JP2019087832A - 双方向型方向性結合器 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単に双方向性を実現できる方向性結合器を提供する。【解決手段】双方向型方向性結合器1は、互いに等価な回路構成を有する個別の電子部品である第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bを備えている。第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は、第1の端子11と、第2の端子12と、第3の端子13と、第4の端子14と、第1の端子11と第2の端子12を接続する主線路10と、第3の端子13と第4の端子14を接続する副線路20を備えている。副線路20は、主線路10に対して電磁界結合する第1および第2の結合線路部20A,20Bと、それらの間に設けられた整合部30を含んでいる。第2の個別方向性結合器1Bの第2の端子12は、第1の個別方向性結合器1Aの第2の端子12に電気的に接続されている。【選択図】図1
Description
本発明は、双方向性を有する双方向型方向性結合器に関する。
方向性結合器は、例えば、携帯電話機、無線LAN通信機器等の無線通信機器の送受信回路において、送受信信号のレベルを検出するために用いられている。
従来の方向性結合器としては、以下のような構成のものが知られている。この方向性結合器は、入力ポートと、出力ポートと、結合ポートと、終端ポートと、入力ポートと出力ポートを接続する主線路と、結合ポートと終端ポートを接続する副線路を備えている。副線路は、主線路に対して電磁界結合する結合線路部を含んでいる。終端ポートは、例えば50Ωの抵抗値を有する終端抵抗を介して接地されている。入力ポートには高周波信号が入力され、この高周波信号は出力ポートから出力される。結合ポートからは、入力ポートに入力された高周波信号の電力に応じた電力を有する結合信号が出力される。
方向性結合器の特性を表す主要なパラメータとしては、結合度およびアイソレーションがある。以下、これらの定義について説明する。まず、入力ポートに電力P1の高周波信号が入力された場合に、結合ポートから出力される信号の電力をP3とする。また、出力ポートに電力P02の高周波信号が入力された場合に、結合ポートから出力される信号の電力をP03とする。また、結合度およびアイソレーションを、それぞれ記号C、Iで表す。これらは、以下の式で定義される。なお、本出願において、結合度が大きいというのは、結合度を−c(dB)と表したときに、cの値が小さいことである。
C=10log(P3/P1)[dB]
I=10log(P03/P02)[dB]
I=10log(P03/P02)[dB]
ところで、無線通信機器に用いられる方向性結合器では、入力ポートと出力ポートを逆にし、結合ポートと終端ポートを逆にして使用しても、これらを逆にする前と同様な特性が得られること(以下、双方向性と言う。)が求められる場合がある。この双方向性が求められる場合の例としては、送信信号をアンテナに供給する送信系回路に設けられた方向性結合器によって、送信信号のレベルを検出すると共に、送信信号がアンテナで反射して生じた反射波信号のレベルを検出する場合が挙げられる。方向性結合器によって反射波信号のレベルを検出する理由は、この反射波信号のレベルが十分に小さくなるように、送信回路とアンテナとの間に設けられるインピーダンス整合素子の特性を調整するためである。この例では、方向性結合器によって送信信号のレベルを検出する際には、送信信号は入力ポートに入力されて出力ポートから出力され、結合ポートから送信信号のレベルに応じた電力を有する信号が出力される。一方、方向性結合器によって反射波信号のレベルを検出する際には、反射波信号は出力ポートに入力されて入力ポートから出力され、終端ポートから反射波信号のレベルに応じた電力を有する信号が出力される。
特許文献1には、双方向性を有する方向性結合器が記載されている。特許文献1に記載された方向性結合器は、第1のポートと、第2のポートと、第3のポートと、第4のポートと、第1のポートと第2のポートを接続する主線路と、第3のポートと第4のポートを接続する副線路とを備えている。副線路は、それぞれ主線路に対して電磁界結合する線路からなる第1の副線路部、第2の副線路部および第3の副線路部と、第1の整合部と、第2の整合部とを含んでいる。第1の整合部は、第1の副線路部と第2の副線路部の間に設けられている。第2の整合部は、第2の副線路部と第3の副線路部の間に設けられている。
従来、双方向性を有する方向性結合器を実現するには、回路の設計に多くの労力が必要になるという問題点があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単に双方向性を実現できる双方向型方向性結合器を提供することにある。
本発明の双方向型方向性結合器は、互いに等価な回路構成を有する個別の電子部品である第1の個別方向性結合器と第2の個別方向性結合器を備えている。第1および第2の個別方向性結合器の各々は、第1の端子と、第2の端子と、第3の端子と、第4の端子と、第1の端子と第2の端子を接続する主線路と、第3の端子と第4の端子を接続する副線路とを備えている。副線路は、主線路に対して電磁界結合する少なくとも1つの結合線路部を含んでいる。
第1および第2の個別方向性結合器の各々は、第1の端子を入力ポートとし、第2の端子を出力ポートとし、第3の端子を結合ポートとし、第4の端子を終端ポートとすることによって方向性結合器として機能する。
第2の個別方向性結合器の第2の端子は、第1の個別方向性結合器の第2の端子に電気的に接続されている。双方向型方向性結合器は、第1の個別方向性結合器の第1の端子を入力ポートとし、第2の個別方向性結合器の第1の端子を出力ポートとし、第1の個別方向性結合器の第3の端子を結合ポートとした第1の態様と、第2の個別方向性結合器の第1の端子を入力ポートとし、第1の個別方向性結合器の第1の端子を出力ポートとし、第2の個別方向性結合器の第3の端子を結合ポートとした第2の態様のいずれにおいても方向性結合器として機能する。
本発明の双方向型方向性結合器において、副線路は、少なくとも1つの結合線路部として第1の結合線路部と第2の結合線路部を含んでいてもよい。この場合、副線路は、更に、回路構成上、第1の結合線路部と第2の結合線路部の間に設けられた整合部を含んでいてもよい。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。整合部は、そこを通過する信号に対して位相の変化を生じさせる。第1の結合線路部と第2の結合線路部は、主線路に対する結合の強さが互いに異なっていてもよい。
また、本発明の双方向型方向性結合器において、第1および第2の個別方向性結合器は第1の平面上に配置されていてもよい。この場合、第2の個別方向性結合器の第1ないし第4の端子は、第1および第2の個別方向性結合器の中間に位置して第1の平面に垂直な第2の平面に関して、第1の個別方向性結合器の第1ないし第4の端子と面対称の位置関係にあってもよい。
また、第1および第2の個別方向性結合器の各々は、更に、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体を備えていてもよい。主線路と副線路は、複数の導体層を用いて構成されている。この場合、第2の個別方向性結合器の積層体における複数の導体層は、第2の平面に関して、第1の個別方向性結合器の積層体における複数の導体層と面対称の構造を有していてもよい。
