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JP2019020491A - トナー - Google Patents

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JP2019020491A JP2017136666A JP2017136666A JP2019020491A JP 2019020491 A JP2019020491 A JP 2019020491A JP 2017136666 A JP2017136666 A JP 2017136666A JP 2017136666 A JP2017136666 A JP 2017136666A JP 2019020491 A JP2019020491 A JP 2019020491A
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沙羅 吉田
Sara Yoshida
沙羅 吉田
野中 克之
Katsuyuki Nonaka
克之 野中
阿部 浩次
Koji Abe
浩次 阿部
俊彦 片倉
Toshihiko Katakura
俊彦 片倉
茜 桝本
Akane Masumoto
茜 桝本
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Canon Inc
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Abstract

【課題】高温高湿環境下では現像部材の汚染性に優れ、低温低湿環境下では低温定着性と静電オフセット抑制を両立させた、定着可能温度領域が広いトナーを提供する。
【解決手段】結着樹脂、結晶性樹脂、極性樹脂、離型剤及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記結晶性樹脂は、末端に炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステル樹脂を含み、前記極性樹脂は、スチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有し、水酸基価が5.0mgKOH/g以上、酸価が10.0mgKOH/g以上であり、前記離型剤は、炭素数7以上のアルキル基を有するトナー。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、及びトナージェット法のような画像形成方法に用いられるトナーに関する。
近年、プリンターや複写機において高速化や低消費電力化が求められており、低温定着性と耐熱保存性に優れたトナーの開発が求められている。この要求に対して、トナーに結晶性ポリエステルを使用し、結晶性ポリエステルのシャープメルト性を利用して低温定着性と耐熱保存性とを両立する方法が提案されている。しかしながら、トナーに対して結晶性ポリエステルを使用すると、帯電性が低下し、それに伴ってカブリ等の弊害が発生する場合がある。
これに対して、酸価、水酸基価が低い結晶性ポリエステルを使用したトナーが開示されている(特許文献1、2)。
特許文献1、2に開示されているトナーに関しては帯電性の低下は抑制されるものの、高温高湿環境下での現像部材の汚染性に課題が残る。また、特に低温低湿環境下の定着において、静電オフセットの発生という課題を有していることが本発明者らの検討によりわかった。定着時に静電オフセットが発生すると、定着可能温度領域が狭くなってしまう。
特許第2931899号公報 特開2002−318471号公報
本発明の目的は、高温高湿環境下では現像部材の汚染性に優れ、低温低湿環境下では低温定着性と静電オフセット抑制を両立させた、定着可能温度領域が広いトナーを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下のトナーを見出した。すなわち、本発明の一態様は、結着樹脂、結晶性樹脂、極性樹脂、離型剤及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記結晶性樹脂は、末端に炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記極性樹脂は、スチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有し、水酸基価が5.0mgKOH/g以上、酸価が10.0mgKOH/g以上であり、
前記離型剤は、炭素数7以上のアルキル基を有するトナーを提供することに向けたものである。
本発明によれば、高温高湿環境下では現像部材の汚染性に優れ、低温低湿環境下では低温定着性と静電オフセット抑制を両立させた、定着可能温度領域が広いトナーを提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、結着樹脂、結晶性樹脂、極性樹脂、離型剤及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーである。
前記結晶性樹脂は、末端に炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステル樹脂を含む。
前記極性樹脂は、スチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有し、水酸基価が5.0mgKOH/g以上、酸価が10.0mgKOH/g以上である。
前記離型剤は、炭素数7以上のアルキル基を有する。
上記の要件を満たすことによって、高温高湿環境下では現像部材の汚染性に優れ、低温低湿環境下では低温定着性と静電オフセット抑制とを両立させた、定着可能温度領域が広いトナーを得ることができる。
本発明のトナーは、末端に炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステル樹脂を含んだ結晶性樹脂を含有する。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂の末端のカルボキシ基や末端のヒドロキシ基が減少し、酸価、水酸基価が低下した結晶性ポリエステル樹脂である。酸価、水酸基価が低い結晶性ポリエステル樹脂を使用すると、低温定着性とカブリ抑制等の現像安定性が見込めるものの、高温高湿環境下での使用につれ現像部材を汚染しやすくなる。この要因としては、結晶性ポリエステルのカルボキシ基やヒドロキシ基が減ることで結着樹脂と親和性が高くなったこと、又は、それら極性基同士の相互作用が低下したこと等により結着樹脂中で結晶性ポリエステルがブリードしやすくなったことが考えられる。
このとき、結晶性ポリエステル樹脂が、末端に炭素数7以上のアルキル基を有し、かつ離型剤が炭素数7以上のアルキル基を有することで、高温高湿環境下での現像部材の汚染性を抑制できることを、本発明者らは見出した。本発明の効果が得られる理由は明確でないが、以下のように考えられる。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂が有するアルキル基と離型剤が有するアルキル基との間で疎水性相互作用が働き、結晶性ポリエステル樹脂がトナー中で離型剤にトラップされ、結晶性ポリエステル樹脂がトナー中で結晶化されやすくなるためと考えられる。
また、酸価、水酸基価が低い結晶性ポリエステル樹脂を使用すると、低温低湿環境下の定着において、静電オフセットが発生しやすくなる。
静電オフセットとは、トナー又はトナー層が、受像紙の上から定着器側に静電的な力で飛翔又は付着してしまう現象である。低温低湿下で酸価、水酸基価が低い結晶性ポリエステル樹脂を使用すると、おそらくは定着ニップにおいて、トナー又はトナー層がチャージアップしやすくなると考えられる。静電オフセットが起こると、定着時の低温オフセット又は高温オフセットが誘発され、定着可能温度領域が狭くなってしまう。
低温オフセットとは、受像紙との界面付近にある定着画像下層のトナーが充分溶かされないことで、定着器の部材表面に付着してしまう現象である。低温オフセットに関しては、結晶性ポリエステルの低温定着効果によって改善できるため、特に高温オフセットが課題になる。
高温オフセットとは、定着部材の温度が高い領域で、定着画像の一部が定着器の部材表面に付着し、さらに、次周回で受像紙の上に定着する現象であり、以後はホットオフセットとも記載する。
