JP2020050901A - アルミニウム合金電線の製造方法、アルミニウム合金電線及びワイヤーハーネス - Google Patents
アルミニウム合金電線の製造方法、アルミニウム合金電線及びワイヤーハーネス Download PDFInfo
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Abstract
【課題】細線化したアルミニウム合金素線を製造する際に、アルミニウム合金素線が断線し難く、かつ連続的な中間焼鈍工程が可能な、アルミニウム合金電線の製造方法、アルミニウム合金電線及びワイヤーハーネスを提供する。【解決手段】アルミニウム合金電線の製造方法は、アルミニウム合金荒引線を伸線する第1の伸線工程と、この第1の伸線工程で得られた第1の伸線を焼鈍する中間焼鈍工程と、この中間焼鈍工程で得られた中間焼鈍伸線を伸線する第2の伸線工程と、この第2の伸線工程で得られた第2の伸線を焼鈍する仕上げ焼鈍工程と、を含み、前記中間焼鈍工程を、400〜640℃で10分未満行う。【選択図】なし
Description
本発明は、自動車のワイヤーハーネス等に用いられる、アルミニウム合金電線の製造方法、アルミニウム合金電線及びワイヤーハーネスに関する。
従来、自動車用ワイヤーハーネス等に用いられる電線として、銅素線を含む銅電線が用いられてきた。しかし、近年、導体の軽量化のために、アルミニウム合金素線を含むアルミニウム合金電線が用いられるようになってきている。
アルミニウム合金素線の製造方法としては、特許文献1に、中間焼鈍工程において加工度1〜6の導体を温度300℃〜450℃、時間10分〜6時間の熱処理条件で熱処理を行うアルミニウム合金導体の製造方法が記載されている。
また、特許文献2に、Fe、Zr、及びSi、並びにCuとMgとのうちの少なくとも一方を含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物であるアルミニウム合金素線を製造する方法が記載されている。
さらに、特許文献3に、Fe、Mg、及びSiを含有し、伸線加工したアルミニウム合金線材を、連続通電熱処理による溶体化熱処理後、時効熱処理するアルミニウム合金線の製造方法が記載されている。
近年、アルミニウム合金素線には、屈曲性等の要請から、より細線化することが望まれている。具体的には、アルミニウム合金素線を、例えば、直径0.1mm程度に細線化することが望まれている。
また、このようなアルミニウム合金素線の製造方法においては、第1の伸線、第2の伸線、撚線導体等の、送り出されたアルミニウム合金線材等を移動させたまま次の焼鈍工程で熱処理する工程、が採用されることが、製造コスト等の面から望まれている。さらに、上記製造方法においては、送り出されたアルミニウム合金線材等を、第2の伸線工程や撚り合わせる工程、撚線導体を被覆する工程の前に、焼鈍工程で熱処理する工程、いわゆる連続的な熱処理工程が採用されることが、製造コスト等の面から望まれている。ここで、第1の伸線とは、最初の伸線工程である第1の伸線工程で得られる線材を意味する。第2の伸線とは、第1の伸線工程の後に行われる伸線工程である第2の伸線工程で得られる線材を意味する。
しかしながら、従来の製造方法で、アルミニウム合金線材を直径0.1mm程度に細線化するために伸線加工すると、加工度が大きいため断線し易い。具体的には、従来の製造方法で、アルミニウム合金素線を直径0.32mm未満に細くすると断線するおそれがある。
また、アルミニウム合金線材を直径0.1mm程度に細線化すると、加工歪が大きいため、アルミニウム合金線材中に、導電率を低下させる元素が固溶する。通常、このような固溶した元素を析出させる方法として、加熱を伴う時効処理が長時間行われる。しかし、時効処理で行われる熱処理が長時間だと連続的な熱処理工程を採用することができない。
具体的には、特許文献1に記載される製造方法は、仕上げ焼鈍工程が連続通電熱処理で0.03〜0.55秒と短いが、中間焼鈍工程が10分以上と長いため、連続的な中間焼鈍工程ができない。なお、特許文献3には、溶体化処理のための通電連続加熱処理が記載されているが、これは、連続的な中間焼鈍処理とは異なる処理である。
このように、従来のアルミニウム合金素線の製造方法には、細線化するとアルミニウム合金素線が断線し易く、かつ、連続的な中間焼鈍工程及び連続的な仕上げ焼鈍工程が困難であるという課題があった
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、細線化したアルミニウム合金素線を製造する際にアルミニウム合金素線が断線し難くかつ連続的な中間焼鈍工程及び連続的な仕上げ焼鈍工程が可能なアルミニウム合金電線の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、細線化したアルミニウム合金素線を製造する際にアルミニウム合金素線が断線し難くかつ連続的な中間焼鈍工程及び連続的な仕上げ焼鈍工程が可能なアルミニウム合金電線を提供することを目的とする。さらに、本発明は、細線化したアルミニウム合金素線を製造する際にアルミニウム合金素線が断線し難くかつ連続的な中間焼鈍工程及び連続的な仕上げ焼鈍工程が可能なアルミニウム合金電線を備えたワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に係るアルミニウム合金電線の製造方法は、アルミニウム合金荒引線を伸線する第1の伸線工程と、この第1の伸線工程で得られた第1の伸線を焼鈍する中間焼鈍工程と、この中間焼鈍工程で得られた中間焼鈍伸線を伸線する第2の伸線工程と、この第2の伸線工程で得られた第2の伸線を焼鈍する仕上げ焼鈍工程と、を含み、前記中間焼鈍工程を、400〜640℃で10分未満行うことを特徴とする。
