以下、図面を適宜参照して、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る時分割多重MIMOレーダ装置(以下単に「レーダ装置」という)の構成例を示す。レーダ装置1は、レーダ送信部100と、レーダ受信部200とを有する。レーダ送信部100は、複数の送信アンテナTx#1〜Tx#Ntを時分割で切り替えて送信信号を送信する。レーダ受信部200は、レーダ送信部100から送信された送信信号がターゲット(物体)から反射された反射信号を受信し、ターゲットの方向を推定する。
<レーダ送信部100>
次に、レーダ送信部100について説明する。レーダ送信部100は、複数のレーダ送信信号生成部101と、切替制御部105と、送信RF切替部106と、Nt個の送信RF部107#1〜#Ntと、Nt個の送信アンテナTx#1〜#Ntとを有する。送信アンテナTx#1〜#Ntを、送信アレーアンテナ部と呼んでもよい。
レーダ送信信号生成部101は、符号生成部102と、変調部103と、帯域制限フィルタ(LPF:Low Pass Filter)104とを有する。
送信RF切替部106は、切替制御部105から出力される切替制御信号に基づき、複数の送信RF部107のうちの1つを選択する。そして、送信RF切替部106は、レーダ送信信号生成部から出力されるベースバンドの送信信号を、その選択した送信RF部107へ出力する。
送信RF切替部106によって選択された送信RF部107は、当該送信RF切替部106から出力されるベースバンドの送信信号を、所定の無線周波数帯に周波数変換し、当該送信RF部107に接続されている送信アンテナTxへ出力する。
送信アンテナTx#1〜#Ntは、送信RF部107#1〜#Ntにそれぞれ接続されている。送信アンテナTxは、送信RF部107から出力された送信信号を、空間に放射する。
次に、レーダ送信部100の動作について詳細に説明する。
レーダ送信信号生成部101は、基準信号発生器Loから出力されるリファレンス信号を所定数倍したタイミングクロックを生成し、その生成したタイミングクロックに基づいて、送信信号を生成する。そして、レーダ送信信号生成部101は、所定の送信周期Tr毎に、送信信号を出力する。送信信号は、y(kt,M)=I(kt,M)+jQ(kt,M)で表される。ここで、jは虚数単位を表し、ktは離散時刻を表し、Mは送信周期の序数を表す。また、I(kt,M)及びQ(kt,M)は、第M番目の送信周期Trの離散時刻ktにおける、送信信号y(kt,M)の同相成分(In-Phase成分)及び直交成分(Quadrature成分)を表す。
符号生成部102は、第M番目の送信周期Trにおいて符号長Lの符号系列の符号an(M)を生成する(n=1,…,L)。符号an(M)には、低レンジサイドローブ特性が得られるパルス符号を用いる。符号系列としては、例えば、Barker符号、M系列符号、Gold符号が挙げられる。
変調部103は、符号生成部から出力された符号an(M)に対してパルス変調(振幅変調、ASK(Amplitude Shift Keying)、パルスシフトキーイング)又は位相変調(PSK(Phase Shift Keying))を施す。そして、変調部は、パルス変調を施した信号(変調信号)を、LPF104へ出力する。
LPF104は、変調部103から出力された変調信号のうち、所定の制限帯域以下の信号成分を抽出し、ベースバンドの送信信号として送信RF切替部106へ出力する。
図2は、レーダ送信信号生成部101によって生成される送信信号を示す。
送信周期Trの区間うち、符号送信区間Twは信号が存在し、残りの(Tr−Tw)区間は信号が存在しない。つまり、(Tr−Tw)区間は、無信号区間である。符号送信区間Tw内には、パルス符号長Lのパルス符号が含まれる。1つのパルス符号にはL個のサブパルスが含まれ、サブパルスあたり、No個のサンプルを用いたパルス変調が施される。よって、符号送信区間Tw内には、Nr(=NoL)個のサンプルの信号が含まれる。すなわち、変調部におけるサンプリングレートは、(NoL)/Twである。また、無信号区間(Tr−Tw)には、Nu個のサンプルが含まれる。
切替制御部105は、レーダ送信部100の送信RF切替部106と、レーダ受信部200の出力切替部211とに対して、出力先の切り替えを指示する切替制御信号を出力する。なお、出力切替部211に対する出力先の切り替えの指示については後述する(レーダ受信部200の動作説明を参照)。以下では、送信RF切替部106に対する出力先の切り替えの指示について説明する。
切替制御部105は、送信周期Tr毎に、送信RF部107#1〜#Ntの中から、送信信号の送信に使用する送信RF部107を1つ選択する。そして、切替制御部105は、送信RF切替部106に対して、その選択した送信RF部107への出力先の切り替えを指示する切替制御信号を出力する。
送信RF切替部106は、切替制御部105から出力された切替制御信号に基づいて、出力先を、送信RF部107#1〜#Ntのうちの1つに切り替える。そして、送信RF切替部106は、レーダ送信信号生成部101から出力される送信信号を、その切り替え先の送信RF部107へ出力する。
ここで、切替制御部105は、Nt個の送信RF部107のうち、少なくとも1つの送信RF部107の送信信号の送信間隔が、他の各送信RF部107の送信信号の送信間隔よりも短い切替制御信号を、送信RF切替部106へ出力する。なお、当該少なくとも1つの送信RF部107の送信間隔は、等間隔であってよい。別言すると、切替制御部105は、当該少なくとも1つの送信RF部107を、他の各送信RF部107よりも、短周期に選択する。以下、この短周期に選択される送信RF部107を、「短周期送信RF部」と呼ぶことがある。また、短周期送信RF部が送信する送信信号を、「短周期送信信号」と呼ぶことがある。
以下、図3、図4及び図5を参照して具体例を説明する。
図3は、送信アンテナ数Nt=3の場合において、送信RF部107#1〜#3が送信信号を送信するタイミングを説明するための図である。なお、図3は、送信RF部107#2が短周期送信RF部の例である。
この場合、送信RF部107#2は、2Tr周期毎に送信信号を出力する。送信RF部107#1、#3は、送信RF部107#2が送信信号を出力しない各Tr期間において、順次、送信信号を出力する。つまり、送信RF部107#1、#3は、それぞれ、Np=4Tr=2(Nt−1)Tr周期毎に、送信信号を出力する。
図4は、送信アンテナ数Nt=4の場合において、送信RF部107#1〜#4が送信信号を出力するタイミングを説明するための図である。なお、図4は、送信RF部107#2が短周期送信RF部の例である。
この場合、送信RF部107#2は、2Tr周期毎に送信信号を出力する。送信RF部107#1、#3、#4は、送信RF部107#2が送信信号を出力しない各Tr期間において、順次、送信信号を出力する。つまり、送信RF部107#1、#3、#4は、それぞれ、Np=6Tr=2(Nt−1)Tr周期毎に、送信信号を出力する。
図5は、送信アンテナ数Nt=5の場合において、送信RF部107#1〜#5が送信信号を出力するタイミングを説明するための図である。なお、図5は、送信RF部107#2が短周期送信RF部の例である。
この場合、送信RF部107#2は、2Tr周期毎に送信信号を出力する。送信RF部107#1、#3、#4、#5は、送信RF部107#2が送信信号を出力しない各Tr期間において、順次、送信信号を出力する。つまり、送信RF部107#1、#3、#4、#5は、それぞれ、Np=8Tr=2(Nt−1)Tr周期毎に、送信信号を出力する。
切替制御部105は、上述の出力先の切替処理について、Np=2(Nt−1)Tr期間をNc回、繰り返す。このNpNc期間において、送信RF部107#2(短周期送信RF部)は、2Tr周期のため、(Nt−1)Nc回、送信信号を出力する。また、送信RF部107#2以外の各送信RF部107は、Np周期のため、Nc回、送信信号を出力する。
送信RF切替部106から送信信号を出力された送信RF部107は、当該送信RF部107に接続されている送信アンテナTxへ送信信号を出力する。例えば、送信RF部107は、レーダ送信信号生成部101から出力されるベースバンドの送信信号に対して、周波数変換を施してキャリア周波数(RF(Radio Frequency))帯の送信信号を生成し、送信増幅器により所定の送信電力P[dB]に増幅して、送信アンテナTxへ出力する。
送信アンテナTxは、当該送信アンテナTxに接続されている送信RF部107から出力された送信信号を、空間へ放射する。
なお、各送信RF部107の送信信号の送信開始時刻は、必ずしも周期Trに同期していなくてもよい。例えば、図6に示すように、各送信RF部107の送信開始時刻に対して、送信遅延Δ1,Δ2,…,ΔNtを設けてもよい。つまり、各送信RF部107において、送信信号の出力のタイミングの遅延が異なってもよい。次に、図6を参照してさらに説明する。
図6において、送信RF部107#1の送信信号の送信開始時刻は、Tr期間の開始時刻から送信遅延Δ1経過後である。同様に、送信RF部107#2の送信信号の送信開始時刻は、Tr期間の開始時刻から送信遅延Δ2経過後である。送信RF部107#3の送信信号の送信開始時刻は、Tr期間の開始時刻から送信遅延Δ3経過後である。
送信遅延Δ1,Δ2,…,ΔNtを設ける場合は、後述するように、レーダ受信部200の処理において、送信位相補正係数に、送信遅延Δ1,Δ2,…,ΔNtを考慮した補正係数を導入してよい。これにより、ドップラ周波数が異なると位相回転も異なる影響を除去できる(詳細については後述する)。
また、ターゲットを測定する毎に、送信遅延Δ1,Δ2,…,ΔNtを変えてもよい。これにより、他レーダから干渉を受ける場合、又は、他レーダに干渉を与える場合に、他レーダ間との干渉の影響を互いにランダマイズ化できる。
次に、図7を参照して、レーダ送信信号生成部101の変形例について説明する。
図7に示すように、レーダ送信信号生成部101は、符号記憶部111と、D/A変換部112とを有する構成としてもよい。符号記憶部111は、符号生成部102において生成された符号系列をあらかじめ記憶し、当該符号系列を巡回的に読み出す。D/A変換部112は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。すなわち、図7に示す構成によれば、レーダ送信信号生成部101は、符号記憶部111の出力をアナログのベースバンドの送信信号に変換し、送信RF部107へ出力する。
<レーダ受信部>
次に、レーダ受信部200について説明する。レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナRx#1〜#Naと、Na個のアンテナ系統処理部201#1〜#Naと、CFAR部215と、方向推定部214と、を有する。受信アンテナRx#1〜#Naを、受信アレーアンテナ部と呼んでもよい。1つの受信アンテナRxは、1つのアンテナ系統処理部201と対応付けられている。すなわち、受信アンテナRx#z(z=1,…,Na)に対して、アンテナ系統処理部201#zが対応付けられている。各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部207とを有する。
各受信アンテナRxは、レーダ送信部100から送信された送信信号がターゲットから反射された反射信号を受信する。受信アンテナRxは、その受信した受信信号を、当該受信アンテナRxと対応付けられているアンテナ系統処理部201の受信無線部203へ出力する。受信無線部203は、その受信信号を、同じアンテナ系統処理部201に属する信号処理部207へ出力する。
受信無線部203は、増幅器204と、周波数変換部205と、直交検波部206とを有する。受信無線部203は、受信アンテナRxから出力された受信信号に対して、増幅器204による信号増幅を行う。そして、受信無線部203は、その受信信号を、周波数変換部205及び直交検波部206により、I信号成分(In-Phase信号成分)を含むベースバンド受信信号と、Q信号成分(Quadrature信号成分)を含むベースバンド受信信号と、に変換する。
信号処理部207は、A/D変換部208と、A/D変換部209と、相関演算部210と、出力切替部211と、Nt個のドップラ解析部213#1〜#Ntとを有する。次に、各機能ブロックについて説明する。
A/D変換部208は、受信無線部203から出力された、I信号成分を含むベースバンド受信信号に対して、離散時刻でのサンプリングを行い、デジタルデータに変換する。また、A/D変換部209は、Q信号成分を含むベースバンド受信信号に対して、離散時刻でのサンプリングを行い、デジタルデータに変換する。ここで、A/D変換部208、209のサンプリングレートは、送信信号におけるサブパルス時間Tp(=Tw/L)あたり、Ns個の離散サンプルを行う。すなわち、1サブパルスあたりのオーバーサンプル数はNs個となる。
なお、以下では、第M番目の送信周期Trにおける離散時刻kの、受信アンテナRx#zが受信した、I信号成分を含むベースバンド受信信号Iz(k,M)と、Q信号成分を含むベースバンド受信信号Qz(k,M)とを、複素数を用いて、xz(k,M)=Iz(k,M)+jQz(k,M)と表す。ここで、jは虚数単位である。
また、以下では、離散時刻kは、送信周期Trの開始タイミングを基準(k=1)とする。そして、信号処理部は、送信周期Trが終了する前までのサンプル点であるk=(Nr+Nu)Ns/Noまで、周期的に動作する。すなわち、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noとなる。
なお、受信無線部203及び信号処理部207の基準クロック信号は、レーダ送信信号生成部101と同じ基準信号発生器Loからのリファレンス信号を所定数倍したものであってよい。これにより、レーダ送信信号生成部101と、レーダ受信部200が有する受信無線部203及び信号処理部207との動作が同期する。
アンテナ系統処理部201#zにおける相関演算部210は、送信周期T
r毎に、A/D変換部208、209から出力される離散サンプル値x
z(k,M)と、レーダ送信部100が送信した符号長Lのパルス符号a
n(M)と、の相関演算を行う。ここで、z=1,…,N
aであり、n=1,…,Lである。例えば、相関演算部210は、以下の式(1)に基づき、第M番目の送信周期T
rにおける、離散サンプル値x
z(k,M)と送信パルス符号a
n(M)とのスライディング相関を演算する。式(1)において、AC
z(k,M)は、離散時刻kの相関演算値を示す。アスタリスク(*)は複素共役演算子を表す。ここで、AC
z(k,M)の演算は、k=1,…,(N
r+N
u)N
s/N
oの期間にわたり行われる。
なお、相関演算部210は、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noに対して相関演算を行う場合に限定されず、ターゲットの存在範囲に応じて、測定レンジ(すなわち、kの範囲)を限定してもよい。これにより、相関演算部210における演算処理量が低減し得る。例えば、相関演算部210は、k=Ns(L+1),…,(Nr+Nu)Ns/No−NsLに測定レンジを限定してもよい。この場合、図11に示すように、レーダ装置1は、符号送信区間Twに相当する時間区間では、測定を行わない。
これにより、レーダ装置1は、送信信号がレーダ受信部200に直接的に回り込むような場合でも、送信信号が回り込む期間(少なくとも図8のτ1未満の期間)では相関演算部による処理が行われないので、回り込みの影響を排除した測定が可能となる。また、測定レンジ(kの範囲)を限定する場合、以下で説明するドップラ解析部213及び方向推定部214の処理に対しても、同様に、測定レンジ(kの範囲)を限定した処理を適用すればよい。これにより、各ブロックでの処理量を削減でき、レーダ受信部200における消費電力を低減できる。
出力切替部211は、切替制御部105から出力される切替制御信号に基づいて、送信周期Tr毎に、Nt個のドップラ解析部213のうちの1つを選択する。そして、出力切替部211は、相関演算部210から送信周期Tr毎に出力される相関演算結果を、その選択したドップラ解析部213へ出力する。
第M番目の送信周期Trにおける切替制御信号は、Ntビット[bit1(M),bit2(M),…,bitNt(M)]で構成されてよい。この場合、出力切替部211は、第M番目の送信周期Trの切替制御信号において、第NDビットが1の場合、第ND番目のドップラ解析部213を出力先に選択し、第NDビットが0の場合、第ND番目のドップラ解析部213を出力先に選択しない(非選択とする)。なお、ND=1,…,Ntである。
送信アンテナ数Nt=3の場合、切替制御部105は、図3に示す送信信号の出力パターンに対応するように、例えば次の(A1)に示す3ビットの切替制御信号を、出力切替部211へ出力する。
(A1)
[bit1(1),bit2(1),bit3(1)]=[0,1,0]
[bit1(2),bit2(2),bit3(2)]=[1,0,0]
[bit1(3),bit2(3),bit3(3)]=[0,1,0]
[bit1(4),bit2(4),bit3(4)]=[0,0,1]
すなわち、切替制御部105は、bit2(M)が2Tr周期毎に1(ON)となり、bit2(M)以外のbit1(M)及びbit3(M)が、それぞれ、Np=4Tr=2(Nt−1)Tr周期毎に順次1となる切替制御信号を出力する。切替制御部105は、上記(A1)に示す1セットをNc回繰り返す。
送信アンテナ数Nt=4の場合、切替制御部105は、図4に示す送信信号の出力パターンに対応するように、例えば次の(A2)に示す4ビットの切替制御信号を、出力切替部211へ出力する。
(A2)
[bit1(1),bit2(1),bit3(1),bit4(1)]=[0,1,0,0]
[bit1(2),bit2(2),bit3(2),bit4(2)]=[1,0,0,0]
[bit1(3),bit2(3),bit3(3),bit4(3)]=[0,1,0,0]
[bit1(4),bit2(4),bit3(4),bit4(4)]=[0,0,1,0]
