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JP2021148895A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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JP2021148895A JP2020047365A JP2020047365A JP2021148895A JP 2021148895 A JP2021148895 A JP 2021148895A JP 2020047365 A JP2020047365 A JP 2020047365A JP 2020047365 A JP2020047365 A JP 2020047365A JP 2021148895 A JP2021148895 A JP 2021148895A
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Abstract

【課題】本発明の課題は、低温定着性を向上させたトナー成分の構成であっても、タッキングを抑制し、搬送部材を含む画像形成装置内へのワックス付着を抑制することができる静電荷像現像用トナーを提供することである。【解決手段】本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも離型剤と結着樹脂とを含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記離型剤として少なくとも炭化水素ワックスを含有し、前記結着樹脂として少なくともビニル系樹脂と結晶性樹脂を含有し、前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有量が50質量%以上であり、かつ、前記結晶性樹脂が結晶構造を有する部位と結晶核剤部位を有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、静電荷像現像用トナーに関する。より詳しくは、低温定着性を向上させたトナー成分の構成であっても、タッキングを抑制し、搬送部材を含む機内へのワックス付着を抑制することができる静電荷像現像用トナーに関する。
低温定着性を向上させた静電荷現像用トナー(以下単に「トナー」ともいう。)として、結晶性樹脂や低融点の離型剤を含有したトナーが提案されている。
しかし、定着後の画像において、トナー中の結晶性樹脂が再結晶化しきらずトナーの弾性が低いことから、画像形成装置内の排紙部で画像同士がくっつくタッキング現象が発生してしまうことが知られている。
また、低融点の離型剤を含有したトナーにおいては、画像搬送時において、画像表層に存在するワックスが溶融した状態のままで、搬送ローラー等の部材と接触すると、部材接触時にワックスが冷却・固着し、搬送不良、機内汚染、過剰に存在するワックスが画像に転写され光沢ムラ発生を引き起こすなどの問題がある。
特許文献1では、高温高湿環境下での性能変動を抑制する目的でメインバインダーとしてビニル系樹脂を用いながら核剤構造を有する結晶性樹脂を分散させたトナーが提案されている。
しかし、上記提案では、離型剤として炭化水素ワックスを含んでおらず、画像表層中のワックスが溶融したまま搬送部材や他の画像に接触するため、タッキングの抑制や部材へのワックス付着という観点で十分でない。
特許文献2では、高温保管後のフィルミング抑制を目的として、離型剤として炭化水素ワックスを用い、ビニル系樹脂と結晶性樹脂をいずれも含有させた静電荷現像用トナーが提案されている。
しかし、結晶性樹脂が核剤構造を含んでいないため静電荷現像用トナー中の結晶性成分の再結晶化速度が排紙速度に間に合わず、同様に目的の性能を満たさない。
特開2017−173555号公報 特開2019−168618号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温定着性を向上させたトナー成分の構成であっても、タッキングを抑制し、搬送部材を含む画像形成装置内へのワックス付着を抑制することができる静電荷像現像用トナーを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、トナー母体粒子に含有される少なくとも結着樹脂として含有される非晶性樹脂及び結晶性樹並びに離型剤で構成されるマトリクス・ドメイン構造(「海島構造」ともいう。)におけるマトリクス(「海」に相当する。)とドメイン(「島」に相当する。)の好ましい機能・状態を検討する中で、上記課題を解決することができる特定状態を見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくとも離型剤と結着樹脂とを含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記離型剤として少なくとも炭化水素ワックスを含有し、
前記結着樹脂として少なくともビニル系樹脂と結晶性樹脂を含有し、
前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有量が50質量%以上であり、かつ、
前記結晶性樹脂が結晶構造を有する部位と結晶核剤部位を有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
2.前記結晶性樹脂中における前記結晶核剤部位の含有率が1〜15質量%の範囲内であり、かつ、
前記結晶核剤部位が、少なくとも炭素数10〜30である脂肪族モノカルボン酸又は炭素数10〜30である脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する部位であることを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
3.前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有率が、60質量%以上であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
4.前記結着樹脂中における前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステルであることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
5.前記結着樹脂中における前記結晶性樹脂の含有率が、4〜15質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
6.前記結晶性樹脂中に占める前記結晶核剤部の割合が、3〜9質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
7.前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル重合セグメントと他種の樹脂の重合セグメントとが結合してなるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
8.前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
1000≦Mw(C)≦29000…(1)
9.前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(2)を満たすことを特徴とする第1項から第8項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
1000≦Mw(C)≦20000…(2)
10.前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(3)を満たすことを特徴とする第1項から第9項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
1000≦Mw(C)≦15000…(3)
11.前記離型剤として用いる炭化水素ワックスの融点が、80〜92℃の範囲内であることを特徴とする第1項から第10項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
12.前記離型剤として用いる炭化水素ワックスの融点が、80〜88℃の範囲内であることを特徴とする第1項から第11項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
本発明の上記手段により、低温定着性を向上させたトナー成分の構成であっても、タッキングを抑制し、搬送部材を含む画像形成装置内へのワックス付着を抑制することができる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように考えている。
まず、本発明者は、本発明のトナーにおいて、タッキング抑制と画像形成装置内へのワックス付着抑制とを両立することができるメカニズムは以下のように推察している。
低温定着性に優れた結晶性樹脂を有するトナーは定着後排紙される過程での再結晶化が進まず、重なった画像同士が貼りつくタッキングを発生する。
また、低融点の離型剤は一般的にエステル系であることが多く、結着樹脂と相溶化することでタッキングを助長し、溶融した状態で搬送部材などと接触することで冷却・固着し、搬送不良、機内汚染、過剰に存在するワックスが画像に転写され光沢ムラ発生を引き起こす。
一般的に、結晶性樹脂に結晶核剤部位を導入すると結晶性樹脂自身の結晶化速度を早くすることができ、タッキングの抑制に効果があることが知られているが、これはトナー中における結晶性ドメインそのものの存在状態を変化させるものではない。
したがって、部材との接触時における粘度を上げる効果はあるが、ワックス付着への改善効果という点では十分ではない。
離型剤を炭化水素ワックスとすることで一般的にエステルワックスより融点が高くなるためワックス付着に対して効果を発揮し、結晶化開始速度が速いためタッキング抑制にも効果があるが、融点が高いがために低温定着性を悪化させる。
また、結着樹脂との相溶性が低くなることでブリードアウトして耐熱性の悪化をもたらす。
これらを併用した場合、炭化水素ワックスは長鎖脂肪族構造をとる核剤部位によって親和性を有するため、ブリードアウトを防ぐことはできるが低温定着性の悪化を防ぐ効果はない。
このとき、50質量%以上のビニル樹脂、核剤部位を有する結晶性樹脂を結着樹脂として、炭化水素ワックスを離型剤として用いると、ビニル樹脂が海島構造の海側となり結晶性樹脂のドメインを微分散化させることができるため、結晶性樹脂ドメインが速やかに結晶化するのを助け、タッキング抑制に効果を発揮するとともにトナー全体を速やかに溶融させるため、低温定着性に効果を発揮する。
また、ビニル樹脂が海側構造をとることで相溶性の低い炭化水素ワックスドメインをよりトナー内部側に配置させることができ、ワックス付着抑制に対してもさらなる効果を発揮する。
