品用途として使用できるものが挙げられる。
前記乳固形分としては、カゼイン、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、乳糖、トータルミルクプロテイン、生乳、牛乳、全脂濃縮乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、ホエー、生クリーム、加糖練乳、無糖練乳、バター等の他、UF膜やイオン交換樹脂処理等により蛋白質を分離、分画したものや、カゼインナトリウムやカゼインカリウムのような乳蛋白質の塩類が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
前記糖類としては、例えば、ブドウ糖、砂糖、果糖、異性化糖、液糖、澱粉糖化物、デキストリン、糖アルコール等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
前記増粘剤としては、例えば、ジェランガム、グアガム、キサンタンガム、寒天、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、澱粉、デキストリン等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
本発明のホイップドクリームは、pHが6〜8.5を示すことが好ましく、6〜8がより好ましく、6.5〜8が更に好ましく、7〜8が特に好ましい。pHが6より低いと、苦味が感じられる場合がある。pHが8.5より高いと、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が感じられない場合がある。
前記ホイップドクリームのpHを前記範囲に調整するには、起泡前材料にアルカリ性物質を含有させることが好ましい。当該アルカリ性物質としては食用に使用可能なものであれば特に限定されないが、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、エタノールアミン、炭酸水素カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化第一鉄、石灰、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。中でも、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムが好ましい。ホイップドクリームのpHの調整は、起泡性水中油型乳化油脂組成物を作製するための材料に適切な量のアルカリ性物質を添加してから起泡性水中油型乳化油脂組成物を調製するか、もしくは、起泡性水中油型乳化油脂組成物を調製した後に、少量の水に適切な量のアルカリ性物質を溶解して起泡性水中油型乳化油脂組成物に添加し、起泡前材料とすればよい。アルカリ性物質の添加量は、炭酸ガスで起泡されたホイップドクリームが示すpHを考慮して適宜設定することができるが、前記ホイップドクリームのpHを前記範囲に調整しやすいため、起泡前材料全体中0.01〜0.5重量%であることが好ましく、0.02〜0.4重量%であることがより好ましく、0.03〜0.3重量%が更に好ましい。
本発明のホイップドクリームのオーバーランは、100〜300%が好ましく、130〜300%がより好ましく、140〜280%が更に好ましく、150〜250%が特に好ましい。オーバーランが100%未満だとシュワッと感があまり感じられない場合がある。300%を超えるとホイップドクリームの保型性が悪くなったり、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が弱く感じられる場合がある。
前記オーバーランの測定は、得られたホイップドクリームを100cmの容器に入れ、重量を測る。そしてそれら測定値を基に、次式でオーバーランを求めることができる。
オーバーラン(%)=[(100cm容積の起泡前材料の重量)−(100cm容積のホイップドクリームの重量)]÷(100cm容積のホイップドクリームの重量)×100
本発明のホイップドクリームの製造方法は、特に限定されないが、以下に例示する。まず、50〜70℃に加温し溶融した油脂に、必要に応じて親油性乳化剤、香料等の油溶性原料を混合し、該混合物を50〜70℃に維持しながら撹拌し、油相を調製する。また、50〜70℃の温水に、必要に応じて親水性乳化剤、乳固形分、糖類、増粘剤、香料等の水溶性原料を混合し、50〜70℃に維持しながら撹拌し、水相を調製する。そして、水相を撹拌しながらそこへ油相を添加して、予備乳化する。
その後、微細化、均質化、予備加熱、殺菌、1次冷却、均質化、2次冷却、3次冷却、エージングなど、起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造時に常法として行われる各処理を行うことにより、本発明のホイップドクリームの製造に用いる起泡性水中油型乳化油脂組成物を得ることができる。