[bit1(5),bit2(5),bit3(5),bit4(5)]=[0,1,0,0]
[bit1(6),bit2(6),bit3(6),bit4(6)]=[0,0,0,1]
すなわち、切替制御部105は、bit2(M)が2Tr周期毎に1となり、bit2(M)以外のbit1(M)、bit3(M)及びbit4(M)が、それぞれ、Np=6Tr=2(Nt‐1)Tr周期毎に順次1となる切替制御信号を出力する。切替制御部105は、上記(A2)に示す1セットをNc回繰り返す。
送信アンテナ数Nt=5の場合、切替制御信号は、図5に示す送信信号の出力パターンに対応するように、例えば次の(A3)に示す5ビットの切替制御信号を、出力切替部211へ出力する。
(A3)
[bit1(1),bit2(1),bit3(1),bit4(1),bit5(1)]=[0,1,0,0,0]
[bit1(2),bit2(2),bit3(2),bit4(2),bit5(2)]=[1,0,0,0,0]
[bit1(3),bit2(3),bit3(3),bit4(3),bit5(3)]=[0,1,0,0,0]
[bit1(4),bit2(4),bit3(4),bit4(4),bit5(4)]=[0,0,1,0,0]
[bit1(5),bit2(5),bit3(5),bit4(5),bit5(5)]=[0,1,0,0,0]
[bit1(6),bit2(6),bit3(6),bit4(6),bit5(6)]=[0,0,0,1,0]
[bit1(7),bit2(7),bit3(7),bit4(7),bit5(7)]=[0,1,0,0,0]
[bit1(8),bit2(8),bit3(8),bit4(8),bit5(8)]=[0,0,0,0,1]
すなわち、切替制御部105は、bit2(M)が2Tr周期毎に1となり、bit2(M)以外のbit1(M)、bit3(M)、bit4(M)及びbit5(M)が、それぞれ、Np=8Tr=2(Nt−1)Tr周期毎に順次1となる切替制御信号を出力する。切替制御部105は、上記(A3)に示す1セットをNc回繰り返す。
アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207は、ドップラ解析部213#1〜#Ntを有する。ドップラ解析部213は、出力切替部211から出力される相関演算結果に対して、離散時刻k毎にドップラ解析を行う。つまり、ドップラ解析部213は、各送信信号に対応する各受信信号のドップラ周波数成分を解析する。ドップラ解析では、Ncが2のべき乗値であれば、式(2)及び式(3)に示すようなFFT処理を適用できる。
ここで、FT_CIz ND(k,fs,w)は、アンテナ系統処理部201#zの(つまり、受信アンテナRx#zに対応する)信号処理部207におけるドップラ解析部213#NDからのw番目の出力であり、離散時刻kにおけるドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数応答を示す。なお、ND=1〜Ntであり、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noであり、z=1,…,Naである。また、wは自然数である。
なお、FFT処理において、Han窓又はHamming窓などの窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することにより、ビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
ND=2の場合(短周期受信信号である場合)、ドップラ解析のFFTサイズは、(Nt−1)Ncであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(4Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/{2(Nt−1)NcTr}であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs=−(Nt−1)Nc/2+1,…,0,…,(Nt−1)Nc/2である。
ND≠2の場合(短周期受信信号でない場合)、ドップラ解析のFFTサイズは、Ncであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/{4(Nt−1)Tr}である。また、ドップラ周波数インデックスfuのドップラ周波数間隔は1/{2(Nt−1)NcTr}であり、ドップラ周波数インデックスfuの範囲はfu=−Nc/2+1,…,0,…,Nc/2である。
ND=2の場合とND≠2の場合とのドップラ解析部213からの出力を比べると、両者のドップラ周波数間隔は同じである。しかし、ND=2の場合の折り返しが発生しない最大ドップラ周波数が、ND≠2の場合に比べ、±(Nt−1)倍されており、ドップラ周波数範囲が(Nt−1)倍に拡大されている。
したがって、送信信号を出力する送信アンテナをTx#1、Tx#2、…、Tx#N
tのように順次切り替える場合に比べ、上述のように短周期送信アンテナTx#2を設定する構成によれば、ND=2の折り返しが発生しない最大ドップラ周波数が、送信アンテナ数N
tが3以上の場合に、N
t/2倍に拡大する。つまり、送信アンテナ数N
tに比例して、折り返しが発生しないドップラ周波数範囲が拡大する。
なお、ND≠2の場合において、出力切替部211からの出力がない場合は、ドップラ解析のFFTサイズを(N
t−1)N
cとし、式(4)を用いて、仮想的に出力ゼロとしてサンプリングしてよい。なお、式(4)は、上記の式(2)と同一である。これにより、FFTサイズが増加するため、処理量が増えるが、ドップラ周波数インデックスは、ND=2の場合と一致するため、後述するドップラ周波数インデックスの変換処理が不要となる。
CFAR部215は、短周期受信信号を用いて、適応的に閾値を設定(調整)し、ピーク信号の検出処理を行う。すなわち、CFAR部215は、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理により、ピーク信号を検出する。これにより、CFAR部215は、ピーク信号を与える離散時刻インデックスk_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを検出する。本実施の形態では、送信RF部107#2が周期2Trの短周期送信信号を出力する例を示している。そのため、CFAR部215は、各アンテナ系統処理部201#1〜#Naのドップラ解析部213#2からのw番目の出力であるFT_CI1 (2)(k,fs,w),…,FT_CINa (2)(k,fs,w)を用いて、CFAR処理を行う。
CFAR部215は、式(5)に示すように、各アンテナ系統処理部201#1〜#N
aのドップラ解析部213#2からのw番目の出力FT_CI
1 (2)(k,f
s,w),…,FT_CI
Na (2)(k,f
s,w)を電力加算する。ただし、式(5)においてND=2とする。そして、CFAR部215は、電力加算結果に対し、例えば、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理、或いは、2次元のCFAR処理を行う。このCFAR処理には、非特許文献2に開示の処理が適用されてよい。ここで、2次元のCFAR処理には、離散時刻(ターゲットまでの距離に相当)の軸と、ドップラ周波数(ターゲットの相対速度に相当)の軸とが用いられてよい。
或いは、CFAR部215は、式(6)に示すように、離散時刻k及びドップラ周波数インデックスf
sが共通な受信アンテナRx#1〜#N
aからの受信信号に対し、主ビーム方向θとなる指向性ウエイトW(θ)=[w
1(θ),w
2(θ),…,w
Na(θ)]を乗算する。ただし、式(6)においてND=2とする。そして、CFAR部215は、複数の指向性ビーム方向毎に、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理、或いは、2次元のCFAR処理を行う。ここで、2次元のCFAR処理には、離散時刻kの軸とドップラ周波数の軸とが用いられてよい。
CFAR部215は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となるND=2の離散時刻インデックスk_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを、方向推定部214に出力する。また、CFAR部215は、ドップラ周波数範囲の広いND=2のドップラ周波数インデックスfs_cfarを、ドップラ解析部213#2以外の各ドップラ解析部213#1、#3、…、#Ntからのw番目の出力FT_CI1 (ND≠2)(k,fu,w),…,FT_CINa (ND≠2)(k,fu,w)のドップラ周波数インデックスfuに対応させるために、インデックス変換を行う。当該インデックス変換は、式(7)及び式(8)によって行われてよい。CFAR部215は、インデックス変換後のドップラ周波数インデックスfu_cfarを、方向推定部214に出力する。つまり、CFAR部215は、受信信号のドップラ周波数成分から、受信電力が閾値よりも大きい周波数成分であるピークドップラ周波数成分を検出する。
ここで、f
s_cfar=−(N
t−1)N
c/2+1,…,0,…,(N
t−1)N
c/2であり、f
u_cfar=−N
c/2+1,…,0,…,N
c/2である。
以下、本実施の形態ではND=2であるドップラ周波数範囲の広いドップラ周波数インデックスfs_cfarを、広範囲ドップラ周波数インデックスfs_cfarと表現する。また、本実施の形態ではND≠2であるドップラ周波数範囲の狭いドップラ周波数インデックスfuを、狭範囲ドップラ周波数インデックスfuと表現する。広範囲ドップラ周波数インデックスfs_cfarを、狭範囲ドップラ周波数インデックスfuに対応させる際には、重複が含まれる可能性がある。
例えば、広範囲ドップラ周波数インデックスfs_cfarに、0≦α≦Nc/2の範囲のドップラ周波数インデックスαが含まれる場合、狭範囲ドップラ周波数インデックスfuに対応させるインデックス変換によって、αと変換される。ここで、広範囲ドップラ周波数インデックスfs_cfarに、β=α−Ncも含まれると、βは、−Nc≦β≦−Nc/2の範囲に含まれることから、狭範囲ドップラ周波数インデックスfuに対応させるインデックス変換によって、β+Nc=αと変換される。よって、広範囲ドップラ周波数インデックスfs_cfarを、狭範囲ドップラ周波数インデックスfuに対応させるインデックス変換において、重複が発生する。
同様に、広範囲ドップラ周波数インデックスfs_cfarに、β=α+Ncも含まれると、βは、Nc≦β≦3Nc/2の範囲に含まれることから、狭範囲ドップラ周波数インデックスfuに対応させるインデックス変換によって、β+Nc=αと変換される。よって、狭範囲ドップラ周波数インデックスfuに対応させるインデックス変換によって、重複が発生する。
このように、広範囲ドップラ周波数インデックスfs_cfarに、|α−β|がNcの整数倍となる関係のα、βが含まれると、狭範囲ドップラ周波数インデックスfuに対応させる際に、重複が発生する。
狭範囲ドップラ周波数インデックスfuに重複が発生していると、狭範囲ドップラ周波数インデックスfuの信号成分は、異なるドップラ周波数成分の信号が混合された状態となる。混合された信号の電力が近いほど振幅位相成分が変動し、後続の方向推定部214における測角の精度が劣化し得る。そこで、本実施の形態では、重複判定処理を導入する。これにより、方向推定部214における側角の精度劣化を引き起こす影響を抑制する。次に、この重複判定処理について説明する。
<重複判定処理>
CFAR処理で抽出した、広範囲ドップラ周波数インデックスfs_cfarのうち、ドップラ周波数インデックスαとドップラ周波数インデックスβを、ドップラ解析部213#2以外のドップラ解析部213からのw番目の出力FT_CI1 (ND≠2)(k,fu,w),…,FT_CINa (ND≠2)(k,fu,w)のドップラ周波数インデックスfuに対応させるインデックス変換を行う。変換後のドップラ周波数インデックスfu_cfarが重複する場合、次の(B1)〜(B3)の処理を行う。
(B1)CFAR部215は、ドップラ解析部213#2からのw番目の出力であるFT_CI1 (ND=2)(k,α,w),…,FT_CINa (ND=2)(k,α,w)の電力和と、FT_CI1 (ND=2)(k,β,w),…,FT_CINa (ND=2)(k,β,w)の電力和を比較する。
(B2)CFAR部215は、(B1)の電力和の比較の結果、所定値(例えば6〜10dB程度に設定)以上の電力差がある場合、ドップラ周波数インデックスαとβのうち、電力の大きい方のドップラ周波数インデックスを有効にして、電力の小さい方のドップラ周波数インデックスを、方向推定部214への出力対象から除外する。
(B3)CFAR部215は、(B1)の電力和の比較の結果、所定値以上の電力差がない場合、ドップラ周波数インデックスαとβの両方を、方向推定部214への出力対象から除外する。
方向推定部214は、CFAR部215から出力された離散時刻インデックスk_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、ドップラ周波数インデックスfu_cfarに基づき、各ドップラ解析部213からの出力を用いてターゲットの方向推定処理を行う。具体的には、方向推定部214は、式(9)に示すような仮想受信アレー相関ベクトルh(k,fs,w)を生成し、方向推定処理を行う。
以下では、アンテナ系統処理部201#1〜#N
aの各信号処理部207で同様な処理を施して得られたドップラ解析部213#1〜#N
tからのw番目の出力をまとめたものを、式(9)に示すような送信アンテナ数N
tと受信アンテナ数N
aの積であるN
tN
a個の要素を含む、仮想受信アレー相関ベクトルh(k
_cfar,f
s_cfar,w)として表記する。仮想受信アレー相関ベクトルh(k
_cfar,f
s_cfar,w)は、ターゲットからの反射信号に対して各受信アンテナRx間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。ここで、z=1,…,N
aであり、ND=1,…,N
tである。
hcal[b]は、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値である。b=1,…,NtNaである。
また、送信アンテナTxを時分割で切り替えているため、異なるドップラ周波数fにおいて異なる位相回転が発生する。TxCAL
(1)(f),…,TxCAL
(Nt)(f)は、その位相回転を補正し、基準送信アンテナの位相に一致させるための送信位相補正係数である。例えば、図3に示すように送信アンテナ数N
t=3とし、送信アンテナTx#2を基準送信アンテナとした場合、送信位相補正係数は、式(10)となる。
また、図4に示すように送信アンテナ数N
t=4、或いは、図5に示すように送信アンテナ数N
t=5とし、送信アンテナTx#2を基準送信アンテナとした場合、送信位相補正係数は、式(11)となる。
なお、各送信RF部107の送信信号の送信開始時刻に異なる送信遅延Δ
1,Δ
2,…,Δ
Ntを設けた場合、送信位相補正係数TxCAL
(ND)(f)に、式(12)に示す補正係数Δ
TxCAL (ND)(f)を乗算したものを、新たな送信位相補正係数TxCAL
(ND)(f)としてよい。これにより、ドップラ周波数によって異なる位相回転の影響を除去できる。ここで、Δ
refは、位相基準とする基準送信アンテナ番号の送信遅延を表し、本実施の形態の場合、基準送信アンテナはTx#2であるので、Δ
ref=Δ
2となる。
仮想受信アレー相関ベクトルh(k_cfar,fs_cfar,w)は、NaNr個の要素から構成される列ベクトルである。
到来方向推定は、方向推定評価関数値PH(θ,k_cfar,fs_cfar,w)における方位方向θを所定の角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出する。そして、到来方向推定は、空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、それぞれの極大ピークの仰角方向を到来方向推定値として出力する。
方向推定評価関数値PH(θ,k_cfar,fs_cfar,w)は、到来方向推定アルゴリズムによって算出されてよい。到来方向推定アルゴリズムには、ビームフォーマ法、Capon又はMUSICなど、各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
図9に例示するように、N
tN
a個の仮想受信アレーが等間隔d
Hで直線状に配置される場合(N
t=3、N
a=4)、ビームフォーマ法は、式(13)及び式(14)のように表すことができる。ここで、上付き添え字Hは、エルミート転置演算子である。a(θ
u)は、方位方向θの到来波に対する仮想受信アレーの方向ベクトルを示す。θ
uは、到来方向推定を行う方位範囲内を所定の方位間隔β
1で変化させたものである。例えば、θ
uは、以下のように設定される。
θ
u=θ
min+uβ
1
ただし、u=0,…,NUであり、NU=floor[(θ
max−θ
min)/β
1]+1である。また、floor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
なお、時刻情報(離散時刻)k
_cfarは、距離情報に変換して出力されてもよい。例えば、式(15)を用いて、時刻情報k
_cfarを距離情報R(k
_cfar)に変換する。ここで、T
wは符号送信区間、Lはパルス符号長、C
0は光速度を表す。
また、ドップラ周波数情報は、相対速度成分に変換して出力されてもよい。例えば、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarは、式(16)によって、相対速度成分v
dに変換されてよい。ここで、d
fは、ドップラ解析部213におけるFFT処理におけるドップラ周波数間隔であり、本実施の形態の場合、d
