以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本開示における、電池パックの回収から製造・販売までの物流の一態様を示した図である。以下では、図1に示される物流の態様を「電池物流モデル」と称する。この電池物流モデルでは、電池パックを搭載した複数の車両から使用済みの電池パックが回収され、回収された電池パックに含まれる再利用可能なセルを用いて電池パックが製造・販売される。
なお、本開示において「電池パックを製造する」とは、電池パックに含まれる複数のセルの少なくとも一部を交換用セルに交換して電池パックを製造することを意味する。交換用セルは、基本的には、回収された電池パックから取出される再利用可能なセルであるが、新品のセルであってもよい。
図1を参照して、回収業者31は、車両60−1,60−2,・・・から使用済みの電池パックを回収する。車両60−1,60−2,・・・は、それぞれ電池パック62−1,62−2,・・・を搭載しており、各電池パックは、複数のセルを含んで構成される。また、回収業者31は、回収した電池パックを解体し、電池パックからセルを取出す。電池パックからのセルの取出しは、セル毎であってもよいし、いくつかのセルが纏められたモジュール毎であってもよい。
なお、この電池物流モデルでは、セル毎に当該セルを特定するためのIDが付与されており、各セルの情報が管理サーバ20によって管理される。そして、回収業者31は、電池パックから取出された各セルのIDを、端末(図示せず)を用いて管理サーバ20へ送信する。
検査業者32は、回収業者31によって回収された各セルの性能検査を行なう。具体的には、検査業者32は、回収されたセルの電気的特性を検査する。たとえば、検査業者32は、セルの容量、抵抗値、OCV(Open Circuit Voltage)、SOC(State Of Charge)等の電気的特性を検査する。そして、検査業者32は、検査結果に基づいて、再利用可能なセルと再利用不可能なセルとを分別し、再利用可能なセルについては性能回復業者33へ引き渡し、再利用不可能なセルについてはリサイクル業者36へ引き渡す。なお、各セルの検査結果は、検査業者32の端末(図示せず)を用いて管理サーバ20へ送信される。
性能回復業者33は、検査業者32によって再利用可能とされたセル(交換用セル)の性能を回復させるための処理を行なう。一例として、性能回復業者33は、過放電状態までセルを放電させたり、過充電状態までセルを充電したりすることによって、セルの容量を回復させる。なお、検査業者32による検査において性能低下が小さいと判断されたセルについては、性能回復業者33による性能回復処理を省略してもよい。各セルの性能回復結果は、性能回復業者33の端末(図示せず)を用いて管理サーバ20へ送信される。
電池パック製造業者34は、性能回復業者33によって性能が回復されたセルを用いて電池パックの製造を行なう。この実施の形態では、電池パック製造業者34は、電池パックを製造するための情報を、端末(図示せず)を用いて管理サーバ20から取得し、その取得された情報に従って電池パックを製造する。
詳しくは、この実施の形態では、車両10に搭載される電池パックのリビルド品を製造するためのリビルド情報が管理サーバ20において生成され、電池パック製造業者34の端末へ送信される。電池パック製造業者34は、そのリビルド情報に従って、車両10の電池パックに含まれる複数のセルの少なくとも一部を、性能回復業者33により性能が回復されたセル(交換用セル)に交換して、車両10の電池パックのリビルド品を製造する。
販売店35は、電池パック製造業者34によって製造された電池パックを車両用として販売したり、住宅等で利用可能な定置用として販売したりする。この実施の形態では、車両10が販売店35に持ち込まれ、販売店35において、車両10の電池パックが電池パック製造業者34により製造されたリビルド品に交換される。
リサイクル業者36は、検査業者32によって再利用不可能とされたセルを解体し、新たなセルやその他製品の原料として利用するための再資源化を行なう。
図2は、図1に示した電池物流モデルにおける処理の流れを示した図である。図2とともに図1を参照して、回収業者31によって、車両60−1,60−2,・・・から使用済みの電池パックが回収・解体され(ステップS1)、電池パックから使用済みのセルが取出される。
電池パックから取出された使用済みの各セルは、検査業者32に引き渡され、検査業者32によって、使用済みの各セルの性能検査が行なわれる(ステップS2)。具体的には、上述のように各セルの電気的特性(容量等)が検査される。この性能検査によって、再利用可能なセルと再利用不可能なセルとに分別され、再利用不可能なセルについては、リサイクル業者36へと引き渡される。
性能検査によって再利用可能とされたセルは、性能回復業者33に引き渡され、性能回復業者33によって、セルの性能を回復するための処理が行なわれる(ステップS3)。たとえば、過放電状態までセルを放電させたり、過充電状態までセルを充電したりすることによって、セルの容量が回復される。
性能が回復されたセルは、電池パック製造業者34へ引き渡され、電池パック製造業者34によって、性能回復されたセルを用いて電池パックが製造される(ステップS4)。この実施の形態では、電池パックを製造するための情報(リビルド情報)が管理サーバ20において生成され、電池パック製造業者34によって、そのリビルド情報に従って電池パックが製造される。
そして、電池パック製造業者34により製造された電池パックは、販売店35に引き渡され、車両用として、或いは住宅等で利用可能な定置用として販売される(ステップS5)。
再び図1を参照して、車両10は、電池パック(図示せず)を搭載し、この電池物流モデルにおいて電池パックのリビルドが行なわれる車両である(以下では、車両10を「対象車両」と称する場合がある)。上述のように、この実施の形態では、車両10に搭載された電池パックに含まれる複数のセルの少なくとも一部を交換用セルに交換して車両10用の電池パックが再構築される。