よって、離型剤として少なくとも炭化水素ワックスを含有し、結着樹脂にビニル系樹脂と結晶性樹脂とを少なくとも含有し、前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有量が50質量%以上であり、前記結晶性樹脂が結晶構造を有する部位と結晶核剤部位を有するトナーでは、良好な低温定着性とタッキング抑制を両立することができる。
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも離型剤と結着樹脂とを含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記離型剤として少なくとも炭化水素ワックスを含有し、前記結着樹脂として少なくともビニル系樹脂と結晶性樹脂を含有し、前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有量が50質量%以上であり、かつ、前記結晶性樹脂が結晶構造を有する部位と結晶核剤部位を有することを特徴とする。この特徴は下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記結晶性樹脂中における前記結晶核剤部位の含有率が1〜15質量%の範囲内であることが、低温定着性やタッキング抑制の観点から好ましい。
また、前記結晶核剤部位が、少なくとも炭素数10〜30である脂肪族モノカルボン酸又は炭素数10〜30である脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する部位であることが、タッキング抑制や低温定着性の観点から好ましい。
前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有率が、60質量%以上であることが、低温定着性の観点から好ましい。
前記結着樹脂中における前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステルであることが、溶融時のシャープメルト性や結着樹脂との相溶性との観点から好ましい。
前記結着樹脂中における前記結晶性樹脂の含有率が、4〜15質量%の範囲内であることが、タッキング抑制や低温定着性の観点から好ましい。
前記結晶性樹脂中に占める前記結晶核剤部の割合が、3〜9質量%の範囲内であることが、低温定着性の観点から好ましい。
前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル重合セグメントと他種の樹脂の重合セグメントとが結合してなるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが、相溶性のコントロールの観点から好ましい。
前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(1)を満たすことが、低温定着性とタッキング抑制の両立の観点から好ましい。
1000≦Mw(C)≦29000・・・(1)
また、前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(2)を満たすことが、低温定着性とタッキング抑制の両立の観点からより好ましい。
1000≦Mw(C)≦20000・・・(2)
前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(3)を満たすことが、低温定着性とタッキング抑制の両立の観点からよりさらに好ましい。
1000≦Mw(C)≦15000・・・(3)
前記離型剤として用いる炭化水素ワックスの融点が、80〜92℃の範囲内であることが、タッキング抑制や低温定着性の観点で好ましい。
前記離型剤として用いる炭化水素ワックスの融点が、80〜88℃の範囲内であることが、タッキング抑制や低温定着性の観点でより好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[本発明の静電荷像現像用トナーの概要]
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも離型剤と結着樹脂とを含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記離型剤として少なくとも炭化水素ワックスを含有し、前記結着樹脂として少なくともビニル系樹脂と結晶性樹脂を含有し、前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有量が50質量%以上であり、かつ、前記結晶性樹脂が結晶構造を有する部位と結晶核剤部位を有することを特徴とする。
上記特徴を有することにより、タッキング抑制及び画像形成装置内へのワックス付着を抑制できるとともに、より微細なドメイン状態で結晶性成分を分散させ、低温定着性にも優れたトナーとなる。
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂を含有するものであり、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
以下、本発明の静電荷現像用トナーの構成要素について詳細な説明をする。
I.静電荷像現像用トナーの構成要素
1.離型剤
本発明の静電荷現像用トナーは少なくとも離型剤を含有し、前記離型剤は少なくとも炭化水素ワックスを含有する。
炭化水素ワックスは一般的に融点が高く、結晶化開始温度が高くなるためにタッキングを抑制する方向へはたらく。また、定着部材との親和性を下げることで部材への付着、ひいては機内汚染や画像ムラの抑制につながる。
本発明に係る離型剤として用いる炭化水素ワックスの融点が80〜92℃の範囲内であることがタッキング抑制や低温定着性の観点で好ましく、80〜88℃の範囲内であることがより好ましい。
炭化水素ワックスとしては、特に限定されるものではなく公知のものを用いることができる。
炭化水素ワックスとしては、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;脂肪族炭化水素ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類などが挙げられる。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常1〜30質量部の範囲内とすることができ、好ましくは5〜20質量部の範囲内である。離型剤の含有量が上記範囲内であることにより、十分な定着分離性が得られる。
トナー粒子中の離型剤の含有量は、3〜15質量%の範囲内にあることが好ましい。
2.結着樹脂
本発明の静電苛像現像用トナーは、結着樹脂として少なくともビニル系樹脂と結晶性樹脂を含有し、かつ、前記結着樹脂中における前記ビニル樹脂の含有量が50%以上である。
前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有率が、60質量%以上であることが、低温定着性の観点から好ましい。
結晶性樹脂中の結晶核剤部位は結晶性成分の結晶化速度を早めてタッキングを抑制する効果がある。
前記結着樹脂中における前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステルであることが、溶融時のシャープメルト性や結着樹脂との相溶性との観点から好ましい。
前記結着樹脂中における前記結晶性樹脂の含有率が、4〜15質量%の範囲内であることが、タッキング抑制や低温定着性の観点から好ましい。
この範囲内であることで、マトリクス・ドメイン構造におけるドメインが微分散状態をつくりにくく再結晶化しきれない部分が出ることを抑えることができタッキングが抑制され、さらに、低温定着性も向上する。
なお、「マトリクス・ドメイン構造」とは、「海島構造」ともいい、海島構造とは、トナー母体粒子を構成する結着樹脂中の連続相(連続相が「マトリクス」に相当し、「海」を表す領域である。)中に、閉じた界面(相と相との境界)を有する島状の相(「ドメイン」)が存在する構造のものをいう。
すなわち、「マトリクス・ドメイン構造」とは、相互に非相溶性の複数(例えば2種)の樹脂成分を混合した場合、混合物の高次構造として、樹脂成分の片方が連続する相(海)の中に、もう一方が島状又は粒子状に散在している構造をいう。
つまり、一方の樹脂がマトリクスに相当する連続相(海)となり、他方がドメインに相当する島状の独立相(分散相)となることで形成される構造をいう。なお、個々のドメインのそれぞれにおいてそのドメイン自体の一部分がマトリクス・ドメイン構造体(トナー母体粒子)の表面に表出しているケースも含まれる。
(2.1)非晶性樹脂
本発明の静電苛像現像用トナーは、結着樹脂として少なくともビニル系樹脂と結晶性樹脂を含有するが、ビニル系樹脂は、非晶性を示す樹脂であることが好ましい。
ここで、「非晶性を示す」とは、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により得られる吸熱曲線において、ガラス転移点(Tg)を有するが、融点すなわち昇温時の明確な吸熱ピークがないことをいう。
なお、「明確な吸熱ピーク」とは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内の吸熱ピークをいう。
(2.1.1)非晶性ビニル樹脂
非晶性ビニル樹脂は、ビニル基を有するモノマー(以下、ビニルモノマーという。)の重合体のうち、非晶性を示すものをいう。
使用できる非晶性ビニル樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、中でも耐熱性に優れるスチレン−アクリル樹脂が好ましい。
使用できるビニルモノマーとしては、以下(1)〜(7)のものが挙げられ、このうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(1)スチレン系モノマー
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン及びこれらの誘導体等のスチレン構造を有するモノマー
(2)(メタ)アクリル酸エステル系モノマー
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体等の(メタ)アクリル基を有するモノマー
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(6)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸、メタクリル酸誘導体等
ビニルモノマーとしては、結晶性樹脂との親和性の制御が容易になることから、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等のイオン性解離基を有するモノマーを用いることが好ましい。
カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
リン酸基を有するモノマーとしては、アシドホスホオキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