また、本発明の双方向型方向性結合器は、更に、第1の個別方向性結合器の第4の端子とグランドとを接続する第1の抵抗器と、第2の個別方向性結合器の第4の端子とグランドとを接続する第2の抵抗器とを備えていてもよい。
また、本発明の双方向型方向性結合器において、第2の個別方向性結合器の第4の端子は、第1の個別方向性結合器の第4の端子に電気的に接続されていてもよい。この場合、双方向型方向性結合器は、更に、第1の個別方向性結合器の第4の端子と第2の個別方向性結合器の第4の端子とを電気的に接続する遅延線路を備えていてもよい。
本発明の双方向型方向性結合器では、第1の態様における回路構成と第2の態様における回路構成は、互いに等価である。本発明では、第1および第2の個別方向性結合器の各々は双方向性を有していなくても、双方向型方向性結合器は双方向性を有する。従って、本発明の双方向型方向性結合器によれば、簡単に双方向性を実現することができるという効果を奏する。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る双方向型方向性結合器の回路構成について説明する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る双方向型方向性結合器の回路構成について説明する。
図1に示したように、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1は、互いに等価な回路構成を有する個別の電子部品である第1の個別方向性結合器1Aと第2の個別方向性結合器1Bを備えている。第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は、第1の端子11と、第2の端子12と、第3の端子13と、第4の端子14と、第1の端子11と第2の端子12を接続する主線路10と、第3の端子13と第4の端子14を接続する副線路20とを備えている。
副線路20は、主線路10に対して電磁界結合する少なくとも1つの結合線路部を含んでいる。本実施の形態では特に、副線路20は、少なくとも1つの結合線路部として、第1の結合線路部20Aと第2の結合線路部20Bを含んでいる。副線路20は、更に、回路構成上、第1の結合線路部20Aと第2の結合線路部20Bの間に設けられた整合部30を含んでいる。整合部30は、そこを通過する信号に対して位相の変化を生じさせる。第1の結合線路部20Aと第2の結合線路部20Bは、主線路10に対する結合の強さが互いに異なっていてもよい。
第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は、第1の端子11を入力ポートとし、第2の端子12を出力ポートとし、第3の端子13を結合ポートとし、第4の端子14を終端ポートとすることによって方向性結合器として機能する。
第2の個別方向性結合器1Bの第2の端子12は、第1の個別方向性結合器1Aの第2の端子12に電気的に接続されている。
双方向型方向性結合器1は、更に、第1の個別方向性結合器1Aの第4の端子14とグランドとを接続する第1の抵抗器15Aと、第2の個別方向性結合器1Bの第4の端子14とグランドとを接続する第2の抵抗器15Bとを備えている。第1および第2の抵抗器15A,15Bの各々の抵抗値は、例えば50Ωである。
以下、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々の回路構成について詳しく説明する。以下の説明は、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bのいずれにも当てはまる。
第1の結合線路部20Aは、互いに反対側に位置する第1の端部20A1および第2の端部20A2を有している。第2の結合線路部20Bは、互いに反対側に位置する第1の端部20B1および第2の端部20B2を有している。第1の結合線路部20Aの第1の端部20A1は、第3の端子13に接続されている。第2の結合線路部20Bの第1の端部20B1は、第4の端子14に接続されている。
整合部30は、第1の結合線路部20Aの第2の端部20A2と第2の結合線路部20Bの第2の端部20B2とを接続する第1の経路31と、第1の経路31とグランドとを接続する第2の経路32とを有している。第1の経路31は、第1のインダクタL1を含んでいる。
第2の経路32は、直列に接続された第1のキャパシタC1と第2のインダクタL2とを含んでいる。第2のインダクタL2は、回路構成上、第1の経路31に最も近い第1の端部L2aと、回路構成上、グランドに最も近い第2の端部L2bとを有している。第1のキャパシタC1は、第1のインダクタL1の一端と第2のインダクタL2の第1の端部L2aとの間に設けられている。本実施の形態では、第2の経路32は、更に、第1のインダクタL1の他端と第2のインダクタL2の第1の端部L2aとの間に設けられた第2のキャパシタC2を有している。第2のインダクタL2は、0.1nH以上のインダクタンスを有している。第2のインダクタL2のインダクタンスは、7nH以下であることが好ましい。
主線路10は、第1の結合線路部20Aと電磁界結合する第1の部分10Aと、第2の結合線路部20Bと電磁界結合する第2の部分10Bとを含んでいる。ここで、第1の部分10Aと第1の結合線路部20Aとを合わせて第1の結合部40Aと言う。また、第2の部分10Bと第2の結合線路部20Bとを合わせて第2の結合部40Bと言う。
また、第1および第2の結合部40A,40Bの結合の強さを、それぞれ以下のように定義する。第1の結合部40Aの結合の強さは、主線路10に対する第1の結合線路部20Aの結合の強さである。第1の結合部40Aの結合の強さは、第1の結合部40Aの単独の結合度で表すことができる。第1の結合部40Aの単独の結合度が大きいほど、第1の結合部40Aの結合の強さが大きい。
第2の結合部40Bの結合の強さは、主線路10に対する第2の結合線路部20Bの結合の強さである。第2の結合部40Bの結合の強さは、第2の結合部40Bの単独の結合度で表すことができる。第2の結合部40Bの単独の結合度が大きいほど、第2の結合部40Bの結合の強さが大きい。
本実施の形態では、第2の結合線路部20Bは、第1の結合線路部20Aに比べて、主線路10に対する結合の強さが大きい。すなわち、第2の結合部40Bの単独の結合度は、第1の結合部40Aの単独の結合度よりも大きい。
整合部30は、第4の端子14が、負荷である終端抵抗を介して接地され、終端抵抗の抵抗値(例えば50Ω)と等しい出力インピーダンスを有する信号源が第3の端子13に接続された場合を想定して、信号源と負荷との間のインピーダンス整合を行う回路である。整合部30は、上記の場合を想定して、双方向型方向性結合器1の使用周波数帯域において、第3の端子13から第4の端子14側を見たときの反射係数の絶対値が0またはその近傍の値になるように設計される。
次に、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々の単独の作用について説明する。第1の端子11に高周波信号が入力されると、この高周波信号は第2の端子12から出力される。第3の端子13からは、第1の端子11に入力された高周波信号の電力に応じた電力を有する結合信号が出力される。