詳細は後述するが、概略的には、車両10に搭載される電池パック内の組電池の使用履歴情報が車両10から管理サーバ20へ送信され、管理サーバ20に蓄積される。また、管理サーバ20は、電池パックを搭載した車両60−1,60−2,・・・から回収された電池パック62−1,62−2,・・・に含まれる再利用可能なセルの情報を蓄積する。
電池パックの交換を希望する車両10(対象車両)のユーザが販売店35へ車両10を引き渡すと、販売店35の端末から管理サーバ20へ車両10を特定するための情報が送信される。管理サーバ20は、蓄積されている車両10の組電池の使用履歴情報を用いて、車両10の一走行あたりのSOC変動量を求める。そして、管理サーバ20は、車両10の一走行あたりのSOC変動量と、再利用可能なセルの情報とを参照して、車両10に搭載される電池パックのリビルド品を構成するためのリビルド情報を生成する。
生成されたリビルド情報は、管理サーバ20から電池パック製造業者34の端末へ送信され、電池パック製造業者34において、性能回復された再利用可能なセルの中からリビルド情報に基づくセルが選択されて、車両10の電池パックのリビルド品が製造される。製造されたリビルド品は、車両10が持ち込まれた販売店35へ配送され、販売店35において、車両10の電池パックがリビルド品に交換される。
なお、上記では、回収業者31、検査業者32、性能回復業者33、電池パック製造業者、及び販売店35は、互いに個別の業者としたが、業者の区分はこれに限定されるものではない。たとえば、検査業者32と性能回復業者33とが一の業者であってもよい。或いは、回収業者31は、電池パックを回収する業者と、回収された電池パックを解体する業者とに分かれていてもよい。また、上記各業者及び販売店の各拠点は限定されない。各業者及び販売店の各拠点は別々であってもよいし、複数の業者或いは販売店が同一拠点にあってもよい。
また、上記では、セル毎に検査及び性能回復が行なわれるものとしたが、いくつかのセルが纏められたモジュール毎に検査や性能回復が行なわれるものとしてもよい。
図3は、図1に示した電池物流モデルに適用される電池管理システムの構成例を示した図である。図3を参照して、電池管理システム1は、車両10と、管理サーバ20と、端末41〜45と、通信ネットワーク50とを備える。
車両10、管理サーバ20、及び各端末41〜45は、インターネット或いは電話回線等の通信ネットワーク50を介して互いに通信可能に構成される。なお、車両10は、通信ネットワーク50の基地局51と無線通信によって情報の授受が可能に構成される。
端末41は、回収業者31の端末であり、端末42は、検査業者32の端末である。また、端末43は、性能回復業者33の端末であり、端末44は、電池パック製造業者34の端末である。端末45は、販売店35の端末である。
図4は、図3に示した車両10、管理サーバ20、及び電池パック製造業者34の端末44の構成を詳細に示した図である。図4を参照して、車両10は、電池パック110と、電池監視ユニット112と、インレット114と、充電器116と、電力制御ユニット(PCU:Power Control Unit)120と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)130と、駆動輪140と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)150と、記憶部160(たとえば、不揮発性メモリ)と、通信装置170と、通信線180とを含む。ECU150、記憶部160、及び通信装置170は、通信線180によって接続され、互いに情報を送受可能に構成されている。
車両10は、車両外部の外部電源の電力で電池パック内の複数のセルを充電可能に構成される。以下、車両外部の外部電源の電力で電池パック内のセルを充電することを、「外部充電」という。車両10は、外部充電可能な態様で電池パックを搭載する外部充電対応車両である。車両10は、電池パックに蓄えられた電力のみを用いて走行可能な電気自動車であってもよいし、電池パックに蓄えられた電力とエンジンの出力との両方を用いて走行可能なプラグインハイブリッド車両であってもよい。外部充電の給電方式は、外部電源がケーブルを介して車両へ電力を供給する方式であってもよいし、外部電源がケーブルを介さずに非接触で車両へ電力を供給する方式(ワイヤレス給電方式)であってもよい。
電池パック110は、複数のセルにより構成される組電池を含んで構成され、たとえば、複数のリチウムイオン二次電池が直列及び/又は並列に適宜接続された組電池を含んで構成される。電池パック110は、MG130により駆動輪140を駆動するための電力をPCU120へ供給する。
電池監視ユニット112は、種々のセンサを含み、電池パック110の状態を監視するように構成される。電池監視ユニット112は、たとえば、電圧センサ及び電流センサを含む。電圧センサは、電池パック110内の組電池の電圧を検出し、その検出値VをECU150へ出力する。電流センサは、電池パック110内の組電池の電流を検出し、その検出値IをECU150へ出力する。電池監視ユニット112は、電池パック110内の組電池の温度を検出するための温度センサをさらに含んでもよい。
インレット114には、充電ケーブルのコネクタ(図示せず)が接続される。コネクタがインレット114に接続されることで、充電設備の外部電源(図示せず)から充電ケーブルを介して電池パック110へ電力を供給することが可能になる。
充電器116は、整流回路及びコンバータ(いずれも図示せず)を含んで構成される。外部電源からの交流電力は、充電ケーブル及びインレット114を通じて充電器116に送られて、充電器116の整流回路により直流電力に変換される。また、整流回路により変換された直流電力は、充電器116のコンバータにより昇圧又は降圧され、電池パック110へ供給される。
MG130は、回転電機であって、たとえば三相交流モータジェネレータである。MG130は、PCU120によって駆動され、駆動輪140を回転させる。また、MG130は、車両10の制動時等に回生発電を行なうことも可能である。MG130により発電された電力は、PCU120により整流されて電池パック110に充電される。