なお、乳脂肪含有成分として生クリームを使用する場合、生クリームを前記水相及び/又は油相に添加してから起泡性水中油型乳化油脂組成物を製造してもよいし、あるいは、調製済みの起泡性水中油型乳化油脂組成物に対し生クリームを添加してもよい。前記生クリームの含有量は、起泡前材料全体中2〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、20〜35重量%が更に好ましい。
そして、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物と、必要により生クリーム等の乳脂肪含有成分及び/又は重曹等のアルカリ性物質を、密閉容器内に入れて炭酸ガスを充填した後、該密閉容器を振とうしたり、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物と、必要により生クリーム等の乳脂肪含有成分及び/又は重曹等のアルカリ性物質を密閉式連続ホイップマシンで流しながら、炭酸ガスを注入して起泡させ、トッピング、ナッペ、サンド等の使用目的に沿った適度な硬さに到達し、オーバーランが100〜300%になるまでホイップしたりすることで、本発明のホイップドクリームを得ることができる。
本発明では起泡前材料を炭酸ガスで起泡することによってpHがある程度低下することになるので、その低下分を見込んで、起泡前材料のpH値をやや高めに調整しておくことが好ましい。これによって、pHが所定範囲内にある本発明のホイップドクリームを得ることが容易になる。
前記密閉容器としては、例えば、日本炭酸瓦斯株式会社製「エスプーマスパークリング」を挙げることができる。前記密閉式連続ホイップマシンとしては、0.01〜0.8MPaでエアーや窒素ガスなどを注入して強制的にホイップするモンドミックス株式会社製「モンドミキサー」、伊藤忠マシンテクノス株式会社製「ホイップマスター」、株式会社愛工舎製作所製「ターボミックス」などが例示でき、炭酸ガスの注入量やミキシングヘッド部の回転数を変えることで、所定のオーバーランに調整することができる。
前記炭酸ガスは、炭酸ガス濃度が50〜100%が好ましく、65〜100%がより好ましく、75〜100%が更に好ましい。炭酸ガス濃度が50%未満では、フレッシュチーズ様で芳醇な風味やシュワッと感が弱く感じられる場合がある。
本発明のホイップドクリームを使用した食品としては、ホイップドクリームをフィリング、トッピング、サンドしたロールケーキ、タルト、ショートケーキ、デコレーションケーキ、シュークリーム、パンケーキ、ホットケーキなどの菓子、ホイップドクリームをサンドしたサンドウイッチ、菓子パン、デニッシュパンなどのパン、ホイップドクリームをトッピングしたゼリーやプリンなどのデザートが挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
<pH測定方法>
ホイップドクリームのpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製「F−52」)により測定した。
<オーバーラン評価法>
オーバーランとは、起泡前材料をホイップして得られるホイップドクリームに含まれるガスの割合を%で示したものであり、下式で求めた。
オーバーラン(%)=[(100cm容積の起泡前材料の重量)−(100cm容積のホイップドクリームの重量)]÷(100cm容積のホイップドクリームの重量)×100
<ホイップドクリームの官能評価>
熟練した10人のパネラーに、実施例および比較例で得られた各ホイップドクリームを試食してもらい、フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、及び苦味のなさの観点で各々の官能評価を行い、その評価点の平均値を官能評価の評価値として各表に記載した。その際の評価基準は以下の通りであった。
(フレッシュチーズ様で芳醇な風味)
5点:実施例1のホイップドクリームよりも、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が強く感じられて良い
4点:実施例1のホイップドクリームと同等に、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が感じられる
3点:実施例1のホイップドクリームよりも、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が弱く感じられるが、商品としては問題ないレベルである
2点:実施例1のホイップドクリームと比べて、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が殆ど感じられず悪い
1点:実施例1のホイップドクリームと比べて、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が全く感じられず大変悪い
(シュワッと感)
5点:実施例1のホイップドクリームよりも、シュワッと感が強く感じられて良い
4点:実施例1のホイップドクリームと同等に、シュワッと感が感じられる
3点:実施例1のホイップドクリームよりも、シュワッと感が弱く感じられるが、商品としては問題ないレベルである
2点:実施例1のホイップドクリームと比べて、シュワッと感が殆ど感じられず悪い