f=1/{2(N
t−1)N
cT
r}である。また、λは、送信RF部107から出力されるRF信号のキャリア周波数の波長である。
以上のように、実施の形態1に係るレーダ装置1は、短周期送信アンテナ(本実施の形態では送信アンテナTx#2)の送信周期を2Trとし、短周期送信アンテナ以外の各送信アンテナの送信周期を2(Nt−1)Trとする。これにより、短周期受信信号は、Nt個の送信アンテナを順次切り替える場合と比べ、折り返しが発生しない最大ドップラ周波数(相対速度)がNt/2倍に増加し、折り返しが発生しないドップラ周波数範囲がNt/2倍に拡大する。
また、本実施の形態では、レーダ受信部200において、短周期受信信号をCFAR処理して抽出したドップラ周波数インデックスfs_cfarを、短周期受信信号以外の受信信号に適用するように変換する。そして、短周期受信信号についてはドップラ周波数インデックスfs_cfarを、短周期受信信号以外の受信信号についてはその変換したドップラ周波数インデックスfu_cfarを用いて、方向推定処理を行う。これにより、すべての仮想受信アレーを用いた方向推定処理が可能となる。
また、本実施の形態では、CFAR処理において、すべての受信信号ではなく、短周期受信信号を用いているが、ドップラ解析部213のFFTサイズは(Nt−1)倍されるため、(Nt−1)倍のコヒーレント加算利得が得られる。よって、CFAR処理に用いられる受信アンテナ数が少なくなった分のSNRを補うことができる。具体的には、従来手法として、送信アンテナTx#1〜#Ntを順次切り替え、全仮想受信アンテナのドップラ解析部213の出力を電力合成してCFAR処理する場合に比べ、本実施の形態におけるCFAR処理時の受信SNRは、約0.5(Nt)1/2倍となる(ただしNt≧3)。すなわち、CFAR処理時の受信SNRは、Nt=3の場合は約0.9倍、Nt=4以上で同等以上となり、本実施の形態は、従来の手法と比べて、特段の劣化は生じない。
なお、本実施の形態は、図10に示すように、レーダ送信部100において、送信アンテナ切替部121により送信RF部107からの出力を複数の送信アンテナTxの1つに択一的に切り替える構成であってもよい。この場合も、上述と同様な効果が得られる。
また、図9に示すように、複数の仮想受信アンテナの仮想的な配列において中心付近に位置する仮想受信アンテナ(例えば図9の点線内)を形成する送信アンテナが、短周期送信アンテナTxとして選択されてよい。これにより、方向推定処理における角度プロファイル上のサイドローブを低減する効果が得られる。次に、具体例を示す。
図9は、送信アンテナ数Nt=3、受信アンテナ数Na=4の場合のMIMOレーダのアンテナ配置の例を示す。図11は、方向推定部214においてビームフォーマ法を用いた場合の空間プロファイル結果(ターゲット方向の真値0度方向)の一例を示す。
図11(a)は、従来の手法である送信アンテナTx#1、Tx#2、Tx#3を順次切り替えた場合の空間プロファイル結果を示す。図11(b)は、本実施の形態と同様に送信アンテナTx#2を短周期送信アンテナとした場合の空間プロファイル結果を示す。図11(a)及び(b)に示すように、両者ともに正面方向のターゲットを正しく推定できている。
また、図11(a)と(b)を比べると、本実施の形態に対応する図11(b)において、ビームフォーマ法のサイドローブを低減する効果(3dB程度)が得られていることが確認できる。これは、次の理由による。すなわち、仮想受信アンテナ(図9におけるMIMO VA#1〜#12の配置)において、中心付近に配置されているMIMO VA#5〜#8は、Tx#2からの短周期送信信号を受信する。よって、MIMO VA#5〜#8の受信信号レベルは、他のMIMO VA#1〜#4、#9〜#12の受信信号レベルよりも高まることで、空間プロファイルのサイドローブ低減効果が得られる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、レーダ送信部100がパルス列を位相変調あるいは振幅変調して送信するパルス圧縮レーダを用いる場合について説明した。実施の形態2では、チャープパルスのような周波数変調(fast chirp modulation)したパルス圧縮波を用いたレーダ方式にについて説明する。なお、実施の形態2では、実施の形態1と同様の内容については説明を省略する。
図12は、レーダ送信においてチャープ(Chirp)パルスを用いるレーダ装置1の構成例を示す。
レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101と、方向性結合部124と、送信RF部107と、送信アンテナ切替部121と、複数の送信アンテナTx#1〜#Ntと、切替制御部105とを有する。レーダ送信信号生成部101は、変調信号発生部122と、VCO(Voltage Controlled Oscillator。電圧制御発振器)123とを有する。
変調信号発生部122は、図13(a)に示すように、のこぎり歯形状の変調信号を周期的に発生させる。ここで、送信周期をTrとする。
VCO123は、変調信号発生部122からの出力に基づいて、送信信号に対して周波数変調を行い、周波数変調信号(周波数チャープ信号)を生成する。そして、VCO123は、周波数変調信号を、方向性結合部124へ出力する。
方向性結合部124は、VCO123から出力された周波数変調信号を、送信RF部107へ出力すると共に、周波数変調信号の一部を取り出してレーダ受信部200の各ミキサ部224へ出力する。
送信RF部107は、方向性結合部124から出力された周波数変調信号を増幅し、送信アンテナ切替部121へ出力する。
送信アンテナ切替部121は、送信RF部107から出力された周波数変調信号を、切替制御部105によって切り替えられた送信アンテナTxへ出力する。送信アンテナTxは、送信アンテナ切替部121から出力された送信信号を空間に放射する。
レーダ受信部200は、複数の受信アンテナRx#1〜#Naと、受信アンテナRx#1〜#Naにそれぞれ対応するアンテナ系統処理部201#1〜#Naと、CFAR部215と、方向推定部214とを有する。各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部207とを有する。受信無線部203は、ミキサ部224と、LPF226とを有する。信号処理部207は、A/D変換部228と、R−FFT部220と、出力切替部211と、ドップラ解析部213とを有する。
レーダ受信部200は、反射信号を受信アンテナRxで受信した受信信号に対し、ミキサ部224において送信信号である周波数変調信号とのミキシングをし、LPF226を通過させることで、送信信号と受信信号との遅延時間に応じた周波数となるビート信号を取り出す。例えば、図13(b)のように、送信周波数変調波(レーダ送信波)の周波数と受信周波数変調波(レーダ反射波受信信号)の周波数との差分周波数が、ビート周波数として取り出される。
信号処理部207のA/D変換部228は、受信無線部203から出力されるビート信号を、離散サンプルリングデータに変換する。
R−FFT部220は、Tr周期毎に、所定時間範囲(レンジゲート)で得られたNdata個の離散サンプリングデータを、FFT処理する。これにより、受信信号の遅延時間に応じたビート周波数にピークが現れる周波数スペクトラムが出力される。なお、FFT処理の際に、Han窓やHamming窓などの窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧することができる。
ここで、第M番目のチャープパルス送信によって得られる、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207におけるR−FFT部220から出力されるビート周波数スペクトラム応答を、AC_RFTz(fb,M)で表す。ここで、fbはFFTのインデックス番号であり、fb=0,…,Ndata/2である。周波数インデックスfbは、当該インデックス番号が小さいほど、受信信号(反射信号)の遅延時間が小さい(すなわち、ターゲットからの距離が近い)ビート周波数を表す。
出力切替部211は、実施の形態1の出力切替部211と同様の動作を行う。すなわち、出力切替部211は、切替制御部105からの切替制御信号に基づいて、Nt個のドップラ解析部213#1〜#Ntのうち1つを選択する(切り替える)。そして、出力切替部211は、Tr周期毎に、R−FFT部220から出力される周波数スペクトラムを、その選択したドップラ解析部213へ出力する。
第M番目の送信周期Trにおける切替制御信号は、Ntビット[bit1(M),bit2(M),…,bitNt(M)]で構成されてよい。この場合、出力切替部211は、第M番目の送信周期Trの切替制御信号において、第NDビットが1の場合、ドップラ解析部213#NDを出力先に選択し、第NDビットが0の場合、ドップラ解析部213#NDを出力先に選択しない(未選択とする)。なお、ND=1,…,Ntである。
切替制御部105は、実施の形態1の切替制御部105と同様の動作を行う。例えば、送信アンテナTx#2が短周期送信アンテナである場合、送信アンテナTx#2を2Tr周期毎に選択し、送信アンテナTx#2以外の各送信アンテナTx#1、#2、…、#NtをNp=2(Nt−1)Tr周期毎に選択する。
なお、実施の形態1で説明したように、各送信アンテナTxからの送信信号の送信開始時刻は、必ずしも周期Trに同期していなくてもよい。例えば、図6に示すように、各送信アンテナからの送信開始時刻に対して、送信遅延Δ1,Δ2,…,ΔNtを設けてもよい。
切替制御部105は、Np=2(Nt−1)Tr期間の1セットを、Nc回繰り返す。これにより、NpNc期間において、短周期送信アンテナである送信アンテナTx#2からは、(Nt−1)Nc回、送信信号が送信され、短周期送信アンテナ以外の各送信アンテナTx#1、#3、…、#Ntからは、Nc回、送信信号が送信される。
レーダ受信部200において、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207は、ドップラ解析部213#1〜#Ntを有する。ドップラ解析部213は、出力切替部211から出力される受信信号に対して、ビート周波数インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ドップラ解析では、Ncが2のべき乗値であれば、式(17)及び式(18)に示すようなFFT処理を適用できる。
ここで、FT_CIz ND(fb,fs,w)は、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207におけるドップラ解析部213#NDによるw番目の出力であり、ビート周波数インデックスfbにおけるドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数応答を示す。なお、ND=1〜Ntであり、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noであり、z=1,…,Naである。また、wは自然数である。
ND=2の場合(短周期受信信号である場合)、ドップラ解析のFFTサイズは、(Nt−1)Ncであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は2/{2(Nt−1)NcTr}であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs=−(Nt−1)Nc/2+1,…,0,…,(Nt−1)Nc/2である。
ND≠2の場合(短周期受信信号でない場合)、ドップラ解析のFFTサイズは、Ncであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/{2(Nt−1)Tr}である。また、ドップラ周波数インデックスfuのドップラ周波数間隔は2/{2(Nt−1)NcTr}であり、ドップラ周波数インデックスfuの範囲はfu=−Nc/2+1…,0,…,Nc/2である。
ND=2の場合とND≠2の場合のドップラ解析部213からの出力を比べると、両者のドップラ周波数間隔は同じである。しかし、ND=2の場合の折り返しが発生しない最大ドップラ周波数が、ND≠2の場合に比べ、±(Nt−1)倍されており、ドップラ周波数範囲が(Nt−1)倍に拡大されて出力される。
したがって、送信アンテナをTx#1、Tx#2、…、Tx#Ntのように順次切り替える場合に比べ、本実施の形態に係る構成によれば、ND=2の折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、送信アンテナ数Ntが3以上の場合に、Nt/2倍に拡大する。つまり、送信アンテナ数Ntに比例して、折り返しが発生しないドップラ周波数範囲が拡大する。
なお、ND≠2の場合において、出力切替部211からの出力がない場合は、ドップラ解析のFFTサイズを(N
t−1)N
cとし、式(19)を用いて、仮想的に出力ゼロとしてサンプリングしてよい。なお、式(19)は、上記の式(17)と同一である。これにより、FFTサイズが増加するため、処理量が増えるが、ドップラ周波数インデックスは、ND=2の場合と一致するため、後述するドップラ周波数インデックスの変換処理が不要となる。
以降のCFAR部215及び方向推定部214における処理は、実施の形態1で用いた離散時刻kをビート周波数インデックスfbで置き換えた処理と同一となるため、ここでは説明を省略する。以上の構成及び処理により、実施の形態2は、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
以降の実施の形態においても同様に送信信号として、周波数チャープ信号を適用することができ、符号化パルス信号を用いた場合と同様な効果が得られる。
なお、式(20)を用いて、ビート周波数インデックスf
bを距離情報R(f
b)に変換できる。ここで、B
wは、周波数変調して生成される周波数チャープ信号における周波数変調帯域幅であり、C
0は光速度である。
(実施の形態3)
図14は、実施の形態3に係るレーダ装置1の構成例を示す。実施の形態3に係るレーダ装置1は、実施の形態1に係るレーダ装置1と比べて、折り返し判定部216をさらに備える。また、実施の形態1と比べて、実施の形態3は、切替制御部105、ドップラ解析部213、CFAR部215、及び、方向推定部214の動作が異なる。以下、実施の形態3では、実施の形態1と異なる内容について主に説明し、実施の形態1と同様の内容については説明を省略する。
切替制御部105は、レーダ送信部100の送信RF切替部106と、レーダ受信部200の出力切替部211とに対して、出力先の切り替えを指示する切替制御信号を出力する。なお、出力切替部211に対する出力先の切り替えの指示については後述する。以下では、送信RF切替部106に対する出力先の切り替えの指示について説明する。
切替制御部105は、送信周期Tr毎に、送信RF部107#1〜#Ntのうちの1つを順次選択する。そして、切替制御部105は、その選択した送信RF部107に出力先を切り替えるよう指示する切替制御信号を、送信RF切替部106へ出力する。
送信RF切替部106は、切替制御部105から出力された切替制御信号に基づいて、出力先を、送信RF部107#1〜#Ntのうちの1つに切り替える。そして、送信RF切替部106は、レーダ送信信号生成部101から出力される送信信号を、その切り替えた送信RF部107へ出力する。
図15は、送信RF部107#1〜#Ntが送信信号を送信するタイミングを説明するための図である。
切替制御部105は、図15に示すように、送信周期Tr毎に、送信RF部107#1〜#Ntを順次、出力先に選択する。そして、切替制御部105は、送信周期Tr毎に、その選択した送信RF部107への切り替えを指示する切替制御信号を、送信RF切替部106へ出力する。これにより、送信RF切替部106は、各送信RF部107#1〜#Ntを、周期Np=NtTrで選択する。別言すると、送信RF部107#1〜#Ntは、それぞれ、周期Np=NtTrで送信信号を送信する。
切替制御部105は、図15に示すように、期間Np=NtTrの1セットの処理を、Nc/2回繰り返した後、送信信号を送出しない期間である送信ギャップ期間TGAPを設ける。そして、切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAPの経過後、再び、期間Np=NtTrの1セットの処理を、Nc/2回繰り返す。この処理により、各送信RF部107は、Nc回、送信信号を送信する。送信ギャップ期間TGAPは、ドップラ解析部213のサンプリング周期(Np=NtTr)の1/2に設定されてよい。別言すると、TGAP=Np/2=NtTr/2であってよい。
レーダ受信部200において、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207の出力切替部211は、切替制御部105から出力された切替制御信号に基づいて、Tr周期毎に、ドップラ解析部213#1〜#Ntのうちの1つを選択する。そして、出力切替部211は、相関演算部210からTr周期毎に出力される相関演算結果を、その選択したドップラ解析部213へ出力する。
第M番目の送信周期Trにおける切替制御信号は、Ntビット[bit1(M),bit2(M),…,bitNt(M)]で構成されてよい。この場合、出力切替部211は、第M番目の送信周期Trにおいて、切替制御信号の第NDビットが1の場合、ドップラ解析部213#NDを出力先に選択し、切替制御信号の第NDビットが0の場合、ドップラ解析部213#NDを出力先に選択しない(非選択とする)。なお、ND=1,…,Ntである。
切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAP開始前まで、Np=NtTr周期毎に、各ビットを順次1に切り替えて、切替制御信号を出力する。次に、具体例を説明する。
まず、切替制御部105は、下記(C1)に示す1セット(Np期間分)の切替制御信号を、Nc/2回出力する。
(C1)
[bit1(1),bit2(1),…,bitNt(1)]=[1,0,…,0]