PCU120は、インバータ及びコンバータを含んで構成され(いずれも図示せず)、ECU150からの駆動信号に従ってMG130を駆動する。PCU120は、MG130の力行駆動時は、電池パック110に蓄えられた電力を交流電力に変換してMG130へ供給し、MG130の回生駆動時(車両10の制動時等)は、MG130が発電した電力を整流して電池パック110へ供給する。
ECU150は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ(ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory))、各種信号を入出力するための入出力ポート等を含んで構成される(いずれも図示せず)。ECU150は、車両10が所望の状態となるようにPCU120及び電池パック110の充放電を制御する。また、ECU150は、電池パック110内の組電池の電圧値及び電流値(電池監視ユニット112から受信した検出値V及びI)を用いて電池パック110のSOCを算出する。そして、算出されたSOCを含む電池パック110の使用履歴情報を記憶部160へ出力する。
電池管理システム1では、管理サーバ20において、リビルド品を製造するためのリビルド情報が生成される。ECU150は、電池パック110の使用履歴情報を生成して記憶部160に蓄積し、記憶部160から電池パック110の使用履歴情報を定期的に読み出して通信装置170により管理サーバ20へ送信する。
管理サーバ20は、情報処理装置210と、通信装置220と、再利用品データベース(DB)230と、電池情報データベース(DB)240とを含む。
再利用品DB230は、回収業者31により回収された中古の電池パック62−1,62−2,・・・(図1)に含まれ、かつ、検査業者32により再利用可能とされたセル(交換用セル)の情報を、各セルを特定するIDと紐付けて蓄積する。この情報は、初期のセル情報(たとえば、出荷時に格納されるトレーサビリティデータ)と、使用後のセル情報とを含む。セルのトレーサビリティデータは、各セルの劣化しにくさを示す指標(電極の厚み、目付量等)を含む。使用後のセル情報は、たとえば、検査業者32によって各セルの性能評価(劣化状態の評価)を実施することで収集され、各セルの劣化状態や、各セルの劣化しにくさを示す指標(劣化速度、セル容量、セル抵抗等)を含む。
電池情報DB240は、電池パック110の初期情報(たとえば、出荷時に格納されるトレーサビリティデータ)と、車両10から定期的に受信する電池情報(たとえば、電池パック110の使用履歴情報)とを、それぞれ車両10を特定するIDと紐付けて記憶する。電池パック110のトレーサビリティデータは、セルの工程ばらつきに関する情報を含む。セルの工程ばらつきに関する情報は、電極の厚みと目付量との各々に関する工程ばらつきデータ(たとえば、工程ばらつきの上限値、中央値、及び下限値)を含む。電池パック110の使用履歴情報は、車両10のECU150によって定期的に収集され、所定のタイミングで車両10から管理サーバ20へ送信される。
情報処理装置210は、CPU、メモリ、入出力バッファ等を含んで構成される(いずれも図示せず)。情報処理装置210は、電池パック110の交換を行なう車両10を特定するための情報を販売店35の端末45から通信装置220により受信すると、電池情報DB240に記憶された車両10についてのデータと、再利用品DB230に記憶された再利用可能なセル(交換用セル)についてのデータとを用いて、電池パック110のリビルドを行なうためのリビルド情報を生成する。このリビルド情報を生成するための具体的な処理の詳細については、後ほど説明する。
そして、情報処理装置210は、生成されたリビルド情報を通信装置220により電池パック製造業者34の端末44へ送信する。電池パック製造業者34においては、管理サーバ20により生成されたリビルド情報に従って、車両10の電池パック110のリビルド品が生成される。
電池パック製造業者34の端末44は、通信装置71と、制御部72と、表示部73とを含む。通信装置71は、管理サーバ20により生成されたリビルド情報を管理サーバ20から取得する。制御部72は、取得されたリビルド情報に従って、性能回復業者33により性能回復された交換用セルの中から適合セルを選択し、選択された適合セルの情報を表示部73に表示させる。電池パック製造業者34は、表示部73に表示された適合セルの情報に基づいて、車両10の電池パック110のリビルド品を製造する。
なお、この端末44は、本開示における「電池製造支援装置」の一実施例に対応する。また、通信装置71は、本開示における「取得部」の一実施例に対応し、制御部72は、本開示における「選択部」の一実施例に対応する。
ところで、車両10の使い方(電池パック110の使い方)は、ユーザによって異なる。車両10の一走行あたりのSOC変動量が大きい場合には、電池パック110のセルの劣化が速くなる傾向がある。逆に、車両10の一走行あたりのSOC変動量が小さい場合には、電池パック110のセルの劣化が遅くなる傾向がある。以下、車両の一走行あたりのSOC変動量を「ΔSOC」と称する場合がある。
図5は、ΔSOCが小さい場合とΔSOCが大きい場合とについてセルの劣化速度の違いを示した図である。実線K1は、ΔSOCが小さい使い方をされた電池パック110の容量維持率の時間的な変化を示している。こうした使い方で充電及び放電が繰り返し行なわれた電池パック110の容量維持率の時間的な変化が、図5中に実線K1で示されている。実線K2は、ΔSOCが大きい使い方をされた電池パック110の容量維持率の時間的な変化を示している。こうした使い方で充電及び放電が繰り返し行なわれた電池パック110の容量維持率の時間的な変化が、図5中に実線K2で示されている。