さらに、ビニルモノマーとして多官能性ビニル類を使用し、架橋構造を有する重合体を得ることもできる。
多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
(2.1.2)非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)単量体と、2価以上のアルコール(多価アルコール)単量体との重合反応によって得られるポリエステル樹脂のうち、非晶性を示す樹脂である。公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸単量体及び多価アルコール単量体を重合する(エステル化する)ことにより、非晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
多価カルボン酸単量体は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。
非晶性ポリエステル樹脂の合成に使用できる多価カルボン酸単量体としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸、イソフタル酸ジメチル、フマル酸、ドデセニルコハク酸、1,10−ドデカンジカルボン酸等を挙げることができる。
これらの中では、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸、ドデセニルコハク酸、トリメリット酸が好ましい。
多価アルコール単量体は、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。
非晶性ポリエステル樹脂の合成に使用できる多価アルコール単量体としては、例えば、2価又は3価のアルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(BPA−EO)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(BPA−PO)、グリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
これらの中ではビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
使用可能なエステル化触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;アミン化合物等が挙げられる。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃の範囲内であることが好ましい。
また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間の範囲内であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
(2.1.3)非晶性樹脂の好ましいガラス転移点
非晶性樹脂のガラス転移点(Tg)は、十分な低温定着性と耐熱保管性を両立する観点からは、25〜60℃であることが好ましく、より好ましくは35〜55℃である。
ガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量測定装置、例えばダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いて測定することができる。
具体的には、試料3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。
1回目の加熱時には室温(25℃)から、2回目の加熱時には0℃から、10℃/minの昇温速度でそれぞれ200℃まで昇温して、150℃を5分間保持した。冷却時には、10℃/minの降温速度で200℃から0℃まで降温して、0℃の温度を5分間保持した。
2回目の加熱時に得られた測定曲線においてベースラインのシフトを観察し、シフトする前のベースラインの延長線と、ベースラインのシフト部分の最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点(Tg)とする。リファレンスとして、空のアルミニウム製パンを用いる。
(2.1.4)非晶性樹脂の好ましい重量平均分子量
非晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜100000の範囲内とすることができる。
(2.2)結晶性樹脂
本発明に係る結晶性樹脂は、結晶構造を有する部位と結晶核剤部位を有する。
なお、前記結晶性樹脂は、結晶性を示す樹脂であれば制限なく、公知の結晶性樹脂を使用できる。
ここで、「結晶性を示す」とは、DSCにより得られる吸熱曲線において、融点すなわち昇温時に明確な吸熱ピークを有することをいう。
明確な吸熱ピークとは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内のピークをいう。
前記結晶性樹脂中における前記結晶核剤部位の含有率が1〜15質量%の範囲内であることが、低温定着性やタッキング抑制の観点から好ましい。
また、前記結晶核剤部位が、少なくとも炭素数10〜30である脂肪族モノカルボン酸又は炭素数10〜30である脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する部位であることが、タッキング抑制や低温定着性の観点から好ましい。
結晶性樹脂中の結晶核剤部位の含有率が1質量%以上だと結晶化促進効果が高いため1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。
結晶性樹脂中の結晶核剤部位の含有率が15質量%以下であると、結晶化開始温度が高くなりすぎないために低温定着性の観点から優れるため15質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましい。
炭素数が10以上であると、非相溶ドメインを形成しやすくなり、タッキング抑制の観点で優れる。
また、炭素数が30以下であると、結晶化開始温度が高くなりすぎないため、低温定着性の観点で優れる。
前記結晶性樹脂中に占める前記結晶核剤部の割合が、3〜9質量%の範囲内であることが、低温定着性の観点から好ましい。
前記結着樹脂中における前記結晶性樹脂の含有率が、4〜15質量%の範囲内であることが、タッキング抑制や低温定着性の観点から好ましい。
含有率が4質量%以上であると低温定着性の観点から優れ、15質量%以下であるとドメインが微分散状態をつくりやすく再結晶化しきれない部分が出にくくなるためにタッキング抑制の観点から優れる。
前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル重合セグメントと他の樹脂の重合セグメントとが結合してなるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが、相溶性のコントロールの観点から好ましい。
前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(1)を満たすことが、低温定着性とタッキング抑制の両立の観点から好ましい。
1000≦Mw(C)≦29000・・・(1)
また、前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(2)を満たすことが、低温定着性とタッキング抑制の両立の観点からより好ましい。
1000≦Mw(C)≦20000・・・(2)
前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(3)を満たすことが、低温定着性とタッキング抑制の両立の観点からよりさらに好ましい。
1000≦Mw(C)≦15000・・・(3)
重合平均分子量が1000以上であると溶融が速すぎず、タッキング抑制の観点から優れ、重合平均分子量が29000以下であると溶融しやすく低温定着性の観点から優れる。
(2.2.1)結晶性樹脂の融点
結晶性樹脂の融点(Tm)は、樹脂組成によって制御することができる。
また、本発明において結晶性樹脂の融点は、十分な低温定着性及び優れた耐ホットオフセット性を得る観点から、55〜90℃の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは70〜85℃である。
(2.2.2)結晶性樹脂の融点の測定方法
なお、融点(Tm)は、吸熱ピークのピークトップの温度であり、DSCにより測定することができる。
具体的には、試料をアルミニウム製パンKITNO.B0143013に封入し、熱分析装置 ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。
1回目の加熱時には室温(25℃)から、2回目の加熱時には0℃から、10℃/minの昇温速度でそれぞれ150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/minの降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。
2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点として測定する。
(2.2.3)結晶構造を有する部位
本発明において「結晶構造を有する部位」とは、結晶性樹脂中の前記した結晶性を示す構造を有する部位をいう。
前記結晶構造を有する部位は、後述する結晶核剤部位の周囲に存在することで、結晶核剤部位が先に結晶化した際に、この結晶核剤部位を起点として結晶化が促進される。
また、前記結晶性樹脂としては、公知の結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂等)を用いることが好ましく、特に、結晶性ポリエステル樹脂を用いることが、溶融時のシャープメルトや結着樹脂との相溶性の観点から好ましい。
すなわち、前記結晶構造を有する部位が、結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
(結晶性ポリエステル樹脂)
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、前記結晶性を示す樹脂をいう。
前記多価カルボン酸とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。
具体的には、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、テトラデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1〜3のアルキルエステルなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記多価アルコールとは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。