本発明の第2の態様に係るアルミニウム合金電線の製造方法は、前記第1の伸線工程における、下記式(1)
[数1]
η1=ln(A0/A1) (1)
(式中、η1は第1の加工度、A0は第1の伸線工程前のアルミニウム合金荒引線の断面積、A1は第1の伸線工程後に得られた第1の伸線の断面積を示す。)
で定義される第1の加工度η1が1〜9の範囲内にあることを特徴とする。
[数1]
η1=ln(A0/A1) (1)
(式中、η1は第1の加工度、A0は第1の伸線工程前のアルミニウム合金荒引線の断面積、A1は第1の伸線工程後に得られた第1の伸線の断面積を示す。)
で定義される第1の加工度η1が1〜9の範囲内にあることを特徴とする。
本発明の第3の態様に係るアルミニウム合金電線の製造方法は、前記第2の伸線工程における、下記式(2)
[数2]
η2=ln(AIM/A2) (2)
(式中、η2は第2の加工度、AIMは第2の伸線工程前の中間焼鈍伸線の断面積、A2は第2の伸線工程後に得られた第2の伸線の断面積を示す。)
で定義される第2の加工度η2が6以下であることを特徴とする。
[数2]
η2=ln(AIM/A2) (2)
(式中、η2は第2の加工度、AIMは第2の伸線工程前の中間焼鈍伸線の断面積、A2は第2の伸線工程後に得られた第2の伸線の断面積を示す。)
で定義される第2の加工度η2が6以下であることを特徴とする。
本発明の第4の態様に係るアルミニウム合金電線の製造方法は、前記アルミニウム合金電線を構成するアルミニウム合金素線は、Feを0.1〜1.0質量%含むことを特徴とする。
本発明の第5の態様に係るアルミニウム合金電線の製造方法は、前記アルミニウム合金素線は、さらに、Zrを0〜0.08質量%、Siを0.02〜2.8質量%、及びTiを0.001〜0.009質量%含み、かつ、Cu及びMgの少なくとも一方を含み、Cuを含む場合はCuを0.05〜0.63質量%、Mgを含む場合はMgを0.04〜0.45質量%、Cu及びMgを含む場合はCu及びMgの合計量を0.04〜0.63質量%の量で含むことを特徴とする。
本発明の第6の態様に係るアルミニウム合金電線は、前記アルミニウム合金電線の製造方法で得られ、前記アルミニウム合金素線が、引張強さ121MPa以上、伸び17%以上、かつ導電率56.1%IACS以上であることを特徴とする。
本発明の第7の態様に係るワイヤーハーネスは、前記アルミニウム合金電線を備えたことを特徴とする。
本発明に係るアルミニウム合金電線の製造方法は、細線化したアルミニウム合金素線を製造する際に、アルミニウム合金素線が断線し難く、かつ連続的な中間焼鈍工程及び連続的な仕上げ焼鈍工程が可能である。また、本発明に係るアルミニウム合金電線は、細線化したアルミニウム合金素線を製造する際に、アルミニウム合金素線が断線し難く、かつ連続的な中間焼鈍工程及び連続的な仕上げ焼鈍工程を用いて製造することができる。さらに、本発明に係るワイヤーハーネスによれば、車両用等のワイヤーハーネス用として好ましい引張強さ、伸び及び導電率を有するワイヤーハーネスが得られる。
以下、本実施形態のアルミニウム合金電線の製造方法を具体的に説明する。
[アルミニウム合金電線の製造方法]
本実施形態のアルミニウム合金電線の製造方法は、第1の伸線工程と、中間焼鈍工程と、第2の伸線工程と、仕上げ焼鈍工程とを含む。
本実施形態のアルミニウム合金電線の製造方法は、第1の伸線工程と、中間焼鈍工程と、第2の伸線工程と、仕上げ焼鈍工程とを含む。
(第1の伸線工程)
第1の伸線工程は、アルミニウム合金荒引線を伸線する工程である。ここで、アルミニウム合金荒引線とは、本実施形態で得られるアルミニウム合金素線と実質的に同一組成の荒引線である。以下、アルミニウム合金荒引線について説明する。
第1の伸線工程は、アルミニウム合金荒引線を伸線する工程である。ここで、アルミニウム合金荒引線とは、本実施形態で得られるアルミニウム合金素線と実質的に同一組成の荒引線である。以下、アルミニウム合金荒引線について説明する。
<アルミニウム合金荒引線>
アルミニウム合金荒引線は、アルミニウムを主成分として含むアルミニウム合金からなる荒引線である。アルミニウム合金荒引線は、通常、原料アルミニウムと所望の元素とを用いて常法により溶解し、連続鋳造圧延法等の圧延加工を行うことにより得られる。アルミニウム合金荒引線の断面の直径は、通常5〜20mm、好ましくは7〜15mmである。
アルミニウム合金荒引線は、アルミニウムを主成分として含むアルミニウム合金からなる荒引線である。アルミニウム合金荒引線は、通常、原料アルミニウムと所望の元素とを用いて常法により溶解し、連続鋳造圧延法等の圧延加工を行うことにより得られる。アルミニウム合金荒引線の断面の直径は、通常5〜20mm、好ましくは7〜15mmである。