図5を参照して、実線K1と実線K2とを比較すると、実線K1よりも実線K2の方が電池パック110の容量維持率の低下速度が速いことが理解される。電池パック110内の組電池を構成するセルが劣化することで、電池パック110の容量維持率が低下すると考えられる。実線K1からは、ΔSOCが小さい場合に電池パック110のセルの劣化が遅くなることが理解される。実線K2からは、ΔSOCが大きい場合に電池パック110のセルの劣化が速くなることが理解される。ΔSOCが大きい場合に電池パック110のセルの劣化が速くなる原因の1つは、セルの正極が劣化するからであると考えられる。特に、正極の活物質割れがセルの劣化を速めていると考えられる。
上記のように、電池パック110内の組電池を構成するセルの劣化速度は、電池パック110の使い方によって変わる。ユーザ毎の車両の使い方の違いを考慮せずにリビルドを行なうと、必ずしもユーザに合ったリビルド品が得られるとは限らない。たとえば、セルの劣化が速くなるような電池パック110の使い方をするユーザについては、EV走行可能距離(電池パック110の電力のみを使用して車両10が走行できる距離)の低下や、リビルド頻度の増加を招くおそれがある。
そこで、この実施の形態に従う電池管理システム1では、ユーザ毎の車両の使い方の違いを考慮してリビルド品を生成している。概略的には、電池管理システム1では、車両10で使用された電池パック110の、一走行あたりのSOC変動量(ΔSOC)を取得し、ΔSOCが大きい場合には、ΔSOCが小さい場合に使用するセル(交換用セル)よりも劣化しにくいセル(交換用セル)を用いてリビルド品を生成する。このようにリビルド品を生成することで、セルの劣化が速くなるような電池パック110の使い方をするユーザには、劣化耐性に優れたリビルド品を提供できる。また、セルの劣化の進行が緩やかに進むような電池パック110の使い方をするユーザには、そのユーザにとって十分な劣化耐性を有し、かつ、劣化以外の面での利点も有するリビルド品を提供できる。
図6は、車両10のECU150により実行される処理の手順を説明するフローチャートである。図6に示す一連の処理が繰り返し実行されることにより、車両10の走行毎に、走行開始時の電池パック110(組電池)のSOC(以下、「走行開始SOC」と称する)と、走行終了時の電池パック110(組電池)のSOC(以下、「走行終了SOC」と称する)とが、記憶部160へ出力される。以下に示す例では、一走行が、外部充電終了時(走行開始時に相当)から次の外部充電開始時(走行終了時に相当)までの期間に相当する。
電池パック110に対する外部充電は、たとえば、充電設備の外部電源と車両10とが充電ケーブルで接続された状態で、充電設備に対して充電が要求されることによって開始される。そして、充電設備に対して充電の停止が要求されることによって外部充電は終了する。この際、電池パック110は、満充電状態になるまで充電されるとは限らない。ユーザの任意のタイミングで充電を停止することができる。
図6を参照して、ECU150は、電池パック110の外部充電が終了したタイミングのSOCを走行開始SOCとして算出する(ステップS10)。
上記外部充電により給電された車両10は、電池パック110に蓄えられた電力を使って走行する。車両10の走行により電池パック110の電力が消費されるため、ユーザは、再び電池パック110を充電する。すなわち、ユーザによって、次の外部充電が行なわれる。ECU150は、この外部充電が開始したタイミングのSOCを走行終了SOCとして算出する(ステップS20)。
ECU150は、前回走行終了から今回走行終了までに得た電池パック110(組電池)の使用履歴情報を記憶部160に蓄積する(ステップS30)。この電池パック110の使用履歴情報は、ステップS10及びS20において算出された走行開始SOC及び走行終了SOCを含む。また、電池パック110の使用履歴情報は、外部充電の充電量、電池パック110の充電回数、及び車両10の走行距離をさらに含んでもよい。外部充電の充電量は、外部電源による充電開始時からその充電が終了する時までのSOC上昇量に相当する。
そして、ECU150は、記憶部160に蓄積された電池パック110の使用履歴情報を記憶部160から読み出し、通信装置170によって管理サーバ20へ送信する(ステップS40)。すなわち、ECU150は、一走行が終了するたびに電池パック110の使用履歴情報を管理サーバ20へ送信する。
図6のステップS10、S20、S30は、以下のように変更されてもよい。以下に示す例では、一走行が、1トリップ(車両システムが起動してから次に停止するまでの期間)に相当する。より具体的には、一走行が、イグニッションがオンされた時点(走行開始時)からイグニッションがオフされた時点(走行終了時)までの期間に相当する。
図6を参照して、ECU150は、車両10のイグニッションがオンされた時に電池パック110に含まれる組電池の電圧値及び電流値を取得し、取得した電圧値及び電流値に基づいて、走行開始SOCを算出する(ステップS10)。
次いで、ECU150は、車両10のイグニッションがオフされた時に電池パック110に含まれる組電池の電圧値及び電流値を取得し、取得した電圧値及び電流値に基づいて、走行終了SOCを算出する(ステップS20)。
ECU150は、前回走行終了から今回走行終了までに得た電池パック110(組電池)の使用履歴情報を記憶部160に蓄積する(ステップS30)。電池パック110の使用履歴情報は、ステップS10及びS20において算出された走行開始SOC及び走行終了SOCを含む。
そして、ECU150は、記憶部160に蓄積された電池パック110の使用履歴情報を記憶部160から読み出し、通信装置170によって管理サーバ20へ送信する(ステップS40)。
上記方法によれば、車両10が外部充電できない車両であっても、車両10に搭載された電池パックの走行開始SOC及び走行終了SOCを取得することができる。