[bit1(2),bit2(2),…,bitNt(2)]=[0,1,…,0]
…
[bit1(Nt),bit2(Nt),…,bitNt(Nt)]=[0,0,…,1]
切替制御部105は、上記(C1)に示す1セット(Np期間分)の切替制御信号をNc/2回出力した後、送信ギャップ期間TGAPにおいて、下記(C2)に示す全ビットがゼロの切替制御信号を出力する。
(C2)
[bit1,bit2,…,bitNt]=[0,0,…,0]
切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAPの終了後、下記(C3)に示す1セット(Np期間分)の切替制御信号を、Nc/2回出力する。
(C3)
[bit1(NtNc/2+1),bit2(NtNc/2+1),…,bitNt(NtNc/2+1)]=[1,0,…,0]
[bit1(NtNc/2+2),bit2(NtNc/2+2),…,bitNt(NtNc/2+2)]=[0,1,…,0]
…
[bit1(NtNc),bit2(NtNc),…,bitNt(NtNc)]=[0,0,…,1]
アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207は、ドップラ解析部213#1〜#Ntを有する。ドップラ解析部213#1〜#Ntは、それぞれ、送信ギャップ期間TGAPの開始前のNc/2回分(前半期間)の相関演算結果と、送信ギャップ期間TGAPの終了後のNc/2回分(後半期間)の相関演算結果とを、別々に、離散時刻k毎にドップラ解析を行う。ドップラ解析では、Ncが2のべき乗値であれば、式(21)及び式(22)に示すようなFFT処理を適用できる。
式(21)のFT_FH_CIz ND(k,fs,w)は、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207におけるドップラ解析部213#NDによる第w番目の出力であり、離散時刻kにおけるドップラ周波数インデックスfsの、前半期間Nc/2回分のドップラ周波数応答を示す。
式(22)のFT_SH_CIz ND(k,fs,w)は、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207におけるドップラ解析部213#NDによる第w番目の出力であり、離散時刻kにおけるドップラ周波数インデックスfsの、後半期間Nc/2回分のドップラ周波数応答を示す。ここで、ND=1〜Ntであり、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noであり、z=1,…,Naである。また、wは自然数である。
FT_FH_CIz ND(k,fs,w)は、FFTサイズがNcであり、後半部分のNc/2個のデータをゼロ埋めしたものである。また、FT_SH_CIz ND(k,fs,w)は、FFTサイズがNcで、前半部分のNc/2個のデータをゼロ埋めしたものである。
したがって、サンプリング定理から導出される、折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、±1/(2NtTr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は、1/{NtNcTr}であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲は、fs=−Nc/2+1,…,0,…,Nc/2である。
なお、FFT処理において、Han窓又はHamming窓などの窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することにより、ビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。なお、窓関数係数は、FFTサイズがNcのものを適用し、前半部分のNc/2個の窓関数係数をFT_FH_CIz ND(k,fs,w)の算出時に用い、後半部分のNc/2個の係数をFT_SH_CIz ND(k,fs,w)の算出時に用いる。
CFAR部215は、アンテナ系統処理部201#1〜#Naのドップラ解析部213#1〜#Ntからのw番目の出力FT_FH_CIz ND(k,fs,w)およびFT_SH_CIz ND(k,fs,w)用いて、CFAR処理を行う。CFAR処理は、離散時刻k(ターゲットまでの距離に相当)と、ドップラ周波数インデックスfs(ターゲットの相対速度に相当)との2次元の入力信号に対して行われる。
CFAR処理について、例えば、式(22a)に示すように、各アンテナ系統処理部201#1〜#N
aのドップラ解析部213#2からのw番目の出力FT_FH_CI
z ND(k,f
s,w)およびFT_SH_CI
z ND(k,f
s,w)を電力加算する。そして、CFAR部215は、電力加算結果に対し、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理、或いは、2次元のCFAR処理を行う。このCFAR処理には、非特許文献2に開示の処理が適用されてよい。ここで、2次元のCFAR処理には、離散時刻(ターゲットまでの距離に相当)の軸と、ドップラ周波数(ターゲットの相対速度に相当)の軸とが用いられてよい。そして、CFAR部215は、閾値よりも大きい電力加算値となる、離散時刻インデックスk
_cfar、及び、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarを、方向推定部214及び折り返し判定部216へ出力する。
折り返し判定部216は、CFAR部215から出力された離散時刻インデックスk
_cfar、及び、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarに基づいて、ドップラ解析部213からの出力が折り返し信号を含むか否かを判定する。例えば、折り返し判定部216は、式(23)及び式(24)によって、当該判定を行う。
なお、式(23)及び式(24)において、
である。
ここで、式(25)に示すFT_CAL
z ND(k,f
s,w)は、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が折り返し信号を含まないものと仮定した場合に、FT_FH_CI
z ND(k,f
s,w)およびFT_SH_CI
z ND(k,f
s,w)を同相加算する式である。式(25)において、送信ギャップ期間T
GAP中に、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が位相変化(位相回転)を生じるため、この位相回転を補正するために、式(25a)の項を導入している。ここで、送信ギャップ期間T
GAPは、ドップラ解析部213のサンプリング周期(N
p=N
tT
r)の1/2に設定していることから、ドップラ周波数インデックス(f
s_cfar)のサンプリング周期期間の位相変化(位相回転)の半分(1/2)に相当する位相回転を補正している。
一方、式(26)に示すFT_ALIAS
z ND(k,f
s,w)は、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が折り返し信号を含むものと仮定した場合に、FT_FH_CI
z ND(k,f
s,w)およびFT_SH_CI
z ND(k,f
s,w)を同相加算する式である。ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が(一次)折り返し信号を含む場合、ドップラ周波数インデックスf
s_cfar≧0のとき、送信ギャップ期間T
GAP中に、(f
s_cfar−N
c)のドップラ周波数インデックス分の位相変化(位相回転)が生じる。また、ドップラ周波数インデックスf
s_cfar<0のときは、送信ギャップ期間T
GAP中に、(f
s_cfar+N
c)のドップラ周波数インデックス分の位相変化(位相回転)が生じる。そこで、式(26)には、このような送信ギャップ期間T
GAP中に生じる位相回転を補正するために、式(26a)を導入している。式(26a)は式(25a)のf
s_cfarに(f
s_cfar±N
c)を代入することで得られ、式(25a)を位相反転した式となる。従って、FT_CAL
z ND(k,f
s,w)とFT_ALIAS
z ND(k,f
s,w)はどちらか一方が同相加算され、もう一方は逆相で加算される関係となり、信号レベル差が明確に生じる関係となり、受信信号のSNRが低い場合でも、折り返し信号の有無の判定が可能である。
すなわち、上述より、ドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号が折り返し信号を含む場合、FT_CALz ND(k,fs,w)は、FT_ALIASz ND(k,fs,w)よりも電力的に小さくなる。一方、ドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号が折り返し信号を含まない場合、FT_ALIASz ND(k,fs,w)はFT_CALz ND(k,fs,w)よりも電力的に小さくなる。このような理由から、式(23)及び式(24)の判定方法を適用できる。
折り返し判定部216は、(一次)折り返し信号を含むと判定したドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号については、以下のようにドップラ周波数インデックスを変換し、出力する。
・ドップラ周波数インデックスfs_cfar≧0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar−Ncと変換し、出力する。
・ドップラ周波数インデックスfs_cfar<0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar+Ncと変換し、出力する。
ここで、DopConv(f)は、折り返し信号の判定に基づくドップラ周波数インデックスfに対するドップラ周波数インデックスの変換結果を表す。
折り返し判定部216は、折り返し信号を含まないと判定したドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号については、以下のようにドップラ周波数インデックスを変換せずに出力する。
・DopConv(fs_cfar)=fs_cfar
方向推定部214は、折り返し判定部からの出力に基づき、式(27)に示す仮想受信アレー相関ベクトルh(k,fs,w)を生成し、方向推定処理を行う。
以下では、アンテナ系統処理部201#1〜#N
aの各信号処理部207で同様な処理を施して得られたドップラ解析部213#1〜#N
tからのw番目の出力をまとめたものを、式(27)に示すような送信アンテナ数N
tと受信アンテナ数N
aとの積であるN
tN
a個の要素を含む、仮想受信アレー相関ベクトルh(k
_cfar,f
s_cfar,w)として表記する。仮想受信アレー相関ベクトルh(k
_cfar,f
s_cfar,w)は、ターゲットからの反射波に対して各受信アンテナRx間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いられる。ここで、z=1,…,N
aであり、ND=1,…,N
tである。
hcal[b]は、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値である。ここで、b=1,…,NtNaである。
また、送信アンテナTxを時分割で切り替えているため、異なるドップラ周波数fにおいて異なる位相回転が発生する。TxCAL
(1)(f),…,TxCAL
(Nt)(f)は、その位相回転を補正し、基準送信アンテナの位相に一致させる送信位相補正係数である。例えば、Tx#1を基準送信アンテナとした場合、送信位相補正係数は、式(29)となる。
この場合、式(27)の仮想受信アレー相関ベクトルh(k_cfar,fs_cfar,w)は、NaNr個の要素から構成される列ベクトルとなる。
到来方向推定は、方向推定評価関数値PH(θ,k_cfar,fs_cfar,w)における方位方向θを所定の角度範囲内で可変して空間プロファイルを算出する。そして、到来方向推定は、空間プロファイルの極大ピーク方向を大きい順に所定数抽出し、それぞれの極大ピークの仰角方向を到来方向推定値として出力する。
実施の形態3に係るレーダ装置1は、複数の送信アンテナTxを時分割で切り替え、各送信アンテナTxからNc回、送信信号を送信する。このとき、レーダ装置1は、各送信アンテナTxからNc/2回、送信信号を送信した後、送信ギャップ期間TGAPを設ける。そして、レーダ装置1は、折り返し判定部216において、送信ギャップ期間TGAPにおいて生じる位相変化に基づき、ドップラ解析部213からの出力信号が折り返し信号を含むか否かを判定する。これにより、曖昧性の生じないドップラ周波数範囲を、送信ギャップ期間TGAPを設けない場合と比べて、2倍に拡大できる。
なお、送信ギャップ期間TGAPをNtTr/2に設定した場合に、折り返し信号であるか否かの判定性能(精度)が最も高くなる。しかし、送信ギャップ期間TGAPは、これに限定されず、NtTr/2程度、或いは、その前後の期間であってもよい。
また、各送信アンテナTxからNc回、送信信号を送信するにあたり、各送信アンテナTxからNc/2回、送信信号を送信した後に送信ギャップ期間TGAPを設けることにより、折り返し信号を含むか否かの判定性能(精度)が最も高くなる。しかし、送信ギャップ期間TGAPを設けるタイミングは、これに限定されず、Nc/2回程度送信した後、或いは、その前後の回数送信した後であってもよい。
(実施の形態4)
実施の形態1では、複数の送信アンテナTxの少なくとも1つを短周期送信アンテナとする構成について説明した。実施の形態3では、送信ギャップ期間TGAPを設ける構成について説明した。実施の形態4では、実施の形態1と実施の形態3との構成の組み合わせ例について説明する。これにより、実施の形態1と比べてさらにドップラ周波数の検出範囲を拡大できる。以下、実施の形態4では、実施の形態1及び3と異なる内容について主に説明し、実施の形態1及び3と同様の内容については説明を省略する。
図16は、実施の形態4に係るレーダ装置1の構成例を示す。
切替制御部105は、レーダ送信部100の送信RF切替部106と、レーダ受信部200の出力切替部211とに対して、出力先の切り替えを指示する切替制御信号を出力する。なお、出力切替部211に対する出力先の切り替えの指示については後述する。以下では、送信RF切替部106に対する出力先の切り替えの指示について説明する。
切替制御部105は、送信周期Tr毎に、送信RF部107#1〜#Ntの中から、送信信号の送信に使用する送信RF部107を1つ選択する。そして、切替制御部105は、送信RF切替部106に対して、その選択した送信RF部107への出力先の切り替えを指示する切替制御信号を出力する。
送信RF切替部106は、切替制御部105から出力された切替制御信号に基づいて、出力先を、送信RF部107#1〜#Ntのうちの1つに切り替える。そして、送信RF切替部106は、レーダ送信信号生成部101から出力される送信信号を、その切り替えた送信RF部107へ出力する。
図17は、送信アンテナ数Nt=3の場合において、送信RF部107#1〜#3が送信信号を出力するタイミングを説明するための図である。なお、図17は、送信RF部107#2が短周期送信RF部の例である。
この場合、切替制御部105は、2Tr周期毎に、送信RF部107#2を、送信信号の出力先に選択する。そして、切替制御部105は、送信RF部107#2が送信信号を出力しない各Tr期間において、送信信号の出力先に、送信RF部107#1、#3を順次選択する。つまり、切替制御部105は、送信RF部107#1、#3を、それぞれ、Np=4Tr=2(Nt−1)Tr周期毎に、出力先に選択する。
ここで、切替制御部105は、図17に示すように、期間Np=4Tr=2(Nt−1)Trの1セットの処理を、Nc/2回繰り返した後、送信信号を出力しない送信ギャップ期間TGAPを設ける。そして、切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAPの経過後、再び、期間Np=4Tr=2(Nt−1)Trの1セットの処理を、Nc/2回繰り返す。この処理により、短周期送信RF部である送信RF部107#2は、(Nt−1)Nc回送信信号を送信する。また、送信RF部107#2以外の送信RF部107#1、#3は、それぞれ、Nc回、送信信号を送信する。
送信ギャップ期間TGAPは、送信RF部107#2(短周期送信RF部)の送信周期2Trの1/2に設定されてよい。別言すると、TGAP=Trであってよい。
なお、各送信RF部107の送信信号の送信開始時刻は、必ずしも周期Trに同期していなくてもよい。例えば、図6に示すように、各送信RF部107#1〜#Ntの送信開始時刻に対して、送信遅延Δ1,Δ2,…,ΔNtを設けてもよい。
レーダ受信部200において、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207の出力切替部211は、切替制御部105から出力された切替制御信号に基づき、Tr周期毎に、ドップラ解析部213#1〜#Ntのうちの1つを選択する(切り替える)。そして、出力切替部211は、相関演算部210からTr周期毎に出力される相関演算結果を、その選択したドップラ解析部213へ出力する。
第M番目の送信周期Trにおける切替制御信号は、Ntビット[bit1(M),bit2(M),…,bitNt(M)]で構成されてよい。この場合、出力切替部211は、第M番目の送信周期Trの切替制御信号において、第NDビットが1の場合、ドップラ解析部213#NDを出力先に選択し、第NDビットが0の場合、ドップラ解析部213#NDを出力先に選択しない。ここで、ND=1,…,Ntである。
切替制御信号は、送信アンテナ数Nt=3の場合、図17に示す送信信号の出力パターンに対応するように、3ビットの切替制御信号を、出力切替部211へ出力する。次に、具体例を説明する。