第1の端子11と第3の端子13の間には、第1の結合部40Aを経由する第1の信号経路と、第2の結合部40Bおよび整合部30を経由する第2の信号経路とが形成される。第1の端子11に高周波信号が入力されたとき、第3の端子13から出力される結合信号は、第1の信号経路を通過した信号と第2の信号経路を通過した信号が合成されて得られる信号である。第1の信号経路を通過した信号と第2の信号経路を通過した信号との間には位相差が生じる。個別方向性結合器1A,1Bの各々の結合度は、第1の結合部40Aと第2の結合部40Bのそれぞれ単独の結合度と、第1の信号経路を通過した信号と第2の信号経路を通過した信号の位相差とに依存する。
一方、第2の端子12と第3の端子13の間には、第1の結合部40Aを経由する第3の信号経路と、第2の結合部40Bおよび整合部30を経由する第4の信号経路とが形成される。個別方向性結合器1A,1Bの各々のアイソレーションは、第1の結合部40Aと第2の結合部40Bのそれぞれ単独の結合度と、第3の信号経路を通過した信号と第4の信号経路を通過した信号の位相差とに依存する。
第1の結合部40A、第2の結合部40Bおよび整合部30は、高周波信号の周波数の変化に伴う個別方向性結合器1A,1Bの各々の結合度の変化を抑制する機能を有する。以下、これについて詳しく説明する。
第1の結合部40Aと第2の結合部40Bのそれぞれ単独の結合度は、いずれも、高周波信号の周波数が高くなるほど大きくなる。この場合、第1の信号経路を通過した信号と第2の信号経路を通過した信号の位相差を一定として考えると、高周波信号の周波数が高くなるほど、結合信号の電力は増加する。
一方、第1の信号経路を通過した信号の電力と第2の信号経路を通過した信号の電力をそれぞれ一定値として考えると、第1の信号経路を通過した信号と第2の信号経路を通過した信号の位相差が0°から180°の範囲内で増加すると、結合信号の電力は減少する。
整合部30を通過する際の信号の位相の変化量は、信号の周波数によって変化する。そのため、第1の信号経路を通過した信号と第2の信号経路を通過した信号の位相差は、第1の端子11に入力される高周波信号の周波数によって変化する。そこで、双方向型方向性結合器1の使用周波数帯域において、高周波信号の周波数の増加に伴って上記位相差が0°から180°の範囲内で増加するように、整合部30を設計することにより、高周波信号の周波数の増加に伴う結合信号の電力の変化、すなわち個別方向性結合器1A,1Bの各々の結合度の変化を抑制することができる。これにより、個別方向性結合器1A,1Bの各々の使用周波数帯域を広くすることができる。
次に、双方向型方向性結合器1の作用について説明する。双方向型方向性結合器1は、第1の個別方向性結合器1Aの第1の端子11を入力ポートとし、第2の個別方向性結合器1Bの第1の端子11を出力ポートとし、第1の個別方向性結合器1Aの第3の端子13を結合ポートとした第1の態様と、第2の個別方向性結合器1Bの第1の端子11を入力ポートとし、第1の個別方向性結合器1Aの第1の端子11を出力ポートとし、第2の個別方向性結合器1Bの第3の端子13を結合ポートとした第2の態様のいずれにおいても方向性結合器として機能する。第1の態様では、第2の個別方向性結合器1Bの第3の端子13が、例えば50Ωの抵抗値を有する終端抵抗を介して接地される。第2の態様では、第1の個別方向性結合器1Aの第3の端子13が、例えば50Ωの抵抗値を有する終端抵抗を介して接地される。
第1の態様では、第1の個別方向性結合器1Aの第1の端子11に高周波信号が入力され、この高周波信号は、第1の個別方向性結合器1Aの主線路10と第2の個別方向性結合器1Bの主線路10とを経由して、第2の個別方向性結合器1Bの第1の端子11から出力される。第1の個別方向性結合器1Aの第3の端子13からは、第1の個別方向性結合器1Aの第1の端子11に入力された高周波信号の電力に応じた電力を有する結合信号が出力される。この結合信号は、第1の個別方向性結合器1Aにおいて第1の信号経路を通過した信号と第2の信号経路を通過した信号が合成されて得られる信号である。
第2の態様では、第2の個別方向性結合器1Bの第1の端子11に高周波信号が入力され、この高周波信号は、第2の個別方向性結合器1Bの主線路10と第1の個別方向性結合器1Aの主線路10とを経由して、第1の個別方向性結合器1Aの第1の端子11から出力される。第2の個別方向性結合器1Bの第3の端子13からは、第2の個別方向性結合器1Bの第1の端子11に入力された高周波信号の電力に応じた電力を有する結合信号が出力される。この結合信号は、第2の個別方向性結合器1Bにおいて第1の信号経路を通過した信号と第2の信号経路を通過した信号が合成されて得られる信号である。
ここで、図2を参照して、第1および第2の態様で使用される場合の双方向型方向性結合器1の使用例について説明する。図2は、双方向型方向性結合器1の使用例を示す回路図である。図2は、双方向型方向性結合器1を含む送信系回路を示している。図2に示した送信系回路は、双方向型方向性結合器1の他に、電力増幅器2と、自動出力制御回路(以下、APC回路と言う。)3と、インピーダンス整合素子5とを備えている。
電力増幅器2は、入力端と出力端とゲイン制御端とを有している。電力増幅器2の入力端には、高周波信号である送信信号が入力されるようになっている。電力増幅器2の出力端は、個別方向性結合器1Aの第1の端子11に接続されている。
APC回路3は、入力端と出力端とを有している。APC回路3の入力端は、個別方向性結合器1Aの第3の端子13に接続されている。APC回路3の出力端は、電力増幅器2のゲイン制御端に接続されている。
個別方向性結合器1Bの第2の端子12は、インピーダンス整合素子5を介してアンテナ4に接続されている。インピーダンス整合素子5は、送信信号がアンテナ4で反射して生じた反射波信号のレベルを十分に小さくするために、送信系回路とアンテナ4との間のインピーダンス整合を行う素子である。
次に、図2に示した送信系回路における双方向型方向性結合器1の第1の態様について説明する。第1の態様では、電力増幅器2によって増幅された送信信号は、個別方向性結合器1Aの第1の端子11に入力されて、第1の個別方向性結合器1Aの主線路10と第2の個別方向性結合器1Bの主線路10とを経由して、第2の個別方向性結合器1Bの第1の端子11から出力される。第1の個別方向性結合器1Aの第3の端子13からは、第1の個別方向性結合器1Aの第1の端子11に入力された送信信号の電力に応じた電力を有する結合信号が出力される。第2の個別方向性結合器1Bの第1の端子11から出力された送信信号は、インピーダンス整合素子5を経て、アンテナ4から発信される。結合信号は、APC回路3に入力される。APC回路3は、結合信号のレベルに応じて、電力増幅器2の出力信号のレベルがほぼ一定になるように、電力増幅器2のゲインを制御する。
次に、図2に示した送信系回路における双方向型方向性結合器1の第2の態様について説明する。第2の態様における双方向型方向性結合器1は、送信信号がアンテナ4で反射して生じた反射波信号のレベルを検出するために用いられる。第2の態様では、反射波信号が、双方向型方向性結合器1に入力される高周波信号である。反射波信号は、第2の個別方向性結合器1Bの第1の端子11に入力されて、第2の個別方向性結合器1Bの主線路10と第1の個別方向性結合器1Aの主線路10とを経由して、第1の個別方向性結合器1Aの第1の端子11から出力される。第2の個別方向性結合器1Bの第3の端子13からは、反射波信号の電力に応じた電力を有する結合信号が出力される。そして、この結合信号のレベルが、第2の個別方向性結合器1Bの第3の端子13に接続された図示しない電力検出器によって検出される。この結合信号のレベルの情報は、反射波信号のレベルが十分に小さくなるようにインピーダンス整合素子5の特性を調整するために利用される。