図6に示す処理により、ECU150は、電池パック110の使用履歴情報を取得し、管理サーバ20へ送信する。そして、管理サーバ20は、受信した電池パック110の使用履歴情報を電池情報DB240に蓄積する。なお、ECU150が電池パック110の使用履歴情報を管理サーバ20へ送信するタイミング(ステップS40を実行するタイミング)は任意である。たとえば、ステップS40において、ECU150が、記憶部160に蓄積された電池パック110の使用履歴情報を記憶部160から所定の周期で定期的に読み出し、通信装置170によって管理サーバ20へ送信してもよい。詳しくは、ステップS40を実行するタイミングでない場合には、ステップS40がスキップされ、ステップS10〜S30が繰り返し実行されてもよい。この場合、ステップS10〜S30は、車両10の走行毎に実行され、ECU150は、車両10の走行毎に、電池パック110の使用履歴情報(走行開始SOC及び走行終了SOC等)を記憶部160へ出力する。これにより、車両10の走行毎に、電池パック110の使用履歴情報(走行開始SOC及び走行終了SOC等)が記憶部160に蓄積される。そして、ステップS40を実行するタイミングになると、ステップS40において、前回送信から今回送信までに取得した電池パック110の使用履歴情報がまとめて管理サーバ20へ送信される。
図7は、管理サーバ20により実行される処理の手順を説明するフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、電池パック110の交換を行なう車両10(対象車両)を特定するための情報を販売店35の端末45から受信すると実行される。
図7を参照して、管理サーバ20(情報処理装置210)は、対象車両(車両10)の上記情報を販売店35の端末45から受信する(ステップS110)。次いで、管理サーバ20は、対象車両(車両10)の組電池(電池パック110)の使用履歴情報(走行開始SOC及び走行終了SOC等)を電池情報DB240から取得する(ステップS120)。すなわち、管理サーバ20は、端末45から受信する情報によって特定される対象車両(車両10)の組電池(電池パック110)の使用履歴情報を電池情報DB240から取得する。
次いで、管理サーバ20は、電池情報DB240から取得した車両10の電池パック110の使用履歴情報(走行開始SOC及び走行終了SOC等)を用いて、車両10で使用された電池パック110の、一走行あたりのSOC変動量(ΔSOC)を取得する(ステップS130)。具体的には、管理サーバ20は、各走行のデータに関し、走行終了SOCから走行開始SOCを減算することで、対象期間(所定の期間)における複数回の走行の各々についてSOC変動量を求める。外部充電終了時のSOC(走行開始SOC)から次の外部充電開始時のSOC(走行終了SOC)を減算した値は、外部電源による充電終了時から次の充電開始時までのSOC低下量に相当する。また、このSOC低下量は、電池パック110に蓄えられた電力の一走行での消費量に相当する。対象期間は、任意に設定できる。たとえば、全期間を対象として、車両10から受信した全ての走行データを考慮してもよい。また、直近の期間(現時点から予め決められた時間遡った時点までの期間)を対象として、最近の走行データだけを考慮してもよい。また、対象期間内の走行データを全て考慮してもよいし、所定の走行データを除外してもよい。たとえば、一走行の距離や時間が短いデータを除外してもよい。次いで、管理サーバ20は、得られた複数のデータ(複数回の走行に関するSOC変動量)の中央値を求める。得られたSOC変動量の中央値が、一走行あたりのSOC変動量(ΔSOC)に相当する。
次に、管理サーバ20は、ステップS141及びS142で、ΔSOCに基づいて、リビルド(セルの交換)に適した適合セルがセルA〜Cのいずれであるかを判断する。ステップS151〜S153では、セルA〜Cのいずれかが選択され、選択されたセルでリビルドを行なうためのリビルド情報が生成される。
図8は、ステップS151〜S153で選択される交換用セル(セルA〜C)を示した図である。セルAは、正極厚みが小(薄い)、かつ、正極目付量が小(少ない)の要件を満たす交換用セルである。セルBは、正極厚みが中(標準的)、かつ、正極目付量が中(標準的)の要件を満たす交換用セルである。セルCは、正極厚みが大(厚い)、かつ、正極目付量が大(多い)の要件を満たす交換用セルである。正極が厚いほうから順に並べると、セルC、セルB、セルAとなる。各セルの正極厚みの数値範囲は、この関係を満たす限りにおいて任意に設定できる。また、正極の目付量が少ないほうから順に並べると、セルA、セルB、セルCとなる。各セルの正極目付量の数値範囲は、この関係を満たす限りにおいて任意に設定できる。セルA〜Cの各々は、たとえばリチウムイオン電池である。
セルの劣化しにくさは、セルの材質や構造等によって異なる。たとえば、リチウムイオン電池の活物質は、所定の電位が与えられることで、リチウムイオンを放出したり、あるいは、リチウムイオンを取り込んだりすることができる。リチウムイオン電池の正極は、充電時にリチウムイオンを取り込み、放電時にリチウムイオンを放出する。リチウムイオンの取込みにより正極は膨張し、リチウムイオンの放出により正極は収縮する。リチウムイオン電池の充電と放電とを繰り返し行なった場合、リチウムイオン電池の正極は、膨張及び収縮を繰り返すことになる。これにより、正極構造が変化し、正極の容量が小さくなる傾向がある。この理由は、正極の構造が変化することで、正極がリチウムイオンを取り込みにくくなるからであると考えられる。
本願発明者は、リチウムイオン電池の正極を薄くすることで、リチウムイオン電池が劣化しにくくなることを実験的に見出した。具体的には、薄い正極を有するリチウムイオン電池は、充電と放電とを繰り返し行なった場合における容量維持率が高かった。また、本願発明者は、リチウムイオン電池の正極の目付量を少なくすることで、リチウムイオン電池が劣化しにくくなることを実験的に見出した。具体的には、正極の目付量が少ないリチウムイオン電池は、充電と放電とを繰り返し行なった場合における容量維持率が高かった。なお、目付量は、単位面積あたりの活物質量である。二次電池(交換用セル)の正極としては、金属酸化物(たとえば、リチウム酸化物)が好ましい。