まず、切替制御部105は、NpNc/2期間(前半期間)において、Tr周期毎に、下記(D1)に示す各切替制御信号を、繰り返し出力する。なお、Np=4Tr=2(Nt−1)Trである。
(D1)
[bit1(1),bit2(1),bit3(1)]=[0,1,0]
[bit1(2),bit2(2),bit3(2)]=[1,0,0]
[bit1(3),bit2(3),bit3(3)]=[0,1,0]
[bit1(4),bit2(4),bit3(4)]=[0,0,1]
切替制御部105は、上記の前半期間後、送信ギャップ期間TGAPにおいて、下記(D2)に示す全ビットがゼロの切替制御信号を出力する。
(D2)
[bit1,bit2,…,bitNt]=[0,0,0]
切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAPの終了後、NpNc/2期間(後半期間)において、Tr周期毎に、下記(D3)に示す各切替制御信号を出力する。
(D3)
[bit1(2(Nt−1)Nc/2+1),bit2(2(Nt−1)Nc/2+1),bit3(2(Nt−1)Nc/2+1)]=[0,1,0]
[bit1(2(Nt−1)Nc/2+2),bit2(2(Nt−1)Nc/2+2),bit3(2(Nt−1)Nc/2+2)]=[1,0,0]
[bit1(2(Nt−1)Nc/2+3),bit2(2(Nt−1)Nc/2+3),bit3(2(Nt−1)Nc/2+3)]=[0,1,0]
[bit1(2(Nt−1)(Nc/2+1)),bit2(2(Nt−1)(Nc/2+1)),bit3(2(Nt−1)(Nc/2+1))]=[0,0,1]
…
[bit1(2(Nt−1)(Nc−1)+1),bit2(2(Nt−1)(Nc−1)+1),bit3(2(Nt−1)(Nc−1)+1)]=[0,1,0]
[bit1(2(Nt−1)(Nc−1)+2),bit2(2(Nt−1)(Nc−1)+2),bit3(2(Nt−1)(Nc−1)+2)]=[1,0,0]
[bit1(2(Nt−1)(Nc−1)+3),bit2(2(Nt−1)(Nc−1)+3),bit3(2(Nt−1)(Nc−1)+3)]=[0,1,0]
[bit1(2(Nt−1)Nc),bit2(2(Nt−1)Nc),bit3(2(Nt−1)Nc)]=[0,0,1]
アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207は、ドップラ解析部213#1〜#Ntを有する。ドップラ解析部213は、出力切替部211から出力される相関演算結果について、送信ギャップ期間TGAPの開始前のNc/2回分(前半期間)の相関演算結果と、送信ギャップ期間TGAPの終了後のNc/2回分(後半期間)の相関演算結果とを、別々に、離散時刻k毎にドップラ解析を行う。ドップラ解析では、Ncが2のべき乗値であれば、例えば式(30)〜式(34)に示すようなFFT処理を適用できる。
式(30)及び式(31)のFT_FH_CIz ND(k,fs,w)は、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207におけるドップラ解析部213#NDによる第w番目の出力であり、離散時刻kにおけるドップラ周波数インデックスfsの、前半期間Nc/2回分のドップラ周波数応答を示す。
式(32)及び式(33)のFT_SH_CIz ND(k,fs,w)は、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207におけるドップラ解析部213#NDによる第w番目の出力であり、離散時刻kにおけるドップラ周波数インデックスfsの、後半期間Nc/2回分のドップラ周波数応答を示す。なお、ND=1〜Ntであり、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noであり、z=1,…,Naである。また、wは自然数である。
以下、第2の送信RF部107#2を2Tr周期の短周期送信RF部107として具体例を説明する。
ND=2(短周期受信信号である)の場合、FT_FH_CIz ND(k,fs,w)は、FFTサイズが(Nt−1)Ncであり、後段部分の(Nt−1)Nc/2個のデータをゼロ埋めしたものである。また、ND=2の場合、FT_SH_CIz ND(k,fs,w)は、FFTサイズが(Nt−1)Ncであり、前段部分の(Nt−1)Nc/2個のデータをゼロ埋めしたものである。そして、サンプリング定理から導出される、折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、両方とも±1/(4Tr)である。また、両方とも、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は、1/{2(Nt−1)NcTr}であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲は、fs=−(Nt−1)Nc/2+1,…,0,…,(Nt−1)Nc/2である。
ND≠2(短周期受信信号でない)の場合、FT_FH_CIz ND(k,fs,w)は、FFTサイズがNcであり、後段部分のNc/2個のデータをゼロ埋めしたものである。また、ND≠2の場合、FT_SH_CIz ND(k,fs,w)は、FFTサイズがNc/2であり、前段部分の(Nt−1)Nc/2個のデータをゼロ埋めしたものである。そして、サンプリング定理から導出される、折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、両方とも±1/{4(Nt−1)Tr}である。また、両方とも、ドップラ周波数インデックスfuのドップラ周波数間隔は、1/{2(Nt−1)NcTr}であり、ドップラ周波数インデックスfuの範囲は、fu=−Nc/2+1,…,0,…,Nc/2である。
ND=2の場合とND≠2の場合とのドップラ解析部213からの出力を比べると、両方のドップラ周波数間隔は同じである。また、ND=2の場合の折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、ND≠2の場合に比べ、±(Nt−1)倍されており、ドップラ周波数範囲が(Nt−1)倍に拡大されて出力される。
したがって、送信アンテナをTx#1,Tx#2,…,Tx#Ntのように順次切り替える場合に比べ、本実施の形態に係る構成によれば、ND=2の折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、送信アンテナ数Ntが3以上の場合に、Nt/2倍に拡大する。つまり、送信アンテナ数Ntに比例して、折り返しが発生しないドップラ周波数範囲が拡大する。
送信ギャップ期間T
GAPの開始前(前半期間)のN
c/2回分には式(30)及び式(31)を適用する。
送信ギャップ期間T
GAPの終了後(後半期間)のN
c/2回分には式(32)及び式(33)を適用する。
なお、ND≠2の場合において、出力切替部211からの出力がない場合は、FFTサイズを(N
t−1)N
cとし、式(34)及び式(35)を用いて、仮想的に出力ゼロとしてサンプリングしてよい。なお、式(34)は上記の式(30)と同一であり、式(35)は上記の式(32)と同一である。これにより、FFTサイズが増加するため、処理量が増えるが、ドップラ周波数インデックスは、ND=2の場合と一致するため、後述するドップラ周波数インデックスの変換処理が不要となる。
なお、FFT処理の際に、Han窓又はHamming窓などの窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧することができる。ND=2の場合、FFTサイズが(Nt−1)Ncの窓関数係数を適用し、当該(Nt−1)Ncのうち、前半期間の(Nt−1)Nc/2個の窓関数係数を、FT_FH_CIz ND(k,fs,w)の算出時に用い、後半期間のNc/2個の窓関数係数を、FT_SH_CIz ND(k,fs,w)の算出時に用いる。
また、ND≠2の場合、FFTサイズがNcの窓関数係数を適用し、当該Ncのうち、前半期間のNc/2個の窓関数係数を、FT_FH_CIz ND(k,fs,w)の算出時に用い、後半期間のNc/2個の窓関数係数を、FT_SH_CIz ND(k,fs,w)の算出時に用いる。
CFAR部215は、短周期受信信号を用いて、適応的に閾値を設定(調整)し、ピーク信号の検出処理(CFAR処理)を行う。本実施の形態では、送信RF部107#2は、2Tr周期で送信信号を送信する。よって、CFAR部215は、ドップラ解析部213#2からのw番目の出力であるFT_FH_CI1 (2)(k,fs,w),…,FT_FH_CINa (2)(k,fs,w)と、FT_SH_CI1 (2)(k,fs,w),…,FT_SH_CINa (2)(k,fs,w)と、を用いてCFAR処理を行う。
CFAR部215は、CFAR処理により、適応的な閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる、ND=2の場合における、離散時刻インデックスk_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを、折り返し判定部216へ出力する。
折り返し判定部216は、CFAR部215から出力された離散時刻インデックスk
_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに基づいて、ドップラ解析部213#2からの出力が折り返し信号を含むか否かを判定する。本実施の形態の場合、折り返し判定部216は、ドップラ解析部213#2からの出力に、式(36)及び(37)を適用し、折り返し信号を含むか否かを判定する。なお、NDは、短周期送信アンテナTxの番号であり、本実施の形態では、ND=2である。
なお、式(36)及び式(37)において、
である。
ここで、式(38)に示すFT_CAL
z ND(k,f
s,w)は、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が折り返し信号を含まないものと仮定した場合に、FT_FH_CI
z ND(k,f
s,w)およびFT_SH_CI
z ND(k,f
s,w)を同相加算する式である。式(38)において、送信ギャップ期間T
GAP中に、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が位相変化(位相回転)を生じるため、この位相回転を補正するために、式(38a)の項を導入している。ここで、送信ギャップ期間T
GAPは、送信RF部107#2(短周期送信RF部)の送信周期2T
rの1/2として、すなわちT
GAP=T
rに設定していることから、ドップラ周波数インデックス(f
s_cfar)のサンプリング周期期間の位相変化(位相回転)の半分(1/2)に相当する位相回転を補正している。
一方、式(39)に示すFT_ALIAS
z ND(k,f
s,w)は、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が(一次)折り返し信号を含むものと仮定した場合に、FT_FH_CI
z ND(k,f
s,w)およびFT_SH_CI
z ND(k,f
s,w)を同相加算する式である。ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が(一次)折り返し信号を含む場合、ドップラ周波数インデックスf
s_cfar≧0のとき、送信ギャップ期間T
GAP中に、(f
s_cfar−(N
t−1)N
c)のドップラ周波数インデックス分の位相変化(位相回転)が生じる。また、ドップラ周波数インデックスf
s_cfar<0のとき、送信ギャップ期間T
GAP中に、(f
s_cfar+(N
t−1)N
c)のドップラ周波数インデックス分の位相回転が生じる。そこで、式(39)には、この位相回転を補正するために、式(38a)を位相反転した下記式(39a)を導入している。式(39a)は式(38a)のf
s_cfarに(f
s_cfar±(N
t−1)N
c)を代入することで得られ、式(25a)を位相反転した式となる。従って、FT_CAL
z ND(k,f
s,w)とFT_ALIAS
z ND(k,f
s,w)はどちらか一方が同相加算され、もう一方は逆相で加算される関係となり、信号レベル差が明確に生じる関係となり、受信信号のSNRが低い場合でも、折り返し信号の有無の判定が可能である。
すなわち、上述より、ドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号が折り返し信号を含む場合、FT_CALz ND(k,fs,w)は、FT_ALIASz ND(k,fs,w)よりも電力的に小さくなる。一方、ドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号が折り返し信号を含まない場合、FT_ALIASz ND(k,fs,w)はFT_CALz ND(k,fs,w)よりも電力的に小さくなる。このような理由から、式(36)及び式(37)の判定方法を適用できる。
折り返し判定部216は、(一次)折り返し信号を含むと判定したドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号については、以下のようにドップラ周波数インデックスを変換し、離散時刻インデックスk_cfarとともに、方向推定部214へ出力する。
・ドップラ周波数インデックスfs_cfar≧0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar−(Nt−1)Ncと変換し、出力する。
・ドップラ周波数インデックスfs_cfar<0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar+(Nt−1)Ncと変換し、出力する。
折り返し判定部216は、折り返し信号を含まないと判定したドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号については、以下のようにドップラ周波数インデックスを変換せずに、離散時刻インデックスk_cfarとともに、方向推定部214へ出力する。
・DopConv(fs_cfar)=fs_cfar
合わせて、折り返し判定部216は、ND=2の広範囲ドップラ周波数インデックスfs_cfarを変換したものであるDopConv(fs_cfar)を、ドップラ解析部213#2以外のドップラ解析部213#1、#3、…、#Ntからのw番目の出力の狭範囲ドップラ周波数インデックスfuに対応させるために、以下の式(40)及び式(41)を用いてインデックス変換を行う。そして、折り返し判定部216は、そのインデックス変換後の狭範囲ドップラ周波数インデックスfu_cfarを、方向推定部214へ出力する。
方向推定部214は、折り返し判定部216から出力された離散時刻インデックスk_cfarと、ドップラ周波数インデックスfs_cfarと、ドップラ周波数インデックスDopConv(fs_cfar)と、ドップラ周波数インデックスfu_cfarとに基づき、ドップラ解析部213からの出力から、式(42)に示す仮想受信アレー相関ベクトルh(k,fs,w)を生成し、方向推定処理を行う。
以下では、アンテナ系統処理部201#1〜#N
aの信号処理部207で同様な処理を施して得られたドップラ解析部213#1〜#N
tからのw番目の出力をまとめたものを、式(42)に示すような送信アンテナ数N
tと受信アンテナ数N
aとの積であるN
tN
a個の要素を含む、仮想受信アレー相関ベクトルh(k
_cfar,f
s_cfar,w)として表記する。仮想受信アレー相関ベクトルh(k
_cfar,f
s_cfar,w)は、ターゲットからの反射波に対して各受信アンテナRx間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いられる。ここで、z=1,…,N
aであり、ND=1,…,N
tである。
hcal[b]は、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値である。ここで、b=1,…,NtNaである。
また、送信アンテナTxを時分割で切り替えているため、異なるドップラ周波数fにおいて異なる位相回転が発生する。TxCAL
(1)(f),…,TxCAL
(Nt)(f)は、その位相回転を補正し、基準送信アンテナの位相に一致させるための送信位相補正係数である。例えば、送信アンテナTx#2を基準送信アンテナとした場合、送信位相補正係数は、式(44)となる。
この場合、式(42)の仮想受信アレー相関ベクトルh(k_cfar,fs_cfar,w)は、NaNr個の要素から構成される列ベクトルとなる。
本実施の形態4に係るレーダ装置1は、送信アンテナTx#1〜#Ntのうち、送信アンテナ(短周期送信アンテナ)Tx#2からの送信信号の送信周期が2Trであり、それ以外の各送信アンテナTx#1、#3、…、#Ntからの送信信号の送信周期が2(Nt−1)Trである。これにより、送信アンテナTx#1〜#Ntを順次切り替えて送信信号を送信する場合と比べ、短周期送信アンテナTx#2からの短周期送信信号に対応する短周期受信信号において、折り返しが発生しない最大ドップラ周波数(相対速度)がNt/2倍に増加し、折り返しが発生しないドップラ周波数範囲がNt/2倍に拡大する(E1の効果)。
また、本実施の形態4に係るレーダ装置1は、各送信アンテナTx#1、#3、…、#NtからNc回、送信信号を送信する。このとき、レーダ装置1は、各送信アンテナTx#1、#3、…、#NtからNc/2回、送信信号を送信した後、送信ギャップ期間TGAPを設ける。そして、レーダ装置1は、折り返し判定部216において、送信ギャップ期間TGAP中に生じる位相回転に基づき、ドップラ解析部213#2からのドップラ解析の結果が折り返し信号を含むか否かを判定する。これにより、送信ギャップ期間TGAPを設けない場合と比べて、曖昧性が発生しないドップラ周波数範囲をさらに2倍に拡大できる(E2の効果)。
したがって、本実施の形態4に係るレーダ装置1は、上記(E1)と(E2)の2つの効果により、送信アンテナTx#1〜#Ntを順次切り替える場合に比べ、ドップラ周波数範囲をNt倍(=Nt/2倍×2倍)に拡大できる。