具体的には、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分を重縮合する(エステル化する)ことにより形成することができる。
上記の多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率としては、多価カルボン酸成分のカルボキシ基に対する多価アルコール成分のヒドロキシ基の当量比を、1.5/1〜1/1.5の範囲内とすることが好ましく、1.2/1〜1/1.2の範囲内とすることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、アミン化合物等が挙げられる。
具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。
チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートなどを挙げることができる。
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。
アルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。
これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度や重合時間は特に限定されるものではなく、重合中には必要に応じて反応系内を減圧してもよい。
〔ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〕
本発明では、前記結晶性樹脂として、結晶性ポリエステル重合セグメントとビニル系樹脂の重合セグメントとが化学的に結合してなるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有することが、トナー中でより微分散化しやすく、低温定着性に優れる点で好ましい。
すなわち、前記結晶構造を有する部位が、前記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
結晶性ポリエステル重合セグメントを構成するモノマーに由来する全ユニットに対して、結晶核剤部位に由来する脂肪族カルボン酸モノマー及び脂肪族アルコールモノマーの比率が、0.1〜3mol%の範囲内であることが好ましく、最も好ましくは、0.5〜1mol%の範囲内である。
前記比率が0.1mol%以上であれば、結晶核剤部位の結晶核剤としての定着性の変動を抑制する効果を十分にでき、前記比率が3mol%以下であれば、結晶核剤部の融点が高くなりすぎず、低温定着性をより好適にできる。
〔結晶性ポリエステル重合セグメント〕
結晶性ポリエステル重合セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂セグメントをいう。
結晶性ポリエステル重合セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。
例えば、結晶性ポリエステル重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、結晶性ポリエステル重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、その樹脂は、本発明でいう結晶性ポリエステル重合セグメントを有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
結晶性ポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを重縮合する(エステル化する。)ことにより生成される。
多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーは、前記した結晶性ポリエステル樹脂の原料である多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーと同様のモノマーを用いることができる。
結晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する。)ことにより当該セグメントを形成することができる。
〔好ましい結晶性ポリエステル重合セグメント〕
本発明に用いられる結晶性ポリエステル重合セグメントは、炭素数4〜14の範囲内の多価アルコールモノマー及び炭素数4〜14の範囲内の多価カルボン酸モノマーを重合したものであることが好ましい。炭素数が4以上であれば、エステル結合由来の水素結合の数が多くなりすぎず、結晶性ポリエステル樹脂の融点が高くなりすぎることを抑え、ひいては、低温定着性をより好適にできる。また、炭素数が14以下であれば、脂肪族基同士の相互作用が強くなりすぎず、結晶性ポリエステル樹脂の融点が高くなりすぎることを抑え、ひいては、低温定着性をより好適にできる。
〔ビニル系樹脂の重合セグメント〕
ビニル系樹脂の重合セグメント(ビニル系重合セグメントともいう。)は、前記ビニル系樹脂の原料であるビニルモノマーから合成される。
本発明においては、結晶性樹脂が、ビニル系重合セグメントを、3〜40質量%の範囲内で含有することが好ましく、最も好ましくは、5〜20質量%の範囲内である。これにより、低温定着性を高めることができる。
特に、3質量%以上含有すれば、結晶性樹脂とメインバインダーであるビニル系樹脂との界面の安定性が低下しすぎず、十分に微分散化でき、この結果、低温定着性をより好適にできる。
なお、結晶性樹脂におけるビニル系重合セグメントの含有量は、特に限定されないが、帯電性の観点から40質量%以下であることが好ましい。
また、特に、熱耐性の低いビニル系重合セグメントとハイブリッドさせる場合、上記含有量は、40質量%以下であれば、結晶性樹脂のメインバインダーであるビニル系樹脂への相溶性が高くなりすぎず、この結果、耐熱保管性を好適にできる。
上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の合成方法としては、例えば下記(イ)、(ロ)、(ハ)の合成方法が挙げられる。
(イ)あらかじめ用意した結晶性ポリエステル重合セグメントに両反応性のモノマーを反応させた後、ビニル系樹脂の原料であるビニルモノマーを反応させることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントにビニル系重合セグメントを化学結合させる方法。
(ロ)あらかじめ用意したビニル系樹脂に両反応性のモノマーを反応させた後、結晶性ポリエステル樹脂の原料である多価カルボン酸モノマーと多価アルコールモノマーを反応させて、ビニル系重合セグメントに結晶性ポリエステル重合セグメントを化学結合させる方法。
(ハ)あらかじめ用意した結晶性ポリエステル樹脂と、ビニル系樹脂に両反応性のモノマーを反応させて、それぞれを結晶性ポリエステル重合セグメント及びビニル系重合セグメントを化学結合させる方法。
両反応性のモノマーとは、結晶性ポリエステル樹脂とビニル系樹脂を結合するモノマーであり、分子内に結晶性ポリエステル樹脂と反応し得るヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基等の置換基と、非晶性樹脂と反応し得るエチレン性不飽和基と、を有するモノマーである。
中でも、ヒドロキシ基又はカルボキシ基と、エチレン性不飽和基とを有するビニルカルボン酸が好ましい。
両反応性のモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸等を使用でき、これらのヒドロキシアルキル(炭素原子数1〜3個)のエステルを使用してもよい。反応性の観点からは、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸が好ましい。
両反応性のモノマーの使用量は、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐久性を向上させる観点から、ビニル系重合セグメントの形成に使用するモノマーの総量100質量部に対して、1〜10質量部の範囲内とすることが好ましく、4〜8質量部の範囲内とすることがより好ましい。
(2.2.4)結晶核剤部位
本発明において「結晶核剤部位」とは、結晶化速度が、前記結晶構造を有する部位よりも速い部位であって、冷却時に結晶化速度が速い結晶核剤部位が先に素早く結晶核を生成し、その結晶核を起点とすることで結晶構造を有する部位の結晶化を促進する。
前記結晶構造を有する部位よりも結晶化速度が速い化合物であれば特に制限されるものではない。
また、結晶化速度が速いという観点から、主査が炭化水素系部位を含み、ポリエステル部の末端と反応しうる官能基を1つ以上有する化合物であることが好ましい。
さらに、炭化水素系部位が直鎖状であり、ポリエステル部と反応する官能基が1つ以上である化合物が好ましい。
また、結晶核剤部位は、本発明のトナーの低温定着性を阻害せず、結晶核剤部位の無い結晶性樹脂より結晶化が速くなるものであれば特に限定されないが、より安定に造核効果を発現でき、ひいては、本発明の効果をより好ましく発現できる観点で、以下のような結晶核剤部位が好ましい。
すなわち、好ましい態様の結晶核剤部位とは、炭素数10〜30の範囲内である脂肪族モノカルボン酸又は炭素数10〜30の範囲内である脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物に由来する部位である。
脂肪族は不飽和、飽和、枝型、直鎖型は問わず限定しないが、折り定着性とタッキング抑制の両立の観点から炭素数は10〜20の範囲内の飽和の直鎖型のものが好ましい
上記のような結晶核剤部位は、前記結晶構造を有する部位のうち、どの箇所に結合されていてもよいが、結晶構造を有する部位の結晶化を促進しやすい分子鎖末端に結合されることが好ましい。
(脂肪族モノカルボン酸)
上記脂肪族モノカルボン酸としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、ラウリル酸、アラキジン酸、n−ベヘン酸、n−テトラドコサン酸、n−ヘキサドコサン酸、n−オクタドコサン酸、n−トリアコンタン酸が挙げられる。
(脂肪族モノアルコール)
上記脂肪族モノアルコールとしては、例えばステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、1−オクタデカノール、1−イコサノール、1−ドコサノール、1−テトラコサノール、1−ヘキサコサノール、1−オクタコサノール、1−トリアコンタノールが挙げられる。
前記結晶性樹脂に占める結晶核剤部位の割合は、1〜15質量%の範囲内であることが、タッキング抑制効果及び折り定着性の点で好ましく、3〜9質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記のような結晶性樹脂は、結着樹脂中における含有量が4〜15質量%の範囲内であることが、低温定着性とタッキング抑制の両立の観点から好ましく、7〜12質量%の範囲内であることがより好ましい。
(2.2.5)結晶性樹脂の重量平均分子量