上記のように、セルの正極が薄くなるほどセルは劣化しにくくなる傾向がある。また、セルの正極の目付量が少なくなるほどセルは劣化しにくくなる傾向がある。このため、図8に示されるセルA〜Cを劣化耐性が高いほうから順に並べると、セルA(劣化耐性:高)、セルB(劣化耐性:中)、セルC(劣化耐性:低)となる。
セルA〜Cに関して、正極厚み及び正極目付量の各々の数値範囲は、各セルの工程ばらつきの範囲内で設定されることが好ましい。リビルドによって電池パック110の特性が大きく変化しないことで、電池パック110の周辺回路を変更しなくてもリビルド品を適切に動作させることが可能になる。また、電池パック110と同一仕様の電池パックをリサイクルすることにより、セルA〜Cのいずれかに該当する交換用セルの在庫を確保しやすくなると考えられる。
たとえば、正極厚みの数値範囲に関し、セルBの数値範囲として工程ばらつきの中央値近傍の範囲(たとえば、「中央値−所定値」以上「中央値+所定値」以下)を、セルAの数値範囲として「工程ばらつきの下限値」以上「セルBの数値範囲の下限値」未満の範囲を、セルCの数値範囲として「セルBの数値範囲の上限値」超「工程ばらつきの上限値」以下の範囲を、それぞれ設定してもよい。仮に、正極厚みに関して工程ばらつきの下限値、中央値、上限値が10、20、30であるとすると、セルBの数値範囲を「15以上25以下」、セルAの数値範囲を「10以上15未満」、セルCの数値範囲を「25超30以下」とすることで、各セルの正極厚みの数値範囲は各セルの工程ばらつきの範囲内に設定される。正極目付量の数値範囲についても、上記正極厚みの数値範囲と同様のことがいえる。
再び図7を参照して、ステップS141において、管理サーバ20は、ステップS130で取得したΔSOCが第2のしきい値Th2よりも大きいか否かを判定する。第2のしきい値Th2としては、任意の数値を設定できる。たとえば、第2のしきい値Th2を、55%以上75%以下の範囲から選ばれる数値とする。以下、第2のしきい値Th2を、単に「Th2」と称する場合がある。
ΔSOCがTh2よりも大きいと判定されると(ステップS141においてYES)、管理サーバ20は、セルA(図8)でリビルドを行なうためのリビルド情報を生成する(ステップS151)。詳しくは、管理サーバ20は、再利用可能なセル(交換用セル)の情報が格納された再利用品DB230を参照して、リビルドに使用するセルを、リビルド品を生成するために必要な数だけ選択する。この際、セルAに該当するセルが優先的に選択される。好ましくは、セルAに該当するセルのみを選択する。ただし、管理サーバ20は、再利用品DB230を参照して、セルAに該当するセル(交換用セル)の在庫が不十分である場合には、所定の基準に基づき他のセルを選択する。このように、ステップS151では、セルA(第3のセル)が適合セルであることを示すリビルド情報(第3のリビルド情報)が生成される。
一方、ステップS141においてΔSOCがTh2よりも大きくないと判定されると(ステップS141においてNO)、管理サーバ20は、ステップS130で取得したΔSOCが第1のしきい値Th1よりも大きいか否かを判定する(ステップS142)。第1のしきい値Th1としては、Th2よりも小さい任意の数値を設定できる。たとえば、第1のしきい値Th1を、25%以上50%以下の範囲から選ばれる数値とする。以下、第1のしきい値Th1を、単に「Th1」と称する場合がある。
ΔSOCがTh1よりも大きいと判定されると(ステップS142においてYES)、管理サーバ20は、セルB(図8)でリビルドを行なうためのリビルド情報を生成する(ステップS152)。詳しくは、管理サーバ20は、再利用可能なセル(交換用セル)の情報が格納された再利用品DB230を参照して、リビルドに使用するセルを、リビルド品を生成するために必要な数だけ選択する。この際、セルBに該当するセルが優先的に選択される。好ましくは、セルBに該当するセルのみを選択する。ただし、管理サーバ20は、再利用品DB230を参照して、セルBに該当するセル(交換用セル)の在庫が不十分である場合には、所定の基準に基づき他のセルを選択する。このように、ステップS152では、セルB(第2のセル)が適合セルであることを示すリビルド情報(第2のリビルド情報)が生成される。
一方、ステップS142においてΔSOCがTh1よりも大きくないと判定されると(ステップS142においてNO)、管理サーバ20は、セルC(図8)でリビルドを行なうためのリビルド情報を生成する(ステップS153)。詳しくは、管理サーバ20は、再利用可能なセル(交換用セル)の情報が格納された再利用品DB230を参照して、リビルドに使用するセルを、リビルド品を生成するために必要な数だけ選択する。この際、セルCに該当するセルが優先的に選択される。好ましくは、セルCに該当するセルのみを選択する。ただし、管理サーバ20は、再利用品DB230を参照して、セルCに該当するセル(交換用セル)の在庫が不十分である場合には、所定の基準に基づき他のセルを選択する。このように、ステップS153では、セルC(第1のセル)が適合セルであることを示すリビルド情報(第1のリビルド情報)が生成される。
ステップS151〜S153の各々では、たとえば、再利用品DB230に格納されているセルのトレーサビリティデータ(初期の正極厚み及び正極目付量)を参照してリビルド情報を生成できる。ただしこれに限られず、使用後のセル情報(使用後に測定された正極厚み及び正極目付量)を参照してリビルド情報を生成してもよい。
そして、ステップS151〜S153のいずれかにおいてリビルド情報が生成されると、管理サーバ20は、生成されたリビルド情報に従うリビルド品の生成指令を電池パック製造業者34の端末44へ送信する(ステップS160)。これにより、電池パック製造業者34によって、車両10に搭載される電池パック110のリビルド品が生成される。このようなリビルド情報に従うリビルド品は、車両10のユーザに合った特性を有するものとなる。さらに、管理サーバ20は、生成されたリビルド情報を、車両10が引き渡された販売店35の端末45へ送信する(ステップS170)。