なお、送信ギャップ期間TGAPをTrに設定した場合に、折り返し信号の有無の判定性能(精度)が最も高くなる。しかし、送信ギャップ期間TGAPは、これに限定されず、Tr程度、或いは、その前後の期間であってもよい。
また、各送信アンテナ#1、#3、…、#NtからNc回、送信信号を送信するにあたり、各送信アンテナ#1、#3、…、#NtからNc/2回送信信号を送信した後に送信ギャップ期間TGAPを設けた場合に、折り返し信号の有無の判定性能(精度)が最も高くなる。しかし、送信ギャップ期間TGAPを設けるタイミングは、これに限定されず、Nc/2回程度送信した後、或いは、その前後の回数送信した後であってもよい。
(実施の形態5)
実施の形態3では、送信ギャップ期間TGAPを1つ設ける例を説明した。実施の形態5では、送信ギャップ期間TGAPをNGAP回設ける例について説明する。なお、レーダ装置1の構成は、実施の形態3の図14と同様である。しかし、一部の動作が異なるため、以下では、主にその異なる動作ついて説明する。
送信RF切替部106は、切替制御部105から出力された切替制御信号の指示に基づき、レーダ送信信号生成部101からの出力を、その指示された切り替え先の送信RF部107へ出力する。
切替制御部105は、送信周期Tr毎に、送信RF部107#1〜#Ntのうちの1つを順次選択する。そして、切替制御部105は、その選択した送信RF部107に出力先を切り替えるよう指示する切替制御信号を、送信RF切替部106へ出力する。これにより、送信RF切替部106は、各送信RF部107#1〜#Ntを、周期NtTrで、順次出力先に選択する。別言すると、各送信RF部107は、周期NtTrで、送信信号を送信する。
切替制御部105は、期間Np=NtTrの処理を、Nc/(NGAP+1)回繰り返す。その後、切替制御部105は、第1回目の送信ギャップ期間TGAP#1を設ける。
そして、切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAP#1の経過後、再び、期間Np=NtTrの処理を、Nc/(NGAP+1)回繰り返す。その後、切替制御部105は、第2回目の送信ギャップ期間TGAP#2を設ける。
そして、切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAP#2の経過後、再び、期間Np=NtTrの処理を、Nc/(NGAP+1)回繰り返す。
上述の処理によれば、送信ギャップ期間TGAPはNGAP回設けられ、各送信RF部107#1〜#Ntは、Nc回、送信信号を送信する。
なお、Nc/(NGAP+1)が整数とならない場合は、小数点以下を切り下げ又は切り上げし、整数としてよい。
送信ギャップ期間TGAPは、ドップラ解析のサンプリング周期(送信RF部107#1〜Ntを一巡選択する周期)Np=NtTrの1/(NGAP+1)倍であってよい。すなわち、送信ギャップ期間TGAP=Np/(NGAP+1)=NtTr/(NGAP+1)であってよい。
出力切替部211は、送信周期Tr毎に、切替制御部105から出力される切替制御信号に基づき、ドップラ解析部213#1〜#Ntを順次選択する。そして、出力切替部211は、送信周期Tr毎に、相関演算部210から出力される相関演算結果を、その選択したドップラ解析部213へ出力する。
第M番目の送信周期Trにおける切替制御信号は、Ntビット[bit1(M),bit2(M),…,bitNt(M)]で構成されてよい。この場合、出力切替部211は、第M番目の送信周期Trにおいて、切替制御信号の第NDビットが1の場合、ドップラ解析部213#NDを出力先に選択し、切替制御信号の第NDビットが0の場合、ドップラ解析部213#NDを出力先に選択しない(非選択とする)。なお、ND=1,…,Ntである。
切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAP#1の開始前まで、下記(F1)に示す1セット(Np=NtTr期間分)の切替制御信号を、Nc/(NGAP+1)回出力する。
(F1)
[bit1(1),bit2(1),…,bitNt(1)]=[1,0,…,0]
[bit1(2),bit2(2),…,bitNt(2)]=[0,1,…,0]
…
[bit1(Nt),bit2(Nt),…,bitNt(Nt)]=[0,0,…,1]
そして、切替制御部105は、上記(F1)に示す1セットの切替制御信号を、Nc/(NGAP+1)回出力した後、送信ギャップ期間TGAP#1において、下記(F2)に示す全ビットがゼロの切替制御信号を出力する。
(F2)
[bit1,bit2,…,bitNt]=[0,0,…,0]
切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAP#1の終了後、送信ギャップ期間TGAP#2の開始前まで、下記(F3)に示す1セット(Np=NtTr期間分)の切替制御信号を、Nc/(NGAP+1)回出力する。
(F3)
[bit1(NtNc/(NGAP+1)+1),bit2(NtNc/(NGAP+1)+1),…,bitNt(NtNc/(NGAP+1)+1)]=[1,0,…,0]
[bit1(NtNc/(NGAP+1)+2),bit2(NtNc/(NGAP+1)+2),…,bitNt(NtNc/(NGAP+1)+2)]=[0,1,…,0]
…
[bit1(2NtNc/(NGAP+1)),bit2(2NtNc/(NGAP+1)),…,bitNt(2NtNc/(NGAP+1))]=[0,0,…,1]
切替制御部105は、上記(F3)に示す1セットの切替制御信号を、Nc/(NGAP+1)回出力した後、送信ギャップ期間TGAP#2において、下記(F4)に示す全ビットがゼロの切替制御信号を出力する。
(F4)
[bit1,bit2,…,bitNt]=[0,0,…,0]
以降同様の処理を繰り返し、切替制御部105は、送信ギャップ期間TGAP#NGAPの終了後、下記(F5)に示す1セット(Np=NtTr期間分)の切替制御信号を、Nc/(NGAP+1)回出力する。
(F5)
[bit1(NGAPNtNc/(NGAP+1)+1),bit2(NGAPNtNc/(NGAP+1)+1),…,bitNt(NGAPNtNc/(NGAP+1)+1)]=[1,0,…,0]
[bit1(NGAPNtNc/(NGAP+1)+2),bit2(NGAPNtNc/(NGAP+1)+2),…,bitNt(NGAPNtNc/(NGAP+1)+2)]=[0,1,…,0]
…,
[bit1(NtNc),bit2(NtNc),…,bitNt(NtNc)]=[0,0,…,1]
アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207は、ドップラ解析部213#1〜#Ntを有する。ドップラ解析部213#1〜#Ntは、それぞれ、各送信ギャップ期間TGAPの開始前までのNc/(NGAP+1)回分の相関演算結果を、別々に、(つまり、(NGAP+1)回に分けて)、離散時刻k毎にドップラ解析を行う。ドップラ解析では、Ncが2のべき乗値であれば、式(45)に示すようなFFT処理を適用できる。
式(45)のFT_GAP_CIz ND(ng,k,fs,w)は、アンテナ系統処理部201#zの信号処理部207におけるドップラ解析部213#NDによる第w番目の出力であり、離散時刻kにおけるドップラ周波数インデックスfsの、送信ギャップ期間で区切られたNc/(NGAP+1)回分の相関演算結果に対するドップラ周波数応答を示す。ここで、ng=0,…,NGAPであり、ng=0の場合、最初のNc/(NGAP+1)回分の相関演算結果に対するドップラ周波数応答であり、0<ng<NGAPの場合、送信ギャップ期間TGAP#ngの終了後から送信ギャップ期間TGAP#(ng+1)の開始前までの間のNc/(NGAP+1)回分の相関演算結果に対するドップラ周波数応答を示す。ng=NGAPの場合、最後のNc/(NGAP+1)回分の相関演算結果に対するドップラ周波数応答である。また、ND=1〜Ntであり,k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noであり,z=1,…,Naである。また、wは自然数である。
FT_GAP_CIz ND(ng,k,fs,w)は、ドップラ解析のFFTサイズがNcであり、Nc/(NGAP+1)回分の相関演算出力以外の部分のデータをゼロ埋めしたものである。
したがって、サンプリング定理から導出される、折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、±1/(2NtTr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は、1/{NtNcTr}であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲は、fs=−Nc/2+1,…,0,…,Nc/2である。
なお、FFT処理において、Han窓又はHamming窓などの窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することによりでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。例えば、式(46)に示すように、FFTサイズがN
cの窓関数係数を適用する。ここで、winf(x)は窓関数係数を表し、xは窓関数のインデックスを表す(x=1,…,N
c)。
CFAR部215は、アンテナ系統処理部201#1〜#Naのドップラ解析部213#1〜#Ntからのw番目の出力に対して、FT_GAP_CIz ND(ng,k,fs,w)を用いて、CFAR処理を行う。CFAR処理は、離散時刻k(ターゲットまでの距離に相当)と、ドップラ周波数インデックスfs(ターゲットの相対速度に相当)との2次元の入力信号に対して行われる。
CFAR処理について、例えば、式(46a)に示すように、各アンテナ系統処理部201#1〜#N
aのドップラ解析部213#2からのw番目の出力FT_GAP_CI
z ND(0,k,f
s,w)、FT_GAP_CI
z ND(1,k,f
s,w)、…、FT_GAP_CI
z ND(N
GAP,k,f
s,w)を電力加算する。そして、CFAR部215は、電力加算結果に対し、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理、或いは、2次元のCFAR処理を行う。このCFAR処理には、非特許文献2に開示の処理が適用されてよい。ここで、2次元のCFAR処理には、離散時刻(ターゲットまでの距離に相当)の軸と、ドップラ周波数(ターゲットの相対速度に相当)の軸とが用いられてよい。
例えば、CFAR部215は、非特許文献2に開示されているように適応的な閾値を設定してよい。そして、CFAR部215は、閾値よりも大きい受信電力となる、離散時刻インデックスk_cfar、及び、ドップラ周波数インデックスfs_cfarを、方向推定部214及び折り返し判定部216へ出力する。
折り返し判定部216は、CFAR部215から出力された離散時刻インデックスk
_cfar、及び、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarに基づいて、ドップラ解析部213からの出力が折り返し信号を含むか否かを判定する。例えば、折り返し判定部216は、式(47)及び式(48)によって、当該判定を行う。
なお、式(47)及び式(48)において、
である。
ここで、sign(x)は、xが正の場合に1、xが負の場合に−1を返す関数である。
ここで、式(49)に示すFT_CAL
z ND(k,f
s,w)は、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が折り返し信号を含まないものと仮定した場合に、FT_GAP_CI
z ND(0,k,f
s,w)、FT_GAP_CI
z ND(1,k,f
s,w)、…、FT_GAP_CI
z ND(N
GAP,k,f
s,w)を同相加算する式である。式(49)において、送信ギャップ期間T
GAP中に、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が位相変化(位相回転)を生じるため、この位相回転を補正するために、式(49a)の項を導入している。ここで、送信ギャップ期間T
GAPは、T
GAP=N
p/(N
GAP+1)=N
tT
r/(N
GAP+1)に設定していることから、FT_GAP_CI
z ND(1,k,f
s,w)に対して、ドップラ周波数インデックス(f
s_cfar)のサンプリング周期期間の位相変化(位相回転)のn
g/(N
GAP+1)に相当する位相回転を補正している。
一方、式(50)に示すFT_ALIAS
z ND(k,f
s,w)は、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が(一次)折り返し信号を含むものと仮定した場合に、FT_GAP_CI
z ND(0,k,f
s,w)、FT_GAP_CI
z ND(1,k,f
s,w)、…、FT_GAP_CI
z ND(N
GAP,k,f
s,w)を同相加算する式である。ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が(一次)折り返し信号を含む場合、ドップラ周波数インデックスf
s_cfar≧0のとき、送信ギャップ期間T
GAP中に、(f
s_cfar―N
c)のドップラ周波数インデックス分の位相変化(位相回転)が生じる。ドップラ周波数インデックスf
s_cfar<0のとき、送信ギャップ期間T
GAP中に(f
s_cfar+N
c)ドップラ周波数インデックス分の位相変化が生じる。そこで、式(50)には、この位相回転を補正するために、式(50a)を導入している。式(50a)は式(49a)のf
s_cfarに(f
s_cfar−sign(f
s_cfar)N
c)を代入することで得られ、式(49a)に位相回転2π×n
g/(N
GAP+1)を加えた式となる。ここで、N
GAP=2のとき、位相回転2π×n
g/(N
GAP+1)は、{0、2π/3、4π/3}ある。また、N
GAP=3のとき、位相回転2π×ng/(N
GAP+1)は、{0、2π/4、4π/4、6π/4}ある。このように、位相回転2π×n
g/(N
GAP+1)は、n
g=0、…、N
GAPで位相回転2π×n
g/(N
GAP+1)を加算すると互いに打ち消してゼロとなる位相回転を付与する。従って、FT_CAL
z ND(k,f
s,w)とFT_ALIAS
z ND(k,f
s,w)はどちらか一方が同相加算されるとき、もう一方はFT_GAP_CI
z ND(n
g,k,f
s,w)の各項が互いに打ち消されて加算される関係となり、信号レベル差が明確に生じる関係となり、受信信号のSNRが低い場合でも、折り返し信号の有無の判定が可能となる。
したがって、ドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号が(一次)折り返し信号を含む場合、FT_CALz ND(k,fs,w)は、FT_ALIASz ND(k,fs,w)よりも電力的に小さくなる。一方、ドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号が折り返し信号を含まない場合、FT_ALIASz ND(k,fs,w)はFT_CALz ND(k,fs,w)よりも電力的に小さくなる。
このような理由から、式(49)及び式(50)の判定方法が適用できる。
なお、N
GAP数を複数とすることで、より高次の折り返し信号が含まれる場合でも、判定が可能となる効果をさらに有する。例えば、二次の折り返し信号が含まれる場合、折り返し判定部216は、式(50b)、式(50c)及び式(50d)によって、当該判定を行う。
なお、式(50b)、式(50c)及び式(50d)において、
である。ここで、式(50e)に示すFT_2ndALIAS
z ND(k,f
s,w)は、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が(二次)折り返し信号を含むものと仮定した場合に、FT_GAP_CI
z ND(0,k,f
s,w)、FT_GAP_CI
z ND(1,k,f
s,w)、…、FT_GAP_CI
z ND(N
GAP,k,f
s,w)を同相加算する式である。ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が折り返し信号を含む場合、ドップラ周波数インデックスf
s_cfar≧0のとき、送信ギャップ期間T
GAP中に、(f
s_cfar+2N
c)のドップラ周波数インデックス分の位相変化(位相回転)が生じる。ドップラ周波数インデックスf
s_cfar<0のとき、送信ギャップ期間T
GAP中に(f
s_cfar−2N
c)ドップラ周波数インデックス分の位相変化が生じる。そこで、式(50e)には、この位相回転を補正するために、式(50f)を導入している。式(50f)は式(49a)のf
s_cfarに(f
s_cfar+sign(f
s_cfar)×2N
c)を代入することで得られ、式(49a)に位相回転4π×n
g/(N
GAP+1)が付与された式となる。例えば、N
GAP=2のとき、位相回転4π×n
g/(N
GAP+1)は、{0、4π/3、8π/3}である。また、N
GAP=3のとき、位相回転4π×n
g/(N
GAP+1)は、{0、4π/4、8π/4、12π/4}ある。このように、位相回転4π×n
g/(N
GAP+1)は、n
g=0、…、N
GAPでの位相回転4π×n
g/(N
GAP+1)を付与して加算すると互いに打ち消してゼロとなる性質を有する。従って、FT_CAL
z ND(k,f
s,w)、FT_ALIAS
z ND(k,f
s,w)、およびFT_2ndALIAS
z ND(k,f
s,w)は、いずれか一つが同相加算され、残りの二つはFT_GAP_CI
z ND(n
g,k,f