このとき、スチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有し、水酸基価が5.0mgKOH/g以上、酸価が10.0mgKOH/g以上である極性樹脂を併用する。このような極性樹脂を併用することで、低温低湿環境下で低温定着性と静電オフセット抑制を両立できることを、本発明者らは見出した。極性樹脂の水酸基価が5.0mgKOH/g以上、酸価が10.0mgKOH/g以上であることで、極性樹脂末端にカルボキシ基やヒドロキシ基などの極性基が十分に存在する。本発明の効果が得られるメカニズムは定かでないが、おそらく、それら極性基が定着ニップでの電荷密度を適正化し、チャージアップを抑えることで、低温低湿環境下においても静電オフセットを抑制できると考えている。
また、本発明の極性樹脂は、スチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有することが必要である。極性樹脂がスチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有することで、末端に炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステル樹脂との親和性が低下する。さらに、本発明では炭素数7以上のアルキル基を有する離型剤を用いるため、結晶性ポリエステル樹脂は離型剤と強く相互作用し、結晶性ポリエステル樹脂と極性樹脂との親和性はさらに低下すると考えられる。それにより、本発明の極性樹脂がもつ静電オフセット抑制効果が阻害されず、効率よく発現される。
また、結着樹脂が芳香環を有する場合、そのような結着樹脂とスチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有する極性樹脂との間で、芳香環同士のπ−π相互作用が生じると考えられる。そのため、結着樹脂と極性樹脂とのなじみが良くなり、極性樹脂のトナー内部での偏在が抑えられる。その結果、定着ニップでの静電オフセット抑制効果を効率的に発現させることができる。
本発明のトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂は、末端に炭素数7以上のアルキル基を有することが必要である。仮に、結晶性ポリエステル樹脂が末端にアリール基を有する場合、本発明のトナーに含有される極性樹脂が有するスチレンに由来する部分構造との間でπ−π相互作用が生じやすくなる。それにより、極性樹脂の静電オフセット抑制効果を阻害してしまい、ホットオフセットがより低い定着温度で発生することで、定着可能温度領域が狭くなってしまう。
加えて、結晶性ポリエステル樹脂が末端にアリール基を有する場合、結晶性ポリエステル樹脂と炭素数7以上のアルキル基を有する離型剤とは疎水性相互作用が発生せず、さらに結着樹脂が芳香環を有する場合、結着樹脂との親和性が高まる。そのため、結晶性ポリエステル樹脂がトナー中で結晶化しにくく、よりブリードしやすくなる。その結果、高温高湿環境下での現像部材の汚染が発生してしまう。結晶性ポリエステル樹脂が末端に有するアルキル基の炭素数は、離型剤との優れた親和性を得ることができるという観点から炭素数7以上が必要であり、より好ましくは炭素数17以上である。
また、結晶性ポリエステル樹脂の酸価および水酸基価は、酸価4.0mgKOH/g以下、水酸基価7.0mgKOH/g以下が好ましい。
本発明のトナーに含有される極性樹脂は、スチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有することが必要である。仮に、極性樹脂のスチレンに由来する部分構造が50.00質量%未満である場合、炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステル樹脂との親和性低下効果が減少する。このため、結晶性ポリエステル樹脂によって極性樹脂の静電オフセット抑制効果が阻害されやすくなる。その結果、ホットオフセットがより低い定着温度で発生し、定着可能温度領域の狭小化が起こる。極性樹脂のスチレンに由来する部分構造の質量比について、より好ましくは80.00質量%以上である。
また本発明では、極性樹脂の水酸基価が5.0mgKOH/g以上、酸価が10.0mgKOH/g以上であることが必須要件である。仮に、極性樹脂の水酸基価が5.0mgKOH/g未満、酸価が10.0mgKOH/g未満であると、極性樹脂末端のカルボキシ基やヒドロキシ基などの極性基が少ないため、おそらくは上述のような定着ニップでの電荷密度の適正化作用が起こりにくい。結果として、低温低湿環境下において静電オフセットが抑制できず、ホットオフセットがより低い定着温度で発生し、定着可能温度領域が狭くなってしまう。極性樹脂の水酸基価および酸価のより好ましい条件は、水酸基価9.0mgKOH/g以上、酸価15.0mgKOH/g以上である。
本発明のトナー粒子においては、
結着樹脂100質量部に対する結晶性樹脂の含有量が3.0質量部以上20.0質量部以下であり、
結着樹脂100質量部に対する極性樹脂の含有量が4.0質量部以上20.0質量部以下であることが、本発明の効果を発揮させるさらなる好条件である。
結着樹脂100質量部に対する結晶性樹脂の含有量が3.0質量部以上であることで、結晶性ポリエステルのもつシャープメルト性により、低温定着性が向上する。また、上記含有量が20.0質量部以下であることで、極性樹脂の作用を阻害せず、かつブリードを抑制するため、静電オフセットおよび現像部材の汚染性のさらなる抑制と耐熱保存性の向上が可能である。
結着樹脂100質量部に対する極性樹脂の含有量が4.0質量部以上であることで、末端極性基が定着ニップで効率的に働くため、静電オフセット抑制効果が顕著になる。また、上記含有量が20.0質量部以下であると、低温定着性が向上することが見出されている。
また本発明においては、トナー粒子における離型剤の含有量に対する結晶性樹脂の含有量が100.0質量%以下であることが、より好ましい。離型剤の含有量に対する結晶性樹脂の含有量が100.0質量%以下であることで、炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性樹脂が、炭素数7以上のアルキル基を有する離型剤に確実にトラップされるため、現像部材の汚染性のさらなる抑制が可能である。
本発明では、トナー粒子に含有される結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位とを有するブロックポリマーであることも好ましい条件である。結晶性樹脂が結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位とを有すると、非晶性ビニル部位がトナー粒子中での各成分に対する相溶性と相分離性を調節するため、低温定着性と耐熱保存性のバランスが良好になる。また結晶性樹脂がブロックポリマーであることで、低温定着性と耐熱保存性を高度に制御することができる。
本実施形態のトナーを構成する各成分及びトナーの製造方法について説明する。
(結晶性樹脂)
本発明のトナーに含有される結晶性樹脂は、末端に炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステル樹脂を含む。
末端に炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、炭素数7以上のアルキル鎖を有する1価のアルコール又は1価の酸を用いて、ポリマー末端のカルボキシ基又はヒドロキシ基を封止する方法が挙げられる。1価のアルコールとしては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。1価の酸としては、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上の多価カルボン酸と多価アルコールとの反応により得ることができる。適切な融点や結晶化度が得られるという観点から、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主原料とした結晶性ポリエステルが好ましい。
多価アルコールとしては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジエングリコール等。