アルミニウム合金荒引線の材質であるアルミニウム合金は、アルミニウム地金等の原料アルミニウムに、必要により、Fe、Zr、Si、Ti、Cu及びMg等の元素を添加してなる合金である。
アルミニウム地金としては、純度99.7質量%以上の純アルミニウムを用いることが好ましい。なお、本実施形態では、アルミニウム地金としては、純度99.7質量%以上の1種アルミニウム地金、純度99.85質量%以上の特2種アルミニウム地金、純度99.90質量%以上の特1種アルミニウム地金等を用いることができる。本発明では、比較的安価な1種アルミニウム地金を用いることができるため、アルミニウム合金電線の製造コストを低くすることができる。
アルミニウム合金荒引線は、Feを、好ましくは0.1〜1.0質量%、より好ましくは0.4〜0.9質量%含む。
Feは、アルミニウム合金荒引線中において固溶限が低く析出し易い元素である。アルミニウム合金荒引線がFeを含むと、導電率が高いまま、析出強化により強度が増加する。また、Feを含むアルミニウム合金を鋳造圧延すると、得られるアルミニウム合金荒引線中にFeを含む金属間化合物が晶出する。この金属間化合物は、アルミニウム合金荒引線中によく分散されており、アルミニウム合金荒引線の強度を増加させる。アルミニウム合金荒引線が、Feを上記範囲内で含むと、導電率が高いまま強度が増加する効果が高い。
アルミニウム合金荒引線は、Zrを、好ましくは0〜0.08質量%、より好ましくは0.001〜0.08質量%、さらに好ましくは0.002〜0.05質量%含む。
アルミニウム合金荒引線がZrを含むと、耐熱性が向上する。アルミニウム合金荒引線が、Zrを上記範囲内で含むと、導電率が高いまま耐熱性が向上する効果が高い。また、アルミニウム合金荒引線は、Feに加えてZrを含むことが好ましい。
アルミニウム合金荒引線は、Siを、好ましくは0.02〜2.8質量%、より好ましくは0.02〜1.8質量%、さらに好ましくは0.02〜0.25質量%含む。
アルミニウム合金荒引線がSiを含むと、強度が向上する。アルミニウム合金荒引線が、Siを上記範囲内で含むと、強度が向上する効果が高い。また、アルミニウム合金荒引線は、SiをFeに加えて含むことが好ましい。
アルミニウム合金荒引線は、Tiを、好ましくは0.001〜0.009質量%、より好ましくは0.003〜0.007質量%含む。
アルミニウム合金荒引線がTiを含むと、アルミニウム合金荒引線中の結晶粒が微細化して加工性が向上するためアルミニウム合金素線の製造時における断線の頻度が低減する。アルミニウム合金荒引線が、Tiを上記範囲内で含むと、導電率を低下させずに断線頻度をより低下させることができる。また、アルミニウム合金荒引線は、TiをFeに加えて含むことが好ましい。
アルミニウム合金荒引線は、Cu及びMgの少なくとも一方を含むことが好ましい。アルミニウム合金荒引線は、Cuを含む場合は、Cuを、好ましくは0.05〜0.63質量%、より好ましくは0.2〜0.5質量%含む。また、アルミニウム合金荒引線は、Mgを含む場合は、Mgを、好ましくは0.04〜0.45質量%、より好ましくは0.15〜0.37質量%含む。さらに、アルミニウム合金荒引線は、Cu及びMgを含む場合は、Cu及びMgの合計量を、好ましくは0.04〜0.63質量%、より好ましくは0.15〜0.5質量%含む。
アルミニウム合金荒引線がCu及びMgの少なくとも一方を含むと、固溶強化により強度が向上する。アルミニウム合金荒引線が、Cu及びMgの少なくとも一方を上記範囲内で含むと、強度が向上する効果が高い。また、アルミニウム合金荒引線は、Cu及びMgの少なくとも一方をFeに加えて含むことが好ましい。
アルミニウム合金荒引線は、Feを0.1〜1.0質量%に加えて、Zrを0〜0.08質量%、Siを0.02〜2.8質量%、及びTiを0.001〜0.009質量%含むことが好ましい。また、アルミニウム合金荒引線は、さらに、Cu及びMgの少なくとも一方を含むことが好ましい。アルミニウム合金荒引線は、Cuを含む場合はCuを0.05〜0.63質量%、Mgを含む場合はMgを0.04〜0.45質量%、Cu及びMgを含む場合はCu及びMgの合計量を0.04〜0.63質量%の量で含むことが好ましい。
アルミニウム合金荒引線がFe、Zr、Si、Ti、Cu及びMgを上記範囲内で含むと、アルミニウム合金荒引線に対する、Fe、Zr、Si、Ti、Cu及びMgの各成分の作用がバランスよく発現する。
なお、アルミニウム合金荒引線がZr、Si、Ti、Cu及びMgを上記範囲の上限を超える量で含むと、得られるアルミニウム合金素線の導電率が低下し易い。なお、本実施形態のアルミニウム合金素線の製造方法で得られるアルミニウム合金素線の導電率は、好ましくは51%IACS以上、より好ましくは58%IACS以上である。
なお、上記のアルミニウム合金荒引線中の各元素の含有量は、母材であるアルミニウム地金中や製造の際に不可避的に含まれる元素量と、アルミニウム地金に意図的に添加した元素の添加量との合計量である。