s,w)の各項が互いに打ち消され、信号レベル差が明確に生じる関係となる。そのため、受信信号のSNRが低い場合でも、折り返し信号の有無の判定が可能となり、さらに(一次)あるいは(二次)折り返し信号が含まれるかの判定も可能となる。
折り返し判定部216は、(一次)折り返し信号であると判定したドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号については、以下のようにドップラ周波数インデックスを変換し、離散時刻インデックスk_cfarとともに、方向推定部214へ出力する。
・ドップラ周波数インデックスfs_cfar≧0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar−Ncと変換し、出力する。
・ドップラ周波数インデックスfs_cfar<0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar+Ncと変換し、出力する。
折り返し判定部216は、(二次)折り返し信号であると判定したドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号については、以下のようにドップラ周波数インデックスを変換し、離散時刻インデックスk_cfarとともに、方向推定部214へ出力する。
・ドップラ周波数インデックスfs_cfar≧0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar+2Ncと変換し、出力する。
・ドップラ周波数インデックスfs_cfar<0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar−2Ncと変換し、出力する。
折り返し判定部216は、折り返し信号でないと判定したドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号については、以下のようにドップラ周波数インデックスを変換せずに、離散時刻インデックスk_cfarとともに、方向推定部214へ出力する。
・DopConv(fs_cfar)=fs_cfar
方向推定部214は、折り返し判定部216からの出力に基づき、ドップラ解析部213からの出力から、式(51)に示す仮想受信アレー相関ベクトルh(k,fs,w)を生成し、方向推定処理を行う。
以下では、アンテナ系統処理部201#1〜#N
aの各信号処理部207で同様な処理を施して得られたドップラ解析部213#1〜#N
tからのw番目の出力をまとめたものを、式(51)に示すような送信アンテナ数N
tと受信アンテナ数N
aとの積であるN
tN
a個の要素を含む、仮想受信アレー相関ベクトルh(k
_cfar,f
s_cfar,w)として表記する。仮想受信アレー相関ベクトルh(k
_cfar,f
s_cfar,w)は、ターゲットからの反射波に対して受信アンテナRx間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いられる。ここで、z=1,…,N
aであり、ND=1,…,N
tである。
hcal[b]は、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値である。ここで、b=1,…,NtNaである。
また、送信アンテナTxを時分割で切り替えているため、異なるドップラ周波数fにおいて異なる位相回転が発生する。TxCAL
(1)(f),…,TxCAL
(Nt)(f)は、その位相回転を補正し、基準送信アンテナの位相に一致させるための送信位相補正係数である。例えば、Tx#1を基準送信アンテナとした場合、送信位相補正係数は、式(53)となる。
この場合、式(53)の仮想受信アレー相関ベクトルh(k_cfar,fs_cfar,w)は、NaNr個の要素から構成される列ベクトルとなる。
到来方向推定は、方向推定評価関数値PH(θ,k_cfar,fs_cfar,w)における方位方向θを所定の角度範囲内で可変して空間プロファイルを算出する。そして、到来方向推定は、空間プロファイルの極大ピーク方向を大きい順に所定数抽出し、それぞれの極大ピークの仰角方向を到来方向推定値として出力する。
本実施の形態5に係るレーダ装置1は、複数の送信アンテナTxを時分割で切り替え、各送信アンテナTxからNc回、送信信号を送信する。このとき、レーダ装置1は、各送信アンテナTxからNc/(NGAP+1)回、送信信号を送信する毎に、送信ギャップ期間TGAPを設ける。つまり、送信ギャップ期間TGAPをNGAP回設ける。また、レーダ装置1は、折り返し判定部216を設ける。そして、レーダ装置1は、折り返し判定部216において、送信ギャップ期間TGAP中に生じる位相回転に基づき、ドップラ解析部213からの出力信号が折り返し信号を含むか否かを判定する。これにより、曖昧性の生じないドップラ周波数範囲を、送信ギャップ期間TGAPを設けない場合と比べて、2倍以上に拡大できる。
なお、送信ギャップ期間TGAPをNtTr/(NGAP+1)に設定した場合に、折り返し信号であるか否かの判定性能(精度)が最も高くなる。しかし、送信ギャップ期間TGAPは、これに限定されず、NtTr/(NGAP+1)程度、或いは、その前後の期間であってもよい。
また、各送信アンテナTxからNc回、送信信号を送信するにあたり、各送信アンテナTxからNc/(NGAP+1)回、送信信号を送信した後に送信ギャップ期間TGAPを設けることにより、折り返し信号を含むか否かの判定性能(精度)が最も高くなる。しかし、送信ギャップ期間TGAPを設けるタイミングは、これに限定されず、Nc/(NGAP+1)回程度、或いは、その前後の回数送信した後であってもよい。
(実施の形態6)
既述の送信ギャップ期間は、既述の時分割多重MIMOレーダ装置に限らず、例えば、複数の送信アンテナTxから符号多重を用いて信号を同時送信するMIMOレーダ装置(以下「符号多重MIMOレーダ装置」と称することがある)に適用されてもよい。
符号多重送信を用いたMIMOレーダ装置は、例えば特許文献3に記載されている(例えば図1参照)。特許文献3では、送信信号(チャープ信号)の繰り返し送信毎に、送信アンテナ毎に異なる符号列に基づいた位相変調(0°または180°)を付与して、複数の送信アンテナから符号多重送信する。
複数の受信アンテナで受信した信号を検波処理することで、符号多重された受信信号の距離情報が抽出される。送信信号の繰り返し送信毎に得られた距離情報に対し、送信アンテナ毎の逆符号列を乗算することで符号多重された受信信号を分離して、速度方向フーリエ変換処理して速度(ドップラ)情報を抽出する。このようにして得られた、受信アンテナ数Naを符号多重数Nt倍した(Na×Nt)系統の速度(ドップラ)情報を用いて方位方向フーリエ変換処理を行う。
この構成では、送信信号の繰り返し送信毎に複数送信アンテナから同時送信するため、送信信号の繰り返し送信毎に受信信号をサンプリングできる。そのため、時分割多重方式に比べ、サンプリング定理を満たす(別言すると、周波数の折り返しが発生せず曖昧性(Ambiguity)の生じない)ドップラ速度範囲を拡大できる。
しかし、速度方向フーリエ変換処理の前に送信アンテナ毎の逆符号列を乗算することで符号多重された信号を分離するため、ターゲット又はレーダ装置が移動することに伴うドップラ変動が受信信号に含まれると符号間の直交性が低下し、符号間干渉が生じる。
送信信号の繰り返し送信毎に符号系列を重畳するため、符号間干渉が生じると、速度方向フーリエ変換で得られる速度方向のピークサイドローブ比は、符号多重送信で用いる符号系列間の相互相関特性で定まる理想的なピークサイドローブ比よりも小さくなる。
そのため、同一距離に複数のターゲットが存在した場合に、複数のターゲッ反射波間の受信電力レベル差が、速度方向のピークサイドローブ比よりも大きい場合、受信電力が小さい方のターゲットからの反射波は速度方向のサイドローブレベル以下となり、検出されなくなる可能性が高まる。
ターゲット又はレーダ装置の移動に伴うドップラ変動が大きいほど、符号間干渉が大きくなり、ピークサイドローブ比がより小さくなり、同一距離に複数のターゲットが存在した場合に未検出となる確率がより増大することになる。
実施の形態6では、符号多重MIMOレーダ装置において、実施の形態3で説明した送信ギャップ期間TGAPを設けた送信を行う。これにより、既述の実施の形態3と同様に、曖昧性(Ambiguity)の生じないドップラ周波数(相対速度)の検出範囲を拡大できる。加えて、ターゲット又はレーダ装置1の移動に伴うドップラ変動が受信信号に含まれる場合であっても、符号間干渉の発生を抑えることができる。
図18は、実施の形態6に係るレーダ装置1の構成例を示す図である。図18に例示した構成は、符号多重MIMOレーダ装置において、実施の形態3(図14及び図15)にて説明した送信ギャップ期間TGAPを設けた送信を行う構成に相当する。
例えば、図18に示す符号多重MIMOレーダ装置1は、図14に例示した構成に比して、レーダ送信部100において、切替制御部105及び送信RF切替部106に代えて、直交符号生成部108と、第1〜第Ntの符号乗算部191#1〜191#Ntを含む符号多重部109と、を備える点が異なる。
また、図18に示すレーダ受信部200は、図14に例示した構成に比して、折り返し判定部216と方向推定部214との間に、符号多重分離部217を備える点が異なり、また、直交符号生成部108の出力が出力切替部211に入力される点が異なる。符号多重分離部217は、例えば、折り返し判定部216における、ドップラ周波数の折り返しの有無の判定(又は検出)結果に基づいて、符号多重された受信信号を分離する。
図18に例示した構成を用いることで、ターゲット又はレーダ装置1の移動に伴うドップラ変動が受信信号に含まれる場合であっても、ドップラ変動に起因する位相変動を補正した上で符号多重分離が可能となる。
以下、実施の形態6に係る符号多重MIMOレーダ装置1の動作について、実施の形態3とは異なる点に着目して説明する。
レーダ送信部100は、符号多重を用いたMIMOレーダ送信を行う。例えば、直交符号生成部108は、直交符号長LOCからなるNt個の直交符号系列OCSND={OCND(1),OCND(2),…,OCND(LOC)}を生成する。ここで、ND=1,…,Ntである。
直交符号生成部108は、例えば、レーダ送信周期(Tr)毎に、直交符号系列OCS1〜OCSNtの要素を指示する直交符号要素インデックスOC_INDEXを巡回的に可変することで、直交符号系列OCS1〜OCSNtの要素OC1(OC_INDEX)〜OCNt(OC_INDEX)を第1〜第Ntの符号乗算部191#1〜191#Ntに出力する。また、直交符号生成部108は、例えば、レーダ送信周期(Tr)毎に、要素インデックスOC_INDEXを、レーダ受信部200の出力切替部211に出力する。
ここで、OC_INDEX=1,2,…,LOCであり、M番目の送信周期において、OC_INDEX=MOD(M−1,LOC)+1である。MOD(x,y)は、モジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。
直交符号生成部108が生成する直交符号系列には、例えば、互いに無相関となる符号を用いる。例えば、直交符号生成部108は、Walsh−Hadamard−符号を直交符号系列に用いる。
Nt=2の場合、Walsh−Hadamard−符号の直交符号長LOC=2であるから、直交符号生成部108は、OCS1={1,1}、OCS2={1,−1}となる直交符号系列を生成する。
また、Nt=4の場合、直交符号長LOC=4であるから、直交符号生成部108は、OCS1={1,1,1,1}、OCS2={1,-1,1,-1}、OCS3={1,1,-1,-1}、OCS4={1,-1,-1,1}となる直交符号系列を生成する。
なお、直交符号系列を構成する要素は実数に限らず、複素数値が含まれてもよい。例えば、次式(6−1)で表される位相回転を用いた直交符号が用いられてもよい。
この場合、Nt=3の場合、直交符号長LOC=Ntであるため、直交符号生成部108は、OCS1={1,1,1}、OCS2={1,exp(j2π/3),exp(j4π/3)}、OCS3={1,exp(-j2π/3),exp(-j4π/3)}となる直交符号系列を生成する。
また、Nt=4の場合、直交符号長LOC=Ntであるから、直交符号生成部108は、OCS1={1,1,1,1}、OCS2={1,j,-1,-j}、OCS3={1,-1,1,-1}、OCS4={1,-j,-1,j}となる直交符号系列を生成する。
第1〜第Ntの符号乗算部191#1〜191#Ntは、レーダ送信周期(Tr)毎に直交符号生成部108によって生成された直交符号系列OCS1〜OCSNtの要素OC1(OC_INDEX)〜OCNt(OC_INDEX)を、図19A及び図19Bに例示したように、ベースバンドのレーダ送信信号に対し乗算し、それぞれ、Nt個の送信RF部107#1〜17#Ntに出力する。
また、図19Aに例示したように、送信RF部107#1〜107#Ntは、Np=LOC×Tr期間において送信信号をLOC回送信する動作を、Nc/2回にわたって繰り返した後、送信ギャップ期間TGAPにわたって送信信号を送信しない。
別言すると、各送信RF部107#1〜107#Ntは、巡回的に生成された直交符号を少なくとも一巡送信する第1の期間(Np=LOC×Tr期間)、送信信号の送信周期Tr毎に、符号多重した各送信信号を送信し、その後の所定の送信ギャップ期間TGAP、符号多重した送信信号を送信しない。
送信ギャップ期間TGAPが経過した後、図19Bに例示したように、送信RF部107#1〜107#Ntは、再び、Np=LOC×Tr期間において送信信号をLOC回送信する動作を、Nc/2回にわたって繰り返す。
図19A及び図19Bに例示したような送信RF部107#1〜107#Ntの送信動作により、第1の送信RF部107#1から第Ntの送信RF部〜107#Ntの送信信号は、LOC×Nc回送信されることとなる。
別言すると、各送信RF部107#1〜107#Ntは、送信ギャップ期間TGAP後、巡回的に生成された直交符号を少なくとも一巡送信する第2の期間(Np=LOC×Tr期間)、送信周期Tr毎に、符号多重した各送信信号を送信する。
ここで、送信ギャップ期間TGAPは、ドップラ解析部213におけるサンプリング周期である直交符号の送信周期Np=LOC×Tr期間の1/2の周期に相当するNp/2に設定する。すなわち、TGAP=LOC×Tr/2である。
次に、図18に例示したレーダ受信部200の動作について説明する。
第z番の信号処理部207における出力切替部211は、直交符号生成部108からの直交符号要素インデックスOC_INDEXを基に、送信周期毎の相関演算部210の出力を、LOC個のドップラ解析部213のうちOC_INDEX番目のドップラ解析部213に選択的に切り替えて出力する。
すなわち、出力切替部211は、第M番の送信周期Trにおいて、OC_INDEX=MOD(M−1,LOC)+1番目のドップラ解析部213を選択する。また、出力切替部211は、送信ギャップ期間TGAPでは全てのドップラ解析部213を非選択とする。
第z番の信号処理部207において、複数(LOC)個のドップラ解析部213は、送信ギャップ期間TGAPが開始されるまでの前半部分のNc/2回の出力と、送信ギャップ期間TGAPが終了した後の後半部分のNc/2回の出力と、で2回に分けて別々にドップラ解析を行う。Ncが2のべき乗値の場合、ドップラ解析には、式(6−2)および式(6−3)に示すようなFFT(高速フーリエ変換)処理を適用できる。
例えば、送信ギャップ期間T
GAPが開始されるまでの前半部分のN
c/2回の出力に対するFFT処理は、式(6−2)によって表される。
また、送信ギャップ期間T
GAPが終了後の後半部分のN
c/2回の出力に対するFFT処理は、式(6−3)によって表される。
ここで、FT_FH_CIz (OC_INDEX)(k,fs,w)は、第z番の信号処理部207における第OC_INDEX番目のドップラ解析部213による第w番の出力を表し、離散時刻kでのドップラ周波数インデックスfsの、送信ギャップ期間TGAPが開始されるまでの前半部分のNc/2回の出力に対するドップラ周波数応答を示す。
また、FT_SH_CIz (OC_INDEX)(k,fs,w)は、第z番目の信号処理部におけるOC_INDEX番目のドップラ解析部213による第w番の出力を表し、離散時刻kでのドップラ周波数インデックスfsの、送信ギャップ期間TGAPが終了後の後半部分のNc/2回の出力に対するドップラ周波数応答を示す。
なお、OC_INDEX=1〜LOCであり、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noであり、wは1以上の整数である。jは、虚数単位である。また、z=1,…,Naである。
また、FT_FH_CIz (OC_INDEX)(k,fs,w)は、NcのFFTサイズにおいて、後半部分のNc/2個のデータをゼロ埋め(ゼロパディング)したものである。また、FT_SH_CIz (OC_INDEX)(k,fs,w)は、NcのFFTサイズにおいて、前半部分のNc/2個のデータをゼロ埋めしたものである。
したがって、サンプリング定理から導出される折り返しの発生しない最大ドップラ周波数は、±1/(2LOC×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/{LOC×Nc×Tr}であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲は、fs=−Nc/2+1,…,0,…,Nc/2である。
なお、FFT処理の際に、Han窓又はHamming窓といった窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。窓関数係数には、FFTサイズがNcの係数が適用されてよい。例えば、前半部分のNc/2個の窓関数係数をFT_FH_CIz (OC_INDEX)(k,fs,w)の算出時に用い、後半部分のNc/2個の係数をFT_SH_CIz (OC_INDEX)(k,fs,w)の算出時に用いる。