次に、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの構造と配置の一例について説明する。図3は、双方向型方向性結合器1の斜視図である。図3に示したように、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bは、実装基板等の被実装体101の上面101a上に、並べて配置されている。上面101aは、本発明における第1の平面に対応する。
第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は、第1ないし第4の端子11〜14、主線路10および副線路20を一体化するための積層体50を備えている。後で詳しく説明するが、積層体50は、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含んでいる。主線路10と副線路20は、複数の導体層を用いて構成されている。
積層体50は、外周部を有する直方体形状をなしている。積層体50の外周部は、上面50Aと、底面50Bと、4つの側面50C〜50Fとを含んでいる。上面50Aと底面50Bは互いに反対側を向き、側面50C,50Dも互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C〜50Fは、上面50Aおよび底面50Bに対して垂直になっている。積層体50において、上面50Aおよび底面50Bに垂直な方向が、複数の誘電体層および複数の導体層の積層方向である。
第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は、第1ないし第4の端子11〜14と、2つのグランド端子115,116を備えている。グランド端子115,116は、グランドに接続される。
端子11,12,115は、上面50Aから側面50Cを経由して底面50Bにかけて配置されている。端子13,14,116は、上面50Aから側面50Dを経由して底面50Bにかけて配置されている。
図3に示した例では、第2の個別方向性結合器1Bの端子11,12,13,14,115,116は、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの中間に位置して被実装体101の上面101aに垂直な第2の平面102に関して、第1の個別方向性結合器1Aの端子11,12,13,14,115,116と面対称の位置関係にある。また、個別方向性結合器1A,1Bは、第2の端子12同士が接近するように配置されている。これにより、個別方向性結合器1A,1Bの第2の端子12同士を容易に電気的に接続することができる。個別方向性結合器1A,1Bの第2の端子12同士の接続は、例えば、被実装体101の上面101aに形成された図示しない導体層を用いて行われる。
次に、図4ないし図10を参照して、積層体50について詳しく説明する。図4は、図3に示した第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bのそれぞれの積層体50の内部を示す斜視図である。図5は、図3に示した第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bのそれぞれの積層体50の内部の一部を示す斜視図である。
各積層体50は、積層された19層の誘電体層を有している。以下、この19層の誘電体層を、上から順に1層目ないし19層目の誘電体層と呼ぶ。図6ないし図10は、第1の個別方向性結合器1Aの積層体50の1層目ないし19層目の誘電体層のそれぞれの上面を示している。図6において(a)〜(d)は、それぞれ、1層目ないし4層目の誘電体層の上面を示している。図7において(a)〜(d)は、それぞれ、5層目ないし8層目の誘電体層の上面を示している。図8において(a)〜(d)は、それぞれ、9層目ないし12層目の誘電体層の上面を示している。図9において(a)〜(d)は、それぞれ、13層目ないし16層目の誘電体層の上面を示している。図10において(a)〜(c)は、それぞれ、17層目ないし19層目の誘電体層の上面を示している。
図6(a)に示したように、1層目の誘電体層51の上面には、マークとして用いられる導体層511が形成されている。図6(b)に示したように、2層目の誘電体層52の上面には、導体層は形成されていない。
図6(c)に示したように、3層目の誘電体層53の上面には、キャパシタC1,C2の一部を構成する導体層531が形成されている。また、誘電体層53には、導体層531に接続されたスルーホール53T1が形成されている。
図6(d)に示したように、4層目の誘電体層54の上面には、キャパシタC1の他の一部を構成する導体層541と、キャパシタC2の他の一部を構成する導体層542とが形成されている。また、誘電体層54には、図6(c)に示したスルーホール53T1に接続されたスルーホール54T1と、導体層541に接続されたスルーホール54T2と、導体層542に接続されたスルーホール54T3とが形成されている。
図7(a)に示したように、5層目の誘電体層55には、スルーホール55T1,55T2,55T3が形成されている。スルーホール55T1,55T2,55T3には、それぞれ図6(d)に示したスルーホール54T1,54T2,54T3が接続されている。
図7(b)に示したように、6層目の誘電体層56の上面には、インダクタL1を構成するために用いられる導体層561,562と、インダクタL2を構成するために用いられる導体層563とが形成されている。また、誘電体層56には、スルーホール56T1,56T2,56T3,56T4,56T5が形成されている。スルーホール56T1は、導体層561の一端の近傍部分に接続されている。スルーホール56T2は、導体層561の他端の近傍部分に接続されている。スルーホール56T3は、導体層562の一端の近傍部分に接続されている。スルーホール56T4は、導体層562の他端の近傍部分に接続されている。スルーホール56T5は、導体層563の一端の近傍部分に接続されている。図7(a)に示したスルーホール55T1は、導体層563の他端の近傍部分に接続されている。図7(a)に示したスルーホール55T2は、スルーホール56T1に接続されている。図7(a)に示したスルーホール55T3は、導体層562における一端と他端の間の部分に接続されている。
図7(c)に示したように、7層目の誘電体層57の上面には、インダクタL1を構成するために用いられる導体層571,572と、インダクタL2を構成するために用いられる導体層573とが形成されている。また、誘電体層57には、スルーホール57T1,57T2,57T3,57T4が形成されている。スルーホール57T1,57T3には、それぞれ図7(b)に示したスルーホール56T1,56T3が接続されている。スルーホール57T2は、導体層571の一端の近傍部分に接続されている。スルーホール57T4は、導体層572の一端の近傍部分に接続されている。図7(b)に示したスルーホール56T2は、導体層571の他端の近傍部分に接続されている。図7(b)に示したスルーホール56T4は、導体層572の他端の近傍部分に接続されている。図7(b)に示したスルーホール56T5は、導体層573の一端の近傍部分に接続されている。導体層573の他端は、図3に示したグランド端子115に接続されている。
