JP4253978B2 - カスタード風味クリームとその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長期保存に優れ、流通に適し、しかも風味良好な、製菓、製パン用のフィリング、トッピング材として広く用いることのできるカスタード風味クリーム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
製菓、製パン用のクリームとして、代表的なものに、カスタードクリーム、ホイップクリーム、バタークリーム等がある。また、洋菓子の業界では、カスタードクリームとホイップクリームをブレンドした、いわゆるシャルロットクリーム(ディプロクリーム)とよばれるものもある。このシャルロットクリームは、ホイップクリームの口溶けの良さと、カスタードクリームの卵黄風味を合わせ持ったものとして、最近、シュークリームなどのサンドクリームとして良く利用されている。
【0003】
しかしこのクリームは、特に衛生上の点から日持ちが悪く、用途が限定されるほか、製造に手間がかかり、ブレンドに習熟が必要であるという問題があった。衛生上の点からは、保存料などの使用もなされているが、風味を損なうという欠点がある。
【0004】
この様なシャルロットクリームにかわるものとして、卵黄と特定量の油脂、乳化剤、澱粉を使用し、高圧均質化処理して得られるカスタード風味起泡性乳化物が提案されているが(特公平6−97965)、常温での品質安定性を目指したものではない。また、この方法では、高圧による乳化が必要なため、粒の残る風味素材(例えばリンゴ果肉のプレザーブ、ダイスカットマロンの糖漬け、粒ナッツ等)が入れられず、風味のバリエーションが付けにくいという問題がある。
【0005】
一方、主にポリグリセリン縮合リシノレートなどの強力な乳化力を持つ乳化剤を使用した低脂肪のスプレッド類(特開昭61−85141など)もあるが、このような乳化剤は風味が悪く、また乳化力が強いため、組成物の風味や食感などを悪くするという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、この様な従来のクリーム、特にシャルロットクリームの問題点を解決し、シャルロットクリーム風の滑らかで軽い食感を有し、卵黄の風味が良く、常温流通のパン菓子類に使えるような良好な保存性を有し、味付けのバリエーションが豊かな、カスタード風味クリームを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者は、それ自体、低脂肪で口溶けが良く適切な糖濃度で保存性の高いファットスプレッドと、糖濃度の高い、特定の増粘多糖類を組み合わせた加糖澱粉ペーストと、卵黄を豊富に含み糖濃度を適切に調整した水性液とを、別々に調整した後混合することで、上述したようなカスタード風味クリームが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明の第1は、油脂含有量が35〜60重量%であり、かつ、その水相中の糖濃度が60〜75%であり、乳化剤として0.1〜0.5重量%のレシチンと0.3〜1.0重量%のソルビタン脂肪酸エステルのいずれかあるいは両方を含有する低脂肪ファットスプレッド(A)と、糖濃度が60〜70%である加糖澱粉ペースト(B)と、卵黄を含有する水性液(C)とを主成分として、それぞれ別々に調整した後で混合して得られる、油分含有率が20〜40重量%、卵黄含有率が1.5〜7重量%、澱粉含有率が0.2〜3%の範囲であるカスタード風味クリームに関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、加糖澱粉ペースト(B)中に、増粘剤として、0.1〜0.8重量%のカラギーナンと0.01〜0.2重量%のキサンタンガムを含有する上記カスタード風味クリームに関する。
【0011】
更に別の好ましい実施態様としては、水性液(C)で使用される卵黄が、酵素未処理卵黄である上記カスタード風味クリームに関する。
【0013】
本発明の第2は、低脂肪ファットスプレッド(A)と加糖澱粉ペースト(B)と卵黄を含有する水性液(C)とを、それぞれ別々に調整した後で混合することを特徴とするカスタード風味クリームの製造方法に関する。
【0014】
本発明の第3は、これらカスタード風味クリームを含有してなるパン、菓子類に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のカスタード風味クリーム及びその製造法について説明する。