アルミニウム合金荒引線は、Al、Fe、Zr、Si、Ti、Cu及びMg以外の不可避不純物を含むことがある。不可避不純物としては、例えば、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)が挙げられる。
アルミニウム合金荒引線中の不可避不純物の含有量は、不可避不純物の合計量で、通常0.07質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以下である。不可避不純物中、特にVは、含有量が多いと、得られるアルミニウム合金素線の導電率を低下させやすい。このため、アルミニウム合金荒引線中のVの含有量が0.02質量%以下であることが好ましい。アルミニウム合金荒引線中の不可避不純物の含有量が上記範囲内であると、本実施形態の製造方法の奏する効果を阻害せず、この製造方法で得られるアルミニウム合金電線の特性に格別な影響を与えない。
上記のアルミニウム合金荒引線は、アルミニウム地金に所定の元素を添加した後、連続鋳造圧延法、押出法等の公知の方法により製造される。
第1の伸線工程でアルミニウム合金荒引線を伸線する伸線方法としては、公知の乾式伸線法又は湿式伸線法が用いられる。第1の伸線工程では、下記式(1)
[数3]
η1=ln(A0/A1) (1)
(式中、η1は第1の加工度、A0は第1の伸線工程前のアルミニウム合金荒引線の断面積、A1は第1の伸線工程後に得られた第1の伸線の断面積を示す。)
で定義される第1の加工度η1が、通常1〜9、好ましくは2〜9、より好ましくは4〜8の範囲内にある。
[数3]
η1=ln(A0/A1) (1)
(式中、η1は第1の加工度、A0は第1の伸線工程前のアルミニウム合金荒引線の断面積、A1は第1の伸線工程後に得られた第1の伸線の断面積を示す。)
で定義される第1の加工度η1が、通常1〜9、好ましくは2〜9、より好ましくは4〜8の範囲内にある。
第1の加工度η1が1以上であると、次工程である中間焼鈍工程の熱処理において、再結晶粒が粗大化せず得られる第1の伸線の伸びが十分になり、第2の伸線工程中の断線を防止することができる。また、第1の加工度η1が9以下であると、得られる第1の伸線の残留歪が大きくなりすぎないため、伸線工程中の断線を防止することができる。
アルミニウム合金荒引線が第1の伸線工程を経て得られる第1の伸線は、アルミニウム合金荒引線と実質的に同じ組成であるが、線径が小さくなり内部に加工歪を有するものとなる。
(中間焼鈍工程)
中間焼鈍工程は、第1の伸線工程で得られた第1の伸線を焼鈍する工程である。中間焼鈍工程は、第1の伸線工程で硬くなった第1の伸線を加熱することにより、第1の伸線中の加工歪を除去するとともに再結晶粒を形成及び成長させて第1の伸線に柔軟性を付与する工程である。また、中間焼鈍工程は、さらに、第1の伸線工程で固溶し導電率を低下させる元素を析出させる工程である。この中間焼鈍工程は、従来の連続鋳造圧延法や押出法では冷却時間が短いために十分に析出させることができなかった元素を析出させることができる工程でもあるため、元素の析出に有効な工程である。第1の伸線は、中間焼鈍工程により結晶粒の大きさや配置が変化して中間焼鈍伸線となる。
中間焼鈍工程は、第1の伸線工程で得られた第1の伸線を焼鈍する工程である。中間焼鈍工程は、第1の伸線工程で硬くなった第1の伸線を加熱することにより、第1の伸線中の加工歪を除去するとともに再結晶粒を形成及び成長させて第1の伸線に柔軟性を付与する工程である。また、中間焼鈍工程は、さらに、第1の伸線工程で固溶し導電率を低下させる元素を析出させる工程である。この中間焼鈍工程は、従来の連続鋳造圧延法や押出法では冷却時間が短いために十分に析出させることができなかった元素を析出させることができる工程でもあるため、元素の析出に有効な工程である。第1の伸線は、中間焼鈍工程により結晶粒の大きさや配置が変化して中間焼鈍伸線となる。
中間焼鈍工程における中間焼鈍処理の温度は、通常400〜640℃、好ましくは430〜640℃である。この中間焼鈍処理の温度とは、後述の連続中間焼鈍処理の場合における最高到達温度を意味する。中間焼鈍処理の温度が上記範囲内にあると、第1の伸線中の加工歪の除去、第1の伸線中での再結晶粒の形成及び成長、中間焼鈍伸線への柔軟性の付与、及び元素の析出の各作用が十分に生じる。このため、中間焼鈍工程の後に行われる第2の伸線工程での断線の発生を実質的になくす又は抑制することができる。
中間焼鈍工程における中間焼鈍処理は、10分未満、好ましくは0.01秒〜5分、より好ましくは0.1秒〜5分行う。
上記温度範囲で中間焼鈍処理を行う場合、中間焼鈍時間が10分で、第1の伸線中の加工歪の除去作用、中間焼鈍伸線への柔軟性の付与作用、及び第1の伸線工程で固溶した元素の析出作用のいずれか1個以上が実質的に飽和する。すなわち、上記温度範囲で中間焼鈍処理を行う場合、中間焼鈍時間を10分以上としてもこれらの作用が向上しなくなる。このため、中間焼鈍処理の時間が10分未満であると、余分な中間焼鈍処理を行わなくて済むとともに、中間焼鈍工程を連続的な中間焼鈍処理(連続中間焼鈍処理)とすることが可能になる。中間焼鈍時間が0.01秒以上であると、第1の伸線中の加工歪の除去作用、及び中間焼鈍伸線への柔軟性の付与作用が十分に発現する。また、中間焼鈍時間が0.1秒以上であると、これらの作用に加えて、第1の伸線工程で固溶した元素の析出作用も十分に発現する。なお、この固溶した元素の析出作用は、主にFeを含む金属間化合物の析出作用として現れる。