セル交換のタイミングは任意であり、たとえば、定期的なメンテナンスのタイミングであってもよい。また、管理サーバ20が、電池パック110の使用履歴情報(たとえば、電池パック110の充電回数、及び車両10の走行距離)に基づいて適切なセル交換タイミングを求め、そのタイミングになった時点でユーザに通知してもよい。
上記実施の形態に従う電池管理システム1では、車両10で使用された電池パック110の、一走行あたりのSOC変動量(ΔSOC)を取得し(ステップS130)、ΔSOCが大きい場合には、劣化耐性が高いセル(セルA)を用いてリビルド品を生成し(ステップS151)、ΔSOCが中程度の場合には、劣化耐性が中程度のセル(セルB)を用いてリビルド品を生成し(ステップS152)、ΔSOCが小さい場合には、劣化耐性が低いセル(セルC)を用いてリビルド品を生成する(ステップS153)。ステップS153で選択されるセルCは、大容量化に適している。詳しくは、電極が厚くなるほどセルの容量は大きくなる傾向がある。また、目付量が多くなるほどセルの容量は大きくなる傾向がある。このため、セルCは、大容量化に適している。
上記のようにリビルド品を生成することで、セルの劣化が速くなるような電池パック110の使い方をするユーザには、劣化耐性に優れたリビルド品を提供できる。また、セルの劣化の進行が緩やかに進むような電池パック110の使い方をするユーザには、そのユーザにとって十分な劣化耐性を有する大容量のリビルド品を提供できる。このように、電池管理システム1では、ユーザ毎の車両10の使い方の違いを考慮して適切な交換用セルが選択される。
また、上記実施の形態においては、ユーザの車両の使い方(ΔSOC:大、ΔSOC:中、ΔSOC:小)によって電池パックを3区分に分類し、各電池パックに合った適切な交換用セル(セルA〜Cのいずれか)を選択している。2区分よりも3区分の方が、交換用セルの適合度が高くなる。ただし、2区分を採用しても一定の効果は奏される。
たとえば、図8に示すセルA〜Cに代えて、図9に示すセルA及びBをリビルドに使用してもよい。図10は、図9に示した交換用セル(セルA及びB)を採用する変形例において、管理サーバ20により実行される処理の手順を説明するフローチャートである。
図10を参照して、管理サーバ20は、図7のステップS110〜S130に準ずるステップS210〜S230を実行する。次に、管理サーバ20は、ステップS240で、リビルド(セルの交換)に適した適合セルがセルA及びBのいずれであるかを判断する。ステップS251及びS252では、セルA及びBのいずれかが選択され、選択されたセルでリビルドを行なうためのリビルド情報が生成される。ステップS240、S251、S252ではそれぞれ、図7のステップS142、S152、S153に準ずる処理を行なう。次いで、管理サーバ20は、図7のステップS160、S170に準ずるステップS260、S270を実行する。
上記のように、ユーザの車両の使い方(ΔSOC:大、ΔSOC:小)によって電池パックを2区分に分類した場合にも、ユーザ毎の車両10の使い方の違いを考慮して適切な交換用セルが選択される。これにより、車両10のユーザに合った特性を有するリビルド品が生成される。
図7のステップS141においては、ΔSOCとTh2とが同じ場合にNOと判断されて、ステップS142に進む。しかしこれに限られず、ΔSOCとTh2とが同じ場合にYESと判断されてステップS151に進むように、ステップS141を変更してもよい。また、図7のステップS142及び図10のステップS240についても同様のことがいえる。
上記実施の形態においては、正極厚み及び正極目付量を、セルの劣化しにくさを示す指標とした(図8)。詳しくは、この指標は、セルの正極が薄いほどそのセルは劣化しにくいと判定するとともに、セルの正極の目付量が少ないほどそのセルは劣化しにくいと判定するものである。ただしこれに限られず、正極厚み及び正極目付量のいずれか一方のみを、セルの劣化しにくさを示す指標としてもよい。
たとえば、図11に示すような、正極厚みのみによって分類される交換用セル(セルA〜C)をリビルドに使用してもよい。図11に示されるセルA〜Cを劣化耐性が高いほうから順に並べると、セルA、セルB、セルCとなる。
また、正極厚み及び正極目付量を、セルの劣化しにくさを示す指標とする場合には、図12に示すような分類の仕方もできる。図12において、セルAは、正極厚みが小(薄い)、かつ、正極目付量が極小(非常に少ない)の要件を満たす交換用セルである。セルBは、正極厚みが小(薄い)、かつ、正極目付量が小(少ない)の要件を満たす交換用セルである。セルCは、正極厚みが中(標準的)、かつ、正極目付量が中(標準的)の要件を満たす交換用セルである。セルDは、正極厚みが大(厚い)、かつ、正極目付量が大(多い)の要件を満たす交換用セルである。セルEは、正極厚みが大(厚い)、かつ、正極目付量が極大(非常に多い)の要件を満たす交換用セルである。図12に示すセルA〜Eを劣化耐性が高いほうから順に並べると、セルA、セルB、セルC、セルD、セルEとなる。
こうした交換用セルを使用した場合、ユーザの車両の使い方(ΔSOC:極大、ΔSOC:大、ΔSOC:中、ΔSOC:小、ΔSOC:極小)によって電池パックを5区分に分類し、各電池パックに合った適切な交換用セル(セルA〜Eのいずれか)を選択することが可能になる。なお、劣化しにくいセルとしては、種々の指標を用いて、相対的に劣化しにくいと判定されるセルを採用することができる。
上記実施の形態においては、管理サーバ20(電池情報取得部)が、対象期間(所定の期間)における複数回の走行の各々についてSOC変動量を取得し、取得したSOC変動量の中央値を求めている(ステップS130)。しかしこれに限られず、複数回の走行の各々についてのSOC変動量から、中央値ではなく平均値を求めることもできる。たとえば、直近の期間(現時点から予め決められた時間遡った時点までの期間)における複数回の走行の各々についてSOC変動量を取得し、取得したSOC変動量の平均値を求めるようにしてもよい。ただし、車両10をさまざまな用途で使用する場合には、平均値よりも中央値の方が、日常的なユーザの使い方を反映しやすい。このため、SOC変動量の中央値を一走行あたりのSOC変動量とすることで、交換用セルの適合度を高めることができる。