多価カルボン酸としては、以下のものが挙げられる。シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n−ドデシルコハク酸、n−デドセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等。
また本発明のトナーに含有される結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位とを有するブロックポリマーであることが好ましい。上記非晶性ビニル部位は、好ましくは、以下の群から選択される1又は2以上の重合性単量体から生成される。該重合性単量体としては、例えば、以下のスチレン系重合性単量体、アクリル系重合性単量体類、メタクリル系重合性単量体類が挙げられるが、原料入手が容易、ブロックポリマー製造が容易などの観点からスチレンが好ましい。
スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、および、p−フェニルスチレンなどのスチレン系重合性単量体。
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、および、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体類。
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、および、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体類。
非晶性ビニル部位で変性された変性結晶性ポリエステルの製造方法としては、例えば以下の公知の製造方法が適応できる。先に結晶性ポリエステル部位を合成した後に原子移動ラジカル重合などにより非晶性ビニル部位を伸長させる方法、先に反応性の官能基を導入した非晶性ビニル部位を合成した後に結晶性ポリエステル部位を伸長させる方法。先に結晶性ポリエステル部位及び非晶性ビニル部位を別々に合成した後に両者を結合させる方法。
(極性樹脂)
本発明のトナーに含有される極性樹脂は、スチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有し、水酸基価が5.0mgKOH/g以上、酸価が10.0mgKOH/g以上である。具体的には、以下のものが挙げられる。スチレンとアクリル酸或いはメタクリル酸等の不飽和カルボン酸との共重合体、スチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、スチレンと不飽和二塩基酸或いは不飽和二塩基酸無水物との共重合体。不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和二塩基酸及び不飽和二塩基酸無水物等の重合体とスチレンとの共重合体等。
その中でも本発明のトナーに含有される極性樹脂は、スチレンとアクリル酸或いはメタクリル酸を共重合成分として用いて作製された、スチレンアクリル系樹脂であることが好ましい。極性樹脂がスチレンアクリル系樹脂であると、末端エステル結合から炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステルを含む結晶性樹脂との親和性の制御が容易になり、本発明の効果を発揮させやすい。
スチレンアクリル系樹脂は以下の方法で作製することができる。(1)実質的に溶媒を有しない状態でモノマーを重合する固相重合法、(2)重合に使用すべき全てのモノマーと全ての重合開始剤と溶媒とを添加し、一括して重合する溶液重合法、(3)重合反応中にモノマーを追加しながら重合する滴下重合法。また、常圧重合法及び加圧重合法により製造されたものを用いることができる。
スチレンアクリル系樹脂の作製に用いられる共重合成分としては以下の化合物が挙げられる。スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、の如きスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、の如きアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、の如きメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類。
(結着樹脂)
結着樹脂種としては、特に制限はないが、例えば、スチレンアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、これらの混合樹脂や複合化樹脂等が挙げられる。安価、容易に入手可能で低温定着性に優れる点でスチレンアクリル樹脂やポリエステルが好ましい。さらに耐久現像性に優れる点でスチレンアクリル樹脂がより好ましい。
ポリエステルは、多価カルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸等の中から好適なものを選択して組み合わせ、例えば、エステル交換法又は重縮合法等、従来公知の方法を用いて合成することで得られる。
多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であって、好ましく使用され、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、スペリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレン二酢酸、o−フェニレン二酢酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、以下のものが挙げられる。トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸、イタコン酸、グルタコン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸等。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリオールは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中にヒドロキシ基を2個含有する化合物であり、好ましく使用され、具体的には例えば、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリテトラメチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物など。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及び、これと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
3価以上のアルコールとしては、例えば、以下のものが挙げられる。グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン、ソルビトール、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物など。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
スチレンアクリル樹脂としては、下記重合性単量体からなる単独重合体、又はこれらを2種以上組み合わせて得られる共重合体、さらにはそれらの混合物が挙げられる。
スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン及びp−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体類;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルアクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルアクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルアクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、n−ノニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレート及び2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸のようなアクリル誘導体類及びメタクリル誘導体類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル誘導体類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン誘導体類;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン類。