また、本発明における結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw(C))が、下記式(1)を満たすことが好ましく、より好ましくは下記式(2)、特に好ましくは下記式(3)を満たす。
式(1):1000≦Mw(C)≦29000
式(2):1000≦Mw(C)≦20000
式(3):1000≦Mw(C)≦15000
1000≦Mw(C)であると、結晶性樹脂が溶融後、相溶しすぎることがなく、結晶化が進行し、タッキング抑制の点で優れる。また、Mw(C)≦29000であると、結晶性樹脂が溶融時に相溶しやすく、低温定着性の点で優れる。
結晶性樹脂の重量平均分子量の測定法は以下のとおりである。
ゲルバーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、カラムを40℃で安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、試料濃度として1mg/mLに調整した樹脂のTHF試料溶液を約10μL注入して測定する。
試料の分子量測定にあたっては、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、試料の有する分子量分布を単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線を用いて算出する。
検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、10点の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。
なお、結晶性樹脂の重量平均分子量は、下記のようにしてトナー中の結晶性樹脂と離型剤とを分離してから、上記のような測定法により算出することができる。
(2.2.6)結晶性樹脂の分離
以下では、結晶性樹脂として結晶性ポリエステル樹脂である場合を例に説明する。
まず、トナーに対する貧溶媒であるエタノールにトナーを分散させ、結晶性ポリエステル及びワックスの融点を超える温度まで、昇温させる。
このとき、必要に応じて、加圧してもよい。この時点で、融点を超えた結晶性ポリエステル及びワックスが溶融している。
その後、固液分離することにより、トナーから、結晶性ポリエステル及びワックスの混合物を採取できる。
この混合物を、分子量毎に分種することにより、トナーから結晶性ポリエステル及びワックスの分離が可能である。
(2.2.7)結晶性樹脂の酸価
酸価は、1gの試料に含まれる酸の中和に必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmg単位で表したものである。
(2.2.8)結晶性樹脂の酸価の測定方法
結晶性樹脂の酸価は、JIS K0070−1966に準じて下記(1)〜(3)の手順により測定される。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製する。
JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとする。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製する。標定はJIS K0070−1966の記載に従う。
(2)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。
次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とする。
(3)空試験
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行う。
本試験と空試験の滴定結果を下記式(1)に代入して酸価を算出する。
式(1) A=〔(B−C)×f×5.6〕/S
A:酸価(mgKOH/g)
B:空試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
C:本試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
3.着色剤
本発明に係るトナー母体粒子が含有する着色剤としては、公知の無機又は有機着色剤を使用することができる。
着色剤としてはカーボンブラック、磁性粉のほか、各種有機、無機の顔料、染料等が使用できる。着色剤の添加量はトナー粒子に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲である。
4.その他の内添剤及び外添剤
トナー粒子は、上記のほか、必要に応じて荷電制御剤などの内添剤、外添剤等を含有することができる。
5.荷電制御剤
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩等の公知の化合物を用いることができる。
荷電制御剤により、帯電特性に優れたトナーを得ることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部の範囲内とすることができる。
6.外添剤
トナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するため、流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤で処理されていてもよい。
外添剤としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子等の無機ステアリン酸化合物微粒子、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛等の無機チタン酸化合物微粒子等が挙げられる。
これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら無機粒子は、耐熱保管性及び環境安定性の向上の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、光沢処理が行われていることが好ましい。
外添剤の添加量(複数の外添剤を用いる場合はその合計の添加量)は、トナー100質量部に対して0.05〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜3質量部の範囲内であることがより好ましい。
7.トナー粒子の構造
トナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、当該トナー粒子をコア粒子として当該コア粒子とその表面を被覆するシェル層とを備えるコア・シェル構造のような多層構造のトナー粒子であってもよい。
シェル層は、コア粒子の全表面を被覆していなくてもよく、部分的にコア粒子が露出していてもよい。
コア・シェル構造の断面は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)等の公知の観察手段によって、確認することができる。
コア・シェル構造の場合は、コア粒子とシェル層でガラス転移点、融点、硬度等の特性を異ならせることができ、目的に応じたトナー粒子の設計が可能である。
例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤等を含有し、ガラス転移点(Tg)が比較的低いコア粒子の表面に、ガラス転移点(Tg)が比較的高い樹脂を凝集・融着させて、シェル層を形成することができる。シェル層は、非晶性樹脂を含有することが好ましい。
8.トナー粒子の粒径
トナー粒子の平均粒径としては、体積基準のメディアン径(d50)が3〜10μmの範囲内にあることが好ましく、5〜8μmの範囲内にあることがより好ましい。
上記範囲内にあれば、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像であっても高い再現性が得られる。
なお、トナー粒子の平均粒径は、製造時に使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂の組成等によって制御することができる。
トナー粒子の体積基準のメディアン径(d50)の測定には、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフトSoftware V3.51を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いることができる。
具体的には、測定試料(トナー)を、界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を行い、トナー粒子分散液を調製する。
このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。
そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmとし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径を体積基準のメディアン径(d50)として得る。
9.トナー粒子の平均円形度
トナー粒子は、帯電特性の安定性及び低温定着性を高める観点から、平均円形度が0.930〜1.000の範囲内にあることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内にあることがより好ましい。
平均円形度が上記範囲内にあれば、個々のトナー粒子が破砕しにくくなる。
これにより、摩擦帯電付与部材の汚染を抑制してトナーの帯電性を安定させることができるとともに、形成される画像の画質を高めることができる。
トナー粒子の平均円形度は、FPIA−2100(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にて馴染ませ、超音波分散処理を1分間行って分散させる。
その後、FPIA−2100(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で撮影を行う。
HPF検出数が上記の範囲内であれば、再現性のある測定値を得ることができる。撮影した粒子像から、個々のトナー粒子の円形度を下記式(I)に従って算出し、各トナー粒子の円形度を加算して全トナー粒子数で除することにより、平均円形度を得る。
式(I)
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
10.現像剤
本発明の静電潜像現像用トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散した分散型キャリア等用いてもよい。
キャリアの体積基準のメディアン径(d50)としては、20〜100μmの範囲内であることが好ましく、25〜80μmの範囲内であることがより好ましい。
キャリアの体積基準のメディアン径(d50)は、例えば湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置ヘロス(HELOS)(SYMPATEC社製)により測定することができる。