図7(d)に示したように、8層目の誘電体層58の上面には、インダクタL1を構成するために用いられる導体層581,582が形成されている。また、誘電体層58には、スルーホール58T1,58T2,58T3,58T4が形成されている。スルーホール58T1,58T3には、それぞれ図7(c)に示したスルーホール57T1,57T3が接続されている。スルーホール58T2は、導体層581の一端の近傍部分に接続されている。スルーホール58T4は、導体層582の一端の近傍部分に接続されている。図7(c)に示したスルーホール57T2は、導体層581の他端の近傍部分に接続されている。図7(c)に示したスルーホール57T4は、導体層582の他端の近傍部分に接続されている。
図8(a)に示したように、9層目の誘電体層59の上面には、インダクタL1を構成するために用いられる導体層591が形成されている。また、誘電体層59には、スルーホール59T1,59T3が形成されている。スルーホール59T1,59T3には、それぞれ図7(d)に示したスルーホール58T1,58T3が接続されている。図7(d)に示したスルーホール58T2は、導体層591の一端の近傍部分に接続されている。図7(d)に示したスルーホール58T4は、導体層591の他端の近傍部分に接続されている。
図8(b)に示したように、10層目の誘電体層60には、スルーホール60T1,60T3が形成されている。スルーホール60T1,60T3には、それぞれ図8(a)に示したスルーホール59T1,59T3が接続されている。
図8(c)に示したように、11層目の誘電体層61の上面には、グランド用導体層611が形成されている。導体層611は、図3に示したグランド端子115,116に接続されている。また、誘電体層61には、スルーホール61T1,61T3が形成されている。スルーホール61T1,61T3には、それぞれ図8(b)に示したスルーホール60T1,60T3が接続されている。
図8(d)に示したように、12層目の誘電体層62には、スルーホール62T1,62T3が形成されている。スルーホール62T1,62T3には、それぞれ図8(c)に示したスルーホール61T1,61T3が接続されている。
図9(a)に示したように、13層目の誘電体層63の上面には、第1の結合線路部20Aを構成するために用いられる導体層631と、第2の結合線路部20Bを構成するために用いられる導体層632とが形成されている。また、誘電体層63には、導体層631の一端の近傍部分に接続されたスルーホール63T1と、導体層632の一端の近傍部分に接続されたスルーホール63T2とが形成されている。図8(d)に示したスルーホール62T1は、導体層631の他端の近傍部分に接続されている。図8(d)に示したスルーホール62T3は、導体層632の他端の近傍部分に接続されている。
図9(b)に示したように、14層目の誘電体層64の上面には、主線路10を構成するために用いられる導体層641と、導体層642とが形成されている。導体層641の一端は、図3に示した第1の端子11に接続されている。導体層641の他端は、図3に示した第2の端子12に接続されている。また、誘電体層64には、導体層642の一端の近傍部分に接続されたスルーホール64T1と、スルーホール64T2とが形成されている。図9(a)に示したスルーホール63T1は、導体層642の他端の近傍部分に接続されている。図9(a)に示したスルーホール63T2は、スルーホール64T2に接続されている。
図9(c)に示したように、15層目の誘電体層65の上面には、第2の結合線路部20Bを構成するために用いられる導体層651が形成されている。導体層651の一端は、図3に示した第4の端子14に接続されている。また、誘電体層65には、スルーホール65T1が形成されている。図9(b)に示したスルーホール64T1は、スルーホール65T1に接続されている。図9(b)に示したスルーホール64T2は、導体層651の他端の近傍部分に接続されている。
図9(d)に示したように、16層目の誘電体層66の上面には、第1の結合線路部20Aを構成するために用いられる導体層661が形成されている。導体層661の一端は、図3に示した第3の端子13に接続されている。図9(c)に示したスルーホール65T1は、導体層661の他端の近傍部分に接続されている。
図10(a)に示したように、17層目の誘電体層67の上面には、導体層は形成されていない。図10(b)に示したように、18層目の誘電体層68の上面には、グランド用導体層681が形成されている。導体層681は、図3に示したグランド端子115,116に接続されている。図10(c)に示したように、19層目の誘電体層69の上面には、導体層は形成されていない。
図3に示した積層体50は、1層目ないし19層目の誘電体層51〜69が積層されて構成される。そして、この積層体50の外周部に対して端子11,12,13,14,115,116が形成されて、図3に示した個別方向性結合器1Aが完成する。
図4では、導体層511,531を省略し、導体層541,542を点線で示している。図5では、導体層631,632よりも上方に位置する複数の導体層を省略している。
以下、図1に示した個別方向性結合器1Aの回路の構成要素と、図6ないし図10に示した積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。主線路10は、図9(b)に示した導体層641によって構成されている。
第1の結合線路部20Aは、以下のように構成されている。図9(a)に示した導体層631は、スルーホール63T1、導体層642およびスルーホール64T1,65T1を介して、図9(d)に示した導体層661に接続されている。導体層631の一部は、誘電体層63を介して、導体層641の一部の上面に対向している。導体層661の一部は、誘電体層64,65を介して、導体層641の上記一部の下面に対向している。第1の結合線路部20Aは、上記の導体層631の一部と導体層661の一部とによって構成されている。また、導体層631の一部と導体層661の一部が対向する導体層641の一部は、主線路10の第1の部分10Aを構成する。
第2の結合線路部20Bは、以下のように構成されている。図9(a)に示した導体層632は、スルーホール63T2,64T2を介して、図9(c)に示した導体層651に接続されている。導体層632の一部は、誘電体層63を介して、導体層641の他の一部の上面に対向している。導体層651の一部は、誘電体層64を介して、導体層641の上記他の一部の下面に対向している。第2の結合線路部20Bは、上記の導体層632の一部と導体層651の一部とによって構成されている。また、導体層632の一部と導体層651の一部が対向する導体層641の上記他の一部は、主線路10の第2の部分10Bを構成する。