該スチレンアクリル樹脂は、必要に応じて多官能性の重合性単量を用いることができる。多官能性の重合性単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる。ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン及びジビニルエーテル等。
また、重合度を制御するため、公知の連鎖移動剤及び重合禁止剤をさらに添加することも可能である。
該スチレンアクリル樹脂を得るための重合開始剤としては、有機過酸化物系重合開始剤やアゾ系重合開始剤が挙げられる。
有機過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びtert−ブチル−パーオキシピバレートなどが挙げられる。
アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル及びアゾビスメチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(イソ酪酸メチル)などが挙げられる。
また、重合開始剤として、酸化性物質と還元性物質とを組み合わせたレドックス系重合開始剤を用いることもできる。酸化性物質としては、過酸化水素、過硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩)の無機過酸化物並びに4価のセリウム塩の酸化性金属塩が挙げられる。還元性物質としては還元性金属塩(2価の鉄塩、1価の銅塩及び3価のクロム塩)、アンモニア、低級アミン(メチルアミン及びエチルアミンのような炭素数1以上6以下程度のアミン)、ヒドロキシルアミンのようなアミノ化合物、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどの還元性硫黄化合物、低級アルコール(炭素数1以上6以下)、アスコルビン酸又はその塩並びに低級アルデヒド(炭素数1以上6以下)が挙げられる。
重合開始剤は、10時間半減期温度を参考に選択され、単独又は混合して利用される。上記重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には重合性単量体100.0質量部に対し0.5質量部以上20.0質量部以下が添加される。
(離型剤)
本発明のトナーは、炭素数7以上のアルキル基を有する離型剤を含む。炭素数7以上のアルキル基をもつ各種の公知ワックスを用いることができる。具体的には、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムに代表される石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスに代表される天然ワックス及びそれらの誘導体。誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸又はその酸アミド、エステル、ケトン;硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独又は併用して用いることができる。なお、これらのワックスには、トナーの帯電性に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。
これらの離型剤の中でも、耐熱保存性および離型効果の観点から、アルキル基の炭素数は14以上であることが好ましい。また、これらの離形剤は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上30.0質量部以下使用するのが好ましい。離型剤の融点は30℃以上120℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以上100℃以下である。上記のような熱特性を呈する離型剤を用いることにより、離型効果が効率良く発現され、より広い定着領域が確保される。
(着色剤)
本発明のトナーには、着色材として、公知の顔料、染料を用いることができる。耐候性に優れる点から該着色剤としては、顔料が好ましい。
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物及び塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62及び66。
マゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物及びペリレン化合物等が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254、及びC.I.ピグメントバイオレット19。
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物及びアリルアミド化合物等が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185、191及び194。
黒色着色剤としては、カーボンブラック並びに上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤及びシアン系着色剤を用いて黒色に調色されたものが挙げられる。
これらの着色剤は、単独で、又は混合物で、さらにはこれらを固溶体の状態で用いることができる。該着色剤は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下用いることが好ましい。
(荷電制御剤、荷電制御樹脂)
本発明のトナーには、荷電制御剤又は荷電制御樹脂を用いてもよい。
該荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に摩擦帯電スピードが速く、かつ、一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を懸濁重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤としてはトナーを負荷電性に制御するものと正荷電性に制御するものがある。トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、オキシカルボン酸及びジカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン及び荷電制御樹脂など。
トナーを正荷電性に制御するものしては、以下のものが挙げられる。グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩並びにこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、及び、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;荷電制御樹脂。
荷電制御樹脂としては、スルホン酸基、スルホン酸塩基若しくはスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体を挙げることができる。スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体としては、特にスルホン酸基含有アクリルアミド系モノマー又はスルホン酸基含有メタクリルアミド系モノマーを共重合質量比で2質量%以上含有する重合体が好ましい。より好ましくは5質量%以上含有する重合体である。
これら荷電制御剤又は荷電制御樹脂は、単独で又は2種類以上組み合わせて添加してもよい。荷電制御剤又は荷電制御樹脂の添加量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