1点:実施例1のホイップドクリームと比べて、シュワッと感が全く感じられず大変悪い
(苦味のなさ)
5点:実施例1のホイップドクリームと比べて、苦味が感じられず大変良い
4点:実施例1のホイップドクリームと同等に、苦味が僅かしか感じられない
3点:実施例1のホイップドクリームと比べて、苦味がやや感じられるが、商品としては問題ないレベルである
2点:実施例1のホイップドクリームよりも、苦味が強く感じられて悪い
1点:実施例1のホイップドクリームよりも、苦味が非常に強く感じられて大変悪い
(総合評価)
フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、及び苦味のなさの各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、及び苦味のなさの評価が全て4.0点以上5.0点以下を満たすもの
B:フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、及び苦味のなさの評価が全て3.5点以上5.0点以下であって、且つ3.5以上4.0未満が少なくとも一つあるもの
C:フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、及び苦味のなさの評価が全て3.0点以上5.0点以下であって、且つ3.0以上3.5未満が少なくとも一つあるもの
D:フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、及び苦味のなさの評価が全て2.0点以上5.0点以下であって、且つ2.0以上3.0未満が少なくとも一つあるもの
E:フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、及び苦味のなさの評価において、2.0未満が少なくとも一つあるもの
(製造例1) ランダムエステル交換油の作製
パーム核オレイン油(株式会社カネカ製):50重量部及びパーム油(株式会社カネカ製):50重量部を混合し、90±2℃、真空下で脱水を行った。ナトリウムメチラート(東ソー株式会社製):0.3重量部を加え、90±2℃、窒素気流下で30分間ランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止後、水洗した。次に、活性白土(水澤化学工業株式会社製):3.0重量部を加え、減圧下で攪拌して20分後に全量濾過して、上昇融点29℃のランダムエステル交換油を得た。
(製造例2) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表1に示す配合に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物を作製した。即ち、パーム核油(株式会社カネカ製「パーム核油」:融点27℃)25.0重量部と、パーム核極度硬化油(株式会社カネカ製「パーム核極度油」:融点40℃)5.0重量部と、ランダムエステル交換油(製造例1)7.0重量部に、大豆レシチン(ADM社製「Yelkin TS」)0.2重量部、テトラグリセリンモノステアレート(阪本薬品工業株式会社製「SYグリスターMS−3S」、HLB:8.4)0.1重量部を添加し、65℃で溶解して油相部とした。
一方、ヘキサグリセリンモノステアレート(阪本薬品工業株式会社製「SYグリスターMS-5S」、HLB:11.6)0.12重量部、脱脂粉乳(よつば乳業株式会社製「脱脂粉乳」)2.8重量部、ホエイパウダー(雪印メグミルク株式会社製「ホエイパウダー」)2.0重量部、カゼインカリウム(DMV社製「カゼインカリウムSPRAY」)0.30重量部、デキストリン(サンエイ糖化株式会社製「NSD500」)1.5重量部を、表1の配合と最終的に同じになるようにスチームインジェクション(蒸気加熱工程)で水分増加量を考慮した量の60℃の温水に溶解して水相部を作製した。
前記の油相部と水相部を20分間予備乳化後、高周速回転式乳化機(エム・テクニック(株)製「クレアミックス」)を用いて周速31.4m/sの回転速度で微細化した後、高圧ホモジナイザーを用いて1段目2MPa/2段目1MPaの圧力で処理した後に、プレート式加熱機を用いて90℃まで予備加熱した後、UHT殺菌機(スチームインジェクション)を用いて142℃で4秒間殺菌処理し、蒸発冷却せずにその後プレート式冷却機を用いて60℃まで冷却し、再び高圧ホモジナイザーを用いて1段目6MPa/2段目2MPaの圧力で処理し、その後、プレート式冷却機で5℃まで冷却したものを容器に充填し、起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。
Figure 2020080811
(製造例3) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表1の配合に従い、製造例2において、水相部に重曹0.05重量部を添加し、添加水を減らして全体量を合わせた以外は、製造例2と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物を作製した。