II.静電荷像現像用トナーの製造方法
本発明に係るトナーの製造方法は、少なくとも下記工程(1)及び工程(2)を有するものであれば、特に限定されず、その他の工程には公知の方法を採用でき、例えば、乳化重合凝集法や乳化凝集法を好適に採用できる。
なお、以下の製造方法では、結晶性樹脂としてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を用いた場合の例を説明する。
(1)反応槽中に、前記結晶性ポリエステル重合セグメントの原料となるモノマーと、付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂)ユニットの原料モノマー(ビニル系重合セグメントの原料となるモノマー)と、エステル化触媒と、を混合し、前記原料となるモノマーを重縮合反応させる工程
(2)前記工程(1)において、前記原料となるモノマーを重縮合反応させた後、前記反応槽中に、結晶核剤を投入し、反応させることで結晶核剤部位を形成する工程
<工程(1)>
工程(1)では、反応槽中に、前記結晶性ポリエステル重合セグメントの原料となるモノマーと、付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂)ユニットの原料モノマーと、エステル化触媒と、を混合し、前記原料となるモノマーを重縮合反応させる。
結晶性ポリエステル重合セグメントの原料となるモノマーとしては、上記多価アルコールモノマー、多価カルボン酸モノマーなど、公知のものを好適に使用できる。
(重縮合反応)
原料となるモノマーの重縮合反応、すなわち、結晶性ポリエステル重合セグメントの合成方法は限定されないが、下記(A)〜(C)の方法であることが好ましい。
(A)3価以上の多価カルボン酸又は3価以上の多価アルコールを重合反応させる方法
(B)不飽和ジカルボン酸又は不飽和ジアルコールを付加重合する方法
(C)結晶性ポリエステルと非晶性樹脂ユニットとを化学的に結合したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂による方法
なお、上記(A)、(B)の方法における重合には公知の重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができる。
(エステル化触媒)
エステル化触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ジオクチル酸スズ、酸化ジブチルスズ、2−エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、オルトチタン酸テトラブチル(以下、「Ti(OBu)」ともいう。)、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。中でも、Ti(OBu)を好適に使用することができる。
<工程(2)>
工程(2)では、前記工程(1)において、前記原料となるモノマーを重縮合反応させた後、前記反応槽中に、結晶核剤を投入し、反応させることで結晶核剤部位を形成する。
すなわち、工程(1)において、重縮合反応により、結晶性ポリエステル重合セグメントを得た後、結晶核剤を投入し、結晶性ポリエステル重合セグメントに結晶核剤を反応させる。これにより、結晶性ポリエステル重合セグメントに結晶核剤を化学的に結合させることができ、結晶核剤部位を形成することができる。
この際の反応は、結晶性ポリエステル重合セグメントと結晶核剤が化学的に結合できる反応であればよく、例えば、常圧下で200℃にするなど、加熱によって行うことが挙げられるがこれに限定されない。
工程(1)及び(2)を経て、結晶核剤が化学的に結合した結晶性ポリエステル重合セグメントは、上述のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の合成方法等により、ビニル系重合セグメントが化学的に結合し、結晶性ポリエステル重合セグメントに結晶核剤部位を有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を合成することができる。
(結晶核剤)
結晶核剤とは、上述のように結晶核剤部位を形成できる化合物であればよく、好ましくは、炭素数10〜30の範囲内である脂肪族モノカルボン酸又は炭素数10〜30の範囲内である脂肪族モノアルコールである。
具体的には、ステアリン酸、ラウリル酸、ベヘン酸、トリアコンタン酸、アラキジン酸、アラキジン酸、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコールなどが挙げられる。
<凝集・融着させる工程>
本発明の静電荷像現像用トナーは、上記静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記工程(2)の後に、さらに、少なくとも水系媒体中で前記非晶性樹脂(ビニル系樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂)の微粒子、前記結晶性樹脂(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)の微粒子及び前記着色剤の微粒子と、を凝集し、融着させる工程を有する静電潜像現像用トナーの作製方法によっても好適に作製することができる。
これらの静電潜像現像用トナーの作製方法によれば、先に、多価カルボン酸モノマー、多価アルコールモノマーを反応させてから、結晶核剤部位を導入することとなるため、好適に本発明に係る結晶性ポリエステル樹脂を作製できる。
なお、凝集し、融着する方法としては、例えば、公知の乳化凝集法を好適に採用できる。
(乳化凝集法)
乳化凝集法は、溶媒に溶解した非晶性樹脂や結晶性樹脂(以下、これらをまとめて「結着樹脂」ともいう。)の溶液を貧溶媒に滴下して、結着樹脂の微粒子分散液とし、この結着樹脂の微粒子分散液と着色剤の微粒子分散液及びワックスなどの離型剤分散液とを混合し、所望のトナー粒子の径となるまで、非晶性樹脂の微粒子、結晶性樹脂の微粒子、着色剤の微粒子、離型剤を水系媒体中で凝集させ、さらにこれら微粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。
(水系媒体)
本発明において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体としてイオン交換水などの水のみを使用する。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
[非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕の合成]
下記ビニル樹脂の単量体、非晶性ポリエステル樹脂とビニル樹脂のいずれとも反応する置換基を有する単量体及び重合開始剤の混合液を滴下ロートに入れた。
スチレン 80.0質量部
n−ブチルアクリレート 20.0質量部
アクリル酸 10.0質量部
ジ−t−ブチルパーオキサイド(重合開始剤) 16.0質量部
また、下記非晶性ポリエステル樹脂の単量体を、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を備えた四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 50.2質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 249.8質量部
テレフタル酸 120.1質量部
ドデセニルコハク酸 46.0質量部
撹拌下で、滴下ロートに入れた混合液を四つ口フラスコへ90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の単量体を除去した。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.4質量部投入し、235℃まで昇温して、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間、反応を行った。
次いで200℃まで冷却し、減圧下(20kPa)にて反応を行った後、脱溶剤を行い、非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕を得た。
得られた非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が24000、酸価が18.2mgKOH/gであった。
[非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔A1〕の調製]
得られた非結晶性ポリエステル樹脂〔a1〕108質量部をメチルエチルケトン64質量部に、70℃で30分攪拌し、溶解させた。
次に、この溶解液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.4質量部を添加した。
この溶解液を、撹拌機を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、70℃に温めた水210質量部を70分間にわたって滴下混合した。
滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。
この乳化液の油滴の粒径をレーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(HORIBA製)」にて測定した結果、体積平均粒径は90nmであった。
次いで、この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去し、非結晶性ポリエステル樹脂〔a1〕の微粒子が分散された非結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔A1〕を作製した。
上記粒度分布測定器にて測定した結果、非結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔A1〕中、非結晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積平均粒径は94nmであった。
[結晶性樹脂〔c1〕の合成]
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂:StAc)ユニットの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 40.0質量部
n−ブチルアクリレート 16質量部
アクリル酸 3.5質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 8質量部
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)ユニットの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
・酸:テトラデカン二酸 280質量部
・アルコール:1,4−ブタンジオール 105質量部