整合部30のインダクタL1は、以下のように構成されている。図7(b)〜(d)に示した導体層561,571,581は、スルーホール56T2,57T2を介して直列に接続されている。図7(b)〜(d)に示した導体層562,572,582は、スルーホール56T4,57T4を介して直列に接続されている。図7(d)に示した導体層581,582は、スルーホール58T2,58T4と図8(a)に示した導体層591を介して接続されている。インダクタL1は、これらの導体層561,571,581,591,582,572,562と、これらを接続する複数のスルーホールとによって構成されている。導体層561は、スルーホール56T1,57T1,58T1,59T1,60T1,61T1,62T1を介して、第1の結合線路部20Aを構成する導体層631に接続されている。導体層562は、スルーホール56T3,57T3,58T3,59T3,60T3,61T3,62T3を介して、第2の結合線路部20Bを構成する導体層632に接続されている。
整合部30のキャパシタC1は、図6(d)に示した導体層541と、図6(c)に示した導体層531と、それらの間の誘電体層53とによって構成されている。導体層541は、スルーホール54T2,55T2,56T1,57T1,58T1,59T1,60T1,61T1,62T1を介して、第1の結合線路部20Aを構成する導体層631に接続されている。
整合部30のキャパシタC2は、図6(d)に示した導体層542と、図6(c)に示した導体層531と、それらの間の誘電体層53とによって構成されている。導体層542は、スルーホール54T3,55T3、導体層562、スルーホール56T3,57T3,58T3,59T3,60T3,61T3,62T3を介して、第2の結合線路部20Bを構成する導体層632に接続されている。
整合部30のインダクタL2は、図7(b)に示した導体層563と、図7(c)に示した導体層573と、これらを接続するスルーホール56T5とによって構成されている。導体層563は、スルーホール53T1,54T1,55T1を介して、図6(c)に示した導体層531に接続されている。
積層体50において、整合部30を構成する複数の導体層と、主線路10を構成する導体層641の間には、グランドに接続されたグランド用導体層611が介在している。そのため、整合部30は、主線路10に対して電磁界結合しない。
図4および図5に示したように、第2の個別方向性結合器1Bの積層体50における複数の導体層は、第2の平面102に関して、第1の個別方向性結合器1Aの積層体50における複数の導体層と面対称の構造を有している。この場合でも、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの回路構成は、互いに等価である。
本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1では、第1の態様における回路構成と第2の態様における回路構成は、互いに等価である。そのため、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は双方向性を有していなくても、双方向型方向性結合器1は双方向性を有する。以下、このことを確認したシミュレーションの結果について説明する。
シミュレーションでは、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bと双方向型方向性結合器1の特性を調べた。以下、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々の特性に関して、第1の端子11を入力ポートとし、第2の端子12を出力ポートとし、第3の端子13を結合ポートとし、第4の端子14を終端ポートとしたときの特性を正方向の特性と言い、第2の端子12を入力ポートとし、第1の端子11を出力ポートとし、第4の端子14を結合ポートとし、第3の端子13を終端ポートとしたときの特性を逆方向の特性と言う。
図11は、第1の個別方向性結合器1Aの正方向および逆方向の結合度の周波数特性を示す特性図である。図11において、横軸は周波数、縦軸は結合度である。図11において、実線の曲線は正方向の特性を示し、点線は逆方向の特性を示している。
図12は、第1の個別方向性結合器1Aの正方向および逆方向のアイソレーションの周波数特性を示す特性図である。図12において、横軸は周波数、縦軸はアイソレーションである。図12において、実線の曲線は正方向の特性を示し、点線は逆方向の特性を示している。
図11および図12に示したように、第1の個別方向性結合器1Aでは、正方向の特性と逆方向の特性が異なっている。図示しないが、第2の個別方向性結合器1Bの特性は、第1の個別方向性結合器1Aと同じである。従って、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は、双方向性を有していない。
図13は、双方向型方向性結合器1の結合度の周波数特性を示す特性図である。図13において、横軸は周波数、縦軸は結合度である。図14は、双方向型方向性結合器1のアイソレーションの周波数特性を示す特性図である。図14において、横軸は周波数、縦軸はアイソレーションである。
図13および図14には、第1の態様における双方向型方向性結合器1の特性を示している。第2の態様における双方向型方向性結合器1の特性は、第1の態様における双方向型方向性結合器1の特性と同じである。なお、図13に示した結合度の周波数特性は、図11に示した第1の個別方向性結合器1Aの正方向の結合度の周波数特性とほぼ同じである。また、図14に示したアイソレーションの周波数特性は、図12に示した第1の個別方向性結合器1Aの正方向のアイソレーションの周波数特性とほぼ同じである。
以上のシミュレーションの結果から、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は双方向性を有していなくても、双方向型方向性結合器1は双方向性を有することが分かる。
第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々の回路の設計は、双方向性を考慮する必要がないため、双方向性を有する方向性結合器を1つの電子部品によって実現する場合における回路の設計に比べて簡単である。そして、本実施の形態によれば、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bを接続することによって、双方向性を有する双方向型方向性結合器1を構成することができる。以上のことから、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1によれば、簡単に双方向性を実現することができる。