(製造例4) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表1の配合に従い、製造例2において、全ての原材料の添加量を76重量部に減らし、水相部に重曹0.05重量部と生クリーム23.95重量部を添加した以外は、製造例2と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物を作製した。
(実施例1) ホイップドクリームの作製
製造例2の起泡性水中油型乳化油脂組成物:74.3重量部、生クリーム(乳脂肪分42%):23.7重量部、及び、重曹(AGC株式会社製「重曹」)0.2重量部を水1.8重量部に溶解した水溶液の混合溶物(300g)を密閉容器(「エスプーマスパークリングM」:日本炭酸瓦斯社製)内に入れ密封し、付属のソーダカートリッジ(二酸化炭素8g)を取扱い説明書に従って挿入し、二酸化炭素を同密閉容器内に封入した。同密閉容器を上下に30回振とうさせ、内容物を絞り出してホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームのpH、オーバーラン、風味の評価を表2に示した。
Figure 2020080811
(比較例1) ホイップドクリームの作製
表2の配合に従い、実施例1において、生クリームの全量を製造例2の起泡性水中油型乳化油脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームのpH、オーバーラン、風味の評価を表2に示した。
(実施例2及び3、比較例2) ホイップドクリームの作製
表2の配合に従い、実施例1において、製造例2の起泡性水中油型乳化油脂組成物と生クリームの混合比率を変更した以外は、実施例1と同様にして、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームのpH、オーバーラン、風味の評価を表2に示した。
表2から明らかなように、油脂中の乳脂肪分が5〜50重量%の範囲にあるホイップドクリーム(実施例1〜3)は、フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、苦味のなさは、いずれも良好であった。特に、油脂中の乳脂肪分が26.6重量%のホイップドクリーム(実施例1)が、最も良好な評価であった。一方、乳脂肪分を含まないホイップドクリーム(比較例1)は、フレッシュチーズ様で芳醇な風味が全く感じられなかった。また、油脂中の乳脂肪分が59.2重量%のホイップドクリームは、乳脂肪の風味が強く感じられ、フレッシュチーズ様で芳醇な風味は殆んど感じられなかった。
(実施例4及び5、比較例4) ホイップドクリームの作製
表3の配合に従い、実施例1において、重曹を炭酸ナトリウム(藤井薬品株式会社製「炭酸ナトリウム(無水)」)に変更し、水の添加量で全体量を合わせた以外は、実施例1と同様にして、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームのpH、オーバーラン、風味の評価を表3に示した。
Figure 2020080811
(比較例3) ホイップドクリームの作製
表3の配合に従い、実施例1において、重曹を添加せず、その減少分を添加水で調整した以外は、実施例1と同様にして、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームのpH、オーバーラン、風味の評価を表3に示した。
表3から明らかなように、pHが6〜8.5の範囲にあるホイップドクリーム(実施例1、4及び5)は、フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、苦味のなさは、いずれも良好であった。特に、pHが7.20のホイップドクリーム(実施例4)は、苦味が殆んど感じられず良好であった。一方、重曹を添加しておらずpHが5.85と低いホイップドクリーム(比較例3)は、苦味が強く感じられた。さらに、pHが8.76と高いホイップドクリーム(比較例4)は、苦味は殆んど感じられなかったものの、シュワッと感がやや弱くなり、フレッシュチーズ様で芳醇な風味があまり感じられなかった。
(実施例6) ホイップドクリームの作製
表4の配合に従い、実施例1において、重曹と溶解水を添加せず、その減少分と製造例2の起泡性水中油型乳化油脂組成物の全量を製造例3の起泡性水中油型乳化油脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームのpH、オーバーラン、風味の評価を表4に示した。
Figure 2020080811
表4から明らかなように、起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製過程で重曹を添加しpHが6.39のホイップドクリーム(実施例6)は、フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、苦味のなさは、いずれも良好であった。
(実施例7) ホイップドクリームの作製