ここで、連続中間焼鈍処理とは、第1の伸線工程のラインから送り出された第1の伸線を、そのまま移動させつつ連続的に中間焼鈍処理する処理、又は送り出された第1の伸線を第2の伸線工程のラインに送り出す前で中間焼鈍処理する処理を意味する。
また、中間焼鈍処理の時間が10分未満であると、再結晶粒が必要以上に粗大化せず得られる第1の伸線の強度及び伸びが十分になり、第1の伸線の断線を防止することができる。
上記の連続中間焼鈍処理についてより具体的に説明する。連続中間焼鈍処理としては、例えば、連続走間熱処理、連続通電加熱処理、連続誘電加熱処理が用いられる。
ここで、連続走間熱処理とは、第1の伸線を、高温に保持した焼鈍炉中に連続的に通過させることにより、第1の伸線を連続的に加熱する処理である。また、連続通電加熱処理とは、第1の伸線を2つの電極輪を連続的に通過させることにより第1の伸線に電流を流して第1の伸線にジュール熱を発生させ、このジュール熱により第1の伸線を焼鈍する処理である。さらに、連続誘電加熱処理とは、第1の伸線を交流電界内に連続的に通過させることにより第1の伸線に渦電流によるジュール熱を発生させ、このジュール熱により第1の伸線を焼鈍する処理である。
ところで、上記の連続中間焼鈍処理を行うためには、中間焼鈍工程のラインの長さの制約等から中間焼鈍処理の処理時間が短いことが要求される。これに対し、本実施形態の製造方法の中間焼鈍工程は、中間焼鈍処理の処理時間が短いため、連続中間焼鈍処理が可能である。
なお、本実施形態の製造方法において、中間焼鈍工程における中間焼鈍処理の時間を10分未満と短くすることができる理由は、アルミニウム合金荒引線の組成と、第1の伸線工程の第1の加工度η1の数値範囲とが複合的に影響した結果であると推測される。すなわち、中間焼鈍工程の原料である第1の伸線中には、第1の伸線工程において第1の加工度η1で伸線加工されたことによる加工歪が生じている。そして、中間焼鈍工程ではこの第1の伸線中の加工歪が合金成分の析出を促進して中間焼鈍処理を短時間化するとともに、第1の伸線中の加工歪が除去されるからであると推測される。
中間焼鈍処理の時間が上記範囲内にあると、中間焼鈍工程で得られる中間焼鈍伸線に適度な柔軟性が付与され、中間焼鈍工程の後に行われる第2の伸線工程での断線の発生を実質的になくす又は抑制することができる。
第1の伸線が中間焼鈍工程を経て得られる中間焼鈍伸線は、アルミニウム合金荒引線及び第1の伸線と実質的に同じ組成であるが、内部の加工歪の一部又は全部が除去され、再結晶粒が形成され、適度な柔軟性が付与されたものとなる。
(第2の伸線工程)
第2の伸線工程は、中間焼鈍工程で得られた中間焼鈍伸線を伸線する工程である。第2の伸線工程で中間焼鈍伸線を伸線する伸線方法としては、第1の伸線工程と同様に公知の乾式伸線法又は湿式伸線法が用いられる。
第2の伸線工程は、中間焼鈍工程で得られた中間焼鈍伸線を伸線する工程である。第2の伸線工程で中間焼鈍伸線を伸線する伸線方法としては、第1の伸線工程と同様に公知の乾式伸線法又は湿式伸線法が用いられる。
第2の伸線工程では、下記式(2)
[数4]
η2=ln(AIM/A2) (2)
(式中、η2は第2の加工度、AIMは第2の伸線工程前の中間焼鈍伸線の断面積、A2は第2の伸線工程後に得られた第2の伸線の断面積を示す。)
で定義される第2の加工度η2が、通常6以下、好ましくは0.3〜6、より好ましくは0.3〜5の範囲内にある。
[数4]
η2=ln(AIM/A2) (2)
(式中、η2は第2の加工度、AIMは第2の伸線工程前の中間焼鈍伸線の断面積、A2は第2の伸線工程後に得られた第2の伸線の断面積を示す。)
で定義される第2の加工度η2が、通常6以下、好ましくは0.3〜6、より好ましくは0.3〜5の範囲内にある。
第2の加工度η2が6以下であると、得られる第2の伸線の強度が高くなりすぎないことから伸線工程に過度な力を必要としないため、伸線工程中の断線を防止することができる。また、第2の加工度η2が0.3以上であると、次工程である仕上げ焼鈍工程の熱処理において、再結晶量が粗大化せず得られる第2の伸線の強度及び伸びが十分になり、第2の伸線の断線を防止することができる。なお、第2の加工度η2が6を超えると、第2の伸線の伸線性が低下するおそれがある。
中間焼鈍伸線が第2の伸線工程を経て得られる第2の伸線は、アルミニウム合金荒引線、第1の伸線や中間焼鈍伸線と実質的に同じ組成であるが、線径が小さくなり内部に加工歪を有するものとなる。
本実施形態の製造方法では、第1の伸線工程の上記式(1)で定義される第1の加工度η1と、第2の伸線工程の上記式(2)で定義される第2の加工度η2との和が、好ましくは8.5〜9.5、より好ましくは8.9〜9.3である。
(仕上げ焼鈍工程)