【0016】
まず、低脂肪スプレッド(A)について説明する。
【0017】
本発明の低脂肪スプレッド(A)は、油脂と水相と乳化剤からなる油中水型乳化組成物である。
【0018】
本発明において使用される油脂の種類に特に限定はなく、コーン油、菜種油、大豆油、ヤシ油、パーム油等の植物油、ラード、牛脂、魚油、乳脂等動物油、及びそれらの硬化油・エステル交換油を、単独またもしくは2種以上を組み合わせて任意に用いることが出来る。これら油脂または油脂混合物の上昇融点は25〜40℃の範囲であるのが、低脂肪スプレッドに可塑性を付与できるため、好ましい。またこれら油脂は、低脂肪スプレッド(A)中に、35〜60重量%の範囲で含有されているのが好ましい。油脂の含有量が35%未満であると、最終のクリームの安定性が低下し、含有量が60%を超えると、油感が生じ、食感を損なう傾向がある。
【0019】
本発明の低脂肪スプレッド(A)に使用される乳化剤としては、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、これらを1種または2種以上併用して使用する。特に、レシチンとソルビタン脂肪酸エステルのいずれかあるいはその両方を、それぞれ、低脂肪スプレッド(A)中、0.1〜0.5重量%、0.3〜1.0重量%の範囲で使用するのが好ましい。ポリグリセリン縮合リシノレートなどの強力な乳化力を持つ乳化剤は、風味や食感を悪化させるため使用しないのが良い。
【0020】
上記油脂に、これら乳化剤を添加し、必要に応じて、β―カロチン、アナトー色素などの油溶性の着色料をさらに添加し、加温融解して油相とする。さらに必要に応じて、カカオマス、ココアパウダー、ピーナッツバターなどの油性の味付け素材を油相に加えても良い。
【0021】
一方、水及び糖類を主成分とし、好ましくは糖濃度を60〜75重量%に調整して加熱殺菌したものを、水相とする。
【0022】
本発明における水相中の糖濃度は、次の式で表されるものである。
【0023】
糖濃度=水相中の糖分/(水相中の糖分+水相中の水分)
水相の糖濃度が上記範囲より低いと、保存性が損なわれ、高すぎると、他の原料の溶解性を妨げることがあり、好ましくない。
【0024】
本発明において、使用される糖類にはとくに制限はなく、単糖類、2糖類のほか、異性化糖、水飴、還元水飴、糖アルコールなどの粉体、液体の様々な糖類を用いることができる。
【0025】
更に水相に、必要に応じて、加糖練乳などの水性の味付け素材や香料を加えても良い。また、必要に応じて、各種増粘剤、澱粉等を加えても良いが、水相の粘度が高すぎると乳化破壊したり、口どけを損なうため、その添加量は多すぎない方が好ましい。
【0026】
上記油相と水相を混合し、これを通常の急冷ねつ和機にて、可塑性の油中水型乳化油脂組成物とし、本発明の低脂肪ファットスプレッド(A)を得る。ここで、急冷ねつ和機としては、例えば、ボテーターやコンビネーターが用いられる。こうして得られた低脂肪スプレッド(A)を、望ましくは一旦2〜10℃に冷却し、十分に油脂の結晶を析出させたのち常温に温調して使用する。
【0027】
次に、加糖澱粉ペースト(B)について説明する。
【0028】
本発明における加糖澱粉ペースト(B)は、糖類と澱粉類を加熱殺菌機などで糊化した、フラワーペースト状の澱粉加工品である。
【0029】
加糖澱粉ペースト(B)の糖濃度は60〜70%の範囲が好ましい。糖濃度が60%未満では保存性が低下し、糖濃度が70%を超えると澱粉の膨潤不足となり、粘度が不足したり、ざらつきを生じることがあり、食感を損なうので、好ましくない。ここでいう糖濃度は上述の低脂肪ファットスプレッドの定義と同じく、糖分と水分のみの割合を指し、澱粉や後述する増粘剤などは考慮しない。
【0030】
使用する澱粉類は、特に限定されないが、コーン、タピオカ等の澱粉や、それらに化学的な修飾を施した加工澱粉等が挙げられる。特に、本発明のように糖濃度が高い場合は、α化澱粉を用いると粘度が出やすいため、好適である。但し、α化澱粉は、低温時でも粘度が上昇し攪拌しにくいという欠点もあるため、その他の加工澱粉類と併用するのが望ましい。加糖澱粉ペースト(B)中の澱粉類の含有率は特に制限されないが、最終のカスタード風味クリームに所定量含有されるように調整するのが好ましい。また、用いる装置によっては、澱粉類の添加率が多いと、粘度が高くなりすぎ、送液等のハンドリングが困難になるため、加糖澱粉ペースト(B)中、概ね15%以下に抑えるのが好ましい。
【0031】