また、管理サーバ20(電池情報取得部)を、SOC変動量の中央値とSOC変動量の平均値との両方を求めることができるように構成し、対象車両(車両10)の車種に応じて、SOC変動量の中央値とSOC変動量の平均値とのいずれかを採用するようにしてもよい。たとえば、対象車両(車両10)が、特定の用途でしか使用されない業務用の車両(たとえば、トラック)である場合には、SOC変動量の平均値を採用し、対象車両(車両10)が他の車両(たとえば、乗用車)である場合には、SOC変動量の中央値を採用するようにしてもよい。
上記実施の形態では、車両10が走行開始SOC及び走行終了SOCを管理サーバ20へ送信し、管理サーバ20が、走行開始SOC及び走行終了SOCに基づいてΔSOCを求めるようにした。しかしこれに限られず、車両10において、走行毎に走行開始SOCと走行終了SOCとの差を算出し、算出された値(=走行開始SOC−走行終了SOC)が管理サーバ20へ送信されるようにしてもよい。
また、車両10から受信した電池パック110の使用履歴情報に外部充電の充電量(外部電源による充電開始時からその充電が終了する時までのSOC上昇量)が含まれる場合には、管理サーバ20は、この外部充電の充電量に基づいてΔSOCを求めてもよい。詳しくは、管理サーバ20は、外部充電1回あたりの充電量(たとえば、中央値又は平均値)を、ΔSOCとして採用してもよい。通常、前回走行で消費した電力、又は次回走行で消費される電力を、1回の外部充電で充電する。このため、外部充電1回あたりの充電量は、電池パック110に蓄えられた電力の一走行あたりの消費量とみなすことができる。
上記実施の形態では、車両10の電池パック110(組電池)の使用履歴情報が管理サーバ20に収集され、管理サーバ20において、ΔSOC(一走行あたりのSOC変動量)の算出と、セルの交換に適した適合セルを選択するための交換情報(上記実施の形態では、リビルド情報)の生成とが行なわれるようにした。しかしこれに限られず、電池パック110の使用履歴情報は、車両10に蓄積してもよい。たとえば、車両10が販売店35に持ち込まれた際に、販売店35の端末45に車両10を接続して、車両10に蓄積された電池パック110の使用履歴情報を端末45から管理サーバ20へ送信するようにしてもよい。また、交換情報の生成を、管理サーバ20ではなく、図3に示した端末41〜45のいずれか、又は別途設けられた端末において行なうようにしてもよい。たとえば、管理サーバ20又は車両10において、電池パック110の使用履歴情報からΔSOCが算出され、算出されたΔSOCが、交換情報の生成を行なう上記端末へ送信されるようにしてもよい。また、車両10のECU150が交換情報の生成を行なってもよい。
なお、SOCの測定方法については、種々の公知の手法を用いることができる。また、車両10は、外部充電できない車両であってもよい。
図13は、実施例によるリビルド品と比較例によるリビルド品とについて、走行前後での容量維持率、及び走行可能距離を評価した結果を示している。
実施例に従う電池管理システムは、前述の図6の処理及び図7の処理を実行するものであった。図6の処理では、外部充電終了時のSOCを走行開始SOCとし、次の外部充電開始時のSOCを走行終了SOCとした。図7の処理では、第1のしきい値Th1を35%に、第2のしきい値Th2を60%に、それぞれ設定した。図7のステップS130では、SOC変動量の中央値(ΔSOC)を求めた。セルA〜C(図8)に関して、正極厚み及び正極目付量の各々の数値範囲は、各セルの工程ばらつきの範囲内で設定した。
比較例に従う電池管理システムは、図7のステップS151〜S153のいずれにおいてもセルBが選択される点のみが、実施例に従う電池管理システムとは異なるものであった。
実施例及び比較例の各々におけるリビルド対象は、ΔSOC76%の電池パックであった。詳しくは、電池パックの使用をSOC91%の状態から開始して、電池パックのSOCが15%になるまで車両の走行で電池パックの電力を消費した後、電池パックを外部充電して電池パックのSOCを再び91%に戻すような使い方で充電及び放電が繰り返し行なわれた電池パックを、リビルド対象とした。
リビルド対象のΔSOC(76%)が第2のしきい値Th2(60%)よりも大きいため、実施例に従う電池管理システムでは、ステップS151において、セルA(図8)でリビルドを行なうためのリビルド情報が生成された。他方、比較例に従う電池管理システムでは、ステップS151において、セルB(図8)でリビルドを行なうためのリビルド情報が生成された。実施例及び比較例の各々において生成されたリビルド情報に従うリビルド品をそれぞれ生成し、各リビルド品について、走行前後での容量維持率、及び走行可能距離を評価した。容量維持率の評価では、リビルド品が搭載された車両で走行距離約56000kmの走行試験を行い、走行試験前のリビルド品の容量に対する走行試験後のリビルド品の容量の比率(容量維持率)を測定した。走行可能距離の評価では、リビルド品が搭載された車両を、リビルド品に蓄えられた電力のみを用いて走行させた場合の走行可能距離を測定した。
図13を参照して、容量維持率及び走行可能距離のいずれの評価でも、比較例によるリビルド品よりも実施例によるリビルド品のほうが優れていた。詳しくは、比較例によるリビルド品の容量維持率(90.8%)よりも実施例によるリビルド品の容量維持率(98.5%)のほうが高かった。また、比較例によるリビルド品の走行可能距離(約272km)よりも実施例によるリビルド品の走行可能距離(約296km)のほうが長かった。これらの結果から、比較例によるリビルド品よりも実施例によるリビルド品のほうが長寿命であることが理解される。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。