(外添剤)
本発明のトナーには、各種特性を付与するために、外添剤として各種有機又は無機微粒子を外添しても良い。
有機又は無機微粉体としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物粒子(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロムの粒子)、窒化物粒子(例えば窒化ケイ素粒子)、炭化物粒子(例えば炭化ケイ素粒子)、金属塩粒子(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの粒子)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物粒子(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナの粒子)、カーボンブラック。
これら外添剤の中でも、シリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粒子としては、表面及びシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-の少ない乾式シリカの方が好ましい。また、乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他のような金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物との複合微粒子であってもよい。
有機又は無機微粉体は、トナーの流動性の改良及びトナー粒子の帯電均一化のために微粒子を表面処理することもできる。有機又は無機微粒子表面を処理剤によって疎水化することで、トナーの摩擦帯電量の調整、環境安定性の向上、及び、高温高湿下での流動性の向上を達成することができるため、疎水化処理された有機又は無機微粒子を用いることが好ましい。有機又は無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、以下のものが挙げられる。未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物。これらの処理剤は単独で又は併用して用いられても良い。
例えば、トナー粒子に、無機微粒子を外添混合してトナー粒子の表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。無機微粒子の外添方法は公知の方法を採用すればよい。例えば、三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)を用いて混合処理を行う方法が挙げられる。
該有機又は無機微粒子の総添加量は、トナー粒子100質量部に対して1.00質量部以上5.00質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1.00質量部以上2.50質量部以下である。該有機又は無機微粒子は、トナーの耐久性の点から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。
(トナーの製造方法)
本発明のトナーの製造方法としては、溶融混練粉砕法、乳化凝集法、溶解懸濁法、懸濁重合法等、公知の製造方法が適応できる。本発明では、酸価、水酸基価の高い極性樹脂がトナー表面に局在しやすく、極性基がもつ静電オフセット抑制効果を効率よく発揮できる懸濁重合法が最も好ましい製法である。以下で懸濁重合法について詳細を説明する。
水系媒体を調製する時に使用する分散安定剤としては、公知の無機化合物の分散安定剤、及び、有機化合物の分散安定剤を用いることができる。無機化合物の分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、及び、アルミナが挙げられる。一方、有機化合物の分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、及び、デンプンが挙げられる。これら分散安定剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して0.200質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
これら分散安定剤の中で、無機化合物の分散安定剤を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、より細かい粒径の分散安定剤を得るために、水系媒体中で該無機化合物を生成させてもよい。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合することで得られる。
以下、本発明における各種物性の測定方法について説明する。
<極性樹脂及び結晶性ポリエステルの酸価及び水酸基価の測定方法>
極性樹脂及び結晶性ポリエステルの酸価及び水酸基価は、JIS−K0070−1992に準じて、電位差滴定法により測定する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように上記専用ソフトの設定を行う。
上記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに上記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに上記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として下記の希釈液を約0.3mL加える。
希釈液:「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈したもの
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、下記の超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に上記コンタミノンNを約2mL添加する。
超音波分散器:電気的出力120W、「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス(株)製)
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の上記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー(株)製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」(東ソー(株)製)
カラム:LF−604の2連(昭和電工(株)製)
溶離液:THF
流速:0.6mL/分
オーブン温度:40℃
試料注入量 :0.020mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー(株)製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
<結晶性ポリエステルAの製造例>
撹拌機、温度計、窒素導入管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、キシレン100質量部を窒素置換しながら加熱し、液温140℃で還流させた。該溶液へスチレン100質量部、重合開始剤としてDimethyl 2,2’−azobis(2−methylpropionate)8.00質量部を混合したものを3時間かけて滴下し、滴下終了後、溶液を3時間撹拌した。その後、160℃、1hPaにて、キシレン及び残存スチレンを留去しビニルポリマーを得た。
次いで、撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に下記の材料を加えて、窒素雰囲気下、150℃で4時間反応させた。
・上記で得られたビニルポリマー 95.1質量部
・有機溶媒としてキシレン 120.0質量部
・1,12−ドデカンジオール 78.6質量部
・エステル化触媒としてチタン(IV)イソプロポキシド 0.500質量部
その後、セバシン酸65.5質量部を加えて150℃で3時間反応させた。
さらに、ステアリン酸9.5質量部を加えて、180℃で4時間反応させた。