表4の配合に従い、実施例1において、生クリーム、重曹、及び、溶解水を添加せず、その減少分と製造例2の起泡性水中油型乳化油脂組成物の全量を製造例4の起泡性水中油型乳化油脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームのpH、オーバーラン、風味の評価を表4に示した。
表4から明らかなように、起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製過程で生クリームと重曹を添加しpHが6.41のホイップドクリーム(実施例7)は、フレッシュチーズ様で芳醇な風味、シュワッと感、苦味のなさは、いずれも良好であった。
(実施例8) ホイップドクリームの作製
表4の配合に従い、実施例1において、密閉容器の振とう回数を30回から40回に変更した以外は、実施例1と同様にして、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームのpH、オーバーラン、風味の評価を表4に示した。
表4から明らかなように、オーバーランが274%のホイップドクリーム(実施例8)は、苦味が若干感じられたものの、シュワッと感が非常に強くて口どけが軽く感じられ、また、フレッシュチーズ様で芳醇な風味も強く感じられた。
(比較例5) ホイップドクリームの作製
表4の配合に従い、実施例1において、密閉容器を「エスプーマスパークリングM(日本炭酸瓦斯社製)」から「エスプーマアドバンス(日本炭酸瓦斯社製)」に変え、二酸化炭素を亜酸化窒素ガスに変更した以外は、実施例1と同様にして、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームのpH、オーバーラン、風味の評価を表4に示した。
表4から明らかなように、亜酸化窒素ガスでホイップしたホイップドクリーム(比較例5)は、苦味はなかったものの、フレッシュチーズ様で芳醇な風味とシュワッと感は全く感じられなかった。
(実施例9) パンケーキの作製
以下の手順でパンケーキを作製した。即ち、砂糖(東洋精糖株式会社製「グラニュー糖」):26重量部、全卵(キューピータマゴ株式会社製「液全卵(殺菌):23重量部、牛乳(株式会社カネカ製「パン好きの牛乳」):9重量部、及び水:110重量部を混合して均一な液状にした後、篩を通した薄力粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」):100重量部及びベーキングパウダー(大宮糧食工業株式会社製「アイコク ベーキングパウダー(赤缶)」):6重量部を混合し、最後に液状ショートニング(株式会社カネカ製「マリーパート」):20重量部を加えて軽く混合して、流動性の生地を製造した。180℃に熱した銅板に油をひき、上記生地を、1枚が約50gになるように鉄板上に流して、片面を約100秒間かけて焼成した後、裏返して80秒間焼成して、直径が約100mm、厚さが約8mmのパンケーキを得た。
得られたパンケーキに、実施例1のホイップドクリーム40gをトッピングし、パンケーキと一緒に食したところ、ホイップドクリームのフレッシュチーズ様で芳醇な風味とシュワッと感が感じられ、且つホイップドクリームの軽い食感とパンケーキの軟らかな食感が非常にマッチして美味であった。
(比較例6) パンケーキの作製
実施例9において、製造例1のホイップドクリームを、比較例5のホイップドクリームに変更した以外は、実施例9と同様にして、ホイップドクリームをトッピングしたパンケーキを得た。これを食したところ、ホイップドクリームにはフレッシュチーズ様で芳醇な風味やシュワッと感が全く感じられず、風味や食感に目新しさはなく、物足りないものであった。

Claims (7)

  1. 油脂をホイップドクリーム全体中25〜50重量%含有し、乳脂肪を該油脂全体中5〜50重量%含有し、炭酸ガスで起泡されており、pHが6〜8.5を示すホイップドクリーム。
  2. オーバーランが100〜300%である、請求項1に記載のホイップドクリーム。
  3. 生クリームをホイップドクリーム全体中2〜50重量%含有する、請求項1又は2に記載のホイップドクリーム。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載のホイップドクリームがフィリング、トッピング、又はサンドされた食品。
  5. 起泡前材料全体中、起泡性水中油型乳化油脂組成物を50〜100重量%含有し、乳脂肪を1〜25重量%含有する起泡前材料であって、
    前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中に油脂を25〜50重量%、水を30〜65重量%含有する起泡前材料を、
    炭酸ガスで起泡させてpHが6〜8.5のホイップドクリームを得ることを特徴とするホイップドクリームの製造方法。
  6. 生クリームを起泡前材料全体中2〜50重量%含有する、請求項5に記載のホイップドクリームの製造方法。
  7. アルカリ性物質を起泡前材料全体中0.01〜0.5重量%含む、請求項5又は6に記載のホイップドクリームの製造方法。
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