仕上げ焼鈍工程は、第2の伸線工程で得られた第2の伸線を焼鈍する工程である。仕上げ焼鈍工程は、第2の伸線工程で硬くなった第2の伸線を熱処理することにより、第2の伸線中の加工歪を除去し、伸線中に再結晶粒を形成及び成長させるとともに、第2の伸線に柔軟性を付与する工程である。また、仕上げ焼鈍工程は、中間焼鈍工程で十分に析出できなかった元素がある場合に、その元素を析出させる工程でもある。第2の伸線は、仕上げ焼鈍工程を経ると、結晶粒の大きさや配置が変化して、アルミニウム合金素線となる。
仕上げ焼鈍工程は、第2の伸線工程で得られた第2の伸線を焼鈍する工程である。仕上げ焼鈍工程は、第2の伸線工程で硬くなった第2の伸線を熱処理することにより、第2の伸線中の加工歪を除去し、伸線中に再結晶粒を形成及び成長させるとともに、第2の伸線に柔軟性を付与する工程である。また、仕上げ焼鈍工程は、中間焼鈍工程で十分に析出できなかった元素がある場合に、その元素を析出させる工程でもある。第2の伸線は、仕上げ焼鈍工程を経ると、結晶粒の大きさや配置が変化して、アルミニウム合金素線となる。
仕上げ焼鈍工程は、製造コスト等の面から連続的な仕上げ焼鈍処理(連続仕上げ焼鈍処理)とすることが望まれるが、バッチ式の仕上げ焼鈍処理としてもよい。連続仕上げ焼鈍処理としては、連続中間焼鈍処理と同様に、例えば、連続走間熱処理、連続通電加熱処理、連続誘電加熱処理が用いられる。また、バッチ式の仕上げ焼鈍処理としては、例えば、第2の伸線をコイル等に巻きつけた後、焼鈍炉に一定時間保持する方法が用いられる。
連続的な仕上げ焼鈍処理の場合、仕上げ焼鈍処理の温度は、通常400〜660℃、好ましくは430〜650℃である。仕上げ焼鈍処理の温度が上記範囲内にあると、得られるアルミニウム合金素線は、柔軟性に優れ、強度及び伸びが大きくなる。なお、仕上げ焼鈍処理の温度が400℃未満であると、得られるアルミニウム合金素線は柔軟性が小さくなるおそれがある。また、仕上げ焼鈍処理の温度が660℃を超えると、得られるアルミニウム合金素線は強度及び伸びが小さくなるおそれがある。
また、連続的な仕上げ焼鈍処理の場合、仕上げ焼鈍処理の時間は、通常0.01秒〜10分、好ましくは0.01秒〜1分である。仕上げ焼鈍処理の時間が上記範囲内にあると、得られるアルミニウム合金素線は、柔軟性に優れ、強度及び伸びが大きくなる。なお、仕上げ焼鈍処理の時間が0.01秒未満であると、得られるアルミニウム合金素線は柔軟性が小さくなるおそれがある。また、仕上げ焼鈍処理の時間が10分以下であると、必要以上に焼鈍する余分な仕上げ焼鈍処理を行わなくて済むとともに、必要により仕上げ焼鈍工程を連続的に処理することが可能になる。
第2の伸線が仕上げ焼鈍工程を経て得られるアルミニウム合金素線は、アルミニウム合金荒引線、第1の伸線及び第2の伸線と実質的に同じ組成であるが、内部の加工歪の一部又は全部が除去され、再結晶粒が形成され、適度な柔軟性が付与されたものとなる。なお、アルミニウム合金素線は、アルミニウム合金荒引線等と実質的に同一組成であり、アルミニウム合金荒引線の組成については上記説明のとおりである。このため、アルミニウム合金素線の組成については説明を省略する。
本実施形態の製造方法では、得られたアルミニウム合金素線について、必要により、さらに、冷却工程、時効工程等を行ってもよい。
本実施形態の製造方法は、細線化してもアルミニウム合金素線が断線し難い。このため、本実施形態の製造方法によれば、1トンの荒引線(アルミニウム合金荒引線)から線径0.1mmのアルミニウム合金素線を製造するまでの断線の回数を示す伸線性が、通常40回〜99回/ton、好ましくは39回/ton以下となる。
適宜、時効処理等を行って最終的に得られたアルミニウム合金素線は、アルミニウム合金電線の原料となる。アルミニウム合金電線は、通常、アルミニウム合金素線を複数本撚り合わされて得られた撚線導体(芯線)と、この撚線導体の表面を被覆する絶縁樹脂層とを含む。絶縁樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂や、塩化ビニルを用いることができる。また、アルミニウム合金電線は、撚線導体及び絶縁樹脂層以外に電磁波遮蔽層等を有していてもよい。さらに、第2の伸線を複数本撚り合わせて撚線導体とした後に、仕上げ焼鈍工程を行い、その後絶縁樹脂層を構成してもよい。本実施形態の製造方法で得られたアルミニウム合金素線を用いて、アルミニウム合金電線を製造する方法としては、公知の方法を用いることができる。
得られたアルミニウム合金電線は、車両用電線、ケーブル等の車両用部品、電力ケーブル、通信ケーブル等の電気部品又は電子部品、機器用電線等の機械部品、建材等の用途に使用することができる。
[アルミニウム合金電線]
本実施形態のアルミニウム合金電線は、上記のアルミニウム合金電線の製造方法で得られ、アルミニウム合金素線が、所定の引張強さ、伸び、かつ導電率を有するアルミニウム合金電線である。本実施形態のアルミニウム合金電線は、このアルミニウム合金素線を用いて、アルミニウム合金電線の製造方法を用いて作製されたものである。上記アルミニウム合金素線を用いてアルミニウム合金電線を製造する方法としては、公知の方法を用いることができる。