次いで、撹拌器、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記モノマーを入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した。
得られた混合液にTi(O−n−Bu)を0.4質量部添加し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次いで、得られた反応液を200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて、上述の測定方法により算出される酸価が核剤部位導入後に20.0mgKOH/gになるよう反応を行った。
次いで、反応槽の圧力を徐々に開放して常圧に戻した後、結晶核剤としてステアリン酸20.3質量部を加え、常圧下にて温度200℃で1.5時間反応させた。
その後、200℃にて反応槽を5kPa以下に減圧して2.5時間反応させ、結晶性樹脂〔c1〕を得た。
結晶性樹脂〔c1〕は、重量平均分子量(Mw)が11,500、酸価が20.0mgKOH/gであった。
[結晶性樹脂微粒子分散液〔C1〕の調製]
下記をメチルエチルケトン102質量部に入れ、75℃で30分攪拌し、溶解させた。
・結晶性樹脂〔c1〕 174.3質量部
次に、この溶解液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.1質量部を添加した。
この溶解液を、撹拌機を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、70℃に温めた水375質量部を70分間にわたって滴下混合した。
滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。
次いで、この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去した後、冷却速度6℃/minで冷却し、結晶性樹脂〔c1〕の微粒子が分散された結晶性樹脂微粒子分散液〔C1〕を作製した。
上記粒度分布測定器にて測定した結果、結晶性樹脂微粒子分散液〔C1〕中、結晶性樹脂微粒子の体積平均粒径は202nmであった。
[着色剤微粒子分散液〔P1〕の調製]
ドデシル硫酸ナトリウム226質量部をイオン交換水1600質量部に添加した溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)420質量部を徐々に添加した。
撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック株式会社製、「クレアミックス」は同社の登録商標)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子分散液〔P1〕を調製した。
分散液中の着色剤粒子は、体積基準のメディアン径が110nmであった。
[ビニル系樹脂微粒子分散液〔S1〕の調製]
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃として、下記単量体の混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン 480.0質量部
n−ブチルアクリレート 250.0質量部
メタクリル酸 68.0質量部
上記混合液の滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより単量体の重合を行い、ビニル系樹脂粒子分散液〔s1〕を調製した。
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、イオン交換水1100質量部と前記第1段重合により調製したビニル系樹脂粒子分散液〔s1〕を固形分換算で55質量部を仕込み、87℃に加熱した。
その後、下記単量体、連鎖移動剤及び離型剤を85℃にて溶解させた混合液を循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(エム・テクニック株式会社製)により、10分間の混合分散処理を行い、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
この分散液を上記5Lの反応容器に追加し、過硫酸カリウム5.4質量部をイオン交換水103質量部に溶解させた重合開始剤の溶液を添加し、この系を87℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行って、ビニル系樹脂粒子分散液〔s1〕′を調製した。
スチレン(St) 256.5質量部
2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA) 95.3質量部
メタクリル酸(MAA) 38.2質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート(連鎖移動剤)4.0質量部
離型剤1:HNP0190(日本精蝋社製) 31.0質量部
(第3段重合)
上記第2段重合により得られたビニル系樹脂粒子分散液〔s1〕′にさらに過硫酸カリウム7.3質量部をイオン交換水157.9質量部に溶解させた溶液を添加した。
さらに、84℃の温度条件下で、下記単量体及び連鎖移動剤の混合液を90分かけて滴下した。
スチレン(St) 370.0質量部
nーブチルアクリレート(BA) 165.0質量部
メタクリル酸(MAA) 40.0質量部
メタクリル酸メチル(MMA) 47.2質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8.6質量部
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル系樹脂微粒子分散液〔S1〕を得た。
[トナー〔1〕の製造、及び現像剤〔1〕の製造]
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、480質量部(固形分換算)のビニル系樹脂微粒子分散液〔S1〕及び350質量部のイオン交換水を投入した。
室温下(25℃)で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
さらに、36.4質量部(固形分換算)の着色剤微粒子分散液を投入し、80質量部の50質量%塩化マグネシウム水溶液を、撹拌下、30℃で10分間かけて添加した。
得られた分散液を5分間静置した後、60分間かけて80℃まで昇温し、80℃に到達後、60質量部(固形分換算)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔C1〕を20分かけて投入し、粒子径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整して、コールターマルチサイザー3(コールター・ベックマン社製)により測定した体積基準のメディアン径が6.0μmになるまで成長させた。
次いで、非晶性ポリエステル樹脂分散液〔A1〕60質量部(固形分換算)を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム80質量部をイオン交換水300質量部に溶解させた水溶液を添加して、粒子径の成長を停止させた。
次いで、80℃の状態で撹拌し、トナー粒子の平均円形度が0.970になるまで粒子の融着を進行させ、その後0.5℃/分以上の降温速度で冷却し30℃以下まで液温を下げた。
次いで、固液分離を行い、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し、固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した。
洗浄後、35℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子を得た。
得られたトナー母体粒子100質量部に、疎水性シリカ粒子(個数平均一次粒径:12nm、疎水化度:68)0.6質量部、疎水性酸化チタン粒子(個数平均一次粒径:20nm、疎水化度:63)1.0質量部及びゾルゲルシリカ(数平均一次粒子径=110nm、)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)により回転翼周速35mm/秒、32℃で20分間混合した。
混合後、45μmの目開きのふるいを用いて粗大粒子を除去し、トナー〔1〕を得た。
トナー〔1〕と、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒径32μmのフェライトキャリアとを、トナー粒子濃度が6質量%となるように添加して混合した。
こうして、トナー〔1〕を含有する二成分現像剤である現像剤〔1〕を製造した。
[ビニル系樹脂微粒子分散液〔S2〕〜〔S5〕の調製]
ビニル系樹脂微粒子分散液の調製例〔S1〕において、第2段重合における離型剤の種類を表Iに記載したとおりに変更した以外は同様にして、ビニル系樹脂微粒子分散液〔S2〕〜〔S5〕を得た。
Figure 2021148895
[結晶性樹脂〔c2〕〜〔c6〕、〔c8〕〜〔c9〕、及び〔c11〕〜〔c14〕の合成]
結晶性樹脂の合成例〔c1〕において、核剤部位の種類と量を表IIに記載したとおりに変更した以外は同様にして、結晶性樹脂〔c2〕〜〔c6〕、〔c8〕〜〔c9〕、及び〔c11〕〜〔c14〕を得た。
結晶性樹脂〔c2〕〜〔c6〕、〔c8〕〜〔c9〕、及び〔c11〕〜〔c14〕の重量平均分子量(Mw)は表IIに示すとおりであった。
Figure 2021148895
[結晶性樹脂〔c7〕の合成]
攪拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に下記モノマーを入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した。
・酸:テトラデカン二酸 280質量部
・アルコール:1,4−ブタンジオール 105質量部
得られた混合液にTi(O−n−Bu)を0.4質量部添加し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次いで、得られた反応液を200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて、上述の測定方法により算出される酸価が核剤部位導入後に21.4mgKOH/gになるよう反応を行った。
次いで、反応槽の圧力を徐々に開放して常圧に戻した後、結晶核剤としてステアリン酸20.3質量部を加え、常圧下にて温度200℃で1.5時間反応させた。
その後、200℃にて反応槽を5kPa以下に減圧して2.5時間反応させ、結晶性樹脂〔c7〕を得た。結晶性樹脂〔c7〕は、重量平均分子量(Mw)が10,800、酸価が21.4mgKOH/gであった。
[結晶性樹脂〔c10〕の合成]