CFAR部215は、Loc個のドップラ解析部213からの第w番の出力について、FT_FH_CIz (OC_INDEX)(k,fs,w)、及び、FT_SH_CIz (OC_INDEX)(k,fs,w)を用いてCFAR処理を行う。
例えば、CFAR部215は、式(6−4)で表される電力加算値を算出して、離散時間軸(距離軸に相当)とドップラ周波数軸(相対速度に相当)との2次元のCFAR処理、あるいは1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。2次元のCFAR処理あるいは1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理については、例えば非特許文献2に記載の処理が適用されてよい。
CFAR部215は、CFAR処理を用いて適応的な閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力の離散時刻インデックスk_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfarを、方向推定部214及び折り返し判定部216に指示する。
折り返し判定部216は、CFAR部215から指示された離散時間インデックスk
_cfar、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarを基に、ドップラ解析部213の出力を抽出し、以下の式(6−5)及び式(6−6)を用いた判定方法により、折り返し信号か否かの判定処理を行う。例えば、折り返し判定部216は、式(6−5)が成立する場合、折り返し信号でないと判定し、式(6−6)が成立する場合、折り返し信号であると判定する。
なお、式(6−5)及び式(6−6)において、
である。
ここで、
の項は、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号に対する送信ギャップ期間中の位相回転を補正するために導入されている。
この際、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が、折り返し信号である場合、ドップラ周波数インデックスf
s_cfar≧0のとき、送信ギャップ期間中に(f
s_cfar−Nc)のドップラ周波数インデックス分の位相変化が生じ、ドップラ周波数インデックスf
s_cfar<0のときは、送信ギャップ期間中に(f
s_cfar+N
c)のドップラ周波数インデックス分の位相変化が生じることから、
の項は位相反転された出力、すなわち
となる。
従って、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が、折り返し信号である場合、
は、
よりも電力的に小さくなる。
一方、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarの信号が、折り返し信号でない場合、
は、
よりも電力的に小さくなる。
このような理由から、上述のような折り返し判定方法の適用が可能である。判定の結果、ドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号が、折り返し信号であると判定された場合、折り返し判定部216は、以下の(1)及び(2)に例示したように、ドップラ周波数インデックスの変換結果を出力する。
(1)ドップラ周波数インデックスfs_cfar≧0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar − Nc
(2)ドップラ周波数インデックスfs_cfar<0の場合、DopConv(fs_cfar)=fs_cfar + Nc
DopConv(f)は、折り返し信号の判定結果に基づくドップラ周波数インデックスfに対するドップラ周波数インデックスの変換結果を表す。
一方、判定の結果、ドップラ周波数インデックスfs_cfarの信号が、折り返し信号ではないと判定された場合、折り返し判定部216は、以下のようにドップラ周波数インデックスの変換結果を出力する。
DopConv(fs_cfar)=fs_cfar
符号多重分離部217は、折り返し判定部216の出力を基に、直交符号を用いて多重送信した信号を分離する。例えば、第ND番の送信アンテナTx#NDから符号多重送信された信号は、式(6−9)及び式(6−10)に示したように、送信時に用いた直交符号要素を複素共役(*)して符号要素インデックス毎のドップラ解析結果に乗算して加算することで、分離される。なお、ND=1,…,N
tである。なお、式(6−9)のexpの項は、直交符号の送信時間遅れにより生じる位相変動を補正するために設けている。
方向推定部214は、符号多重分離部217の出力を基に、仮想受信アレー相関ベクトルh(k,fs,w)を生成し、当該ベクトルに基づいて方向推定処理を行う。例えば、式(6−11)で表される送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む、仮想受信アレー相関ベクトルh(k_cfar,fs_cfar,w)を用いて、ターゲットからの反射波に対して受信アンテナRx間の位相差に基づく方向推定を行う。
ここで、仮想受信アレー相関ベクトルh(k
_cfar,f
s_cfar,w)は、第1の信号処理部207から第N
aの信号処理部207のそれぞれにおいて得られたドップラ解析部213からの第w番の出力をまとめたベクトルに相当する。なお、z=1,…,N
aであり、ND=1,…,N
tである。
ここで、h_cal[b]は、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値である。また、b=1,…,(Nt×Na)である。仮想受信アレー相関ベクトルh(k_cfar,fs_cfar,w)は、Nt×Na個の要素からなる列ベクトルとなる。
方向推定部214は、方向推定評価関数値PH(θ,k_cfar,fs_cfar,w)における方位方向θを所定の角度範囲内で可変して空間プロファイルを算出し、その極大ピーク方向を大きい順に所定数抽出し、それぞれの極大ピークの方位方向を到来方向推定値として出力する。また、レーダ反射波の測位結果として、方位方向と共に極大ピークレベルの情報を出力してもよい。また、レーダ反射波の測位結果として、k_cfarを基に到来時刻情報(距離情報)、ドップラ周波数情報(相対速度情報)として折り返し判定後のDopConv(fs_cfar)を出力する。
以上のように、実施の形態6に係る符号多重MIMOレーダ装置1では、レーダ送信部100において、複数の送信アンテナ107および符号多重を用いて、各送信アンテナ107から複数(LOC×Nc)回のレーダ送信を行う際に、各送信アンテナ107からLOC×Nc/2回送信した後に送信ギャップ期間TGAPが設けられる。
レーダ受信部200では、折り返し判定部216において、ドップラ解析部213の出力に折り返し信号が含まれるか否かを判定することで、ドップラ周波数の曖昧性が発生しないドップラ周波数範囲を拡大できる。例えば、LOCをサンプリング周期とした場合のドップラ周波数範囲に対して2倍に拡大できる。
また、ドップラ周波数の曖昧性が発生しないドップラ周波数範囲の拡大によって、符号多重分離部217は、直交符号要素毎にドップラ解析を行った結果を、直交符号要素の複素共役を乗算して加算する際に、折り返し信号であるか否かの判定結果を用いて、直交符号分離処理を行うことができる。
これにより、直交符号間干渉を抑制しつつ、符号多重信号の分離が可能になる。したがって、時間方向あるいは周波数方向のサイドローブを低減できる。原理的には、ノイズ成分が無い場合、あるいは無視してよい場合、実質的にサイドローブをゼロにできる。
なお、送信ギャップ期間TGAPにLOC×Tr/2を用いることで、折り返し判定性能を最大化できるが、これに限定されない。例えば、LOC×Tr/2程度あるいは、その前後の期間が設定されてもよい。
また、各送信アンテナ107から複数(LOC×Nc)回のレーダ送信を行う際に、各送信アンテナ107からLOC×Nc/2回送信した後に送信ギャップ期間TGAPを設けることで、折り返し判定性能を最大化できるが、これに限定されない。
例えば、各送信アンテナ107からLOC×Nc/2回程度、あるいは、その前後の回数を送信した後に送信ギャップ期間TGAPが設けられてもよい。例えば、SNR(signal-to-noise ratio)の偏りが生じない範囲において不等間隔に設定されてもよい。
なお、上述した実施の形態6においては、1つの送信ギャップ期間を設ける例について説明したが、実施の形態5において説明したように、複数(NGAP)の送信ギャップ期間TGAPを設けてもよい。複数の送信ギャップ期間TGAPを設けることで、より高次の折り返し信号が受信信号に含まれるか否かを判定できるので、ドップラ周波数の曖昧性が発生しないドップラ周波数範囲を更に拡大する効果が得られる。
(実施の形態7)
上述した実施の形態6では、レーダ送信部100においてパルス列を位相変調あるいは振幅変調して送信する符号多重MIMOレーダ装置1について記載した。実施の形態7では、レーダ送信部100においてチャープ(Chirp)パルスのような周波数変調したパルス圧縮波を用いた符号多重MIMOレーダ装置1について説明する。
図20は、周波数変調したチャープパルスをレーダ送信信号に用いた符号多重MIMOレーダ装置1の構成例を示す図である。図20に例示した符号多重MIMOレーダ装置1は、実施の形態2(図12)に例示した構成に比して、レーダ送信部100において、切替制御部105、送信RF部107、及び、送信アンテナ切替部121に代えて、直交符号生成部108と、第1〜第Ntの送信RF部107#1〜107#Ntと、第1〜第Ntの符号乗算部191#1〜191#Ntを含む符号多重部109と、を備える点が異なる。
また、図20に示すレーダ受信部200は、図12に例示した構成に比して、信号処理部207と方向推定部214との間に、折り返し判定部216と符号多重分離部217を備える点が異なり、また、直交符号生成部108の出力が出力切替部211に入力される点が異なる。符号多重分離部217は、例えば、折り返し判定部216における、ドップラ周波数の折り返しの有無の判定(又は検出)結果に基づいて、符号多重された受信信号を分離する。
以下、実施の形態7に係る符号多重MIMOレーダ装置1の動作について、実施の形態2とは異なる点に着目して説明する。
レーダ送信部100において、レーダ送信信号生成部101は、実施の形態2にて説明したとおり、変調信号発生部122及びVCO123によって、周波数変調信号(周波数チャープ信号)を生成する。生成された周波数チャープ信号は、方向性結合部124を介して符号多重部109と受信RF部203のミキサ部224に入力される。
直交符号生成部108は、実施の形態6と同様に、直交符号長LOCからなるNt個の直交符号系列OCSND={OCND(1),OCND(2),…,OCND(LOC)}を生成する。ここで、ND=1,…,Ntである。
例えば、直交符号生成部108は、レーダ送信周期(Tr)毎に、直交符号系列OCS1〜OCSNtの要素を指示する直交符号要素インデックスOC_INDEXを巡回的に可変することで、直交符号系列OCS1〜OCSNtの要素OC1(OC_INDEX)〜OCNt(OC_INDEX)を第1〜第Ntの符号乗算部191#1〜191#Ntに出力する。また、直交符号生成部108は、レーダ送信周期(Tr)毎に、要素インデックスOC_INDEXをレーダ受信部200の信号処理部207における出力切替部211に出力する。
ここで、OC_INDEX=1,2,…,LOCであり、M番目の送信周期において、OC_INDEX=MOD(M−1,LOC)+1である。MOD(x,y)は、モジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。
第1〜第Ntの符号乗算部191は、実施の形態6と同様に、レーダ送信周期(Tr)毎に直交符号生成部108によって生成された直交符号系列OCS1〜OCSNtの要素OC1(OC_INDEX)〜OCNt(OC_INDEX)を、ベースバンドのレーダ送信信号(ここでは、周波数チャープ信号)に対し乗算し、それぞれ、Nt個の送信RF部107#1〜107#Ntに出力する。
また、実施の形態6と同様に、送信RF部107#1〜107#Ntは、Np=LOC×Tr期間において送信信号をLOC回送信する動作を、Nc/2回にわたって繰り返した後に、送信ギャップ期間TGAPにわたって送信信号の送信を行わない。
送信ギャップ期間TGAPの経過後に、送信RF部107#1〜107#Ntは、再び、Np=LOC×Tr期間において送信信号をLOC回送信する動作を、Nc/2回にわたって繰り返す。
このような送信RF部107#1〜107#Ntの送信動作により、第1の送信RF部107#1から第Ntの送信RF部107#Ntの送信信号は、LOC×Nc回送信されることとなる。
ここで、送信ギャップ期間TGAPは、ドップラ解析部213におけるサンプリング周期である直交符号の送信周期Np=LOC×Tr期間の1/2の周期に相当するNp/2とする。すなわち、TGAP=LOC×Tr/2である。
第1〜第Ntの符号乗算部191の出力は、送信RF部107により所定の送信電力に増幅され、送信アレーアンテナ部を成す各送信アンテナTx#1〜Tx#Ntから空間に放射される。
次に、図20に例示したレーダ受信部200の動作について説明する。レーダ受信部200において、受信アレーアンテナ部を成す各受信アンテナRx#1〜Rx#Naによる信号受信からR−FFT部220の信号出力に至るまでの動作又は処理は、実施の形態2にて説明した動作又は処理と同様である。
ここで、第M番のチャープパルス送信によって得られる第z番の信号処理部207におけるz番目のR−FFT部220から出力されるビート周波数スペクトラム応答をAC_RFTz(fb,M)によって表す。fbは、R−FFT部220から出力されるビート周波数のインデックス番号を表し、fb=0,…,Ndata/2である。周波数インデックスfbが小さいほど反射波の遅延時間が小さい(別言すると、ターゲットとの距離が近い)ビート周波数を表す。
z番目の信号処理部207における出力切替部211は、直交符号生成部108からの直交符号要素インデックスOC_INDEXを基に、送信周期毎のR−FFT部220からの出力を、LOC個のドップラ解析部213のうちOC_INDEX番目のドップラ解析部213に選択的に切り替えて出力する。
例えば、出力切替部211は、M番目の送信周期Trにおいて、OC_INDEX=MOD(M−1,LOC)+1番目のドップラ解析部213を選択する。また、出力切替部211は、送信ギャップ期間TGAPでは全てのドップラ解析部213を非選択とする。
z番目の信号処理部207における複数(LOC)個のドップラ解析部213は、送信ギャップ期間TGAPが開始されるまでの前半部分のNc/回の出力と、送信ギャップ期間TGAPが終了した後の後半部分のNc/2回の出力とで2回に分けて別々にドップラ解析を行う。Ncが2のべき乗値の場合、ドップラ解析には、式(6−12)および式(6−13)で表されるようなFFT処理を適用できる。
例えば、送信ギャップ期間TGAPが開始されるまでの前半部分のNc/2回の出力に対するFFT処理は、式(6−12)によって表される。
一方、送信ギャップ期間T
GAPが終了した後の後半部分のN
c/2回の出力に対するFFT処理は、式(6−13)によって表される。
ここで、FT_FH_CIz (OC_INDEX)(fb,fs,w)は、第z番の信号処理部207における第OC_INDEX番目のドップラ解析部213による第w番の出力を表し、周波数インデックスfbでのドップラ周波数インデックスfsの、送信ギャップ期間TGAPが開始されるまでの前半部分のNc/2回の出力に対するドップラ周波数応答を示す。
また、FT_SH_CIz (OC_INDEX)(fb,fs,w)は、第z番の信号処理部207における第OC_INDEX番目のドップラ解析部213による第w番の出力を表し、周波数インデックスfbでのドップラ周波数インデックスfsの、送信ギャップ期間TGAPが終了した後の後半部分のNc/2回の出力に対するドップラ周波数応答を示す。なお、OC_INDEX=1〜LOC、fb=0,…,Ndata/2であり、wは1以上の整数である。jは虚数単位である。また、z=1,…,Naである。
また、FT_FH_CIz (OC_INDEX)(fb,fs,w)は、NcのFFTサイズにおいて、後半部のNc/2個のデータをゼロ埋めしたものである。FT_SH_CIz (OC_INDEX)(fb,fs,w)は、NcのFFTサイズにおいて、前半部のNc/2個のデータをゼロ埋めしたものである。
したがって、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、±1/(2LOC×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/{LOC×Nc×Tr}であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs=−Nc/2+1,…,0,…,Nc/2である。
なお、FFT処理の際に、Han窓又はHamming窓といった窓関数係数を乗算してもよく、窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。窓関数係数は、FFTサイズがNcのものを適用し、前半部分のNc/2個の窓関数係数をFT_FH_CIz (OC_INDEX)(fb,fs,w)の算出時に用い、後半部分のNc/2の係数をFT_SH_CIz(OC_INDEX)(fb,fs,w)の算出時に用いる。
以降のCFAR部215、折り返し判定部216、符号多重分離部217、及び、方向推定部214における処理は、実施の形態6において用いた離散時刻kをビート周波数の周波数インデックスfbに置き換えた処理に相当する。
以上の構成及び動作により、実施の形態2において説明した効果あるいは利点に加えて、実施の形態6と同様の効果あるいは利点を得ることができる。
以上、本開示に係る複数の実施の形態について説明した。
上記の実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。