本実施形態のアルミニウム合金電線は、上記のアルミニウム合金電線の製造方法で得られ、アルミニウム合金素線が、所定の引張強さ、伸び、かつ導電率を有するアルミニウム合金電線である。本実施形態のアルミニウム合金電線は、このアルミニウム合金素線を用いて、アルミニウム合金電線の製造方法を用いて作製されたものである。上記アルミニウム合金素線を用いてアルミニウム合金電線を製造する方法としては、公知の方法を用いることができる。
本実施形態のアルミニウム合金電線は、アルミニウム合金素線の引張強さが、通常121MPa以上、好ましくは121〜143MPaであり、強度が高い。本実施形態のアルミニウム合金電線は、線径0.10mmのアルミニウム合金素線の引張強さが上記範囲内にあることが好ましい。
本実施形態のアルミニウム合金電線は、アルミニウム合金素線の伸びが、通常17%以上、好ましくは17〜26%であり、伸びが大きい。本実施形態のアルミニウム合金電線は、線径0.10mmのアルミニウム合金素線の伸びが上記範囲内にあることが好ましい。
本実施形態のアルミニウム合金電線は、アルミニウム合金素線の導電率が、通常56.1%IACS以上、好ましくは56.1〜59.0%IACSであり、導電率が大きい。本実施形態のアルミニウム合金電線は、線径0.10mmのアルミニウム合金素線の導電率が上記範囲内にあることが好ましい。
本実施形態のアルミニウム合金電線を構成するアルミニウム合金素線は、好ましくは引張強さ121MPa以上、伸び17%以上、かつ導電率56.1%IACS以上である。また、本実施形態のアルミニウム合金電線を構成するアルミニウム合金素線は、より好ましくは、引張強さ121〜143MPa、伸び17〜26%、かつ導電率56.1〜59.0%である。アルミニウム合金素線の引張強さ、伸び及び導電率の全てが上記範囲内にあると、車両用等のワイヤーハーネス用として好ましい引張強さ、伸び及び導電率を有するアルミニウム合金電線が得られる。また、アルミニウム合金素線の引張強さ、伸び及び導電率の全てが上記範囲内にあると、またこのアルミニウム合金電線を用いて好ましい引張強さ、伸び及び導電率を有する車両用等のワイヤーハーネスが得られる。
上記のアルミニウム合金電線の製造方法で得られたアルミニウム合金電線は、車両用電線、ケーブル等の車両用部品、電力ケーブル、通信ケーブル等の電気部品又は電子部品、機器用電線等の機械部品、建材等の用途に使用することができる。車両用部品の用途としては、具体的には、例えばワイヤーハーネス等が挙げられる。
[ワイヤーハーネス]
本実施形態のワイヤーハーネスは、上記のアルミニウム合金電線を備えたワイヤーハーネスである。本実施形態のワイヤーハーネスは上記のアルミニウム合金電線を用いて、公知の方法で作製することができる。本実施形態のワイヤーハーネスは、車両用のワイヤーハーネスとして用いることができる。
本実施形態のワイヤーハーネスは、上記のアルミニウム合金電線を備えたワイヤーハーネスである。本実施形態のワイヤーハーネスは上記のアルミニウム合金電線を用いて、公知の方法で作製することができる。本実施形態のワイヤーハーネスは、車両用のワイヤーハーネスとして用いることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜28、比較例1〜3]
JIS H 2102の1種アルミニウム地金を用い、ここにFe、Zr、Si、Ti、Cu及びMgを所定量添加して表1に示す成分組成(質量%)のアルミニウム合金を得た。このアルミニウム合金を常法により溶解し、連続鋳造圧延法を用いて線径9.5mmの荒引線(アルミニウム合金荒引線)に加工した。アルミニウム合金荒引線の組成は、アルミニウム合金と同じであった。
JIS H 2102の1種アルミニウム地金を用い、ここにFe、Zr、Si、Ti、Cu及びMgを所定量添加して表1に示す成分組成(質量%)のアルミニウム合金を得た。このアルミニウム合金を常法により溶解し、連続鋳造圧延法を用いて線径9.5mmの荒引線(アルミニウム合金荒引線)に加工した。アルミニウム合金荒引線の組成は、アルミニウム合金と同じであった。
次に、このアルミニウム合金荒引線を、連続伸線機を用い、表2に示す第1の加工度η1で伸線して、伸線された線材(第1の伸線)を得た(第1の伸線工程)。
さらに、第1の伸線を、表2に示す条件で通電によって連続焼鈍(中間焼鈍)して、中間焼鈍された線材(中間焼鈍伸線)を得た。表2に示す温度は最高到達温度である(中間焼鈍工程)。
次に、この中間焼鈍伸線を、連続伸線機を用い、表2に示す第2の加工度η2で伸線して、伸線された線材(第2の伸線)を得た(第2の伸線工程)。
さらに、第2の伸線を、表2に示す条件で連続的に焼鈍(仕上げ焼鈍)して、アルミニウム合金素線を得た。表2に示す温度は最高到達温度である(仕上げ焼鈍工程)。
さらに、第1の伸線を、表2に示す条件で通電によって連続焼鈍(中間焼鈍)して、中間焼鈍された線材(中間焼鈍伸線)を得た。表2に示す温度は最高到達温度である(中間焼鈍工程)。
次に、この中間焼鈍伸線を、連続伸線機を用い、表2に示す第2の加工度η2で伸線して、伸線された線材(第2の伸線)を得た(第2の伸線工程)。
さらに、第2の伸線を、表2に示す条件で連続的に焼鈍(仕上げ焼鈍)して、アルミニウム合金素線を得た。表2に示す温度は最高到達温度である(仕上げ焼鈍工程)。