撹拌機及び温度計を備えた反応装置に、イソフォロンジイソシアネート1000質量部、1,4−アジペート(1,4−ブタンジオールとアジピン酸とからなるポリエステルジオール)830質量部、結晶核剤としてステアリン酸96.3質量部、メチルエチルケトン250質量部を窒素を導入しながら投入した。
その後、80℃で6時間ウレタン化反応させた。次に、撹拌しながらイオン交換水を2128質量部加え、その後反応系を減圧にして脱溶剤し、結晶性樹脂微粒子分散液〔c10〕を得た。
[結晶性樹脂〔c15〕の合成]
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂:StAc)ユニットの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 40.0質量部
n−ブチルアクリレート 16質量部
アクリル酸 3.5質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 8質量部
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)ユニットの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
・酸:テトラデカン二酸 280質量部
・アルコール:1,4−ブタンジオール 105質量部
次いで、撹拌器、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記モノマーを入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した。
得られた混合液にTi(O−n−Bu)を0.4質量部添加し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次いで、得られた反応液を200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて、上述の測定方法により算出される酸価が20.3mgKOH/gになるよう反応を行い、結晶性樹脂〔c15〕を得た。
結晶性樹脂〔c15〕は、重量平均分子量(Mw)が17,500、酸価が20.3mgKOH/gであった。
[結晶性樹脂微粒子分散液〔C2〕〜〔C15〕の調製]
結晶性樹脂微粒子分散液〔C1〕の調製において、結晶性樹脂〔c1〕をそれぞれ結晶性樹脂〔c2〕〜〔c15〕に変更した以外は同様にして、結晶性樹脂微粒子分散液〔C2〕〜〔C15〕を得た。
[トナー〔2〕〜〔24〕の製造、及び現像剤〔2〕〜〔24〕の製造]
トナー〔1〕の製造においてビニル系樹脂微粒子分散液、非晶性ポリエステル、結晶性ポリエステルの種類と量をそれぞれ表IIIに記載のものに変更したことの他は同様にして、トナー〔2〕〜〔24〕を得た。
Figure 2021148895
また、得られたトナー粒子に対し、トナー〔1〕と同様にして現像剤〔2〕〜〔24〕を得た。
[評価]
表IIIに示されている評価結果は、下記の方法及び評価基準に従って行って得たものである。
<低温定着性>
複合機「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)の定着装置を、定着上ベルト及び定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、二成分現像剤を順次装填した。
上記装置について、定着温度、トナー付着量、システム速度を自由に設定できるように改造した。
常温・常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、A4サイズの上質紙「NPI上質(127.9g/m)」(日本製紙社製)上で付着量を11.3g/mとなるように設定した。
その後、100mm×100mmサイズの画像を定着させる定着実験を、設定される定着温度を110℃から2℃刻みで上げるように変更しながら180℃まで繰り返し行った。
定着オフセットによる画像汚れが目視で確認されない最低の定着温度を最低定着温度(U.O.回避温度)とした。
(評価基準)
◎:最低定着温度が135℃未満(低温定着性に優れる優良なトナー)
○:最低定着温度が135℃以上140℃未満(実用上問題ないレベル)
×:最低定着温度が140℃以上(目標とする通紙速度では十分定着しておらず、実用上問題があるレベル)
<タッキング試験>
複合機「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)の定着装置を、定着上ベルト及び定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、二成分現像剤を順次装填した。
上記装置について、常温・常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、A4サイズの塗工紙「OKトップコート+(157.0g/m)」(王子製紙社製)上で付着量が10.2g/mのベタ画像を出力する定着実験を、定着温度180℃にて800枚行った。
紙表面温度を記録するため、排紙された画像の内、1、100、200、300、400、500、600、700枚目の画像に熱電対「モールド型表面センサー:MF−O−K」(東亜機器)を紙中心部に張り付けた。
定着された画像が排紙トレイに800枚すべて積載された後に、紙温度が冷えるまで8時間放置した。紙が排紙されてから冷えるまでの間に到達した最高温度をその紙における測定温度とした。
8時間放置した後に重ね合った画像同士がどれだけくっついているか1、100、200、300、400、500、600、700枚目の画像に対して評価を行った。
以下の評価基準に従ってOKレベルとなった画像における測定温度をタッキング解消温度とした。
なお測定温度は排紙エアーの風量を変更することで制御することができ、1、100、200、300、400、500、600、700枚目の画像全てにおいてNGとなった場合は排紙エアーの風量を大きくし、再度同様の実験をOKレベルの画像が出るまで繰り返した。
(評価基準)
OK:簡単に手で剥がせる。(剥離音なし)もしくは剥がせるが剥離音がする。
NG:剥がした後にトナー画像面が荒れている。
タッキング解消温度は下記の評価基準で判断し、◎、〇を合格レベルとする。
より高温で排紙されてもタッキングが発生しないことが望ましい。
(評価基準)
◎:60℃以上
○:56℃以上60℃未満
×:56℃未満
<ワックス付着>
市販のカラー複合機AccurioPress C3080(コニカミノルタ社製)において、定着装置を、定着上ベルトの表面温度を140〜220℃の範囲で、定着下ローラーの表面温度を120〜200℃の範囲で変更することができるように改造した。
この改造機に各現像剤を順次装填して、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)環境下において、A4(坪量157g/m)グロスコート紙に、トナー付着量が8.0g/mのベタ画像を形成し、定着処理した。
定着処理時の定着速度は460mm/sec、定着温度(定着上ベルトの表面温度)はアンダーオフセット温度+35℃とした。
100枚プリント後の搬送ローラーへのワックス付着状態を、目視により10段階でランク評価し、下記の評価基準で◎、〇を合格レベルと判断した。
(評価基準)
◎:ランク10〜9 ワックス付着が全く確認されない
〇:ランク8〜7 ワックス付着が若干確認されるが、品質には問題ないレベル
×:ランク6〜1 ワックス付着が確認され、実用できないレベル
表IIIに示した結果から明らかなように、本発明のトナーは比較例に対し、総合的に性能が優れていることがわかる。

Claims (12)

  1. 少なくとも離型剤と結着樹脂とを含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
    前記離型剤として少なくとも炭化水素ワックスを含有し、
    前記結着樹脂として少なくともビニル系樹脂と結晶性樹脂を含有し、
    前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有量が50質量%以上であり、かつ、
    前記結晶性樹脂が結晶構造を有する部位と結晶核剤部位を有する
    ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  2. 前記結晶性樹脂中における前記結晶核剤部位の含有率が1〜15質量%の範囲内であり、かつ、
    前記結晶核剤部位が少なくとも炭素数10〜30である脂肪族モノカルボン酸又は炭素数10〜30である脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する部位であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 前記結着樹脂中における前記ビニル系樹脂の含有率が、60質量%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 前記結着樹脂中における前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステルであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
  5. 前記結着樹脂中における前記結晶性樹脂の含有率が、4〜15質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
  6. 前記結晶性樹脂中に占める前記結晶核剤部の割合が、3〜9質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
  7. 前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル重合セグメントと他種の樹脂の重合セグメントとが結合してなるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
  8. 前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
    1000≦Mw(C)≦29000…(1)
  9. 前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
    1000≦Mw(C)≦20000…(2)
  10. 前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
    1000≦Mw(C)≦15000…(3)
  11. 前記離型剤として用いる炭化水素ワックスの融点が、80〜92℃の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
  12. 前記離型剤として用いる炭化水素ワックスの融点が、80〜88℃の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
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