また、本実施の形態では、個別方向性結合器1A,1Bの各々の副線路20は、第1および第2の結合線路部20A,20Bと整合部30を含んでいる。これにより、前述のように、個別方向性結合器1A,1Bの各々の使用周波数帯域を広くすることができる。その結果、本実施の形態によれば、広帯域で使用可能な双方向型方向性結合器1を実現することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る双方向型方向性結合器1について説明する。図15は、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1の回路構成を示す回路図である。本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1は、第1の実施の形態における第1および第2の抵抗器15A,15Bを備えておらず、第1の個別方向性結合器1Aの第4の端子14と第2の個別方向性結合器1Bの第4の端子14とを電気的に接続する遅延線路16を備えている。遅延線路16は、そこを通過する信号に対して位相の変化を生じさせる。遅延線路16による位相の変化の大きさは、双方向型方向性結合器1の使用周波数帯域内の周波数の信号に対して、0°より大きく360°以下である。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る双方向型方向性結合器1について説明する。図15は、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1の回路構成を示す回路図である。本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1は、第1の実施の形態における第1および第2の抵抗器15A,15Bを備えておらず、第1の個別方向性結合器1Aの第4の端子14と第2の個別方向性結合器1Bの第4の端子14とを電気的に接続する遅延線路16を備えている。遅延線路16は、そこを通過する信号に対して位相の変化を生じさせる。遅延線路16による位相の変化の大きさは、双方向型方向性結合器1の使用周波数帯域内の周波数の信号に対して、0°より大きく360°以下である。
以下、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1の作用が第1の実施の形態と異なる点について説明する。まず、第1の態様では、入力ポートとなる個別方向性結合器1Aの第1の端子11と、結合ポートとなる個別方向性結合器1Aの第3の端子13の間に、第1ないし第4の信号経路が形成される。
第1の信号経路は、個別方向性結合器1Aの結合部40Aを経由する信号経路である。第2の信号経路は、個別方向性結合器1Aの結合部40Bおよび整合部30を経由する信号経路である。第3の信号経路は、個別方向性結合器1Bの結合部40Bと、遅延線路16と、個別方向性結合器1Aの整合部30とを経由する信号経路である。第4の信号経路は、個別方向性結合器1Bの結合部40Aおよび整合部30と、遅延線路16と、個別方向性結合器1Aの整合部30とを経由する信号経路である。
個別方向性結合器1Aの第3の端子13から出力される結合信号は、それぞれ第1ないし第4の信号経路を通過した信号が合成されて得られる信号である。第1の態様における双方向型方向性結合器1の結合度は、個別方向性結合器1A,1Bの各々における結合部40A,40Bのそれぞれの単独の結合度と、それぞれ第1ないし第4の信号経路を通過した信号の位相の関係とに依存する。
また、第1の態様では、出力ポートとなる個別方向性結合器1Bの第1の端子11と、結合ポートとなる個別方向性結合器1Aの第3の端子13の間に、第5ないし第8の信号経路が形成される。
第5の信号経路は、個別方向性結合器1Aの結合部40Aを経由する信号経路である。第6の信号経路は、個別方向性結合器1Aの結合部40Bおよび整合部30を経由する信号経路である。第7の信号経路は、個別方向性結合器1Bの結合部40Bと、遅延線路16と、個別方向性結合器1Aの整合部30とを経由する信号経路である。第8の信号経路は、個別方向性結合器1Bの結合部40Aおよび整合部30と、遅延線路16と、個別方向性結合器1Aの整合部30とを経由する信号経路である。
第1の態様における双方向型方向性結合器1のアイソレーションは、個別方向性結合器1A,1Bの各々における結合部40A,40Bのそれぞれの単独の結合度と、それぞれ第5ないし第8の信号経路を通過した信号の位相の関係とに依存する。
第2の態様では、入力ポートとなる個別方向性結合器1Bの第1の端子11と、結合ポートとなる個別方向性結合器1Bの第3の端子13の間に、第9ないし第12の信号経路が形成される。また、出力ポートとなる個別方向性結合器1Aの第1の端子11と、結合ポートとなる個別方向性結合器1Bの第3の端子13の間に、第13ないし第16の信号経路が形成される。第9ないし第16の信号経路の内容は、上記の第1ないし第8の信号経路の説明における個別方向性結合器1Aと個別方向性結合器1Bを入れ替えた内容である。
第1の実施の形態と同様に、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1でも、第1の態様における回路構成と第2の態様における回路構成は、互いに等価である。そのため、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は双方向性を有していなくても、双方向型方向性結合器1は双方向性を有する。
本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1では、第1の実施の形態に係る双方向型方向性結合器1に比べて、結合度を大きくすることができる。
図16および図17は、シミュレーションで求めた、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1の特性を示している。このシミュレーションでは、周波数2.5GHzの信号に対する遅延線路16による位相の変化の大きさを180°とした。
図16は、双方向型方向性結合器1の結合度の周波数特性を示す特性図である。図16において、横軸は周波数、縦軸は結合度である。図17は、双方向型方向性結合器1のアイソレーションの周波数特性を示す特性図である。図17において、横軸は周波数、縦軸はアイソレーションである。図16および図17には、第1の態様における双方向型方向性結合器1の特性を示している。第2の態様における双方向型方向性結合器1の特性は、第1の態様における双方向型方向性結合器1の特性と同じである。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る双方向型方向性結合器1について説明する。図15は、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1の回路構成を示す回路図である。本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1は、第1の実施の形態における第1および第2の抵抗器15A,15Bも、第2の実施の形態における遅延線路16も備えていない。本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1では、第2の個別方向性結合器1Bの第4の端子14は、遅延線路16を介さずに、第1の個別方向性結合器1Aの第4の端子14に電気的に接続されている。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る双方向型方向性結合器1について説明する。図15は、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1の回路構成を示す回路図である。本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1は、第1の実施の形態における第1および第2の抵抗器15A,15Bも、第2の実施の形態における遅延線路16も備えていない。本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1では、第2の個別方向性結合器1Bの第4の端子14は、遅延線路16を介さずに、第1の個別方向性結合器1Aの第4の端子14に電気的に接続されている。