本発明の加糖澱粉ペースト(B)では、特定の増粘剤、カラギーナン及びキサンタンガムを、それぞれ、0.1〜0.8重量%、0.01〜0.2重量%の割合で含有させるのが好ましい。また、上記増粘剤以外に、グァーガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、ローカストビーンガムなどの増粘剤と併用しても良い。本発明のような加糖澱粉ペーストでは、糖濃度が比較的高い状態で澱粉を膨潤させるために、保存中にシロップ分が分離することがある。本発明では、カラギーナンとキサンタンガムを併用することで、シロップ分の分離を抑制し、加糖澱粉ペーストや最終のクリームの保存性を高めることに効果がある。これら増粘剤の含有量が少ないと効果が低く、多すぎると、粘度が増し、混合しにくくなるだけでなく、口溶けなどの食感を損なう可能性がある。
【0032】
これら糖類、水、澱粉と増粘剤を混合し、50〜55℃程度に適当な時間加温して増粘剤を溶解させた後、加熱殺菌装置にて澱粉類を糊化させて、本発明の加糖澱粉ペースト(B)を得る。但し、溶解する温度が澱粉の糊化する温度より高い増粘剤を使用する場合は、加温中に澱粉が糊化して粘度が上がり、攪拌効率が悪化することを避けるため、別に増粘剤を溶かして添加するなどの措置が必要である。
【0033】
加糖澱粉ペースト(B)の粘度は100〜500ポイズの範囲に調整するのが望ましい。得られた澱粉ペーストは、室温〜5℃まで冷却したあとで、混合に供される。
【0034】
続いて、卵黄を含有する水性液(C)について説明する。
【0035】
本発明の水性液(C)は、卵黄やその他の風味素材を含み、糖濃度が適度に調整された、呈味水性液である。卵黄などの風味成分を上記の加糖澱粉ペーストに添加することも考えられるが、加熱殺菌時に風味が損なわれやすいため、本発明では、水性液として別途混合する。この方が、卵黄の風味が効果的に発現するだけではなく、加糖澱粉ペーストの糖濃度を調整しやすいという利点も有する。
【0036】
水性液(C)に使用される卵黄は、卵黄または加糖卵黄であり、好ましくは酵素処理をしていないものを使用する。卵黄の含有率は、特に限定されないが、5〜25重量%、水性液の糖濃度は特に限定されないが、60〜75%の範囲が好ましい。水性液(C)には、必要に応じて、乳製品や、果実加工品、コーヒー、バニラ、各種香料、酸味料などの風味原料、各種着色料を加えることができる。これら成分を良く混合し、加熱殺菌して、本発明の卵黄を含有する水性液(C)とする。得られた水性液は室温に冷却して混合に供する。この水性液は、クリームの混合の直前に調整するのが望ましいが、衛生的に保管した後利用することも可能である。
【0037】
最後に、本発明のカスタード風味クリームの調製について説明する。
【0038】
まず、低脂肪スプレッド(A)を温調し、混合に適した硬さにする。ここでいう混合に適した硬さとは、ペネ値で大体150〜280の範囲である。これより硬ければ、混合しにくく、これ以上軟らかいと分離をまねき、起泡し難い。
【0039】
次に、低脂肪スプレッド(A)と、加糖澱粉ペースト(B)と卵黄を含有する水性液(C)を、縦型のミキサーなどで混合し、含気させて、本発明のカスタード風味クリームとする。ここで、得られたカスタード風味クリームの、油分含有率が20〜40重量%、卵黄含有率が1.5〜7重量%、澱粉含有率が0.2〜3重量%の範囲となるように、配合するのが好ましい。油分が20重量%未満では保存安定性が悪く、40重量%を超えると食感が悪い傾向がある。また、卵黄含有率が1.5重量%未満では、風味、食感が悪く、7重量%を超えると、保存安定性が悪く、常温でオイルオフを起しやすい。澱粉含有率が0.2重量%未満だと澱粉特有の食感がでにくく、3重量%を超えるともちのような食感が生じ、食感が悪くなる傾向がある。
【0040】
本発明のカスタード風味クリームには、その他の成分を更に添加することもできる。例えば、香料、洋酒、果実、ナッツ、カカオ、野菜等の加工品、餡、ゼリー等の食品などである。特に、ダイスカットされた果実のプレザーブなど、水性液とともに加熱殺菌することで果肉の粒が無くなってしまう呈味素材や、チョコレートソースのように油性のものは、水性液中には添加せず、別途、添加混合するのが望ましい。香料、洋酒以外の成分は、予め加熱殺菌、糖漬け、pH調整などを行い、それ自体の保存性を十分に高めた上で添加するのが良い。
【0041】