その後、さらに180℃、1hPaで所望の酸価、水酸基価となるまで反応させて結晶性ポリエステル1を得た。物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステルB、Eの製造例>
表1に記載の処方に従ってモノマーの種類と添加量を一部変更した以外は結晶性ポリエステルAの製造例と同様にして、結晶性ポリエステルB、Eを得た。物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステルCの製造例>
撹拌機、温度計、窒素導入管、および、減圧装置を備えた反応容器に、キシレン80.0質量部を窒素置換しながら加熱し、液温140℃で還流させた。そこへスチレン72.6質量部、ジクミルパーオキサイド5.80質量部、及びアクリル酸4.60質量部を撹拌混合して得られた混合液を3時間かけて滴下し、滴下終了後、溶液を3時間撹拌した。引き続いて、下記の材料を加えて、150℃で4時間反応させた。
・1,12−ドデカンジオール 91.5質量部
・エステル化触媒としてチタン(IV)イソプロポキシド 0.600質量部
その後、セバシン酸85.0質量部を加えて150℃で3時間反応させた。
さらに、ステアリン酸9.84質量部を加えて、180℃で4時間反応させた。その後、さらに180℃、1hPaで所望の酸価、水酸基価となるまで反応させて結晶性ポリエステルCを得た。物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステルDの製造例>
撹拌機、温度計、窒素導入管、および、減圧装置を備えた反応容器に、下記の材料を加えて、150℃で4時間反応させた。
・1,12−ドデカンジオール 105質量部
・セバシン酸 95.0質量部
・ステアリン酸 17.5質量部
・エステル化触媒としてチタン(IV)イソプロポキシド 0.600質量部
その後、180℃で4時間反応させ、さらに180℃、1hPaで所望の酸価、水酸基価となるまで反応させて結晶性ポリエステルDを得た。物性を表1に示す。
Figure 2019020491
<極性樹脂aの製造例>
撹拌機、温度計、窒素導入管、減圧装置、および、脱水管を備えたオートクレーブ中に、キシレン300質量部を投入し、窒素置換しながら加熱し、液温140℃で還流させた。そこへ下記材料の混合液を添加した後、重合温度を160℃、反応時の圧力を0.150MPaにて重合を5時間行った。
・スチレン 91.50質量部、
・アクリル酸ブチル 1.00質量部、
・メタクリル酸メチル 2.50質量部、
・メタクリル酸 2.50質量部
・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 2.50質量部、
・重合開始剤(ジ−tert−ブチルパーオキサイド) 2.00質量部
その後、減圧下にて脱溶剤工程を3時間行い、キシレンを除去して、粉砕することで極性樹脂aを得た。 物性を表2に示す。
<極性樹脂b、c、d、f、gの製造例>
表2に記載の処方に従って各材料の種類と添加量を変更した以外は極性樹脂aの製造例と同様にして、極性樹脂b、c、d、f、gを得た。物性を表2に示す。
<極性樹脂eの製造例>
撹拌機、温度計、窒素導入管、および、脱水管を備えた反応容器に、下記の材料を入れた後、触媒としてジブチル錫を1.5質量部添加した後、撹拌しながら窒素雰囲気下にて160℃に昇温した。
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2mol付加物 29.6質量部
・ビスフェノールA−エチレンオキサイド2mol付加物 16.0質量部
・テレフタル酸 32.0質量部
・トリメリット酸 2.4質量部
次いで、下記の材料を混合したものを調製し、滴下ロートから4時間かけて反応槽中に滴下した。
・スチレン 18.0質量部
・メタクリル酸 1.0質量部
・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 1.0質量部
・重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド 0.40質量部
滴下終了後、160℃で4時間反応させた。その後、230℃に昇温しながら反応系を減圧し、重縮合反応を行った。減圧開始後からの重縮合時間を、極性樹脂eの軟化点が約120℃となるように設定し、極性樹脂eを得た。物性を表2に示す。
Figure 2019020491
<トナー1の製造例>
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた四つ口容器中に下記の材料を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業(株)製)を用いて12,000rpmで撹拌しながら、温度60℃に保持した。
・イオン交換水 700質量部
・0.1モル/リットルのNaPO水溶液 1000質量部
・1.0モル/リットルのHCl水溶液 24.0質量部
ここに1.0モル/リットルのCaCl水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca(POを含む水系分散媒体を調製した。
・スチレンモノマー 75.5質量部
・n−ブチルアクリレート 24.5質量部
・結晶性ポリエステルA 7.0質量部
・極性樹脂a 10.0質量部
・離型剤(べヘン酸ベヘニル) 10.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・帯電制御剤(ボントロンE−88、オリヱント化学工業(株)製 3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム3:1型化合物) 0.7質量部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機(株)製)で3時間分散させて得られた重合性単量体組成物1を温度60℃で20分間保持した。その後、重合性単量体組成物1に重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート10.0質量部(トルエン溶液70%)を添加した重合性単量体組成物1を水系媒体中に投入し、高速撹拌装置の回転数を12,000rpmに維持しつつ10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた。このとき水系媒体のpHは5.1であった。次に、容器内を温度85℃に昇温して5時間維持した。その後、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けて、容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行った。30℃に冷却後、10%塩酸を添加して分散安定剤を除去した。さらに、ろ別、洗浄、乾燥をして重量平均粒径(D4)が6.4μmのトナー粒子1を得た。
100質量部のトナー粒子1と、BET値が300m/gであり一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粉体1.6質量部とを、三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)で混合して、トナー1を得た。トナー1の処方及び物性を表3に示した。
<トナー2〜16の製造例>
表3に示す処方に従って、樹脂の種類、量や離型剤の量などを変更した以外はトナー1と同様にしてトナー2〜16を得た。トナー2〜16の物性を表3に示した。
<トナー17の製造例>
・スチレンアクリル樹脂 100.0質量部
(スチレン/n−ブチルアクリレート=75.5質量部/24.5質量部、Mw=60,000)
・結晶性ポリエステルA 7.0質量部
・極性樹脂a 10.0質量部
・パラフィンワックス(HNP−5、日本精蝋(株)製) 10.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・帯電制御剤(ボントロンE−88、オリヱント化学工業(株)製) 0.7質量部
上記材料を、トルエン400質量部に溶解して、溶解液を得た。
リービッヒ還流管を備え付けた四つ口容器中に下記の材料を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサーを用いて12,000rpmで撹拌しながら、温度60℃に保持した。