本実施の形態では、第2の個別方向性結合器1Bの第4の端子14は、第1の個別方向性結合器1Aの第4の端子14に対して、物理的に直接接続されていてもよいし、位相の変化をほとんど生じさせないような短い線路を介して電気的に接続されていてもよい。
本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1の回路構成は、第2の実施の形態に係る双方向型方向性結合器1において、双方向型方向性結合器1の使用周波数帯域内の周波数の信号に対する遅延線路16による位相の変化の大きさを0°またはそれに近い大きさにした構成と等価である。
第2の実施の形態と同様に、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1でも、第1の態様における回路構成と第2の態様における回路構成は、互いに等価である。そのため、第1および第2の個別方向性結合器1A,1Bの各々は双方向性を有していなくても、双方向型方向性結合器1は双方向性を有する。
図19および図20は、シミュレーションで求めた、本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1の特性を示している。このシミュレーションでは、個別方向性結合器1Aの第4の端子14と個別方向性結合器1Bの第4の端子14との間における位相の変化の大きさを0°とした。
図19は、双方向型方向性結合器1の結合度の周波数特性を示す特性図である。図19において、横軸は周波数、縦軸は結合度である。図20は、双方向型方向性結合器1のアイソレーションの周波数特性を示す特性図である。図20において、横軸は周波数、縦軸はアイソレーションである。図19および図20には、第1の態様における双方向型方向性結合器1の特性を示している。第2の態様における双方向型方向性結合器1の特性は、第1の態様における双方向型方向性結合器1の特性と同じである。
本実施の形態に係る双方向型方向性結合器1は、第2の実施の形態に係る双方向型方向性結合器1に比べて結合度の周波数特性は若干劣るが、双方向性を有する方向性結合器として機能する。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第1および第2の個別方向性結合器の各々の回路構成や構造は、第1の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、第1および第2の個別方向性結合器は、複数の端子の配置や、積層体の内部の構造が全く同じものであってもよい。この場合においても、第1および第2の個別方向性結合器の第2の端子同士を電気的に接続して、双方向型方向性結合器を実現することができる。
また、本発明において、第1および第2の個別方向性結合器は、第1の平面上に配置されずに、積層されていてもよい。この場合においても、第1および第2の個別方向性結合器の第2の端子同士を電気的に接続して、双方向型方向性結合器を実現することができる。
1…双方向型方向性結合器、1A…第1の個別方向性結合器、1B…第2の個別方向性結合器、10…主線路、11…第1の端子、12…第2の端子、13…第3の端子、14…第4の端子、20…副線路、20A…第1の結合線路部、20B…第2の結合線路部、30…整合部。
Claims (8)
- 互いに等価な回路構成を有する個別の電子部品である第1の個別方向性結合器と第2の個別方向性結合器を備えた双方向型方向性結合器であって、
前記第1および第2の個別方向性結合器の各々は、
第1の端子と、
第2の端子と、
第3の端子と、
第4の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子を接続する主線路と、
前記第3の端子と前記第4の端子を接続する副線路とを備え、
前記副線路は、前記主線路に対して電磁界結合する少なくとも1つの結合線路部を含み、
前記第1および第2の個別方向性結合器の各々は、前記第1の端子を入力ポートとし、前記第2の端子を出力ポートとし、前記第3の端子を結合ポートとし、前記第4の端子を終端ポートとすることによって方向性結合器として機能し、
前記第2の個別方向性結合器の前記第2の端子は、前記第1の個別方向性結合器の前記第2の端子に電気的に接続され、
前記双方向型方向性結合器は、前記第1の個別方向性結合器の前記第1の端子を入力ポートとし、前記第2の個別方向性結合器の前記第1の端子を出力ポートとし、前記第1の個別方向性結合器の前記第3の端子を結合ポートとした第1の態様と、前記第2の個別方向性結合器の前記第1の端子を入力ポートとし、前記第1の個別方向性結合器の前記第1の端子を出力ポートとし、前記第2の個別方向性結合器の前記第3の端子を結合ポートとした第2の態様のいずれにおいても方向性結合器として機能することを特徴とする双方向型方向性結合器。 - 前記副線路は、前記少なくとも1つの結合線路部として第1の結合線路部と第2の結合線路部を含み、
前記副線路は、更に、回路構成上、前記第1の結合線路部と前記第2の結合線路部の間に設けられた整合部を含み、
前記整合部は、そこを通過する信号に対して位相の変化を生じさせることを特徴とする請求項1記載の双方向型方向性結合器。 - 前記第1の結合線路部と前記第2の結合線路部は、前記主線路に対する結合の強さが互いに異なることを特徴とする請求項2記載の双方向型方向性結合器。
- 前記第1および第2の個別方向性結合器は第1の平面上に配置され、
前記第2の個別方向性結合器の前記第1ないし第4の端子は、前記第1および第2の個別方向性結合器の中間に位置して前記第1の平面に垂直な第2の平面に関して、前記第1の個別方向性結合器の前記第1ないし第4の端子と面対称の位置関係にあることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の双方向型方向性結合器。 - 前記第1および第2の個別方向性結合器の各々は、更に、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体を備え、
前記主線路と前記副線路は、前記複数の導体層を用いて構成され、
前記第2の個別方向性結合器の前記積層体における前記複数の導体層は、前記第2の平面に関して、前記第1の個別方向性結合器の前記積層体における前記複数の導体層と面対称の構造を有することを特徴とする請求項4記載の双方向型方向性結合器。 - 更に、前記第1の個別方向性結合器の前記第4の端子とグランドとを接続する第1の抵抗器と、前記第2の個別方向性結合器の前記第4の端子とグランドとを接続する第2の抵抗器とを備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の双方向型方向性結合器。
- 前記第2の個別方向性結合器の前記第4の端子は、前記第1の個別方向性結合器の前記第4の端子に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の双方向型方向性結合器。
- 更に、前記第1の個別方向性結合器の前記第4の端子と前記第2の個別方向性結合器の前記第4の端子とを電気的に接続する遅延線路を備えたことを特徴とする請求項7記載の双方向型方向性結合器。
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