得られた線径0.1mmのアルミニウム合金素線について、JIS C3002に準拠して導電率、引張強さ、伸び及び伸線性を評価した。
導電率は、20℃(±0.5℃)に保った恒温槽中で、四端子法を用いアルミニウム合金素線の比抵抗を測定し、この比抵抗から導電率を算出した。比抵抗の測定の際の端子間距離を1000mmとした。なお、アルミニウム合金素線の断面積は、素線の長さ1000mmの質量と密度2.7g/cm3とを用いて算出した。
引張強さ及び伸び(破断伸び)は、JIS Z 2241に準じて引張速度50mm/分、原標点距離100mm、つかみ間の距離150mmの条件で測定した。なお、アルミニウム合金素線の断面積は、素線の長さ1000mmの質量と密度2.7g/cm3とを用いて算出した。
導電率は、20℃(±0.5℃)に保った恒温槽中で、四端子法を用いアルミニウム合金素線の比抵抗を測定し、この比抵抗から導電率を算出した。比抵抗の測定の際の端子間距離を1000mmとした。なお、アルミニウム合金素線の断面積は、素線の長さ1000mmの質量と密度2.7g/cm3とを用いて算出した。
引張強さ及び伸び(破断伸び)は、JIS Z 2241に準じて引張速度50mm/分、原標点距離100mm、つかみ間の距離150mmの条件で測定した。なお、アルミニウム合金素線の断面積は、素線の長さ1000mmの質量と密度2.7g/cm3とを用いて算出した。
伸線性は、1トンの荒引線(アルミニウム合金荒引線)からアルミニウム合金素線を製造するまでに何回断線するかを数えた。断線の回数が、39回/ton以下を◎、40回〜99回/tonを○、100回/ton以上を△と、それぞれ評価した。
得られた結果を、表3に示す。
得られた結果を、表3に示す。
以上、本発明を実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
本実施形態のアルミニウム合金電線の製造方法は、例えば、ワイヤーハーネスの製造方法に使用することができる。また、本実施形態のアルミニウム合金電線は、例えば、ワイヤーハーネスとして使用することができる。さらに、本実施形態のワイヤーハーネスは、車両用のワイヤーハーネスとして使用することができる。
Claims (7)
- アルミニウム合金荒引線を伸線する第1の伸線工程と、
この第1の伸線工程で得られた第1の伸線を焼鈍する中間焼鈍工程と、
この中間焼鈍工程で得られた中間焼鈍伸線を伸線する第2の伸線工程と、
この第2の伸線工程で得られた第2の伸線を焼鈍する仕上げ焼鈍工程と、を含み、
前記中間焼鈍工程を、400〜640℃で10分未満行うことを特徴とするアルミニウム合金電線の製造方法。 - 前記第1の伸線工程における、下記式(1)
[数1]
η1=ln(A0/A1) (1)
(式中、η1は第1の加工度、A0は第1の伸線工程前のアルミニウム合金荒引線の断面積、A1は第1の伸線工程後に得られた第1の伸線の断面積を示す。)
で定義される第1の加工度η1が1〜9の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金電線の製造方法。 - 前記第2の伸線工程における、下記式(2)
[数2]
η2=ln(AIM/A2) (2)
(式中、η2は第2の加工度、AIMは第2の伸線工程前の中間焼鈍伸線の断面積、A2は第2の伸線工程後に得られた第2の伸線の断面積を示す。)
で定義される第2の加工度η2が6以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム合金電線の製造方法。 - 前記アルミニウム合金電線を構成するアルミニウム合金素線は、Feを0.1〜1.0質量%含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金電線の製造方法。
- 前記アルミニウム合金素線は、さらに、
Zrを0〜0.08質量%、
Siを0.02〜2.8質量%、及び
Tiを0.001〜0.009質量%含み、かつ、
Cu及びMgの少なくとも一方を含み、Cuを含む場合はCuを0.05〜0.63質量%、Mgを含む場合はMgを0.04〜0.45質量%、Cu及びMgを含む場合はCu及びMgの合計量を0.04〜0.63質量%の量で含むことを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金電線の製造方法。 - 請求項4又は5に記載のアルミニウム合金電線の製造方法で得られ、
前記アルミニウム合金素線が、引張強さ121MPa以上、伸び17%以上、かつ導電率56.1%IACS以上であることを特徴とするアルミニウム合金電線。 - 請求項6に記載のアルミニウム合金電線を備えたことを特徴とするワイヤーハーネス。
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2018
- 2018-09-26 JP JP2018179650A patent/JP2020050901A/ja not_active Abandoned
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