・イオン交換水 700質量部
・0.1モル/リットルのNaPO水溶液 1000質量部
・1.0モル/リットルのHCl水溶液 24.0質量部
ここに1.0モル/リットルのCaCl水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca(POを含む水系分散媒体を調製した。
次に上記溶解液100質量部をT.K.ホモミクサーで12,000rpmに攪拌しながら、投入し10分間攪拌した。ついで、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。次に、容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行った。30℃に冷却後、10%塩酸を添加して分散安定剤を除去した。さらに、ろ別、洗浄、乾燥をして重量平均粒径が6.2μmのトナー粒子17を得た。
100質量部のトナー粒子17と、BET値が300m/gであり一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粉体1.6質量部とを三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)で混合して、トナー17を得た。トナー17の物性を表3に示した。
<トナー18の製造例>
「ポリエステル系樹脂(1)の合成」
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2mol付加物 10mol%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2mol付加物 94mol%
・テレフタル酸 50mol%
・フマル酸 30mol%
・ドデセニルコハク酸 25mol%
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに上記のモノマーを投入し、1時間で195℃まで上げて、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。これらモノマーの総質量に対してジステアリン酸スズを0.8質量%投入した。さらに生成する水を留去しながら195℃から5時間かけて250℃まで温度を上げ、250℃でさらに2時間脱水縮合反応を行った。
その結果、ガラス転移温度が60.1℃、酸価が14.0mgKOH/g、水酸基価が26.2mgKOH/g、重量平均分子量が15,900、数平均分子量が4,400、軟化点114℃のポリエステル系樹脂(1)を得た。
「ポリエステル系樹脂(2)の合成」
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2mol付加物 50mol%
(両末端換算2mol付加物)
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2mol付加物 50mol%
(両末端換算2mol付加物)
・テレフタル酸 65mol%
・ドデセニルコハク酸 30mol%
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに上記のモノマーを投入し、1時間で195℃まで上げて、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。これらモノマーの総質量に対してジステアリン酸スズを0.7質量%投入した。さらに生成する水を留去しながら195℃から5時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を行った。
次いで、温度を190℃まで下げ、無水トリメリット酸の6mol%を徐々に投入し、190℃で1時間反応を継続した。
その結果、ガラス転移温度が53.5℃、酸価が12.1mgKOH/g、水酸基価が25.2mgKOH/g、重量平均分子量が51,000、数平均分子量が6,200、軟化点109℃のポリエステル系樹脂(2)を得た。
「樹脂粒子分散液1の調製」
・ポリエステル系樹脂(1) 100.0質量部
・メチルエチルケトン 200.0質量部
容器に上記材料を加えて、完全に溶解させてポリエステル系樹脂(1)溶解液を得た。このポリエステル系樹脂(1)溶解液の入った容器を温度40℃に設定し、撹拌しながら10%アンモニア水溶液を合計で5質量部となるように徐々に滴下し、さらにイオン交換水300質量部を10mL/分の速度で徐々に滴下して転相乳化させた。さらにエバポレータを用いて減圧して脱溶剤を行い、ポリエステル系樹脂(1)の樹脂粒子分散液1を得た。この樹脂粒子の体積平均粒径は、130nmであった。また、樹脂粒子固形分量はイオン交換水で調整して20%とした。
「樹脂粒子分散液2の調製」
・ポリエステル系樹脂(2) 100.0質量部
・メチルエチルケトン 200.0質量部
容器に上記材料を加えて、完全に溶解させてポリエステル系樹脂(2)溶解液を得た。このポリエステル系樹脂(2)溶解液の入った容器を温度40℃に設定し、撹拌しながら10%アンモニア水溶液を合計で3.5質量部となるように徐々に滴下し、さらにイオン交換水300質量部を10mL/分の速度で徐々に滴下して転相乳化させた。さらに減圧して脱溶剤を行い、ポリエステル系樹脂(2)の樹脂粒子分散液2を得た。この樹脂粒子の体積平均粒径は、150nmであった。また、樹脂粒子固形分量はイオン交換水で調整して20%とした。
「樹脂粒子分散液3の調整」
・極性樹脂a 70.0質量部
・メチルエチルケトン 100.0質量部
・イソプロピルアルコール 40.0質量部
容器に上記材料を加えて、完全に溶解させて極性樹脂a溶解液を得た。この極性樹脂a溶解液の入った容器を温度40℃に設定し、撹拌しながら10%アンモニア水溶液を合計で5質量部となるように徐々に滴下し、さらにイオン交換水300質量部を10mL/分の速度で徐々に滴下して転相乳化させた。さらにエバポレータを用いて減圧して脱溶剤を行い、極性樹脂aの樹脂粒子分散液3を得た。この樹脂粒子の体積平均粒径は、150nmであった。また、樹脂粒子固形分量はイオン交換水で調整して20%とした。
「樹脂粒子分散液4の調製」
・結晶性ポリエステルA 60.0質量部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製) 2.0質量部
・イオン交換水 240.0質量部
上記材料を混合し、温度100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで115℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径140nm、固形分量20%の樹脂粒子分散液4を得た。
「着色剤粒子分散液の調製」
・銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3) 45.0質量部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製) 5.0質量部
・イオン交換水 190.0質量部
上記材料を混合し、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:(株)スギノマシン製)を用いて圧力250MPaで20分間分散処理を行った。そして、着色剤粒子の体積平均粒径が120nmで、固形分量が20%の着色剤粒子分散液を得た。
「離型剤粒子分散液の調製」
・パラフィンワックス(HNP−5、日本精蝋(株)製) 60.0質量部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製) 2.0質量部
・イオン交換水 240.0質量部
上記材料を混合し、温度100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで115℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径160nm、固形分量20%の離型剤粒子分散液を得た。
「トナー粒子18の作製」
・樹脂粒子分散液1 285.0質量部
・樹脂粒子分散液2 190.0質量部
・樹脂粒子分散液3 118.5質量部
・樹脂粒子分散液4 128.0質量部
・着色剤粒子分散液 32.5質量部