この様にして得られる本発明のカスタード風味クリームは、シャルロットクリーム風の滑らかで軽い食感を有し、卵黄の風味が良く、良好な保存性を有するだけでなく、製造も容易で、上述したように果実やナッツ、ゼリー、ジャムなどの固形分の風味素材も使用できるため、味付けのバリエーションが豊かなクリームである。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
パーム油15部、魚油硬化油(融点30℃)55部、魚油硬化油(融点40℃)10重量部、菜種油20部からなる油脂(融点30℃)に、表1(a−1)に示した配合で、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルを加え65℃に加温融解して油相とした。また、同じく表1(a−1)に示した配合で、水飴(糖濃度75%)、加糖練乳、水を混合し、糖濃度60%としたものを70℃で20分間加熱殺菌して水相とした。上記油相に水相を加えてボテーターを用いて、常法によりスプレッドを得、これを、1日間5℃で冷蔵したあと、20℃に温調した。
【0044】
一方、表2(b−1)に示した配合で、水飴(糖濃度75%)と水を糖濃度65%に調整し、加工澱粉、カラギーナン、キサンタンガムを添加、攪拌し十分に分散させたものを50℃に昇温し、増粘剤を溶かしたのち、さらに加熱し澱粉を糊化させ、加糖澱粉ペースト(b−1)を得て、5℃に冷却保管した。
【0045】
さらに、表3(c−1)に示した配合で、加糖卵黄(酵素未処理、糖濃度20%)、水飴、生乳、上白糖を混合し糖濃度60%としたものを70℃で20分間加熱殺菌して水性液(c−1)を得、20℃まで冷却した。
【0046】
これらファットスプレッド(a−1)、加糖澱粉ペースト(b−1)、水性液(c−1)、及び香料を、表4の割合で、縦型ミキサー(関東ミキサー株式会社製)を用いて混合し、比重0.7まで起泡させ、カスタード風味クリームを得た。
【0047】
(実施例2)
コーン硬化油(融点36℃)6部、魚油硬化油(融点30℃)54部、パーム油15部、大豆油25部からなる油脂(融点28℃)に、表1(a−2)に示した配合で、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステルを加え、65℃に加温融解して油相とした。また、水飴(糖濃度75%)を70℃で20分間加熱殺菌して水相とした。上記油相に水相を加えてボテーターを用いて、常法によりスプレッド(a−2)を得、これを実施例1と同様に、冷却後温調した。
【0048】
一方、表2(b−2)に示した配合で、ソルビット(糖濃度70%)と水を混合し糖濃度60%としたものに、加工澱粉、α化澱粉、カラギーナン、キサンタンガムを添加し、実施例1と同様の方法で加糖澱粉ペースト(b−2)を得た。
【0049】
さらに、表3(c−2)に示した配合で、加糖卵黄、水飴、麦芽糖、水、加糖練乳を混合し、実施例1と同様の方法で殺菌して、水性液(c−2)を得、25℃まで冷却した。
【0050】
これらファットスプレッド(a−2)、加糖澱粉ペースト(b−2)、水性液(c−2)、香料を、表4の割合で、縦型ミキサー(関東ミキサー株式会社製)を用いて混合し、比重0.85まで起泡させ、カスタード風味クリームを得た。
【0051】
(実施例3)
大豆硬化油(融点34℃)50部、魚油硬化油(融点30℃)30部、コーン油15部からなる油脂(融点32℃)に、表1(a−3)に示した配合で、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステルを加え、65℃に加温融解して油相とした。また、同じく表1(a−3)に示した配合で、水飴(糖濃度75%)、水、加糖練乳を混合し糖濃度65%としたものに、α化澱粉を加え、70℃で20分間加熱殺菌して水相とした。上記油相に水相を加えて、実施例1と同じく、スプレッド(a−3)を得た。
【0052】
一方、表2(b−3)に示した配合で、水飴、上白糖、麦芽糖、水を混合し糖濃度70%としたものに、加工澱粉、カラギーナン、キサンタンガムを添加し、実施例1と同様の方法で加糖澱粉ペースト(b−3)を得た。
【0053】
さらに、表3(c−3)に示した配合で、加糖卵黄、水飴、水、加糖練乳、インスタントコーヒー、カラメル色素を混合し、実施例1と同様の方法で殺菌し、水性液(c−3)を得、これを20℃まで冷却した。
【0054】
これらファットスプレッド(a−3)、加糖澱粉ペースト(b−3)、水性液(c−3)、及び香料を、表4の割合で、縦型ミキサー(関東ミキサー株式会社製)を用いて混合し、比重0.75まで起泡させ、コーヒー入りのカスタード風味クリームを得た。
【0055】
(実施例4)
実施例3のファットスプレッドで使用する乳化剤のうち、ソルビタン脂肪酸エステルを同量のグリセリン脂肪酸エステルに置き換えた以外は同条件で、ファットスプレッド(a−4)を作製し、冷却後温調した。
【0056】
表3(c−4)に示した配合で、加糖卵黄、水飴、水、リンゴ酸を混合し、実施例1と同様の方法で殺菌し、水性液(c−4)を得、20℃まで冷却した。また、ダイスカットしたリンゴに、糖、酸味料を加え加熱殺菌し、糖濃度70%としたリンゴ加工品を作製した。
【0057】
上記ファットスプレッド(a−4)、実施例3と同じ加糖澱粉ペースト(b−3)、水性液(c−4)、リンゴ加工品、及び香料を、表4の割合で縦型ミキサーで混合し、比重0.75まで起泡させ、リンゴの果肉入りのカスタード風味クリームを得た。
【0058】
(実施例5)
実施例2の水性液(c−2)で使用する加糖卵黄を、酵素処理した卵黄に代えた水性液(c−5)を用いた以外は、実施例2と同配合・同条件でカスタード風味クリームを作成した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
(実施例の評価)
実施例1〜5のカスタードクリームを5℃に1ヶ月間保管したのち、20℃に温調したものの、風味、食感、水性液の分離を調べた。風味、食感は数名のパネラーによる官能試験で調べた。水性液の分離は、油中水組成物をろ紙上に薄く延ばして、分離の有無を調べた。その結果、実施例1〜5のカスタード風味クリームは、いずれも風味、食感が良好で、水分の分離もなかった。但し実施例5のクリームは、卵黄の風味はあるが、実施例2のクリームと比較すると油感が若干強い傾向があった。
【0063】
またこれら実施例1〜5のカスタード風味クリームを2〜8℃に90日保管したものは、状態の変化がなく、十分に使用できるものであった。さらにこれらのカスタード風味クリームを20℃に5日保管したものも、油水の分離、腐敗等のない十分に使用できるものであった。
【0064】
(比較例1)
実施例1のファットスプレッド(a−1)、水性液(c−1)及び香料と、加糖澱粉ペーストの代わりに液糖(糖濃度75%)を使用し、表4に示す割合で、縦型ミキサー(関東ミキサー株式会社製)を用いて混合し、比重0.7まで起泡させ、カスタード風味クリームを得た。
【0065】
このクリームは、澱粉特有の食感がなく、油感のある口当たりの悪いものであった。
【0066】
(比較例2)
実施例2のスプレッド(a−2)の乳化剤を、表1(a−5)に示すように、ポリグリセリン縮合リシノレートに置き換えた以外は、実施例2と同配合・同条件でカスタード風味クリームを作成した。
【0067】
このクリームは、実施例2のクリームと比較すると油感が強く、乳化剤の影響で風味が良くないものであった。
【0068】
【発明の効果】
以上の結果が示すように、本発明のカスタード風味クリームは、風味食感が良好で、かつ、良好な保存性を有する、製菓、製パン用のフィリング、トッピング材として好適なものである。
Claims (5)
- 油脂含有量が35〜60重量%であり、かつ、その水相中の糖濃度が60〜75%であり、乳化剤として0.1〜0.5重量%のレシチンと0.3〜1.0重量%のソルビタン脂肪酸エステルのいずれかあるいは両方を含有する低脂肪ファットスプレッド(A)と、糖濃度が60〜70%である加糖澱粉ペースト(B)と、卵黄を含有する水性液(C)とを主成分として、それぞれ別々に調整した後で混合して得られる、油分含有率が20〜40重量%、卵黄含有率が1.5〜7重量%、澱粉含有率が0.2〜3%の範囲であるカスタード風味クリーム。
- 加糖澱粉ペースト(B)中に、増粘剤として、0.1〜0.8重量%のカラギーナンと0.01〜0.2重量%のキサンタンガムを含有する、請求項1記載のカスタード風味クリーム。
- 水性液(C)で使用される卵黄が、酵素未処理卵黄である請求項1又は2に記載のカスタード風味クリーム。
- 低脂肪ファットスプレッド(A)と加糖澱粉ペースト(B)と卵黄を含有する水性液(C)とを、それぞれ別々に調整した後で混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカスタード風味クリームの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のカスタード風味クリームを含有してなるパン、菓子類。
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