・離型剤粒子分散液 48.0質量部
フラスコ中にアニオン界面活性剤ネオゲンRKを2.2質量部加えた後、以上の材料を撹拌した。
次いで、1モル/Lの硝酸水溶液を滴下してpH3.7にした後、これにポリ硫酸アルミニウム0.35質量部を加え、IKA製ウルトラタラックスで分散を行った。加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら50℃まで加熱した。50℃で40分間保持した後、90℃まで加熱し、90℃で5時間保持した。その後、冷却、濾過、乾燥を行い、トナー粒子18を得た。
100質量部のトナー粒子18と、BET値が300m/gであり一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粉体1.6質量部とを三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)で混合して、重量平均粒径が6.1μmのトナー18を得た。トナー18の物性を表3に示した。
<トナー19の製造例>
トナー1の製造例において、ベヘン酸ベヘニルをミリスチル酸ミリスチルに変更し、表3に示す処方に従って、樹脂の種類、量や離型剤の量などを変更した以外は、トナー1と同様にしてトナー19を得た。トナー19の物性を表3に示した。
<比較トナー1〜4の製造例>
表3に示す処方に従って、樹脂の種類を変更した以外はトナー1と同様にして比較トナー1〜4を得た。比較トナー1〜4の物性を表3に示した。
Figure 2019020491
[実施例1]
トナー1について、定着可能温度マージン、現像部材の汚染性、耐熱保存性の評価を行った。結果を表4に示す。
<定着可能温度マージン>
下記の(1)ホットオフセット終了温度と(2)低温オフセット終了温度との差分を(3)定着可能温度マージンとする。
(1)ホットオフセット終了温度(耐ホットオフセット性)
キヤノン(株)製レーザービームプリンタLBP9600Cの定着ユニットを、定着温度が調整できるように改造した。この改造後のLBP9600Cを用いて、プロセススピ−ド300mm/秒で、定着温度を210℃から5℃刻みで変更した。
トナー1について、トナー載量0.40mg/cmで、縦5cm×横5cmの正方形のベタ画像を受像紙の通紙方向先端部から cmの位置の中央部に作像した。そして、定着器を通過した後の受像紙の通紙方向後端部に、ホットオフセット(定着画像の一部が定着器の部材表面に付着し、さらに、次周回で受像紙の上に定着する現象)が生じたかを確認した。ホットオフセットが生じていなかった場合、そのときの定着加熱部の表面の温度を測定し、測定された温度をホットオフセット終了温度とした。ホットオフセットが生じていた場合、前記のように定着温度(設定値)を5℃下げて、上記のベタ画像の作像とホットオフセットの有無の確認を繰り返した。ホットオフセットが生じなくなったら、そのときの定着加熱部の表面の温度を測定し、ホットオフセット終了温度とした。
受像紙としては、A4カラーレーザーコピア用紙(キヤノン(株)製、怦量80g/m)を用いた。
評価は低温低湿(温度15℃/相対湿度10%)環境下で実施した。
(2)低温オフセット終了温度(低温定着性)
キヤノン(株)製レーザービームプリンタLBP9600Cの定着ユニットを、定着温度が調整できるように改造した。この改造後のLBP9600Cを用いて、プロセススピ−ド300mm/秒で、定着温度を145℃から5℃刻みで変更した。
トナー1について、トナー載量0.40mg/cmのベタ画像を受像紙に作像し、オイルレスで加熱加圧して、受像紙に定着画像を形成した。ベタ画像のサイズ・形状、ベタ画像を作像した位置は、前記の「(1)ホットオフセット終了温度(耐ホットオフセット性)」の記載内容と同様とした。
受像紙としては、business4200(Xerox社製、怦量105g/m)を用いた。
キムワイプ(S−200、日本製紙クレシア(株)製)を用い、75g/cmの荷重をかけて定着画像を10回こすり、こすり前後の画像濃度の低下率が5%未満になる温度を低温オフセット終了温度とした。
画像濃度の測定には、カラー反射濃度計X−RITE 404A(X−Rite Co.製)を用いて、画像濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、摺擦後の画像濃度の低下率を算出した。
評価は、低温低湿(温度15℃/相対湿度10%)環境下で実施した。
(3)定着可能温度マージン
上記の(1)ホットオフセット終了温度と(2)低温オフセット終了温度との差分を、定着可能温度マージンとする。
(評価基準)
A:50℃以上
B:40℃以上50℃未満
C:25℃以上40℃未満
D:15℃以上25℃未満
E:15℃未満
本発明では、C以上が許容できるレベルである。
<現像部材の汚染性>
キヤノン(株)製レーザービームプリンタLBP9600Cを改造し、シアンステーションだけでプリント可能とした。このLBP9600C用トナーカートリッジに、トナー1を300g充填し、高温高湿(温度32.5℃/相対湿度90%)環境下で24時間静置した。その後、トナーカートリッジをLBP9600Cに取り付け、1.0%の印字比率の画像をA4カラーレーザーコピア紙に横方向で30,000枚プリントアウトした後、現像ローラーを取り外しエアーでトナーを吹き飛ばした。その後、メンディングテープ(スリーエム ジャパン(株)製)によって現像部材をテーピングし、現像部材の表面の汚染物を引き剥がし、このテープをA4カラーレーザーコピア紙上に貼り付けた。また、未使用のメンディングテープを同一紙上に貼り付けた。各テープについて、カラー反射濃度計X−RITE 404Aを用いて反射濃度(%)を測定し、その差分の数値(%)を下記の基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:0.020%未満
B:0.020%以上0.050%未満
C:0.050%以上0.080%未満
D:0.080%以上0.100%未満
E:0.100%以上
本発明では、C以上が許容できるレベルである。
<耐熱保存性>
5gのトナー1を50cc樹脂製カップに取り、温度55℃/相対湿度10%で3日間静置し、凝集塊の有無を調べて評価した。
(評価基準)
A:凝集塊が発生せず
B:軽微な凝集塊が発生し、軽く指で押すと感触なく崩れる
C:軽微な凝集塊が発生し、軽く指で押すと感触あるが崩れる
D:凝集塊が発生し、軽く指で押しても崩れない
E:完全に凝集、強く指で押しても崩れない
本発明では、C以上が許容できるレベルである。
〔実施例2〜19、比較例1〜4〕
表3に示した各トナーを、実施例1と同様にして定着可能温度マージン、現像部材の汚染性、耐熱保存性の評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 2019020491

Claims (4)

  1. 結着樹脂、結晶性樹脂、極性樹脂、離型剤及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    前記結晶性樹脂は、末端に炭素数7以上のアルキル基を有する結晶性ポリエステル樹脂を含み、
    前記極性樹脂は、スチレンに由来する部分構造を50.00質量%以上有し、水酸基価が5.0mgKOH/g以上、酸価が10.0mgKOH/g以上であり、
    前記離型剤は、炭素数7以上のアルキル基を有することを特徴とするトナー。
  2. 前記トナー粒子において、
    前記結着樹脂100質量部に対する前記結晶性樹脂の含有量が3.0質量部以上20.0質量部以下であり、
    前記結着樹脂100質量部に対する前記極性樹脂の含有量が4.0質量部以上20.0質量部以下である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記トナー粒子において、前記離型剤の含有量に対する前記結晶性樹脂の含有量が100.0質量%以下である請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位とを有するブロックポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナー。

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